説明

電磁弁及びこれを備える電磁弁ユニット

【課題】差圧制御電磁弁及びこれを備える電磁弁ユニットにおいて、圧力制御を安定して行えるようにする。
【解決手段】スプリング412の内側を流れるスプリング内流れに対して回転を与える突起6を、シート403に設ける。突起6は斜面61を有し、スプリング内流れは、この斜面61に沿って流れることにより回転が与えられる。この回転流れにより弁体の偏心が抑制されてスプリング内流れの乱れが抑制されるため、圧力制御を安定して行えるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁弁及びこれを備える電磁弁ユニットに関するもので、例えば車輪のロック傾向を回避するためのABS(アンチロックブレーキシステム)のアクチュエータに用いるものに好適である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示された従来の電磁弁は、シートに設けた弁座に対して弁体が接離して流路が開閉されるようになっており、弁体を開弁向きに付勢するコイルスプリングが、弁体を取り囲むようにして弁座よりも流体流れ下流側に配置されている。そして、シートに設けた流路からコイルスプリングの内側の空間に流出した流体は、弁体とコイルスプリングとの隙間や、コイルスプリングの線間隙間を通ってコイルスプリングの外側の空間に流れる。
【0003】
なお、この電磁弁は、コイルに通電していないときには全開となり、コイルに通電しているときには全閉となる、常開型のオンオフ制御電磁弁であるが、同様の構成の電磁弁において、コイルへの通電量を制御して電磁弁の上下流間の差圧を調整する常開型の差圧制御電磁弁も知られている。
【特許文献1】特開2002−347597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の電磁弁は、弁体やコイルスプリングとそれらを位置決め保持する部材との間に径方向の隙間が有るため、弁体やコイルスプリングには偏心が発生する。そして、シートに設けた流路から流出して弁体とコイルスプリングとの隙間を流れる流体は、弁体やコイルスプリングの偏心の影響を受けて流れの乱れが発生して乱流となり、この乱流により、差圧制御電磁弁においては圧力制御が不安定になるという問題があった。また、乱流の影響により弁体やコイルスプリングの振動が発生するという問題もあった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、差圧制御電磁弁及びこれを備える電磁弁ユニットにおいて、圧力制御を安定して行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、弁座(403b)と接離することにより、弁座(403b)よりも流体流れ上流側の第1流路(403a)と弁座(403b)よりも流体流れ下流側の第2流路(401d)との間を開閉する弁体(404)と、通電時に磁界を形成するコイル(413)、コイル(413)への通電により発生する電磁力により閉弁向きに駆動されるプランジャ(411)と、弁体(404)を有すると共にプランジャ(411)の移動に伴って往復動するシャフト(402)と、弁座(403b)および第1流路(403a)を有するシート(403)と、弁体(404)を取り囲むようにして弁座(403b)よりも流体流れ下流側に配置され、シャフト(402)を開弁向きに付勢するコイルスプリング(412)とを備え、コイル(413)への通電量が制御されることにより、第1流路(403a)の圧力と第2流路(401d)の圧力との差が制御される電磁弁であって、流体流れに回転を与える渦流発生手段(6、401d)を、弁座(403b)よりも流体流れ下流側に備えることを特徴とする。
【0007】
これによると、第1流路(403a)から流出した流体は、渦流発生手段(6、401d)にて回転を与えられて、弁体(404)の周りに周方向に回転する流れを形成する。そして、この回転流れにより弁体(404)の偏心が抑制されて流れの乱れが抑制されるため、圧力制御を安定して行えるようになる。また、流れの乱れが抑制されるため、弁体(404)やコイルスプリング(412)の振動が抑制され、圧力制御がさらに安定する。
【0008】
そして、弁座(403b)よりも流体流れ下流側でコイルスプリング(412)が弁体(404)を取り囲む構成では、そうでない構成と対比すると、コイルスプリング(412)によって区画されたその内側の比較的狭い領域に弁体(404)が配置されることとなるため、弁体(404)が乱流の影響を受け易く、また、コイルスプリング(412)の線間を乱流が通過する場合は、コイルスプリング(412)の線が乱流の影響を受け易い。このような乱流の影響を受け易い電磁弁に、本発明は特に有用である。
【0009】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の電磁弁において、渦流発生手段(6)を、コイルスプリング(412)の内側に配置することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の電磁弁において、コイルスプリング(412)の一端を受けるシート部ばね受け面(403f)を、弁座(403b)を取り囲むようにしてシート(403)に形成し、渦流発生手段(6)をシート部ばね受け面(403f)に形成することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明のように、請求項2に記載の電磁弁において、シート(403)が、弁座(403b)が設けられたテーパ面を備える場合は、渦流発生手段(6)をテーパ面に形成することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の電磁弁において、渦流発生手段(6)は斜面(61)を有する突起であり、斜面(61)は、斜面(61)上を渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの回転向きに沿って進んだときにコイルスプリング(412)の軸方向に進むような傾斜が与えられていることを特徴とする。
【0013】
これによると、第1流路(403a)から流出した流体に対して、確実に回転を与えることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の電磁弁において、渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの巻き方向と、コイルスプリング(412)の巻き方向とが同じになるように、渦流発生手段(6)の斜面(61)が設定されていることを特徴とする。
【0015】
これによると、渦流発生手段によって与えられる流体流れの巻き方向(右巻き又は左巻き)が、コイルスプリングを構成する線材の隙間の巻き方向(右巻き又は左巻き)と同じになるため、そうでない態様と比較して、流体が上記線材の隙間を通過し易くなる。したがって、第1流路から流出した流体の回転力を高く維持することができ、圧力制御がさらに安定する。
【0016】
請求項7に記載の発明では、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の電磁弁において、渦流発生手段(6)は内周壁面(620)を有する突起であり、内周壁面(620)は、渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの回転向きに沿ってコイルスプリング(412)の軸線から遠ざかることを特徴とする。
【0017】
これによると、第1流路(403a)から流出した流体に対して、確実に回転を与えることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の電磁弁において、渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの巻き方向と、コイルスプリング(412)の巻き方向とが同じになるように、渦流発生手段(6)の内周壁面(620)が設定されていることを特徴とする。
【0019】
これによると、渦流発生手段によって与えられる流体流れの巻き方向(右巻き又は左巻き)が、コイルスプリングを構成する線材の隙間の巻き方向(右巻き又は左巻き)と同じになるため、そうでない態様と比較して、流体が上記線材の隙間を通過し易くなる。したがって、第1流路から流出した流体の回転力を高く維持することができ、圧力制御がさらに安定する。
【0020】
請求項9に記載の発明のように、請求項1に記載の電磁弁において、渦流発生手段(401d)を、コイルスプリング(412)の外側に配置することができる。
【0021】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の電磁弁において、コイルスプリング(412)を取り囲むとともに、第2流路(401d)が形成されたガイド(401)を備え、第2流路(401d)は、渦流発生手段を構成するものであって、コイルスプリング(412)の軸線方向から見た状態で、コイルスプリング(412)の径方向に対して斜めになっていることを特徴とする。
【0022】
これによると、渦流発生手段によって与えられる流体流れの巻き方向(右巻き又は左巻き)が、コイルスプリングを構成する線材の隙間の巻き方向(右巻き又は左巻き)と同じになるため、そうでない態様と比較して、流体が上記線材の隙間を通過し易くなる。したがって、第1流路から流出した流体の回転力を高く維持することができ、圧力制御がさらに安定する。
【0023】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の電磁弁(4)と、第1流路(403a)側の圧力と第2流路(401d)側の圧力との差が制御されるようにコイル(413)への通電量を制御する制御手段(5)とを備えることを特徴とする。
【0024】
このような圧力差を制御する電磁弁ユニットの場合、流れの乱れが抑制されることにより、安定した圧力制御が可能になる。
【0025】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る電磁弁がアクチュエータのハウジングに組み付けられた状態を示す正面断面図である。
【0028】
図1に示すように、車両のマスタシリンダ(以下、M/Cという)1とホイールシリンダ(以下、W/Cという)2との間に、ブレーキ液圧を制御する液圧制御用アクチュエータ3が配設されている。液圧制御用アクチュエータ3は、アルミニウム合金製のハウジング3aを備え、このハウジング3aには、電磁弁4が挿入される段付円柱状の凹部3b、M/C1とW/C2との間でブレーキ液を流通させるための流路3cが形成されている。
【0029】
電磁弁4は、磁性体にて形成された段付円筒状のガイド401を備えている。このガイド401は、一端側がハウジング3aの凹部3b内に挿入され、他端はハウジング3aの外に突出している。そして、凹部3bの開口端部をかしめることにより、ガイド401がハウジング3aに液密に固定されている。
【0030】
ガイド401には、シャフト402を摺動自在に保持するガイド穴401a、シート403が圧入されるシート挿入穴401b、さらには、シート挿入穴401bの一部である空間401cをW/C2側の流路3cに連通させる連通穴401dが形成されている。より詳細には、空間401cは、シート挿入穴401bのうち、ガイド401、シャフト402およびシート403によって区画された空間である。なお、連通穴401dは、本発明の第2流路に相当する。
【0031】
円柱状のシャフト402は、非磁性体(例えばステンレス)で形成され、シート403側の端部がガイド401のガイド穴401aから突き出て空間401cに延びている。シャフト402には、略円柱状の主弁体404が一体に形成されている。主弁体404は、空間401c内に位置し、その先端に球面の弁部が形成されている。
【0032】
金属製の円筒状のシート403には、ガイド401内の空間401cとM/C1側の流路3cとを連通させる主流路403aが、その径方向中心部に形成されている。この主流路403aにおける空間401c側の端部に、主弁体404の弁部が接離するテーパ状の主弁座403bが形成され、主流路403aの途中には、主流路403aよりも通路面積が小さいオリフィス403cが形成されている。そして、主弁体404は、主弁座403bに接離することにより、ガイド401内の空間401c(あるいは、ガイド401の連通穴401dやW/C2側の流路3c)と主流路403aとの間を開閉する。なお、主流路403aは、本発明の第1流路に相当する。
【0033】
また、シート403における径方向中心からずれた位置には、ガイド401内の空間401cとM/C1側の流路3cとを連通させる副流路403dが、主流路403aに対して並列に形成されている。換言すると、副流路403dは、主流路403aをバイパスして、M/C1側の流路3cとW/C2側の流路3cに接続されている。
【0034】
この副流路403dの途中に、テーパ状の副弁座403eが形成されている。副流路403d内において、副弁座403eよりもM/C1側の流路3cに近い側に、金属製の球状の副弁体405が移動可能に挿入されている。そして、副弁体405は、圧力差によって移動して副弁座403eと接離することにより、副流路403dとM/C1側の流路3cとの間を開閉する。
【0035】
また、シート403における空間401c側の端部には、主流路403aを囲むようにして、後述するスプリング412の一端を受けるシート部ばね受け面403fが形成されている。
【0036】
ガイド401におけるシート挿入穴401bの開口端部側には、異物流入防止用のフィルタ407が挿入されている。そして、フィルタ407によって、副弁体405の開弁時の位置が決定されるようになっている。また、ガイド401の外周にも、連通穴401dを囲むようにして、異物流入防止用のフィルタ408が配置されている。
【0037】
ガイド401の他端の外周側にはスリーブ410が嵌入されており、このスリーブ410は、非磁性体金属(例えばステンレス)で形成され、一端が開口した有底円筒状を成しており、底面が略球形状を成している。
【0038】
そして、スリーブ410とガイド401とによって区画形成された空間(以下、スリーブ内空間という)に磁性体金属製の略円柱状のプランジャ411が配置され、このプランジャ411はスリーブ410内を摺動可能になっている。なお、プランジャ411がスリーブ410の底面に接することにより、プランジャ411の紙面上向きへの移動が規制される。
【0039】
プランジャ411の外周面には、プランジャ411の一端から他端まで連続して延びるプランジャ溝411aが形成されている。そして、スリーブ内空間におけるスリーブ410の底面側の空間と、スリーブ内空間におけるプランジャ411とガイド401との対向面間の空間とが、プランジャ溝411aにより連通されている。
【0040】
スリーブ410の周囲には、通電時に磁界を形成するコイル413が巻回されたスプール414が配置されている。スプール414の外周には磁路部材をなすヨーク415が配置されている。そして、ECU(電子制御ユニット)5からコイル413への通電により発生する電磁力により、プランジャ411が駆動される。なお、ECU5は、車両の運動状態等に基づきABS制御等を実行すべくコイル413への通電状態を制御する。このECU5は請求項記載の制御手段として機能するものであり、電磁弁4とともに電磁弁ユニットを構成する。
【0041】
空間401c内には、弁体404を取り囲むようにしてスプリング412が配置されている。スプリング412は、右巻きの円筒圧縮コイルスプリングである。スプリング412はシャフト402とシート403とに挟持されており、スプリング412によって、シャフト402がプランジャ411側に付勢され、シャフト402とプランジャ411は常時当接して一体的に作動するようになっている。
【0042】
スプリング412は、主弁体404が主弁座403bから離れる向きに、すなわち開弁向きに、プランジャ411およびシャフト402を付勢している。また、コイル413への通電により発生する電磁力により、主弁体404が主弁座403bに近づく向きに、すなわち閉弁向きに、プランジャ411およびシャフト402が付勢される。
【0043】
主流路403aは、ガイド401内の空間401cのうち、スプリング412の内側に位置する内側空間に連通されている。連通穴401dは、ガイド401内の空間401cのうち、スプリング412の外側に位置する外側空間に連通されている。
【0044】
図2は図1の電磁弁4におけるシート403の斜視図、図3は図1の電磁弁4におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。
【0045】
なお、以下の説明では、主流路403aから空間401c側に向かうブレーキ液の流れのうち、スプリング412の内側の空間でのブレーキ液の流れを、スプリング内流れという。
【0046】
図2、図3に示すように、シート403には、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対して回転を与える渦流発生手段としての突起6が設けられている。突起6は、シート部ばね受け面403fに形成され、スプリング412の軸線周りに4個設けられている。また、突起6は、スプリング412の内側に配置されている。
【0047】
突起6は、楔状であり、斜面61を有している。この斜面61は、斜面61上をスプリング412の周方向に沿って進んだときにスプリング412の軸方向にも進むような傾斜が与えられている。そして、スプリング内流れは、この斜面61に沿って流れることにより回転が与えられるようになっている。
【0048】
より詳細には、スプリング412の軸方向に上流側(図1における下方から)見たときに、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対し、斜面61によって時計回りの回転が与えられる。
【0049】
一方、本実施形態のスプリング412の巻き方向は右(いわゆる右巻き)とされている。すなわち、本実施形態では、斜面61によって与えられる液流の巻き方向(右巻き)と、コイルスプリング412の巻き方向とが同じになるように斜面61の傾斜方向が設定されている。
【0050】
4個の突起6の外接円は、スプリング412の内径よりも僅かに小さく設定されており、したがって、突起6により、スプリング412はその径方向の位置決めがなされ、径方向へのずれが防止される。
【0051】
次に、上記構成になる電磁弁4の基本的な作動について説明する。この電磁弁4は、通常時はECU5からコイル413へ通電されない状態、すなわち非通電状態になっており、非通電時においては、スプリング412によりシャフト402およびプランジャ411がスリーブ410の底面側に向かって付勢され、プランジャ411がスリーブ410の底面に接している。そして、シャフト402の主弁体404がシート403の主弁座403bから離れた状態となり、M/C1側の流路3cとW/C2側の流路3c間は、シート403の主流路403a、ガイド401内の空間401c、およびガイド401の連通穴401dを介して連通状態となる。
【0052】
この状態で図示しないブレーキペダルが踏み込まれると、M/C1側とW/C2側との圧力差により副弁体405がシート403の副弁座403e側に向かって移動され、副弁体405が副弁座403eに当接してシート403の副流路403dが閉じられる。したがって、ブレーキペダルが踏み込まれた際には、シート403の主流路403aおよび副流路403dのうち主流路403aのみを介してM/C1側からW/C2側へブレーキ液が流動される。
【0053】
そして、ブレーキペダルの踏み込みが中止されると、副弁体405は、M/C1側とW/C2側との圧力差により移動して、シート403の副弁座403eから離れた状態となり、M/C1側の流路3cとW/C2側の流路3c間は、シート403の副流路403d、ガイド401内の空間401c、およびガイド401の連通穴401dを介して連通状態となる。したがって、ブレーキペダルの踏み込みが中止された際には、シート403の主流路403aおよび副流路403dを介して、W/C2側からM/C1側へブレーキ液が速やかに戻される。
【0054】
このように、通常時はブレーキペダルの操作に応じてM/C1とW/C2間でブレーキ液が流動される。
【0055】
一方、ABS制御の減圧時および保持時には、電磁弁4はECU5からコイル413へ通電された状態、すなわち通電状態になって閉弁する。すなわち、通電時においては、電磁力によりシャフト402およびプランジャ411がシート403側に向かって駆動され、主弁体404が主弁座403bに当接して主流路403aが閉じられる。これにより、電磁弁4が閉弁し、W/C2側からM/C1側へのブレーキ液の流動が絶たれる。
【0056】
ABS制御の増圧時になると、コイル413への通電量が減少されて主流路403aが僅かに開かれ、M/C1側からW/C2側へ微量のブレーキ液が流動され、W/C圧が上昇する。そして、コイル413への通電量に応じて電磁弁4の上下流間に発生させられる差圧量がリニアに調整される。これにより、コイル413への通電量に応じてW/C圧が制御される。
【0057】
また、ABS制御の減圧時或いは保持中、つまり電磁弁4の閉弁時に、ブレーキペダルの踏み込みが中止されると、M/C1側とW/C2側との圧力差により副弁体405がシート403の副弁座403eから離れた状態となり、副流路403dを介してW/C2側からM/C1側へブレーキ液が速やかに戻される。
【0058】
本実施形態では、突起6によって、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対して時計回りの回転が与えられて、弁体404の周りに周方向に回転する流れが形成される。そして、この回転流れにより弁体404の偏心が抑制されてスプリング内流れの乱れが抑制されるため、圧力制御を安定して行えるようになる。また、スプリング内流れの乱れが抑制されるため、弁体404やスプリング412の振動が抑制され、圧力制御がさらに安定する。さらに、スプリング内流れに対して時計回りの回転が与えられることにより、ブレーキ液がスプリング412の内側の空間からスプリング412の外側の空間に移動する際に、ブレーキ液はスプリング412の線間を円滑に通過することができる。
【0059】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図4は本発明の第2実施形態に係る電磁弁におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。本実施形態は、突起6の形状が第1実施形態と異なっている。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図4に示すように、突起6は、斜面61と側面壁62とを有している。側面壁62は、スプリング412の軸方向およびスプリング412の周方向に延びている。側面壁62の内周側の面である内周壁面620は、スプリング412の周方向に沿ってスプリング412の軸線からの距離が変化する円弧面になっている。より詳細には、内周壁面620は、後述するスプリング内流れの回転向きに沿ってスプリング412の軸線から遠ざかる円弧面になっている。
【0061】
そして、スプリング内流れは、斜面61および内周壁面620に沿って流れることにより回転が与えられるようになっている。より詳細には、スプリング412の軸方向に上流側(図4における下方から)見たときに、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対し、斜面61及び内周壁面620によって時計回りの回転が与えられる。
【0062】
一方、スプリング412は前述の実施形態同様に右巻きに形成されており、斜面61及び内周壁面620によって与えられる液流の巻き方向(右巻き)と、コイルスプリング412の巻き方向とが同じになるように斜面61及び内周壁面620の傾斜方向が設定されている。
【0063】
側面壁62の外周側の面である外周壁面(図示せず)の外径は、スプリング412の内径よりも僅かに小さく設定されており、したがって、突起6により、スプリング412はその径方向の位置決めがなされ、径方向へのずれが防止される。
【0064】
本実施形態では、突起6によって、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対して時計回りの回転が与えられて、弁体404(図1参照)の周りに周方向に回転する流れが形成されるため、第1実施形態と同様に、圧力制御を安定して行える。
【0065】
また、弁体404と内周壁面620との間の隙間が狭いため、その隙間を通過する際に流速が上がり、スプリング内流れに対してより強い回転を与えることができる。
【0066】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図5は本発明の第3実施形態に係る電磁弁におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。本実施形態は、突起6の位置が第1実施形態と異なっている。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
図5に示すように、突起6は、弁座403bが設けられたテーパ面に設けられている。突起6は、弁体404(図1参照)と干渉しないように、テーパ面における外周側に配置されている。そして、テーパ面における内周側が弁座403bとして機能する。
【0068】
本実施形態では、突起6によって、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対して時計回りの回転が与えられて、弁体404の周りに周方向に回転する流れが形成されるため、第1実施形態と同様に、圧力制御を安定して行える。
【0069】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。図6は本発明の第4実施形態に係る電磁弁におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。本実施形態は、突起6の形状および位置が第1実施形態と異なっている。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
図6に示すように、突起6は、弁座403bが設けられたテーパ面に設けられている。突起6は、弁体404(図1参照)と干渉しないように、テーパ面における外周側に配置されている。そして、テーパ面における内周側が弁座403bとして機能する。
【0071】
突起6は、第1実施形態における斜面61が廃止され、側面壁62のみで構成されている。側面壁62は、スプリング412の軸線周りに4個設けられている。側面壁62は、スプリング412の軸方向およびスプリング412の周方向に延びている。側面壁62の内周側の面である内周壁面620は、スプリング412の周方向に沿ってスプリング412の軸線からの距離が変化する平面(又は曲面)になっている。より詳細には、内周壁面620は、後述するスプリング内流れの回転向きに沿ってスプリング412の軸線から遠ざかる平面(又は曲面)になっている。
【0072】
そして、スプリング内流れは、内周壁面620に沿って流れることにより回転が与えられるようになっている。より詳細には、スプリング412の軸方向に上流側(図6における下方から)見たときに、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対し、内周壁面620によって時計回りの回転が与えられる。
【0073】
一方、スプリング412は前述の実施形態同様に右巻きに形成されており、内周壁面620によって与えられる液流の巻き方向(右巻き)と、コイルスプリング412の巻き方向とが同じになるように内周壁面620の傾斜方向が設定されている。
【0074】
本実施形態では、突起6によって、主流路403aを空間401c側に通過したブレーキ液に対して時計回りの回転が与えられて、弁体404(図1参照)の周りに周方向に回転する流れが形成されるため、第1実施形態と同様に、圧力制御を安定して行える。
【0075】
また、弁体404と内周壁面620との間の隙間が狭いため、その隙間を通過する際に流速が上がり、スプリング内流れに対してより強い回転を与えることができる。
【0076】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。図7は本発明の第5実施形態に係る電磁弁の要部を示す断面図、図8は図7のA−A線に沿う断面図である。本実施形態は、突起6を廃止し、連通穴401dを渦流発生手段として用いる点が第1実施形態と異なっている。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0077】
図7、図8に示すように、渦流発生手段としての連通穴401dは、ガイド401のうちスプリング412を取り囲む部位に2個形成されており、空間401cのうちスプリング412の外側に位置する外側空間に連通されている。
【0078】
連通穴401dは、スプリング412の軸線に対して垂直で、且つスプリング412の径方向(線a)に対して角度θだけ斜めになっている。換言すると、スプリング412の軸線方向に見たときに、連通穴401dの軸線がスプリング412の軸線からずれている。また、連通穴401dは、連通穴401dを形成した位置におけるガイド401の内周面の接線方向に延びている。
【0079】
このように、連通穴401dをスプリング412の径方向に対して斜めにしているため、ブレーキ液がスプリング412の外側の空間から連通穴401dを通ってW/C2側の流路3cに流れる際には、矢印で示すようにスプリング412の外側の空間での流れに回転が与えられる。なお、スプリング412の外側の空間での流れの巻き方向(右巻き)と、スプリング412の巻き方向(右巻き)とが同じになるように、連通穴401dの方向が設定されている。
【0080】
本実施形態では、渦流発生手段たる連通穴401dによって与えられるブレーキ液の流れの巻き方向(右巻き)が、コイルスプリング412を構成する線材の隙間の巻き方向と同じになるため、そうでない態様と比較して、ブレーキ液が上記線材の隙間を通過し易くなる。したがって、主流路403aから流出したブレーキ液の回転力を高く維持することができ、その結果、圧力制御をさらに安定して行えるようになる。
【0081】
なお、本実施形態では、図8に示すように、連通穴401dがガイド401の内周面の接線に沿って延びるようにしたが、図9に示す変形例のように、連通穴401dは、連通穴401dを形成した位置におけるガイド401の内周面の接線に対して斜めに延びるようになっていてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、連通穴401dを2個設けたが、連通穴401dは、1個でもよいし、あるいは3個以上でもよい。
【0083】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、シャフト402の先端を球面にしてその先端球面部を主弁体404としたが、シャフト402に球を溶接してその球を主弁体としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁弁がアクチュエータのハウジングに組み付けられた状態を示す正面断面図である。
【図2】図1の電磁弁4におけるシート403の斜視図である。
【図3】図1の電磁弁4におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電磁弁におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電磁弁におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る電磁弁におけるシート403およびスプリング412を一部断面で示す斜視図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る電磁弁の要部を示す断面図である。
【図8】図7のA−A線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る電磁弁の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0085】
6 突起(渦流発生手段)
402 シャフト
403 シート
404 主弁体(弁体)
411 プランジャ
412 スプリング
413 コイル
401d 連通穴(第2流路、渦流発生手段)
403a 主流路(第1流路)
403b 弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座(403b)と接離することにより、前記弁座(403b)よりも流体流れ上流側の第1流路(403a)と前記弁座(403b)よりも流体流れ下流側の第2流路(401d)との間を開閉する弁体(404)と、
通電時に磁界を形成するコイル(413)と、
前記コイル(413)への通電により発生する電磁力により閉弁向きに駆動されるプランジャ(411)と、
前記弁体(404)を有すると共に前記プランジャ(411)の移動に伴って往復動するシャフト(402)と、
前記弁座(403b)および前記第1流路(403a)を有するシート(403)と、
前記弁体(404)を取り囲むようにして前記弁座(403b)よりも流体流れ下流側に配置され、前記シャフト(402)を開弁向きに付勢するコイルスプリング(412)とを備え、
前記コイル(413)への通電量が制御されることにより、前記第1流路(403a)の圧力と前記第2流路(401d)の圧力との差が制御される電磁弁であって、
流体流れに回転を与える渦流発生手段(6、401d)を、前記弁座(403b)よりも流体流れ下流側に備えることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記渦流発生手段(6)は、前記コイルスプリング(412)の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記シート(403)は、前記コイルスプリング(412)の一端を受けるシート部ばね受け面(403f)が前記弁座(403b)を取り囲むようにして形成され、
前記渦流発生手段(6)は、前記シート部ばね受け面(403f)に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記シート(403)は、前記弁座(403b)が設けられたテーパ面を備え、
前記渦流発生手段(6)は、前記テーパ面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記渦流発生手段(6)は斜面(61)を有する突起であり、
前記斜面(61)は、前記斜面(61)上を前記渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの回転向きに沿って進んだときに前記コイルスプリング(412)の軸方向に進むような傾斜が与えられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の電磁弁。
【請求項6】
前記渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの巻き方向と、前記コイルスプリング(412)の巻き方向とが同じになるように、前記渦流発生手段(6)の斜面(61)が設定されていることを特徴とする請求項5に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記渦流発生手段(6)は内周壁面(620)を有する突起であり、
前記内周壁面(620)は、前記渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの回転向きに沿って前記コイルスプリング(412)の軸線から遠ざかることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の電磁弁。
【請求項8】
前記渦流発生手段(6)によって与えられる流体流れの巻き方向と、前記コイルスプリング(412)の巻き方向とが同じになるように、前記渦流発生手段(6)の内周壁面(620)が設定されていることを特徴とする請求項7に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記渦流発生手段(401d)は、前記コイルスプリング(412)の外側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項10】
前記コイルスプリング(412)を取り囲むとともに、前記第2流路(401d)が形成されたガイド(401)を備え、
前記第2流路(401d)は、前記渦流発生手段を構成するものであって、前記コイルスプリング(412)の軸線方向から見た状態で、前記コイルスプリング(412)の径方向に対して斜めになっていることを特徴とする請求項9に記載の電磁弁。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の電磁弁(4)と、
前記第1流路(403a)側の圧力と前記第2流路(401d)側の圧力との差が制御されるように前記コイル(413)への通電量を制御する制御手段(5)とを備えることを特徴とする電磁弁ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−250433(P2009−250433A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103485(P2008−103485)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】