説明

電線保護構造及びこれを備えた画像形成装置

【課題】低コスト化が図られ、容易に着脱が可能な簡便な構成で、複数の電線を簡単に保護することが可能な電線保護構造を提供する。
【解決手段】電線保護構造20は、弾性を有するシート状材料で構成され、プリント基板17表面に配設された電線をカバーする形で設けられた電線保護部材22と、この電線保護部材22を着脱可能にして保持する保持部25及びプリント基板17を支持する支持部材18に対して着脱可能にして連結する連結部23が設けられた保持部材21とを備える。これにより、プリント基板17と電線保護部材22としてのシートとの間に電線を配線することができ、またシート状材料一枚で簡単に複数の電線をまとめて配線し、保護することが可能である。したがって、電線保護構造20の周囲で外装カバーの開閉などが行われても、電線の破損や電線からの漏電を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線の、雑然とした状態を回避しながら、外力による破損や他部材との接触による漏電に対して保護することが可能な電線保護構造に関する。また、この電線保護構造を搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや家庭などで使用される電子機器には、動作を制御するための様々な電子部品や機能部材が必要であり、複写機やプリンタに代表される画像形成装置も例外ではない。それらのうち、電子部品は、動作制御に必要なパターンが予め形成されたプリント基板にまとめて搭載、接合されている。また、機能部材は、その動作対象となる他部材の近傍に配置されていることが多い。そして、電子部品を擁する制御基板と機能部材との間は、複数の電線によって接続され、電源の供給や信号の授受が行われている。
【0003】
上記のような電線は、複数の電線が雑然とした状態となるのを回避しながら、外力による破損や他部材との接触による漏電に対する保護を図るため、電子機器の内部構造部材であるベースフレームなどにしっかりとまとめて保持されている。電子機器内部における電線保護構造の例を、特許文献1〜3に見ることができる。特許文献1及び2に記載された電線保護構造は、合成樹脂などで構成された結束材を利用した技術であって、結束材が電線を保持しながら電子機器のフレームに取り付けられている。特許文献3に記載された電線保護構造は、電線を保護すべく収容可能な溝が設けられた樋形状の細長い本体部と、その蓋部とを備えている。
【特許文献1】特許第3681680号公報(第3−4頁、図1−2)
【特許文献2】特開2002−240393号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献3】特開2006−230149号公報(第3−4頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載された電線保護構造は、結束材によって電線を保持し、保護するということで比較的容易に実施することができ、汎用性があるので、従来一般的に利用され、様々な機器において採用されている。しかしながら、このような電線保護構造は、複数の電線を整然と所望の箇所で保持するために、多数の結束材が必要となる。これにより、部品コストが増加し、組み立て工数及び手間も増加することが懸念される。
【0005】
また、隣り合う結束材の間は、比較的広範囲において電線が露出しているので、フレームに他の部材を取り付けたり、外装カバーを開閉したりすることで、その箇所において他部材や外装カバーが電線に接触する可能性がある。それにより、電線に外力が掛かって電線が破損したり、他部材や外装カバーとの接触によって電線から漏電したりする恐れがある。
【0006】
一方、特許文献3に記載された電線保護構造は、溝を備える樋形状の細長い本体部に、長手方向に沿って延びる切り込みを備える弾性を有する蓋部を設け、この蓋部を弾性変形させながら、切り込みから本体部内に対して電線を出し入れすることにより、結束材を用いることなく複数の電線をまとめて配線して、保護することができ、電線の出し入れも容易である。しかしながら、この構成は、複数の電線の配線し易さ、及び保護という観点から有利であるものの、本体部をモールドとして機器のフレームなどに予め形成したり、本体部をフレームに固定したりする必要がある。これにより、電子機器が大型化する恐れがあり、それに起因するコストアップも懸念される。
【0007】
さらに、特許文献3に記載された電線保護構造は、電線保護構造自体が着脱可能であるわけではない。したがって、電線保護構造が機器のメンテナンスの際に邪魔になったり、電線保護構造自体の交換が困難、或いは不可能であったりする可能性がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、低コスト化が図られ、容易に着脱が可能な簡便な構成で、複数の電線を簡単に保護することが可能な電線保護構造を提供することを目的とする。また、このような電線保護構造を備え、組み立て性及びメンテナンス性が向上し、さらに安全性が高められた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、電線保護構造において、弾性を有するシート状材料で構成され、プリント基板表面に配設された電線をカバーする形で設けられた電線保護部材と、この電線保護部材を着脱可能にして保持する保持部及び前記プリント基板を支持する支持部材に対して着脱可能にして連結する連結部が設けられた保持部材とを備えることとした。
【0010】
また、上記構成の電線保護構造において、前記保持部材は、前記保持部に、前記電線保護部材に設けられた穴を介して電線保護部材に係合する保持片及び突起を備え、前記連結部に、前記プリント基板の支持部材に設けられた穴を介して支持部材に係合する連結片及び爪部を備えることとした。
【0011】
また、上記構成の電線保護構造において、前記電線保護部材は、略直角に折り曲げられた折り曲げ部を備えることとした。
【0012】
また、上記構成の電線保護構造において、前記電線保護部材は、前記保持部材による保持箇所と対向する箇所から延びる切り込み部を備えることとした。
【0013】
また、上記構成の電線保護構造において、前記電線保護部材は、透明の材料で構成されていることとした。
【0014】
また本発明では、上記構成の電線保護構造を画像形成装置に備えることとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、電線保護構造が、弾性を有するシート状材料で構成され、プリント基板表面に配設された電線をカバーする形で設けられた電線保護部材と、この電線保護部材を着脱可能にして保持する保持部及び前記プリント基板を支持する支持部材に対して着脱可能にして連結する連結部が設けられた保持部材とを備えることとしたので、プリント基板と電線保護部材としてのシートとの間に電線を配線することができる。これにより、シート状材料一枚で簡単に複数の電線をまとめて配線し、保護することが可能である。したがって、電線保護構造の周囲で外装カバーの開閉などが行われても、電線の破損や電線からの漏電を防止することができる。また、保持部材は、保持部で電線保護部材が着脱可能であり、連結部でプリント基板の支持部材に対して着脱可能であるので、機器のメンテナンスや電線保護構造自体の交換が容易に遂行できる。そして、電線保護部材は、電子機器のフレーム形状に柔軟に対応できるので、電線保護構造の配置スペースをできるだけ小さくすることが可能である。さらに、柔軟なシート状材料である電線保護部材は、電線を締め付けることがないので、電源の供給や信号の授受に悪影響を与えるようなストレスが電線に掛かるのを防止することが可能である。このようにして、低コスト化が図られ、容易に着脱が可能な簡便な構成で、複数の電線を簡単に保護することが可能な電線保護構造を提供することができる。
【0016】
また、前記保持部材は、前記保持部に、前記電線保護部材に設けられた穴を介して電線保護部材に係合する保持片及び突起を備え、前記連結部に、前記プリント基板の支持部材に設けられた穴を介して支持部材に係合する連結片及び爪部を備えることとしたので、保持部の保持片と電線保護部材の穴とを着脱、及び連結部の連結片と支持部材の穴とを着脱することで、電線保護構造を組み立てたり、それを分解、取り外したりするのが容易である。さらに、電線保護部材及び保持部材を、カバーすべき電線に対して位置ずれを起こすことなく、定位置に取り付けることができる。これにより、さらにメンテナンス時や交換時の作業性の向上、及び低コスト化が図られ、複数の電線を一層簡単に保護することが可能な電線保護構造を提供することができる。
【0017】
また、前記電線保護部材は、略直角に折り曲げられた折り曲げ部を備えることとしたので、プリント基板と電線保護部材との間に電線を配線する作用を高めることができる。すなわち、電線保護部材によって電線をカバーする領域が広がり、電線を電線保護部材の外側の他部材に対して隔離することが可能である。これにより、電線の破損や電線からの漏電を防止する効果が向上して、複数の電線を確実に保護することが可能な電線保護構造を提供することができる。
【0018】
また、前記電線保護部材は、前記保持部材による保持箇所と対向する箇所から延びる切り込み部を備えることとしたので、保持部材に沿って比較的長い長さで延びる電線保護部材に対して、その電線保護部材の歪み、湾曲を防止することが可能である。これにより、プリント基板と電線保護部材との間に電線を配線する作用をさらに高めることができる。また、切り込み部を境にして部分的に、電線保護部材の内部と外部との間でアクセスできるようにすることができる。これにより、電線保護部材の不必要な箇所を開放することなく、局部的なメンテナンスを実行することが可能である。したがって、一層効果的に電線を保護することができる。
【0019】
また、前記電線保護部材は、透明の材料で構成されていることとしたので、電線保護部材を保持部材に取り付けた状態で、電線などの被保護部材を視認することが可能である。これにより、電線保護構造を組み立てる際、被保護部材の配置を確認しながら組み立てることができ、さらに被保護部材に不具合が発生した際、その状況を外側から一目で把握することが可能である。したがって、電線保護構造は、効果的に電線を保護することができ、且つ組み立て性及びメンテナンス性がより一層向上する。
【0020】
また本発明では、上記構成の電線保護構造を画像形成装置に備えることとしたので、低コスト化が図られ、容易に着脱が可能な簡便な構成の電線保護構造で、複数の電線を簡単に保護することが可能になり、組み立て性及びメンテナンス性が向上し、さらに安全性が高められた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図1〜図8に基づき説明する。
【0022】
最初に、本発明の実施形態に係る電線保護構造を備えた画像形成装置について、図1〜図3を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は外装カバーを取り外した画像形成装置を背面側から見た部分斜視図、図3は図2と同様の画像形成装置を背面側から見た部分斜視図にして、電線保護構造を取り外した状態を示すものである。この画像形成装置は、中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷タイプのものである。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の内部下方には、給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3は、その内部に、印刷前のカットペーパー等の用紙Pを積載して収容している。そして、この用紙Pは、図1において給紙カセット3の左上方に向けて、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット3は、本体2の前面側から水平に引き出すことが可能である。
【0024】
本体2の内部であって、給紙カセット3の左方には、第1用紙搬送部4が備えられている。第1用紙搬送部4は、本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。そして、第1用紙搬送部4は、給紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って垂直上方に二次転写部11まで搬送する。
【0025】
給紙カセット3の上方であって、第1用紙搬送部4が形設された本体2の左側面とは反対側の側面である右側面の箇所には、手差し給紙部5が備えられている。手差し給紙部5には、給紙カセット3に入っていないサイズの用紙や、厚紙、OHPシートのように1枚ずつ手で送り込みたいものが載置される。
【0026】
手差し給紙部5の左方には、第2用紙搬送部6が備えられている。第2用紙搬送部6は、給紙カセット3のすぐ上方にあって、手差し給紙部5から第1用紙搬送部4まで略水平に延び、第1用紙搬送部4に合流している。そして、第2用紙搬送部6は、手差し給紙部5から送り出された用紙P等を受け取り、略水平に第1用紙搬送部4まで搬送する。
【0027】
一方、画像形成装置1は、外部コンピュータ(図示せず)から原稿画像データを受信する。この画像データの情報は、第2用紙搬送部6の上方に配置された露光手段である光走査装置7に送られる。光走査装置7により、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが、画像形成部8に向かって照射される。
【0028】
光走査装置7の上方には計4台の画像形成部8が、さらにそれら各画像形成部8の上方には中間転写体を無端ベルトの形で用いた中間転写ベルト9が備えられている。中間転写ベルト9は、複数のローラに巻き掛けられて支持され、図示しない駆動装置により図1において時計方向に回転する。
【0029】
4台の画像形成部8は、中間転写ベルト9の回転方向に沿って、回転方向上流側から下流側に向けて一列にして配置された所謂タンデム方式である。4台の画像形成部8とは、上流側から順に、マゼンタ用の画像形成部8M、シアン用の画像形成部8C、イエロー用の画像形成部8Y、及びブラック用の画像形成部8Bである。これらの画像形成部8には、各色に対応する現像剤供給容器及び搬送手段(図示せず)により、現像剤(トナー)が補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「M」「C」「Y」「B」の識別記号は省略するものとする。
【0030】
各画像形成部8では、露光手段である光走査装置7によって照射されたレーザ光Lにより原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナー像は、各画像形成部8の上方に備えられた一次転写部10で、中間転写ベルト9表面に一次転写される。そして、中間転写ベルト9の回転とともに、所定のタイミングで各画像形成部8のトナー像が中間転写ベルト9に転写されることにより、中間転写ベルト9表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0031】
中間転写ベルト9が用紙搬送路に懸かる箇所には、二次転写部11が配置されている。この二次転写部11において、中間転写ベルト9表面に一旦担持されたカラートナー像が、第1用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた用紙Pに二次転写される。
【0032】
二次転写後、中間転写ベルト9表面に残留するトナーなどの付着物は、中間転写ベルト9に対してマゼンタ用の画像形成部8Mの回転方向上流側に設けられた中間転写ベルト9用のクリーニング装置12によってクリーニング、回収される。
【0033】
二次転写部11の上方には、定着装置13が備えられている。二次転写部11にて未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着装置13へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0034】
定着装置13の上方には、分岐部14が備えられている。定着装置13から排出された用紙Pは、両面印刷を行わない場合、分岐部14から画像形成装置1の上部に設けられた用紙排出部15に排出される。
【0035】
分岐部14から用紙排出部15に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分は、スイッチバック部16としての機能を果たす。両面印刷を行う場合には、このスイッチバック部16において、定着装置13から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、分岐部14、定着装置13の左方、及び二次転写部11の左方を通って下方に送られ、再度第1用紙搬送部4を経て二次転写部11へと送られる。
【0036】
上記のような構成の画像形成装置1において、図2に示す本発明の電線保護構造20は、図3に示す画像形成装置1の背面側に設けられたプリント基板17の表面に配設された電線(図示せず)を保護するために備えられている。
【0037】
続いて、この電線保護構造20の詳細な構成について、図2及び図3に加えて、図4〜図8を用いて説明する。図4は電線保護構造周辺を背面側下方から見た斜視図、図5はプリント基板の支持部材及び電線保護構造の保持部材を上方から見た斜視図、図6は電線保護構造の保持部材の部分拡大垂直断面右側面図、図7は電線保護部材と保持部材との分解状態を示す上方から見た斜視図、図8は保持部材の保持部の箇所を示す上方から見た斜視図である。なお、図6は、図5の平面VIの箇所における垂直断面右側面を描画している。
【0038】
電線保護構造20は、前述のように、図3に示す画像形成装置1の背面側に設けられたプリント基板17の表面に配設された電線(図示せず)を保護するために、図2に示すような形で備えられている。図2に示す電線保護構造20の前方に電線が位置し、後方に外装カバー(図示せず)が位置している。そして、電線保護構造20は、図2及び図4に示すように、保持部材21、及び電線保護部材22を備えている。
【0039】
保持部材21は、図3に示すプリント基板17を支持する支持部材18に取り付けられている(図4及び図5参照)。なお、プリント基板17の支持部材18は、板金などで構成され、画像形成装置1の背面側に設けられて、底面部が画像形成装置1の左右方向に長く延び、水平な薄板形状をなしている。保持部材21は、このような形状の支持部材18の、底面部の背面側端部の箇所に設けられている。
【0040】
保持部材21は、合成樹脂などで構成され、図2及び図4に示すように、上下方向に延びる壁部を形成しながら、画像形成装置1の左右方向に長く延びる薄板形状をなしている。なお、保持部材21の右側面側の端部は、前方に向かって折り曲げられている。プリント基板17に配設された電線は、この折り曲げられた箇所を有する保持部材21の内側に位置している。そして、保持部材21は、連結部23、係止部24、及び保持部25を備えている。
【0041】
連結部23は、図4〜図6に示すように、保持部材21の底部の複数箇所に、水平左右方向に並べて配置される形で設けられている。そして、連結部23は、連結片23aと、爪部23bとを備えている。
【0042】
連結片23aは、保持部材21の底部から、支持部材18の下側を前方に向かって、略水平に延びている。爪部23bは、この連結片23aの先端の上側に設けられ、支持部材18に設けられた穴19に係合する。このような構成の連結部23は、連結片23aの先端側の上下に弾性変形させ、爪部23bを支持部材18の穴19に対して係合、係合解除することにより、保持部材21を、支持部材18に対して左右方向に位置決めしながら、着脱可能にして連結している。
【0043】
係止部24は、連結片23同様、図4〜図6に示すように、保持部材21の底部の複数箇所に、水平左右方向に並べて配置される形で設けられている。そして、係止部24は、上側係止片24aと、下側係止片24bとを備えている。
【0044】
上側係止片24aは、保持部材21の底部から、支持部材18の上側を前方に向かって、略水平に延びている。一方、下側係止片24bは、保持部材21の底部から、支持部材18の下側を前方に向かって、略水平に延びている。上側係止片24a及び下側係止片24bは、前方に向かって延びるその長さが連結片23aより短く、支持部材18を上下から挟み込むようにして支持部材18に係合している。このような構成の係止部24は、保持部材21を、支持部材18に対して上下方向に変位不能にして位置決めしている。
【0045】
保持部25は、図4、図5、図7、及び図8に示すように、保持部材21の、上下方向に延びる壁部の複数箇所に、左右方向に並べて配置される形で設けられている。そして、保持部25は、保持片25aと、突起25bと、凹部25cとを備えている。
【0046】
保持片25aは、保持部材21の内壁に対して所定の距離を隔てて配置され、保持部材21の底部から内壁に沿いに上方に向かって、略垂直に延びている。保持部材21の内壁と保持片25aとの間隔は、電線保護部材22の厚さとほぼ同じ、あるいは電線保護部材22の厚さよりやや広い距離で設けられている。突起25bは、この保持片25aの上部の背面側に、保持部材21の内壁に向かって延びる形で設けられ、電線保護部材22に設けられた穴26(後述、図7及び図8参照)に係合する。凹部25cは、突起25bに対応する箇所に、保持部材21の内壁から後方側に窪んだ形で設けられ、水平断面がコ字状の、幅が保持片25aより広い、上下方向に延びる樋形状にして構成されている。このような構成の保持部25は、電線保護部材22を、凹部25cを利用して弾性変形させながら、電線保護部材22の穴26を突起25bに対して係合、係合解除することにより、電線保護部材22を着脱可能にして保持している。
【0047】
一方、電線保護部材22は、上述のように、保持部材21の保持部25に対して、着脱可能にして保持されている。電線保護部材22は、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの弾性を有する透明の、絶縁性のシート状材料で構成され、図2及び図4に示すように、プリント基板17側と外装カバー側との間で壁を形成するように立てられている。そして、電線保護部材22は、図4及び図7に示すように、穴26、折り曲げ部27、及び切り込み部28を備えている。
【0048】
穴26は、電線保護部材22の下部に設けられ、保持部材21の、保持部25の突起25bに対応する複数箇所に、左右方向に並べて配置されている。穴26は、保持部25の突起25bを受け入れ可能な形状、大きさをなしている。前述のように、保持部25の凹部25cを利用して、電線保護部材22を穴26の箇所で弾性変形させながら、突起25bに対して係合、係合解除することができる(図8参照)。
【0049】
折り曲げ部27は、電線保護部材22の上部に設けられている。折り曲げ部27の折り目は、略水平に左右方向に延びている。電線保護部材22は、この折り曲げ部27において、その上端側が前方に向かって略水平になるように、略直角に折り曲げられている。
【0050】
切り込み部28は、電線保護部材22の上部に設けられている。切り込み部28は、電線保護部材22の、保持部材21による保持箇所と対向する箇所、すなわち上端側から、所定長さで略垂直下方に延びる形で形成されている。切り込み部28は、左右方向に並べて2箇所に設けられ、電線保護部材22の上側を左右方向に3分割している。
【0051】
上記のように、電線保護構造20は、弾性を有するシート状材料で構成され、プリント基板17表面に配設された電線をカバーする形で設けられた電線保護部材22と、この電線保護部材22を着脱可能にして保持する保持部25及びプリント基板17を支持する支持部材18に対して着脱可能にして連結する連結部23が設けられた保持部材21とを備えているので、プリント基板17と電線保護部材22としてのシートとの間に電線を配線することができる。これにより、シート状材料一枚で簡単に複数の電線をまとめて配線し、保護することが可能である。したがって、電線保護構造20の周囲で外装カバーの開閉などが行われても、電線の破損や電線からの漏電を防止することができる。また、保持部材21は、保持部25で電線保護部材22が着脱可能であり、連結部23でプリント基板17の支持部材18に対して着脱可能であるので、機器である画像形成装置1のメンテナンスや電線保護構造20自体の交換が容易に遂行できる。そして、電線保護部材22は、画像形成装置1のフレーム形状に柔軟に対応できるので、電線保護構造20の配置スペースをできるだけ小さくすることが可能である。さらに、柔軟なシート状材料である電線保護部材22は、電線を締め付けることがないので、電源の供給や信号の授受に悪影響を与えるようなストレスが電線に掛かるのを防止することが可能である。このようにして、低コスト化が図られ、容易に着脱が可能な簡便な構成で、複数の電線を簡単に保護することが可能な電線保護構造20を提供することができる。
【0052】
また、保持部材21は、保持部25に、電線保護部材22に設けられた穴26を介して電線保護部材22に係合する保持片25a及び突起25bを備え、連結部23に、プリント基板17の支持部材18に設けられた穴19を介して支持部材18に係合する連結片23a及び爪部23bを備えているので、保持部25の保持片25aと電線保護部材22の穴26とを着脱、及び連結部23の連結片23aと支持部材18の穴19とを着脱することで、電線保護構造20を組み立てたり、それを分解、取り外したりするのが容易である。さらに、電線保護部材22及び保持部材21を、カバーすべき電線に対して位置ずれを起こすことなく、定位置に取り付けることができる。これにより、さらにメンテナンス時や交換時の作業性の向上、及び低コスト化が図られ、複数の電線を一層簡単に保護することが可能な電線保護構造20を提供することができる。
【0053】
そして、電線保護部材22は、略直角に折り曲げられた折り曲げ部27を備えているので、プリント基板17と電線保護部材22との間に電線を配線する作用を高めることができる。すなわち、電線保護部材22によって電線をカバーする領域が広がり、電線を電線保護部材22の外側の他部材に対して隔離することが可能である。これにより、電線の破損や電線からの漏電を防止する効果が向上して、複数の電線を確実に保護することが可能な電線保護構造20を提供することができる。
【0054】
さらに、電線保護部材22は、保持部材21による保持箇所と対向する箇所から延びる切り込み部28を備えているので、保持部材21に沿って比較的長い長さで延びる電線保護部材22に対して、その電線保護部材22の歪み、湾曲を防止することが可能である。これにより、プリント基板17と電線保護部材22との間に電線を配線する作用をさらに高めることができる。また、切り込み部28を境にして部分的に、電線保護部材22の内部と外部との間でアクセスできるようにすることができる。これにより、電線保護部材22の不必要な箇所を開放することなく、局部的なメンテナンスを実行することが可能である。したがって、一層効果的に電線を保護することができる。
【0055】
また、電線保護部材22は、透明の材料で構成されているので、電線保護部材22を保持部材21に取り付けた状態で、電線などの被保護部材を視認することが可能である。これにより、電線保護構造20を組み立てる際、被保護部材の配置を確認しながら組み立てることができ、さらに被保護部材に不具合が発生した際、その状況を外側から一目で把握することが可能である。したがって、電線保護構造20は、効果的に電線を保護することができ、且つ組み立て性及びメンテナンス性がより一層向上する。
【0056】
また本発明では、上記構成の電線保護構造20を画像形成装置1に備えたので、低コスト化が図られ、容易に着脱が可能な簡便な構成の電線保護構造20で、複数の電線を簡単に保護することが可能になり、組み立て性及びメンテナンス性が向上し、さらに安全性が高められた画像形成装置1を提供することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0058】
例えば、画像形成装置1は、上記実施形態では複数色を重ね合わせて画像形成すること可能なタンデム方式のカラー印刷用画像形成装置であるが、このような機種に限定されるわけではなく、ロータリーラック方式のカラー印刷用画像形成装置、或いはブラックトナーのみを使用したモノクロ印刷用の画像形成装置であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電線全般に対して利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る電線保護構造を備えた画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】外装カバーを取り外した画像形成装置を背面側から見た部分斜視図である。
【図3】図2と同様の画像形成装置を背面側から見た部分斜視図にして、電線保護構造を取り外した状態を示すものである。
【図4】図2の電線保護構造周辺を背面側下方から見た斜視図である。
【図5】図2のプリント基板の支持部材及び電線保護構造の保持部材を上方から見た斜視図である。
【図6】図5の平面VIの箇所における電線保護構造の保持部材の部分拡大垂直断面右側面図である。
【図7】図4の電線保護部材と保持部材との分解状態を示す上方から見た斜視図である。
【図8】図7の保持部材の保持部の箇所を示す上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置
2 本体
17 プリント基板
18 支持部材
19 穴
20 電線保護構造
21 保持部材
22 電線保護部材
23 連結部
23a 連結片
23b 爪部
25 保持部
25a 保持片
25b 突起
26 穴
27 折り曲げ部
28 切り込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するシート状材料で構成され、プリント基板表面に配設された電線をカバーする形で設けられた電線保護部材と、この電線保護部材を着脱可能にして保持する保持部及び前記プリント基板を支持する支持部材に対して着脱可能にして連結する連結部が設けられた保持部材とを備えることを特徴とする電線保護構造。
【請求項2】
前記保持部材は、前記保持部に、前記電線保護部材に設けられた穴を介して電線保護部材に係合する保持片及び突起を備え、前記連結部に、前記プリント基板の支持部材に設けられた穴を介して支持部材に係合する連結片及び爪部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電線保護構造。
【請求項3】
前記電線保護部材は、略直角に折り曲げられた折り曲げ部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電線保護構造。
【請求項4】
前記電線保護部材は、前記保持部材による保持箇所と対向する箇所から延びる切り込み部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電線保護構造。
【請求項5】
前記電線保護部材は、透明の材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電線保護構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電線保護構造を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−130808(P2010−130808A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303609(P2008−303609)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】