説明

高アクリロニトリル含有率のポリマーラテックス、それを用いたフィルム、パターン形成材料及び平版印刷版原版、ならびに該ポリマーラテックスの製造方法

【課題】高アクリロニトリル含有率のポリマーラテックスの製造方法、ならびに該ポリマーラテックス、それを用いたフィルム、多層構造体、パターン形成材料、及び平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】全重合性モノマーのうちアクリロニトリルを70質量%以上含有する重合性モノマーと、水と、重合開始剤と、を混合して乳化重合したのち、残存モノマーの留去を行うポリマーラテックスの製造方法。該ポリマーラテックス、及び該ポリマーラテックスを用いたフィルム、多層構造体及びパターン形成材料。繰り返し単位としてアクリロニトリルを含有するポリマーを主成分として含有する保護層を有する平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含有率でアクリロニトリルを含有するポリマーラテックス、このポリマーラテックスを用いて作製されるフィルム、多層構造体、パターン形成材料、及び平版印刷版原版、ならびに該ポリマーラテックスの製造方法に関する。
詳しくは、ガスバリヤー性、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などに優れ、同時に均一性、環境適性に優れた、アクリロニトリルのホモポリマーあるいは繰り返し単位としてアクリロニトリル含有率の高いポリマーラテックス、このポリマーラテックスから作製されるフィルム、多層構造体、パターン形成材料、及び平版印刷版原版、ならびに該ポリマーラテックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル系樹脂は、ニトリル基特有の分子間結合に基づいて優れたガスバリヤー性を示し、また、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性及び曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性に優れた熱可塑性樹脂であり、近年食品や農医薬品、化粧品等の分野で包装材料としてフィルム、シート、容器の素材として、その利用価値が認められている。
【0003】
しかし、一般にアクリロニトリル系重合体は重合体粒子間の凝集力が強いため、アクリロニトリル成分の含有率が高いと重合安定性が悪くなり、安定にラテックスを得ることができない。高いアクリロニトリル含有率にて安定にラテックスを得る技術としては、特定の圧力及び温度条件下で重合する際に生成する重合体中に一定量以上の酸性基を導入する製造方法(例えば、特許文献1、2参照。)が知られているが、分散安定性を付与するためアクリロニトリル以外の共重合モノマーの添加を必要とするためポリアクリロニトリル自体の特性を低下させるばかりでなく、オートクレーブ等の製造装置が必要であり、簡便に製造する方法は知られていなかった。
【0004】
また、上記以外にもアクリロニトリルを含有するポリマーのラテックスは知られている(例えば、特許文献3、4、5、6及び非特許文献1、2、3参照。)が、全ての報告例は分散安定性のために何らかの共重合モノマーを含有したアクリロニトリルの共重合体のラテックスであり、アクリロニトリルのホモポリマーのラテックスはこれまで一切知られていなかった。
【0005】
また、通常乳化重合におけるアクリロニトリルの重合性は高くないため、重合後に未反応の残存モノマーがのこり、これまで、ラテックスの塗布乾燥の際、人体に有害なアクリロニトリルを飛散する状況を回避できなかった(例えば、特許文献2参照。)。
これに対し、アクリロニトリル共重合体から残存モノマーをメタノールとの共沸により除去する方法は報告例があるが(例えば、特許文献6参照。)、他の共沸溶媒を使用しなければならず、製造的にコストがかかるばかりでなく、人体に有害なメタノールを使用しており環境安全性の高い方法はこれまで提案されていなかった。
また、アクリロニトリルのホモポリマーに関して、残存モノマーを除去する例は、これまで全く知られていなかった。
【0006】
一方、平版印刷の分野では、近年、製版作業に関して、効率化及び地球環境への配慮の観点から作業の簡素化、乾式化及び無処理化が強く望まれている。効率化の面からは、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で
平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が普及してきている。また、地球環境への配慮の観点からは、従来、露光後に現像液を用いて行っていた湿式の処理を省く製版方式、例えば「機上現像」、が開発されてきている。「機上現像」とは、印刷機上で印刷インキ及び/又は湿し水を接触させることにより、平版印刷版原版の未露光部分を除去して製版する方式である。このようなデジタル化と地球環境への配慮との両面からの要望に適応した平版印刷版原版として、光及び/又は熱重合性の画像記録層を有する平版印刷版原版が用いられている。
【0007】
これらの平版印刷版原版では、画像記録層の上に、光及び/又は熱重合反応を阻害する酸素の遮断を目的とする保護層が設けられる。保護層素材として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー及びこれらに雲母を添加した例等が知られている。(例えば、特許文献7〜9参照)。しかし、これらの素材を使用する場合は、酸素遮断性、耐刷性、初期着肉性、印刷途中の着肉性、現像性、機上現像性、耐傷性等の製版性能又は印刷性能の何れかひとつ又は複数の性能が低下する場合があった。特に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース系ポリマー等の水溶性ポリマー及びこれらに雲母を添加した保護層は、酸素遮断性の点では極めて良好な性質を示すが、現像性、着肉性、耐刷性などが低下することが多く、この改善が重要な技術課題の一つとなっている。
【0008】
【特許文献1】特公昭54−41638号公報
【特許文献2】特公昭55−2207号公報
【特許文献3】特開2000−319415号公報
【特許文献4】特開昭59−213773号公報
【特許文献5】特開昭57−195770号公報
【特許文献6】米国特許第4414063号明細書
【特許文献7】特開平9−160226号公報
【特許文献8】特開2001−171250号公報
【特許文献9】特開2005−119273号公報
【非特許文献1】J.Chem.Soc.,Faraday Trans.1,1986,82,943−952
【非特許文献2】Jounal of Polymer Science:PartA−1,Vol.5,455−468(1967)
【非特許文献3】Jounal of Polymer Science:PartA−1,Vol.5,469−480(1967)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術が有する上記の欠点を解決するためになされたものであり、優れたガスバリヤー性、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性を有する高アクリロニトリル含有率のフィルム、多層構造体、パターン形成材料、及びそれらのための高アクリロニトリル含有率のポリマーラテックスを提供することを目的とする。また、本発明は、レーザー露光により効率よく画像を形成することができ、耐刷性と着肉性及び機上現像性に優れる平版印刷版原版、ならびにそれを用いた平版印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記従来技術の課題を克服すべく鋭意検討の結果、驚くべきことに、特定の、開始剤、保護コロイド、モノマー濃度、重合温度、重合時間、その他の条件で乳化重合をすることにより、高いアクリロニトリル含量で安定に重合でき、また、残存モノマ
ーを全く含まないアクリロニトリルホモポリマー及びアクリロニトリル高含有率の共重合体ラテックスが得られることを見いだし、高アクリロニトリル含有率のフィルムなどを得る本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
1.全重合性モノマーのうちアクリロニトリルを70質量%以上含有する重合性モノマーと、水と、重合開始剤とを混合して乳化重合したのち、残存モノマーの留去を行うポリマーラテックスの製造方法。
2.前記重合性モノマーが、アクリロニトリルを80質量%以上含有することを特徴とする前記1に記載のポリマーラテックスの製造方法。
3.前記1の全重合性モノマーが、アクリロニトリルを100質量%含有することを特徴とする前記1に記載のポリマーラテックスの製造方法。
4.前記乳化重合において、更に保護コロイドを使用することを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
5.前記乳化重合において、重合反応を常圧下で行うことを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
6.前記乳化重合において、重合反応を100℃以下で行うことを特徴とする前記1〜5のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
7.前記残存モノマーを留去する段階において、窒素気流下で行うことを特徴とする前記1〜6のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
8.前記保護コロイドがアニオン性の界面活性剤であることを特徴とする前記1〜7のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
9.前記重合開始剤が過硫酸塩であることを特徴とする前記1〜8のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
10.前記全重合性モノマーの量が乳化重合の全混合物中の20質量%以下であることを特徴とする前記1〜9のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
11.前記重合開始剤の量が全モノマー量に対して10質量%以下であることを特徴とする前記1〜10のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【0012】
12.全重合性モノマーのうちアクリロニトリルを70質量%以上含有する重合性モノマーを、保護コロイドの存在下、重合して合成されたポリマーラテックスであって、残存モノマーを実質的に含有しないことを特徴とするポリマーラテックス。
13.全重合性モノマーのうちアクリロニトリルを80質量%以上含有する重合性モノマーを、保護コロイドの存在下、重合して合成されたポリマーラテックスであって、残存モノマーを実質的に含有しないことを特徴とするポリマーラテックス。
14.アクリロニトリルのホモポリマーと、保護コロイドとを含むポリマーラテックスであって、残存モノマーを実質的に含有しないことを特徴とするポリマーラテックス。
15.前記保護コロイドが、アニオン性の界面活性剤であることを特徴とする前記12〜14のいずれか一項に記載のポリマーラテックス。
16.前記12〜15のいずれか一項に記載のポリマーラテックスを用いて作製されるフィルム。
17.支持体上に、前記12〜15のいずれか一項に記載のポリマ−ラテックスを用いて作製される層を有する多層構造体。
18.支持体上に、重合性組成物を含有する層を有し、更に上層に前記12〜15のいずれか一項に記載のポリマーラテックスを含有する層を設けたことを特徴とする多層構造体。
19.支持体上に、重合性組成物を含有する層を有し、更に上層に前記12〜15の何れか一項に記載のポリマーラテックスを含有する層を設けたことを特徴とするパターン形成材料。
20.支持体がプラスチック支持体であることを特徴とする前記17又は18に記載の多層構造体。
21.支持体がプラスチック支持体であることを特徴とする前記19に記載のパターン形成材料。
【0013】
22.繰り返し単位としてアクリロニトリルを含有するポリマーを主成分として含有する保護層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
23.前記ポリマーが、繰り返し単位としてアクリロニトリルを90モル%以上含有することを特徴とする前記22に記載の平版印刷版原版。
24.前記ポリマーがラテックスであることを特徴とする前記22又は23に記載の平版印刷版原版。
25.前記ラテックスを塗布してなる保護層を有することを特徴とする前記22〜24のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
26.前記ラテックスの平均粒径が3μm以下であることを特徴とする前記24又は25に記載の平版印刷版原版。
27.前記保護層が、雲母を含有することを特徴とする前記22〜26のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
28.(A)ラジカル発生剤、(B)増感色素、及び(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物を含有する画像記録層を有することを特徴とする前記22〜27のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
29.前記(B)増感色素が赤外線吸収剤であることを特徴とする前記28に記載の平版印刷版原版。
30.前記画像記録層が、印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能であることを特徴とする前記28又は29に記載の平版印刷版原版。
31.前記画像記録層が、更に、(D)バインダーポリマーを含有することを特徴とする前記28〜30のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
32.前記画像記録層が、更に、(E)マイクロカプセル又はミクロゲルを含有することを特徴とする前記28〜31のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
33.支持体上に、赤外線レーザー露光により記録可能な画像記録層を有し、赤外線レーザーによる画像記録後に現像処理工程を経ることなく印刷機に装着するか、又は、印刷機装着後に赤外線レーザーにより画像記録することにより、印刷可能となることを特徴とする前記28〜32のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
34.前記28〜33のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする平版印刷方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法により、従来、分散安定性の高い水性ラテックスを得るのは不可能と考えられており一切報告例のなかったアクリロニトリルホモポリマーの安定ラテックスを提供することができる。
また、高アクリロニトリル含有率のラテックスを分散安定性よく、残存モノマーを含有しない状態で提供することができる。これにより、ラテックスを塗布乾燥して、膜形成した際に、有害な残存モノマーが蒸発するという環境安全上の問題を回避できる。
また、本発明の高アクリロニトリル含有率のラテックスによって、優れたガスバリヤー性、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性を有し、安定なフィルムを提供することができる。
特に本発明のラテックスは、アクリロニトリル含有率が高いため、アクリロニトリル本来の優れた性能を発揮することができる。また、従来の高ニトリル共重合体ラテックスより低温、短時間で乾燥可能であり、特にプラスチックフィルムに被覆したガスバリヤー性フィルムは、塩素原子を含まないガスバリヤー包装資材としての提供を可能にする。
また、本発明の、繰り返し単位としてアクリロニトリルを含有するポリマーを含有する保護層を用いることによって、良好なパターン形成材料、特に、耐刷性と着肉性と機上現像性に優れる平版印刷版原版の提供が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の詳細を説明する。
〔ポリマーラテックス〕
本発明のポリマーラテックスは、ポリマーの全重合成分のうちアクリロニトリルが70質量%以上、望ましくは80〜100質量%であり、特に好ましくは、95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。これらと共重合可能な1種以上のビニル単量体は0〜30質量%、望ましくは0〜20質量%、特に望ましくは0〜5質量%である。アクリロニトリルが70質量%未満では、塗膜フィルムを形成した際、充分なガスバリヤー性、酸、アルカリ、有機溶剤などに対する耐薬品性、曲げ弾性率、強度、耐クリープ性などの機械的物性得られない。
【0016】
本発明において使用するアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体とは、特に限定されず、炭素−炭素不飽和二重結合を有する公知ないしは周知の化合物が有用に使用できる。
例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、(無水)マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、部分アミド化マレイン酸共重合体に使用されているモノマー、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニル基を有する芳香族炭化水素環類、ビニル基を有するヘテロ芳香族環類、無水マレイン酸、イタコン酸エステル類、クロトン酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)クロトンニトリル、各種スチレン類、各種ベンゾイルオキシエチレン類、各種アセトキシエチレン類、ビニルカルバゾール類、ビニルピロリドン、等が挙げられる。
【0017】
この中で、(メタ)アクリル酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアルキルもしくはシクロアルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビシクロ環を有する(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアラルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアリール(メタ)アクリレート、
【0018】
(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級又は3級のアルキルもしくはシクロアルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級又は3級のビシクロ環を有する(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級又は3級のアラルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の2級又は3級のアリール(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜25の(メタ)アクリロイルモルホリン、
【0019】
ビニル基を有する置換又は無置換の炭素数1〜25の芳香族炭化水素環、ビニル基を有する置換又は無置換の炭素数1〜25のヘテロ芳香族環、無水マレイン酸、置換又は無置換の炭素数1〜25の(α−メチル−)スチレン、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、無水マレイン酸、置換又は無置換の炭素数1〜25の部分エステル化マレイン酸共重合体、置換又は無置換の炭素数1〜25の部分アミド化マレイン酸、メチルジャスモネート、
【0020】
イタコン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のイタコン酸アルキルもしくはシクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビシクロ環を有する
イタコン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のイタコン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のイタコン酸アリールエステル、
【0021】
クロトン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のクロトン酸アルキルもしくはシクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビシクロ環を有するクロトン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のクロトン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のクロトン酸アリールエステル、
【0022】
置換基を有していてもよい炭素数1〜25のベンゾイルオキシエチレン類、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のアセトキシエチレン類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)クロトンニトリル、置換基を有していてもよい炭素数1〜25のビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、が好ましく、
【0023】
なかでも、(メタ)アクリル酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルもしくはシクロアルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビシクロ環を有する(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアラルキル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアリール(メタ)アクリレート、
【0024】
(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級又は3級のアルキルもしくはシクロアルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級又は3級のビシクロ環を有する(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級又は3級のアラルキル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2級又は3級のアリール(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の(メタ)アクリロイルモルホリン、
【0025】
ビニル基を有する置換又は無置換の炭素数1〜20の芳香族炭化水素環、ビニル基を有する置換又は無置換の炭素数の1〜20ヘテロ芳香族環、無水マレイン酸、置換又は無置換の炭素数1〜20の部分エステル化マレイン酸共重合体、置換又は無置換の炭素数1〜20の部分アミド化マレイン酸、置換又は無置換の炭素数1〜20の(α−メチル−)スチレン類、メチルジャスモネート、
【0026】
イタコン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のイタコン酸アルキルもしくはシクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビシクロ環を有するイタコン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のイタコン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のイタコン酸アリールエステル、
【0027】
クロトン酸、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のクロトン酸アルキルもしくはシクロアルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビシクロ環を有するクロトン酸エステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のクロトン酸アラルキルエステル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のクロトン酸アリールエステル、
【0028】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のベンゾイルオキシエチレン類、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアセトキシエチレン類、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)クロトンニトリル、がより好ましく、
【0029】
特には、(メタ)アクリル酸、置換基を有していてもよい、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、直鎖又は分岐のプロピル(メタ)アクリレート、直鎖又は分岐のブチル(メタ)アクリレート、直鎖又は分岐のペンチル(メタ)アクリレート、
ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルデシル(メタ)アクリレート、ノルマルドデシル(メタ)アクリレート、
【0030】
置換基を有していてもよいアダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナンメチル(メタ)アクリレート、ノルボルネンメチル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよいベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、アントラセンメチル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、置換基を有していてもよいフェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、
【0031】
(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよいメチルもしくはジメチル(メタ)アクリルアミド、エチルもしくはジエチル(メタ)アクリルアミド、直鎖又は分岐のプロピルもしくはジプロピル(メタ)アクリルアミド、直鎖又は分岐のブチルもしくはジブチル(メタ)アクリルアミド、直鎖又は分岐のペンチルもしくはジペンチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルもしくはジノルマルヘキシル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシルもしくはジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシルもしくはジ(2−エチルヘキシル)(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよいアダマンチル(メタ)アクリルアミド、ノルアダマンチル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよいベンジル(メタ)アクリルアミド、ナフチルエチル(メタ)アクリルアミド、フェニルエチル(メタ)アクリルアミド、置換基を有していてもよいフェニルもしくはジフェニル(メタ)アクリルアミド、ナフチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ピペリジルアクリルアミド、ピロリジルアクリルアミド、
【0032】
(α−メチル−)スチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、無水マレイン酸、メチルジャスモネート、(N−置換)マレイミド、イタコン酸、クロトン酸、置換基を有していてもよい、メチルクロトネート、エチル(クロトネート、直鎖又は分岐のプロピルクロトネート、直鎖又は分岐のブチルクロトネート、直鎖又は分岐のペンチルクロトネート、ノルマルヘキシルクロトネート、シクロヘキシルクロトネート、ノルマルヘプチルクロトネート、2−エチルヘキシルクロトネート、ノルマルオクチルクロトネート、ノルマルデシルクロトネート、ノルマルドデシルクロトネート、置換基を有していてもよいアダマンチルクロトネート、イソボルニルクロトネート、ノルボルナンメチルクロトネート、ノルボルネンメチルクロトネート、置換基を有していてもよいベンジルクロトネート、ナフチルメチルクロトネート、アントラセンメチルクロトネート、フェニルエチルクロトネート、置換基を有していてもよいフェニルクロトネート、ナフチルクロトネート、
【0033】
置換基を有していてもよいベンゾイルオキシエチレン、置換基を有していてもよいアセトキシエチレン、置換基を有していてもよいビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等が好ましい。
【0034】
また、上記のカルボキシル基は、金属塩となっていてもよい。
【0035】
これらの置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアラルキル基、炭素数1〜20のアリール基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアリールカルボニル基、炭素数1〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、フリル基、フルフリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロフルフリル基、アルキルチオ基、トリメチルシリル基、
トリフルオロメチル基、カルボキシル基、チエニル基、モルホリノ基、モルホリノカルボニル基、ビニル基、−SOM基(Mは、水素原子又はNaもしくはK)、−COOM基(Mは、水素原子又はNaもしくはK)、(メタ)アクリロイルオキシ基、フェニル基、等が好ましく、
【0036】
更には、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアラルキル基、炭素数1〜15のアリール基、炭素数1〜15のアシルオキシ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1〜15のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜15のアリールカルボニル基、炭素数1〜15のジアルキルアミノ基、炭素数1〜15のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、フリル基、フルフリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロフルフリル基、アルキルチオ基、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、チエニル基、モルホリノ基、モルホリノカルボニル基、ビニル基、−SOM基(Mは、水素原子又はNaもしくはK)、−COOM基(Mは、水素原子又はNaもしくはK)、(メタ)アクリロイルオキシ基、フェニル基、等が好ましく、
【0037】
特には、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基、直鎖又は分岐のブチル基、直鎖又は分岐のペンチル基、ノルマルヘキシル基、シクロヘキシル基、ノルマルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルオクチル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、メチルオキシ基、エチルオキシ基、直鎖又は分岐のプロピルオキシ基、直鎖又は分岐のブチルオキシ基、直鎖又は分岐のペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルマルヘプチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、フェニル基、ナフチル基、
【0038】
メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、直鎖又は分岐のプロピルカルボニルオキシ基、直鎖又は分岐のブチルカルボニルオキシ基、直鎖又は分岐のペンチルカルボニルオキシ基、ノルマルヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ノルマルヘプチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、ノルマルオクチルカルボニルオキシ基、ノルマルデシルカルボニルオキシ基、ノルマルドデシルカルボニルオキシ基、
【0039】
メチルカルボニル基(アセチル基)、エチルカルボニル基、直鎖又は分岐のプロピルカルボニル基、直鎖又は分岐のブチルカルボニル基、直鎖又は分岐のペンチルカルボニル基、ノルマルヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、ノルマルヘプチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ノルマルオクチルカルボニル基、ノルマルデシルカルボニル基、ノルマルドデシルカルボニル基、
【0040】
メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、直鎖又は分岐のプロピルオキシカルボニル基、直鎖又は分岐のブチルオキシカルボニル基、直鎖又は分岐のペンチルオキシカルボニル基、ノルマルヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ノルマルヘプチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノルマルオクチルオキシカルボニル基、ノルマルデシルオキシカルボニル基、ノルマルドデシルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、
【0041】
メチルもしくはジメチルアミノ基、エチルもしくはジアミノ基、直鎖又は分岐のプロピルもしくはジプロピルアミノ基、直鎖又は分岐のブチルもしくはジブチルアミノ基、直鎖又は分岐のペンチルもしくはジペンチルアミノ基、ノルマルヘキシルもしくはジノルマルヘキシルアミノ基、シクロヘキシルもしくはジシクロヘキシルアミノ基、ノルマルヘプチルもしくはジノルマルヘプチルアミノ基、2−エチルヘキシルもしくはジ(2−エチルヘキシル)アミノ基、
【0042】
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、フリル基、フルフリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロフルフリル基、アルキルチオ基、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、チエニル基、モルホリノ基、モルホリノカルボニル基、ビニル基、−SOM基(Mは、水素原子又はNaもしくはK)、−COOM基(Mは、水素原子又はNaもしくはK)、(メタ)アクリロイルオキシ基、フェニル基、等が好ましい。
【0043】
また、これらの置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。
【0044】
その他親水性を有するモノマーとして、燐酸、燐酸エステル、第4級アンモニウム塩、エチレンオキシ鎖、プロピレンオキシ鎖、スルホン酸及びその塩、モルホリノエチル基等を含んだモノマー等も有用である。
【0045】
また、上記のスルホ基、カルボキシル基は、二価以上の金属塩となっていてもよい。
【0046】
共重合するモノマーの種類数も特には限定されないが、1〜12種が好ましく、1〜8種がより好ましく、1〜5種が特に好ましい。
【0047】
本発明において、ラテックスの平均粒子径は、分散安定性の観点で、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0048】
本発明において、ラテックスの分散安定化のために使用する保護コロイドは、保護コロイド能を有するものであれば、特には限定されない。使用できる保護コロイドの例としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、疎水部と親水部を併せもつ高分子等を挙げることができ、例えば、化学便覧、実験化学講座(日本化学会編)、高分子合成の実験法(大津隆行著・化学同人)等に記載されている保護コロイドを利用することができる。
【0049】
具体的には、各種ポリビニルアルコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、C1633(CH)Br、C1225(CHCOO、C1225(OCOH、n−オクチル−β−D−グルコシド、C13CH(OC14OH、C17CHCHN(COH)、C1531CON(COH)、(CH)SiO[Si(CHO]−Si、(CHCH(CO)8.2CH、等が挙げられる。
このなかでアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、各種ポリビニルアルコールが好ましく、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、各種ポリビニルアルコールがより好ましく、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が特に好ましい。
【0050】
乳化重合反応は、加圧下、常圧下及び減圧下のいずれで行ってもよいが、製造の簡便性の観点で、常圧下で行うことが好ましい。
【0051】
乳化重合の重合反応温度は、重合反応が進行できれば特には限定されないが、製造の簡便性の観点で、300℃以下で行うことが好ましく、200℃以下で行うことがより好ましく、100℃以下で行うことが特に好ましい。
【0052】
重合に用いる重合開始剤も、炭素−炭素二重結合を重合できる化合物であれば特には限定されないが、重合性、コスト、操作の簡便性、等の観点で、前記の化学便覧、実験化学講座(日本化学会編)、高分子合成の実験法(化学同人)等に記載されている重合開始剤等が好適に利用される。
【0053】
具体的には、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤、等が挙げられる。この中で、過酸化ベンゾイル、過酸化−ジ−t−ブチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アセチル、テトラメチルチウラムジスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン、VA-086、V-50、VA-044、V-501(以上、和光純薬製アゾ系水溶性開始剤)等が好ましく、
過酸化ベンゾイル、過酸化−ジ−t−ブチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アセチル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、VA-086、V-50、VA-044、V-501、等がより好ましく、
過酸化ベンゾイル、過酸化−ジ−t−ブチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、VA-086、V-50、VA-044、V-501、等が特に好ましい。
ラテックスの分散安定性の観点では、アニオン性末端基を発生する開始剤が好ましく、この観点で、過硫酸塩化合物が好ましく用いられる。
【0054】
乳化重合において、重合反応混合物全質量中の全モノマー量は、分散安定性の観点で、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
【0055】
乳化重合において、重合開始剤量は、分散安定性、コスト等の観点で、全モノマー量に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0056】
乳化重合したのち、残存モノマーを留去する工程は、減圧下で行ってもよいし、窒素、アルゴン又は空気の気流下で行ってもよい。なかでも、残存モノマーの留去効率及び生産コストの観点で、窒素又は空気の気流下で行うことが好ましく、特に生成物の酸化防止の観点では、窒素気流下が特に好ましい。その際、加熱してもよいし、常温で留去を行ってもよい。
【0057】
残存モノマーの留去に関しては、米国特許第4414063号明細書に記載されている方法と同様に、生成したラテックスに溶媒を添加して、加熱及び共沸することにより留去効率を上げることができる。
また別法として、重合後に生成したラテックスを、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機塩等を添加して塩析/濾過し、未反応モノマーを除去してもよい。
【0058】
〔フィルム〕
本発明のフィルムは、上記アクリロニトリル高含有率のポリマーラテックスを用いて作製されるフィルムであり、広くコーティングによって形成されるフィルム(塗膜)を意味する。好ましいフィルムの態様としては、上記ポリマーラテックスを塗布して得られるフィルム(塗膜)が挙げられる。その用途は特に限定されないが、耐水性、ガスバリヤー性、耐キズ性など各種耐性が要求されるフィルムとして用いることができる。例えば、プラスチック、繊維、フィルム等の改質のためのフィルム;紙やフィルム等の表面加工のためのフィルム;水性塗料をコーティングして形成されたフィルム、顔料塗料をコーティングして形成されたフィルム、酸、アルカリ又は有機溶剤に対する耐性と曲げ弾性率、強度及び耐クリープ性を有するコーティングフィルム;食品、農・医薬品又は化粧品用の包装材料、フィルム、シート又は容器の素材、などである。
【0059】
上記ポリマーラテックスを塗布してフィルムを製造する方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書又は特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。
上記フィルムの塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜100g/mの範囲であることが好ましく、0.02〜30g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜10g/mの範囲である。
乾燥方法としても特に制限はなく、気流下での乾燥、真空での乾燥等、目的により適宜選択される。
乾燥温度としても特に制限はないが、目的とするラテックスの成膜状態にあわせて適宜選択され、30℃〜300℃の範囲が好ましく、40℃〜250℃の範囲がより好ましく、45℃〜230℃の範囲が特に好ましい。
【0060】
また上記フィルムにはフィルムの酸素遮断性を向上させることを目的として層状化合物を含有させることができる。層状化合物とは薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式
A(B,C)2−5D10(OH,F,O)
〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、B及びCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSi又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上記フィルムに用いられる天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg/5Li/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
【0061】
上記の層状化合物の中でも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が、入手容易性、均一性の観点から特に有用である。すなわち、雲母、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はこの傾向が強い。
【0062】
層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
層状化合物の粒子径は、その平均径が1〜20μm、好ましくは1〜10μm、特に好ましくは2〜5μmである。粒子径が1μmよりも小さいと酸素や水分の透過の抑制が不十分であり、効果を十分に発揮できない。また20μmよりも大きいと塗布液中での分散
安定性が不十分であり、安定的な塗布を行うことができない問題が生じる。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0063】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子をフィルムに含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0064】
上記フィルム中の無機質層状化合物の含有量は、上記フィルム層に使用されるポリマーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
【0065】
上記フィルムの塗布性、塗布面状等の塗布に関する性能を向上させる目的で、他の化合物を含有してもよい。他の化合物としては、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤やフィルムの物性改良のため水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。
これら活性剤の添加量は(共)重合体に対して0.1〜100質量%添加することができる。
【0066】
また、上記フィルムの層と、ラテックス被塗布物又は多層構造体の場合は他の層との密着性を向上させるため、例えば、特開昭49−70702号公報及び英国特許出願公開第1303578号明細書に記載されているように、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルション、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を含有させてもよい。含有量は、上記ラテックスの固形分に対して、0.1〜60質量%が好ましく、0.5〜50質量%がより好ましく、1.0〜40質量%が特に好ましい。
【0067】
〔多層構造体〕
ポリマーラテックスから作製された層を含む多層構造体であれば特に限定されない。ポリマーラテックスから作製された層は、ガスバリヤー性や耐水性を有する層であるため、支持体上のどこにあってもその効果を発揮することが可能である。すなわち、支持体に接触する層として設けてもよく、中間層として設けても良く、最上層に設けてもよい。
【0068】
多層構造体の例としては、平版印刷版原版や、半導体レジストや、カラーフィルターなどのパターン形成材料や、食品・医薬品・農薬用包装材料、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、等の各種表示材料、写真、プリント等の画像を保護するためのコーティング材料、各種防水性コーティングなどが挙げられる。
【0069】
〔パターン形成材料〕
本発明のパターン形成材料は、支持体上に、重合性組成物、あるいは、重合開始剤及び重合性化合物を含有する層(パターン形成層)を有し、更に上層に本発明のポリマーラテックスを含有する層を設けたことを特徴とする。このようなパターン形成材料として、平
版印刷版原版や半導体用材料、カラーフィルター材料、プリント配線基板材料などが挙げられる。好ましくは、カラーフィルター材料であり、下記にカラーフィルター材料について詳述する。
【0070】
(支持体)
本発明において、支持体は、金属、プラスチック、木材など特に限定されるものではない。支持体は、可撓性を有し、かつ、寸法安定性に優れた材料が好ましく用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、あるいはポリカーボネートフィルムを挙げることができる。支持体の厚みは50〜350μm、更に100〜250μmがパターン形成材料の機械的特性、形状安定性あるいは取り扱い性等から好ましい。また、必要により、支持体とパターン形成層との接着を向上させるために、この種の目的で従来から使用されている公知の接着剤層を支持体の表面に設けてもよい。
【0071】
また、本発明で用いる支持体の表面に物理的、化学的処理を行うことにより、パターン形成層あるいは接着剤層との接着性を向上させることができる。物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線あるいは真空紫外線照射処理法などを挙げることができる。また、化学的処理方法としては、強酸処理法、強アルカリ処理法、酸化剤処理法、カップリング剤処理法などを挙げることができる。
【0072】
(重合開始剤)
重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993) やR.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A:Chemistry,73.81 (1993); J.P.Faussier, "Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications":Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology(1998); M.Tsunooka et al., Prog.Polym.Sci., 21, 1 (1996)等に多く記載されている。また、F.D.Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990); G.G.Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993); H.B.Shuster et al,JACS, 112,6329 (1990); I.D.F.Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0073】
以下、好ましい重合開始剤、すなわち、光及び/又は熱のエネルギーによってラジカルを発生し、上述の重合性化合物と重合反応を開始、促進させる化合物であるラジカル発生剤の具体例について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
【0074】
本発明において、好ましいラジカル発生剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート及び有機ホウ素化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物、(m)アジド化合物、(n)ジスルホン化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(n)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(a)芳香族ケトン類
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117などに記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する
化合物が挙げられる。例えば、下記の化合物が挙げられる。
【0076】
ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−エトキシチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等。
【0077】
更に下記の化合物も挙げられる。
【0078】
【化1】

【0079】
なかでも特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、下記化合物が挙げられる。
【0080】
【化2】

【0081】
(b)オニウム塩化合物
(b)オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号、に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、 J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
特に反応性、安定性の面から以下に詳述するジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましいものとして挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
【0082】
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(1)〜(3)で表されるオニウム塩である。
【0083】
【化3】

【0084】
式(1)中、Ar11は置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
【0085】
式(2)中、Ar21及びAr22は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数
1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0086】
式(3)中、R31、R32及びR33は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
【0087】
好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、本出願人が先に提案した特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものや特開2001−343742号公報の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたもの、また、特開2002−148790号、特開2001−343742号、特開2002−6482号、特開2002−116539号、特開2004−102031号各公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩化合物などを挙げることができる。
以下に、本発明において好適に用いられるオニウム塩の例を挙げるが、本発明はこれら制限されるものではない。
【0088】
【化4】

【0089】
【化5】

【0090】
【化6】

【0091】
【化7】

【0092】
【化8】

【0093】
【化9】

【0094】
【化10】

【0095】
【化11】

【0096】
【化12】

【0097】
(c)有機過酸化物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化コハク酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカ
ーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、ターシャリーブチルカーボネート、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0098】
なかでも、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0099】
(d)チオ化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0100】
【化13】

【0101】
(ここで、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。)
上記一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すような化合物が挙げられる。
【0102】
【化14】

【0103】
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号の公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0104】
(f)ケトオキシムエステル化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(f)ケトオキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979)P1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)P156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)P202−232、特開2000−66385公報記載の化合物、特開2000−80068公報記載の化合物などが挙げられる。具体例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。更に、下記の化合物も好ましい化合物である。
【0105】
【化15】

【0106】
【化16】

【0107】
(g)ボレート及び有機ホウ素化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましいボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0108】
【化17】

【0109】
(ここで、R28、R29、R30及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、又は置換もしくは非置換のヘテロ環基を示し、R28、R29、R30及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換もしくは非置換のアルキル基である。(Z5+はアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。)
一般式(5)で示される化合物例としては具体的には米国特許第3,567,453号
、同4,343,891号、ヨーロッパ特許第109,772号、同109,773号各明細書に記載されている化合物及び以下に示すものが挙げられる。
【0110】
【化18】

【0111】
ボレート化合物の例としては、上記の他、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837、特開2002−107916、特許第2764769号、特開2002−116539号公報、等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ボレートが挙げられる。また、次のような有機ホウ素系錯体も有用である。例えば、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等。
【0112】
(h)アジニウム化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群をあげることができる。後述の平版印刷版原版の項で説明する一般式(I)のアジニウム化合物も好適なものとして挙げられる。
【0113】
(i)メタロセン化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(i)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号の各公報に記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号の公報に記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0114】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル
、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−4−トリル−スルホニル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−オキサヘプチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロアセチルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロベンゾイル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−クロロベンゾイル)アミノ〕フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,7−ジメチル−7−メトキシオクチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、等を挙げることができる。
【0115】
(j)活性エステル化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(j)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号の公報に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0116】
(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)から(12)の化合物を挙げることができる。
【0117】
【化19】

【0118】
(式中、X2はハロゲン原子を表し、Y1は−C(X23、−NH2、−NHR38、−NR38、−OR38を表す。ここでR38はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。またR37は−C(X23、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、を表す。)
【0119】
【化20】

【0120】
(ただし、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、X3はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)
【0121】
【化21】

【0122】
(ただし、R40は、アリール基又は置換アリール基であり、R41は、以下に示す基又はハロゲンであり、Z6は−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−であり、X3はハロゲン原子であり、mは1又は2である。)
【0123】
【化22】

【0124】
(R42、R43はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R44は一般式(6)中のR38と同じである。)
【0125】
【化23】

【0126】
(ただし、式中、R45は置換されていてもよいアリール基又はヘテロ環式基であり、R46は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。)
【0127】
【化24】

【0128】
(式(10)は、トリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレンヘテロ環式化合物を表す。L7は水素原子又は式:CO−(R47)q(C(X43)rの置換基であり、Q2はイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又はN−R基であり、M4は置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリレン基であり、R48はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R47は、炭素環式又はヘテロ環式の2価の芳香族基であり、X4は塩素、臭素又はヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2である。)
【0129】
【化25】

【0130】
(式(11)は、4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチルフェニル)オキサゾール誘導体を表す。X5はハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R49は水素原子又はCH3-t5t基であり、R50はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)
【0131】
【化26】

【0132】
(式(12)は、2−(ハロゲノメチルフェニル)−4−ハロゲノオキサゾール誘導体を表す。X6はハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R51は水素原子又はCH3-v6v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)
【0133】
上記の炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、たとえば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許第1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号公報に記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許第3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。あるいは更にM.P.Hutt、E.F.Elslager及びL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる化合物群、例えば、
次のような化合物等を挙げることができる。
【0134】
【化27】

【0135】
(l)アゾ系化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0136】
(n)ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特開2003−328465号公報等に記載される化合物が挙げられる。
【0137】
上述のラジカル発生剤の中でも、より好ましい例としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)メタロセン化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、を挙げることができ、更に最も好ましい例としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、チタノセン化合物、一般式(6)であらわされるトリハロメチル−S−トリアジン化合物を挙げることができる。
【0138】
重合開始剤は、重合性化合物を含有する重合性組成物の全固形分に対し、0.1〜50質量%、好ましくは、0.5〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%の割合で添加することができる。本発明における重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0139】
<重合性化合物>
本発明に使用される好ましい重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に制限なく用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの共重合体、ならびにそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0140】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0141】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0142】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイ
タコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0143】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0144】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0145】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0146】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0147】
上記エステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0148】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0149】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0150】
また、イソシアネートとヒドロキシル基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(13)で示されるヒドロキシル基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0151】
CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (13)
(ただし、R及びR'は、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0152】
更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、短時間で硬化組成物を得ることができる。
【0153】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキ
シ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0154】
感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。
【0155】
付加重合性化合物は、組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0156】
パターン形成層には、上記の重合開始剤及び重合性化合物のほかに、増感色素、バインダーポリマー、重合禁止剤、着色剤、界面活性剤などを適宜用いることができる。
【0157】
〔平版印刷版原版〕
本発明の平版印刷版原版は、繰り返し単位としてアクリロニトリルを含有するポリマーを含有する保護層を有することを特徴とする。
更に、本発明の平版印刷版原版は、(A)ラジカル発生剤、(B)赤外線吸収剤、及び(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物を含有する画像記録層を有することが好ましく、更に該画像記録層は、(D)バインダーポリマー、(E)マイクロカプセル又はミクロゲルを含有することが好ましい。
このような画像記録層は、赤外線露光により記録可能であり、また、赤外線露光による画像記録後に、なんらの湿式現像処理工程を経ることなく印刷工程に付して印刷することで、印刷途上においてインキや湿し水などの油性成分及び/又は親水性成分により未露光部の画像記録層が除去される、所謂、機上現像可能な画像記録層である。
以下、保護層、画像記録層など、本発明の平版印刷版原版の各要素について詳細に説明する。
【0158】
(保護層)
本発明の保護層は、繰り返し単位としてアクリロニトリルを含有するポリマーを主成分として含有することを特徴とする。ここで、主成分として含有するとは、保護層を構成する固形分の60質量%以上であることを意味し、70質量%以上であることが好ましい。
【0159】
保護層に関する前述の課題を解決するためには、画像記録層と保護層を積層する際、層間混合を防止することが重要である。このため、保護層に使用するアクリロニトリルを含むポリマーは、より高分子量であること又はポリマーラテックスとして使用することが好ましい。平版印刷版原版製造の観点では、保護層の形成は塗布溶媒を水又は水−有機溶剤混合系にすることが好適な形のひとつであり、アクリロニトリルを含むポリマーをラテックスとして使用することが特に好ましい。
【0160】
上記ポリマー中のアクリロニトリル含有量は、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上が特に好ましく、90モル%以上が最も好ましい。
60モル%未満では、酸素遮断性の低下が大きくなり、良好な画像形成が得られない。
【0161】
このような本発明の平版印刷版原版の保護層に用いられるアクリロニトリルを含有するポリマーとしては、前述のアクリロニトリル含有ポリマーラテックスの製造方法で合成される高アクリロニトリル含有率のポリマーラテックスが好適である。
ポリマーラテックスの平均粒子径は、分散安定性の観点で、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0162】
本発明の保護層には、アクリロニトリルを含有するポリマーの機能を妨げない範囲で、その他のポリマーを併用できる。併用できるポリマーとしては水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。これらは、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0163】
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、なかでも、水を溶媒として塗布可能であり、かつ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。その中でも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
【0164】
保護層に用い得るポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、更にはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
【0165】
これら変性ポリビニルアルコールは71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、(株)クラレ製のPVA−105,PVA−110,PVA−117,PVA−117H,PVA−120,PVA−124,PVA124H,PVA−CS,PVA−CST,PVA−HC,PVA−203,PVA−204,PVA−205,PVA−210,PVA−217,PVA−220,PVA−224,PVA−217EE,PVA−217E,PVA−220E,PVA−224E,PVA−405,PVA−420,PVA−613,L−8等が挙げられる。また変性ポリビニルアルコールとしては、アニオン変性部位を有すKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、カチオン変性部位を有すC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有すM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有すMP−103、MP−203、MP−102、MP
−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有すHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有すR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
【0166】
また保護層には前述の雲母などの無機質層状化合物を含有してもよい。保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
【0167】
層状化合物は保護層に分散物として含有される。以下に、層状化合物の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
【0168】
保護層には、可撓性の付与、塗布面状の向上、画像記録層との密着性向上などのため、添加物を用いることができる。添加物としては、ポリマーラテックスから作製されるフィルムの場合に同様の目的のために用いられると記載した可塑剤、界面活性剤、ポリマーなどの化合物を、同様に用いることができる。
【0169】
更に、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。また、保護層塗布液には、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
【0170】
必要成分を塗布溶剤に溶解又は分散して調製された保護層塗布液を、支持体上に設けられた画像記録層の上に塗布し、乾燥することで保護層を形成する。塗布溶剤はバインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書又は特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体例としては、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。
【0171】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/mの範囲であることが好ましく、0.02〜3g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/mの範囲である。
【0172】
(画像記録層)
<(A)ラジカル発生剤>
本発明の(A)ラジカル発生剤としては、下記一般式(I)で表される化合物を好適に用いることができる。
【0173】
【化28】

【0174】
一般式(I)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の置換基を表す。X−はアニオンを表す。
上記一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、ヒドロキシル基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、等が挙げられ、導入可能な場合には更に置換基を有していてもよい。
【0175】
また、一般式(I)で表される化合物としては、一般式(I)で表される化合物における特定構造の骨格(カチオン部)が、Rを介して結合し、カチオン部が分子中に2個以上含まれる化合物(多量体型)も包含され、このような化合物も好適に用いられる。
【0176】
更に、一般式(I)で表される化合物は、R〜Rのいずれかを介して、ポリマー側鎖に導入された化合物(ポリマー型)でもよく、好ましい態様として挙げられる。
【0177】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例〔例示化合物A−1〜A−37〕を列挙するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0178】
【化29】

【0179】
【化30】

【0180】
【化31】

【0181】
【化32】

【0182】
【化33】

【0183】
【化34】

【0184】
【化35】

【0185】
上記一般式(I)で表される化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。その場合、単量体型、多量体型、ポリマー型と種類の異なる化合物を組み合わせて用いることもできる。
本発明における一般式(I)で表される化合物の含有量としては、平版印刷版原版の画像記録層全固形分中、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜30質量%であり、更に好ましくは5〜20質量%である。
含有量がこの範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。また、一般式(I)で表される化合物は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0186】
本発明の(A)ラジカル発生剤としては、前記一般式(I)で表される化合物が特に好ましいが、それ以外のラジカル発生剤を併用することができる。
本発明に用いられる併用可能なラジカル発生剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。具体例としては、前記のパターン形成材料の項に記載したラジカル発生剤が挙げられる。
これら併用可能な他のラジカル発生剤の中でも露光後の画像視認性向上の観点からは、オニウム塩であって、対イオンとして無機アニオン、例えば、PF、BF、及びCSOなどを有するものが好ましく、更に、発色に優れていることから、電子供与性基を2つ以上有するジアリールヨードニウム塩が好ましい。このラジカル発生剤は、ジアリールヨードニウム骨格を有する化合物であり、このアリール基に、アルキル基、アルコキシ基などの電子供与性基を2以上、好ましくは3以上有する化合物である。電子供与性基はヨードニウム塩のアリール基のパラ位、オルト位に導入されていることが好ましい。
【0187】
これら他のラジカル発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらのラジカル発生剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0188】
画像記録層におけるラジカル発生剤の総含有量は、画像記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%が更に好ましく、1〜20質量%の割合であることが最も好ましい。
【0189】
<(B)増感色素>
本発明の画像記録層は、赤外線レーザー、可視光もしくは紫外線レーザー等の光源との適合性をよくするため、各光源に対応した増感色素を用いることが好ましい。
【0190】
(1)赤外線レーザー対応の場合
本発明の平版印刷版原版を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により画像形成する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが必須である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して、前記した一般式(I)の化合物を含むラジカル発生剤に電子移動/エネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料であり、効果の観点からは赤外線吸収染料が好ましい。
【0191】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等の公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号
、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0192】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)及び(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0193】
【化36】

【0194】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられ、電子移動による色変化の観点からは、分子内に5員環、特には、窒素原子を含む5員ヘテロ環を有するものが好ましい。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(II)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0195】
【化37】

【0196】
一般式(II)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−N(Aryl)、X−L又は以下に構造式で示す基を表す。ここで、Arylは置換基を有してよいアリール基を表し、Xは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基
、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
以下に示す式中、X-は後述するZ-と同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、及びハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0197】
【化38】

【0198】
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0199】
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素原子数12個以下の炭化水素基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられ、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(II)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ-は必要ない。好ましいZ-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
また、視認性向上の観点からは、Z-は無機アニオンあるいは強酸のカウンターアニオンであることが好ましく、このような観点からは、PF-、BF-、CFSO-、CSO-が挙げられ、なかでもPF-が最も好ましい。
【0200】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(II)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例として更に、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0201】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0202】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0203】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0204】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
【0205】
顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0206】
これらの中でも、本発明の平版印刷版原版に特に好ましい(B)増感色素としては、シアニン色素の骨格上に少なくとも1つの溶剤溶解性基を有する化合物が挙げられる。本発明における溶剤溶解性基とは、赤外線吸収剤の溶剤溶解性を向上させることができる有機官能基を指し、このような機能を有する官能基であれば特に制限はないが、好ましくは、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニルアミド基、カルボキシル基、スルホニル酸基、ヒドロキシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、及び、アミド基が挙げられる。これらのうちで、更に好ましい溶剤溶解性基としては、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が挙げられる。更にもっとも好ましい溶剤溶解性基としては、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、が挙げられる。
【0207】
本発明に好適な赤外線吸収剤としては、より具体的には、前記一般式(II)で示されるシアニン色素構造を有し、分子中に少なくとも一つの溶剤溶解性基を有するものが好ましい。前記一般式(II)で示されるシアニン色素構造のいずれか、好ましくは、Ar、Arで示される芳香族炭化水素基、両末端の窒素原子、Xが−N(Aryl)を表す場合の芳香環などに溶剤溶解性基が導入されているものがより好ましい。機上現像性向上の観点から、両末端の窒素原子上に溶剤溶解性基が導入されるものがもっとも好ましい。導入される溶剤溶解性基の数は少なくとも1つであるが、高濃度状態で画像記録層をムラ無く塗布することができ、かつ、画像記録層中の成分に起因する機上現像時におけるカスの発生抑制や機上現像性の向上という観点からは、シアニン色素一分子上に2〜6個導入されていることが好ましい。
【0208】
本発明において、好適に用いることのできる赤外線吸収剤の具体例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
【化39】

【0210】
【化40】

【0211】
【化41】

【0212】
【化42】

【0213】
【化43】

【0214】
【化44】

【0215】
【化45】

【0216】
赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型平版印刷版原版を作製した際に、画像記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、画像記録層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版原版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
【0217】
赤外線吸収剤の画像記録層への添加量としては全固形分中、0.1〜30質量%添加されることが好ましく、0.5〜20質量%であることが更に好ましく、1〜10質量%添加されることがより好ましい。
【0218】
(2)可視光又は紫外線レーザー対応の場合
本発明の平版印刷版原版において、画像記録層は増感色素を含有することができる。該増感色素としては、350〜850nmに吸収ピークを有するものが好ましい。このような増感色素としては、分光増感色素、光源の光を吸収してラジカル発生剤と相互作用する以下に示す染料あるいは顔料が挙げられる。
好ましい分光増感色素又は染料としては、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)等が挙げられる。
【0219】
より好ましい分光増感色素又は染料の例としては、特公昭37−13034号公報記載のスチリル系色素、特開昭62−143044号公報記載の陽イオン染料、特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩、特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物、特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類、特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料、特開平2−226148号及び特開平2−226149号各公報記載のアクリジン類、時公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類、特公昭46−42363号公報記載のシアニン類、特開平2−63053号公報記載のベンゾフラン色素、特開平2−85858号、特開平2−216154号各公報記載の共役ケトン色素、特開昭57−10605号公報記載の色素。特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体、特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素、特開昭62−31844号、特開昭62−31848号、特開昭62−143043号各公報記載のキサンテン系色素、特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン、特公昭61−962l号公報記載のメロシアニン色素、特開平2−179643号公報記載の色素。特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素、特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素、特開昭59−89803号公報記載のメロシアニン色素、特開平8−129257号記載のメロシアニン色素、特開平8−334897号記載のベンゾピラン系色素、等を挙げることができる。
【0220】
可視光又は紫外線レーザー対応の増感色素の含有量としては、画像記録層を構成する全固形分に対して好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
【0221】
<(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物>
本発明の画像記録層には、効率的な硬化反応を行うため(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物(以下、適宜、重合性化合物と称する)を含有させることが好ましい。
好ましい重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、このような化合物として前述のパターン形成材料の項に記載の付加重合性化合物を用いることができる。
【0222】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
また、感度の点では、パターン形成材料の場合と同様1分子あたりの不飽和基含量が多
い構造が好ましく異なる官能数・異なる重合性不飽和基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節することができる。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、ラジカル発生剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0223】
(C)重合性化合物は、画像記録層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0224】
<(D)バインダーポリマー>
本発明に係る画像記録層には、形成する画像記録層の皮膜特性向上などの目的で、必要に応じて、更にバインダーポリマーを使用することができる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
【0225】
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
【0226】
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又はCONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0227】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CHCR=CR、−(CHO)CHCR=CR、−(CHCHO)CHCR=CR、−(CHNH−CO−O−CHCR=CR、−(CH−O−CO−CR=CR及び−(CHCHO)−X(式中、R〜Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、RとR又はRとは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0228】
エステル残基の具体例としては、−CHCH=CH(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CHCHO−CHCH=CH、−CHC(CH)=CH、−CHCH=CH−C、−CHCHOCOCH=CH−C
、−CHCH−NHCOO−CHCH=CH及び−CHCHO−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CHCH=CH、−CHCH−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CHCH−OCO−CH=CHが挙げられる。
【0229】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0230】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0231】
また、機上現像性向上の観点から、バインダーポリマーは、インキ及び/又は湿し水に対する溶解性又は分散性が高いことが好ましい。
インキに対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
【0232】
親水的なバインダーポリマーとしては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
【0233】
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
【0234】
バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)
は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0235】
バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマーのいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。また、バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0236】
バインダーポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いられる。
バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
【0237】
(D)バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0〜90質量%であり、0〜80質量%であるのが好ましく、0〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、(C)重合性化合物と(D)バインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜4/1となる量で用いるのが好ましい。
【0238】
本発明の平版印刷版原版の画像記録層には、上記(A)〜(C)成分、更に所望により用いられる(D)バインダーポリマー等の各成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて種々の化合物を含有することができる。
【0239】
<界面活性剤>
本発明において、画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、及び、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0240】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0241】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸
塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0242】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0243】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0244】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0245】
界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜7質量%であるのがより好ましい。
【0246】
<着色剤>
本発明では、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭
62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
【0247】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0248】
<焼き出し剤>
本発明の画像記録層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。
なお、本発明においては、前記(A)ラジカル発生剤と(B)赤外線吸収剤との相乗効果により露光領域において検版性に優れた画像が形成されるため、このような焼き出し剤は必ずしも必要ではないが、検版性向上の目的で併用することができる。
この目的で用いうる化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0249】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0250】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(
4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0251】
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、画像記録層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0252】
<重合禁止剤>
本発明の画像記録層には、画像記録層の製造中又は保存中において(C)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0253】
<高級脂肪酸誘導体等>
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0254】
<可塑剤>
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
【0255】
<無機微粒子>
本発明の画像記録層は、画像部の硬化皮膜強度向上及び非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0256】
<低分子親水性化合物>
本発明の画像記録層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有してもよい。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩等が上げられる。
【0257】
<ホスホニウム化合物>
本発明の平版印刷版原版では、着肉性向上のため、画像記録層及び/又は保護層にホスホニウム化合物を添加することができる。該ホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報に記載の下記一般式(III)で表されるホスホニウム化合物が挙げられる。一般式(III)において、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ヘテロ環基又は水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。Xはカウンターアニオンを示す。具体例としては、テトラブチルホスニウムクロリド、テトラ−t−ブチルホスニウムブロミド、テトラフェニルホスニウムブロミド、メチルトリフェニルホスニウムブロミド、ヘキシルトリフェニルホスニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスニウムブロミド、アリルトリフェニルホスニウムブロミドなどが挙げられる。
【0258】
【化46】

【0259】
また、別の好適なホスホニウム化合物としては、上記一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。一般式(IV)中、Ar1〜Ar6は、各々独立してアリール基又はヘテロ環基を表し、Lは2価の連結基を表し、Xはn価のカウンターアニオンを表し、nは1〜3の整数を表し、mはn x m=2を満たす数を表す。ここでアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メト
キシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基などが好適なものとして挙げられる。ヘテロ環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジニル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。
【0260】
Lは2価の連結基を表す。連結基中の炭素数は6〜15が好ましく、より好ましくは、炭素数6〜12の連結基である。
【0261】
-はカウンターアニオンを表し、好ましいものとしては、Cl、Br、Iなどのハロゲンアニオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、硫酸エステルアニオン、PF6、BF4、過塩素酸アニオンなどが挙げられる。なかでも、Cl、Br、Iなどのハロゲンアニオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンが特に好ましい。
【0262】
本発明に用いられる上記一般式(IV)で表されるホスホニウム塩の具体例を以下に示す。
【0263】
【化47】

【0264】
【化48】

【0265】
画像記録層又は保護層へのホスホニウム塩の添加量としては、各層の固形分中0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%がもっとも好ましい。これらの範囲内で良好なインキ着肉性が得られる。
【0266】
<(E)マイクロカプセル・ミクロゲル>
本発明においては、上記の画像記録層構成成分(A)〜(C)及び前述のその他構成成分を画像記録層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する分子分散型画像記録層である。他の一つの態様は、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に含有させるマイクロカプセル型画像記録層である。更に、マイクロカプセル型画像記録層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。ここで、マイクロカプセル型画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。更に他の態様として、画像記録層に架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様が挙げられる。該ミクロゲルは、その中及び/又は表面に該構成成分の一部を含有することが出来る。特に重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
より良好な機上現像性を得るためには、画像記録層は、マイクロカプセル型もしくはミクロゲル型画像記録層であることが好ましい。
【0267】
画像記録層構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号明細書、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号明細書、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号明細書、同第4087376号明細書、同第4089802号明細書にみられる尿素−ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号明細書、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号明細書、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0268】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、バインダーポリマー導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0269】
一方、ミクロゲルを調製する方法としては、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報に記載されている界面重合による造粒、特開平5−61214号公報に記載されているような非水系分散重合による造粒を利用することが可能である。但し、これら
の方法に限定されるものではない。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
【0270】
本発明に用いられる好ましいミクロゲルは、界面重合により造粒され3次元架橋を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。
【0271】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmが更に好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0272】
(画像記録層の形成)
本発明に係る画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に溶解又は分散して画像記録層塗布液を調製し、適切な支持体上に塗布することで形成される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像記録層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0273】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0274】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0275】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネ
ートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0276】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0277】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0278】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0279】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0280】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/mであるのが好ましく、1.5〜4.0g/mであるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0281】
陽極酸化処理を施した後、必要に応じて、アルミニウム板の表面に親水化処理を施す。親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0282】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
【0283】
(バックコート層)
支持体に表面処理を施した後又は下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。なかでも、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OC等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0284】
(下塗り層)
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像記録層と支持体との間に下塗り層を設けることができる。下塗り層は、未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。また、赤外線レーザーによる露光の場合には、下塗り層が断熱層として機能することにより、発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。
下塗り層用化合物(下塗り化合物)としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
もっとも好ましい下塗り層としては、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーを共重合した高分子樹脂を含有する態様が挙げられる。
【0285】
前記下塗り層に用いる高分子樹脂の必須成分は、親水性支持体表面への吸着性基である。親水性支持体表面への吸着性の有無に関しては、例えば以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布液を作製し、その塗布液を乾燥後の塗布量が30mg/mとなるように支持体上に塗布・乾燥させる。試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量法としては、例えば蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定で実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m以上残存する化合物である。
【0286】
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)あるいは官能基(例えば、ヒドロキシル基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基又はカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、−SOH、−OSOH、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−及びCOCHCOCHを含む。リン酸基(−OPO、−PO)が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム
基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基を含む。アンモニウム基、ホスホニウム基及びスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基及びホスホニウム基が更に好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記一般式(V)又は(VI)で表される構造が挙げられる。
【0287】
【化49】

【0288】
式(V)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチルであることが最も好ましい。R及びRは、水素原子であることが特に好ましい。Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基である。
【0289】
式(V)において、Xは、酸素原子(−O−)又はイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることが更に好ましい。
式(V)において、Lは、2価の連結基である。Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)又は2価のヘテロ環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基)又はカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
【0290】
脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15が更に好ましく、1乃至10が最も好ましい。脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル、芳香族基及びヘテロ環基を含む。
【0291】
芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15が更に好ましく、6乃至10が最も好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル、脂肪族基、芳香族基及びヘテロ環基を含む。
ヘテロ環基は、ヘテロ環として5員環又は6員環を有することが好ましい。ヘテロ環に他のヘテロ環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。ヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル、オキソ(=O)、チオ(=S)、イミノ(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基)、脂肪族基、芳香族基及びヘテロ環基を含む。
【0292】
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることが更に好ましい。言い換えると、Lは、−(OCHCH−(nは、2以上の整数)を含むことが好ましい。
式(VI)において、Yは、炭素原子又は窒素原子である。Yが窒素原子を表し、かつ、Y上にLが連結して四級ピリジニウム基を形成する場合には、それ自体が基板吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。Lは式(V)の場合と同じ2価の
連結基、又は単結合を表す。
【0293】
吸着性の官能基については、前述した通りである。
以下に、式(V)又は(VI)で表される代表的な化合物の例を示す。
【0294】
【化50】

【0295】
本発明に用いることができる下塗り用高分子樹脂の親水性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。なかでも高親水性を示すスルホ基を有するモノマーが好ましい。スルホ基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸,、アリルオキシベンゼンスルホン酸 , アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。なかでも親水性能及び合成の取り扱いから2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0296】
本発明の下塗り層用の高分子樹脂は、架橋性を有していることが好ましい。架橋性基によって画像部との密着の向上が得られる。下塗り層用の高分子樹脂に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0297】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又はCONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0298】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例、ならびにエステル残基およびアミド残基の具体例としては、先に画像記録層用の架橋性基を有するバインダーの場合に記載したのと同じものを挙げることができる。
【0299】
下塗り層用高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するア
クリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドが好適である。
【0300】
下塗り層用高分子樹脂中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、下塗り層用の高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、及び良好な保存安定性が得られる。
【0301】
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗り層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0302】
下塗り用高分子樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。親水性支持体表面に吸着する官能基を有する化合物を、二種類以上併用してもよい。下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の高分子樹脂を有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)及び/又は水に溶解して得られる。下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mであるのが好ましく、1〜30mg/mであるのがより好ましい。
【0303】
(露光)
本発明の平版印刷版原版を露光する光源としては、公知のものを制限なく用いることができる。望ましい光源の波長は300nmから1200nmであり、具体的には各種レーザーを光源として用いることが好適であり、なかでも、波長760nm〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザーが好適に用いられる。
露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
また、本発明の平版印刷版原版に対するその他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視及び紫外の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等も使用できる。
【0304】
(印刷方法)
本発明の平版印刷方法においては、上述したように、本発明の平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷する。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
【0305】
平版印刷版原版をレーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく水性成分と油性インキとを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成
する。一方、未露光部においては、供給された水性成分及び/又は油性インキによって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。
その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分及び油性インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0306】
以下で、本発明を、実施例等を用いて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定させるものではない。
【0307】
〔I〕ポリマーラテックスの合成例
ポリマーラテックスの合成例で用いる分析手段などは以下の通りである。
【0308】
(イ)重合時に発生した凝集物量
乳化重合終了後、重合釜中のラテックス全量を400メッシュ金網にて濾過し、金網上に残留した固形物を水洗乾固後、質量を測定し、重合に使用したモノマー混合物に対する質量分率にて表した。
(ロ)ラテックスの安定性
合成したラテックスを常温で3日間放置し、沈降物が発生したかどうかを目視で観察した。
(ハ)粒径
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA、LA−910)を用いて、定法により測定した。
(ニ)残存モノマー測定
未反応のモノマーは、NMRによりその有無を確認又は定量した(溶媒:重DMSO)。
(ホ)固形分量測定
ラテックス液をアルミパンに秤量し、130℃で2時間真空乾燥した。乾燥後の質量変化から固形分量を算出した。
【0309】
〔実施例1〕ポリマーラテックス合成例1
メカニカルスターラーを備え付けた200mlの三口フラスコに水85g、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.3g、アクリロニトリル5.0gを添加し完全に溶解した。次いで、系内を窒素置換した後、窒素フロー(流量:10ml/min)した。次に、70℃に昇温したのち、300rpmの回転速度で攪拌しながら過硫酸カリウム水溶液(過硫酸カリウム0.27g、水10g)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌し、次いで、80℃に昇温して、窒素フロー流量を100ml/minとして2時間攪拌した。留去したアクリロニトリルは、冷却管を備え付けたディーンスターク管により捕捉した。
固形分量、重合時に発生した凝集物量、ラテックスの安定性、粒径、残存モノマー量は、表1の通りである。
【0310】
〔実施例2〜5〕ポリマーラテックス合成例2〜5
共重合モノマーの種類、量、保護コロイド種を表1のように代えたほかは、実施例1と同様にして乳化重合を行った。結果を表1に示す。
【0311】
〔比較例1〕ポリマーラテックス比較合成例1
実施例1において、過硫酸カリウム水溶液滴下後、70℃で3時間攪拌し、反応を終了した。結果を表1に示す。アクリロニトリルは乳化重合において、重合性が十分でなく、多量の未反応モノマーが残存した。
【0312】
〔比較例2〕ポリマーラテックス比較合成例2
メカニカルスターラーを備え付けた200mlの三口フラスコに水85g、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.3g、アクリロニトリル30.0gを添加した。次いで、系内を窒素置換した後、窒素フロー(流量:10ml/min)した。次に、70℃に昇温したのち、300rpmの回転速度で攪拌しながら過硫酸カリウム(KPS)水溶液(過硫酸カリウム0.90g、水20g)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間攪拌した段階で、重合反応の混合物は全体に凝集した(理論固形分量=30質量%)。
【0313】
〔比較例3〕ポリマーラテックス比較合成例3
実施例1において、過硫酸カリウムの量を0.6gに代えたほかは、実施例1と同様にして乳化重合を行った。結果は、KPS水溶液滴下終了の段階で、重合反応の混合物は全体に凝集した(KPSの全モノマーに対する量=理論固形分量=12質量%)。
【0314】
表1に示す通り、従来、安定な水性ラテックスを得るのは不可能と考えられており、一切報告例のなかったアクリロニトリルホモポリマー及び高アクリロニトリル含有率のポリマーの安定したラテックスが得られた。
【0315】
【表1】

【0316】
〔II〕フィルム(塗膜)および多層構造体の作製例
〔実施例6〜10、比較例4〜5〕
下記表3に示すポリマーラテックスを延伸ポリエステルフィルム上に、ロッドを用いて
乾燥後塗膜質量が160mg/m2 となるように塗布し、熱風循環乾燥機中125℃で、30秒乾燥して、塗膜を作製した。
なお、合成例6〜8及び比較合成例4のポリマーラテックスは、合成例1のアクリロニトリル量、共重合モノマーの種類及び量を下記表2のように代えたほかは、合成例1と同様にして乳化重合を行って合成した。
【0317】
【表2】

【0318】
このようにして作製した塗膜を3分間水に浸漬したのち、目視で皮膜の変化を観察して耐水性を評価した。結果は表3に示す。
【0319】
また、ポリマー塗膜の酸素透過率は、測定試料として、耐水性紙支持体上にポリマー溶液を塗布乾燥して、厚み0.1mmのポリマー塗膜を形成したものを使用し、JIS K7126Bにおける測定方法に従い、酸素透過率測定機(MOCON社製:OX−TRAN2/20)を使用して測定した。測定条件は、試験温度25℃、試験湿度60%RH、ガス濃度100%である。結果は表3に示す。
【0320】
【表3】

【0321】
〔実施例11〕
1)硬化性組成物の調製(部は質量部を表す)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 19.20部
(PGMEA)
・エチルラクテート 36.67部
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 30.51部
(モル比:75/25) 36質量%PGMEA溶液
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 12.20部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.0061部
・フッ素系界面活性剤 0.83部
・光重合開始剤TAZ−107(みどり化学(株)製) 0.586部
を混合して溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0322】
2)下塗り層付ガラス基板の作製
ガラス基板(コーニング1737)を1質量%NaOH水溶液で超音波洗浄した後、水洗、脱水ベーク(200℃/30分)を行った。次いで、上記1)のレジスト(硬化性組成物)溶液を洗浄したガラス基板上に膜厚2μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で1分間加熱乾燥し、硬化性皮膜を得た。
【0323】
3)多層構造体(パターン形成材料)の作製
合成例1のラテックスを上記の硬化性皮膜上に、ロッドを用いて乾燥後塗膜質量が160mg/m2 となるように塗布し、熱風循環乾燥機中125℃で、30秒乾燥し、多層構造体を得た。
【0324】
4)多層構造体の露光
3)で得られた多層構造体に対し、露光装置を使用して、塗布膜に365nmの波長で20μmマスクを通して100mJ/cm2の各露光量で照射した。次いで、露光部分のモノマーの二重結合の残存率(1430〜1380cm−1のピーク面積比)を、堀場製作所製フーリエ変換赤外分光光度計により測定した結果、30%であった。
【0325】
〔比較例6〕
使用したラテックスを比較合成例1に代えたほかは、実施例11と同様にして多層構造体を得た。実施例11と同様にしてモノマーの二重結合の残存率を測定した結果、52%であった。
【0326】
〔III−1〕平版印刷版原版の作製例
まず、平版印刷版原版の作製に用いたポリマーラテックスの合成例を示す。
【0327】
(合成例−9)
メカニカルスターラーを備え付けた200ml三口フラスコに、水85g、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)0.3g、アクリロニトリル5gを添加した。次いで、系内を窒素フロー(流量:10ml/min)し、70℃に昇温した。KPS(過硫酸カリウム)0.27gの水溶液(10ml)を70℃で2時間かけて添加し、KPS滴下終了後、更に70℃で1時間攪拌し、ラテックスを得た(固形分:4.16質量%)。
【0328】
(合成例−10)
重合モノマーをアクリロニトリル4.75g及びジビニルベンゼン0.25gに代えたほかは、合成例―9と同様にしてラテックスを得た(固形分:4.50質量%)。
【0329】
(合成例−11)
重合モノマーをアクリロニトリル4.75g及びメチルメタクリレート0.25gに代えたほかは、合成例―9と同様にしてラテックスを得た(固形分:4.70質量%)。
【0330】
(比較合成例−5)
重合モノマーをメタクリル酸エチル5.00gに代えたほかは、合成例―9と同様にしてラテックスを得た(固形分:5.34質量%)。
【0331】
〔実施例12〕
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0
.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0332】
更に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。更に、下記下塗り液(1)を乾燥塗布量が6mg/mになるよう塗布して支持体とした。
【0333】
−下塗り液(1)−
・下塗り化合物(1)(質量平均分子量:60,000) 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
【0334】
【化51】

【0335】
(2)画像記録層及び保護層の形成
上記下塗り層形成済みの支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液をバー塗布した後、100℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。引き続き、下記組成の保護層塗布液を前記画像記録層上にバー塗布し、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.160g/mの保護層を形成することで平版印刷版原版(1)を得た。
なお、画像記録層塗布液は、下記感光液及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し、攪拌することにより得た。
【0336】
−感光液−
(D)バインダーポリマー(1) 0.177g
(A)ラジカル発生剤(一般式(I)の例示化合物A−9) 0.142g
(B)赤外線吸収剤(1) 0.0308g
(C)重合性化合物(アロニックスM−215(東亜合成(株)製) 0.319g
ホスホニウム化合物(1) 0.035g
フッ素系界面活性剤(1) 0.004g
アニオン系界面活性剤 0.125g
(パイオニンA−24−EA(竹本油脂(株)製、40質量%水溶液)
メチルエチルケトン 2.554g
1−メトキシ−2−プロパノール 7.023g
ミクロゲル液(1) 1.800g
水 1.678g
【0337】
−ミクロゲル分散液(1)の合成−
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75質量%酢酸エチル溶液)10.0g、重合性化合物としてアロニックスM−215(東亜合成(株)製)6.00g、パイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.12gを酢酸エチル16.67gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で2時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、21質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、ミクロゲル分散液(1)を得た。平均粒径は0.23μmであった。
なお、前記感光液に使用する各化合物の構造を以下に示す。
【0338】
【化52】

【0339】
【化53】

【0340】
−保護層塗布液−
・合成例―9のラテックス 4.01g
・ノニオン系界面活性剤 0.013g
(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
・イオン交換水 6.0g
【0341】
〔実施例13〜20〕
実施例12において、保護層塗布液のラテックスの種類、ラテックス使用量、及び保護層の乾燥塗布量を表4のように代えたほかは、実施例12と同様にして平版印刷版原版(2)〜(9)を作製した。
【0342】
〔比較例7〕
保護層塗布液を下記塗布液に代えたほかは、実施例12と同様にして平版印刷版原版(R1)を作製した。
【0343】
−比較例7の保護層塗布液−
・下記の雲母分散液(1) 1.5g・ポリビニルアルコール 0.06g
(PVA105、(株)クラレ製、けん化度98.5モル%、重合度500)
・ポリビニルピロリドン 0.01g
(ポリビニルピロリドンK30、東京化成工業(株)製、分子量Mw=4万)
・ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体 0.01g
(LUVITEC VA64W、ISP社製、共重合比=6/4)
・ノニオン系界面活性剤 0.01g
(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
・イオン交換水 6.0g
【0344】
−雲母分散液(1)の調製−
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散雲母粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0345】
[比較例8]
保護層塗布液中の合成例―9のラテックスを比較合成例−5のラテックスに代えたほかは、実施例12と同様にして平版印刷版原版(R2)を作製した。
【0346】
〔III−2〕平版印刷版原版の評価
得られた平版印刷版原版(1)〜(9)、(R1)及び(R2)を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力11.7W、外面ドラム回転数250rpm、解像度2400dpiの条件で露光した後、下記のように、機上現像性、着肉性及び耐刷性を評価した。結果を表4に示す。
【0347】
(機上現像性の評価)
更に、この得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6,000枚の印刷速度で印刷を行った。この時、画像記録層の未露光部(非画像部)に、インキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数(機上現像性)を評価し
た。枚数が少ないほど、機上現像性に優れると評価する。
【0348】
(着肉性の評価)
印刷枚数を増やしていくなかで、保護層の除去されやすさ、画像記録層の除去されやすさ、保護層中の成分及び画像記録層中の成分の膜内偏析及び/又は膜外への溶け出し等により、徐々に画像記録層のインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下する。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.01低下したときの印刷枚数を着肉性として評価した。枚数が多いほど、着肉性に優れると評価する。
【0349】
(耐刷性の評価)
更に印刷を続け、印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下する。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。枚数が多いほど、耐刷性に優れると評価する。
【0350】
表4の結果より、本発明の保護層を適用した平版印刷版原版は、機上現像性、着肉性、耐刷性に優れ、平版印刷版原版として実用上十分な諸性能を示した。
【0351】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全重合性モノマーのうちアクリロニトリルを70質量%以上含有する重合性モノマーと、水と、重合開始剤とを混合して乳化重合したのち、残存モノマーの留去を行うポリマーラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記重合性モノマーが、アクリロニトリルを80質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項3】
請求項1の全重合性モノマーが、アクリロニトリルを100質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記乳化重合において、更に保護コロイドを使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記乳化重合において、重合反応を常圧下で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項6】
前記乳化重合において、重合反応を100℃以下で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項7】
前記残存モノマーを留去する段階において、窒素気流下で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項8】
前記保護コロイドがアニオン性の界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項9】
前記重合開始剤が過硫酸塩であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項10】
前記全重合性モノマーの量が乳化重合の全混合物中の20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項11】
前記重合開始剤の量が全モノマー量に対して10質量%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマーラテックスの製造方法。
【請求項12】
全重合性モノマーのうちアクリロニトリルを70質量%以上含有する重合性モノマーを、保護コロイドの存在下、重合して合成されたポリマーラテックスであって、残存モノマーを実質的に含有しないことを特徴とするポリマーラテックス。
【請求項13】
全重合性モノマーのうちアクリロニトリルを80質量%以上含有する重合性モノマーを、保護コロイドの存在下、重合して合成されたポリマーラテックスであって、残存モノマーを実質的に含有しないことを特徴とするポリマーラテックス。
【請求項14】
アクリロニトリルのホモポリマーと、保護コロイドとを含むポリマーラテックスであって、残存モノマーを実質的に含有しないことを特徴とするポリマーラテックス。
【請求項15】
前記保護コロイドが、アニオン性の界面活性剤であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載のポリマーラテックス。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか一項に記載のポリマーラテックスを用いて作製されるフィルム。
【請求項17】
支持体上に、請求項12〜15のいずれか一項に記載のポリマ−ラテックスを用いて作製される層を有する多層構造体。
【請求項18】
支持体上に、重合性組成物を含有する層を有し、更に上層に請求項12〜15のいずれか一項に記載のポリマーラテックスを含有する層を設けたことを特徴とする多層構造体。
【請求項19】
支持体上に、重合性組成物を含有する層を有し、更に上層に請求項12〜15のいずれか一項に記載のポリマーラテックスを含有する層を設けたことを特徴とするパターン形成材料。
【請求項20】
支持体がプラスチック支持体であることを特徴とする請求項17又は18に記載の多層構造体。
【請求項21】
支持体がプラスチック支持体であることを特徴とする請求項19に記載のパターン形成材料。
【請求項22】
繰り返し単位としてアクリロニトリルを含有するポリマーを主成分として含有する保護層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項23】
前記ポリマーが、繰り返し単位としてアクリロニトリルを90モル%以上含有することを特徴とする請求項22に記載の平版印刷版原版。
【請求項24】
前記ポリマーがラテックスであることを特徴とする請求項22又は23に記載の平版印刷版原版。
【請求項25】
前記ラテックスを塗布してなる保護層を有することを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項26】
前記ラテックスの平均粒径が3μm以下であることを特徴とする請求項24又は25に記載の平版印刷版原版。
【請求項27】
前記保護層が、雲母を含有することを特徴とする請求項22〜26のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項28】
(A)ラジカル発生剤、(B)増感色素、及び(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物を含有する画像記録層を有することを特徴とする請求項22〜27のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項29】
前記(B)増感色素が赤外線吸収剤であることを特徴とする請求項28に記載の平版印刷版原版。
【請求項30】
前記画像記録層が、印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能であることを特徴とする請求項28又は29に記載の平版印刷版原版。
【請求項31】
前記画像記録層が、更に、(D)バインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項28〜30のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項32】
前記画像記録層が、更に、(E)マイクロカプセル又はミクロゲルを含有することを特徴とする請求項28〜31のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項33】
支持体上に、赤外線レーザー露光により記録可能な画像記録層を有し、赤外線レーザーによる画像記録後に現像処理工程を経ることなく印刷機に装着するか、又は、印刷機装着後に赤外線レーザーにより画像記録することにより、印刷可能となることを特徴とする請求項28〜32のいずれか一項に記載の平版印刷版原版。
【請求項34】
請求項28〜33のいずれか一項に記載の平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像様に露光する工程と、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において画像記録層の赤外線レーザー未露光部分が除去されることを特徴とする平版印刷方法。

【公開番号】特開2008−106246(P2008−106246A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247250(P2007−247250)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】