説明

面ずれ面倒れ測定装置

【課題】面ずれと面倒れを互いに分離して高精度に測定することができ、かつ種々の被検体を測定対象とすることが可能な面ずれ面倒れ測定装置を得る。
【解決手段】回折格子22Aを介して、光軸C22Aに対する波面の進行角度が互いに異なる2つの円錐状光束を第1被検面90Aに照射するとともに、回折格子22Bを介して、光軸C22Bに対する波面の進行角度が互いに異なる2つの円錐状光束を第2被検面90Bに照射する。第1被検面90Aからの戻り光により形成される2つの干渉縞を解析することにより、光軸C22Aに対する第1被検面90Aの面ずれおよび面倒れを求め、第2被検面90Bからの戻り光により形成される2つの干渉縞を解析することにより、光軸C22Bに対する第2被検面90Aの面ずれおよび面倒れを求め、それらの結果から、被検レンズ9の面ずれおよび面倒れを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転対称な曲面部を有してなる複数の被検面を備えた被検体の面ずれおよび面倒れを測定する面ずれ面倒れ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂射出成形やガラスモールド成形によりレンズを作製する場合、2つの成形用金型の間に相対的な位置ずれや傾きずれが生じていると、成形されたレンズに面ずれ(2つのレンズ面それぞれの軸同士の相対的な位置ずれ)や面倒れ(2つのレンズ面それぞれの軸同士の相対的な傾きずれ)が発生してしまう。このような面ずれや面倒れは、成形された非球面レンズの収差を増大させる要因となるので、成形用金型間の相対的な位置ずれおよび傾きずれを無くすように調整することが望ましく、そのために成形されたレンズの面ずれおよび面倒れを高精度に測定し、その測定結果を金型の調整にフィードバックすることが要望されている。
【0003】
従来、非球面レンズの面ずれと面倒れを測定する方法として、下記特許文献1に記載された手法が知られている。この手法は、レンズの光軸に対し垂直に設置された鍔状の張出部を有している非球面レンズの面ずれや面倒れを、オートコリメータを用いて測定するものである。
【0004】
また、ヌル光学素子を備えた干渉計により被検レンズの透過波面測定を行って該被検レンズのコマ収差を求め、このコマ収差に基づき、被検レンズの面ずれおよび面倒れを測定する手法が、本願出願人より提案されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3127003号公報
【特許文献2】特開2008−249415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されているようなオートコリメータを用いた偏心検査機では、測定対象となる被検体に発生している面ずれと面倒れを互いに分離して測定することが困難であり、また測定精度も十分とは言えない。
【0007】
一方、上記特許文献2に記載の手法は、面ずれと面倒れを互いに分離して高精度に測定することが可能であるが、測定対象となる被検体(非球面レンズ)が替わると、それに応じてヌル光学素子を交換する必要があるため、種々の被検体を測定対象とすることが困難である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、測定対象となる被検体に生じている面ずれと面倒れを互いに分離して高精度に測定することができ、かつ種々の被検体を測定対象とすることが可能な面ずれ面倒れ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため本発明に係る面ずれ面倒れ測定装置は、以下の特徴を備えている。
【0010】
すなわち、本発明に係る面ずれ面倒れ測定装置は、回転対称な曲面部を有してなる複数の被検面を備えた被検体の面ずれおよび面倒れを測定する面ずれ面倒れ測定装置であって、
測定光生成素子と、該測定光生成素子を介して測定光を前記被検体に照射するとともに該被検体からの戻り光を、該測定光生成素子を介して参照光と干渉させて干渉縞を形成する干渉光学系と、形成された干渉縞を撮像する撮像手段と、撮像された干渉縞を解析する解析手段とを備え、
前記測定光生成素子は、前記干渉光学系から出射された光束を、該測定光生成素子の光軸に対する波面の進行角度が互いに異なる複数の偏向光束に変換し、該複数の偏向光束の各々を前記測定光として前記被検体に向けて出射するとともに、前記複数の被検面において該複数の偏向光束が垂直に入射した領域からの各戻り光を前記干渉光学系に向けて出射するように構成されており、
前記解析手段は、前記各戻り光と前記参照光とによりそれぞれ形成される各干渉縞の位相情報に基づき、前記被検体の面ずれおよび面倒れを解析するように構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記測定光生成素子は、前記複数の偏向光束として、前記光軸に対する波面の進行角度が互いに異なる複数の円錐状光束を生成するように構成することもできる。
【0012】
また、本発明において、前記測定光生成素子、前記干渉光学系および前記撮像手段を、前記被検体を挟んでそれぞれ一対ずつ配置することができる。
【0013】
上記「円錐状光束」とは、測定光生成素子の光軸とのなす角の大きさ(角度)が互いに等しい光線群(各光線の進行方向は互いに異なる)からなり、その波面(等位相面)が該光軸を中心軸とした円錐面状となる光束を意味する。
【0014】
また、上記「測定光生成素子の光軸に対する波面の進行角度」とは、波面の進行方向のベクトルと測定光生成素子の光軸方向のベクトルとのなす角の大きさ(角度)を意味する。上述の円錐状光束の場合、1つの円錐状光束を構成する各光線の進行方向は互いに異なるが、波面の進行角度は一定値となる。
【0015】
なお、前記測定光生成素子は、前記複数の偏向光束として、前記円錐状光束および前記光軸に対し波面が垂直な平行光束を生成するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る面ずれ面倒れ測定装置は、上述の特徴を備えていることにより、以下のような作用効果を奏する。
【0017】
すなわち、本発明の面ずれ面倒れ測定装置においては、干渉光学系から出射された光束が、測定光生成素子により波面の進行角度が互いに異なる複数の偏向光束に変換され、被検体が備える複数の被検面に照射される。そして、複数の被検面において、各偏向光束が垂直に入射した領域からの各戻り光と参照光とによりそれぞれ形成される各干渉縞の位相情報に基づき被検体の面ずれおよび面倒れが測定される。
【0018】
波面の進行角度が互いに異なる複数の偏向光束を各被検面に照射することにより、各々の被検面について、担持する位相情報が異なる複数の干渉縞を得ることができるので、これらの干渉縞の位相情報を解析することにより、各被検面の相対的な面ずれおよび面倒れを互いに分離して高精度に測定することが可能となる。
【0019】
また、測定対象となる被検体が替わっても、各々の被検面が、各偏向光束が垂直に入射する領域を備えてさえいれば、測定光生成素子を交換することなく測定を行うことができるので、種々の被検体を測定対象とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る面ずれ面倒れ測定装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すのと同じタイプの回折格子付き参照基準板の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、上述の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明に使用する各図は概略的な説明図であり、詳細な形状や構造を示すものではなく、各部材の大きさや部材間の距離等については適宜変更して示してある。
【0022】
〈第1実施形態〉
本実施形態に係る面ずれ面倒れ測定装置は、図1に示すように、被検レンズ9(本実施形態における被検体)の面ずれおよび面倒れを測定するものであり、被検レンズ9を挟んで互いに対向するように配置された第1測定部1Aおよび第2測定部1Bと、測定解析部3とを備えてなる。
【0023】
上記被検レンズ9は、図示せぬ2つの金型間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出することにより形成された非球面レンズであり、レンズ部91の外周部に鍔状の張出部92を有してなる。この被検レンズ9において、図中上側を向いた第1レンズ面93、嵌合面95および張出部上面96は上記2つの金型のうちの一方の金型により賦形されたものであり、図中下側を向いた第2レンズ面94および張出部下面97は他方の金型により賦形されたものである。なお、被検レンズ9は、図示せぬアライメント機構によりアライメント調整可能に保持されている
上記第1レンズ面93は、その中心軸C93(第1レンズ面93の非球面式によって決定される)を中心とする回転対称な非球面により構成されており、上記嵌合面95は、上記中心軸C93を中心とする回転対称な円錐面により構成されている。また、上記張出部上面96は上記中心軸C93に対し垂直な円環状の平面により構成されている。なお、この被検レンズ9は、他のレンズ(図示略)と組み合わされて使用される嵌合レンズであり、嵌合面95が他のレンズとの当接面として形成されている。一方、上記第2レンズ面94は、その中心軸C94(第2レンズ面94の非球面式によって決定される)を中心とする回転対称な非球面により構成されており、上記張出部下面97は上記中心軸C94に対し垂直な円環状の平面により構成されている。
【0024】
上記2つの中心軸C93,C94は、互いに一致するように設計されているが、上記2つの金型の設置精度等が原因となって実際には一致しないことがある。本実施形態では、上述の第1レンズ面93、嵌合面95および張出部上面96を併せて第1被検面90Aと称し、第2レンズ面94および張出部下面97を併せて第2被検面90Bと称する。そして、第1被検面90A(第1レンズ面93)の中心軸C93と第2被検面90B(第2レンズ面94)の中心軸C94との相対的な傾き角(2つの中心軸C93,C94のなす角;2つの中心軸C93,C94が互いに交わらない場合は、それぞれの方向ベクトルのなす角)を、被検レンズ9の面倒れと定義する。また、第1被検面90A(中心軸C93)は、第1レンズ面93の中心点(中心軸C93と第1レンズ面93との交点)を回転中心として傾き、第2被検面90B(中心軸C94)は、第2レンズ面94の中心点(中心軸C94と第2レンズ面94との交点)を回転中心として傾くと仮定する。
【0025】
また、2つの中心軸C93,C94の一方に対し垂直な仮想平面に、第1レンズ面93の中心点および第2レンズ面94の中心点をそれぞれ正射影したときの、2つの正射影点の仮想平面上での位置のずれを面ずれと定義する。
【0026】
上記第1測定部1Aは、レーザ光源11A、ビーム径変換用レンズ12A、ビームスプリッタ13A(光束分岐面13Aaを有する)、コリメータレンズ14A、結像レンズ15A、撮像カメラ16A(CCDやCMOS等からなる撮像素子17Aを有する)、および回折格子付き参照基準板20Aを備えてなる。なお、回折格子付き参照基準板20Aは、図示せぬアライメント機構によりアライメント調整可能に保持されており、第1測定部1Aの他の構成部材は、回折格子付き参照基準板20Aのアライメント機構とは別のアライメント機構(図示略)により一体的にアライメント調整可能に保持されている。
【0027】
この回折格子付き参照基準板20Aは、コリメータレンズ14Aと対向する側に参照基準面21Aを備え、被検レンズ9と対向する側に回折格子22Aを備えた円板状の部材である。参照基準面21Aは、コリメータレンズ14Aから光軸C14Aに沿って出射された光束(平行光束)を、参照基準面21Aにおいて2つに分岐し、一方を参照光としてコリメータレンズ14Aに向けて反射するとともに、他方を回折格子22Aに向けて出射するように構成されている。また、回折格子22Aは、参照基準面21Aからの光束を、回折することにより、波面の進行角度が互いに異なる2つの偏向光束(共に円錐状光束からなる。図中、一方の偏向光束の光線を実線で、他方の偏向光束を破線で示す)に変換し、この2つの偏向光束を第1被検面90Aに照射すると共に、各々の偏向光束が垂直に入射した領域(本実施形態では、第1レンズ面93内において中心軸C93を中心とするリング状の領域となる)からの各戻り光を、回折することにより平行光に変換して、参照基準面21Aに向けて出射するように構成されている。
【0028】
上記第1測定部1Bは、レーザ光源11B、ビーム径変換用レンズ12B、ビームスプリッタ13B(光束分岐面13Baを有する)、コリメータレンズ14B、結像レンズ15B、撮像カメラ16B(CCDやCMOS等からなる撮像素子17Bを有する)、および回折格子付き参照基準板20Bを備えてなる。なお、回折格子付き参照基準板20Bは、図示せぬアライメント機構によりアライメント調整可能に保持されており、第2測定部1Bの他の構成部材は、回折格子付き参照基準板20Bのアライメント機構とは別のアライメント機構(図示略)により一体的にアライメント調整可能に保持されている。
【0029】
この回折格子付き参照基準板20Bは、コリメータレンズ14Bと対向する側に参照基準面21Bを備え、被検レンズ9と対向する側に回折格子22Bを備えた円板状の部材である。参照基準面21Bは、コリメータレンズ14Bから光軸C14Bに沿って出射された光束(平行光束)を、参照基準面21Bにおいて2つに分岐し、一方を参照光としてコリメータレンズ14Bに向けて反射するとともに、他方を回折格子22Bに向けて出射するように構成されている。また、回折格子22Bは、参照基準面21Bからの光束を、回折することにより、波面の進行角度が互いに異なる2つの偏向光束(共に円錐状光束からなる。図中、一方の偏向光束の光線を実線で、他方の偏向光束を破線で示す)に変換し、この2つの偏向光束を第2被検面90Bに照射すると共に、各々の偏向光束が垂直に入射した領域(本実施形態では、第2レンズ面94内において中心軸C94を中心とするリング状の領域となる)からの各戻り光を、回折することにより平行光に変換して、参照基準面21Bに向けて出射するように構成されている。
【0030】
なお、本実施形態では、レーザ光源11A、ビーム径変換用レンズ12A、ビームスプリッタ13A、コリメータレンズ14A、結像レンズ15A、および回折格子付き参照基準板20Aの参照基準面21Aと、レーザ光源11B、ビーム径変換用レンズ12B、ビームスプリッタ13B、コリメータレンズ14B、結像レンズ15B、および回折格子付き参照基準板20Bの参照基準面21Bとにより、それぞれ干渉光学系が構成されており、撮像カメラ16Aと撮像カメラ16Bとにより、それぞれ撮像手段が構成されている。
【0031】
また、回折格子付き参照基準板20Aの回折格子22Aと、回折格子付き参照基準板20Bの回折格子22Bは、それぞれ本実施形態における測定光生成素子を構成するものである。ここで、それらの構成を、図2を参照してより詳細に説明する。図2に示す回折格子付き参照基準板20は、回折格子付き参照基準板20A,20Bと同タイプのものであり、参照基準面21と回折格子22を備えている。
【0032】
この回折格子22は、その光軸C22を中心とする複数の輪帯状ブレーズ型格子により構成されている。また、光軸C22に近い領域(図中実線で示す光束が通過する領域、以下「中心部領域」と称する)と、光軸C22から離れた外縁部の領域(図中破線で示す光束が通過する領域、以下「外縁部領域」と称する)とでは、各々の格子のピッチおよび深さを変えている。これにより、参照基準面21から上記中心部領域に入射した平行光束を、光軸C22に対する進行角度が図中θの角度(例えば10度)となる円錐状光束(以下「第1円錐状光束」と称する)に変換して出射し、参照基準面21から上記外縁部領域に入射した平行光束を、光軸C22に対する進行角度が図中θの角度(例えば30度)となる円錐状光束(以下「第2円錐状光束」と称する)に変換して出射するようになっている。
【0033】
また、この回折格子22は、上述の第1円錐状光束および第2円錐状光束が、光軸C22上に位置する所定の空間領域P内に集光するように構成されている。これにより、この空間領域P内に測定対象となる被検体を設置することにより、被検体が有する各被検面に対し第1円錐状光束および第2円錐状光束を照射することが可能となっている。
【0034】
上記測定解析部3は、コンピュータ等からなる解析装置31と、干渉縞画像等を表示するモニタ装置32と、解析装置31に対する各種入力を行うための入力装置33とを備えてなる。この解析装置31は、本実施形態における解析手段を構成するものであり、CPU、ハードディスク等の記憶部および該記憶部に格納されたプログラム等からなり、上述の撮像カメラ16Aおよび撮像カメラ16Bによりそれぞれ撮像された各干渉縞の画像データを記憶するとともに、各々の干渉縞に位相情報に基づき、被検レンズ9の面ずれおよび面倒れを解析するように構成されている。
【0035】
以下、本実施形態に係る面ずれ面倒れ測定装置の作用について説明する。測定を実施するのに先立って、第1測定部1A、第2測定部1Bおよび被検レンズ9のアライメント調整が行われる。このアライメント調整は、上述の図示せぬアライメント機構を用いて、光軸C14Aおよび光軸C14Bが互いに平行となり、光軸C22Aおよび光軸C22Bが互いに一致するとともに光軸C14Aおよび光軸C14Bと平行となるように、また、第1被検面90Aの中心軸C93および第2被検面90Bの中心軸C94が、光軸C22Aおよび光軸C22Bと互いに略一致するように行われる。
【0036】
このアライメント調整後、被検レンズ9の測定を行う。以下、その測定時における作用について説明する。
【0037】
(測定時の作用)
〈1〉図1に示す第1測定部1Aのレーザ光源11Aからレーザ光が出射されると、このレーザ光は、ビーム径変換用レンズ12Aを介してビームスプリッタ13Aに入射し、該ビームスプリッタ13Aの光束分岐面13Aaにおいて図中下方に反射されてコリメータレンズ14Aに入射する。コリメータレンズ14Aに入射した光束は、平行光束に変換されて回折格子付き参照基準板20Aに向けて出射される。
【0038】
〈2〉回折格子付き照基準板20Aに入射した光束は、参照基準面21Aにおいて2つに分岐され、一方は参照光としてコリメータレンズ14Aに向けて反射され、他方は回折格子22Aに向けて出射される。
【0039】
〈3〉回折格子22Aに入射した平行光束は、波面の進行角度が互いに異なる2つの円錐状光束(第1円錐状光束および第2円錐状光束)に変換された後、第1被検面90Aに向けて出射される。
【0040】
〈4〉回折格子22Aから出射された第1円錐状光束および第2円錐状光束は、第1レンズ面93内において中心軸C93を中心とするリング状の各領域に垂直に入射し、該各領域(第1円錐状光束が垂直に入射する領域および第2円錐状光束が垂直に入射する領域)からそれぞれ再帰反射されて回折格子22Aに戻る。
【0041】
〈5〉回折格子22Aに入射した各領域からの戻り光は、平行光に変換されて参照基準面21Aに入射し、参照光と合波されて干渉光を形成する。
【0042】
〈6〉上記干渉光は、コリメータレンズ14Aおよびビームスプリッタ13Aを経由して結像レンズ15Aに入射し、該結像レンズ15Aにより撮像カメラ16Aの撮像素子17A上に集光されて、第1円錐状光束が垂直に入射した領域に対応したリング状の干渉縞(以下「第1干渉縞」と称す)と、第2円錐状光束が垂直に入射した領域に対応したリング状の干渉縞(以下「第2干渉縞」と称す)が結像される。結像された第1干渉縞および第2干渉縞は、撮像カメラ16Aにより撮像され、それらの画像データが解析装置31に出力され記憶部に格納される。
【0043】
〈7〉解析装置31において第1干渉縞および第2干渉縞の解析が行われ、回折格子22Aの光軸C22Aに対する第1被検面90Aの面ずれ(以下「第1の面ずれ」と称する)および面倒れ(以下「第1の面倒れ」と称する)が求められる。具体的には、第1干渉縞の位相情報により得られる方程式と、第2干渉縞の位相情報により得られる方程式とを連立させて解くことにより、第1の面ずれおよび第1の面倒れを互いに分離して高精度に求めることができる。
【0044】
すなわち、回折格子22Aの光軸C22Aに対する第1円錐状光束の進行角度をα、第1円錐状光束が垂直に入射した、第1レンズ面93内のリング状の領域の直径をL、光軸C22Aに対する第2円錐状光束の進行角度をα、第2円錐状光束が垂直に入射した、第1レンズ面93内のリング状の領域の直径をLとする(α、αは回折格子22Aの設計データから求めることができ、L、Lは第1レンズ面93の設計データから求めることができる)。
【0045】
このとき、光軸C22Aに対する第1被検面90Aの面倒れは無く、面ずれのみが距離Dだけ生じていると仮定すると、第1干渉縞においては、径方向に2Dsinαの位相変化が生じることになる。一方、光軸C22Aに対する第1被検面90Aの面ずれは無く、面倒れのみが角度βだけ生じていると仮定すると、第1干渉縞においては、径方向にLsin2βの位相変化が生じることになる。
【0046】
よって、光軸C22Aに対する第1被検面90Aの面ずれが距離D、面倒れが角度βずつ生じている場合の第1干渉縞における径方向の位相変化φは、下式(A)の方程式で表すことができる。
φ=2Dsinα+Lsin2β …… (A)
【0047】
同様に考えると、第2干渉縞における径方向の位相変化φは、下式(B)の方程式で表すことができる。
φ=2Dsinα+Lsin2β …… (B)
【0048】
したがって、上式(A)、(B)の2つの方程式を連立させて解くことにより、未知数であるDおよびβを求めることができる。
【0049】
〈8〉一方、第2測定部1Bのレーザ光源11Bからレーザ光が出射されると、このレーザ光は、ビーム径変換用レンズ12Bを介してビームスプリッタ13Bに入射し、該ビームスプリッタ13Bの光束分岐面13Baにおいて図中上方に反射されてコリメータレンズ14Bに入射する。コリメータレンズ14Bに入射した光束は、平行光束に変換されて回折格子付き参照基準板20Bに向けて出射される。
【0050】
〈9〉回折格子付き照基準板20Bに入射した光束は、参照基準面21Bにおいて2つに分岐され、一方は参照光としてコリメータレンズ14Bに向けて反射され、他方は回折格子22Bに向けて出射される。
【0051】
〈10〉回折格子22Bに入射した平行光束は、波面の進行角度が互いに異なる2つの円錐状光束(第1円錐状光束および第2円錐状光束)に変換された後、第1被検面90Bに向けて出射される。
【0052】
〈11〉回折格子22Bから出射された第1円錐状光束および第2円錐状光束は、第2レンズ面94内において中心軸C94を中心とするリング状の各領域に垂直に入射し、該各領域(第1円錐状光束が垂直に入射する領域および第2円錐状光束が垂直に入射する領域)からそれぞれ再帰反射されて回折格子22Bに戻る。
【0053】
〈12〉回折格子22Bに入射した各領域からの戻り光は、平行光に変換されて参照基準面21Bに入射し、参照光と合波されて干渉光を形成する。
【0054】
〈13〉上記干渉光は、コリメータレンズ14Bおよびビームスプリッタ13Bを経由して結像レンズ15Bに入射し、該結像レンズ15Bにより撮像カメラ16Bの撮像素子17B上に集光されて、第1円錐状光束が垂直に入射した領域に対応したリング状の干渉縞(以下「第3干渉縞」と称す)と、第2円錐状光束が垂直に入射した領域に対応したリング状の干渉縞(以下「第4干渉縞」と称す)が結像される。結像された第3干渉縞および第4干渉縞は、撮像カメラ16Bにより撮像され、それらの画像データが解析装置31に出力され記憶部に格納される。
【0055】
〈14〉解析装置31において第3干渉縞および第4干渉縞の解析が行われ、回折格子22Bの光軸C22Bに対する第2被検面90Bの面ずれ(以下「第2の面ずれ」と称する)および面倒れ(以下「第2の面倒れ」と称する)が求められる。具体的には、第3干渉縞の位相情報により得られる方程式と、第4干渉縞の位相情報により得られる方程式とを連立させて解くことにより、第2の面ずれおよび第2の面倒れを互いに分離して高精度に求めることができる(詳細は、上述のDおよびβの求め方と同様である)。
【0056】
〈15〉上述の手順〈7〉で求められた第1の面ずれおよび第1の面倒れと、上記手順〈14〉で求められた第2の面ずれおよび第2の面倒れとによって、第1被検面90Aと第2被検面90Bとの間の相対的な面ずれおよび面倒れ、すなわち、被検レンズ9の面ずれおよび面倒れを互いに分離して高精度に求めることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に態様が限定されるものではなく、種々の態様のものを実施形態とすることができる。
【0058】
例えば、上記実施形態における測定光生成素子としての回折格子22A,22Bは、複数の偏向光束として、光軸C22A,C22Bに対する波面の進行角度が互いに異なる複数の円錐状光束を生成するものであるが、屈折素子を用いてこのような測定光生成素子を構成することも可能である。具体的には、互いに傾斜角度が異なる複数の円錐面を有する円錐レンズを用いることにより、波面の進行角度が互いに異なる複数の円錐状光束を生成することが可能となる。
【0059】
また、測定光生成素子として、その光軸に対し波面が垂直な平行光束と円錐状光束を生成するものを用いることも可能である。具体的には、中央部に格子が形成されない領域を有する輪帯状のブレーズ型回折格子や、輪帯状の矩形型回折格子(0次回折光により平行光束を得る)や、上下2つの底面の傾斜角度が互いに異なる斜円錐台状に形成された屈折素子を用いることにより、光軸に対し波面が垂直な平行光束と円錐状光束を生成することが可能である。このような測定光生成素子を用いた場合には、各被検面において中心軸に対し垂直となる部分に平行光束を照射して、その戻り光により形成される干渉縞に基づき、各被検面の面倒れを求めることも可能となる。
【0060】
また、上記実施形態では、被検体9を挟んで2つの測定部(第1測定部1Aおよび第2測定部1B)を互いに対向するように配置して両側から測定を行っているが、1つの測定部により片側から測定を行うことも可能である。この場合、高コヒーレント光を用いると各被検面からの戻り光により多重干渉が生じるので、低コヒーレント光を用いることによりそれを防止することも可能である。低コヒーレント光を用いる場合には、干渉縞が生じる被検面の位置を特定するため、被検面からの戻り光と参照光との光路長差を調整し得るような迂回路部を設けることが好ましい。
【0061】
また、回折格子を測定光生成素子として用いる場合は、波長可変レーザや出力波長が互いに異なる複数の光源を用いることにより、波長毎の回折角度の違いによって、波面の進行角度が互いに異なる複数の円錐状光束を生成することも可能となる。
【0062】
また、上記実施形態では、第1レンズ面93および第2レンズ面94に2つの円錐状光束を照射しているが、第1レンズ面93と張出部上面96との境界部分や、第2レンズ面94と張出部下面97との境界部分に、R面やC面等の面取り部が形成されている場合には、この面取り部に2つの円錐状光束を照射するようにしてもよい。
【0063】
また、射出成形用の2つの金型間に光束分岐素子を配置し、この光束分岐素子に1つの干渉光学系からの光束を照射して2つに分岐させるとともに、分岐された2つの光束の各光路上に測定光生成素子をそれぞれ配置し、各金型のキャビティに対して、波面の進行角度が互いに異なる複数の偏向光束を照射することにより、2つの金型間の面ずれおよび面倒れを直接測定するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1A 第1測定部
1B 第2測定部
3 測定解析部
9 被検レンズ
11A,11B レーザ光源
12A,12B ビーム径変換用レンズ
13A,13B ビームスプリッタ
13Aa,13Ba 光束分岐面
14A,14B コリメータレンズ
15A,15B 結像レンズ
16A,16B 撮像カメラ
17A,17B 撮像素子
20,20A,20B 回折格子付き参照基準板
21,21A,21B 参照基準面
22,22A,22B 回折格子
31 解析装置
32 モニタ装置
33 入力装置
91 レンズ部
92 張出部
93 第1レンズ面
94 第2レンズ面
95 嵌合面
96 張出部上面
97 張出部下面
14A,C14B,C22A,C22B 光軸
93,C94 中心軸
P 空間領域
θ,θ 進行角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転対称な曲面部を有してなる複数の被検面を備えた被検体の面ずれおよび面倒れを測定する面ずれ面倒れ測定装置であって、
測定光生成素子と、該測定光生成素子を介して測定光を前記被検体に照射するとともに該被検体からの戻り光を、該測定光生成素子を介して参照光と干渉させて干渉縞を形成する干渉光学系と、形成された干渉縞を撮像する撮像手段と、撮像された干渉縞を解析する解析手段とを備え、
前記測定光生成素子は、前記干渉光学系から出射された光束を、該測定光生成素子の光軸に対する波面の進行角度が互いに異なる複数の偏向光束に変換し、該複数の偏向光束の各々を前記測定光として前記被検体に向けて出射するとともに、前記複数の被検面において該複数の偏向光束が垂直に入射した領域からの各戻り光を前記干渉光学系に向けて出射するように構成されており、
前記解析手段は、前記各戻り光と前記参照光とによりそれぞれ形成される各干渉縞の位相情報に基づき、前記被検体の面ずれおよび面倒れを解析するように構成されている、ことを特徴とする面ずれ面倒れ測定装置。
【請求項2】
前記測定光生成素子は、前記複数の偏向光束として、前記光軸に対する波面の進行角度が互いに異なる複数の円錐状光束を生成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の面ずれ面倒れ測定装置。
【請求項3】
前記測定光生成素子、前記干渉光学系および前記撮像手段は、前記被検体を挟んでそれぞれ一対ずつ配置されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の面ずれ面倒れ測定装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−2608(P2012−2608A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136625(P2010−136625)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】