説明

電気自動車用充電ステーションの広域案内システム

【課題】電気自動車の充電ステーションを案内する広域案内システムの提供。
【解決手段】電気自動車の位置情報を含む走行情報及び電池の状態を受信する自動車情報収集部と、速度情報と電池情報の時間変化とに基づいて残走行可能距離を算出する走行距離計算部と、位置情報から残走行可能距離内にある充電ステーションを抽出する充電ステーション抽出部と、充電ステーションのうち少なくとも充電ステーションの稼働状況を示す稼働情報を受信する充電ステーション情報収集部と、稼働情報から所定時間後の稼働状況である補正稼働状況情報を作成する補正稼働状況情報作成部と、充電ステーション毎に電気自動車が到着するまでの到着時刻情報を作成する特定充電ステーション到着時刻算出部と、充電ステーションに対応する到着時刻情報、及び該特定充電ステーション及び該到着時刻情報に対応する補正稼働状況情報を電気自動車の運転者に通知する送信部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用充電ステーションの案内システムに関し、特に、車両に搭載された電池によってモータを駆動して走行する電気自動車を充電ステーションへ案内するための広域案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、車両に搭載された電池でモータを駆動して走行する。この電池の性能及びコストの問題から、現状では、一度の充電で走行できる距離が一般的な液体燃料自動車(ガソリン車、ディーゼル車、及び、液化天然ガス車など)の一度の燃料供給で走行できる距離に比べて短い。そこで電池への充電をこまめに行い得るよう、電気自動車用の充電ステーションの数を増やすインフラ整備が進められる。しかしながら、液体燃料自動車から電気自動車への移行過渡期においては充電ステーションの数は十分ではなく、インフラ整備と平行して、電池切れの心配のないよう電気自動車をいつでも最寄りの充電ステーションへと案内できる案内システムが求められる。
【0003】
電気自動車用の充電ステーションでは、電池への充電量にもよるが、一般的に、数十分から数時間程度の充電時間を必要とする。つまり、電気自動車が最寄りの充電ステーションへ案内されても、他の電気自動車が充電中であれば充電スペース外で相当な時間だけ待たされ、場合によっては、充電スペースに入場する前に電池切れを起こしてしまう可能性もある。そこで上記した案内システムにおいて、充電ステーションの充電スペースの空き状況を確認した上で電気自動車を充電ステーションへと案内することが求められる。
【0004】
ところで、充電ステーションは、新たに建設、若しくは、従来の液体燃料自動車に燃料を供給するガソリンスタンドなどの設備変更をして建設されるだけでなく、充電時間が長くかかることから、自動車を駐車するための既存スペース、例えば、時間貸し駐車場やスーパーの駐車場などに充電器を設けて充電ステーションとすることも検討されている。特に、都市部では新たな充電ステーションの建設のための場所を確保することは難しく、このような充電ステーションが多くなると予測される。
【0005】
上記した時間貸し駐車場に充電器を設けたような充電ステーションでは、空き駐車スペースがすなわち充電サービスを即時に提供可能な充電スペースとなる。つまり、駐車スペースの空き情報を案内する公知のシステムは、充電ステーションの空き状況を確認して電気自動車を充電ステーションへ案内するシステムとなり得る。例えば、特許文献1及び2では、駐車スペースの空き情報を通信システムを介して自動車の運転者に通知するシステムが開示されている。
【0006】
また、充電ステーションの数が充分でない状況の中では、より広域に充電ステーションの空き状況などの情報を電気自動車の運転者に伝えられることが好ましい。そこで電気自動車の走行している最寄りの充電ステーションの情報を案内するだけでなく、電気自動車の電池の残容量に応じた走行可能距離を算出し、この走行可能距離内に存在する充電ステーションの場所を抽出し、電気自動車の運転者に該充電ステーションの情報を提供する広域案内システムも知られている。
【0007】
例えば、特許文献3では、このような機能を有する通信サーバ及び広域案内システムが開示されている。通信サーバは、通信ネットワークを介して電気自動車の位置情報及び電池の残容量を受信すると、該電気自動車の平均走行距離から走行可能な距離を算出し、電気自動車の位置から走行可能な距離内にある充電ステーションを抽出する。その上で、該充電ステーションから得た稼働状況の情報とともにこれを該電気自動車に返信して、該充電ステーションへ自動車を案内するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−110312号公報
【特許文献2】特開2009−187346号公報
【特許文献3】特開2007−148590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に開示の広域案内システムの如く、現時点での充電ステーションの稼働状況を電気自動車の運転者に通知したとしても、充電ステーションに到達する前にその稼働状況、例えば、充電スペースの空き状況などは変化してしまう場合も多い。特に、電気自動車の充電ステーションに到達するまでの時間が長ければ長くなるほど、稼働状況は変化しやすい。しかも上記したように、充電ステーションの空きスペースは、一度、埋まってしまうと、次に空くまでに相当の時間がかかる。故に、電気自動車の走行可能な距離内の広域の情報を提供したとしても、実質的な実用に耐える信頼性の高い情報は、そのうちの一部、最寄りの充電ステーションの情報だけ、ということになってしまう。
【0010】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電気自動車を電池切れの心配のないよう、広域に亘って充電ステーションの情報を提供しつつ、いつでも最寄りの利用可能な充電ステーションへと案内することのできる広域案内システムの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による広域案内システムは、車両に搭載された電池によってモータを駆動して走行する電気自動車を充電ステーションへ案内するための案内システムであって、前記電気自動車の位置を示す位置情報を含む走行情報及び前記電池の状態を示す電池情報を逐次又は所定時間毎に受信する自動車情報収集部と、前記走行情報のうちの速度情報とこれに対応する前記電池情報の時間変化とに基づいて、前記電池の残容量に対して残走行可能距離を算出する走行距離計算部と、前記位置情報に基づく前記電気自動車の位置から前記残走行可能距離内にある特定充電ステーションを抽出する特定充電ステーション抽出部と、前記充電ステーションのうち少なくとも前記特定充電ステーションの稼働状況を示す稼働情報を逐次又は所定時間毎に受信する充電ステーション情報収集部と、前記稼働情報から所定時間後の稼働状況である補正稼働状況情報を作成する補正稼働状況情報作成部と、前記特定充電ステーション毎に前記電気自動車が到着するまでの時間を計算して到着時刻情報を作成する特定充電ステーション到着時刻算出部と、前記特定充電ステーション、該特定充電ステーションに対応する前記到着時刻情報、及び、該特定充電ステーション及び該到着時刻情報に対応する前記補正稼働状況情報を前記電気自動車の運転者に通知すべく発する送信部と、を有することを特徴とする。
【0012】
かかる発明によれば、充電ステーション毎に電気自動車の到着時刻に対応した補正稼働状況情報を作成できて、より信頼性の高い情報を電気自動車の運転者に与えることができる。つまり、電気自動車を電池切れの心配のないよう、広域に亘って充電ステーションの情報を提供しつつ、いつでも最寄りの利用可能な充電ステーションへと案内することができるのである。
【0013】
上記した発明において、前記走行距離計算部は、前記位置情報の時間変化とこれに対応する前記電池情報の時間変化とに基づいて、前記電池の残容量に対して前記残走行可能距離を算出することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、残走行可能距離の精度を高めることが出来て、より信頼性の高い情報を電気自動車の運転者に与えることができる。
【0014】
更に、上記した発明において、前記特定充電ステーション到着時刻算出部は、前記位置情報の時間変化に基づいて、前記到着時刻情報を作成することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、特定充電ステーションへの到着時刻情報の精度を高めることが出来て、より信頼性の高い情報を電気自動車の運転者に与えることができる。
【0015】
更に、上記した発明において、前記補正稼働状況情報作成部は、前記特定充電ステーションでの現在充電している及び/又は充電を予約している前記電気自動車の充電必要時間から前記補正稼働状況情報を作成することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、特定充電ステーションにおける稼働情報の精度を高めることが出来て、より信頼性の高い情報を電気自動車の運転者に与えることができる。
【0016】
更に、上記した発明において、前記速度情報は、前記電気自動車において算出されることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、位置情報の微分値として得られる速度情報の精度を高めることが出来て、より信頼性の高い情報を電気自動車の運転者に与えることができる。
【0017】
更に、上記した発明において、前記速度情報は、前記位置情報の時間変化に基づいて算出されることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、位置情報だけで速度情報を得られるから、システムを簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による広域案内システムを含むシステム図である。
【図2】図1の一部の詳細を示す図である。
【図3】図1の一部の詳細を示す図である。
【図4】本発明による広域案内システムのフロー図である。
【図5】本発明による広域案内システムのフロー図である。
【図6】本発明による広域案内システムのフロー図である。
【図7】本発明による広域案内システムで行われる計算方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の1つの実施の形態について図1乃至図7を参照して詳細を説明する。
【0020】
まず、システム構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、システム1は、電気自動車30aについて算出される走行可能距離内にある単数若しくは複数の充電ステーション22の情報を与えつつ、これへと案内するシステムである。システム1の中核をなすサーバコンピュータ2と、基地局21及び複数の充電スタンド23との間は、通信回線20によって互いに接続されている。通信回線20には、インターネット回線や電話回線等の既存の通信インフラを使用することができる。
【0022】
基地局21は、後述するように、電気自動車30aに備えられたカーナビゲーションシステム(図示せず)などに含まれる通信機36(図2参照)と無線回線によって接続され、通信回線20を介してサーバコンピュータ2と接続されている。
【0023】
充電スタンド23は、これと近接して駐車させた電気自動車30aの電池31(図2参照)への充電を行う装置である。充電スタンド23は、上記したように、新たに建設される充電ステーション22のみならず、ショッピングセンターの駐車場などを利用した充電ステーション22にも設けられる。通常、充電ステーション22内には、充電スタンド23及びこれに対応した充電スペースを1つの組として、複数が設けられる。図示したように、充電スタンド23は通信回線20に直接、接続されているが、充電ステーション22に備えられた図示しないサーバ装置等に接続されてから間接的に通信回線20に接続されていてもよい。これによれば、1つの充電ステーション22内に複数の充電スタンド23を設ける上で通信回線数を減らし、設備を簡略化でき得る。なお、充電スタンド23の外観等については、図3を用いて後述する。
【0024】
サーバコンピュータ2は記憶装置3、通信装置7、CPU(Central Processing Unit)4、ROM(Read Only Memory)5及びRAM(Random Access Memory)6等を含む。図示しないが、サーバコンピュータ2には、これを管理するためのモニタ装置及びキーボードなどの入出力装置等が接続されている。
【0025】
記憶装置3は、CPU4を介してサーバコンピュータ2に実行させるためのプログラムである自動車情報収集手段11、充電ステーション情報収集手段12、走行距離計算手段13、特定充電ステーション抽出手段14、特定充電ステーション到着時刻算出手段15、補正稼働状況情報作成手段16及び送信手段17を記憶している。更に、記憶装置3は、そのデータベース領域であるデータベース18を含む。このデータベース18には、提携する充電ステーション22のそれぞれの所在地を特定する所在地情報及び設置されている充電スタンド23を特定するスタンド識別符号などが記録されている。また、データベース18には、後述するように電気自動車の走行情報及び電池情報と、充電ステーション22の稼働情報とが随時記録されていく。
【0026】
図2を併せて参照すると、サーバコンピュータ2の自動車情報収集手段11は、走行中の電気自動車30aから後述する走行情報及び電池情報を所定時間間隔で収集し、これらの情報をデータベース18に記録するプログラムからなる。
【0027】
走行情報は、電気自動車30aに搭載されたGPS37から得られる位置情報と、モータ32の回転出力などに基づく速度計38から得られる速度情報とを含む。速度情報は、位置情報の微分値として得られるが、位置情報と別個に求めることで速度情報の精度を高め得る。その一方、速度情報を位置情報の時間変化から求めることで、電気自動車30aからサーバコンピュータ2へ送信すべき情報を減じることが出来て、システム1を簡略化できる。
【0028】
電池情報は、残容量計33によって計測される電池31の残容量の情報である。なお、詳細については、後述する。
【0029】
充電ステーション情報収集手段12は、充電スタンド23から若しくは充電ステーション22の図示しないサーバから充電ステーション22の稼働情報を所定時間間隔で収集し、これらの情報をデータベース18に記録するプログラムからなる。この稼働情報には、充電ステーション22の営業の有無に関する情報、充電スタンド23の充電スペースの空き情報、及び、充電中の電気自動車の充電情報、例えば、充電の完了予測時刻情報などが含まれる。
【0030】
走行距離計算手段13は、自動車情報収集手段11により収集されデータベース18に記録された電池情報及び走行情報をデータベース18より呼び出して、電池31の残容量において電気自動車30aが走行可能な距離である残走行可能距離を算出するプログラムからなる。なお、残走行可能距離の算出の仕方については後述する。
【0031】
特定充電ステーション抽出手段14は、電気自動車30aの位置情報により特定される位置から上記した走行距離計算手段13によって算出される残走行可能距離内にある充電ステーション22を上述したようにデータベース18から抽出するプログラムからなる。なお、充電ステーション22のうち、特定充電ステーション抽出手段14によって抽出された充電ステーション22を特定充電ステーションと便宜的に称することにする。つまり、特定充電ステーションは電気自動車30aが現在地から電池31の残容量で走行できる距離内にある充電ステーション22である。
【0032】
特定充電ステーション到着時刻算出手段15は、特定充電ステーション抽出手段14にてデータベース18から抽出された特定充電ステーションのそれぞれについて到着予定時刻を算出するプログラムからなる。到着予定時刻はデータベース18に記録されている特定充電ステーションの所在地情報と、電気自動車30aの走行情報とを基にして算出される。例えば、位置情報から特定充電ステーションまでの距離を、速度で除することで算出される。かかる速度には、速度計38から得られる速度情報を使用する。
【0033】
補正稼働状況情報作成手段16は、充電ステーション情報収集手段12により収集された稼働情報をもとに、所定時間毎(時刻毎)の稼働状況である補正稼働状況情報を作成するプログラムからなる。補正稼働状況情報には充電ステーション22の営業の有無に関する情報、充電ステーション22に設置された充電スタンド23の充電スペースの空き情報を含む。つまり、補正稼働状況情報作成手段16は、充電ステーション22毎の稼働状況をタイムスケジュールに作成し、データベース18に随時書き換え記録していく。また、かかるタイムスケジュールに、充電の予約に関する情報や、赤外線センサーなどによって得た充電ステーション22内で充電の順番を待つ車両の情報を追加することで、より詳細な補正稼働状況情報を作成し得る。なお、充電ステーション22の充電スタンド23での1台の電気自動車の充電に必要な時間(充電必要時間)については後述する。
【0034】
送信手段17は、通信装置7を介して電気自動車30aに向けて特定充電ステーションの所在地情報、スタンド識別符号、それぞれの特定充電ステーションに対応する到着時刻情報、及び、それぞれの到着時刻情報に対応する補正稼働状況情報などの後述する情報を送信するプログラムからなる。
【0035】
図2に示すように、電気自動車30aは、電池31によりモータ32を駆動して、図示しない動力伝達装置により車輪を回転させて走行する。電気自動車30aには、電池31、モータ32、残容量計33、制御装置35、インターフェース34、通信機36、GPS37及び速度計38が備えられ、さらに、充電に必要な電力を得るための充電コネクタ41及び必要に応じて制御装置35による情報を外部へ取り出すための情報接続端子42が備えられる。なお、後述する電気自動車30b、30cについても同様である。
【0036】
電池31には、公知の充電可能なニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池が使用される。電池31は、後述する残容量計33に接続されて、その残容量を計測できるようになっている。
【0037】
残容量計33は、電池31の充放電電流を計測し、電流を積算して得られる電気量を満充電の状態の残容量(満充電容量)から減算することで残容量を算出する。満充電容量は電池31の劣化により減少するため、かかる方法の場合、満充電容量として設定した値を逐次補正する。なお、電池31の残容量の計測は、公知の他の方法によってもよい。残容量計33の出力は、制御装置35へ接続されている。
【0038】
制御装置35は、上記した残容量計33のほか、インターフェース34、通信機36、GPS37及び速度計38にそれぞれ接続されている。これにより制御装置35は、プログラムとして組み込まれたデータ抽出手段45を介して、残容量計33から電池31の残容量、GPS37から電気自動車30aの現在位置を特定するための位置情報、速度計38から電気自動車30aの走行速度を適宜得られる。
【0039】
インターフェース34は、制御装置35の制御情報を表示させるための表示装置と、必要に応じて電気自動車30aの運転者の操作によって入力される情報を受付ける入力装置とを含む。
【0040】
通信機36は、無線回線によって基地局21に接続され通信回線20を介してサーバコンピュータ2と双方向通信を行う装置である。通信機36は、制御装置35で加工された情報をサーバコンピュータ2に向けて送信し、又はサーバコンピュータ2からの情報を受信するための装置であり、図示しないカーナビゲーションシステムなどに含まれて電気自動車30aに搭載されている。
【0041】
GPS(Global Positioning System)37は、電気自動車30aの現在位置を測定し、これを特定する情報を与える装置である。GPS37は、通信機36と同様に、図示しないカーナビゲーションシステムなどに含まれて電気自動車30aに搭載されている。
【0042】
速度計38は、モータ32や動力伝達装置などの回転数を元に電気自動車30aの瞬間の走行速度を算出する計測器である。
【0043】
充電コネクタ41は電池31に接続されており、充電スタンド23で電池31を充電する際に後述する電力ケーブルが接続される。
【0044】
情報接続端子42は、制御装置35に対して情報を入出力する端子であり、後述する充電スタンド23の情報伝達ケーブルを接続することで、制御装置35がデータ抽出手段45によって抽出する情報を充電スタンド23に出力できる。
【0045】
図3を参照すると、充電スタンド23は、上記したように充電ステーション22内に充電スペースと組にして設けられる。充電スタンド23は、対応する充電スペースに停車した電気自動車30aの電池31に充電に必要な電力を供給し、その対価として料金の支払を受け付ける充電サービス事業に利用される。充電スタンド23は、ディスプレイ24、料金支払口25、充電用の電力を与えるための電力ケーブル26及び情報通信用の情報伝達ケーブル27を備える。なお、充電スタンド23は、電力ケーブル26を設けずに、非接触型の電磁誘導等による充電スタンドとすることもできる。
【0046】
ディスプレイ24は、駐車した電気自動車の運転者等に必要な情報を表示する画面であり、且つ、同運転者等の操作を受付ける操作盤の機能を兼ね備えたタッチパネル式の液晶表示装置である。充電サービスの提供にあたり、運転者等の所望する充電条件を設定するための各種操作を受付ける。例えば、電池31への充電にあたり、料金で充電量を指定したり、所望する充電容量で指定したり、若しくは、フル充電(満充電)を指定したりすることができる。
【0047】
料金支払口25は、充電サービスに対して支払われる料金を精算するためのクレジットカード、電子マネー、現金等による支払を受付ける読取り装置などからなる。
【0048】
電力ケーブル26は、充電スタンド23に接続された図示しない電源から電力を電池31に供給するための充電用のケーブルであり、電気自動車30aの電池31に接続されたコネクタ41に接続できる。
【0049】
情報伝達ケーブル27は、電気自動車30aの情報接続端子42に接続されて、電気自動車30aの制御装置35から情報を受ける。つまり、充電スタンド23は、情報伝達ケーブル27の接続を介して電気自動車30aの情報を抽出できる。
【0050】
次に、図1及び図2を適宜参照しつつ、上記したシステムの動作について説明する。
【0051】
まず、図4に示すように、サーバコンピュータ2は、走行中の電気自動車30aの走行情報及び電池情報を収集するため、自動車情報収集手段11を所定間隔毎に実行する。
【0052】
サーバコンピュータ2の自動車情報収集手段11は、走行中の電気自動車30aに走行情報及び電池情報を送ることを求める自動車情報要求信号をその通信機36に向けて送信する(S1)。
【0053】
電気自動車30aの通信機36は、この自動車情報要求信号を受信すると制御装置35に信号を送り、制御装置35はこれに応じてデータ抽出手段45により走行情報及び電池情報の収集処理を開始する(S2)。
【0054】
データ抽出手段45は、GPS37から得られる位置情報と、速度計38から得られる速度情報とを走行情報として、また残容量計33から得られる電池31の残容量を電池情報として抽出する。制御装置35は、電気自動車30aを識別するための個体識別符号(ID1)を付してこれら情報を自動車情報としてサーバコンピュータ2に向けて返信する(S3)。
【0055】
サーバコンピュータ2は、個体識別符号(ID1)を付された自動車情報の返信を受けると(S4)、自動車情報収集手段11を介して、これをデータベース18の、例えば、該電気自動車30aの情報履歴としてストアされる領域に書き込ませる(S5)。なお、他の電気自動車30b、30cなどからも所定間隔毎に同様の手順で該電気自動車30b、30cなどを識別するための個体識別符号を付された自動車情報を収集し、それぞれの情報履歴としてストアされる領域に書き込ませていく。
【0056】
また、図5に示すように、サーバコンピュータ2は、上記したような走行中の電気自動車30aの走行情報及び電池情報の収集と平行して、データベース18に登録された提携する充電ステーション22について稼働情報を収集するため、充電ステーション情報収集手段12を所定間隔毎に実行する。
【0057】
サーバコンピュータ2の充電ステーション情報収集手段12は、充電ステーション22の稼働情報を送ることを求める稼働情報要求信号を充電ステーション22の各充電スタンド23(上記したように、図示しないサーバが充電ステーション22に設けられているときにあっては該サーバ)に向けて送信する(S11)。
【0058】
充電ステーション22の各充電スタンド23(若しくは、図示しないサーバ)は、この稼働情報要求信号を受信すると、これに応じて前記したような充電ステーション22の営業の有無に関する情報、充電スタンド23の充電スペースの空き情報、及び、充電中の電気自動車の充電情報、例えば、充電の完了予測時刻情報などを含む稼働情報を収集した上で(S12)、充電スタンド23を識別するための個体識別符号(ID2)を付して稼働情報としてサーバコンピュータ2に向けて返信する(S13)。
【0059】
サーバコンピュータ2は、個体識別符号(ID2)を付された充電スタンド23における充電ステーション22の稼働情報の返信を受けると(S14)、充電ステーション情報収集手段12を介して、これをデータベース18の、例えば、充電ステーション22の情報履歴としてストアされる領域に書き込ませる(S15)。なお、他の充電スタンド23からも所定間隔毎に同様の手順でこれを識別するための個体識別符号を付された稼働情報を収集し、それぞれの情報履歴としてストアされる領域に書き込ませていく。
【0060】
ここで、電気自動車30aの運転者に特定充電ステーションの情報を提供する場合には、例えば、運転者自らがインターフェース34の入力装置を操作し、サーバコンピュータ2から特定充電ステーションの情報を得るのである。
【0061】
詳細には、図6に示すように、運転者自らがインターフェース34の入力装置を操作することにより照会要求信号が制御装置35に送信される(S21)。制御装置35は、これに応じて、データ抽出手段45によって上記した走行情報及び電池情報を抽出し、更に、電気自動車30aを識別するための固体識別符号(ID1)、及び、サーバコンピュータ2に特定充電ステーションを抽出させるための抽出要求信号を与えて、通信機36からサーバコンピュータ2へ向けて送信させる(S22)。
【0062】
サーバコンピュータ2は通信装置7を介して抽出要求信号を受信すると(S23)、走行距離計算手段13によって、受信した電気自動車30aを識別するための個体識別符号(ID1)に対応する走行情報及び電池情報をデータベース18から呼び出し、制御装置35から受信した走行情報及び電池情報と合わせて残走行可能距離を算出する(S24)。なお、残走行可能距離の算出方法については後述する。
【0063】
サーバコンピュータ2は、特定充電ステーション抽出手段14によって、電気自動車30aの残走行可能距離及び位置情報と、データベース18に記録されている充電ステーション22の所在地情報とを照らし合わせて、電気自動車30aが現在地から電池31の残容量で走行できる距離内にある充電ステーション22である特定充電ステーションを抽出する(S25)。
【0064】
また、サーバコンピュータ2は、上記して得た特定充電ステーションのそれぞれについて、特定充電ステーション到着時刻算出手段15によって、位置情報及び速度情報から到着予定時刻を算出して到着時刻情報を作成する(S26)。
【0065】
さらに、サーバコンピュータ2は、補正稼働状況情報作成手段16によって作成された補正稼働状況情報について、データベース18からそれぞれの特定充電ステーションの到着時刻情報に基づいて情報を呼び出す(S27)。補正稼働状況情報は、上記したように、特定充電ステーションへの電気自動車30aの到着予定時刻における充電スタンド23毎の空き予測情報などである。つまり、現在充電中の電気自動車30b及び/又は充電を予約している電気自動車30c(図1参照)が、電気自動車30aの到着予定時刻に充電中であるか否かなどを情報として得られるのである。これにより、特定充電ステーションにおける稼働情報の精度を補正稼働状況情報により高め、より信頼性の高い情報を電気自動車の運転者に与えることができる。
【0066】
ここで充電スタンド23における電気自動車30bの必要充電時間は、充電時に充電スタンド23の情報伝達ケーブル27を電気自動車30bの情報接続端子42に接続して得られる電池情報などから算出される。つまり、充電スタンド23での電池31への充電にあたり、料金で充電容量を指定する場合及び所望する充電容量で指定する場合は、充電速度からこの必要充電時間が計算できる。また、フル充電(満充電)を指定した場合は、電池31の残容量、すなわち、上記した残容量計33で計測される残容量に対して充電速度からこの必要充電時間を計算できる。なお、必要充電時間は、電池情報から算出できるので、上記したと同様に電気自動車30bからサーバコンピュータ2に電池情報を送信しているときは、サーバコンピュータ2においてこれを算出できる。かかる場合、電気自動車の情報接続端子42及び充電スタンド23の情報伝達ケーブルなどを省略できて、システムを簡素化できる。
【0067】
以上の後に、サーバコンピュータ2は、送信手段17によって、それぞれの特定充電ステーションの所在地情報、到着時刻情報及び補正稼働状況情報を電気自動車30aに向けて送信する(S28)。
【0068】
一方、電気自動車30aの制御装置35は、通信機36で受信したそれぞれの特定充電ステーションに対応した所在地情報、到着時刻情報及び補正稼働状況情報を必要に応じてインターフェース34の図示しない表示装置に表示させる(S29)。これにより信頼性の高い情報を電気自動車30aの運転者にインターフェース34を通じて与えることができる。なお、特定充電ステーションの中から充電を行う充電ステーションの選択結果を運転者にインターフェース34から入力させるようにしてもよい。これによれば、充電を行う充電ステーションを選択するだけで自動的に予約を行い得る。
【0069】
以上のように、システム1によれば、運転者は、特定充電ステーションのうちの1つを選択して、これに電気自動車30aを走らせることで、電池31の容量切れを未然に防ぎつつ、充電が可能である。つまり、システム1は、電気自動車30aを電池切れの心配のないよう、広域に亘って充電ステーション22の情報を提供しつつ、いつでも最寄りの利用可能な充電ステーションへと案内することができるのである。
【0070】
ここで、走行距離計算手段13によって残走行可能距離を算出する方法について説明する。
【0071】
図7に示すように、自動車情報収集手段11によって収集された自動車情報のうち、最新の自動車情報を得た時刻をtaとし、現在の時刻をtbとする。図7(A1)に示すように、時刻taと時刻tbの差を、電池31の残容量の時刻taからtbまでの変化量の絶対値で除して、時刻tbの電池31の残容量を乗ずれば、電池31の残容量で走行可能な時間である残走行可能時間が算出される。図7(A2)に示すように、残走行可能時間に現在の速度(tb)を乗ずれば残走行可能距離が算出される。ここで、現在の速度(tb)は、モータ32や動力伝達装置などの回転数を元に速度計38によって算出されている。
【0072】
また、残走行可能距離は図7(B)に示すように算出してもよい。すなわち、時刻tbの位置情報から特定される位置(tb)と時刻taの位置情報から特定される位置(ta)との距離(道のり)を、電池31の電池情報より得られる残容量の時刻taからtbまでの変化量の絶対値で除して、時刻tbの電池31の残容量を乗ずれば、残走行可能距離が算出される。
【0073】
このような、電池情報及び位置情報の時間変化に基づく算出方法によれば、加速及び減速を繰り返す電気自動車30の運転状況に応じた残走行可能距離を算出できるため、残走行可能距離の精度を高めることができ、より信頼度の高い情報を電気自動車30aの運転者に与えることができる。
【0074】
さらに、特定充電ステーション到着時刻算出手段15によって特定充電ステーションへの到着予定時刻を算出する際に、位置情報の時間変化に基づいて平均速度を求めこれを速度情報として算出してもよい。かかる場合においても、残走行可能距離の算出と同様に、加速及び減速を繰り返す電気自動車30の運転状況に応じた到着予定時刻を算出するため、到着予定時刻の精度を高めることができ、より信頼度の高い情報を電気自動車30aの運転者に与えることができる。
【0075】
また、速度情報を、上記したような位置情報の時間変化に基づいて算出すると、位置情報だけで速度情報を得ることができるので、速度計38からの速度情報の抽出を省略し得て、システムを簡略化できる。
【0076】
さらに、速度情報を電気自動車30aの制御装置35によって算出するようにしてもよい。位置情報の微分値として得られる速度情報は、カーナビゲーションシステムに搭載されるジャイロや加速度センサによる補正や運転状況に応じた補正を可能とし、得られる速度情報の精度を高めることが出来て、より信頼性の高い情報を電気自動車30aの運転者に与えることができるのである。
【0077】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれら実施例及び変形例に限定されるものではなく、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0078】
1 システム
2 サーバコンピュータ
3 記憶装置
11 自動車情報収集手段
12 充電ステーション情報収集手段
13 走行距離計算手段
14 特定充電ステーション抽出手段
15 特定充電ステーション到着時刻算出手段
16 補正稼働状況情報作成手段
20 通信回線
22 充電ステーション
23 充電スタンド
30a、30b、30c 電気自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電池によってモータを駆動して走行する電気自動車を充電ステーションへ案内するための広域案内システムであって、
前記電気自動車の位置を示す位置情報を含む走行情報及び前記電池の状態を示す電池情報を逐次又は所定時間毎に受信する自動車情報収集部と、
前記走行情報のうちの速度情報とこれに対応する前記電池情報の時間変化とに基づいて、前記電池の残容量に対して残走行可能距離を算出する走行距離計算部と、
前記位置情報に基づく前記電気自動車の位置から前記残走行可能距離内にある特定充電ステーションを抽出する特定充電ステーション抽出部と、
前記充電ステーションのうち少なくとも前記特定充電ステーションの稼働状況を示す稼働情報を逐次又は所定時間毎に受信する充電ステーション情報収集部と、
前記稼働情報から所定時間後の稼働状況である補正稼働状況情報を作成する補正稼働状況情報作成部と、
前記特定充電ステーション毎に前記電気自動車が到着するまでの時間を計算して到着時刻情報を作成する特定充電ステーション到着時刻算出部と、
前記特定充電ステーション、該特定充電ステーションに対応する前記到着時刻情報、及び、該特定充電ステーション及び該到着時刻情報に対応する前記補正稼働状況情報を前記電気自動車の運転者に通知すべく発する送信部と、を有することを特徴とする広域案内システム。
【請求項2】
前記走行距離計算部は、前記位置情報の時間変化とこれに対応する前記電池情報の時間変化とに基づいて、前記電池の残容量に対して前記残走行可能距離を算出することを特徴とする請求項1記載の広域案内システム。
【請求項3】
前記特定充電ステーション到着時刻算出部は、前記位置情報の時間変化に基づいて、前記到着時刻情報を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の案内システム。
【請求項4】
前記補正稼働状況情報作成部は、前記特定充電ステーションでの現在充電している及び/又は充電を予約している前記電気自動車の充電必要時間から前記補正稼働状況情報を作成することを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の広域案内システム。
【請求項5】
前記速度情報は、前記電気自動車において算出されることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の広域案内システム。
【請求項6】
前記速度情報は、前記位置情報の時間変化に基づいて算出されることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の広域案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102739(P2011−102739A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257364(P2009−257364)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】