電気自動車
【課題】本発明は、衝突時、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくする電気自動車を提供する。
【解決手段】本発明の電気自動車は、車両を駆動する機器で構成されるパワーユニット16と、弾性を有するブッシュ20,35を介して当該パワーユニット16を保持するマウントフレーム30とを有して構成されるパワーマウントユニット15を設け、パワーマウントユニット15を車両前後方向端側に搭載する車体1を設け、パワーユニット15と隣接して車体1の前後方向中央側に搭載された電力源となるバッテリユニット10を設け、衝突時、衝撃荷重が車体1の端部から入力されると、マウントフレーム30を車体から分離させ、パワーマウントユニット15をバッテリユニット10から逃げる方向へ変位させる逃げ手段Tを設ける構成を採用した。同構成により、車両衝突時、パワーユニット15が、バッテリユニット10から逃げて、該バッテリユニット10との衝突を遅らせる。
【解決手段】本発明の電気自動車は、車両を駆動する機器で構成されるパワーユニット16と、弾性を有するブッシュ20,35を介して当該パワーユニット16を保持するマウントフレーム30とを有して構成されるパワーマウントユニット15を設け、パワーマウントユニット15を車両前後方向端側に搭載する車体1を設け、パワーユニット15と隣接して車体1の前後方向中央側に搭載された電力源となるバッテリユニット10を設け、衝突時、衝撃荷重が車体1の端部から入力されると、マウントフレーム30を車体から分離させ、パワーマウントユニット15をバッテリユニット10から逃げる方向へ変位させる逃げ手段Tを設ける構成を採用した。同構成により、車両衝突時、パワーユニット15が、バッテリユニット10から逃げて、該バッテリユニット10との衝突を遅らせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体にパワーマウントユニットを支持する構造を改善した電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車では、信頼性の向上、コストの低減、開発期間の短縮のために、内燃エンジンを搭載する車両の車体を活用して、電動モータなどで構成されたパワーユニットや電力源となるバッテリユニットを搭載する場合がある。具体的には、特許文献1に示されるように車体の前後方向の端部に形成したエンジンルームをそのままパワーユニットルームとして用いてパワーユニットを搭載したり、車体の中央に形成されている客室の床下にバッテリユニットを搭載したりすることが行われている。
【0003】
電気自動車は、上記したように車体の中央と端部とにおいて、機器を搭載するスペースが確保されやすいために、構造上、パワーユニットとバッテリユニットとは、互い隣接した位置関係で搭載されるというレイアウトが強いられやすい。特に電気自動車の航続距離は、搭載されるバッテリの電気的容量に依存する割合が大きく、極力大きなバッテリを搭載したいという要求があるため、隣接したパワーユニットとバッテリユニットとの隙間を大きくとることが困難である。そのため、電気自動車は、パワーユニットとバッテリユニットとが接近することになる。
【0004】
ところで、パワーユニットは、駆動反力に耐えるなどのため、かなり支持剛性を要する。このため、電気自動車では、特許文献1に開示されているようにパワーユニットをブッシュを介してマウントフレームに保持させて、剛性が確保しやすいパワーマウントユニットを得、これを車体の各部に支持することが行われる。具体的には、パワーユニットを保持したマウントフレームの車体前後方向の各端部を、車体のサイドフレームやクロスメンバなど車体の主たる骨格部に締結させて、高い支持剛性を確保することが行われている。
【0005】
ところが、特許文献1のような単に骨格部に、パワーマウントユニットのマウントフレームを締結する構造だと、衝突時、車体の端部から衝撃荷重が加わると、パワーマウントユニットが車体の一緒に、隣接するバッテリユニットへ向って変位する。このため、パワーマウントユニットが、バッテリユニットと衝突しやすい問題がある。
一方、マウントフレームの支持に関して、内燃エンジンを搭載した車両では、特許文献2に開示されているように衝突時に生じるサイドフレームの変形を損なわないよう、サイドフレームの途中部分と締結しているマウントフレームの車幅方向両側の部分をサイドフレームから分離する構造は見られる。
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【特許文献2】特開2007−90965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、内燃エンジンを搭載した車両は、電気自動車のようにバッテリユニットとパワーユニットとを接近させて配置することがないので、特許文献2のようにマウントフレームの前後部は車体に締結される構造となる。
このため、同構造だと、衝突時、パワーマウントユニットは、サイドフレームと共に変位するので、パワーユニットとバッテリユニットとが接近して配置されるような電気自動車に対しては、パワーユニットとバッテリユニットとが衝突しにくくなる効果は全く期待できず、パワーユニットがバッテリユニットと衝突しやすい傾向は解消されない。特に電気自動車は、かなり接近してパワーマウントユニットとバッテリユニットとが隣接して配置される傾向にあるので、この点の改善が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、衝突時、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくする電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、車両を駆動する機器で構成されるパワーユニットと、弾性を有するブッシュを介して当該パワーユニットを保持するマウントフレームとを有して構成されるパワーマウントユニットを設け、パワーマウントユニットを車両前後方向端側に搭載する車体を設け、パワーユニットと隣接して車体の前後方向中央側に搭載された電力源となるバッテリユニットを設け、衝突時、衝撃荷重が車体の端部から入力されると、マウントフレームを車体から分離させ、パワーマウントユニットをバッテリユニットから逃げる方向へ変位させる逃げ手段を設けた。
【0009】
同構成により、車両端部の衝突時、パワーマウントユニットは、バッテリユニットに対し逃げる方向に変位し、バッテリユニットとの衝突を遅らせる。
請求項2に記載の発明は、パワーユニットがバッテリユニットから逃げやすいよう、逃げ手段には、パワーユニットを保持したマウントフレームの車両前後方向のバッテリユニット側の端部を車体に支持する第1支持部と、パワーユニットを保持したマウントフレームの車両前後方向のバッテリユニットとは反対側の端部を車体に支持する第2支持部と、衝突時、衝撃荷重が車体の端部から入力されると、第1支持部で支持されたマウントフレームの端部を車体から分離させ、パワーマウントユニットを第2支持部で支持された地点を支点にバッテリユニットから逃げる方向へ揺動させる揺動手段とを具備した揺動式を採用した。
【0010】
請求項3に記載の発明は、さらに簡単な構造で、バッテリユニットのダメージを抑えられるよう、揺動手段には、第1支持部として、マウントフレームのバッテリ側の端部を、車体に締結させるとともに衝撃荷重が車体の端部から入力されたときブッシュのたわみによって許容される車体とパワーユニットとの相対変位により車体から脱落可能とした脱落可能締結部で構成し、第2支持部として、マウントフレームのバッテリユニットとは反対側の端部を車体に締結させる締結部で構成し、衝撃荷重が車体の端部から入力されると、マウントフレームのバッテリユニット側の端部が、ブッシュのたわみによって許容される車体の強制変位で車体から脱落し、マウントフレームが、締結部に集中する荷重により、バッテリユニットとは反対側の端部を締結した地点を支点に、下側へ揺動変位する構成を採用した。
【0011】
請求項4に記載の発明は、迅速に脱落動作が行われるよう、第1支持部が締結される車体の部位には、車体の前後方向に渡り延びるサイドフレームを用い、第2支持部が締結される車体の部位には、車体の車幅方向に配置されるクロスメンバ部を用いて、衝撃荷重が車体端から脱落可能締結部へ伝わりやすくした。
請求項5に記載の発明は、衝突時、マウントフレームの揺動変位が瞬時に生ずるよう、第1支持部は、複数箇所にし、第2支持部は、1箇所だけにして、パワーマウントユニットの重量ができるだけ第2支持部に集中しやすくした。
【0012】
請求項6に記載の発明は、さらにパワーユニットとの衝突がもたらすバッテリユニットのダメージが抑えられるよう、バッテリユニットには、多数のバッテリモジュールを収容し、バッテリモジュールの荷重を支える、上部が開口したケース本体と、バッテリケース本体の上部を閉塞するケースカバーとを有した構成を採用した。
請求項7に記載の発明は、さらにパワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくする技術が、パワーマウントユニットやバッテリユニットが車体にコンパクトに収まるレイアウトで実現されるよう、パワーマウントユニットは、車体の最後部に形成される荷室のフロア下に搭載し、バッテリユニットは、荷室と隣接して車体に設置されるリヤシート下に搭載する構成を採用した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、車両端部の衝突時、パワーマウントユニットは、バッテリユニットから逃げる方向へ変位するから、パワーユニットとバッテリユニットとの衝突を遅らせることができ、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくできる。
この結果、バッテリユニットから逃げている状況で衝突を終えた場合、バッテリユニットとパワーユニットとの衝突を避けることができる。またパワーユニットがバッテリユニットと衝突する場合であっても、パワーユニットが逃げていることによって衝突に遅れが生じ、その間に車体の各部で衝撃エネルギーの吸収が行われているので、バッテリユニットのダメージは抑えられる。
【0014】
請求項2の発明によれば、マウントフレームが揺動する揺動式構造は、パワーユニットがバッテリユニットから逃げやすい。
請求項3の発明によれば、脱落可能締結部や締結部を用いてマウントフレームを車体に締結するという簡単な構造で、パワーユニットを保持するブッシュの特性を利用して、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくできる。
【0015】
請求項4の発明によれば、サイドフレームおよびクロスメンバは、車体の骨格をなす部材なので、車体の端部から入力される衝撃荷重は、速やかに脱落可能締結部へ伝わり、迅速に脱落動作を行わせることができる。
請求項5の発明によれば、マウントフレームのバッテリユニット側の端部が脱落すると、パワーマウントユニットの重量が、バッテリユニットとは反対側の1箇所の支持部に
集中するので、マウントフレームの揺動変位を瞬時に生じさせることができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、たとえパワーユニットがバッテリユニットに衝突しても、パワーユニットが衝突する地点は、低強度のケースカバーでなく、高強度をもつ下側のケース本体と当たるので、バッテリユニット自身を有効活用して、バッテリユニットのダメージを抑えることができる。
請求項7の発明によれば、荷室のフロア下にパワーユニットを搭載し、リヤシート下にバッテリユニットを搭載するという、パワーマウントユニットやバッテリユニットがコンパクトに収まるが、パワーマウントユニットとバッテリユニットとがかなり接近した状態で隣接するレイアウトが余儀なくされる車両には、特にパワーマウントユニットを揺動変位させる技術は有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図1〜図6に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は電気自動車のリヤ側の断面図を示していて、同図中1は車体である。車体1は、前後方向最後部に荷室2を有し、前後方向中央に客室3を有している。また4は、車体1の下面に配設された、車体1の骨格をなす一対のサイドフレームを示す。サイドフレーム4は、図2に示されるように車幅方向に並行に2本、所定の間隔で配置される。
【0018】
すなわち、一対のサイドフレーム4は、いずれも客室3の床の下面、この客室3の床より高い地点に形成されている荷室2の床の下面を通り、車両前後方向に延びている。図1中4aは、その荷室2下を通るリヤ部分を示している。そして、荷室2の床下に形成される空間をパワーユニットルーム5としている。また図2に示されるように客室3の床下のサイドフレーム4,4で囲まれた空間は、バッテリユニット収容室6にしてある。さらに述べれば、図1に示されるようにバッテリユニット収容室6は、客室3のリヤ側に設置されたリヤシート8下から同じくフロント側に設置されたフロントシート9下まで連続したサイドフレーム4,4間の扁平な空間で形成してある。つまり、パワーユニットルーム5とバッテリユニット収容室6とは、車両前後方向で隣接(近接)したレイアウトとなっている。
【0019】
このうちバッテリユニット収容室6内には、同空間を占めるようにバッテリユニット10が収められている。電気自動車(車両)の電力源となるバッテリユニット10は、上部が開口した箱形のケース本体11内に多数個のバッテリモジュール12を収容し、このケース本体11の上部をケースカバー13で閉塞した構造となっている。同バッテリユニット10は、多数個のバッテリモジュール12の重量を支えるために、通常、下側のケース本体11は、同重量に耐えうる高い強度をもつ部品で形成され、ケースカバー13は、単に開口側を閉塞するだけなので、ケース本体12よりは格段に低い強度の部品で形成される。このバッテリユニット10のリヤ側の端部がパワーユニットルーム5に臨む。
【0020】
パワーユニットルーム5内には、パワーマウントユニット15が収容される。つまり、車体1のリヤ側の端部にパワーマウントユニット15が搭載される。このパワーマウントユニット15は、図2に示されるように車両を駆動する機器で構成されるパワーユニット16、同パワーユニット16を制御するコントロールユニット25、これらユニット16,25を保持するマウントフレーム30を組み合わせてある。
【0021】
詳述すると、パワーユニット16は、図2に示されるように電動モータ17と減速機18とを車体1の幅方向(横向き)に向けて連結し、減速機18に車体後側へ突き出るように差動装置19を連結させてなる。このうち電動モータ17のリヤ側のケーシング部分からは、車体取付用ブッシュ20(本願のブッシュに相当)を先端に有するリヤブラケット21(パワーユニット16のリヤ側を支持する部品)が突き出ている。車体取付用ブッシュ20は、リヤブラケット21の先端に形成された円形の枠部20bと、同枠部20b内に圧入された筒形のブッシュ部材20aとを組み合わせて構成される。また電動モータ17や減速機18のフロント側のケーシング部分には、それぞれマウント用の支持座(パワーユニット16のフロント側を支持する部品:図示しない)が形成してある。
【0022】
コントロールユニット25は、図2に示されるように電動モータ17の電源周波数を可変するインバータ装置26a及び車両の運転状態に応じて制御する制御装置26、DC/DCコンバータ27a及充電装置27を車幅方向に連ねて構成される。
マウントフレーム30は、図2に示されるように車体1のリヤ側へ並行に延びる一対の側フレーム部31と該側フレーム部31の後端部と一体につながる端フレーム部32とを有した略U形をなしている。このうち一対の側フレーム部31は、電動モータ17端や減速機18端を通過して車体1の前後方向に延び、端フレーム部32は、パワーユニット16の後方を通過して車幅方向に延びている。側フレーム部31の端部間には、バー状のブラケット34が掛け渡されている。このブラケット34の両端部には、車体取付用ブッシュ35(本願のブッシュに相当)がそれぞれ設けられている。車体取付用ブッシュ35は、いずれもブラケット35の端部に形成された円形の枠部35bと、同枠部35b内に圧入された筒形のブッシュ部材35aとを組み合わせて構成される。ブラケット34は、これら車体取付用ブッシュ35と、側フレーム部31の前端部にそれぞれ取着してある吊持用のブラケット37とを、ボルトナット38で締結することによって、側フレーム部31間に掛け渡してある。
【0023】
パワーユニット16は、このフロントブラケット36の両側の地点と、電動モータ17および減速機18のフロント側の各マウント用支持座とを、短筒状のパワーユニット取付用ブッシュ40およびボルトナット41により締結し、端フレーム部32の車幅方向中央に設けてある吊持用のブラケット42と、リヤブラケット21の車体取付用ブッシュ20とをボルトナット43で締結することによって、マウントフレーム30に弾性的に吊持させている。パワーユニット取付用ブッシュ40を設けることで2重防振構造とし、電動モータ17から発する高い周波数の振動が車体1へ伝わるのを防いでいる(高振動吸収性)。
【0024】
側フレーム部31および端フレーム部32上には、上記インバータ装置26a、制御装置26、DC/DCコンバータ27aおよび充電装置27が固定され、パワーユニット20の上方にコントロールユニット25を組み付けている。
パワーマウントユニット15は、こうしたパワーユニット16、コントロールユニット25を保持したマウントフレーム30が車体1の各部で支持されることによって、パワーユニットルーム5内に収まっている。この支持により、パワーユニット16とバッテリユニット10とは、互いに、かなり接近するというレイアウトで、車体1の前後方向に隣接して配置される。
【0025】
この支持には、マウントフレーム30のリヤ側の端部(本願のバッテリユニットとは反対側の端部に相当)の1点と、マウントフレーム30のフロント側の各端部(本願のバッテリユニット側の端部に相当)の2点(複数の点)を車体1の各部に支持させる構造が用いられている。同構造を説明すると、図2中45〜47は、上記3点、すなわち端フレーム部32の車幅方向中央の地点、各側フレーム部31の前端部の各地点に取着された車体マウント用ブラケットである。これらブラケット45〜47は、いずれもフレーム部31,32の上方へ突き出るように取着された台形をなしている。具体的には、端フレーム部32に取着されたブラケット45(本願の第2の支持部、締結部に相当)は、板金を折り曲げた本体部48を有し、この本体部48の最上部に板状の据付座49を形成してなる。側フレーム部31に取着したブラケット46,47(本願の第1の支持部に相当)は、いずれも板金を横向きに折り曲げて柱状にした本体部50を有し、この本体部50の最上部に板状の据付座51を形成してなる。このうちリヤ側のブラケット45の据付座49は、サイドフレームフレーム4,4間の車体部分、例えば床部分1aを支えるクロスメンバ52(メンバ部)にボルトナット53で締結されている。
【0026】
フロント側の2点のブラケット46,47の据付座51は、それぞれサイドフレーム4,4の下部壁にボルトナット54で脱落可能に締結される。すなわち、脱落可能とする構造には、いずれも例えば図3および図4(a),(b)に示されるように据付座51のボルト54aが貫通する孔部分51aを該据付座51のバッテリユニット10側の縁部まで切り欠いた構造が用いてある(本願の脱落可能締結部に相当)。この切欠き部55を有する据付座51により、パワーユニット16が搭載されている側やパワーユニット16が搭載されていない側といった車両端部の衝突時、サイドフレーム端から所定値以上の衝撃荷重が入力され、衝撃で、サイドフレーム4,4が、パワーユニット16側を慣性力により残しながら、ブッシュ20,35の許す範囲で、車体前方(バッテリユニット側)へ強制的に変位されると、図4(b)に示されるようにブラケット46,47を締結する各ボルト54aが据付座51(ブラケット46,47)から抜け出る。つまり、車体1とパワーユニット16との相対変位から、側フレーム部31がサイドフレーム4,4から脱落(分離)するようにしてある。なお、各ブラケット46、47の本体部50の側部分には、ボルト54aの頭部を抜け出やすくするために、進路確保用の開放部56が形成してある。
【0027】
この脱落(分離)により、図6に示されるようなブラケット45や該ブラケット45を支えている車体部分が、重量(荷重)の集中により変形し、マウントフレーム30が、リヤ側のブラケット45やクロスメンバ52(いずれも締結部をなす部分)を支点として、下側へ揺動変位される揺動構造S(図6に図示:本願の揺動手段に相当)を得ている。このパワーマウントユニット15の揺動変位により、パワーユニット16は、サイドフレーム4と共に車体前方へ変位しないだけでなく、反対にバッテリユニット10から離れる、すなわち逃げる方向へ変位させる動きが与えられるようにしている。つまり、衝突時、パワーマウントユニット15をバッテリユニット10に対し離れる方向に逃がす逃がし構造Tを構成している(図6に図示:本願の逃げ手段に相当)。
【0028】
なお、差動装置19は、自在継手(図示しない)を介して、車体1の左右両側で独立懸架された後輪58(駆動輪)に接続されるので、パワーマウントユニット15の揺動変位を妨げることはない。
つぎに、図5および図6を参照して、電気自動車の衝突時の挙動を述べる。
今、車体後部、例えば後部衝突(後突)が生じ、図2中の矢印に示されるように各サイドフレーム端から衝撃荷重Pが入力されたとする。
【0029】
このとき、パワーユニット16の各部は、車体取付用ブッシュ20,35で支持されているから、車体1は、ブッシュが許す範囲内において、慣性によりパワーユニット16を残しながら、前方へ強制的に変位させられる。特にサイドフレーム4は、車体前後方向に渡り延びる骨格部材であるから、サイドフレーム4,4は、速やかに変位させられる。
ここで、マウントフレーム30のバッテリユニット10側の端部は、切欠き部55の有る据付座51でそれぞれサイドフレーム4,4に締結されている。そのため、図4(b)および図5に示されるように据付座51を締結しているボルト54aは、サイドフレーム4に固定されたまま、切欠き部55や開放部56を通じて、据付座51から抜け出る。このボルト54aの抜けにより、マウントフレーム30は、サイドフレーム4と共に変位せずに、リヤ側の端部(端フレーム部32)が車体1に締結されたまま、フロント側の各端部(側フレーム部32)だけが車体1から脱落(分離)する。
【0030】
この脱落により、パワーマウントユニット15の重量は、リヤ側のブラケット45やクロスメンバ52へ集中して加わる。これにより、図6に示されるようにブラケット45やクロスメンバ52は、加わる荷重に耐え切れずに変形する。特にリヤ側のブラケット45は、1箇所だけなので、1点に荷重が集中するため、ブラケット45やクロスメンバ52は、瞬時に変形する。この変形により、マウントフレーム30は、パワーユニット16やコントロールユニット25を搭載したまま、図6中の矢印αに示されるように端フレーム部32を車体1に支持している地点(ブラケット45やクロスメンバ52)を支点として下側へ揺動変位する。
【0031】
この揺動変位により、パワーマウントユニット15は、図6中の矢印βに示されるように車体中央に設置されたバッテリユニット10から、次第に車体後方へ離れる。これにより、パワーユニット16には、隣接するバッテリユニット10から逃げる動きが与えられる。すると、両者間には離間され続ける挙動が生じる。これにより、パワーユニット16とバッテリユニット10との衝突は遅れる。
【0032】
したがって、この遅れにより、衝撃が収まるまでの時間の中で、パワーユニット16をバッテリユニット10に対し衝突させにくくできる。
これにより、バッテリユニット10から逃げている状況で衝突が終わった場合、バッテリユニット10とパワーユニット16との衝突を避けることができる。またたとえパワーユニット16がバッテリユニット10と衝突しても、パワーユニット16が逃げている最中は、車体1の各部で行われる衝撃エネルギーの吸収が進んでいるので、衝撃力が軽減され、バッテリユニット10のダメージを抑えることができる。
【0033】
しかも、パワーマウントユニット15を揺動変位させる構造は、パワーマウントユニット15下をそのまま逃がす空間に利用するので、パワーユニット16がバッテリユニット10から逃げやすくできる。特に脱落可能な締結部や締結部を用いてマウントフレーム30を揺動させる構造にしたことにより、簡単な構造で、パワーユニット16をバッテリユニット10に衝突しにくくする構造が実現できる。そのうえ、車体1の骨格をなすサイドフレーム4やクロスメンバ52に締結すると、衝撃荷重Pが伝わりやすいので、迅速にマウントフレーム30の脱落動作を行わせることができる。
【0034】
特にマウントフレーム30のフロント側を支持する支持点が複数で、リヤ側を支持する点を1箇所にしてあると、通常は安定してパワーユニット16の支持が行え、マウントフレーム30のフロント側が脱落すると、荷重が一挙にリヤ側の1点に集中して、瞬時にマインとフレーム30の揺動変位を起こせるので、かなり有効である。
しかも、パワーマウントユニット15を揺動変位する構造だと、バッテリユニット10を有効に活用して、バッテリユニット10のダメージを抑えることもできる。すなわち、バッテリユニット10の各部を見ると、カバーするだけの上側のケースカバー13とは異なり、下側のケース本体11は、バッテリモジュール12の重量を支えるために高強度を有する。下側へ揺動変位するパワーユニット16がバッテリユニット10と衝突するときは、バッテリユニット10の下側、すなわちこの高強度をもつケース本体11と当たる。つまり、破損しにくい部位に衝突させて、自身のダメージを低減させるからである。
【0035】
加えて、荷室2の床下にパワーマウントユニット15を搭載し、リヤシート8下にバッテリユニット10を搭載する車両は、各機器がコンパクトに収まるが、パワーユニット16とバッテリユニット10とがかなり接近して隣接するレイアウトとなるため、衝突時のバッテリユニット10のダメージを抑えるのは難しいとされるが、リヤ側を支点にパワーマウントユニット15を下側へ揺動変位させる構造だと、かなりパワーマウントユニット15とバッテリユニット10とが接近する場合でも実現しやすく、同車両には有効である。
【0036】
なお、同効果は、パワーユニットが搭載されている側の衝突(本実施形態では後突)だけでなく、パワーユニットが搭載されていない側の衝突(本実施形態では前突)についても有効である。
図7および図8は、本発明の第2の実施形態を示す。
第2の実施形態は、第1の実施形態のようなボルトナットの締結力にだけ頼ってマウントフレームの端部を脱落させる構造でなく、別途、脱落コントロール用の締結部品を用いて、一定荷重以上で、確実にマウントフレームが車体から脱落されるようにしたものである。
【0037】
この脱落可能な締結部の構造としては、例えば図7および図8に示されるように切欠き部55を有する据付座51に、脱落コントロール用の締結部品としてスライディングカプセル60を組み付けた構造がある。スライディングカプセル60には、例えば帯状の連結部61でつながれた一対の薄板状の支持板62を、切欠き部55を有する据付座51の上下両側から挟み込むように配置し、これら支持板62と据付座51との間を、一定荷重で連結が解ける連結部、例えば両者間を貫通する合成樹脂製のピン63で連結する構造が用いられる。据付座49ならびにその両側の支持板62は、第1の実施形態と同じく、ボルトナット54を用いて、一緒にサイドフレーム4の下部壁に締結してある。なお、支持板62aには、ボルト54aが貫通する貫通孔64が形成してある。
【0038】
同構造は、図8に示されるようにサイドフレーム4が一定の衝撃荷重P以上を受けると、ピン63が破断して、ボルトナット54および支持板62が、サイドフレーム4に固定されたまま、切欠き部55や開放部56を通じ、据付座51から抜け出て、マウントフレーム30のフロント側の端部を車体1から脱落させる。
スライディングカプセル60を用いると、ピン63の個数や大きさなどの設定により、マウントフレーム30を脱落させる荷重をコントロールすることが可能となるので、バッテリユニット10と衝突するおそれのない軽衝突時はマウントフレーム30を脱落させず、バッテリユニット10と衝突するおそれの高い大入力時の衝突時だけ、マウントフレーム30を脱落させることができる利点がある。なお、スライディングカプセル60には、ピン63でなく、かしめ構造を用いて支持板62と据付座49との間を連結する構造もある。
【0039】
但し、図7および図8において、第1の実施形態と同じ部分には、同一符号を付してその説明を省略した。
なお、本発明は上述したいずれの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、ボルトナットやスライディングカプセルを用いて、マウントフレームの端部を脱落可能としたが、これに限らず、他の構造や手段を用いて脱落可能としてもよい。また上述の実施形態では、車体のリヤ側にパワーマウントユニットを搭載し、車体の中央側にバッテリユニットを搭載した例を挙げたが、これに限らず、例えば車体のフロント側にパワーマウントユニットを搭載し、車体の中央側にバッテリユニットを搭載した車両にも適用してもよい。
【0040】
また、上述の実施形態において、バッテリユニットのパワーユニット搭載側に金属板等の補強部材を設けて、より安全性を強化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電気自動車のパワーマウントユニットが搭載されたリヤ側を示す側断面図。
【図2】同パワーマウントユニットのマウント構造を示す斜視図。
【図3】同パワーマウントユニットのフロント側の端部に形成された脱落構造を示す分解斜視図。
【図4】同脱落構造の動きを説明するための斜視図。
【図5】車体後部から衝撃荷重を受けて、パワーマウントユニットのフロント側の端部が脱落したときを説明する側断面図。
【図6】続くパワーユニットがバッテリユニットから逃げる挙動を説明する側断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態の要部となるマウントフレームの端部の脱落構造を示す分解斜視図。
【図8】同マウントフレームの端部がサイドフレームから脱落する挙動を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0042】
1 車体
2 荷室
4 サイドフレーム
8 リヤシート
10 バッテリユニット
11 ケース本体
12 バッテリモジュール
13 ケースカバー
15 パワーマウントユニット
16 パワーユニット
20,35 車体取付用ブッシュ(ブッシュ)
30 マウントフレーム
31 側フレーム部
32 端フレーム部
45 ブラケット(第2支持部)
46,47 ブラケット(第1支持部)
51,55,60 切欠き部付き据付座,スライディングカプセル(脱落可能締結部)
S 揺動構造(揺動手段)
T 逃がし構造(逃げ手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体にパワーマウントユニットを支持する構造を改善した電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車では、信頼性の向上、コストの低減、開発期間の短縮のために、内燃エンジンを搭載する車両の車体を活用して、電動モータなどで構成されたパワーユニットや電力源となるバッテリユニットを搭載する場合がある。具体的には、特許文献1に示されるように車体の前後方向の端部に形成したエンジンルームをそのままパワーユニットルームとして用いてパワーユニットを搭載したり、車体の中央に形成されている客室の床下にバッテリユニットを搭載したりすることが行われている。
【0003】
電気自動車は、上記したように車体の中央と端部とにおいて、機器を搭載するスペースが確保されやすいために、構造上、パワーユニットとバッテリユニットとは、互い隣接した位置関係で搭載されるというレイアウトが強いられやすい。特に電気自動車の航続距離は、搭載されるバッテリの電気的容量に依存する割合が大きく、極力大きなバッテリを搭載したいという要求があるため、隣接したパワーユニットとバッテリユニットとの隙間を大きくとることが困難である。そのため、電気自動車は、パワーユニットとバッテリユニットとが接近することになる。
【0004】
ところで、パワーユニットは、駆動反力に耐えるなどのため、かなり支持剛性を要する。このため、電気自動車では、特許文献1に開示されているようにパワーユニットをブッシュを介してマウントフレームに保持させて、剛性が確保しやすいパワーマウントユニットを得、これを車体の各部に支持することが行われる。具体的には、パワーユニットを保持したマウントフレームの車体前後方向の各端部を、車体のサイドフレームやクロスメンバなど車体の主たる骨格部に締結させて、高い支持剛性を確保することが行われている。
【0005】
ところが、特許文献1のような単に骨格部に、パワーマウントユニットのマウントフレームを締結する構造だと、衝突時、車体の端部から衝撃荷重が加わると、パワーマウントユニットが車体の一緒に、隣接するバッテリユニットへ向って変位する。このため、パワーマウントユニットが、バッテリユニットと衝突しやすい問題がある。
一方、マウントフレームの支持に関して、内燃エンジンを搭載した車両では、特許文献2に開示されているように衝突時に生じるサイドフレームの変形を損なわないよう、サイドフレームの途中部分と締結しているマウントフレームの車幅方向両側の部分をサイドフレームから分離する構造は見られる。
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【特許文献2】特開2007−90965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、内燃エンジンを搭載した車両は、電気自動車のようにバッテリユニットとパワーユニットとを接近させて配置することがないので、特許文献2のようにマウントフレームの前後部は車体に締結される構造となる。
このため、同構造だと、衝突時、パワーマウントユニットは、サイドフレームと共に変位するので、パワーユニットとバッテリユニットとが接近して配置されるような電気自動車に対しては、パワーユニットとバッテリユニットとが衝突しにくくなる効果は全く期待できず、パワーユニットがバッテリユニットと衝突しやすい傾向は解消されない。特に電気自動車は、かなり接近してパワーマウントユニットとバッテリユニットとが隣接して配置される傾向にあるので、この点の改善が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、衝突時、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくする電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、車両を駆動する機器で構成されるパワーユニットと、弾性を有するブッシュを介して当該パワーユニットを保持するマウントフレームとを有して構成されるパワーマウントユニットを設け、パワーマウントユニットを車両前後方向端側に搭載する車体を設け、パワーユニットと隣接して車体の前後方向中央側に搭載された電力源となるバッテリユニットを設け、衝突時、衝撃荷重が車体の端部から入力されると、マウントフレームを車体から分離させ、パワーマウントユニットをバッテリユニットから逃げる方向へ変位させる逃げ手段を設けた。
【0009】
同構成により、車両端部の衝突時、パワーマウントユニットは、バッテリユニットに対し逃げる方向に変位し、バッテリユニットとの衝突を遅らせる。
請求項2に記載の発明は、パワーユニットがバッテリユニットから逃げやすいよう、逃げ手段には、パワーユニットを保持したマウントフレームの車両前後方向のバッテリユニット側の端部を車体に支持する第1支持部と、パワーユニットを保持したマウントフレームの車両前後方向のバッテリユニットとは反対側の端部を車体に支持する第2支持部と、衝突時、衝撃荷重が車体の端部から入力されると、第1支持部で支持されたマウントフレームの端部を車体から分離させ、パワーマウントユニットを第2支持部で支持された地点を支点にバッテリユニットから逃げる方向へ揺動させる揺動手段とを具備した揺動式を採用した。
【0010】
請求項3に記載の発明は、さらに簡単な構造で、バッテリユニットのダメージを抑えられるよう、揺動手段には、第1支持部として、マウントフレームのバッテリ側の端部を、車体に締結させるとともに衝撃荷重が車体の端部から入力されたときブッシュのたわみによって許容される車体とパワーユニットとの相対変位により車体から脱落可能とした脱落可能締結部で構成し、第2支持部として、マウントフレームのバッテリユニットとは反対側の端部を車体に締結させる締結部で構成し、衝撃荷重が車体の端部から入力されると、マウントフレームのバッテリユニット側の端部が、ブッシュのたわみによって許容される車体の強制変位で車体から脱落し、マウントフレームが、締結部に集中する荷重により、バッテリユニットとは反対側の端部を締結した地点を支点に、下側へ揺動変位する構成を採用した。
【0011】
請求項4に記載の発明は、迅速に脱落動作が行われるよう、第1支持部が締結される車体の部位には、車体の前後方向に渡り延びるサイドフレームを用い、第2支持部が締結される車体の部位には、車体の車幅方向に配置されるクロスメンバ部を用いて、衝撃荷重が車体端から脱落可能締結部へ伝わりやすくした。
請求項5に記載の発明は、衝突時、マウントフレームの揺動変位が瞬時に生ずるよう、第1支持部は、複数箇所にし、第2支持部は、1箇所だけにして、パワーマウントユニットの重量ができるだけ第2支持部に集中しやすくした。
【0012】
請求項6に記載の発明は、さらにパワーユニットとの衝突がもたらすバッテリユニットのダメージが抑えられるよう、バッテリユニットには、多数のバッテリモジュールを収容し、バッテリモジュールの荷重を支える、上部が開口したケース本体と、バッテリケース本体の上部を閉塞するケースカバーとを有した構成を採用した。
請求項7に記載の発明は、さらにパワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくする技術が、パワーマウントユニットやバッテリユニットが車体にコンパクトに収まるレイアウトで実現されるよう、パワーマウントユニットは、車体の最後部に形成される荷室のフロア下に搭載し、バッテリユニットは、荷室と隣接して車体に設置されるリヤシート下に搭載する構成を採用した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、車両端部の衝突時、パワーマウントユニットは、バッテリユニットから逃げる方向へ変位するから、パワーユニットとバッテリユニットとの衝突を遅らせることができ、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくできる。
この結果、バッテリユニットから逃げている状況で衝突を終えた場合、バッテリユニットとパワーユニットとの衝突を避けることができる。またパワーユニットがバッテリユニットと衝突する場合であっても、パワーユニットが逃げていることによって衝突に遅れが生じ、その間に車体の各部で衝撃エネルギーの吸収が行われているので、バッテリユニットのダメージは抑えられる。
【0014】
請求項2の発明によれば、マウントフレームが揺動する揺動式構造は、パワーユニットがバッテリユニットから逃げやすい。
請求項3の発明によれば、脱落可能締結部や締結部を用いてマウントフレームを車体に締結するという簡単な構造で、パワーユニットを保持するブッシュの特性を利用して、パワーユニットとバッテリユニットとを衝突しにくくできる。
【0015】
請求項4の発明によれば、サイドフレームおよびクロスメンバは、車体の骨格をなす部材なので、車体の端部から入力される衝撃荷重は、速やかに脱落可能締結部へ伝わり、迅速に脱落動作を行わせることができる。
請求項5の発明によれば、マウントフレームのバッテリユニット側の端部が脱落すると、パワーマウントユニットの重量が、バッテリユニットとは反対側の1箇所の支持部に
集中するので、マウントフレームの揺動変位を瞬時に生じさせることができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、たとえパワーユニットがバッテリユニットに衝突しても、パワーユニットが衝突する地点は、低強度のケースカバーでなく、高強度をもつ下側のケース本体と当たるので、バッテリユニット自身を有効活用して、バッテリユニットのダメージを抑えることができる。
請求項7の発明によれば、荷室のフロア下にパワーユニットを搭載し、リヤシート下にバッテリユニットを搭載するという、パワーマウントユニットやバッテリユニットがコンパクトに収まるが、パワーマウントユニットとバッテリユニットとがかなり接近した状態で隣接するレイアウトが余儀なくされる車両には、特にパワーマウントユニットを揺動変位させる技術は有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図1〜図6に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は電気自動車のリヤ側の断面図を示していて、同図中1は車体である。車体1は、前後方向最後部に荷室2を有し、前後方向中央に客室3を有している。また4は、車体1の下面に配設された、車体1の骨格をなす一対のサイドフレームを示す。サイドフレーム4は、図2に示されるように車幅方向に並行に2本、所定の間隔で配置される。
【0018】
すなわち、一対のサイドフレーム4は、いずれも客室3の床の下面、この客室3の床より高い地点に形成されている荷室2の床の下面を通り、車両前後方向に延びている。図1中4aは、その荷室2下を通るリヤ部分を示している。そして、荷室2の床下に形成される空間をパワーユニットルーム5としている。また図2に示されるように客室3の床下のサイドフレーム4,4で囲まれた空間は、バッテリユニット収容室6にしてある。さらに述べれば、図1に示されるようにバッテリユニット収容室6は、客室3のリヤ側に設置されたリヤシート8下から同じくフロント側に設置されたフロントシート9下まで連続したサイドフレーム4,4間の扁平な空間で形成してある。つまり、パワーユニットルーム5とバッテリユニット収容室6とは、車両前後方向で隣接(近接)したレイアウトとなっている。
【0019】
このうちバッテリユニット収容室6内には、同空間を占めるようにバッテリユニット10が収められている。電気自動車(車両)の電力源となるバッテリユニット10は、上部が開口した箱形のケース本体11内に多数個のバッテリモジュール12を収容し、このケース本体11の上部をケースカバー13で閉塞した構造となっている。同バッテリユニット10は、多数個のバッテリモジュール12の重量を支えるために、通常、下側のケース本体11は、同重量に耐えうる高い強度をもつ部品で形成され、ケースカバー13は、単に開口側を閉塞するだけなので、ケース本体12よりは格段に低い強度の部品で形成される。このバッテリユニット10のリヤ側の端部がパワーユニットルーム5に臨む。
【0020】
パワーユニットルーム5内には、パワーマウントユニット15が収容される。つまり、車体1のリヤ側の端部にパワーマウントユニット15が搭載される。このパワーマウントユニット15は、図2に示されるように車両を駆動する機器で構成されるパワーユニット16、同パワーユニット16を制御するコントロールユニット25、これらユニット16,25を保持するマウントフレーム30を組み合わせてある。
【0021】
詳述すると、パワーユニット16は、図2に示されるように電動モータ17と減速機18とを車体1の幅方向(横向き)に向けて連結し、減速機18に車体後側へ突き出るように差動装置19を連結させてなる。このうち電動モータ17のリヤ側のケーシング部分からは、車体取付用ブッシュ20(本願のブッシュに相当)を先端に有するリヤブラケット21(パワーユニット16のリヤ側を支持する部品)が突き出ている。車体取付用ブッシュ20は、リヤブラケット21の先端に形成された円形の枠部20bと、同枠部20b内に圧入された筒形のブッシュ部材20aとを組み合わせて構成される。また電動モータ17や減速機18のフロント側のケーシング部分には、それぞれマウント用の支持座(パワーユニット16のフロント側を支持する部品:図示しない)が形成してある。
【0022】
コントロールユニット25は、図2に示されるように電動モータ17の電源周波数を可変するインバータ装置26a及び車両の運転状態に応じて制御する制御装置26、DC/DCコンバータ27a及充電装置27を車幅方向に連ねて構成される。
マウントフレーム30は、図2に示されるように車体1のリヤ側へ並行に延びる一対の側フレーム部31と該側フレーム部31の後端部と一体につながる端フレーム部32とを有した略U形をなしている。このうち一対の側フレーム部31は、電動モータ17端や減速機18端を通過して車体1の前後方向に延び、端フレーム部32は、パワーユニット16の後方を通過して車幅方向に延びている。側フレーム部31の端部間には、バー状のブラケット34が掛け渡されている。このブラケット34の両端部には、車体取付用ブッシュ35(本願のブッシュに相当)がそれぞれ設けられている。車体取付用ブッシュ35は、いずれもブラケット35の端部に形成された円形の枠部35bと、同枠部35b内に圧入された筒形のブッシュ部材35aとを組み合わせて構成される。ブラケット34は、これら車体取付用ブッシュ35と、側フレーム部31の前端部にそれぞれ取着してある吊持用のブラケット37とを、ボルトナット38で締結することによって、側フレーム部31間に掛け渡してある。
【0023】
パワーユニット16は、このフロントブラケット36の両側の地点と、電動モータ17および減速機18のフロント側の各マウント用支持座とを、短筒状のパワーユニット取付用ブッシュ40およびボルトナット41により締結し、端フレーム部32の車幅方向中央に設けてある吊持用のブラケット42と、リヤブラケット21の車体取付用ブッシュ20とをボルトナット43で締結することによって、マウントフレーム30に弾性的に吊持させている。パワーユニット取付用ブッシュ40を設けることで2重防振構造とし、電動モータ17から発する高い周波数の振動が車体1へ伝わるのを防いでいる(高振動吸収性)。
【0024】
側フレーム部31および端フレーム部32上には、上記インバータ装置26a、制御装置26、DC/DCコンバータ27aおよび充電装置27が固定され、パワーユニット20の上方にコントロールユニット25を組み付けている。
パワーマウントユニット15は、こうしたパワーユニット16、コントロールユニット25を保持したマウントフレーム30が車体1の各部で支持されることによって、パワーユニットルーム5内に収まっている。この支持により、パワーユニット16とバッテリユニット10とは、互いに、かなり接近するというレイアウトで、車体1の前後方向に隣接して配置される。
【0025】
この支持には、マウントフレーム30のリヤ側の端部(本願のバッテリユニットとは反対側の端部に相当)の1点と、マウントフレーム30のフロント側の各端部(本願のバッテリユニット側の端部に相当)の2点(複数の点)を車体1の各部に支持させる構造が用いられている。同構造を説明すると、図2中45〜47は、上記3点、すなわち端フレーム部32の車幅方向中央の地点、各側フレーム部31の前端部の各地点に取着された車体マウント用ブラケットである。これらブラケット45〜47は、いずれもフレーム部31,32の上方へ突き出るように取着された台形をなしている。具体的には、端フレーム部32に取着されたブラケット45(本願の第2の支持部、締結部に相当)は、板金を折り曲げた本体部48を有し、この本体部48の最上部に板状の据付座49を形成してなる。側フレーム部31に取着したブラケット46,47(本願の第1の支持部に相当)は、いずれも板金を横向きに折り曲げて柱状にした本体部50を有し、この本体部50の最上部に板状の据付座51を形成してなる。このうちリヤ側のブラケット45の据付座49は、サイドフレームフレーム4,4間の車体部分、例えば床部分1aを支えるクロスメンバ52(メンバ部)にボルトナット53で締結されている。
【0026】
フロント側の2点のブラケット46,47の据付座51は、それぞれサイドフレーム4,4の下部壁にボルトナット54で脱落可能に締結される。すなわち、脱落可能とする構造には、いずれも例えば図3および図4(a),(b)に示されるように据付座51のボルト54aが貫通する孔部分51aを該据付座51のバッテリユニット10側の縁部まで切り欠いた構造が用いてある(本願の脱落可能締結部に相当)。この切欠き部55を有する据付座51により、パワーユニット16が搭載されている側やパワーユニット16が搭載されていない側といった車両端部の衝突時、サイドフレーム端から所定値以上の衝撃荷重が入力され、衝撃で、サイドフレーム4,4が、パワーユニット16側を慣性力により残しながら、ブッシュ20,35の許す範囲で、車体前方(バッテリユニット側)へ強制的に変位されると、図4(b)に示されるようにブラケット46,47を締結する各ボルト54aが据付座51(ブラケット46,47)から抜け出る。つまり、車体1とパワーユニット16との相対変位から、側フレーム部31がサイドフレーム4,4から脱落(分離)するようにしてある。なお、各ブラケット46、47の本体部50の側部分には、ボルト54aの頭部を抜け出やすくするために、進路確保用の開放部56が形成してある。
【0027】
この脱落(分離)により、図6に示されるようなブラケット45や該ブラケット45を支えている車体部分が、重量(荷重)の集中により変形し、マウントフレーム30が、リヤ側のブラケット45やクロスメンバ52(いずれも締結部をなす部分)を支点として、下側へ揺動変位される揺動構造S(図6に図示:本願の揺動手段に相当)を得ている。このパワーマウントユニット15の揺動変位により、パワーユニット16は、サイドフレーム4と共に車体前方へ変位しないだけでなく、反対にバッテリユニット10から離れる、すなわち逃げる方向へ変位させる動きが与えられるようにしている。つまり、衝突時、パワーマウントユニット15をバッテリユニット10に対し離れる方向に逃がす逃がし構造Tを構成している(図6に図示:本願の逃げ手段に相当)。
【0028】
なお、差動装置19は、自在継手(図示しない)を介して、車体1の左右両側で独立懸架された後輪58(駆動輪)に接続されるので、パワーマウントユニット15の揺動変位を妨げることはない。
つぎに、図5および図6を参照して、電気自動車の衝突時の挙動を述べる。
今、車体後部、例えば後部衝突(後突)が生じ、図2中の矢印に示されるように各サイドフレーム端から衝撃荷重Pが入力されたとする。
【0029】
このとき、パワーユニット16の各部は、車体取付用ブッシュ20,35で支持されているから、車体1は、ブッシュが許す範囲内において、慣性によりパワーユニット16を残しながら、前方へ強制的に変位させられる。特にサイドフレーム4は、車体前後方向に渡り延びる骨格部材であるから、サイドフレーム4,4は、速やかに変位させられる。
ここで、マウントフレーム30のバッテリユニット10側の端部は、切欠き部55の有る据付座51でそれぞれサイドフレーム4,4に締結されている。そのため、図4(b)および図5に示されるように据付座51を締結しているボルト54aは、サイドフレーム4に固定されたまま、切欠き部55や開放部56を通じて、据付座51から抜け出る。このボルト54aの抜けにより、マウントフレーム30は、サイドフレーム4と共に変位せずに、リヤ側の端部(端フレーム部32)が車体1に締結されたまま、フロント側の各端部(側フレーム部32)だけが車体1から脱落(分離)する。
【0030】
この脱落により、パワーマウントユニット15の重量は、リヤ側のブラケット45やクロスメンバ52へ集中して加わる。これにより、図6に示されるようにブラケット45やクロスメンバ52は、加わる荷重に耐え切れずに変形する。特にリヤ側のブラケット45は、1箇所だけなので、1点に荷重が集中するため、ブラケット45やクロスメンバ52は、瞬時に変形する。この変形により、マウントフレーム30は、パワーユニット16やコントロールユニット25を搭載したまま、図6中の矢印αに示されるように端フレーム部32を車体1に支持している地点(ブラケット45やクロスメンバ52)を支点として下側へ揺動変位する。
【0031】
この揺動変位により、パワーマウントユニット15は、図6中の矢印βに示されるように車体中央に設置されたバッテリユニット10から、次第に車体後方へ離れる。これにより、パワーユニット16には、隣接するバッテリユニット10から逃げる動きが与えられる。すると、両者間には離間され続ける挙動が生じる。これにより、パワーユニット16とバッテリユニット10との衝突は遅れる。
【0032】
したがって、この遅れにより、衝撃が収まるまでの時間の中で、パワーユニット16をバッテリユニット10に対し衝突させにくくできる。
これにより、バッテリユニット10から逃げている状況で衝突が終わった場合、バッテリユニット10とパワーユニット16との衝突を避けることができる。またたとえパワーユニット16がバッテリユニット10と衝突しても、パワーユニット16が逃げている最中は、車体1の各部で行われる衝撃エネルギーの吸収が進んでいるので、衝撃力が軽減され、バッテリユニット10のダメージを抑えることができる。
【0033】
しかも、パワーマウントユニット15を揺動変位させる構造は、パワーマウントユニット15下をそのまま逃がす空間に利用するので、パワーユニット16がバッテリユニット10から逃げやすくできる。特に脱落可能な締結部や締結部を用いてマウントフレーム30を揺動させる構造にしたことにより、簡単な構造で、パワーユニット16をバッテリユニット10に衝突しにくくする構造が実現できる。そのうえ、車体1の骨格をなすサイドフレーム4やクロスメンバ52に締結すると、衝撃荷重Pが伝わりやすいので、迅速にマウントフレーム30の脱落動作を行わせることができる。
【0034】
特にマウントフレーム30のフロント側を支持する支持点が複数で、リヤ側を支持する点を1箇所にしてあると、通常は安定してパワーユニット16の支持が行え、マウントフレーム30のフロント側が脱落すると、荷重が一挙にリヤ側の1点に集中して、瞬時にマインとフレーム30の揺動変位を起こせるので、かなり有効である。
しかも、パワーマウントユニット15を揺動変位する構造だと、バッテリユニット10を有効に活用して、バッテリユニット10のダメージを抑えることもできる。すなわち、バッテリユニット10の各部を見ると、カバーするだけの上側のケースカバー13とは異なり、下側のケース本体11は、バッテリモジュール12の重量を支えるために高強度を有する。下側へ揺動変位するパワーユニット16がバッテリユニット10と衝突するときは、バッテリユニット10の下側、すなわちこの高強度をもつケース本体11と当たる。つまり、破損しにくい部位に衝突させて、自身のダメージを低減させるからである。
【0035】
加えて、荷室2の床下にパワーマウントユニット15を搭載し、リヤシート8下にバッテリユニット10を搭載する車両は、各機器がコンパクトに収まるが、パワーユニット16とバッテリユニット10とがかなり接近して隣接するレイアウトとなるため、衝突時のバッテリユニット10のダメージを抑えるのは難しいとされるが、リヤ側を支点にパワーマウントユニット15を下側へ揺動変位させる構造だと、かなりパワーマウントユニット15とバッテリユニット10とが接近する場合でも実現しやすく、同車両には有効である。
【0036】
なお、同効果は、パワーユニットが搭載されている側の衝突(本実施形態では後突)だけでなく、パワーユニットが搭載されていない側の衝突(本実施形態では前突)についても有効である。
図7および図8は、本発明の第2の実施形態を示す。
第2の実施形態は、第1の実施形態のようなボルトナットの締結力にだけ頼ってマウントフレームの端部を脱落させる構造でなく、別途、脱落コントロール用の締結部品を用いて、一定荷重以上で、確実にマウントフレームが車体から脱落されるようにしたものである。
【0037】
この脱落可能な締結部の構造としては、例えば図7および図8に示されるように切欠き部55を有する据付座51に、脱落コントロール用の締結部品としてスライディングカプセル60を組み付けた構造がある。スライディングカプセル60には、例えば帯状の連結部61でつながれた一対の薄板状の支持板62を、切欠き部55を有する据付座51の上下両側から挟み込むように配置し、これら支持板62と据付座51との間を、一定荷重で連結が解ける連結部、例えば両者間を貫通する合成樹脂製のピン63で連結する構造が用いられる。据付座49ならびにその両側の支持板62は、第1の実施形態と同じく、ボルトナット54を用いて、一緒にサイドフレーム4の下部壁に締結してある。なお、支持板62aには、ボルト54aが貫通する貫通孔64が形成してある。
【0038】
同構造は、図8に示されるようにサイドフレーム4が一定の衝撃荷重P以上を受けると、ピン63が破断して、ボルトナット54および支持板62が、サイドフレーム4に固定されたまま、切欠き部55や開放部56を通じ、据付座51から抜け出て、マウントフレーム30のフロント側の端部を車体1から脱落させる。
スライディングカプセル60を用いると、ピン63の個数や大きさなどの設定により、マウントフレーム30を脱落させる荷重をコントロールすることが可能となるので、バッテリユニット10と衝突するおそれのない軽衝突時はマウントフレーム30を脱落させず、バッテリユニット10と衝突するおそれの高い大入力時の衝突時だけ、マウントフレーム30を脱落させることができる利点がある。なお、スライディングカプセル60には、ピン63でなく、かしめ構造を用いて支持板62と据付座49との間を連結する構造もある。
【0039】
但し、図7および図8において、第1の実施形態と同じ部分には、同一符号を付してその説明を省略した。
なお、本発明は上述したいずれの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、ボルトナットやスライディングカプセルを用いて、マウントフレームの端部を脱落可能としたが、これに限らず、他の構造や手段を用いて脱落可能としてもよい。また上述の実施形態では、車体のリヤ側にパワーマウントユニットを搭載し、車体の中央側にバッテリユニットを搭載した例を挙げたが、これに限らず、例えば車体のフロント側にパワーマウントユニットを搭載し、車体の中央側にバッテリユニットを搭載した車両にも適用してもよい。
【0040】
また、上述の実施形態において、バッテリユニットのパワーユニット搭載側に金属板等の補強部材を設けて、より安全性を強化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電気自動車のパワーマウントユニットが搭載されたリヤ側を示す側断面図。
【図2】同パワーマウントユニットのマウント構造を示す斜視図。
【図3】同パワーマウントユニットのフロント側の端部に形成された脱落構造を示す分解斜視図。
【図4】同脱落構造の動きを説明するための斜視図。
【図5】車体後部から衝撃荷重を受けて、パワーマウントユニットのフロント側の端部が脱落したときを説明する側断面図。
【図6】続くパワーユニットがバッテリユニットから逃げる挙動を説明する側断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態の要部となるマウントフレームの端部の脱落構造を示す分解斜視図。
【図8】同マウントフレームの端部がサイドフレームから脱落する挙動を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0042】
1 車体
2 荷室
4 サイドフレーム
8 リヤシート
10 バッテリユニット
11 ケース本体
12 バッテリモジュール
13 ケースカバー
15 パワーマウントユニット
16 パワーユニット
20,35 車体取付用ブッシュ(ブッシュ)
30 マウントフレーム
31 側フレーム部
32 端フレーム部
45 ブラケット(第2支持部)
46,47 ブラケット(第1支持部)
51,55,60 切欠き部付き据付座,スライディングカプセル(脱落可能締結部)
S 揺動構造(揺動手段)
T 逃がし構造(逃げ手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する機器で構成されるパワーユニットと、弾性を有するブッシュを介して当該パワーユニットを保持するマウントフレームとを有して構成されるパワーマウントユニットと、
前記パワーマウントユニットを車両前後方向端側に搭載する車体と、
前記パワーユニットと隣接して前記車体の前後方向中央側に搭載された、電力源となるバッテリユニットと、
衝突時、衝撃荷重が前記車体の端部から入力されると、前記マウントフレームを前記車体から分離させ、前記パワーマウントユニットを前記バッテリユニットから逃げる方向へ変位させる逃げ手段と
を具備したことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記逃げ手段は、
前記パワーユニットを保持した前記マウントフレームの車両前後方向の前記バッテリユニット側の端部を前記車体に支持する第1支持部と、
前記パワーユニットを保持した前記マウントフレームの車両前後方向の前記バッテリユニットとは反対側の端部を前記車体に支持する第2支持部と、
衝突時、衝撃荷重が前記車体の端部から入力されると、前記第1支持部で支持された前記マウントフレームの端部を前記車体から分離させ、前記パワーマウントユニットを前記第2支持部で支持された地点を支点に前記バッテリユニットから逃げる方向へ揺動させる揺動手段と
を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記揺動手段は、
前記第1支持部が、前記マウントフレームのバッテリ側の端部を、前記車体に締結させるとともに衝撃荷重が車体の端部から入力されたときブッシュのたわみによって許容される前記車体と前記パワーユニットとの相対変位により前記車体から脱落可能とした脱落可能締結部で構成され、
前記第2支持部が、前記マウントフレームのバッテリユニットとは反対側の端部を前記車体に締結させる締結部で構成され、
衝撃荷重が前記車体の端部から入力されると、前記マウントフレームのバッテリユニット側の端部が、前記ブッシュのたわみによって許容される車体の強制変位で前記車体から脱落し、前記マウントフレームが、前記締結部に集中する荷重により、前記バッテリユニットとは反対側の端部を締結した地点を支点に、下側へ揺動変位する
ことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記第1支持部が締結される車体の部位は、前記車体の前後方向に渡り延びるサイドフレームであり、
前記第2支持部が締結される車体の部位は、前記車体の車幅方向に配置されるクロスメンバ部である
ことを特徴とする請求項3に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記第1支持部は、複数箇所にあり、
前記第2支持部は、1箇所だけにある
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記バッテリユニットは、
多数のバッテリモジュールを収容して、当該バッテリモジュールの荷重を支える、上部が開口したケース本体と、
前記バッテリケース本体の上部を閉塞するケースカバーとを有して構成される
ことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一つに記載の電気自動車。
【請求項7】
前記パワーマウントユニットは、前記車体の最後部に形成される荷室のフロア下に搭載され、
前記バッテリユニットは、前記荷室と隣接して車体に設置されるリヤシート下に搭載される
ことを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか一つに記載の電気自動車。
【請求項1】
車両を駆動する機器で構成されるパワーユニットと、弾性を有するブッシュを介して当該パワーユニットを保持するマウントフレームとを有して構成されるパワーマウントユニットと、
前記パワーマウントユニットを車両前後方向端側に搭載する車体と、
前記パワーユニットと隣接して前記車体の前後方向中央側に搭載された、電力源となるバッテリユニットと、
衝突時、衝撃荷重が前記車体の端部から入力されると、前記マウントフレームを前記車体から分離させ、前記パワーマウントユニットを前記バッテリユニットから逃げる方向へ変位させる逃げ手段と
を具備したことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記逃げ手段は、
前記パワーユニットを保持した前記マウントフレームの車両前後方向の前記バッテリユニット側の端部を前記車体に支持する第1支持部と、
前記パワーユニットを保持した前記マウントフレームの車両前後方向の前記バッテリユニットとは反対側の端部を前記車体に支持する第2支持部と、
衝突時、衝撃荷重が前記車体の端部から入力されると、前記第1支持部で支持された前記マウントフレームの端部を前記車体から分離させ、前記パワーマウントユニットを前記第2支持部で支持された地点を支点に前記バッテリユニットから逃げる方向へ揺動させる揺動手段と
を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記揺動手段は、
前記第1支持部が、前記マウントフレームのバッテリ側の端部を、前記車体に締結させるとともに衝撃荷重が車体の端部から入力されたときブッシュのたわみによって許容される前記車体と前記パワーユニットとの相対変位により前記車体から脱落可能とした脱落可能締結部で構成され、
前記第2支持部が、前記マウントフレームのバッテリユニットとは反対側の端部を前記車体に締結させる締結部で構成され、
衝撃荷重が前記車体の端部から入力されると、前記マウントフレームのバッテリユニット側の端部が、前記ブッシュのたわみによって許容される車体の強制変位で前記車体から脱落し、前記マウントフレームが、前記締結部に集中する荷重により、前記バッテリユニットとは反対側の端部を締結した地点を支点に、下側へ揺動変位する
ことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記第1支持部が締結される車体の部位は、前記車体の前後方向に渡り延びるサイドフレームであり、
前記第2支持部が締結される車体の部位は、前記車体の車幅方向に配置されるクロスメンバ部である
ことを特徴とする請求項3に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記第1支持部は、複数箇所にあり、
前記第2支持部は、1箇所だけにある
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記バッテリユニットは、
多数のバッテリモジュールを収容して、当該バッテリモジュールの荷重を支える、上部が開口したケース本体と、
前記バッテリケース本体の上部を閉塞するケースカバーとを有して構成される
ことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一つに記載の電気自動車。
【請求項7】
前記パワーマウントユニットは、前記車体の最後部に形成される荷室のフロア下に搭載され、
前記バッテリユニットは、前記荷室と隣接して車体に設置されるリヤシート下に搭載される
ことを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか一つに記載の電気自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−61913(P2009−61913A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231543(P2007−231543)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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