説明

電気加熱式触媒の異常判定装置

【課題】プラグインハイブリッド車両に設けられたEHCの異常判定を適切に行うことが可能な電気加熱式触媒の異常判定装置を提供する。
【解決手段】電気加熱式触媒の異常判定装置は、外部充電装置を外部電源に接続することでバッテリの充電を行うプラグインハイブリッド車両に適用される。異常判定手段は、外部充電装置が外部電源に接続されている際に、電気加熱式触媒(EHC)の異常判定を行う。これにより、安定した電力によりEHCへの通電を行うことができると共に、EV走行性能を低下させることなく異常判定を行うことができる。また、停車中に異常判定を行うことで、EHC温度が低い状態から通電による大きな温度変化を得ることができるため、高分解能で異常判定を行うことが可能となると共に、通電以外の外乱(例えば走行風によるEHCの温度の低下など)を排除することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグインハイブリッド車両の排気通路上に設けられた電気加熱式触媒に対して異常判定を行う技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気通路上に配設された電気加熱式触媒(以下、「EHC(Electrically Heated Catalyst)」とも呼ぶ。)の異常判定を行う技術が提案されている。例えば、特許文献1には、EHCの通電時における触媒温度、触媒抵抗、消費電力などに基づいて、EHCの異常判定を行う技術が提案されている。また、特許文献2には、EHCが設けられたハイブリッド車両が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−61048号公報
【特許文献2】特開平11−210448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、家庭用電源などの外部電源から充電した電力を動力として使用するプラグインハイブリッド車両が開発されている。ここで、このようなプラグインハイブリッド車両に設けられたEHCに対して異常判定を行う場合、以下のような問題・課題が想定される。
【0005】
プラグインハイブリッド車両では、ドライバによる走行条件に合わせてバッテリの電力に出力変化が生じる傾向にある。そのため、異常判定を行うためにEHCへ安定した電力を確保することができずに、異常判定の精度保証が困難となり、誤判定が生じてしまう場合がある。このような誤判定などを防止するために、走行用に用いるバッテリ出力に制限をかけることによって、異常判定中の安定した電力の確保を行うことが考えられる。しかしながら、こうすると、異常判定を行うためにバッテリに蓄えた走行用のエネルギーを消費してしまうため、EV走行性能が悪化してしまったり、エンジンへの負荷増大によってエネルギー効率が悪化してしまったりすることが考えられる。また、プラグインハイブリッド車両では、EV走行性能の拡大がそもそもの目的であるので、バッテリの電力はEV走行に優先的に使用される傾向にある。そのため、EHCの異常判定のための電力が確保されずに、異常判定の実行頻度が低下してしまうことが考えられる。
【0006】
一方、車両走行中は、様々な条件により、バッテリ電力を用いたモータによるEV走行、エンジン起動を伴ったHV走行などが切り替えられるため、EHCの温度を一定に保つことが困難であると言える。また、走行風などによる外乱影響への配慮を考えると、EHCの異常判定の処理自体が煩雑になる傾向にある。更に、このような場合において異常判定の精度の確保を優先しようとすると、限られた条件でしか異常判定が実行されなくなり、異常判定の実行頻度が低下する傾向にある。
【0007】
なお、上記した特許文献1及び2には、プラグインハイブリッド車両に設けられたEHCの異常判定を適切に行うことについて記載されていない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、プラグインハイブリッド車両に設けられたEHCの異常判定を適切に行うことが可能な電気加熱式触媒の異常判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点では、外部充電装置を外部電源に接続することでバッテリの充電を行うプラグインハイブリッド車両に設けられた電気加熱式触媒の異常判定装置は、前記外部充電装置が前記外部電源に接続されている際に、前記電気加熱式触媒に対する異常判定を行う異常判定手段を備える。
【0010】
上記の電気加熱式触媒の異常判定装置は、燃料の燃焼によって作動するエンジンとバッテリに充電された電力を利用して作動するモータとを備え、外部充電装置を介して外部電源からバッテリに充電できるように構成されたプラグインハイブリッド車両に好適に利用される。具体的には、異常判定手段は、外部充電装置が外部電源に接続されている際に、電気加熱式触媒(EHC)に対する異常判定を行う。即ち、異常判定手段は、車両が停車中で外部充電装置が外部電源に接続されている際に、EHCに対する異常判定を行う。これにより、安定した電力によりEHCへの通電を行うことができると共に、EV走行性能を低下させることなく異常判定を行うことができる。また、停車中に異常判定を行うことで、EHCの温度が低い状態からEHCへの通電による大きな温度変化を得ることができるため、通電によるEHCにおける機能の診断が高い分解能で精密に実施することが可能となる。加えて、停車時に実施することで、EHCの温度変化についても、通電以外の外乱(例えば、走行風によるEHCの温度の低下など)を排除することが可能となる。以上より、電気加熱式触媒の異常判定装置によれば、EV走行性能の低下を回避しつつ、高精度且つ高分解能で、誤判定を発生させることなくEHCの異常判定を行うことが可能となる。
【0011】
上記の電気加熱式触媒の異常判定装置の一態様では、前記異常判定手段は、前記外部電源からの電力を前記電気加熱式触媒に対して通電することで、前記異常判定を行う。この態様では、外部電源からの電力を外部充電装置を介してEHCに対して直接通電することで、異常判定を行う。これにより、極めて安定した電力によりEHCへの通電を行うことが可能となる。
【0012】
上記の電気加熱式触媒の異常判定装置の他の一態様では、前記異常判定手段は、前記外部電源からの電力を前記バッテリを介して前記電気加熱式触媒に対して通電することで、前記異常判定を行う。
【0013】
上記の電気加熱式触媒の異常判定装置の他の一態様では、前記外部電源から前記電気加熱式触媒への通電と、前記バッテリから前記電気加熱式触媒への通電との切り替えを行う切り替え手段を更に備える。
【0014】
この態様では、切り替え手段は、EHCへの通電を、外部充電装置から行うのか(言い換えると外部電源から行うのか)、或いはバッテリから行うのかを切り替える。例えば、切り替え手段は、車両の走行中においてエンジンからの排気ガスを浄化すべき状況で、EHCによって排気ガスを適切に浄化させるために、バッテリからEHCへ通電されるように切り替えを行う。また、切り替え手段は、停車中で外部充電装置が外部電源に接続されている状況において、EHCの異常判定を行うために、外部電源からEHCへ通電されるように切り替えを行う。
【0015】
上記の電気加熱式触媒の異常判定装置の他の一態様では、前記異常判定手段は、前記バッテリの充電が完了した後に、前記異常判定を行う。これにより、バッテリの充電を確実に完了させてから異常判定を行うことができる。
【0016】
上記の電気加熱式触媒の異常判定装置の他の一態様では、前記異常判定手段は、前記電気加熱式触媒が所定温度以下まで冷却された後に、前記異常判定を行う。これにより、EHCへの通電により、異常判定の精度が確保された温度変化(発熱量)が得られる条件にて、異常判定を行うことができる。
【0017】
上記の電気加熱式触媒の異常判定装置において好適には、前記異常判定手段は、前記電気加熱式触媒に通電した際における当該電気加熱式触媒の作動状態に基づいて、前記異常判定を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
[全体構成]
まず、図1を参照して、本実施形態に係るプラグインハイブリッド車両の構成を説明する。図1は、本実施形態に係るプラグインハイブリッド車両50の要部の構成を示した概念図である。
【0020】
プラグインハイブリッド車両50は、主に、ハイブリッドECU1と、エンジンECU2と、モータECU3と、エンジン(内燃機関)4と、モータ5と、減速機6と、駆動輪7と、動力分配機構8と、ジェネレータ9と、インバータ10と、バッテリ11と、外部充電装置12と、切り替えリレー13と、排気通路14と、電気加熱式触媒(EHC)15と、を備える。
【0021】
エンジン4は、燃焼室内で空気と燃料との混合気を燃焼させることによって動力を発生させる。エンジン4は、エンジンECU2との間で、制御信号を送受信することにより制御が行われる。動力分配機構8は、差動作用を生じるように構成されており、エンジン4より伝達された動力をジェネレータ9とモータ5の回転軸とに分配する。ジェネレータ9は、主に、動力分配機構8より分配された動力が伝達されて発電を行う。インバータ10は、モータECU3により制御され、モータ5、ジェネレータ9、バッテリ11間で電力の授受を行う。基本的には、インバータ10は、ジェネレータ9で発電された電力のモータ5やバッテリ11への印加、或いはバッテリ11に充電された電力のモータ5への印加を選択的に行う。モータ5は、インバータ10を介して供給される電力によりプラグインハイブリッド車両50における駆動力を発生する。また、モータ5は、制動時に回生運転を行うことで発電する。減速機6は、モータ5及び/又はエンジン4から伝達された動力を減速して、当該減速した動力をドライブシャフト7aを介して駆動輪7に伝達する。
【0022】
バッテリ11は、モータ5やプラグインハイブリッド車両50内に設けられた種々の電気機器(不図示)を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。具体的には、バッテリ4は、外部充電装置12が外部電源(不図示)に接続された状態で、当該外部電源から電力の供給を受けることによって充電される。バッテリ11は、ハイブリッドECU2との間で、制御信号を送受信することにより制御が行われる。例えば、ハイブリッドECU2は、バッテリ11の充電量(SOC)を検出する。外部充電装置12は、外部電源からの電力をバッテリ11に充電可能に構成されると共に、外部電源に接続されているか否かを判定する機能を備える。例えば、外部充電装置12は、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)が可能に構成されている。
【0023】
エンジン4での燃焼によって発生した排気ガスは、図1中の破線矢印で示すように、排気通路14を流れていく。排気通路14には、上流側から順に、空燃比を検出するA/Fセンサ17、排気ガスを浄化可能に構成されたEHC15、排気ガス中の酸素濃度を検出するOセンサ18が設けられている。具体的には、EHC15は、排気ガス中のNOxやSOxなどを浄化可能な触媒や、通電されることで触媒を加熱可能な電気ヒータなどを備える。例えば、EHC15は、通電されることによって、排気ガスに対する最適な浄化性能が得られる温度まで昇温される。また、EHC15には、EHC15の温度を検出する温度センサ16が設けられている。なお、温度センサ16、A/Fセンサ17、及びOセンサ18が検出した検出信号は、エンジンECU2に供給される。
【0024】
更に、EHC15は、電源ライン19a及び切り替えリレー13を介して電力が通電される。当該電源ライン19aには、EHC15への通電電力量を検出可能に構成された電流センサ19が設けられている。電流センサ19は、検出した通電電力量に対応する検出信号をハイブリッドECU1に供給する。切り替えリレー13は、本発明における切り替え手段に相当し、EHC15と外部充電装置12との接続、及びEHC15とバッテリ11との接続のうちのいずれかを切り替え可能に構成されている。つまり、切り替えリレー13は、EHC15への通電を、外部充電装置12から行うのか(言い換えると外部電源から行うのか)、或いはバッテリ11から行うのかを切り替える。
【0025】
切り替えリレー13は、ハイブリッドECU1から供給される制御信号によって制御される。基本的には、ハイブリッドECU1は、プラグインハイブリッド車両50の走行中において(詳しくは、エンジン4からの排気ガスを浄化すべき状況で)、EHC15によって排気ガスを適切に浄化させるために、バッテリ11からEHC15へ通電が行われるように切り替えリレー13を設定する。つまり、このような状況においては、バッテリ11からの電力をEHC15へ通電してEHC15を加熱することによって、EHC15によって排気ガスを浄化させる。これに対して、ハイブリッドECU1は、プラグインハイブリッド車両50が停車中で、且つ外部充電装置12が外部電源に接続されている状況において、EHC15の異常判定を行うために、外部充電装置12からEHC15へ通電が行われるように切り替えリレー13を設定する。つまり、このような状況においては、外部電源からの電力をEHC15に対して直接通電することで、EHC15の異常判定を行う。詳しくは、EHC15に通電した際のEHC15の発熱量(温度上昇量)に基づいて、EHC15の異常判定を行う。
【0026】
ハイブリッドECU1、エンジンECU2、及びモータECU3(以下では、これらをまとめて単に「ECU30」とも呼ぶ。)は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、プラグインハイブリッド車両50内の各構成要素に対して制御を行う電子制御ユニットである。具体的には、ECU30は、信号を送受信することによって協調して制御を行う。本実施形態では、ECU30は、本発明における電気加熱式触媒の異常判定装置に相当し、EHC15に対する異常判定を行う異常判定手段として機能する。
【0027】
[EHCの異常判定方法]
次に、本実施形態に係るEHC15の異常判定方法について具体的に説明する。本実施形態では、ECU30は、プラグインハイブリッド車両50が停車中で、且つ外部充電装置12が外部電源に接続されている際に、EHC15に対する異常判定を行う。つまり、外部電源からの電力を外部充電装置12を介してEHC15に対して直接通電することで、異常判定を行う。より具体的には、ECU30は、バッテリ11の充電が完了した後であって、且つEHC15が所定温度以下まで冷却された後に、EHC15と外部充電装置12とが接続されるように切り替えリレー13を切り替えることによって、外部電源からEHC15への通電を開始する。こうするのは、バッテリ11の充電を確実に完了させてから異常判定を行うため、及び異常判定の精度が確保された温度変化(発熱量)がEHC15への通電によって得られる条件にて異常判定を行うためである。
【0028】
そして、ECU30は、このようにEHC15へ通電を行っている際に、電流センサ19からEHC15の通電電力量を取得すると共に、温度センサ16からEHC15の温度(以下、「EHC温度」と呼ぶ。)を取得する。この後、ECU30は、EHC15の通電電力量における積算値(以下、「EHC積算通電電力量」と呼ぶ。)が所定値に到達した際に、EHC15への通電を終了する。この際に、ECU30は、取得されたEHC温度により、EHC積算通電電力量に応じたEHC15の発熱が得られているか否かを判定することによって、具体的にはEHC15の発熱量(温度上昇量)が所定値以上であるか否かを判定することによって、EHC15の異常判定を行う。この場合、ECU30は、EHC15の発熱量が所定値以上である場合にはEHC15は正常であると判定し、EHC15の発熱量が所定値未満である場合にはEHC15は異常であると判定する。
【0029】
このように、本実施形態によれば、外部電源からEHC15へ通電することによって異常判定を行うことにより、極めて安定した電力によりEHC15への通電を行うことができると共に、EHC15への通電によるバッテリ11の電力低下を回避することができる。つまり、EHC15の異常判定を極めて安定した条件において実行することができると共に、EV走行性能を低下させることなく異常判定を行うことができる。また、プラグインハイブリッド車両50の停車中に異常判定を行うことで、EHC温度が低い状態からEHC15への通電による大きな温度変化を得ることができ、通電によるEHC15における機能の診断が高い分解能で精密に実施することができる。加えて、停車時に実施することで、EHC15の温度変化についても、通電以外の外乱(例えば走行風によるEHC温度の低下など)を極力排除することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るEHC15の異常判定方法によれば、EV走行性能の低下を回避しつつ、高精度且つ高分解能で、誤判定を発生させることなくEHC15の異常判定を行うことが可能となる。
【0031】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るEHC15の異常判定処理について説明する。図2は、EHC15の異常判定処理を示すフローチャートである。この処理は、主としてECU30によって実行され、所定の周期で繰り返し実行される。
【0032】
まず、ステップS101では、ECU30は、プラグインハイブリッド車両50が停車中であるか否かを判定する。具体的には、ECU30は、エンジン4、モータ5、及び駆動輪7の状態に基づいて、プラグインハイブリッド車両50が停車中であるか否かを判定する(言い換えるとソーク中であるか否かを判定する)。停車中である場合(ステップS101;Yes)、処理はステップS101に進み、停車中でない場合(ステップS101;No)、処理は当該フローを抜ける。
【0033】
ステップS102では、外部充電装置12が外部電源に接続されているか否かを判定する。外部電源に接続されている場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進み、外部電源に接続されていない場合(ステップS102;No)、処理は当該フローを抜ける。
【0034】
ステップS103では、ECU30は、バッテリ11の充電が完了しているか否かを判定する。例えば、ハイブリッドECU2がバッテリ11の充電量に基づいて判定を行う。このような判定を行うのは、バッテリ11の充電を確実に完了させてからEHC15の異常判定を行うためである。充電が完了している場合(ステップS103;Yes)、処理はステップS104に進む。これに対して、充電が完了していない場合(ステップS103;No)、処理はステップS102に戻る。つまり、バッテリ11の充電が完了するまで、EHC15の異常判定を実行しない、即ちEHC15への通電を開始しない。
【0035】
ステップS104では、ECU30は、EHC温度が所定温度以下まで冷却されているか否かを判定する。当該所定温度は、EHC15への通電によって異常判定精度が確保された温度変化(発熱量)が得られるような、異常判定の開始時におけるEHC温度に相当する。つまり、ステップS104では、EHC15への通電による十分な温度変化が得られる条件が成立しているかを判定している。EHC温度が所定温度以下である場合(ステップS104;Yes)、処理はステップS105に進む。これに対して、EHC温度が所定温度より高い場合(ステップS104;No)、処理はステップS102に戻る。つまり、EHC温度が所定温度以下となるまで、EHC15の異常判定を実行しない、即ちEHC15への通電を開始しない。
【0036】
ステップS105では、ECU30は、EHC15への通電を開始する。具体的には、ハイブリッドECU1が、EHC15と外部充電装置12とが接続されるように切り替えリレー13を切り替えることによって、外部電源からEHC15への通電を開始する。即ち、EHC15とバッテリ11との接続から、EHC15と外部充電装置12との接続へ切り替えリレー13を切り替えることで、EHC15への通電を開始する。そして、このようにEHC15への通電を開始した後に、ECU30は、電流センサ19からEHC15に対する通電電力量を取得すると共に、温度センサ16からEHC温度を取得する。以上の処理が終了すると、処理はステップS106に進む。
【0037】
ステップS106では、ECU30は、EHC15への通電電力量の積算値(EHC積算通電電力量)が所定値に到達したか否かを判定する。当該所定値は、EHC15への通電による十分な温度変化(言い換えると十分なEHC15の発熱量)が得られるような通電電力量の積算値に相当する。EHC積算通電電力量が所定値に到達した場合(ステップS106;Yes)、処理はステップS107に進む。この場合には、ECU30は、EHC15への通電を終了する(ステップS107)。そして、処理はステップS108に進む。これに対して、EHC積算通電電力量が所定値に到達していない場合(ステップS106;No)、処理はステップS105に戻る。この場合には、ECU30は、EHC積算通電電力量が所定値に到達するまで、EHC15への通電を継続すると共に、EHC15の通電電力量及びEHC温度を繰り返し取得する。
【0038】
ステップS108では、ECU30は、EHC15の異常判定を行う。具体的には、ECU30は、ステップS105で取得されたEHC温度により、EHC15の発熱量(温度上昇量)が所定値以上であるか否かを判定する。当該所定値は、EHC15が正常である場合における、EHC積算通電電力量に対応するEHC15の発熱量に基づいて設定されている。つまり、ステップS108では、EHC積算通電電力量に応じたEHC15の発熱が得られているか否かを判定することによって、EHC15の異常判定を行っている。
【0039】
EHC15の発熱量が所定値以上である場合(ステップS108;Yes)、処理はステップS109に進む。この場合には、ECU30は、EHC15は正常であると判定する(ステップS109)。そして、処理は当該フローを抜ける。これに対して、EHC15の発熱量が所定値未満である場合(ステップS108;No)、処理はステップS110に進む。この場合には、ECU30は、EHC15は異常であると判定する(ステップS110)。そして、処理は当該フローを抜ける。
【0040】
以上のEHC15の異常判定処理によれば、EV走行性能の低下を回避しつつ、高精度且つ高分解能で、誤判定を発生させることなくEHC15の異常判定を行うことが可能となる。
【0041】
[変形例]
上記では、外部電源からの電力を外部充電装置12を介してEHC15に対して直接通電することで異常判定を行う例を示したが、これに限定はされない。他の例では、外部電源からの電力をバッテリ11を介してEHC15に対して通電することで、EHC15の異常判定を行うことができる。つまり、プラグインハイブリッド車両50が停車中で、且つ外部充電装置12が外部電源に接続であれば、外部電源から一旦バッテリ11に蓄電された電力をEHC15に対して通電することで、異常判定を行っても良い。
【0042】
また、上記では、バッテリ11の充電が完了した後にEHC15の異常判定を行う例を示したが、これに限定はされない。他の例では、異常判定についての所定の実行頻度が満たされていない場合には、バッテリ11の充電が完了する前に異常判定を行うことができる。例えば、バッテリ11の充電を行う開始する前に、異常判定を行うことができる。更に他の例では、バッテリ11の充電が完了していなくても、EHC15が所定温度以下まで冷却された時点で、異常判定を行うことができる。この場合、EHC15が所定温度以下まで冷却されるまでバッテリ11の充電を行い、EHC15が所定温度以下まで冷却された後に異常判定を行い、当該異常判定が終了した後にバッテリ11の充電を再開する。
【0043】
また、上記では、外部電源からの電力を外部充電装置12を介してEHC15に対して直接供給する構成を示したが(図1参照)、EHC15の特性に応じて外部電源からの供給電圧が任意に選択できるような装置を追加しても良い。つまり、外部電源からの電圧を昇降圧などして、EHC15に対して供給しても良い。
【0044】
更に、上記では、EHC15の発熱量が所定値以上であるか否かを判定することによって(言い換えるとEHC積算通電電力量に応じた発熱が得られているか否かを判定することによって)、EHC15の異常判定を行う例を示したが、これに限定はされない。つまり、電流センサ19から取得されたEHC15の通電電力量、及び温度センサ16から取得されたEHC温度を、EHC15の作動状態として用いることに限定はされない。他の例では、EHC15の触媒抵抗や触媒消費電力などをEHC15の作動状態として用いて、異常判定を行うことができる。また、EHC温度を直接検出せずに、電圧値や電流値などからEHC温度を演算して求めても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態によるプラグインハイブリッド車両の概略構成を示す。
【図2】EHCの異常判定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 ハイブリッドECU
2 エンジンECU
3 モータECU
4 エンジン
5 モータ
7 駆動輪
8 動力分配機構
9 ジェネレータ
10 インバータ
11 バッテリ
12 外部充電装置
13 切り替えリレー
14 排気通路
15 電気加熱式触媒(EHC)
16 温度センサ
19 電流センサ
30 ECU
50 プラグインハイブリッド車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部充電装置を外部電源に接続することでバッテリの充電を行うプラグインハイブリッド車両に設けられた電気加熱式触媒の異常判定装置であって、
前記外部充電装置が前記外部電源に接続されている際に、前記電気加熱式触媒に対する異常判定を行う異常判定手段を備えることを特徴とする電気加熱式触媒の異常判定装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記外部電源からの電力を前記電気加熱式触媒に対して通電することで、前記異常判定を行う請求項1に記載の電気加熱式触媒の異常判定装置。
【請求項3】
前記異常判定手段は、前記外部電源からの電力を前記バッテリを介して前記電気加熱式触媒に対して通電することで、前記異常判定を行う請求項1に記載の電気加熱式触媒の異常判定装置。
【請求項4】
前記外部電源から前記電気加熱式触媒への通電と、前記バッテリから前記電気加熱式触媒への通電との切り替えを行う切り替え手段を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気加熱式触媒の異常判定装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、前記バッテリの充電が完了した後に、前記異常判定を行う請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気加熱式触媒の異常判定装置。
【請求項6】
前記異常判定手段は、前記電気加熱式触媒が所定温度以下まで冷却された後に、前記異常判定を行う請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気加熱式触媒の異常判定装置。
【請求項7】
前記異常判定手段は、前記電気加熱式触媒に通電した際における当該電気加熱式触媒の作動状態に基づいて、前記異常判定を行う請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気加熱式触媒の異常判定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−196510(P2009−196510A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40841(P2008−40841)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】