説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】例えば、液晶装置の画素における光透過率、及びTFT等の半導体素子に対する遮光性の夫々を高める。
【解決手段】第1反射膜81a及び第2反射膜81bは、第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々を覆うように第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々に形成されている。第1反射膜81a及び第2反射膜81bによれば、TFTアレイ基板10の側から入射した入射光L1及びL2の夫々を画素72ga及び72gbに反射できる。加えて、第1反射膜81a及び81bによれば、TFTアレイ基板10の側からTFT30に照射される光を遮光できる。したがって、画素72gの輝度を高めつつ、TFT30に生じる光リーク電流を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶装置等の電気光学装置、及びそのような電気光学装置をライトバルブに応用したプロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置は、例えば、ガラス基板及び当該ガラス基板に形成された画素スイッチング用TFTを含んで構成されるTFTアレイ基板と、当該TFTアレイ基板に対向するように配置された対向基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを主たる構成要素として構成される。このような液晶装置では、光源から出射された光がTFT等の半導体素子に照射されないように、TFTアレイ基板及び対向基板の少なくとも一方にTFT等の半導体素子に重なるように遮光膜が形成される。加えて、バックライト等の光源から入射する光を各画素に集光するためのレンズが作り込まれている場合もある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−140127号公報
【特許文献2】特開2004−325546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、対向基板に遮光膜が形成されている場合、TFTアレイ基板及び対向基板を相互に貼り合わせる際にこれら基板に相対的な位置ずれが生じてしまう。このような位置ずれによれば、各画素のうち画像の表示に実質的に寄与する開口領域となるべき領域が遮光膜によって狭められ、光の透過率を低下させてしまう問題点が生じる。加えて、TFT等の半導体素子に照射される光を遮光する遮光性が低下し、光リーク電流の発生を一因とする表示品位の低下を招く問題点も生じる。加えて、例えば、TFT等の半導体素子から見て光の入射側とは反対側に遮光膜が形成されている場合、TFTアレイ基板上の各画素に形成される画素電極と、画素スイッチング用素子であるTFT等の半導体素子とを電気的に接続するコンタクト部を形成することによって遮光性が低下してしまう問題点も生じる。
【0005】
また、TFTアレイ基板にマイクロレンズ等の集光手段を作り込んだ場合、画素の一の領域における光強度が他の領域の光強度に比べて相対的に高くなり、光による液晶及び配向膜の劣化が促進される。したがって、液晶装置の表示品位を長期間に亘って高い水準に維持することが困難となる問題点も生じる。
【0006】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、画素における光透過率、及びTFT等の半導体素子に対する遮光性の夫々が高められた高品位の液晶装置等の電気光学装置、及びそのような電気光学装置を具備してなるプロジェクタ等の電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上の表示領域において相互に隣り合う第1画素及び第2画素の夫々に対応して形成された第1画素電極及び第2画素電極と、前記基板上において前記第1画素電極及び前記第2画素電極を相互に隔てる領域に形成されており、前記基板に向かって幅が狭まる断面形状を有する溝部と、前記溝部を規定する第1斜面及び第2斜面を夫々覆うように形成される第1反射膜及び第2反射膜と、前記第1反射膜及び前記第2反射膜によって囲まれるように前記溝部内に形成された半導体素子とを備える。
【0008】
本発明に係る電気光学装置によれば、例えば、ITO等の透明導電材料を基板上に成膜した後、当該成膜された膜を所定の形状にパターニングすることによって第1画素及び第2画素の夫々に第1画素電極及び第2画素電極の夫々が形成されている。第1画素及び第2画素は、例えば、表示領域を構成するようにマトリクス状に配列される複数の画素のうち相互に隣り合う2つの画素の夫々である。
【0009】
溝部は、前記基板上において前記第1画素電極及び前記第2画素電極を相互に隔てる領域に形成されている。このような領域は、表示領域のうち実質的に画像の表示に寄与しない領域であり、例えば、液晶装置では、画素のうち光源から出射された光が透過しない領域である。溝部は、前記第1画素電極及び前記第2画素電極が配列された配列方向に沿った平面で前記基板を切った断面において前記基板に向かって幅が狭まる楔型の断面形状を有している。
【0010】
第1反射膜及び第2反射膜は、前記基板上において前記配列方向に交差する交差方向に各々延び、且つ、前記断面において前記溝部を規定する第1斜面及び第2斜面の夫々を覆うように前記第1斜面及び前記第2斜面の夫々に形成されている。第1斜面及び第2斜面の夫々は、例えば、第1画素電極及び第2画素電極からみて基板の反対側から当該基板に光が入射する場合、光の入射方向、言い換えれば当該光の光軸に対して浅い角度で当該光軸に斜めに延びているほうが好ましい。第1反射膜及び第2反射膜によれば、これら反射膜から見て基板の反対側から当該基板に入射する光を第1画素及び第2画素の夫々に反射し、これら画素の夫々に集光することが可能である。
【0011】
半導体素子は、前記断面において前記第1反射膜及び前記第2反射膜によって囲まれるように前記溝部内に形成されている。したがって、第1反射膜及び第2反射膜によれば、これら反射膜及び半導体素子は平面的に見て相互に重なっているため、基板側から半導体素子に直線的に照射される光を遮光できる。加えて、3次元的に見て、基板内で乱反射し、半導体素子に斜めに入射する光も第1反射膜及び第2反射膜によって確実に遮光される。よって、半導体素子に光が照射されることによって発生する光リーク電流を低減できる。特に、本発明に係る電気光学装置によれば、平面的に見て半導体素子上に第1反射膜及び第2反射膜が形成されていないため、例えば、半導体素子及び画素電極相互を電気的に接続するコンタクト部によって遮光性が損なわれることもない。
【0012】
また、本発明に係る電気光学装置によれば、第1反射膜及び第2反射膜と、半導体素子とは、例えば、相互に位置合わせされた状態で基板に形成されているため、画素のうち光が透過する開口領域となるべき領域に第1反射膜及び第2反射膜が重なることがない。したがって、例えば、液晶装置等の電気光学装置において、画素における光の透過率を低下させることがなく、高品位で画像を表示できる。
【0013】
加えて、本発明に係る電気光学装置によれば、例えば、TFTアレイ基板等の基板とは別の対向基板に遮光膜を形成する場合に比べて、TFTアレイ基板及び対向基板相互の位置合わせの精度が低い場合でも、光の透過率を低下させることなく、半導体素子において発生する光リーク電流を低減できる。
【0014】
更に加えて、本発明に係る電気光学装置によれば、第1反射膜及び第2反射膜によって、第1画素及び第2画素の夫々に集光できるため、各画素を透過する光量を増大させることが可能であると共に、例えば、液晶装置では、画素電極及び配向膜の部分的な劣化も抑制できる。したがって、本発明に係る電気光学装置によれば、液晶装置等の電気光学装置の表示品位を長期間に亘って高い水準に維持することができる。
【0015】
本発明に係る電気光学装置の一の態様では、前記溝部内において前記第1反射膜及び前記第2反射膜上に形成された下地部を更に備え、前記下地部の上面は、前記基板の基板面に沿った平坦面であり、前記半導体素子は、前記平坦面上に形成されていてもよい。
【0016】
この態様によれば、SiO2等の絶縁膜を下地膜としてその上に半導体層を形成する半導体製造プロセスと同様の方法を用いて半導体素子を形成できる。尚、下地部は、例えば、溝部内に樹脂などの下地材料を塗布することによって形成可能である。
【0017】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記半導体素子は、前記交差方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域を備えたTFTであり、前記TFTは、前記第1画素電極及び第2画素電極のうち一方の画素電極に電気的に接続され、該一方の画素電極をスイッチング制御するスイッチング素子であってもよい。
【0018】
この態様によれば、第1画素電極及び第2画素電極の一方の画素電極に対応させてTFTを形成することができる。尚、このようなTFTは、例えば画像信号線及び一方の画素電極に電気的に接続されており、所定のタイミングで当該一方の画素電極への画像信号の供給及び非供給を制御するスイッチング素子である。
【0019】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備してなる。
【0020】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、プロジェクタ等の投写型表示装置、直視型ディスプレイ装置、携帯電話、カーナビゲーションシステムに適用されるディスプレイ装置、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ等の小型情報機器、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等の各種電子機器を実現できる。
【0021】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明に係る電気光学装置及び電子機器の各実施形態を説明する。
【0023】
<1:電気光学装置>
<1−1:電気光学装置の全体構成>
先ず、図1及び図2を参照しながら、本発明に係る電気光学装置の一実施形態に係る液晶装置1の全体構成を説明する。図1は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た液晶装置1の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。本実施形態に係る液晶装置1は、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス方式で駆動される液晶装置である。
【0024】
図1及び図2において、液晶装置1では、TFTアレイ基板10及び対向基板20が相互に対向配置されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素で構成された本発明の「表示領域」の典型例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0025】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0026】
液晶装置1は、データ線駆動回路101、及び走査線駆動回路104を備えている。周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域において、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、複数の配線105によって相互に電気的に接続されている。
【0027】
対向基板20の4つのコーナー部には、TFTアレイ基板10及び対向基板20間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10及び対向基板20間で電気的な導通をとることができる。
【0028】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21、及びその表面に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0029】
液晶装置1は、その動作時に、図中下側であるTFTアレイ基板20側から液晶装置1に液晶層50に入射した入射光を液晶層50の配向状態に応じて対向基板20側に透過させ、画像を表示する。
【0030】
<1−2:電気光学装置の回路構成>
次に、図3を参照しながら、液晶装置1の回路構成を説明する。図3は、本実施形態に係る液晶装置1の画像表示領域10aにおける回路構成を示した回路図である。
【0031】
図3において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72の夫々は、画素電極9a、本発明の「半導体素子」の一例であるTFT30、及び液晶素子50aを備えている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9aをスイッチング制御し、当該制御に応じて液晶素子50aを駆動する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0032】
TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態にすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0033】
液晶層50を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0034】
蓄積容量70は、画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶素子50aと並列に付加されており、一方の容量電極に固定電位線300を介して固定電位が供給される。
【0035】
<1−3:電気光学装置の具体的な構成>
次に、図4乃至図6を参照しながら、液晶装置1の具体的な構成を説明する。図4は、液晶装置1における複数の画素電極9aの配列状態を図式的に示した液晶装置1の図式的平面図である。図5は、液晶装置1の画像表示領域10aの一部を拡大して示した拡大平面図である。図6は、図5のVI−VI´線断面図である。尚、図6では、説明の便宜上、画素電極9aより下層側の構造を示している。
【0036】
図4を参照しながら、画素電極9aの配列状態を説明する。図4において、複数の画素電極9aの夫々は、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aを構成するように本発明の「配列方向」の各々一例であるX方向及びY方向に沿って規定された複数の画素72gに形成されている。
【0037】
次に、図5及び図6を参照しながら、液晶装置1の詳細な構成を説明する。尚、図5及び図6では、複数の画素電極9aのうちX方向に沿って相互に隣り合う画素電極9a1及び9a2のうち画素電極9a1が、本発明の「第1画素電極」の一例であり、画素電極9a2が、本発明の「第2画素電極」の一例である。加えて、画素72gaが、本発明の「第1画素」の一例であり、画素72gbが、本発明の「第2画素」の一例である。
【0038】
図5及び図6において、液晶装置1は、画素電極9a1及び9a2、溝部150、第1反射膜81a及び第2反射膜81b、本発明の「半導体素子」の一例であるTFT30、並びに下地部41aを備えて構成されている。
【0039】
画素電極9a1及び9a2の夫々は、画素72ga及び72gbの夫々に形成されている。例えば、ITO等の透明導電材料をTFTアレイ基板10上に成膜した後、当該成膜された膜を所定の形状にパターニングすることによって形成されている。画素電極9a1及び9a2の夫々が形成される画素72ga及び72gbは、画像表示領域10aを構成するようにマトリクス状に配列される複数の画素72gのうち相互に隣り合う2つの画素である。画素電極9a1及び9a2の夫々は、コンタクトホール62を介してシールド電極165に電気的に接続されている。
【0040】
溝部150は、画像表示領域10aにおいて格子状に延びている。溝部150は、TFTアレイ基板10上において画素電極9a1及び画素電極9a2を相互に隔てる領域に形成されている。画素電極9a1及び画素電極9a2を相互に隔てる領域は、画像表示領域10aのうち実質的に画像の表示に寄与しない領域であり、画素72gのうちランプ、バックライト等の光源から出射された光が透過しない領域である。以下では、説明の便宜上、溝部150のうち画素電極9a1及び9a2を相互に隔てる領域に延びる部分に注目して説明を行う。
【0041】
溝部150は、画素電極9a1及び画素電極9a2が配列された配列方向であるX方向に沿った平面でTFTアレイ基板10を切った断面において、TFT基板10に向かって、より具体的には図6中下側に向かって幅が狭まる楔型の断面形状を有している。このような溝部150は、X方向に沿った平面でTFTアレイ基板10を切った断面において第1斜面80a及び第2斜面80bによって規定されている。第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々は、TFTアレイ基板10上においてX方向に交差する交差方向であるY方向に各々延びている。第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々は、画素電極9a1及び9a2からみてTFTアレイ基板10の反対側から当該TFTアレイ基板10に光が入射した際に、光の入射方向、言い換えれば当該光の光軸に対して浅い角度で当該光軸に斜めに延びている。
【0042】
第1反射膜81a及び第2反射膜81bは、第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々を覆うように第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々に形成されている。第1反射膜81a及び第2反射膜81bの夫々は、タングステン等の金属から構成された金属膜又は高融点金属膜であり、TFTアレイ基板10の側から入射した入射光L1及びL2の夫々を画素72ga及び72gbに反射する。
【0043】
したがって、画像表示領域10aのうち第1反射膜81a及び第2反射膜81bが形成された領域、即ち、画像の表示に寄与しない領域にランプ、バックライト等の光源から入射した入射光L1及びL2の夫々が、画素72ga及び72gbの夫々のうち光が透過する開口領域に集光されることになる。よって、液晶装置1によれば、その動作時に、各画素72gを透過する光量を増大させることが可能であり、画素72gにおける輝度を高めることが可能である。
【0044】
加えて、液晶装置1によれば、画素72gを透過する光の強度を均一にすることが可能であるため、光強度の不均一に照射されることを一因として生じる配向膜16及び液晶層50の部分的な劣化を低減でき、液晶装置1の表示性能を高い水準で長期間に亘って維持することが可能である。
【0045】
TFT30は、図5中のVI−VI´線で液晶装置1を切った断面、即ち、図6において、第1反射膜81a及び第2反射膜81bによって囲まれるように溝部150内に形成されている。TFT30は、ポリシリコン等の半導体で構成され、且つY方向に沿って延びる半導体層1aを有している。半導体層1aは、Y方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域1cを有している。ソース領域1s及びドレイン領域1dの夫々は、Y方向に沿ってチャネル領域1cの両側に形成されている。
【0046】
TFT30は、ドレイン領域1dに電気的に接続されたコンタクトホール60を介して、本発明の「一方の画素電極」の一例である画素電極9a1に電気的に接続されている。加えて、TFT30は、ソース領域1sに電気的に接続されたコンタクトホール61を介してデータ線6a(図3参照。)に電気的に接続されている。液晶装置1の動作時には、データ線6aからTFT30に供給された画像信号が、TFT30がオフ状態からオン状態に切り換えられることによって画素電極9a1に供給される。したがって、TFT30は、画素電極9a1をスイッチング制御するスイッチング素子である。
【0047】
第1反射膜81a及び第2反射膜81bによれば、これら反射膜及びTFT30は平面的に見て相互に重なっているため、TFTアレイ基板10の側からTFT30にバックライト等の光源から直線的に照射される光を遮光できる。加えて、3次元的に見て、TFTアレイ基板10内で乱反射し、TFT30に斜めに入射する光も第1反射膜81a及び第2反射膜81bによって確実に遮光される。この観点からは、第1反射膜81a及び第2反射膜81bをそれぞれ画素の非開口領域を規定する遮光膜ということもできる。
【0048】
第1反射膜81a及び第2反射膜81bによれば、TFT30に光が照射されることによって発生する光リーク電流を低減できる。特に、液晶装置1によれば、平面的に見てTFT30上に第1反射膜81a及び第2反射膜81bが形成されていないため、例えば、TFT30及び画素電極9a1を相互に電気的に接続するコンタクトホール60によってTFT30の遮光性が損なわれることもない。
【0049】
下地部41aは、溝部150内において第1反射膜81a及び第2反射膜81b上に形成されている。下地部41aは、溝部150に樹脂などの下地材料を塗布することによって溝部150を埋めるように形成されている。下地部41aの上面は、TFTアレイ基板10の基板面に沿った平坦面である。TFT30は、平坦面である下地部41aの上面に形成されている。下地部41aによれば、SiO2等の絶縁膜を下地膜としてその上にTFT30を形成する半導体製造プロセスと同様の方法を用いてTFT30を形成できる。
【0050】
また、液晶装置1によれば、第1反射膜81a及び第2反射膜81bと、TFT30とを相互に位置合わせされた状態でTFTアレイ基板10に形成しておくことが可能であるため、画素72gのうち光が透過する開口領域となるべき領域に第1反射膜81a及び第2反射膜81bが重なることがない。すなわち、第1反射膜81a及び第2反射膜81bにより、画素72gの開口領域を規定することができる。したがって、液晶装置1によれば、画素72gにおける光の透過率を低下させることがなく、高品位で画像を表示できる。
【0051】
加えて、液晶装置1によれば、対向基板20に遮光膜を形成する場合に比べて、TFTアレイ基板10及び対向基板20相互の位置合わせの精度が低い場合でも、光の透過率を低下させることなく、TFT30において発生する光リーク電流を低減できる。
【0052】
<2:電気光学装置の製造方法>
次に、図7乃至図20を参照しながら、上述の液晶装置1の製造方法を説明する。図7乃至図13は、液晶装置1の主要な製造工程を順に示した工程平面図である。図14乃至図20は、図7乃至図13の夫々に対応する工程断面図である。尚、以下では、画素電極9aより下層側までの構造を形成する工程までを詳細に説明する。
【0053】
図7及び図14に示すように、石英基板、ガラス基板等の透明基板であるTFTアレイ基板10に溝部150を形成した後、第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々に第1反射膜81a及び第2反射膜81bの夫々を形成する。
【0054】
より具体的には、フレオン系のガス及び酸素O2を含む混合ガスを用いてTFTアレイ基板10の基板表面をドライエッチングし、断面が楔形の溝部150をX方向及びY方向の夫々に沿って格子状に形成する。溝部150のサイズは、TFT30を遮光でき、且つTFTアレイ基板10側から画素72gに反射される光の反射量が大きくなるように設定されているほうが好ましく、例えば、溝部150の開口部分の幅が2μm以下、その深さが5乃至100μm程度になるようにエッチング条件を設定し、溝部150を形成する。
【0055】
CVD法等の成膜法を用いてタングステン(W)等の金属膜を第1斜面80a及び第2斜面80b、並びに、TFTアレイ基板10の平坦な表面に形成した後、フォトリソグラフィーによって第1斜面80a及び第2斜面80bにのみ金属膜を残すことによって、第1斜面80a及び第2斜面80bの夫々に、第1反射膜81a及び第2反射膜81bを形成する。このような第1反射膜81a及び第2反射膜81bの夫々の光反射率は、50%以上であり、且つOD値(光学濃度)は1以上である。
【0056】
次に、図8及び図15に示すように、第1反射膜81a及び第2反射膜81bが形成された溝部150内に絶縁材料を塗布し、上面が平坦な下地部41aを形成すると共に、CVD法等の成膜法を用いて絶縁膜41を形成する。尚、下地部41aの上面の位置が、TFTアレイ基板10の基板面から10μm以下の深さになるように、下地部41aを形成する。ポリシリコン膜等の半導体から構成される半導体膜をCVD法を用いて下地部41aの平坦な上面に形成し、当該半導体膜をパターニングすることによって半導体層1aを形成する。
【0057】
次に、図9及び図16に示すように、ゲート絶縁膜42を熱酸化及びCVD法を用いて形成し、その上に走査線3aを構成するゲート電極160を形成する。ゲート電極160は、ポリシリコン膜等の導電膜をゲート絶縁膜42上に形成した後、当該導電膜にパターニング処理を施すことによって形成される。半導体層1aのうちゲート電極160に重なる部分の両側、即ち、半導体層1aのうちY方向に沿ってゲート電極160の両側の夫々を占める部分に不純物を打ち込み、ソース領域1s及びドレイン領域1dを形成する。これにより、半導体層1aにソース領域1s、ドレイン領域1d及びチャネル領域1cが形成される。チャネル領域1cは、画素72ga及び72gbが配列されたX方向と交差する交差方向であるY方向に沿ったチャネル長を有している。
【0058】
次に、図10及び図17に示すように、ゲート電極160を覆うようにCVD法を用いて絶縁膜43を形成した後、ドレイン領域1dに電気的に接続されたコンタクトホール60を形成する。その後、半導体層1aをアニール処理することによって、半導体層1aの不純物を活性化させる。その後、後述する蓄積容量70に含まれる一対の容量電極の一方である下側電極161を形成する。下側電極161は、CVD法を用いてポリシリコン膜を成膜後、当該ポリシリコン膜をパターニングすることによって形成される。下側電極161上には、蓄積容量の誘電体として機能する絶縁膜43がCVD法を用いて形成される。
【0059】
次に、図11及び図18に示すように、蓄積容量70の他方の容量電極を構成する上側電極162を形成し、その上に絶縁膜44を形成する。上側電極162は、CVD法、又は、スパッタリング法を用いて導電膜が形成された後、当該導電膜をパターニングすることによって形成される。絶縁膜44は、CVD法を用いて形成される。その後、絶縁膜44を貫通するコンタクトホール61を形成する。コンタクトホール61は、ソース領域1s及び配線163(データ線6a)を相互に電気的に接続する。
【0060】
次に、図12及び図19に示すように、データ線6a、或いはデータ線6aに電気的に接続される配線163を形成すると共に、第1中継層164を形成する。配線163は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、及びタングステン(W)等の組み合わせから構成された導電膜をスパッタリング法を用いて成膜し、当該導電膜をパターニングすることによって形成される。その後、絶縁膜45を形成し、コンタクトホール63を形成する。コンタクトホール63は、第1中継層164と第2中継層165とを相互に電気的に接続する。
【0061】
次に、図13及び図20に示すように、第2中継層165及びシールド配線166を形成する。第2中継層165及びシールド配線166は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、及びタングステン(W)等の組み合わせから構成された導電膜をスパッタリング法を用いて成膜し、当該導電膜をパターニングすることによって形成される。このシールド配線166には、定電位が印加されており、蓄積容量70の一方の電極に電気的に接続させることにより容量線としての機能をもたせることもできる。その後、絶縁膜46及び47を形成し、その表面をCMP法等の平坦化処理によって平坦化し、コンタクトホールをパターニングする。その後、ITO等の透明導電材料を各画素72gに成膜することによって、画素電極9aを形成し、図5及び図6に示したように、液晶装置1のうち画素電極9aより下側の部分が形成される。
【0062】
<3:電子機器>
次に、図21を参照しながら、上述した液晶装置を用いた電子機器の一例を説明する。本実施形態に係る電子機器は、上述した液晶装置をライトバルブに用いたプロジェクタである。図21は、本実施形態に係るプロジェクタの構成例を示す平面図である。
【0063】
図21に示すように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
【0064】
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。液晶パネル及び位相差板を含む光学系から出射された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0065】
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0066】
尚、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0067】
このようなプロジェクタは、ライトバルブとして上述の液晶装置を具備してなるので、スクリーン等の投写面に投写される投写画像の画質が高められており、高品位の画像を表示可能である。加えて、プロジェクタ1100によれば、ランプユニット1102で消費される電力を低減でき、環境に配慮した装置構成が実現可能となっている。
【0068】
尚、本実施形態に係る液晶装置は、上述したプロジェクタに適用される場合に限定されるものではなく、直視型の液晶表示装置の一部を構成することも可能である。また、LCOS型の反射型の表示装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の平面図である。
【図2】図1のII−II´断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の主要な回路構成を示したブロック図である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域における複数の画素電極の配列状態を示した図式的平面図である。
【図5】本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域の一部を拡大して示した拡大平面図である。
【図6】図5のVI−VI´断面図である。
【図7】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図(その1)である。
【図8】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図(その2)である。
【図9】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図(その3)である。
【図10】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図(その3)である。
【図11】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図(その4)である。
【図12】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図(その5)である。
【図13】本実施形態に係る液晶装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図(その6)である。
【図14】図7のXIV−XIV´断面図である。
【図15】図8のXV−XV´断面図である。
【図16】図9のXVI−XVI´断面図である。
【図17】図10のXVII−XVII´断面図である。
【図18】図11のXVIII−XVIII´断面図である。
【図19】図12のXIX−XIX´断面図である。
【図20】図13のXX−XX´断面図である。
【図21】本実施形態に係る電子機器の平面図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・液晶装置、9a・・・画素電極、10・・・TFTアレイ基板、20・・・対向基板、41a・・・下地部、50・・・液晶層、50a・・・液晶素子、72・・・画素部、80a・・・第1斜面、80b・・・第2斜面、81a・・・第1反射膜、81b・・・第2反射膜、150・・・溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の表示領域において相互に隣り合う第1画素及び第2画素の夫々に対応して形成された第1画素電極及び第2画素電極と、
前記基板上において前記第1画素電極及び前記第2画素電極を相互に隔てる領域に形成されており、前記基板に向かって幅が狭まる断面形状を有する溝部と、
前記溝部を規定する第1斜面及び第2斜面を夫々覆うように形成される第1反射膜及び第2反射膜と、
前記第1反射膜及び前記第2反射膜によって囲まれるように前記溝部内に形成された半導体素子と
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記溝部内において前記第1反射膜及び前記第2反射膜上に形成された下地部を更に備え、
前記下地部の上面は、前記基板の基板面に沿った平坦面であり、
前記半導体素子は、前記平坦面上に形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記半導体素子は、前記交差方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域を備え、前記第1画素電極及び第2画素電極のうち一方の画素電極に電気的に接続され、該一方の画素電極をスイッチング制御するスイッチング素子であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の電気光学装置を具備してなること
を特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−198762(P2009−198762A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39756(P2008−39756)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】