説明

鞍乗型車両

【課題】電子スロットル弁を備え、従来よりも高度な制御が可能な鞍乗型車両を実現する。
【解決手段】自動二輪車は、スロットル弁と共に変位する突起部77と、スロットルグリップに従って変位するレバープーリ54と、スプリング51と、制御装置とを備えている。スプリング51は、レバープーリ54が第2原点位置P2にあるときには突起部77を第1原点位置P1に復帰させるような復元力を発生させ、レバープーリ54が第2原点位置P2にあって突起部77が第1原点位置P1からスロットル弁71が開く方向に変位するとき、突起部77が所定位置に至るまでは弾性変形することによりレバープーリ54を第2原点位置P2に保つ。制御装置は、スロットルグリップ全閉状態でのシフトチェンジの際に、突起部77を多くとも前記所定位置に至るまで変位させてスロットル弁71を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車等の鞍乗型車両において、スロットル弁を自動制御する電子スロットル弁システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特再2005−047671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子スロットル弁システムによれば、ライダーのアクセルグリップ等の操作に拘わらず、スロットル弁を制御することができる。そのため、従来よりも高度な制御が可能となる。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子スロットル弁を備え、従来よりも高度な制御が可能な鞍乗型車両を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る鞍乗型車両は、エンジンの吸気量を調整するスロットル弁と、ライダーによって操作され、前記スロットル弁を開閉するアクセル操作子と、前記スロットル弁を駆動する電動モータと、前記スロットル弁が全閉状態のときの位置を第1原点位置として、前記スロットル弁と共に変位する第1部材と、前記アクセル操作子が全閉状態のときの位置を第2原点位置として、前記アクセル操作子に従って変位する第2部材と、少なくとも前記第1部材および前記第2部材がそれぞれ前記第1原点位置および前記第2原点位置にあるときに前記第1部材と前記第2部材との間に介在し、前記第2部材が前記第2原点位置にあるときには前記第1部材を前記第1原点位置に復帰させるような復元力を発生させ、前記第2部材が前記第2原点位置にあるときに、前記第1部材が前記第1原点位置から前記スロットル弁が開く方向に変位すると、前記第1部材が所定位置に至るまでは弾性変形することによって前記第2部材を前記第2原点位置に保つ弾性体と、所定の制御の際に、前記電動モータを駆動させ、前記第1部材を多くとも前記所定位置に至るまで変位させることによって、前記スロットル弁を開く制御装置と、を備えたものである。
【0006】
前記鞍乗型車両は、有段式の変速装置と、ライダーからのシフトチェンジ指令を受ける入力装置と、前記入力装置にシフトチェンジ指令が入力されると、前記変速装置を駆動してシフトチェンジを行うシフトアクチュエータと、をさらに備え、前記所定の制御は、前記アクセル操作子が全閉状態のときに行われる前記シフトアクチュエータによるシフトチェンジであってもよい。
【0007】
上記鞍乗型車両によれば、アクセル操作子が全閉状態のために第2部材が第2原点位置にあっても、第2部材を変位させることなくスロットル弁を開くことができる。そのため、専用のブリッパーを設けなくてもスロットル弁を一時的に急に開き、エンジン回転数を一時的に上昇させる所謂ブリッピングを行うことが可能となる。そのため、シフトチェンジの際にブリッピングを行うことで、シフトチェンジの迅速化を図ることができる。
【0008】
また、上記鞍乗型車両によれば、ブリッピング以外の機能を有する第1部材と、第2部材と、弾性体とを用いてブリッピングを行うことができる。そのため、ブリッピングを行うための専用のブリッパーを別途新たに付加することなく、ブリッピングを行うことができる。
【0009】
前記鞍乗型車両は、車速を検出する車速センサをさらに備え、前記所定の制御は、前記アクセル操作子が全閉状態または開度一定状態のときに、前記車速が所定値となるように前記スロットル弁の開度を調整する制御であってもよい。
【0010】
上記鞍乗型車両によれば、アクセル操作子の開度に拘わらず、車速を所定値に維持することができる。そのため、所謂クルーズコントロールが可能となる。
【0011】
前記鞍乗型車両は、有段式の変速装置と、駆動輪と、従動輪と、前記駆動輪の回転速度を検出する第1のセンサと、前記従動輪の回転速度を検出する第2のセンサと、をさらに備え、前記所定の制御は、前記変速装置のシフトダウンのときに、前記駆動輪の回転速度と前記従動輪の回転速度との差が所定値以下になるように前記スロットル弁の開度を調整する制御であってもよい。
【0012】
上記鞍乗型車両によれば、シフトダウンの際に、駆動輪の回転速度と従動輪の回転速度との速度差が所定値を超えると、当該速度差が所定値以下になるようにスロットル弁の開度が調整される。すなわち、上記速度差が大きくならないように、スロットル弁が開かれる。そのため、過度なエンジンブレーキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子スロットル弁を備え、従来よりも高度な制御が可能な鞍乗型車両を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
《実施形態1》
ライダーのシフトチェンジ操作の負担を軽減することを目的として、アクチュエータを用いてシフトチェンジを自動的に行う自動変速装置(AMT:Automated Manual Transmission)が知られている。また、燃費の向上等を目的として、スロットル弁を自動制御する電子スロットル弁システムも知られている。
【0015】
有段式の変速装置を有する鞍乗型車両において、クラッチを切断することなく所謂ブリッピングを行うことによって、シフトチェンジを迅速に行う方法が知られている。また、シフトチェンジの際のクラッチ切断後にブリッピングを行うことによって、その後のクラッチ接続時のショックが緩和され、シフトチェンジを円滑化する方法も知られている。なお、ここで「ブリッピング」とは、スロットル弁を一時的に急に開き、エンジン回転数を一時的に上昇させることである。
【0016】
例えば、特開2002−67741号公報には、AMTおよび電子スロットル弁を備えた自動二輪車において、空吹かし用のブリッパーを設けることが記載されている。
【0017】
特開2002−67741号公報に記載された自動二輪車によれば、AMTおよび電子スロットル弁を備えつつ、シフトチェンジの際にブリッピングを行うことが可能となる。しかしながら、ブリッピングを行うための専用のブリッパーを別途新たに付加しなければならないという課題がある。
【0018】
これに対し、本実施形態に係る鞍乗型車両は、AMTおよび電子スロットル弁を備えた鞍乗型車両において、専用のブリッパーを設けなくてもブリッピングを可能としたものである。
【0019】
以下、本実施形態に係る鞍乗型車両について、図面を参照しながら詳細な説明を行う。なお、ここでは、本発明を実施した鞍乗型車両の例として、図1に示すモータサイクルタイプの自動二輪車1を挙げて説明する。しかし、自動二輪車1は、これに限定されない。自動二輪車1は、例えば、所謂モータサイクルタイプ以外の自動二輪車(所謂モペットタイプ、スクータータイプ、オフロードタイプの自動二輪車等)であってもよい。
【0020】
−自動二輪車1の構成−
図1は、本実施形態1に係る自動二輪車1の左側面図である。まず、図1を参照しながら、自動二輪車1の概略構成について説明する。なお、下記説明において、前後左右の方向は、シート9に着座した乗員から視た方向をいうものとする。
【0021】
自動二輪車1は、車体フレーム2を備えている。車体フレーム2は、ヘッドパイプ2aを有している。ヘッドパイプ2aの上端部にはハンドル3が設けられ、ヘッドパイプ2aの下端部には、フロントフォーク4を介して前輪5が回転自在に取り付けられている。
【0022】
車体フレーム2の後端部には、スイングアーム6が揺動可能に取り付けられている。スイングアーム6の後端部には、後輪7が回転可能に取り付けられている。
【0023】
符号8は燃料タンクである。燃料タンク8の後側には、シート9が設けられている。
【0024】
車体フレーム2には、駆動源としてのエンジン12を備えたパワーユニット10が懸架されている。パワーユニット10は、チェーンやベルト、ドライブシャフト等の動力伝達手段11を介して後輪7に接続されている。これにより、パワーユニット10内において生じるエンジン12による駆動力は、動力伝達手段11によって後輪7に伝えられる。
【0025】
(パワーユニット10)
次に、主として図2を参照しながら、パワーユニット10の構成について、詳細に説明する。図2に示すように、パワーユニット10は、エンジン12と、変速装置13と、クラッチ14とを備えている。本発明において、エンジンの種類は特に限定されない。本実施形態では、エンジン12が水冷式4サイクル並列4気筒型のエンジンである例について説明する。しかし、エンジン12は、空冷式であってもよく、気筒数は4に限定されない。2サイクル式のエンジンであってもよい。
【0026】
−エンジン12−
エンジン12は、図示しない気筒軸が車体前方に向かってやや斜め上方向に延びるように配置されている。エンジン12は、クランクケース(図示省略)に収納されたクランク軸21を備えている。クランク軸21は、車幅方向に延びるように配置されている。クランク軸21の端部には、エンジン回転数センサS30が装着されている。また、クランク軸21は、クラッチ14を介して、変速装置13に接続されている。
【0027】
−変速装置13−
変速装置13は、有段式の変速装置であって、メイン軸22と、ドライブ軸23と、ギア選択機構24とを備えている。メイン軸22は、クラッチ14を介してクランク軸21に接続されている。メイン軸22とドライブ軸23とは、それぞれ、クランク軸21と略平行に配置されている。また、メイン軸22には、メイン軸回転数センサS31が設けられている。
【0028】
メイン軸22には、複数の変速ギア25が装着されている。一方、ドライブ軸23には、複数の変速ギア25に対応する複数の変速ギア26が装着されている。複数の変速ギア25と複数の変速ギア26とは、選択された一対のギア同士のみで相互に噛合している。複数の変速ギア25のうち、選択された変速ギア25以外の変速ギア25と、複数の変速ギア26のうち、選択された変速ギア26以外の変速ギア26とのうちの少なくとも一方は、メイン軸22またはドライブ軸23に対して回転可能となっている。つまり、選択されていない変速ギア25と、選択されていない変速ギア26のうちの少なくとも一方は、メイン軸22またはドライブ軸23に対して空転するようになっている。すなわち、メイン軸22とドライブ軸23との間の回転伝達は、相互に噛合する、選択された変速ギア25および選択された変速ギア26のみを介して行われる。
【0029】
変速ギア25、26の選択は、ギア選択機構24によって選択される。具体的に、変速ギア25、26の選択は、ギア選択機構24のシフトカム27によって選択される。シフトカム27の外周面には、複数のカム溝27aが形成されている。各カム溝27aには、シフトフォーク28が装着されている。各シフトフォーク28は、それぞれメイン軸22およびドライブ軸23の所定の変速ギア25および26に係合している。シフトカム27が回転することによって、複数のシフトフォーク28のそれぞれがカム溝27aに案内されてメイン軸22の軸方向に移動する。これにより、変速ギア25および26のうちの相互に噛合するギアが選択される。具体的に、複数の変速ギア25および26のうち、シフトカム27の回転角度に応じた位置の一対の変速ギア25,26のみがメイン軸22およびドライブ軸23に対して、それぞれスプラインによる固定状態となる。これにより、変速ギア位置が決定され、変速ギア25および26を介して、メイン軸22とドライブ軸23との間で所定の変速比で回転伝達が行われる。その結果、図1に示す動力伝達手段11を介して後輪7に動力が伝達され、後輪7が回転する。
【0030】
尚、このギア選択機構24は、シフト動力伝達手段15を介してシフトアクチュエータ16に接続されている。これにより、ギア選択機構24は、シフトアクチュエータ16によって駆動される。
【0031】
−クラッチ14−
本実施形態では、クラッチ14は多板摩擦クラッチであり、筒状のクラッチハウジング31と、筒状のクラッチボス32と、摩擦板である複数のフリクションディスク33およびクラッチプレート34と、プレッシャプレート35とを備えている。また、クラッチ14は、クランク軸21に形成されたギア21aと噛み合うギア29を備えている。
【0032】
クラッチハウジング31は筒状に形成されており、メイン軸22に相対回転可能に取り付けられている。また、クラッチハウジング31の内周面には、メイン軸22の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。
【0033】
各フリクションディスク33はリング状の薄板状に形成されている。各フリクションディスク33の外周には、複数の歯が形成されている。各フリクションディスク33は、外周に形成された複数の歯がクラッチハウジング31の内周面に形成された複数の溝と係合することにより、クラッチハウジング31に相対回転不能に取り付けられる。なお、各フリクションディスク33は、クラッチハウジング31に対して、メイン軸22の軸方向に摺動可能に取り付けられている。
【0034】
クラッチボス32は筒状に形成されており、クラッチハウジング31よりもメイン軸22の径方向内側に配置されている。また、クラッチボス32は、メイン軸22に相対回転不能に取り付けられている。クラッチボス32の外周面には、メイン軸22の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。
【0035】
各クラッチプレート34はリング状の薄板状に形成されている。各クラッチプレート34の内周には、複数の歯が形成されている。各クラッチプレート34は、内周に形成された複数の歯がクラッチボス32の外周面に形成された複数の溝と係合することにより、クラッチボス32に相対回転不能に取り付けられている。なお、各クラッチプレート34は、クラッチボス32に対して、メイン軸22の軸方向に摺動可能に取り付けられている。
【0036】
各フリクションディスク33は、板面がメイン軸22の軸方向に対してほぼ直角になるようにクラッチハウジング31に取り付けられている。また、各クラッチプレート34は、板面がメイン軸22の軸方向に対してほぼ直角になるように、クラッチボス32に取り付けられている。そして、各フリクションディスク33と各クラッチプレート34とは、メイン軸22の軸方向に交互に配置されている。
【0037】
プレッシャプレート35は、略円盤形状に形成されており、クラッチボス32に対して、メイン軸22の軸方向に摺動可能に設けられている。また、プレッシャプレート35は、筒状のメイン軸22内に配置されたプッシュロッド37の一端部(図2の右側)に、深溝玉軸受等の軸受36を介して回転自在に取り付けられている。
【0038】
筒状のメイン軸22の内部には、プッシュロッド37の他端部(左端部)に隣接した球状のボール38が設けられている。また、このボール38の左側には、ボール38に隣接したプッシュロッド39が設けられている。
【0039】
プッシュロッド39の一端部(左端部)は、筒状のメイン軸22の他端部(左端部)から突出している。プッシュロッド39の上記突出した一端部は、クラッチ動力伝達手段17を介してクラッチアクチュエータ18に接続されている。
【0040】
シフトアクチュエータ16およびクラッチアクチュエータ18は、それぞれ制御装置(ECU;エレクトロニック・コントロール・ユニット)100に接続されており、制御装置100によって駆動制御される。なお、図2では、作図の便宜上、制御装置100を2つ記載したが、これらは同一のものである。
【0041】
具体的には、乗員によってシフトチェンジ指令が入力装置(後述するシフトアップスイッチ61aまたはシフトダウンスイッチ61b)に入力されると、制御装置100は、シフト制御を開始する。制御装置100は、まず、クラッチアクチュエータ18を駆動してクラッチ14を切断し、非接続状態とする。そして、次に、シフトアクチュエータ16を駆動して、ギア選択機構24に所望の変速ギア25、26を選択させる。その後、再びクラッチアクチュエータ18を駆動して、クラッチ14を接続する。
【0042】
−電子スロットル弁システム70−
また、自動二輪車1は、エンジン12の吸気量を調整する電子スロットル弁システム70を搭載している。以下、図3〜図5を参照しながら、本発明の実施形態に係る電子スロットル弁システム70について説明する。なお、図3は、本実施形態の電子スロットル弁システム70の構成を模式的に示す斜視図である。また、図4および図5は、本実施形態の電子スロットル弁システム70を、自動二輪車1に搭載した状態を示す側面透視図および平面透視図である。
【0043】
図3に示すように、本実施形態の電子スロットル弁システム70は、エンジン12の吸気量を調整するスロットル弁71と、スロットル弁71を駆動する電動モータ72とを備えている。電動モータ72は、制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100によって駆動制御される。
【0044】
図3および図4に示すように、スロットル弁71は、弁軸73に固定されている。本実施形態のスロットル弁71は、バタフライ式のスロットル弁であり、スロットルボディ74内に配置されている。なお、スロットルボディ74には、燃料を噴射する燃料噴射装置(インジェクタ)75が設けられている。なお、図3では、理解の容易のために、一つのスロットル弁71を示しているが、複数の(気筒数に等しく、本実施形態では4つの)スロットル弁71が複数の(4つの)スロットルボディ74のそれぞれの内部に設けられている。
【0045】
図3に示すように、電動モータ72は、弁軸73に接続されている。本実施形態では、電動モータ72は、弁軸73における右端部73aと左端部73bとの間の中央部73cに接続されている。図3に示した例では、電動モータ72は、駆動ギア76を介して弁軸73に接続されている。また、駆動ギア76には戻しスプリング82が設けられている。このような構成により、電動モータ72はスロットル弁71を開閉駆動する。
【0046】
弁軸73には、スロットル弁71の開度を検出するスロットル開度センサS40が設けられている。本実施形態では、スロットル開度センサS40は、弁軸73の右端部73aに設けられている。そして、スロットル開度センサS40は、制御装置100と電気的に接続されている。
【0047】
また、弁軸73には、機械式スロットル弁駆動機構50(以下、便宜上「機械式駆動機構50」と称する)が設けられている。本実施形態では、機械式駆動機構50は、弁軸73の左端部73bに設けられている。機械式駆動機構50は、電動モータ72による駆動が停止した場合であっても、アクセル操作子であるスロットルグリップ60の操作に連動してスロットル弁71を駆動することができる機構である。
【0048】
図5に示すように、アクセル操作子であるスロットルグリップ60は、自動二輪車1のハンドル3の右端部に設けられている。スロットルグリップ60と機械式駆動機構50とは、スロットルケーブル62によって連動可能に連結されている。
【0049】
ハンドル3の左端部には、グリップ61が設けられている。グリップ61の右端部には、スイッチボックス63が配置されている。本実施形態では、スイッチボックス63には、乗員からのシフトチェンジ指令を受ける入力装置であるシフトアップスイッチ61aと、シフトダウンスイッチ61bとが設けられている。ただし、入力装置は、シフトアップスイッチ61aおよびシフトダウンスイッチ61bに限定されず、他に種々の形態で実施可能である。
【0050】
図3に示すように、機械式駆動機構50は、プーリ52と、レバープーリ54と、軸部53とを備えている。また、機械式駆動機構50には、アクセル操作子であるスロットルグリップ60の操作量を検出するアクセル開度センサS70が設けられている。アクセル開度センサS70は、制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100は、アクセル開度センサS70が検出したアクセルの開度(言い換えると、スロットルグリップ60の操作量)に基づいて、電動モータ72を制御する。なお、図3では、作図の便宜上、制御装置100を3つ記載したが、これらは同一のものである。なお、複数の制御装置100を相互に接続することも可能である。
【0051】
プーリ52とレバープーリ54とは、いずれも一部分が切り欠かれた略円盤形状に形成されている。また、プーリ52の中心部とレバープーリ54の中心部とは、軸部53によって相対回転不能に連結されている。これにより、レバープーリ54は、プーリ52の回転に連動して回転することとなる。なお、前述のスロットルケーブル62は、プーリ52と係合している。また、プーリ52には戻しスプリング80が設けられている。なお、プーリ52およびレバープーリ54は、機械式駆動機構50のカバー59内に収納されている(図5参照)。
【0052】
なお、図3に示した構成例では、プーリ52とレバープーリ54とを同軸(軸部53)にて連結している。しかし、プーリ52とレバープーリ54とは、プーリ52の回転に連動してレバープーリ54が回転できるように連結すればよい。例えば、図4、図6〜図8に示すように、レバー比を変更するリンク部材56を用いて両者を連結してもよい。以下、リンク部材56を用いた例について説明する。
【0053】
図6(a)に示すように、プーリ52とレバープーリ54とは、リンク部材56により連結されている。また、レバープーリ54には、略扇状の切欠き部55が形成されている。当該切り欠き部55は、スロットル弁71の弁軸73から延びた突起部77と接触可能に形成されている。なお、突起部77は本発明に係る第1部材に相当し、レバープーリ54は本発明に係る第2部材に該当する。
【0054】
なお、以下、スロットル弁71が全閉状態(スロットル開度0°)のときの突起部77(第1部材)の位置を第1原点位置P1とし、スロットルグリップ60(アクセル操作子)が全閉状態(アクセル開度0°)のときのレバープーリ54(第2部材)の位置を第2原点位置P2として説明する。
【0055】
レバープーリ54には、弾性体としてのスプリング51が設けられている。スプリング51は、少なくともレバープーリ54が第2原点位置P2(スロットルグリップ60が全閉状態のときの位置)にあるときに、突起部77とレバープーリ54との間に介在する様に形成されている。また、スプリング51は、レバープーリ54が第2原点位置P2にあるときには突起部77を第1原点位置P1に復帰させるような復元力を発生させる様に形成されている。
【0056】
次に、図6〜図8を参照しながら、本実施形態の電子スロットル弁システム70の動作について説明する。
【0057】
<通常動作>
図6(a)は、スロットルグリップ60およびスロットル弁71が全閉の時(アクセル開度0°、スロットル開度0°)を示しており、参考のためにインジェクタ75やカバー59等の周辺部材も示している。一方、図6(b)は、図6(a)の状態から、スロットルグリップ60を急開した直後(アクセル開度θ(全開)、スロットル開度θ、θ>θ)を示している。また、図7(a)は、スロットル弁71が全開の時(アクセル開度θ(全開)、スロットル開度θ(全開)、θ=θ)を示しており、図7(b)は、図7(a)の状態から、スロットルグリップ60を急閉する途中段階(アクセル開度θ、スロットル開度θ、θ>θ、θ>θ)を示している。図8(a)は、図7(b)の状態から、さらにスロットルグリップ60を閉じた時(アクセル開度0°、スロットル開度θ、θ>θ)を示している。また、図8(b)は、スロットルグリップ60およびスロットル弁71が全閉の時(アクセル開度0°、スロットル開度0°)を示している。
【0058】
まず、図6(a)に示した状態においては、プーリ52の開度は0°であり、スロットル弁71の開度(バタフライ弁開度)を反映する突起部(爪部)77の開度も0°である。なお、図6(a)におけるリンク部材56は、全開時には、点線で表した「56'」のところまで移動できる。
【0059】
ここで、突起部77の開度が0°のときに、レバープーリ54の切欠き部55の端面から突出したスプリング51の先端は、突起部77と略接触している。ただし、本実施形態では、スプリング51の先端と、突起部77との間にはθ(例えば、約2°)の隙間がある。スプリング51は、スロットル弁71を閉じる際に、突起部77と略接触するように配置されている。
【0060】
次に、図6(a)に示した状態から、アクセル操作子であるスロットルグリップ60を、スロットル弁71が全開となる様に急回転させると、機械式駆動機構50は図6(b)に示した状態となる。
【0061】
具体的には、スロットルグリップ60を上述のように急回転させると、スロットルケーブル62によってスロットルグリップ60のトルクがプーリ52に伝達され、プーリ52が急回転する。そして、プーリ52がスロットル弁71を全開とするための角度θ(例えば、80°)だけ回転すると、リンク部材56によってレバープーリ54も角度θだけ回転する。なお、このとき、レバープーリ54の切欠き部55の端面およびスプリング51は、角度θに対応した所定角度だけ回転する。
【0062】
一方、スロットルグリップ60を回転させると、アクセル開度センサS70(図3参照)がスロットルグリップ60の開度(アクセル開度)を検出し、検出データを制御装置100に送る。制御装置100は、検出データに基づいて電動モータ72を制御して弁軸73を回転駆動する。このとき、例えば、弁軸73が角度θ(例えば、60°)だけ回転駆動されるとすると、弁軸73に固定されたスロットル弁71および突起部77も角度θだけ回転する(図6(b)参照)。
【0063】
なお、上述のようにスロットルグリップ60を急回転させた場合、スロットルグリップ60と機械的に接続されたレバープーリ54の方が、スロットルグリップ60と電気的に接続されたスロットル弁71および突起部77よりも応答速度が速くなる。そのため、レバープーリ54の開度θは、スロットル弁71の開度θよりも大きくなる。つまり、スロットル弁71の目標開度の方が実開度よりも大きくなり、スプリング51の先端が突起部77から離れる。
【0064】
その後(例えば、0.1秒未満後)、図7(a)に示すように、突起部77はスプリング51の先端に追いつく。つまり、スロットル弁71の実開度が目標開度に追いつき、スロットル弁71が全開となる。このときの突起部77の開度θは、プーリ52の開度θと同じく、例えば80°となる。
【0065】
次に、図7(b)に示すように、スロットル弁71を急閉する様にスロットルグリップ60を操作すると、スロットルケーブル62によってプーリ52が従動回転する。また、プーリ52の回転動作に連動して、レバープーリ54が回転する。一方、突起部77は、スロットルグリップ60の動作に対する応答速度がレバープーリ54よりも遅い。そのため、スプリング51の先端が突起部77に追いつき、当接する。
【0066】
そして、このようにスプリング51の先端が突起部77と当接したまま、スプリング51および突起部77が図8(a)の状態(レバープーリ54の開度0°、突起部77の開度θ)となるまで両者は移動する。そして、レバープーリ54が第2原点位置P2までくると、レバープーリ54の回転は止まる。その後、電動モータ72によって突起部77だけがさらに回転し、第1原点位置P1まで移動する(図8(b)参照)。これにより、スロットル弁71は全閉状態(スロットル開度0°)となる。
【0067】
<異常時の機械式駆動機構50の機能>
次に、異常時の機械式駆動機構50の機能について説明する。なお、機械式駆動機構50は、電動モータ72のモータ電流が遮断される等の原因により電動モータ72の駆動が停止し、スロットル弁71が開いたまま閉じることができなくなってしまったような異常時に以下のように機能する。
【0068】
上述のような電動モータ72の異常によりスロットル弁71を閉じることができなくなった場合であっても、機械式駆動機構50によってスロットル弁71を閉じることができる。具体的には、電動モータ72の駆動が停止してしまった場合であっても、通常どおりスロットルグリップ60をスロットル弁71が閉じる方向に回転させると、スロットルグリップ60に機械的に連結されたレバープーリ54が回転する。一方、突起部77は、電動モータ72の停止により動かない。しかし、レバープーリ54が回転することによって、突起部77とレバープーリ54とは当接する。そして、突起部77とレバープーリ54とは、スプリング51が収縮することによって図7(b)に示す状態となる。その後、突起部77は、レバープーリ54の切り欠き部55の端面およびスプリング51によって押圧されて回転する。これにより、スロットル弁71は閉じられていく。
【0069】
そして、図8(a)に示すように、レバープーリ54が第2原点位置P2までくると、レバープーリ54の回転は止まる。なお、ここで、スプリング51は、レバープーリ54が第2原点位置P2にあるときには突起部77を第1原点位置P1に復帰させるような復元力を発生させる様に設定されている。そのため、突起部77は、スプリング51の復元力によってスプリング51に押圧されて第1原点位置P1まで復帰する(図8(b)参照)。
【0070】
このようにして、本自動二輪車1によれば、電動モータ72の駆動が停止した場合であっても、通常どおりのスロットルグリップ60の回転動作により、スロットル弁71を強制的に閉じることができる。
【0071】
<ブリッピングを伴うシフトチェンジ>
本自動二輪車1では、スロットル弁71が全閉状態にあるときにシフト制御が開始される場合に、クラッチ14を切断することなく所謂ブリッピングを行うことによって、シフトチェンジを迅速に行うことができる。制御装置100は、以下のようなブリッピングを伴うシフトチェンジを行うことができる。
【0072】
すなわち、乗員によってシフトアップスイッチ61aまたはシフトダウンスイッチ61bが操作されると、制御装置100にシフトチェンジ指令が送られる。このとき、制御装置100は、アクセル開度センサS70によって検出されたスロットルグリップ60の開度(アクセル開度)が0°か否かを判断する。そして、アクセル開度が0°である場合、制御装置100は、ブリッピングを伴うシフトチェンジを行う。
【0073】
具体的には、制御装置100は、クラッチアクチュエータ18を駆動してクラッチ14を切断する代わりに、電動モータ72を駆動してスロットル弁71を急開し、エンジン回転数を一時的に上昇させる所謂ブリッピングを行う。そして、ブリッピングを行った後、制御装置100は、クラッチ14を切断することなく、シフトアクチュエータ16を駆動してシフトチェンジを行わせる。
【0074】
上記ブリッピングの際、電子スロットル弁システム70は、以下のように動作する。まず、シフトチェンジ開始時、電子スロットル弁システム70は図8(b)の状態にある。すなわち、スロットルグリップ60およびスロットル弁71は、ともに全閉状態にある。そして、制御装置100は、スロットル弁71(突起部77)の開度がθ以下の範囲内で、電動モータ72を駆動し、スロットル弁71を急開させる。言い換えると、制御装置100は、スロットル弁71の開度がθ(ただしθ≦θ)となる様に、電動モータ72を駆動する。その結果、スロットル弁71および突起部77(第1部材)は、全閉状態から開く方向に変位する。
【0075】
なお、このとき、スロットルグリップ60は全閉状態にあるため、機械式駆動機構50は作動せず、レバープーリ54は機械式駆動機構50によっては回転駆動されない。また、スプリング51は、レバープーリ54が第2原点位置P2にあるときに、突起部77が第1原点位置P1からスロットル弁71が開く方向に変位すると、突起部77が所定位置(スロットル開度がθ(図8(a)参照)となる位置)に至るまでは弾性変形する様に形成されている(なお、θの値は特に限定されないが、本実施形態では、θ≧30°に設定されている)。そのため、レバープーリ54は、突起部77が所定位置(スロットル開度がθ(図8(a)参照)となる位置)を超えない限り、第2原点位置P2に保たれることとなる。したがって、ここでは、制御装置100がブリッピングのためにスロットル弁71を急開したとしても、レバープーリ54およびスロットルグリップ60を介して乗員に衝撃が伝わることはない。
【0076】
以上のように、本自動二輪車1によれば、AMTおよび電子スロットル弁システム70を備えた車両において、アクセル操作子であるスロットルグリップ60を全閉状態としたままスロットル弁71を開くブリッピングを行うことが可能となる。そのため、シフトチェンジの際にブリッピングを行うことで、クラッチ14の切断および接続作業を省略することができる。したがって、本自動二輪車1によれば、シフトチェンジの迅速化を図ることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、クラッチ14の切断に代えてブリッピングを行うこととしていたが、クラッチ14の切断を行った上でブリッピングを行ってもよい。そのような場合には、シフトチェンジを行った後、再度クラッチを接続する際に生じるショックを緩和することができる。これにより、シフトチェンジを円滑に行うことができる。
【0078】
また、本自動二輪車1によれば、スロットル弁71を全閉制御する際の応答性を向上させるために構成された突起部77(第1部材)と、レバープーリ54(第2部材)と、スプリング51(弾性体)とを用いてブリッピングを行うことができる。そのため、ブリッピングを行うための専用のブリッパーを別途新たに付加することなく、ブリッピングを行うことが可能となる。
【0079】
さらに、本自動二輪車1によれば、スプリング51は、レバープーリ54が第2原点位置P2にあるときに、突起部77が第1原点位置P1からスロットル弁71が開く方向に変位すると、突起部77が所定位置(スロットル開度がθ(図8(a)参照)となる位置)に至るまでは弾性変形することによってレバープーリ54を第2原点位置P2に保つ様に形成されている。また、本自動二輪車1では、スロットル開度θは30度以上となる様に設定されている。言い換えると、上記所定位置(スロットル開度がθ(図8(a)参照)となる位置)は、突起部77を第1原点位置P1から30度以上回転させた位置となる様に設定されている。これにより、ブリッピング時のスロットル弁71の開度を十分に確保することができる。そのため、本自動二輪車1によれば、ブリッピングを良好に行うことができる。
【0080】
また、本自動二輪車1では、スプリング51は、レバープーリ54が第2原点位置P2にあるときには突起部77を第1原点位置P1に復帰させるような復元力を発生させる様に設定されている。そのため、前述の異常時等の際に、スロットル弁71が開度θ以上開いた状態からスロットルグリップ60が閉じられたような場合に、レバープーリ54が突起部77を押圧しながら第2原点位置P2まで変位した後、突起部77はスプリング51の復元力により押圧されて第1原点位置P1に達することとなる。これにより、全閉状態となる直前のスロットル弁71の動作を緩やかにすることができる。そのため、本自動二輪車1によれば、スロットルグリップ60を戻したときのショックを緩和することができる。本実施形態の構成によれば、スロットルグリップ60を戻したときのショックの緩和とブリッピングの両方の機能を発揮させることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、本発明に係る弾性体はスプリング51によって構成されていた。しかし、本発明に係る弾性体はスプリング51に限られない。例えば、ゴム等であってもよい。
【0082】
また、スプリング51によってスロットル弁71の駆動をスムーズにする効果は、プーリ52とレバープーリ54とを、上述したリンク部材56により連結した場合に限られない。プーリ52とレバープーリ54とを、図3に示す軸部53によって同軸に連結した場合にも得られることは勿論である。また、スプリング51による、スロットルグリップ60を戻したときのショックの緩和も、プーリ52とレバープーリ54とをリンク部材56により連結した場合に限られず、図3に示す軸部53によって同軸に連結した場合にも得られることは勿論である。
【0083】
さらに、本実施形態では、本発明に係る第1部材をスロットル弁71と共に回転する突起部77によって構成し、第2部材をスロットルグリップ60に従って回転するレバープーリ54によって構成していた。しかし、第1部材と第2部材とを構成するものは、これらに限られない。例えば、第1部材をスロットル弁71の回転に従ってスライド移動する第1摺動部材によって構成し、第2部材をスロットルグリップ60の回転に従ってスライド移動する第2摺動部材によって構成することとしてもよい。
【0084】
《実施形態2》
本実施形態に係る自動二輪車1は、ライダーがスロットルグリップ60を操作しなくて、一定の速度で走行が可能となる所謂クルーズコントロールを実行可能なものである。
【0085】
本実施形態に係る自動二輪車1も、実施形態1と同様の電子スロットル弁システム70を備えている。以下の説明では、実施形態1と同様の部分には同様の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0086】
図9に、本実施形態に係る制御システムの構成を示す。図9に示すように、本制御システムは、制御装置としてのECU100と、車速センサ201とを備えている。車速センサ201は、自動二輪車1の走行速度を検出するセンサである。車速センサ201の具体的構成は何ら限定されず、例えば、前輪5または後輪7の回転速度を検出するセンサ、エンジン回転速度に基づいて車速を算出するもの等であってもよい。ECU100は、メモリ等の記憶装置210を有している。
【0087】
スロットルグリップ60の横には、クルーズコントロールを開始する際に入力されるスイッチ206aと、クルーズコントロールを終了する際に入力されるスイッチ206bとが配置されている。これらのスイッチ206a,206bは、ECU100に接続されている。ECU100は、スイッチ206aが入力されると、クルーズコントロールを開始する。一方、ECU100は、クルーズコントロール中にスイッチ206bが入力されると、クルーズコントロールを終了する。
【0088】
また、ECU100は、フロントブレーキ60Bの入力を検出するブレーキセンサ203と、リアブレーキ204の入力を検出するブレーキセンサ205とに接続されている。これにより、ライダーがブレーキ操作を行うと、ブレーキセンサ203または205からECU100に信号が送られ、ECU100はブレーキがかけられたことを検出することができる。ECU100は、クルーズコントロール中にブレーキセンサ203または205からの信号を受けた場合には、クルーズコントロールを終了する。
【0089】
自動二輪車1には、クルーズコントロールの実行状態および非実行状態を表示する表示器206が設けられている。
【0090】
ライダーがスイッチ206aを入力すると、クルーズコントロールが開始される。クルーズコントロールは、ECU100によって以下のようにして行われる。すなわち、ECU100は、スイッチ206aが入力されると、その時の車速を目標車速として記憶装置210に記憶する。そして、車速センサ201の検出する車速が上記目標車速となるように、スロットル弁71の開度を制御する。具体的には、車速が上記目標車速となるように、電動モータ72を制御する。これにより、クルーズコントロールが実行され、自動二輪車1は上記目標車速にて定速走行することになる。
【0091】
図8(a)に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1では、スロットル弁71の弁軸73から延びた突起部77とレバープーリ54との間にスプリング51が設けられているので、スプリング51が変位可能な範囲で、スロットルグリップ60を開くことなくスロットル弁71を制御することができる。そのため、本実施形態では、スロットルグリップ60が全閉状態であっても、スロットル弁71を制御することができ、クルーズコントロールを行うことができる。
【0092】
なお、スロットルグリップ60の開状態を保持するロック機構を設け、クルーズコントロールの際に、スロットルグリップ60を所定開度(一定の開度)に保持するようにしてもよい。この場合、図8(a)において、突起部77の回転可能角度が大きくなる。すなわち、突起部77は、θよりも大きな角度まで回転することができるようになる。したがって、スロットルグリップ60が全閉状態となる場合に比べて、スロットル弁71の制御範囲を更に大きくすることができる。
【0093】
以上のように、本実施形態によれば、クルーズコントロールを実行することが可能となる。
【0094】
《実施形態3》
本実施形態に係る自動二輪車1は、走行中にシフトダウンした際に、ライダーがスロットルグリップ60を操作しなくても、過度なエンジンブレーキがかかることを抑制可能としたものである。
【0095】
本実施形態に係る自動二輪車1も、実施形態1と同様の電子スロットル弁システム70を備えている。以下の説明では、実施形態1および2と同様の部分には同様の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0096】
図10に、本実施形態に係る制御システムの構成を示す。図10に示すように、本制御システムは、制御装置としてのECU100と、従動輪たる前輪5の回転速度を検出する前輪車速センサ213と、駆動輪たる後輪7の回転速度を検出する後輪車速センサ214とを備えている。また、本制御システムは、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサ210と、シフト圧を検出するシフト圧センサ211と、変速装置のギアポジションを検出するギアポジションセンサ212とを備えている。さらに、本制御システムは、実施形態2と同様、フロントブレーキ60Bの入力を検出するブレーキセンサ203と、リアブレーキ204の入力を検出するブレーキセンサ205とを備えている。
【0097】
スロットルグリップ60の横には、スイッチ215が配置されている。このスイッチ215は、後述するエンジンブレーキコントロールをON/OFFするスイッチであり、このスイッチ215がONされるとエンジンブレーキコントロールが実行可能となり、OFFされるとエンジンブレーキコントロールは実行されない。なお、本実施形態に係る自動二輪車1には、エンジンブレーキコントロールのON/OFF状態を示す表示器216が設けられている。
【0098】
エンジンブレーキコントロールは、ECU100によって以下のようにして行われる。すなわち、ECU100は、図11(a)に示すようにシフト圧が上昇した場合、あるいは図11(b)に示すようにギアポジションが1段低くなった場合に、前輪5の回転速度と後輪7の回転速度とを比較し、それらの速度差が所定値を超えると、駆動モータ72を制御することによってスロットル弁71の開度を一時的に上昇させる(図11(c)の符号BC参照)。これにより、シフトダウン時にエンジン回転速度が一時的に上昇し、上記速度差が所定値以下に保たれる。その結果、過度なエンジンブレーキが抑制される。
【0099】
前述したように、本実施形態に係る自動二輪車1では、スロットル弁71の弁軸73から延びた突起部77とレバープーリ54との間にスプリング51が設けられているので(図8(a)参照)、スプリング51が変位可能な範囲で、スロットルグリップ60を操作することなくスロットル弁71を制御することができる。そのため、本実施形態では、ライダーがスロットルグリップ60を操作しなくても、過度なエンジンブレーキを抑制することができる。すなわち、シフトダウン時に、過度なエンジンブレーキがかかることを自動的に抑制することが可能となる。
【0100】
なお、前輪5と後輪7とでは、車輪径が異なる場合がある。そのため、前輪5の回転速度と後輪7の回転速度とを比較する際に、それらの車輪径の相違を考慮することが好ましい。回転速度は、例えば単位時間当たりの回転角度(rad/s)と定義してもよいし、さらに車輪径に応じて補正を加えたものであってもよい。また、エンジンブレーキコントロールを実行する際の速度差の基準となる上記所定値を、予め前輪5と後輪7との車輪径の相違を考慮した値に設定しておいてもよい。
【0101】
以上のように、本発明によれば、実施形態1〜3に例示したように、電子スロットル弁を備えた鞍乗型車両において、従来よりも高度な各種制御が可能となる。
【0102】
なお、本発明に係る鞍乗型車両は、自動二輪車に限られない。例えば、自動二輪車以外に、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))や、スノーモービルであっても勿論よい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、鞍乗型車両に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本実施形態に係るパワーユニットの構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る電子スロットル弁システムの構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る電子スロットル弁システムを自動二輪車に搭載した構成を示した側面透視図である。
【図5】本実施形態に係る自動二輪車の平面透視図である。
【図6】(a)および(b)は、本実施形態に係る電子スロットル弁システムの動作を説明するための側面図である。
【図7】(a)および(b)は、本実施形態に係る電子スロットル弁システムの動作を説明するための側面図である。
【図8】(a)および(b)は、本実施形態に係る電子スロットル弁システムの動作を説明するための側面図である。
【図9】実施形態2に係る制御システム構成図である。
【図10】実施形態3に係る制御システム構成図である。
【図11】エンジンブレーキコントロールを説明するための図であり、(a)はシフト圧の変化、(b)はギアポジションの変化、(c)はスロットル開度およびアクセル開度の変化を示す。
【符号の説明】
【0105】
1 自動二輪車
3 ハンドル
10 パワーユニット
12 エンジン
13 変速装置
14 クラッチ
16 シフトアクチュエータ
18 クラッチアクチュエータ
24 ギア選択機構
25 変速ギア
26 変速ギア
50 機械式スロットル弁駆動機構
51 スプリング(弾性体)
52 プーリ
53 軸部
54 レバープーリ(第2部材、第2回転体)
56 リンク部材
59 カバー
60 スロットルグリップ(アクセル操作子)
61 グリップ
61a シフトアップスイッチ(入力装置)
61b シフトダウンスイッチ(入力装置)
62 スロットルケーブル
70 電子スロットル弁システム
71 スロットル弁
72 電動モータ
73 弁軸
74 スロットルボディ
76 駆動ギア
77 突起部(第1部材、第1回転体)
100 制御装置
P1 第1原点位置
P2 第2原点位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気量を調整するスロットル弁と、
ライダーによって操作され、前記スロットル弁を開閉するアクセル操作子と、
前記スロットル弁を駆動する電動モータと、
前記スロットル弁が全閉状態のときの位置を第1原点位置として、前記スロットル弁と共に変位する第1部材と、
前記アクセル操作子が全閉状態のときの位置を第2原点位置として、前記アクセル操作子に従って変位する第2部材と、
少なくとも前記第1部材および前記第2部材がそれぞれ前記第1原点位置および前記第2原点位置にあるときに前記第1部材と前記第2部材との間に介在し、前記第2部材が前記第2原点位置にあるときには前記第1部材を前記第1原点位置に復帰させるような復元力を発生させ、前記第2部材が前記第2原点位置にあるときに、前記第1部材が前記第1原点位置から前記スロットル弁が開く方向に変位すると、前記第1部材が所定位置に至るまでは弾性変形することによって前記第2部材を前記第2原点位置に保つ弾性体と、
所定の制御の際に、前記電動モータを駆動させ、前記第1部材を多くとも前記所定位置に至るまで変位させることによって、前記スロットル弁を開く制御装置と、
を備えた鞍乗型車両。
【請求項2】
有段式の変速装置と、
ライダーからのシフトチェンジ指令を受ける入力装置と、
前記入力装置にシフトチェンジ指令が入力されると、前記変速装置を駆動してシフトチェンジを行うシフトアクチュエータと、をさらに備え、
前記所定の制御は、前記アクセル操作子が全閉状態のときに行われる前記シフトアクチュエータによるシフトチェンジである、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
車速を検出する車速センサをさらに備え、
前記所定の制御は、前記第1部材が前記第1原点位置と前記所定位置との間に位置する範囲内で、前記車速が所定値となるように前記スロットル弁の開度を調整する制御である、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
有段式の変速装置と、
駆動輪と、
従動輪と、
前記駆動輪の回転速度を検出する第1のセンサと、
前記従動輪の回転速度を検出する第2のセンサと、をさらに備え、
前記所定の制御は、前記変速装置のシフトダウンのときに、前記駆動輪の回転速度と前記従動輪の回転速度との差が所定値以下になるように前記スロットル弁の開度を調整する制御である、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記第1部材は、前記スロットル弁と共に回転する第1回転体であり、
前記第2部材は、前記アクセル操作子に従って回転する第2回転体である、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
スロットルグリップを有するハンドルと、
前記スロットルグリップに連結されたスロットルケーブルと、
前記スロットルケーブルが係合されるプーリと、
前記スロットル弁を回転自在に支持する弁軸と、をさらに備え、
前記アクセル操作子は、前記スロットルグリップであり、
前記第1回転体は、前記弁軸と連動するように直接または間接的に前記弁軸に連結され、
前記第2回転体は、前記プーリと連動するように直接または間接的に前記プーリと連結されている、
請求項5に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記所定位置は、前記第1部材を前記第1原点位置から30度以上回転させた位置となる様に設定されている、
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記第1部材が前記所定位置よりも前記スロットル弁を開く方向に変位しているときに前記アクセル操作子が閉じられることによって、弾性変形した前記弾性体を介して前記第2部材が前記第1部材を押圧しながら前記第2原点位置に向かって変位すると、その後、前記第2部材が前記第2原点位置に達した後、前記弾性体が復元することによって前記第1部材が押圧されて前記第1原点位置に達する、
請求項1に記載の鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−174516(P2009−174516A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111467(P2008−111467)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】