説明

電界効果トランジスタおよびその製造方法

【課題】GaN系あるいはGaAs系FET用エピでは、バッファ層耐圧を向上させるために最近ではバッファ層に高抵抗のエピを用いる傾向にある。しかし、微細ゲートのパターニングのための電子ビーム露光によるリソグラフィーの際、チャージアップ現象が生じるという問題がある。
【解決手段】金属配線によって電子が放電する経路を形成する。すなわち、FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらにチップ内においてFETのソース電極がチップ周辺の金属配線と金属で接続されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線による露光あるいは観察に供せられる高抵抗バッファ電界効果トランジスタの集積回路およびその製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
GaN系あるいはGaAs系FET用エピでは、バッファ層耐圧を向上させるために、最近ではバッファ層(あるいは基板)が高抵抗のエピを用いる傾向にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、その結果、微細ゲートのパターニングのための電子ビーム(EB)露光によるリソグラフィーの際、あるいは電子顕微鏡観察の際、電子が放電する経路が絶たれ、チャージアップ現象が生じ、リソグラフィーでは露光パターンが乱れる(電子顕鏡観察では観察像が乱れる)問題が生じる。
【0004】
この問題を緩和する方法の1つは、EBレジストの表面に、帯電防止剤を塗布することである。帯電防止剤を塗布することによって、電子線はEBレジストの表面を伝わって放電し、電子のチャージアップを防ぐことができる。しかし、電子はレジストの表面を伝わって放電してゆくので、EBレジストの底面が開口しにくいという問題が残る。
【0005】
従来から対策としてとられている方法として、半導体ウエハの活性層パターン(絶縁イオン注入を行わず、チャネル層を残したパターン)を用いて電子の放電経路を形成する方法がある。図1のような等価回路を有するFETのEB露光をする際、図2に示したように、半導体ウエハのチャネル層を通して電子をEB露光時の陽極電極に放電させる。その出来上がり構造の断面を図3に、ウエハ・レイアウトを図4、そしてチップ・レイアウトを図5に示した。
【0006】
これらの構造を作製するための製造プロセスの例を説明する。まず、エピタキシャル成長した半導体多層膜上に、オーミック電極を形成する。それをマークとして、絶縁イオン注入を行う。絶縁イオン注入をしなかった残りパターンが、半導体活性層となる。図4はそのウエハ上でのパターンを示したもので、チップ周辺のスクライブラインやエッチカットラインに合わせて活性層パターンを形成し、EBの陽極にできるだけ近接できるようにして電子の放電経路を確保する。チップにおけるFETパターンまでは、図5に示したようにチップ周辺活性層パターンからFETのソース電極まで活性層パターンで接続し、ここでも電子の放電経路を確保する。EB露光を用いてゲート電極を形成したあとのFETの出来上がり構造の断面図を図3に示した。
【0007】
上記の方法を用いることによって、今までは、GaAs系およびGaN系FETにおけるEB露光時のチャージアップを防ぐことが出来ていた。しかし、半導体チャネル層の導電性には限界があるため、バッファ層(あるいは基板)が高抵抗になるに従い、EB露光でバッファ層にまで注入された電子は有効に放電されず、EB露光時のチャージアップの問題が頻繁化してきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカ
ットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極を、チップ周辺の金属配線と金属で接続する。
【0009】
あるいは、FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極に隣接する電極を、チップ周辺の金属配線と金属で接続する。
【発明の効果】
【0010】
上記のようなレイアウト構造とすることによって、EB露光あるいは電子顕微鏡観察の際に電子が放電する電気経路は、主として抵抗値の低い金属配線で達成されることになり、チャージアップ現象を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極が、チップ周辺の金属配線と金属で接続されることを特徴とする集積回路レイアウト構造を形成する。上記のようなレイアウト構造とすることによって、EB露光あるいは電子顕微鏡観察の際に電子が放電する電気経路は、主として抵抗値の低い金属配線で達成されることになり、チャージアップ現象を抑制することができる。
(実施の形態2)
FET集積回路製造プロセスにおいて、FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配する工程を有し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線を金属で接続し、さらに、チップ内においてFETのソース電極を、チップ周辺の金属配線と金属で接続する工程を特徴とする工程を採用する。上記のような集積回路製造プロセスを採用することによって、EB露光あるいは電子顕微鏡観察の際に電子が放電する電気経路は、主として抵抗値の低い金属配線で達成されることになり、チャージアップ現象を抑制することができる。
(実施の形態3)
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極に隣接する電極が、チップ周辺の金属配線と金属で接続されることを特徴とする集積回路レイアウト構造を形成する。
【0012】
本形態3は、FETのソース電極が直接には接地されない形態(FETの最終形態ではソース電極は直接接地されて用いることができない)の回路構成で用いられる場合に関するものである。このような場合においても、上記のようなレイアウト構造とすることによって、EB露光あるいは電子顕微鏡観察の際に電子が放電する電気経路は、主として抵抗値の低い金属配線で達成されることになり、チャージアップ現象を抑制することができる。
(実施の形態4)
FET集積回路製造プロセスにおいて、FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配する工程を有し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線を金属で接続し、さらに、チップ内においてFETのソース電極に隣接する電極を、チップ周辺の金属配線と金属で接続する工程を特徴とする工程を採用する。
【0013】
本形態4は、FETのソース電極が直接には接地されない形態(FETの最終形態ではソース電極は直接接地されて用いることができない)の回路構成で用いられる場合に関するものである。このような場合においても、上記のような集積回路製造プロセスを採用することによって、EB露光あるいは電子顕微鏡観察の際に電子が放電する電気経路は、主として抵抗値の低い金属配線で達成されることになり、チャージアップ現象を抑制することができる。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
実施の形態1および2に対応するもので、図1のような等価回路を有するFETのEB露光をする際、図6に示したように、EB露光時に注入された電子を半導体ウエハのチャネル層と金属配線を通してEB露光用陽極電極に放電させようとする方法である。その出来上がり構造の断面を図7に、ウエハ・レイアウトを図8、そしてチップ・レイアウトを図9に示した。
【0015】
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極が、チップ周辺の金属配線と金属で接続されることを特徴とする集積回路レイアウト構造を作製する。
【0016】
これらの構造を作製するための製造プロセスの例を説明する。まず、エピタキシャル成長したGaAs半導体多層膜上に、250nm厚のオーミック電極(AuGeNiAu)をリフトオフで形成する。それをマークとして、14N絶縁イオン注入(注入加速エネルギー:100keV、ドーズ量:1X10−4cm−2)を行う。絶縁イオン注入をしなかった残りパターンが、半導体活性層となる。図8はそのウエハ上でのパターンを示したもので、チップ周辺のスクライブラインやエッチカットラインに合わせて活性層パターンとオーミック電極による金属配線を形成し、EBの陽極にできるだけ近接できるようにして電子にとって低抵抗な放電経路を確保する。チップにおけるFETパターンまでは、図9に示したようにオーミック電極によるチップ周辺金属配線(および活性層パターン)からFETのオーミック電極で形成されたソース電極まで金属配線(活性層パターン)で接続し、ここでも電子の低抵抗な放電経路を確保する。PMMAをEBレジストとし、EB露光(加速エネルギー:50keV、ドーズ量:3.0nC/cm・本)を用いて300nm厚のゲート電極(MoTiAu)をリフトオフで形成したあとのFETの出来上がり構造の断面図を図9に示した。FETの製造工程において、このようなレイアウト構造あるいはそれを実現する製造プロセスを採用することによって、ゲートのEB露光の際、従来では問題となっていたチャージアップ現象を大幅に抑制することができた。
(実施例2)
実施の形態3および4に対応するもので、FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部の、スクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極に隣接する電極が、チップ周辺の金属配線と金属で接続されることを特徴とする集積回路レイアウト構造を作製する。
【0017】
この実施例2は、FETのソース電極が直接には接地されない形態の回路構成で用いられる場合に関するものである。例えば、図10のような等価回路を有するFETの場合には、FETの最終形態ではソース電極は直接接地されて用いることができないので、その作製構造あるいは作製プロセスに工夫が必要である。
【0018】
この場合、EB露光をする際、図11に示したように、EB露光時に注入された電子を、半導体ウエハのチャネル層とソース電極に隣接する接地用の電極と金属配線を通してEB露光用陽極電極に放電させる。さらに出来上がり構造では、ソース電極は接地されていてはいけないので、ソース電極と、それに隣接する接地用電極との間の半導体活性層をイオン注入(あるいはメサ形成)などの方法で絶縁化する。その出来上がり構造の断面を図12に、ウエハ・レイアウトを図8、そしてチップ・レイアウトを図13に示した。
【0019】
これらの構造を作製するための製造プロセスの例(図10の等価回路に相当するFETの場合)を説明する。まず、エピタキシャル成長したGaAs半導体多層膜上に、250nm厚のオーミック電極(AuGeNiAu)を形成する。それをマークとして、第1の14N絶縁イオン注入(注入加速エネルギー:100keV、ドーズ量:1X10−4cm−2)を行う。絶縁イオン注入をしなかった残りパターンが、半導体活性層となる。図8はそのウエハ上でのパターンを示したもので、チップ周辺のスクライブラインやエッチカットラインに合わせて活性層パターンとオーミック電極による金属配線を形成し、EBの陽極にできるだけ近接できるようにして形成した、電子にとって低抵抗な放電経路を確保する。チップにおけるFETパターンまでは、図13に示したようにオーミック電極によるチップ周辺金属配線(および活性層パターン)からFETの(オーミック電極からなる)ソース電極に隣接する(オーミック電極からなる)接地電極まで金属配線(活性層パターン)で接続し、ここでも電子の低抵抗な放電経路を確保する。
【0020】
かくして、EB露光をする際、図11に示したように、EB露光時(加速エネルギー:50keV、ドーズ量:3.0nC/cm・本)に注入された電子を、半導体ウエハのチャネル層とソース電極に隣接する接地用の電極と金属配線を通してEB露光用陽極電極に放電させる。EB露光を用いて300nm厚のゲート電極(MoTiAu)を形成したあと、接地電極とソース電極の間の活性層パターンを第2の14N絶縁イオン注入(注入加速エネルギー:100keV、ドーズ量:1X10−4cm−2)にて絶縁化する。そのあと、たとえば図10のようにキャパシタを形成する場合には、150nm厚のシリコン酸化膜(SiO)による誘電体層を形成してさらに350nm厚の上部金属配線(TiPtAu)を形成する。こうして作製したFETの出来上がり構造の断面図を図11に示した。FETの製造工程において、このようなレイアウト構造あるいはそれを実現する製造プロセスを採用することによって、ゲートのEB露光の際、従来では問題となっていたチャージアップ現象を大幅に抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、電子線による露光あるいは観察に供せられる電界効果トランジスタの集積回路において、電子のチャージアップを防ぐ技術に関するものであり、電子デバイスの発展に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】FETの基本等価回路図である。
【図2】従来構造FETのEB露光時の構造である。
【図3】従来構造FETの出来上がり断面構造である。
【図4】従来構造FETのウエハ・レイアウトである。
【図5】従来構造FETのチップ・レイアウトである。
【図6】本発明FETのEB露光時の構造である。
【図7】本発明FETの出来上がり断面構造である。
【図8】本発明FETのウエハ・レイアウトである。
【図9】本発明FETのチップ・レイアウトである。
【図10】本発明FETの等価回路図(ソース電極が直接接地されない場合の例)であ る。
【図11】図10における等価回路のEB露光時の断面構造である。
【図12】図10における等価回路のFETの出来上がり断面構造である。
【図13】図10における等価回路のFETのチップ・レイアウトである。
【符号の説明】
【0023】
1 ゲート電極
2 ドレイン電極
3 ソース電極
4 GND
5 電子ビーム
6 チャネル層
7 バッファ層
8 基板
9 EBレジスト
10 半導体多層膜
11 ゲート形成部
12 電子線の放電経路
13 EBの陽極
14 半導体活性層
15 チップ周辺活性層パターン
16 活性層残しパターン
17 ゲート形成部
18 金属配線
19 EBの陽極に対向する電極パッド
20 オーミック電極配線
21 チップ周辺金属配線
22 キャパシタ部
23 接地用電極
24 上部金属配線
25 誘電体
26 第2のアイソレーション部
27 第1のアイソレーション部
28 金属配線
29 裏面接地バイアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極が、チップ周辺の金属配線と金属で接続されるレイアウト構造を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配する工程を有し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線を金属で接続し、さらに、チップ内においてFETのソース電極を、チップ周辺の金属配線と金属で接続する工程を有することを特徴とする電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項3】
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカットする部分に相当する部分に金属配線を配し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線が金属で接続されており、さらに、チップ内においてFETのソース電極に隣接する電極が、チップ周辺の金属配線と金属で接続されるレイアウト構造を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項4】
FETを作製するウエハ上の各チップの周辺部のスクライブラインあるいはエッチカ
ットする部分に相当する部分に金属配線を配する工程を有し、電子線にとってウエハ上で陽極あるいは接地導体となる部分とその金属配線を金属で接続し、さらに、チップ内においてFETのソース電極に隣接する電極を、チップ周辺の金属配線と金属で接続する工程を有することを特徴とする電界効果トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−206396(P2009−206396A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49367(P2008−49367)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】