説明

電源回路

【課題】電源回路を備える装置の低消費電力化と、電源回路が発生させる出力電圧の安定化とを両立させる。
【解決手段】負荷へ供給するための出力電圧を入力電圧に基づいて発生させる一対のMOSトランジスタで構成された電圧発生部と、入力電圧および出力電圧の電圧値を検出する検出部と、検出された電圧値に応じて電圧発生部の駆動を制御する駆動部とを有する電源回路において、負荷の動作状態に応じて駆動部を制御することにより、一対のMOSトランジスタの不感帯の幅を変化させる制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を発生させて出力する電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
動作モードとスタンバイモードとを有する半導体装置、例えばDRAM等において、スタンバイモードでは、読み出しや書き込み、リフレッシュ等が行われないため、低消費電力化を実現することができる。
【0003】
しかし、スタンバイモードにおいても、DRAM等の内部に備えられ、電圧を発生させる電源回路において貫通電流が流れることがある。貫通電流が流れることにより、スタンバイモード時の消費電力が増大してしまう。貫通電流とは、電源回路において電圧を発生させるPチャネル型MOSトランジスタおよびNチャネル型MOSトランジスタが同時にオンの状態になることによって発生する電流のことである。
【0004】
なお、以降、Pチャネル型MOSトランジスタのことをPMOSトランジスタといい、Nチャネル型MOSトランジスタのことをNMOSトランジスタという。
【0005】
図4は、DRAM等の内部に備えられた電源回路の構成の一例を示す図である。
【0006】
図4に示す電源回路100は、電圧発生部11を備えている。電圧発生部11は、PMOSトランジスタP1と、NMOSトランジスタN1との直列回路によって構成されている。ここでは、電圧発生部11が、DRAMのアレイに供給するためのHVARYを発生させて出力電圧として出力する場合を示している。なお、HVARYの電圧値は、アレイ電圧の半分の電圧値である。
【0007】
ここで、貫通電流は、図4に示した電圧発生部11の不感帯の幅をより広く設定することによって回避することができる。
【0008】
図5は、図4に示した電源回路における貫通電流と不感帯の幅との関係を説明するための図であり、(a)は貫通電流が流れる場合の一例を示す図、(b)は貫通電流が流れない場合の一例を示す図である。
【0009】
図5(a)に示すような幅を不感帯として設定した場合、PMOSトランジスタP1に流れる電流であるP1電流と、NMOSトランジスタN1に流れる電流であるN1電流とが同時に流れる可能性が高くなる。図5(a)においてP1電流とN1電流との交点101が貫通電流となる。
【0010】
一方、図5(b)に示すように、図5(a)に示す場合よりも不感帯の幅を広く設定した場合、P1電流とP2電流とが同時に流れないようにすることができる。この場合、P1電流とN1電流との交点がなく、貫通電流は流れない。
【0011】
なお、スタンバイモード(パワーダウンモード)における消費電流の上昇を防止するための技術が例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−229672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、不感帯の幅をより広く設定することにより、貫通電流が流れるのを回避することができる。
【0014】
しかしながら、不感帯の幅をより広く設定すると、電圧発生部11にて発生される出力電圧が不安定になってしまう。
【0015】
図4に示したような電源回路においては、マスク対象部分102で示した部分をマスクすることにより、つまり回路を修正することにより、不感帯の幅を変更することができるが、この場合、不感帯の幅は予め決めておかなければならない。
【0016】
従って、電源回路を備える装置の低消費電力化と、電源回路が発生させる出力電圧の安定化とを両立させることは困難であるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電源回路は、負荷へ供給するための出力電圧を入力電圧に基づいて発生させる一対のMOSトランジスタで構成された電圧発生部と、前記入力電圧および前記出力電圧の電圧値を検出する検出部と、前記検出された電圧値に応じて前記電圧発生部の駆動を制御する駆動部とを有する電源回路において、
前記負荷の動作状態に応じて前記駆動部を制御することにより、前記一対のMOSトランジスタの不感帯の幅を変化させる制御部を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上説明したように構成されているので、負荷がスタンバイモードの場合、その負荷が動作モードの場合よりも、不感帯の幅を広く設定することができる。
【0019】
従って、電源回路を備える装置の低消費電力化と、電源回路が発生させる出力電圧の安定化とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の電源回路の実施の一形態の構成を示す図である。
【図2】図1に示した制御部にて受け付けられたスタンバイ信号がLレベルを示している場合の駆動部の状態を説明するための図である。
【図3】図1に示した制御部にて受け付けられたスタンバイ信号がHレベルを示している場合の駆動部の状態を説明するための図である。
【図4】DRAM等の内部に備えられた電源回路の構成の一例を示す図である。
【図5】図4に示した電源回路における貫通電流と不感帯の幅との関係を説明するための図であり、(a)は貫通電流が流れる場合の一例を示す図、(b)は貫通電流が流れない場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の電源回路の実施の一形態の構成を示す図である。
【0023】
本実施形態の電源回路10は図1に示すように、電圧発生部11と、検出部12と、駆動部13と、制御部14とを備えている。
【0024】
図1に示す電源回路10は、例えば負荷であるDRAM(不図示)内部に備えられている。電源回路10は、入力電圧を受け付け、受け付けた入力電圧に基づき、負荷に供給するための出力電圧を発生させる。なお、ここでは、出力電圧としてHVARYを発生させる場合を一例として説明する。
【0025】
電圧発生部11は、一対のMOSトランジスタで構成されている。具体的には、電圧発生部11は、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1との直列回路によって構成されている。PMOSトランジスタP1は、PMOSトランジスタP5およびNMOSトランジスタN5と接続されている。NMOSトランジスタN1は、PMOSトランジスタP2およびNMOSトランジスタN2と接続されている。電圧発生部11は、後述する駆動部13によって駆動され、入力電圧に基づいてHVARYを発生させる。なお、HVARYは、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1との接続点から取り出される。
【0026】
検出部12は、PMOSトランジスタP7〜P9と、NMOSトランジスタN6,N7とから構成されている。検出部12は、電圧発生部11が発生させたHVARYをPMOSトランジスタP8にて受け付け、入力電圧をPMOSトランジスタP9にて受け付ける。これにより、検出部12は、HVARYおよび入力電圧の電圧値を検出する。なお、後述する駆動部13は、検出部12にて検出された電圧値に応じて電圧発生部11の駆動を制御する。
【0027】
駆動部13は、PMOSトランジスタP2,P5と、NMOSトランジスタN2,N3,N5とから構成され、電圧発生部11の駆動を制御する。PMOSトランジスタP2は、NMOSトランジスタN2と接続されている。PMOSトランジスタP5は、NMOSトランジスタN5と接続されている。また、PMOSトランジスタP2,P5は、後述する制御部14の動作に応じてNMOSトランジスタN3と接続される。なお、ここでは、PMOSトランジスタP2,P5のそれぞれのサイズであるゲート幅を2.4μm、9.0μmとし、NMOSトランジスタN2,N3,N5のそれぞれのサイズであるゲート幅を3.0μm、0.9μm、3.6μmとする。
【0028】
制御部14は、PMOSトランジスタP11と、NMOSトランジスタN10とを備えている。制御部14は、電源回路10の外部から出力されたスタンバイ信号を受け付ける。なお、電源回路10の外部とは例えば、電源回路10を備えるDRAMの動作状態を制御する回路である。また、スタンバイ信号とは、そのDRAMが動作中のとき、例えばそのDRAMのアレイの全てのバンクがアクティブな状態のときにL(Low)レベルを示し、そのDRAMがスタンバイ中のとき、例えばそのDRAMのアレイの全てのバンクがアクティブ以外の状態のときにH(High)レベルを示す信号である。
【0029】
以下に、上記のように構成された電源回路において制御部14にてスタンバイ信号が受け付けられたときの動作について詳細に説明する。
【0030】
制御部14にてスタンバイ信号が受け付けられると、受け付けられたスタンバイ信号が示すレベルに応じてPMOSトランジスタP11またはNMOSトランジスタN10がオンの状態になる。
【0031】
具体的には、受け付けられたスタンバイ信号がLレベルを示している場合、PMOSトランジスタP11がオンの状態になり、NMOSトランジスタN10がオフの状態になる。一方、受け付けられたスタンバイ信号がHレベルを示している場合、PMOSトランジスタP11がオフの状態になり、NMOSトランジスタN10がオンの状態になる。
【0032】
図2は、図1に示した制御部14にて受け付けられたスタンバイ信号がLレベルを示している場合の駆動部13の状態を説明するための図である。
【0033】
制御部14にて受け付けられたスタンバイ信号がLレベルを示している場合、上述したように、PMOSトランジスタP11がオンの状態になる。この場合、図2において太線で示したパス51が選択され、PMOSトランジスタP5は、NMOSトランジスタN5およびNMOSトランジスタN3と接続されることになる。
【0034】
ここで、上述したように、PMOSトランジスタP5のゲート幅が9.0μmであり、NMOSトランジスタN5のゲート幅が3.6μmであり、NMOSトランジスタN3のゲート幅が0.9μmである。従って、パス51が選択された場合、つまり、制御部14にて受け付けられたスタンバイ信号がLレベルを示している場合、PNレシオは、(9μm/(3.6μm+0.9μm)から「2」となる。なお、PNレシオとは、PMOSトランジスタのゲート幅とNMOSトランジスタのゲート幅との比率である。駆動部13におけるPNレシオがより高いほど、電圧発生部11の不感帯の幅がより狭くなる。
【0035】
図3は、図1に示した制御部14にて受け付けられたスタンバイ信号がHレベルを示している場合の駆動部13の状態を説明するための図である。
【0036】
制御部14にて受け付けられたスタンバイ信号がHレベルを示している場合、上述したように、NMOSトランジスタN10がオンの状態になる。この場合、図3において太線で示したパス52が選択され、PMOSトランジスタP2は、NMOSトランジスタN2およびNMOSトランジスタN3と接続されることになる。
【0037】
ここで、上述したように、PMOSトランジスタP2のゲート幅が2.4μmであり、NMOSトランジスタN2のゲート幅が3.0μmであり、NMOSトランジスタN3のゲート幅が0.9μmである。従って、パス52が選択された場合、つまり、制御部14にて受け付けられたスタンバイ信号がHレベルを示している場合、PNレシオは、(2.4μm/(3.0μm+0.9μm))から「約0.6」となる。
【0038】
このように、制御部14は、受け付けられたスタンバイ信号が示すレベルに応じて駆動部13を制御することにより、駆動部13のPNレシオを変化させる。これにより、電圧発生部11の不感帯の幅を変化させることが可能となる。
【0039】
PNレシオがより高いほど、PMOSトランジスタP1のゲート電位がより引かれ、PMOSトランジスタP1には電流がより多く流れることになる。このとき、NMOSトランジスタN1のゲート電位はあまり引かれないので、NMOSトランジスタN1にもより多くの電流が流れることになる。
【0040】
従って、図2に示した状態の場合、図3に示した場合と比べて電圧発生部11の性能が向上し、また、不感帯の幅がより狭くなることから、電圧発生部11は、安定してHVARYを発生させる。つまり、図2に示した状態は、DRAMが動作モードのときに適した状態であるといえる。
【0041】
逆に、図3に示した状態の場合、図2に示した場合と比べてPMOSトランジスタP1およびNMOSトランジスタN1に流れる電流が少なくなり、また、不感帯の幅がより広くなることから、電圧発生部11を構成するPMOSトランジスタP1からNMOSトランジスタN1へ貫通電流が流れるのを回避することができる。そのため、消費電力を抑制することができる。つまり、図3に示した状態は、DRAMがスタンバイモードのときに適した状態であるといえる。
【0042】
このように本実施形態においては、負荷の動作状態に応じて駆動部13を制御することにより、一対のMOSトランジスタで構成された電圧発生部11の不感帯の幅を変化させる。
【0043】
これにより、負荷がスタンバイモードの場合、その負荷が動作モードの場合よりも、不感帯の幅を広く設定することができる。
【0044】
従って、電源回路を備える装置の低消費電力化と、電源回路が発生させる出力電圧の安定化とを両立させることが可能となる。
【0045】
また、出力電圧の安定化により、歩留まり率の向上も実現できる。
【0046】
なお、スタンバイモードのないサーバー向けのDRAM等に供給する電圧を発生させる電源回路の場合には、テストモードにおいて、上述したスタンバイ信号に相当する信号をLレベルを示すようにしてテストモード回路から出力すればよい。これにより、不感帯の幅がより狭くなるパスが選択され、出力電圧の安定化が実現できる。ここで、テストモードとは、DRAMの内部タイミングや内部電源を調整するためのモードである。
【符号の説明】
【0047】
10 電源回路
11 電圧発生部
12 検出部
13 駆動部
14 制御部
51,52 パス
P1〜P11 PMOSトランジスタ
N1〜N10 NMOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷へ供給するための出力電圧を入力電圧に基づいて発生させる一対のMOSトランジスタで構成された電圧発生部と、前記入力電圧および前記出力電圧の電圧値を検出する検出部と、前記検出された電圧値に応じて前記電圧発生部の駆動を制御する駆動部とを有する電源回路において、
前記負荷の動作状態に応じて前記駆動部を制御することにより、前記一対のMOSトランジスタの不感帯の幅を変化させる制御部を有する電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電源回路において、
前記一対のMOSトランジスタは、1つのPMOSトランジスタと1つのNMOSトランジスタとであり、
前記駆動部は、複数のPMOSトランジスタおよび複数のNMOSトランジスタから構成され、
前記制御部は、前記負荷の動作状態を示す信号を外部から受け付け、前記複数のPMOSトランジスタおよび複数のNMOSトランジスタの中から、前記駆動部として動作するPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタを、前記受け付けた信号が示す動作状態に応じて選択する電源回路。
【請求項3】
請求項2に記載の電源回路において、
前記信号は、前記負荷が動作中であるかスタンバイ中であるかを示し、
前記制御部は、前記受け付けた信号が動作中を示す場合、前記受け付けた信号がスタンバイ中を示す場合よりも、前記駆動部として動作するPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとのサイズの比であるPNレシオが高くなるように、前記駆動部として動作するPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタを選択する電源回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−108716(P2012−108716A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256861(P2010−256861)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】