説明

電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置、及びシステム

【課題】新規なp型酸化物半導体を活性層に用いた電界効果型トランジスタなどの提供。
【解決手段】ゲート電圧を印加するためのゲート電極と、電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に形成されたp型酸化物半導体からなる活性層と、前記ゲート電極と前記活性層との間に形成されたゲート絶縁層とを有し、前記p型酸化物半導体が、一般式ABO(Aは、Sr及びBaの少なくともいずれかを含む。Bは少なくともBiを含む。)で表され、かつ擬ペロブスカイト構造である電界効果型トランジスタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置、及びシステムに係り、更に詳しくは、酸化物半導体からなる活性層を有する電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子、及び該表示素子を用いた画像表示装置、並びに該画像表示装置を備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)は、ゲート電極に電圧をかけ、チャネルの電界により電子又は正孔の流れに関門(ゲート)を設ける原理で、ソース電極とドレイン電極間の電流を制御するトランジスタである。
【0003】
FETはその特性から、スイッチング素子や増幅素子として利用されている。FETは、ゲート電流が低いことに加え、構造が平面的であるため、バイポーラトランジスタと比較して作製や集積化が容易である。そのため、現在の電子機器で使用される集積回路では必要不可欠な素子となっている。
【0004】
また、FETは、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)として、アクティブマトリックス方式のディスプレイなどに応用されている。
【0005】
近年、平面薄型ディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)として、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ(OLED)、電子ペーパーなどが実用化されている。
【0006】
これらFPDは、非晶質シリコンや多結晶シリコンを活性層に用いたTFTを含む駆動回路により駆動されている。そして、FPDは、さらなる大型化、高精細化、高速駆動性が求められており、それに伴って、キャリア移動度が高く、特性の経時変化が小さく、素子間のばらつきが小さいTFTが求められている。
【0007】
しかしながら、非晶質シリコン(a−Si)や多結晶シリコン(特に低温ポリシリコン:LTPS)を活性層に用いたTFTは、それぞれに一長一短があり、同時に全ての要求を満たすことは困難である。
例えば、a−SiTFTは大画面のLCD(Liquid Crystal Display)を高速駆動するには移動度が不足しており、また連続駆動時の閾値電圧シフトが大きいという欠点を抱えている。LTPS−TFTは、移動度は大きいが、エキシマレーザーアニーリングによって活性層を結晶化するプロセスのために閾値電圧のバラツキが大きく、量産ラインのマザーガラスサイズを大きくできないという問題がある。
【0008】
そこで、a−SiTFTの長所とLTPS−TFTの長所を併せ持つ新たなTFT技術が要求されている。この要求に応えるため、近年、a−Siを超えるキャリア移動度が期待できる酸化物半導体を用いたTFTの開発が活発に行われている。
例えば、室温成膜が可能でアモルファス状態でa−Si以上の移動度を示すInGaZnO(a−IGZO)が提案されている(非特許文献1参照)。これをきっかけとして、移動度の高いアモルファス酸化物半導体が精力的に研究されている。
【0009】
しかしながら、現在研究されているこれら酸化物半導体は、全てn型酸化物半導体であり、これらに匹敵する有用なp型酸化物半導体は未だ開発されていない。
【0010】
有機EL素子等を用いた電流駆動型ディスプレイでは、図9に示すような2T1C回路を基本の駆動回路としている。図9のように駆動トランジスタである電界効果型トランジスタ20がp型であれば大きな問題はないが、該駆動トランジスタがn型であると所謂ソースフォロワー接続になってしまう。この場合、有機EL素子特性の経時変化(特に電圧上昇)により、前記駆動トランジスタの動作点が異なるゲート電圧の動作点へと移動してしまい、ディスプレイの半減寿命を短くしてしまうという問題がある。
【0011】
したがって、新規なp型酸化物半導体を活性層に用いた電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子、及び該表示素子を用いた画像表示装置、並びに該画像表示装置を備えるシステムの提供が求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、新規なp型酸化物半導体を活性層に用いた電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子、及び該表示素子を用いた画像表示装置、並びに該画像表示装置を備えるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ゲート電圧を印加するためのゲート電極と、
電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に形成されたp型酸化物半導体からなる活性層と、
前記ゲート電極と前記活性層との間に形成されたゲート絶縁層とを有し、
前記p型酸化物半導体が、一般式ABO(Aは、Sr及びBaの少なくともいずれかを含む。Bは少なくともBiを含む。)で表され、かつ擬ペロブスカイト構造であることを特徴とする電界効果型トランジスタである。
<2> Bが、更にSb、Nb、及びTaの少なくともいずれかを含む前記<1>に記載の電界効果型トランジスタである。
<3> Aサイトへp型ドーピングがされており、該p型ドーピングが、K、Rb、及びCsから選択される少なくともいずれかの導入による前記<1>から<2>のいずれかに記載の電界効果型トランジスタである。
<4> Bサイトへp型ドーピングがされており、該p型ドーピングが、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、及びCeから選択される少なくともいずれかの導入による前記<1>から<3>のいずれかに記載の電界効果型トランジスタである。
<5> 駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と、
前記<1>から<4>のいずれかに記載の電界効果型トランジスタを有し、かつ前記光制御素子を駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする表示素子である。
<6> 光制御素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子、及びエレクトロクロミック素子のいずれかを有する前記<5>記載の表示素子である。
<7> 光制御素子が、液晶素子、電気泳動素子、及びエレクトロウェッティング素子のいずれかを有する前記<5>に記載の表示素子である。
<8> 画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、
マトリックス状に配置された複数の前記<5>から<7>のいずれかに記載の表示素子と、
前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と、
前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置とを有することを特徴とする画像表示装置である。
<9> 前記<8>に記載の画像表示装置と、
表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置とを有することを特徴とするシステムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、新規なp型酸化物半導体を活性層に用いた電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子、及び該表示素子を用いた画像表示装置、並びに該画像表示装置を備えるシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、トップコンタクト・ボトムゲート型の電界効果型トランジスタの一例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、ボトムコンタクト・ボトムゲート型の電界効果型トランジスタの一例を示す概略構成図である。
【図3】図3は、トップコンタクト・トップゲート型の電界効果型トランジスタの一例を示す概略構成図である。
【図4】図4は、ボトムコンタクト・トップゲート型の電界効果型トランジスタの一例を示す概略構成図である。
【図5】図5は、本発明のシステムとしてのテレビジョン装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】図6は、図5における画像表示装置を説明するための図(その1)である。
【図7】図7は、図5における画像表示装置を説明するための図(その2)である。
【図8】図8は、図5における画像表示装置を説明するための図(その3)である。
【図9】図9は、本発明の表示素子の一例を説明するための図である。
【図10】図10は、表示素子における有機EL素子と電界効果型トランジスタの位置関係の一例を示す概略構成図である。
【図11】図11は、表示素子における有機EL素子と電界効果型トランジスタの位置関係の他の一例を示す概略構成図である。
【図12】図12は、有機EL素子の一例を示す概略構成図である。
【図13】図13は、表示制御装置を説明するための図である。
【図14】図14は、液晶ディスプレイを説明するための図である。
【図15】図15は、図14における表示素子を説明するための図である。
【図16】図16は、実施例1の電界効果型トランジスタの活性層のX線回折パターン図である。
【図17】図17は、実施例2の電界効果型トランジスタの活性層のX線回折パターン図である。
【図18】図18は、実施例3の電界効果型トランジスタの活性層のX線回折パターン図である。
【図19】図19は、実施例4の電界効果型トランジスタの活性層のX線回折パターン図である。
【図20】図20は、実施例5の電界効果型トランジスタの活性層のX線回折パターン図である。
【図21】図21は、比較例1の電界効果型トランジスタの活性層のX線回折パターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(電界効果型トランジスタ)
本発明の電界効果型トランジスタは、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、活性層と、ゲート絶縁層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0017】
<ゲート電極>
前記ゲート電極としては、ゲート電圧を印加するための電極であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ゲート電極の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Mo、Al、Ag、Cu等の金属乃至合金、ITO、ATO等の透明導電性酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PANI)等の有機導電体、などが挙げられる。
【0018】
前記ゲート電極の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)スパッタ法、ディップコーティング法等による成膜後、フォトリソグラフィーによってパターニングする方法、(ii)インクジェット、ナノインプリント、グラビア等の印刷プロセスによって、所望の形状を直接成膜する方法、などが挙げられる。
【0019】
前記ゲート電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20nm〜1μmが好ましく、50nm〜300nmがより好ましい。
【0020】
<ソース電極、及びドレイン電極>
前記ソース電極、及び前記ドレイン電極としては、電流を取り出すための電極であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ソース電極、及び前記ドレイン電極の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ゲート電極の説明において記載した材質と同じ材質が挙げられる。
【0021】
前記ソース電極、及び前記ドレイン電極の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ゲート電極の説明において記載した形成方法と同じ方法が挙げられる。
【0022】
前記ソース電極、及び前記ドレイン電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20nm〜1μmが好ましく、50nm〜300nmがより好ましい。
【0023】
<活性層>
前記活性層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に形成されたp型酸化物半導体からなる層である。
前記p型酸化物半導体は、一般式ABO(Aは、Sr及びBaの少なくともいずれかを含む。Bは少なくともBiを含む。)で表され、かつ擬ペロブスカイト構造である。
【0024】
高性能のp型酸化物半導体を実現する為には、価電子帯の頂上を重金属のs軌道で構成することが望ましい。このためには、最外殻がs電子配置をとる低酸化状態のp−blockカチオン(Sn2+、Pb2+、Sb3+、Bi3+、Te4+)が候補となる。
【0025】
しかし、通常、これらのカチオンの酸素配位多面体はピラミッド構造を採りs軌道が安定化して酸素の2p軌道より深くなってしまうため、価電子帯の頂上は酸素2p軌道で構成され、高移動度のバンドを形成しない。カチオンs軌道の安定化を避けるためには、配位多面体が対称性の高い八面体構造を有することが望ましい。
【0026】
ペロブスカイト化合物であるBa0.60.4BiOはTc>20Kの超電導酸化物であることが知られている(L.F.Mattheiss,他2名、「Superconductivity above 20 K in the Ba−K−Bi−O system」、Physical Review B、VOL37、No.7、1988、pp.3475−3476)。該超電導酸化物において、ペロブスカイト結晶のBサイトを占有するBiはBiO八面体構造を採り、形式的には4価で、幅広い6sバンドは半占有状態になり金属的である。
Baに対するKの置換量が10%未満の場合、結晶構造は単斜晶に歪み、大小2種類のBiO八面体が交互に連なる構造になる。この時、大きいBiO八面体のBiはBi3+、小さいBiO八面体のBiはBi5+であり、価電子帯頂上はBi3+の占有6sバンド、伝導帯底部はBi5+の非占有6sバンドから構成される。このような構造によって、初めて高移動度のカチオンs価電子バンド(Bi3+の6sバンド)が実現できる。
【0027】
同様の特性が、SrBiOのSrをKで置換した(Sr、K)BiOに関して報告されている(S.M.Kazakov,他9名、「Discovery of a second family of bismuth−oxide−based superconductors」、Nature、VOL390、1997、pp.148−150)。
【0028】
本発明における前記p型酸化物半導体は、一般式ABO(Aは、Sr及びBaの少なくともいずれかを含む。Bは少なくともBiを含む。)で表され、かつ擬ペロブスカイト構造である。擬ペロブスカイト構造とは、単純な立方晶ペロブスカイト構造より歪んでいて、大小2種類のBO八面体を含んだ構造である。
【0029】
前記p型酸化物半導体は、(Sr,Ba)BiOを基本組成とする。前記一般式ABOの前記Aにおける前記Sr、及びBaの量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
また、前記p型酸化物半導体は、(Sr,Ba)BiOを基本組成とし、前記一般式ABOの前記Bは、更にSb、Nb、及びTaの少なくともいずれかを含んでいることが好ましい。即ち、Bサイトの半分を占めるBi5+のサイトの一部又は全部をSb5+、Nb5+、及びTa5+の少なくともいずれかで置換していることが好ましい。置換位置としては、大小2種類のBO八面体のうち、小さい方のBO八面体のBサイトが置換されていなければならない。p型の伝導に寄与する価電子帯頂上はBi3+の6sバンドであるから、Bi3+の占有する大きいBO八面体を置換することは好ましくない。
したがって、前記Bにおける前記Sb、Nb、及びTaの量としては、目的に応じて適宜選択することができるが、前記Bサイト元素の全量に対して、0モル%〜50モル%が好ましく、25モル%〜50モル%がより好ましい。前記Sb、Nb、及びTaの量が、25モル%未満であると、酸素欠損がp型のキャリアを補償してしまうことがあり、50モル%を超えると、前記Sb、Nb、及びTaが、大きいBO八面体のBサイトを置換してしまうことがある。前記Sb、Nb、及びTaの量が、前記より好ましい範囲内であると、キャリア生成、及び価電子帯頂上の状態密度の点で有利である。
【0031】
前記置換には次のような効果がある。酸化物半導体は酸素欠損が生じやすく、酸素欠損は正孔キャリアを補償してしまう。そのため、充分に酸素を導入してむしろ酸素過剰な状態にすることが好ましい。pブロック元素の酸化還元平衡は重元素ほど低酸化状態が安定であるため、Bi5+をSb5+、Nb5+、及びTa5+の少なくともいずれかで置換することは酸素欠損を防ぐ上で有効である。
また、前記置換によって、伝導帯底部はSb5+の5sバンド、Nb5+の4dバンド、又はTa5+の5dバンドになるため、伝導帯のエネルギーが上昇し、バンドギャップが広がる効果がある。
【0032】
酸化物半導体がp型を実現するためには、正孔をドープすることが好ましい。p型の置換ドーピング(p型ドーピング)が成立するためには、被置換カチオンサイトに、被置換カチオンの価数より小さい価数を有する置換カチオンが導入され、尚且つ局所構造が維持されることが必要である。
【0033】
前記p型酸化物半導体は、Aサイトへp型ドーピングがされており、該p型ドーピングが、K、Rb、及びCsから選択される少なくともいずれかの導入によることが好ましい。即ち、前記一般式ABOにおける(Sr2+,Ba2+)サイトに、K、Rb、及びCsから選択される少なくともいずれかの1価カチオンが導入されていることが好ましい。これらにより、正孔キャリアを生成することができる。
前記p型ドーピングにおけるドーピング量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記Aサイト元素の全量に対して、0.1モル%〜10モル%が好ましく、0.2モル%〜5モル%がより好ましい。前記ドーピング量が、0.1モル%未満であると、キャリア生成が不十分なことがあり、10モル%を超えると、結晶構造の対称性が上がり、Bサイトが一種類になることがある。前記ドーピング量が、前記より好ましい範囲内であると、十分な正孔キャリアを生成し、それをBi3+の価電子バンドに供給する点で有利である。
【0034】
前記p型酸化物半導体は、Bサイトへp型ドーピングがされており、該p型ドーピングが、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、及びCeから選択される少なくともいずれかの導入によることが好ましい。即ち、前記一般式ABOにおけるBi3+サイトに、Sn2+、及びPb2+の少なくともいずれかの2価カチオンが導入されていることが好ましい。また、前記一般式ABOにおけるBi5+サイトに、Sn4+、Pb4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、及びCe4+から選択される少なくともいずれかの4価カチオンが導入されていることが好ましい。これらにより、正孔キャリアを生成することができる。
前記p型ドーピングにおけるドーピング量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記Bサイト元素の全量に対して、0.1モル%〜10モル%が好ましく、0.2モル%〜5モル%がより好ましい。前記ドーピング量が、0.1モル%未満であると、キャリア生成が不十分なことがあり、10モル%を超えると、結晶構造の対称性が上がり、Bサイトが一種類になることがある。前記ドーピング量が、前記より好ましい範囲内であると、十分な正孔キャリアを生成し、それをBi3+の価電子バンドに供給する点で有利である。
【0035】
前記置換及びドーピングの方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ法により、KをドープしたBaBiOからなる活性層を形成する場合には、KをドープしたBaBiOターゲットを用意すればよい。
【0036】
ターゲットの作製には、市販の原料試薬である金属酸化物、超酸化物、炭酸塩等を利用することができる。そして組成に応じた適切な温度と時間で熱処理することにより焼結体ターゲットを作製することができる。
【0037】
前記活性層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、スパッタ法、パルスレーザーデポジッション(PLD)法、CVD法、ALD法等の真空プロセス、ディップコーティング、インクジェット、ナノインプリント等の印刷法などが挙げられる。
【0038】
前記印刷法を用いる場合には、所望の特性のインクを作製することが好ましい。前記インクは、例えば、金属原料、溶媒などを含有する。前記金属原料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ネオデカン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸カリウム等の有機カルボン酸塩、バリウムアセチルアセトナート、トリフェニルアンチモン等の有機金属錯体、チタニウムブトキシド、ニオブエトキシド等の金属アルコキシド、塩化スズ、硝酸ストロンチウム等の無機塩などが挙げられる。前記溶媒としては、前記金属原料の混合物を十分に溶解する溶媒であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、2−エチルヘキサン酸、アセチルアセトン、エチレングリコール、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
また、前記インクは、使用する印刷方法に適したインク物性(粘弾性や誘電率等)を有するように調整することができる溶媒を含有していてもよい。そのような溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0039】
前記印刷法においては、印刷後の乾燥の後、所望の酸化物半導体薄膜を得るために、熱や光などのエネルギーを与えることが好ましい。光エネルギーとしての短波長の紫外線は、インク中に含まれている余分な有機物などの化学結合を切断し分解するうえで非常に有効である。また、オゾンを付与し酸化を促進することも好ましい。熱処理の際の温度、時間、雰囲気としては、熱処理により、分解物や揮発性溶媒を系外に散逸させ、緻密な酸化物半導体膜を得ることができる条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
前記活性層を形成する際に、結晶性を高めるために、基材の加熱を行ってもよいし、酸素気流中でアニールを行ってもよい。
【0041】
前記活性層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.5μmがより好ましい。
【0042】
<ゲート絶縁層>
前記ゲート絶縁層としては、前記ゲート電極と前記活性層との間に形成された絶縁層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ゲート絶縁層の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiO、SiN等の既に広く量産に利用されている材料や、La、HfO等の高誘電率材料、ポリイミド(PI)やフッ素系樹脂等の有機材料などが挙げられる。
【0043】
前記ゲート絶縁層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ、化学気相蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)等の真空成膜法、スピンコート、ダイコート、インクジェット等の印刷法などが挙げられる。
【0044】
前記ゲート絶縁層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm〜3μmが好ましく、100nm〜1μmがより好ましい。
【0045】
前記電界効果型トランジスタの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トップコンタクト・ボトムゲート型(図1)、ボトムコンタクト・ボトムゲート型(図2)、トップコンタクト・トップゲート型(図3)、ボトムコンタクト・トップゲート型(図4)などが挙げられる。
なお、図1〜図4中、21は基材、22は活性層、23はソース電極、24はドレイン電極、25はゲート絶縁層、26はゲート電極を表す。
【0046】
前記電界効果型トランジスタは、後述する表示素子に好適に使用できるが、これに限られるものではなく、例えば、ICカード、IDタグなどにも使用することができる。
【0047】
<電界効果型トランジスタの製造方法>
前記電界効果型トランジスタの製造方法の一例を説明する。
【0048】
まず、基材上にゲート電極を形成する。
前記基材の形状、構造、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基材、プラスチック基材、などが挙げられる。
前記ガラス基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無アルカリガラス、シリカガラス、などが挙げられる。
前記プラスチック基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、などが挙げられる。
なお、前記基材は、表面の清浄化及び密着性向上の点で、酸素プラズマ、UVオゾン、UV照射洗浄等の前処理が行われることが好ましい。
【0049】
続いて、前記ゲート電極上にゲート絶縁層を形成する。
続いて、チャネル領域であって前記ゲート絶縁層上に、p型酸化物半導体からなる活性層を形成する。
続いて、前記ゲート絶縁層上に、前記活性層を跨ぐようにソース電極及びドレイン電極を離間して形成する。
以上により、電界効果型トランジスタが製造される。この製造方法では、例えば、図1に示すようなトップコンタクト・ボトムゲート型の電界効果型トランジスタが製造される。
【0050】
(表示素子)
本発明の表示素子は、少なくとも、光制御素子と、前記光制御素子を駆動する駆動回路とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0051】
<光制御素子>
前記光制御素子としては、駆動信号に応じて光出力を制御する素子である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、エレクトロクロミック(EC)素子、液晶素子、電気泳動素子、エレクトロウェッティング素子などが挙げられる。
【0052】
<駆動回路>
前記駆動回路としては、本発明の前記電界効果型トランジスタを有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0053】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
前記表示素子は、本発明の前記電界効果型トランジスタを有しているため、高速駆動が可能、長寿命、かつ素子間のばらつきを小さくすることが可能となる。また、前記表示素子に経時変化が起きても駆動トランジスタを一定のゲート電圧で動作させることができる。
【0055】
(画像表示装置)
本発明の画像表示装置は、少なくとも、表示素子と、配線と、表示制御装置とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0056】
<表示素子>
前記表示素子としては、マトリックス状に配置された本発明の前記表示素子である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0057】
<配線>
前記配線は、前記表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧と画像データ信号とを個別に印加可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0058】
<表示制御装置>
前記表示制御装置としては、画像データに応じて、各電界効果型トランジスタのゲート電圧と信号電圧とを複数の前記配線を介して個別に制御可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0059】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0060】
前記画像表示装置は、本発明の前記表示素子を有しているため、素子間のばらつきも小さくすることが可能になり、大画面で高品質の画像を表示することが可能となる。
【0061】
(システム)
本発明のシステムは、少なくとも、本発明の前記画像表示装置と、画像データ作成装置とを有する。
前記画像データ作成装置は、表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する。
【0062】
前記システムは、本発明の前記画像表示装置を備えているため、画像情報を高精細に表示することが可能となる。
【0063】
以下、本発明の表示素子、画像表示装置、及びシステムを、図を用いて説明する。
まず、本発明のシステムとしてのテレビジョン装置を、図5を用いて説明する。
【0064】
図5において、テレビジョン装置100は、主制御装置101、チューナ103、ADコンバータ(ADC)104、復調回路105、TS(Transport Stream)デコーダ106、音声デコーダ111、DAコンバータ(DAC)112、音声出力回路113、スピーカ114、映像デコーダ121、映像・OSD合成回路122、映像出力回路123、画像表示装置124、OSD描画回路125、メモリ131、操作装置132、ドライブインターフェース(ドライブIF)141、ハードディスク装置142、光ディスク装置143、IR受光器151、及び通信制御装置152を備える。
映像デコーダ121と、映像・OSD合成回路122と、映像出力回路123と、OSD描画回路125とが、画像データ作成装置を構成する。
【0065】
主制御装置101は、CPU、フラッシュROM、及びRAMなどから構成され、テレビジョン装置100の全体を制御する。
前記フラッシュROMには、前記CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム、及び前記CPUでの処理に用いられる各種データなどが格納されている。
また、RAMは、作業用のメモリである。
【0066】
チューナ103は、アンテナ210で受信された放送波の中から、予め設定されているチャンネルの放送を選局する。
【0067】
ADC104は、チューナ103の出力信号(アナログ情報)をデジタル情報に変換する。
【0068】
復調回路105は、ADC104からのデジタル情報を復調する。
【0069】
TSデコーダ106は、復調回路105の出力信号をTSデコードし、音声情報及び映像情報を分離する。
【0070】
音声デコーダ111は、TSデコーダ106からの音声情報をデコードする。
【0071】
DAコンバータ(DAC)112は、音声デコーダ111の出力信号をアナログ信号に変換する。
【0072】
音声出力回路113は、DAコンバータ(DAC)112の出力信号をスピーカ114に出力する。
【0073】
映像デコーダ121は、TSデコーダ106からの映像情報をデコードする。
【0074】
映像・OSD合成回路122は、映像デコーダ121の出力信号とOSD描画回路125の出力信号を合成する。
【0075】
映像出力回路123は、映像・OSD合成回路122の出力信号を画像表示装置124に出力する。
【0076】
OSD描画回路125は、画像表示装置124の画面に文字や図形を表示するためのキャラクタ・ジェネレータを備えており、操作装置132、IR受光器151からの指示に応じて表示情報が含まれる信号を生成する。
【0077】
メモリ131には、AV(Audio−Visual)データ等が一時的に蓄積される。
【0078】
操作装置132は、例えば、コントロールパネルなどの入力媒体(図示省略)を備え、ユーザから入力された各種情報を主制御装置101に通知する。
【0079】
ドライブIF141は、双方向の通信インターフェースであり、一例としてATAPI(AT Attachment Packet Interface)に準拠している。
【0080】
ハードディスク装置142は、ハードディスクと、該ハードディスクを駆動するための駆動装置などから構成されている。駆動装置は、ハードディスクにデータを記録するとともに、ハードディスクに記録されているデータを再生する。
【0081】
光ディスク装置143は、光ディスク(例えば、DVDなど)にデータを記録するとともに、光ディスクに記録されているデータを再生する。
【0082】
IR受光器151は、リモコン送信機220からの光信号を受信し、主制御装置101に通知する。
【0083】
通信制御装置152は、インターネットとの通信を制御する。インターネットを介して各種情報を取得することができる。
【0084】
図6は、本発明の画像表示装置の一例を示す概略構成図である。
図6において、画像表示装置124は、表示器300と、表示制御装置400とを有する。
表示器300は、図7に示されるように、複数(ここでは、n×m個)の表示素子302がマトリックス状に配置されたディスプレイ310を有する。
また、ディスプレイ310は、図8に示されるように、X軸方向に沿って等間隔に配置されているn本の走査線(X0、X1、X2、X3、・・・、Xn−2、Xn−1)と、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本のデータ線(Y0、Y1、Y2、Y3、・・・、Ym−1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本の電流供給線(Y0i、Y1i、Y2i、Y3i、・・・・・、Ym−1i)とを有する。
よって、走査線とデータ線とによって、表示素子を特定することができる。
【0085】
以下、本発明の表示素子を図9を用いて説明する。
図9は、本発明の表示素子の一例を示す概略構成図である。
前記表示素子は、一例として図9に示されるように、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子350と、該有機EL素子350を発光させるためのドライブ回路320とを有している。即ち、ディスプレイ310は、いわゆるアクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイである。また、ディスプレイ310は、カラー対応の32インチ型のディスプレイである。なお、大きさは、これに限定されるものではない。
【0086】
図10には、表示素子302における有機EL素子350とドライブ回路としての電界効果型トランジスタ20との位置関係の一例が示されている。ここでは、電界効果型トランジスタ20の横に有機EL素子350が配置されている。なお、電界効果型トランジスタ10及びキャパシタ(図示せず)も同一基材上に形成されている。
【0087】
図10には図示されていないが、活性層22の上部に保護膜を設けることも好適である。材料としては、SiO、SiN、Al、フッ素系ポリマー等、適宜利用できる。
【0088】
また、例えば、図11に示されるように、電界効果型トランジスタ20の上に有機EL素子350が配置されても良い。この場合には、ゲート電極26に透明性が要求されるので、ゲート電極26には、ITO、In、SnO、ZnO、Gaが添加されたZnO、Alが添加されたZnO、Sbが添加されたSnOなどの導電性を有する透明な酸化物が用いられる。なお、符号360は層間絶縁膜(平坦化膜)である。この絶縁膜にはポリイミドやアクリル系の樹脂等を利用できる。
【0089】
図12は、有機EL素子の一例を示す概略構成図である。
図12において、有機EL素子350は、陰極312と、陽極314と、有機EL薄膜層340とを有する。
【0090】
陰極312の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金、アルミニウム(Al)−リチウム(Li)合金、ITO(Indium Tin Oxide)、などが挙げられる。なお、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金は、充分厚ければ高反射率電極となり、極薄膜(20nm程度未満)では半透明電極となる。図12では陽極側から光を取り出しているが、陰極を透明、又は半透明電極とすることによって陰極側から光を取り出すことができる。
【0091】
陽極314の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、銀(Ag)−ネオジウム(Nd)合金、などが挙げられる。なお、銀合金を用いた場合は、高反射率電極となり、陰極側から光を取り出す場合に好適である。
【0092】
有機EL薄膜層340は、電子輸送層342と、発光層344と、正孔輸送層346とを有する。電子輸送層342は、陰極312に接続され、正孔輸送層346は、陽極314に接続されている。陽極314と陰極312との間に所定の電圧を印加すると、発光層344が発光する。
【0093】
ここで、電子輸送層342と発光層344が1つの層を形成してもよく、また、電子輸送層342と陰極312との間に電子注入層が設けられてもよく、更に、正孔輸送層346と陽極314との間に正孔注入層が設けられてもよい。
【0094】
また、基材側から光を取り出すいわゆる「ボトムエミッション」の場合について説明したが、基材と反対側から光を取り出す「トップエミッション」であってもよい。
【0095】
図9におけるドライブ回路320について説明する。
ドライブ回路320は、2つの電界効果型トランジスタ10及び20と、キャパシタ30を有する。
【0096】
電界効果型トランジスタ10は、スイッチ素子として動作する。電界効果型トランジスタ10のゲート電極Gは、所定の走査線に接続され、電界効果型トランジスタ10のソース電極Sは、所定のデータ線に接続されている。また、電界効果型トランジスタ10のドレイン電極Dは、キャパシタ30の一方の端子に接続されている。
【0097】
電界効果型トランジスタ20は、有機EL素子350に電流を供給する。電界効果型トランジスタ20のゲート電極Gは、電界効果型トランジスタ10のドレイン電極Dと接続されている。そして、電界効果型トランジスタ20のドレイン電極Dは、有機EL素子350の陽極314に接続され、電界効果型トランジスタ20のソース電極Sは、所定の電流供給線に接続されている。
【0098】
キャパシタ30は、電界効果型トランジスタ10の状態、即ちデータを記憶する。キャパシタ30の他方の端子は、所定の電流供給線に接続されている。
【0099】
そこで、電界効果型トランジスタ10が「オン」状態になると、信号線Y2を介して画像データがキャパシタ30に記憶され、電界効果型トランジスタ10が「オフ」状態になった後も、電界効果型トランジスタ20を画像データに対応した「オン」状態に保持することによって、有機EL素子350は駆動される。
【0100】
図13は、本発明の画像表示装置の他の一例を示す概略構成図である。
図13において、画像表示装置は、表示素子302と、配線(走査線、データ線、電流供給線)と、表示制御装置400とを有する。
表示制御装置400は、画像データ処理回路402と、走査線駆動回路404と、データ線駆動回路406とを有する。
画像データ処理回路402は、映像出力回路123の出力信号に基づいて、ディスプレイにおける複数の表示素子302の輝度を判断する。
走査線駆動回路404は、画像データ処理回路402の指示に応じてn本の走査線に個別に電圧を印加する。
データ線駆動回路406は、画像データ処理回路402の指示に応じてm本のデータ線に個別に電圧を印加する。
【0101】
また、上記実施形態では、光制御素子が有機EL素子の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光制御素子がエレクトロクロミック素子であってもよい。この場合は、上記ディスプレイは、エレクトロクロミックディスプレイとなる。
【0102】
また、前記光制御素子が液晶素子であってもよく、この場合ディスプレイは、液晶ディスプレイとなり、図14に示されるように、表示素子302’に対する電流供給線は不要となる。また、図15に示されるように、ドライブ回路320’は、電界効果型トランジスタ10及び20と同様の1つの電界効果型トランジスタ40により構成することができる。電界効果型トランジスタ40において、ゲート電極Gが所定の走査線に接続され、ソース電極Sが所定のデータ線に接続されている。また、ドレイン電極Dが、キャパシタ361及び液晶素子370の画素電極に接続されている。
【0103】
また、前記光制御素子は、電気泳動素子、無機EL素子、エレクトロウェッティング素子であってもよい。
【0104】
以上、本発明のシステムがテレビジョン装置である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、画像及び情報を表示する装置として画像表示装置124を備えていればよい。例えば、コンピュータ(パソコンを含む)と画像表示装置124とが接続されたコンピュータシステムであってもよい。
【0105】
また、携帯電話、携帯型音楽再生装置、携帯型動画再生装置、電子BOOK、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報機器、スチルカメラやビデオカメラなどの撮像機器における表示手段に画像表示装置124を用いることができる。また、車、航空機、電車、船舶等の移動体システムにおける各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。さらに、計測装置、分析装置、医療機器、広告媒体における各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0107】
(製造例1)
<Ba0.950.05BiO焼結体ターゲットの作製>
Ba0.950.05BiO焼結体ターゲットは、原料としてBaO、Bi、及びKOを使用し、2段階焼成で作製した。初めにBaOを50g、Biを80g、及びKOを1.3g秤量、混合し、アルミナ坩堝中で675℃、72時間反応させた。その後、これを粉砕し円盤状にプレス成形して、再度675℃、72時間反応させた。焼成後、円盤を所望のサイズ(直径76mm、厚み5mm)に研磨し、銅製のバッキングプレートにボンディングして、スパッタリング用の焼結体ターゲットを得た。
得られた焼結体ターゲットの組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:K:Bi=0.95:0.05:1.00であった。
【0108】
(製造例2)
<BaBi0.5Sb0.46Sn0.04焼結体ターゲットの作製>
BaBi0.5Sb0.46Sn0.04焼結体ターゲットは、原料としてBaO、Bi、Sb、及びSnOを使用し、2段階焼成で作製した。初めにBaOを53g、Biを40g、Sbを26g、及びSnOを2.1g秤量、混合し、アルミナ坩堝中で730℃、72時間反応させた。その後、これを粉砕し円盤状にプレス成形して、再度730℃、72時間反応させた。焼成後、円盤を所望のサイズ(直径76mm、厚み5mm)に研磨し、銅製のバッキングプレートにボンディングして、スパッタリング用の焼結体ターゲットを得た。
得られた焼結体ターゲットの組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:Bi:Sb:Sn=0.992:0.504:0.469:0.037であった。
【0109】
(製造例3)
<Ba0.95Rb0.05Bi0.75Nb0.25焼結体ターゲットの作製>
Ba0.95Rb0.05Bi0.75Nb0.25焼結体ターゲットは、原料としてBaO、Bi、Nb、及びRbCOを使用し、2段階焼成で作製した。初めにBaOを50g、Biを60g、Nbを11g、及びRbCOを2.0g秤量、混合し、アルミナ坩堝中で700℃、72時間反応させた。これを粉砕し円盤状にプレス成形後、再び700℃、72時間反応させた。焼成後、円盤を所望のサイズ(直径76mm、厚み5mm)に研磨し、銅製のバッキングプレートにボンディングして、スパッタリング用の焼結体ターゲットを得た。
得られた焼結体ターゲットの組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:Rb:Bi:Nb=0.95:0.05:0.751:0.248であった。
【0110】
(製造例4)
<BaBi0.9Pb0.1焼結体ターゲットの作製>
BaBi0.9Pb0.1焼結体ターゲットは、原料としてBaO、Bi、及びPbOを使用し、2段階焼成で作製した。初めにBaOを53g、Biを72g、PbOを7.7g秤量、混合し、アルミナ坩堝中で700℃、72時間反応させた。その後、これを粉砕し円盤状にプレス成形して、再度700℃、72時間反応させた。焼成後、円盤を所望のサイズ(直径76mm、厚み5mm)に研磨し、銅製のバッキングプレートにボンディングして、スパッタリング用の焼結体ターゲットを得た。
得られた焼結体ターゲットの組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:Bi:Pb=1.0:0.9:0.1であった。
【0111】
(製造例5)
<Sr0.2Ba0.750.05BiO酸化物半導体用インクの作製>
2−エチルヘキサン酸ストロンチウム2wt%トルエン溶液1.75mL、2−エチルヘキサン酸バリウム8wt%トルエン溶液2.57mL、2−エチルヘキサン酸カリウム8.6wt%2−プロパノール溶液0.05mL、及び2−エチルヘキサン酸ビスマス25wt%2−エチルヘキサン酸溶液1.67mLを混合後、トルエン5mLで希釈し、Sr0.2Ba0.750.05BiO酸化物半導体用インクを得た。
【0112】
(実施例1)
<電界効果型トランジスタの作製>
−基材の準備(ゲート電極、ゲート絶縁層)−
基材として熱酸化膜(厚み200nm)付きSi基板を用いた。該Si基板を、中性洗剤、純水、及びイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。この基材を乾燥後、さらにUV−オゾン処理を90℃で10分間行った。なお、前記熱酸化膜がゲート絶縁層であり、前記Si基板がゲート電極である。
【0113】
−ソース電極及びドレイン電極の形成−
前記熱酸化膜(Si熱酸化膜)をゲート絶縁層とし、その上に、メタルマスクを介してCrを厚み1nm、引き続きAuを厚み100nm蒸着し、ソース電極及びドレイン電極を形成した。
【0114】
−活性層の形成−
製造例1で作製した焼結体ターゲット(Ba0.950.05BiO)を用い、RFマグネトロンスパッタリング法で、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に跨って、KをドーピングしたBaBiO(Ba0.950.05BiO)を100nm成膜し活性層を形成した。スパッタガスとしてアルゴンガスと酸素ガスを用いた。RFマグネトロンスパッタリングは、全圧1.1Pa、酸素濃度40%、RFパワー50Wの条件で行った。パターニングにはメタルマスクを用いた。チャネル長は50μm、チャネル幅は0.4mmとした。 最後に、酸素気流中で500℃、1時間のアニールを行い、電界効果型トランジスタを作製した。
また、別のSiOガラス基板上に電界効果型トランジスタの活性層の形成と同時にBaKBiO膜を作製し、X線回折及び組成分析のサンプルとした。BaKBiO膜の組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:K:Bi=0.95:0.05:1.00であった。
【0115】
(実施例2)
<電界効果型トランジスタの作製>
実施例1において、焼結体ターゲットを製造例2で作製した焼結体ターゲット(BaBi0.5Sb0.46Sn0.04)に代え、アニール温度を700℃とした以外は、実施例1と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。
また、別のSiOガラス基板上に電界効果型トランジスタの活性層の形成と同時にBaBiSbSnO膜を作製し、X線回折及び組成分析のサンプルとした。BaBiSbSnO膜の組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:Bi:Sb:Sn=0.992:0.504:0.469:0.037であった。
【0116】
(実施例3)
<電界効果型トランジスタの作製>
実施例1において、焼結体ターゲットを製造例3で作製した焼結体ターゲット(Ba0.95Rb0.05Bi0.75Nb0.25)に代え、アニール温度を650℃とした以外は、実施例1と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。
また、別のSiOガラス基板上に電界効果型トランジスタの活性層の形成と同時にBaRbBiNbO膜を作製し、X線回折及び組成分析のサンプルとした。BaRbBiNbO膜の組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:Rb:Bi:Nb=0.95:0.05:0.751:0.248であった。
【0117】
(実施例4)
<電界効果型トランジスタの作製>
実施例1において、焼結体ターゲットを製造例4で作製した焼結体ターゲット(BaBi0.9Pb0.1)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。
また、別のSiOガラス基板上に電界効果型トランジスタの活性層の形成と同時にBaBiPbO膜を作製し、X線回折及び組成分析のサンプルとした。BaBiPbO膜の組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Ba:Bi:Pb=1.0:0.9:0.1であった。
【0118】
(実施例5)
<電界効果型トランジスタの作製>
熱酸化膜(厚み200nm)付きSi基板を、中性洗剤、純水、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。この基板を乾燥後、さらにUV−オゾン処理を90℃で10分間行った。
次に、製造例5で作製したSr0.2Ba0.750.05BiO酸化物半導体用インクを前記基板上にスピンコートした。120℃で1時間乾燥後、酸素気流中でエキシマランプ(222nm)を照射しながら350℃で3時間焼成し、更に500℃で1時間のアニールを行い、Sr0.2Ba0.750.05BiO膜を形成した。この後、フォトレジストを塗布し、プリベーク、露光装置による露光、現像により、形成される活性層のパターンと同様のレジストパターンを形成し、更に、ウェットエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSr0.2Ba0.750.05BiO膜を除去し、この後、レジストパターンも除去することにより活性層を形成した。
次に活性層上に、メタルマスクを介してCrを1nm、引き続きAuを100nm蒸着し、ソース・ドレイン電極を形成した。チャネル長は50nm、チャネル幅は0.4mmとした。
最後に、酸素気流中で300℃、1時間のアニールを行い、電界効果型トランジスタを作製した。
また、別のSiOガラス基板上に電界効果型トランジスタの活性層の形成と同様のプロセスでSrBaKBiO膜を成膜し、X線回折及び組成分析のサンプルとした。SrBaKBiO膜の組成比(原子比)は、誘導結合プラズマ発光分析(SII社製、SPS3000)により測定した結果、Sr:Ba:K:Bi=0.21:0.75:0.04:1.00であった。
【0119】
(比較例1)
<電界効果型トランジスタの作製>
実施例1において、ソース電極及びドレイン電極を形成した後にアニールを行わなかった以外は、実施例1と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。
【0120】
<評価>
実施例1〜5及び比較例1について、活性層のX線回折測定(Philips社製、X‘PertPro)を行った。その結果を図16〜図21に示す。比較例1の活性層は回折ピークが見られずアモルファス状態であったが、酸素アニールを行った実施例1〜5の活性層では、シャープな回折線が観測され、単斜晶に歪んだ擬ペロブスカイト構造と同定された。
また、実施例1〜5の電界効果型トランジスタのトランスファー特性(Vds=−20V)を測定したところ、ノーマリーオフの良好なp型特性を示した。一方、アニールしておらず、活性層がアモルファス状態であった比較例1の電界効果型トランジスタは、オンオフせず、トランジスタ特性を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の電界効果型トランジスタは、新規なp型酸化物半導体を活性層に用いており、新規のp−chのアクティブマトリックス回路などに好適に使用できる。
本発明の表示素子は、高速駆動が可能、長寿命、かつ素子間のばらつきが小さく信頼性が向上しており、本発明の画像表示装置、及びシステムに好適に使用できる。
本発明の画像表示装置は、大画面で高品質の画像を表示することが可能であり、携帯情報機器、撮像機器における表示手段、移動体システムにおける各種情報の表示手段などに好適に使用できる。
本発明のシステムは、画像情報を高精細に表示することができ、テレビジョン装置、コンピュータシステムなどに好適に使用できる。
【符号の説明】
【0122】
10 電界効果型トランジスタ
20 電界効果型トランジスタ
21 基材
22 活性層
23 ソース電極
24 ドレイン電極
25 ゲート絶縁層
26 ゲート電極
30 キャパシタ
40 電界効果型トランジスタ
100 テレビジョン装置
101 主制御装置
103 チューナ
104 ADコンバータ(ADC)
105 復調回路
106 TS(Transport Stream)デコーダ
111 音声デコーダ
112 DAコンバータ(DAC)
113 音声出力回路
114 スピーカ
121 映像デコーダ
122 映像・OSD合成回路
123 映像出力回路
124 画像表示装置
125 OSD描画回路
131 メモリ
132 操作装置
141 ドライブインターフェース(ドライブIF)
142 ハードディスク装置
143 光ディスク装置
151 IR受光器
152 通信制御装置
210 アンテナ
220 リモコン送信機
300 表示器
302、302’ 表示素子
310 ディスプレイ
312 陰極
314 陽極
320、320’ ドライブ回路(駆動回路)
340 有機EL薄膜層
342 電子輸送層
344 発光層
346 正孔輸送層
350 有機EL素子
360 層間絶縁膜
361 キャパシタ
370 液晶素子
400 表示制御装置
402 画像データ処理回路
404 走査線駆動回路
406 データ線駆動回路
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0123】
【非特許文献1】K.Nomura,他5名、「Room−temperature fabrication of transparent flexible thin−film transistors using amorphous oxide semiconductors」、NATURE、VOL432、No.25、NOVEMBER、2004、pp.488−492

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電圧を印加するためのゲート電極と、
電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に形成されたp型酸化物半導体からなる活性層と、
前記ゲート電極と前記活性層との間に形成されたゲート絶縁層とを有し、
前記p型酸化物半導体が、一般式ABO(Aは、Sr及びBaの少なくともいずれかを含む。Bは少なくともBiを含む。)で表され、かつ擬ペロブスカイト構造であることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
Bが、更にSb、Nb、及びTaの少なくともいずれかを含む請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
Aサイトへp型ドーピングがされており、該p型ドーピングが、K、Rb、及びCsから選択される少なくともいずれかの導入による請求項1から2のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
Bサイトへp型ドーピングがされており、該p型ドーピングが、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、及びCeから選択される少なくともいずれかの導入による請求項1から3のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と、
請求項1から4のいずれかに記載の電界効果型トランジスタを有し、かつ前記光制御素子を駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする表示素子。
【請求項6】
光制御素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子、及びエレクトロクロミック素子のいずれかを有する請求項5に記載の表示素子。
【請求項7】
光制御素子が、液晶素子、電気泳動素子、及びエレクトロウェッティング素子のいずれかを有する請求項5に記載の表示素子。
【請求項8】
画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、
マトリックス状に配置された複数の請求項5から7のいずれかに記載の表示素子と、
前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と、
前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置とを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像表示装置と、
表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置とを有することを特徴とするシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−151174(P2012−151174A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6967(P2011−6967)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】