説明

高分子材料の蒸着およびその前駆体

置換パラシクロファンは、プロセス中の電子デバイスなどの蒸着用基板に架橋可能なポリマーを形成する前駆体として特に有用である。アルキニルなどの架橋可能な置換基を含むパラシクロファン前駆体のフェニル連鎖を分解し、分解した前駆体に基板を接触させる。その結果、基板上に有機ポリマーが形成される。架橋可能な置換基の熱誘導反応などの反応を介してこのポリマーを架橋することによって、熱的に安定した架橋したポリマーを生成する。このような架橋したポリマーの蒸着は、集積回路の製造におけるダマシン法で用いられる超低k誘電材料の封止に特に有用である。また、このポリマーはウエハとウエハを結合する際の接着剤としても有利である。さらに、このポリマーは電子デバイスのバックエンドオブザライン処理において、窒化シリコンおよび炭化シリコンに代わるハードマスクとしても有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2005年3月18日出願の米国仮出願第60/662,977号、2005年3月28日出願の米国仮出願第60/665,922号、および2005年8月19日および2005年9月21日出願の米国仮出願第60/709,844号に対して優先権を主張するものであり、これらの出願はすべて、発明者がJohn J. Senkevichであり、それら全体で参照として本明細書に組み込まれる。
連邦政府後援研究開発プログラム
本発明は、米国陸軍防空ミサイル防衛コマンドから契約番号DASG60−01−C−0047の下に依頼され、米国政府後援により行われたものである。米国政府は本発明に対する権利を有する。
本発明は一般に、化学蒸着に関し、詳細には有機前駆体を用いる化学蒸着に関する。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着(CVD)は基板上に材料領域を形成するために用いられる方法である。一般に蒸着蒸気は1つ、または複数の前駆体から生成され、固体前駆体からの昇華、液体前駆体からの蒸発、および/または気体前駆体の直接使用により生成される。蒸着を有効にするには、一般に基板を高温に維持して、結合した蒸着蒸気を基板方向に向ける。蒸着蒸気と基板との間の相互作用により基板上に材料領域が形成される。その結果蒸着された材料は、1)例えばエネルギーの導入により、化学的または物理的に改質される、または 2)蒸着として用いられる。
【0003】
CVD法は各種の利点がある。通常、トポグラフィーを有する基板上に蒸着された材料は同形(コンフォーマル)に形成する。すなわち、基板21の溝23として図2に断面図で示されたトポグラフィーの場合、膜厚29と膜厚28との比が0.9から1.0の範囲である場合は、蒸着領域27は同形である。
また、いくつかの前駆体系では、蒸着条件を慎重に選択することにより、複合基板の1部分上に選択的に蒸着を行うことが可能になる。すなわち、第1の化学組成物を有する基板表面の1部分に蒸着が発生するが、第2の化学組成物を有する第2の部分には本質的に蒸着がない場合は、蒸着は選択的である。
【0004】
CVD法は、その多くの属性により、電子デバイスの製造に関する用途など、各種の用途に用いられる。従来のCVDの使用としては、集積回路製造時の金属の蒸着が例示される。近年では、CVD法について、各種の新しい用途が提案されている。
【0005】
そのような新しいアプローチの1つは、デザインルールの厳格化および集積回路での多層層間接続構造の使用により必要となった多孔質絶縁材料の出現に起因する。集積回路のデザインルールは以前より厳しくなっているので、電気的層間接続に用いられるアルミニウムのランナーの幅と厚みは、ランナーの抵抗が増大し許容不能になるポイントまで縮小されている。抵抗が低い銅は魅力的な基板である。しかしながら、銅への変換は単純な置換では達成できない。
【0006】
アルミニウムランナーは一般にアルミニウムのブランケット層を蒸着して形成する。除去するべきアルミニウム層の部分は露出したままにし、電気的相互接続を形成するために残す部分は被覆されるように、マスクをパターン化する。次にアルミニウムの露出した領域を反応性イオンエッチングなどのエッチング処理によって除去する。マスクが許容範囲を超えて劣化されることなく、露出したアルミニウムを除去できるように、エッチング手順およびエッチング液に対するマスク材料の抵抗を調整する。
【0007】
しかしながら、集積回路製造に用いられる従来のエッチング手順は銅には有効ではない。この問題を解決するために、より複雑なダマシン法を用いて銅のパターン形成を行う。ダマシン法では、まず絶縁層を形成し、次にエッチングを施して銅層間接続に望ましい構造のビアとトレンチをパターンの中に形成する。銅は現在用いられている絶縁材料を介して拡散し易い。したがって、そのような拡散を防ぐために、窒化タンタル層などのバリア層を通常、イオン化物理蒸着(i−PVD)などにより同形に蒸着し、エッチングされたビアおよびトレンチの側面と底面とを被覆する。次にタンタルなどの他の材料および銅シード層を、順番に蒸着し、その後の電着による銅のビアおよびトレンチの充填を促進する。化学機械的エッチング、つまり、研磨と湿式化学作用の組み合わせによって材料を除去する方法により、絶縁体と重なる銅の領域を除去する。
【0008】
デザインルールの厳格化に伴い、銅のランナーは段々薄くなるので、絶縁層も付随して薄くなる。この層に要求される絶縁特性を維持するために、従来のシリコン二酸化ケイ素に代えて低k絶縁体(k<3、ここでkは真空誘電率に対する材料の静的誘電率の比率として定義する)と呼ばれる材料が用いられるようになった。これらの低k材料は相対的に多孔性である。更に重要なのは、これらの孔は超低k材料(シラン前駆体から抽出した炭素ドープケイ酸塩などのk〜2.5の材料)で相互接続されていることである。このように、処理に用いる気体や液体が実質的にこれら相互接続された孔を貫通することが可能になる。このように、バリア層の蒸着に用いる配位化合物または金属有機物、バリア層の蒸着に代替として用いられるアルカリ性化学槽、材料除去に用いられるスラリー組成物、写真平版に関連する湿式化学処理剤、および/または周囲湿度でさえもすべて孔注入の候補である(XieおよびMuscat著、Proceedings of the Electrochemical Society, 2003 (26), 279 (2004)参照)。相互連結された孔によって浸透が過度に増大すると、低k材料の絶縁特性が実質的に低下する。また、超低k材料の破壊靭性が大幅に影響を受け、バリア層スタックの層間剥離を引き起こすことが多い。これらの作用物質の浸透がない場合でも、多孔質炭素ドープケイ酸塩の破壊靭性は十分に高いというわけではない。
【0009】
反応性イオンエッチングにより低k材料にパターン形成することにより、側面の多孔質網を露出するだけでなく、エッチングプロセスに関連してエッチピット側面を粗面化する。すでに記載したように、バリア層は、一般に、デザインルールに依存して25から500オングストロームの範囲の膜厚で、側面に蒸着される。材料がそのように薄く蒸着されると、その形は下の基板の表面特性をエミュレートする傾向がある。このように、側面の粗さが、バリア層に移転され、必ずしもピンホールフリーではない、粗いバリア層を生成する。その結果、バリア層は、低k誘電体と銅との間のバリアとして有効ではなくなる。また、一方、粗い銅シード層は粗いバリア層上に蒸着することに起因し、最終的に電気メッキされた銅の特性の利得パターンに影響を与える。銅の組成物の利得特性が低いと、表面拡散によって抵抗が増大し、それを用いる利点が少なくとも部分的には損なわれる。
【0010】
超低k材料の封止、特に、エッチングされた側面を蒸着材料により封止することが考慮されてきた。しかし、許容可能な技術により形成する適切な封止剤を見つけることが難題であった。脆弱な多孔質炭素ドープケイ酸塩の破壊靭性を向上し、適切な熱安定性(膜圧損により測定する安定性が、420℃以下で2%未満)を有する粘弾性ポリマーを主体とした封止剤の実現は特に難しい課題である。
【0011】
集積度やデバイスの複雑性の向上の要望に関連する問題は、集積回路のダマシン構造に起因するものに限定されるわけではない。多くの集積回路では、現在、トランジスタなどアクティブデバイスは、高品質単結晶シリコンの1つの領域に形成される。集積度を向上させるために多層のアクティブデバイスを用いることが提案されているが、これらのデバイスを支持するのに適切な特性を有するシリコンをそのような多層に成長させることは非常に困難である。多層成長の困難を避けるために、第1のシリコンウエハ内にデバイス層を形成しておき、第2の高品質シリコンウエハを第1のウエハ上に結合する。第2のウエハには、結合の前または後のいずれかに形成される第2レベルのデバイスを有する(Lu et.al著、 2003 IEEE International Interconnect Technology Conference (IITC)、 74−76、サンフランシスコ(2003年6月)参照)。互いに結合したウエハ全体、またはウエハ上のダイ、またはチップ上のダイの処理を行うことができる。いずれの場合も、永久的な誘電接着剤を用いると結合が促進される。
【0012】
同様に、例えば、メモリを有する1つのウエハ上に論理デバイスを接合する、第2のウエハ上に光学デバイスまたはマイクロ電子機械的デバイスを接合するなどの、異なるウエハ同士を結合することは、接合により性能の集積化を促進する可能性がある。メモリの上にメモリを直接結合する技術は、3−D技術の高性能設計の1つである。一般に、結合は、2つのウエハの間に接着剤を用いることにより促進される。接着剤が十分に機能するためには、それが適切な絶縁体(誘電率が1.5〜4.0の範囲)でなければならず、また高温、すなわち、390〜450℃の温度範囲で安定性がなければならない。ウエハを結合する試みとして報告されているものには、ベンジルシクロブタン(BCB)を用いるものがあり、少量の液体BCBをウエハ上に配置し、その後ウエハをスピン回転させて蒸着させる。その結果の接着層が示す熱安定性(350℃で分解)は限られたものである。また、スピン法は、200および300mmウエハ上で層の均質性を維持するのが困難であり、また後続の熱処理中に残留溶剤のガス発生の可能性もあるので、好ましくない。
【0013】
このように、様々な状況における多くの用途で、便利な蒸着手法に適用可能な新しい材料の開発が待たれている。
【発明の開示】
【0014】
有利な高分子材料は、前駆体として置換[2,2]パラシクロファンを用いて化学蒸着によって蒸着可能なものである。特に、置換基は蒸着した材料中に架橋を誘発可能であるように選択する。最も重要なことは、蒸着した高分子材料が、所定の処理によって形成され、その際室温蒸着が可能であることである。したがって、図1に示す化学構造を有する前駆体は昇華などによって気化され、その結果できる蒸気はフェニル部分間の連鎖を壊すために分解され、基板方向に向けられ、基板上に高分子材料が蒸着される。1つの実施態様では、蒸着されたポリマーは、次に熱などのエネルギーの導入により架橋される。このように、例えば、4−エチニル[2,2]パラシクロファンが高分子蒸着用の前駆体として用いられる。その後の架橋は、蒸着されたポリマー中の2つのエチニル部分間、および/または複数のエチニル部分間の化学反応によって起こる。
【0015】
蒸着され、架橋された材料は良好な電気絶縁特性、熱特性、および機械的特性(誘電率kは2.8未満および熱安定性は少なくとも420℃まで)を有する。また、適切なCVD条件を用いることにより、炭素ドープケイ酸塩などの超低k誘電材料上に銅に関して選択的蒸着を行うことができる。また、水性溶液、アルコールおよび一般的な有機溶剤に対して低浸透性を示すので、蒸着され架橋された材料によって多孔質材料の封止も行われる。
【0016】
このように、高い耐水浸透性など、多くの属性を有する高分子架橋可能材料を蒸着することができる。これらの有利な特性は架橋後に更に強化される。架橋されたポリマーは各種の用途、例えばウエハとウエハなどのデバイス基板同士の結合、多孔質超低k誘電体の封止、および様々な後続の処理アプローチを可能にするための選択的蒸着など各種の用途に必要とされる属性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
架橋可能なポリマーの蒸着の前駆体としての置換[2,2]パラシクロファンの使用には、各種の用途がある。すでに記載したように、そのような用途には、ダマシン法に用いられる多孔質超低k材料の封止、ウエハやチップを結合する際に用いる接着剤、多孔質超低k材料の機械的安定性の向上、およびリン化タングステンコバルトの蒸着などの後続の処理を容易にするための選択的蒸着などがあるが、これに限定されるわけではない。蒸着処理では、置換[2,2]パラシクロファンは気相に導入される。前駆体は一般に室温では固体であるので、気相導入は通常、昇華、または融解とその後の気化によって行われる。前駆体は、通常120℃より高い温度で、大方の動作条件に十分な流量の蒸気を生成する。使用する正確な昇華温度は前駆体の融点に依存するもので、比較試料を用いることによって容易に決定することができる(前駆体が昇華以前に分解する場合もあるが、それでも明らかな蒸気圧を有する)。一般に搬送ガスは、除外されるわけではないが必要ない。また、置換パラシクロファンを、テトラヒドロフランなどの適切な溶剤中に分解し、その前駆体を直接液体注入(DLI)によって蒸着装置に添加することも可能である(C.XuおよびT.H.Baum著、 Materials Research Society Symposium Proceedings vol. 555 155−60 (1999年))。一般に、ヘリウム、アルゴン、または窒素などの搬送ガスがこれらの材料のDLI中に用いられ、真空ガス放出を促進し、蒸着の均質性を向上する。CVD反応の伝導性および排気速度、および排気スタックにそれぞれ依存して5〜500sccmの範囲の搬送ガス流量が用いられる。置換パラシクロファンが液体の場合も、同じ搬送ガスと条件を用いるDLI技術を採用することができる。
【0018】
次に、気相の前駆体はフェニル部分間の連鎖を破壊するために分解される。分解は、一般に、CVD反応の伝導性および排気速度、および排気スタックにそれぞれ依存して、1×10−7Torr〜10.0mTorrの範囲のベース圧力を有する別のチャンバで行う。この熱分解チャンバに、流量1〜20sccmの範囲および前駆体の部分圧力0.1〜10mTorrで、前駆体を導入する。分解は、熱エネルギーなどのエネルギーの導入によって行われる。熱エネルギーの適用については、所望の結合亀裂を発生させるためには、通常550〜750℃の範囲の温度が適切である。
【0019】
分解後の蒸気流は蒸着基板の方向へ向けられる。基板は、室温に維持されるのが有利であるが、−30度の低温への冷却、または200℃の高温への加熱は除外されるわけではない。しかしながら、一般には、孔のない蒸着基板では、温度が100℃より上になると、蒸着膜厚が大きく制限される。通常は50℃以下の温度が好ましい。また、温度が低くなると、通常、蒸着が均一でなくなる。一般に基板は、分解が導入される領域から20〜100cmの範囲の距離に離して置く。このように離して置くことにより、分解領域から基板への熱伝達によって許容不能な蒸着不均一が発生することのないようにする。
【0020】
蒸着領域のベース圧力は、通常、1×10−7Torr〜10.0mTorrの範囲である。分解した前駆体の流量は、1〜20sccmの範囲で、0.2〜10mTorrの範囲の部分圧力を生成する流量を用いる。このような条件下で、蒸着時間を30秒から60分の範囲にすることにより、12〜20,000オングストロームの範囲の膜厚の蒸着層が生成される。12オングストローム未満の膜厚だと、ピンホールができる傾向があり、孔封止などの用途には許容不能である。20,000オングストロームを超える膜厚の蒸着層は非経済的な蒸着時間と材料コストが必要となる。
【0021】
蒸着した架橋可能な高分子材料は、熱や紫外線光などのエネルギーの適用によって架橋する。175〜420℃の範囲の温度の熱エネルギーを、1分〜60分の時間適用することにより、12オングストローム〜20,000オングストロームの範囲の膜厚の蒸着層が架橋する。175℃未満の温度は一般に架橋を起こすのに有効でなく、温度が420℃を超えると、蒸着層の劣化を引き起こす。波長が185nm〜248nmの範囲で、強度が0.01〜5W/cmの範囲の紫外線光を30秒〜10分使用すると、一般に架橋が起こる。既に記載したように、架橋は一般に、蒸着された架橋可能なポリマーの有利な特性を増強する。しかしながら、ポリマーの架橋工程により、処理時間と費用が増える。従って、架橋に用いる時間と温度(または光の強度)を相互調整し架橋の程度を調整することにより、時間と費用に対する蒸着ポリマー特性のバランスをとることができる。所望の程度の架橋を起こすための適切な条件は、比較試料を用いて容易に決定することができる。架橋の程度は、例えば、赤外線スペクトル内のポリマーの三重または二重結合の伸びを観察することにより監視する。
【0022】
本発明の前駆体化合物は図1の化学構造で表される。フェニル環上に示される置換基が4位および12位に示されるが、置換基を環の他のフェニル環の位置に結合することも可能であり、または、前駆体を、例えば、4位または12位でモノ置換することも可能である(環上位置4、5、7、8、および12、13、15、16はベンジル環上位置と呼ばれ、これらの位置で架橋可能な部分を持つこともできる)。前駆体の1分子当たりの架橋可能な置換基の数は重要ではないが、1分子当たり1つの架橋可能な置換基を有する前駆体がもっとも容易に合成される。置換基Rおよび/またはR’は、結合されている場合、蒸着されたポリマー内で、他のR部分との反応が可能でなければならない。このようにして、蒸着された架橋可能なポリマーに結合されたRおよび/またはR’置換基は他の架橋可能な置換基との反応を起こすことができる。
【0023】
エチニル部分を含有する架橋可能な置換基、Rおよび/またはR’を用いることが特に有利である。そのような置換基を用いて架橋によって形成される連鎖は炭素―炭素二重結合になる。この結合が安定しているため、その結果の材料が優良な熱安定性を持つと考えられている。このように、ウエハ結合および低k誘電体封止などの用途に、これらのアルキニル置換基の使用が望ましい。適切なアルキニルとしては、好ましくはエチニル基に結合した1〜7炭素原子を持つ、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、フェニルおよびアルキルなどの部分を有するものがある(しかしながら、架橋に対して立体障害を呈する基は避けるべきである)。
【0024】
架橋が可能な他の置換基も有用である。例えば、アルケニル含有置換基を用いることによって架橋可能な高分子材料を生成する。しかしながら、対応する架橋したポリマーは二重結合を含まず、したがって、熱的安定性が低い。また、エチニル部分の後のアルキル鎖も許容可能であり、一般には1〜6の炭素原子を持つ。また、環状構造中にアルケニル置換基を導入することもできる。このように、たとえば、シクロペンテンなどの置換基も有用である。しかし、フルベニル、アルキル置換フルベニル、およびシクロペンタジエンなどの置換基はそれ自身とディールス−アルダー反応を起こす(ジエンおよびジエノフィルの両方として作用する)傾向がある。このような材料を用いるには、前駆体を気相に導入した後または蒸着後に除去可能であるアセチレンジカルボン酸ジメチルなどの材料でジエノフィルを保護する必要がある。イミン部分を含有する置換基などの他の架橋可能な材料も有用である。しかしながら、一般には、ニトリル置換基は熱や紫外線光の条件下で容易に架橋しないので好ましくない。
【0025】
架橋可能な置換基は、フェニル環の4位および/または12位に必ずしも存在する必要はない。5位、7位、8位、15位、16位および13位を用いることも可能である。ベンジル環の間の連鎖上の他の炭素原子(1、2、9、または10)での置換は除外されない。アリール位置上に非常に大きく長い置換基があると熱機械的特性が低いポリマーを生成する傾向がある。n−ペンチンなどの4以上の炭素原子を持つ架橋可能なn−アルキン置換基および置換フェニルアセチレン基などのフェニルアセチレン群より大きな容量を占める基は連鎖位置上では望ましくない。少なくとも1つの架橋可能な置換基に加えてメチルやエチルなどの置換基を持つフェニルまたは連鎖炭素での置換は除外されない。
【0026】
一般に、前駆体の合成では、まず[2.2]パラシクロファンを臭素化する。その際、モノブロモ化合物はH.J.ReichおよびO.J.Cram著、 「Journal of the American Chemical Society」 91 、 3527 (1969)、ジブロモ化合物はY.L.YehおよびW.F.Gorham著、 「The Journal of Organic Chemistry」 34、 2366 (1969)の各記載に従って行う(両記載ともそれら全体で参照として本明細書に組み込まれる)。この臭素化処理の結果、臭素化されたパラシクロファンの混合物になり、さらなる合成処理により、標準技術により分離可能な前駆体の対応混合物になる。その結果生成された臭素化パラシクロファンは、全体で参照として本明細書に組み込まれる、MorisakiおよびChujo著、「Polymer Preprints」 44(1)、 980 (2003)の記載に従って、アミンおよびパラジウム金属の存在下で、保護されたアルキニル、またはアルケニル部分(トリメチルシラン保護アルキニル、またはアルケニル)と反応し、保護されたアルキニルを形成する。次に、フッ化アンモニウムn−ブチルを用いる処理により、保護基を所望の前駆体から除去する。ビス エチニル パラシクロファンの合成は、Boydston et.al.著「Angew. Chem. Int. Ed.」、40(16)、2986(2001)(全体で参照として本明細書に組み込まれる)に報告されている。
【0027】
別の合成アプローチでは、フリーデル−クラフツアシル化によって所望の置換パラシクロファンに対するアセチル置換対応物が最初に作成される(W.F.Gorhamの「米国特許第U.S.3,117,168号」1964年1月7日参照(全体で参照として本明細書に組み込まれる))。このアセチル対応物は、炭素四塩化炭素中で五塩化リンとの反応によって対応クロロビニル置換パラシクロファンに変換される。次にリチウム ジイソプロピル アミン(LDA)などの強塩基との反応によってアルキニル置換材料が生成される。Cl−C=C−R''置換基のR''が、t−ブチル基などの嵩高い基である場合は、クロロビニルからエチニル部分への変換に用いられる塩基は小さくなければならない。LDAは非常に強い塩基であり、クロロビニルをエチニル(R''=H)に還元するのに有効である。しかしながら、R''−t−ブチルの場合は、小さくて、嵩高くない塩基を用いるべきである。例えば、ナトリウムアミド、または水酸化カリウムが適切である。後者の溶解度は限られているので、反応は固体状態で行われる(P.D.BartlettおよびL.J.Rosen著、「Journal of the American Chemical Society」 64、543(1942)参照(全体で参照として本明細書に組み込まれる))。R''がフェニルであるパラシクロファンの調製はW.F.Gorham米国特許第3,117,168号、 1964年1月7日 [2.2]パラシクロファンを出発原料として用いた塩化ベンゾイルによるアシル化(全体で参照として本明細書に組み込まれる)に記載の手順を用いて行うのが有利である。フェニルアセチル基を[2.2]パラシクロファン部分の上に配置すると記載のように塩化ビニルが生成され、ナトリウムアミド、水酸化カリウムなどの小さな(非立体的に封鎖された)強塩基を用いて、エチニルが生成される。
【0028】
ウエハ結合工程の実施態様では、結合されるべきウエハ(またはチップ)は、一般に二酸化シリコンなどの酸化物でキャップされる。この酸化表面は、例えば、メタクリロキシルプロピルトリメトキシシランなどのシラン接着促進剤などの接着促進剤を用いて処理することが有利である(5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメチシランなどのエポキシおよび歪んだエポキシシランを用いることも可能である)。既に記載したように、架橋可能なポリマーを、結合するウエハ表面の片面、または両面に蒸着する。例えば、Lu et.al著、 2003 IEEE International Interconnect Technology Conference (IITC)、 74−76、 San Francisco (June 2003)の記載に従い、結合する2つのウエハを光学的に位置決めする。175〜420℃の範囲の温度と、1〜20atmsの範囲の圧力を用いてウエハを結合する。温度が175℃より低いと一般に接着が不完全になり、温度が420℃より高いと一般に熱的不安定になる。圧力が1atmより低いと、除外されるわけではないがウエハ間の表面接触力が低下し、また20atmを超えると、一般に200mm以上のウエハ面上では達成するのが難しくなる。
【0029】
一般に、アルキニル置換基を有するパラシクロファンは、低k誘電体などの多孔質材料を封止するために用いられる。一般に、550〜750℃の温度範囲で分解が達成され、蒸着は一般に、基板温度−30℃〜50℃、蒸気流量1〜20sccm、および合計圧力0.1〜10mTorrを用いて達成される。
【0030】
その結果、蒸着され架橋可能なポリマーは、蒸着の圧力に依存して、同形構造(膜厚比が0.9〜1.0の範囲)を有する。圧力が高いと、同形度が低い蒸着になる。この材料はまた、例えばラザフォード後方散乱および透過型電子顕微鏡の測定により発見される超低k誘電体の孔を封止する。本質的に気体放出を示さない材料としての用途に、12オングストロームほどの薄いピンホールフリー層が生成可能である(膜厚50オングストロームのパリレン N の研究についてはSenkevich, J.J., et al.著、 「Applied Physics Letters」84, 2617 (2004)を参照)。孔への浸入は、封止対象材料の望ましい特性が許容不可能なほどに低下しないように限定されるべきである。架橋は175〜420℃の範囲の温度、またはUV光を用いて誘導される。架橋後に蒸着された材料もまた420℃の高温に対して熱的安定性を有し、多孔質炭素ドープケイ酸塩の破壊靭性を促進する粘弾性を示す。通常、2.8より低い誘電率が得られる。
【0031】
通常の蒸着条件を用いて、銅に対して、炭素ドープケイ酸塩などの低k誘電体に選択的に蒸着を達成することができる。その結果得られる銅と低k誘電材料などの誘電材料との間の選択性は、各種の処理シーケンスで非常に有用である。例えば、ダマシン法によって銅ランナーを形成し平坦化した後、パラシクロファンポリマーを蒸着し架橋する。このプロセスを選択することにより、銅に対して、誘電体上への蒸着が可能になる。そのため誘電材料表面は架橋ポリマーによって被覆されるが、銅ランナーは被覆されない。
【0032】
このように、1つの実施態様では、蒸着され架橋された材料は、誘電体の機械的特性を向上させる一方、銅には影響を与えず、それ以降のデバイス層は架橋されたポリマー上に形成される。他の実施態様では、架橋されたポリマーは、例えば、窒化シリコン、または炭化シリコンの代替としてハードマスクとして用いられる。更に、ハードマスク法に基づく他の実施例では、銅ランナーを露出し、ポリマーを選択的に蒸着し架橋した基板上に、リン化タングステンコバルトを蒸着する(リン化タングステンコバルトの蒸着は、全体として引用し本明細書に組み込まれるHu et.al.著、「Microelectronic Engineering」70,406 (2003)に記載されている)。蒸着されるリン化タングステンコバルトは銅上で選択的に蒸着し、架橋されたポリマー上では蒸着しない。リン化タングステンコバルトは、後化学機械的平坦化処理で露出した超低k誘電体の存在下では、許容可能な層を形成しないので、中間の架橋したポリマーがハードマスクとして機能し、リン化タングステンコバルトをバリア層として用いることができるようにする。
【0033】
多孔質材料の封止、またはウエハの結合の後は、バリア蒸着および銅金属化などの従来技術を用いてデバイスの製造が続けられる。蒸着され架橋された高分子材料は、これらの技術の使用に適しており、したがって、現在採用されている装置製造手順の変更は、一般に必要ない。
【0034】
電子デバイス製造以外に関する用途で、コストを重視し、最上級の強度が必要とされない場合は、蒸着され架橋可能なポリマーであって実際には架橋していないポリマーが特に有利である。完全に解明されているわけではないが、架橋可能な置換基の回転自由度が限定されているということが、非架橋可能な置換基よりも湿度浸透率が低いなどの好ましい特性を呈すると予想されている。
(実施例)
【0035】
次に実施例を挙げて本発明に関する有用な条件を説明する。
【0036】
(実施例1)
およそ130mgの鉄粉(平均粒径10μm)を、1000mLの丸底フラスコに入れ150mLのクロロフォルムおよび130mLのジクロロメタンと混合した。混合物は、市販の音波処理装置を用いて20分間音波処理し、次に、追加の250mLのジクロロメタンおよびおよそ17.7gの[2.2]パラシクロファンを添加した。混合物全体を大気に解放し、静置し、撹拌棒と撹拌プレートを用いて2時間撹拌した。粗反応のガスクロマトグラフィーは、87%の4−ブロモ[2.2]パラシクロファンの歩留まりを示した。
【0037】
反応混合物は、150mLアリコットの10%(重量)の重硫酸ナトリウム水溶液を2回、150mLアリコットの1M NaOH水溶液、および150mLの飽和NaCl水性溶液を順番に用いて洗浄した。洗浄後混合物を無水MgSO上で乾燥した。残りの溶剤を、蒸発装置(rotovap)を用いて温度40℃で蒸発させた。残渣を、温(50℃)クロロフォルムから再結晶させた。製品の純度に再結晶による本質的な影響はなかった。
【0038】
(実施例2)
使用する直前に、過剰の金属ナトリウムおよびベンゾフェノン ケチル上で還流冷却器を用いて窒素ブランケット下で1,4ジオキサンを蒸留した。炭酸セシウムを115℃の窒素雰囲気中で12時間乾燥した。エチニル−トリエチルシラン、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、およびトリ−t−ブチル ホスフィンは、市販の供給元から入手した状態で用いた。
【0039】
反応組成物は、各々小型の磁気攪拌棒を用いて、1.5mLのクリムトップバイアル中で調製した。実施例1と同様に調製および精製したおよそ0.05mmolの4−ブロモ[2,2]パラシクロファン、0.15mmolのCsCO、0.08mmolのエチニル−トリエチルシラン、蒸留ジオキサン中の0.33mLの0.0022N溶液トリス(ジベンジリデネアセトン)ジパラジウム(0)、蒸留1,4ジオキサン中の0.33mLの0.188Mトリ−t−ブチル ホスフィン、および蒸留1,4ジオキサン中の0.33mLの0.137M溶液トリ−t−ブチル ホスフィンを各バイアルに導入した。これらの試料を、磁気攪拌棒で攪拌しながら、95℃で3時間加熱した。分離および洗浄後、生成物を注射器を用いてガスクロマトグラフィーに注入した。生成物は97%の4−トリエチルシランエチニル[2,2]パラシクロファンへ変性を示した。
【0040】
(実施例3)
テトラヒドロフラン(HPLC級)0.50mL中で、4−(エチルシランエチニル)[2,2]パラシクロファン(実施例2と同様に調製および精製)5.0mmol溶液を調製した。この溶液に、テトラヒドロフラン中の10mLのBuNFの1.0M溶液を添加した。非加熱反応混合物を、窒素雰囲気中で、およそ16時間、磁気攪拌棒を用いて攪拌した。テトラヒドロフランは、蒸発装置を用いて蒸発した。ガスクロマトフラフィーの測定では、残渣は4−エチニル[2,2]パラシクロファンの90重量%であった。
【0041】
(実施例4:4−アセチル[2,2]パラシクロファンの調製)
−78℃に冷却した窒素雰囲気下の5Lの丸底フラスコ中に、[2/2]パラシクロファン(225g、1080mmol)および無水メチレンクロリド(1L)を入れた。よく攪拌した懸濁物に、塩化メチレン(1L)中のAlCl(254.25g、1907mmol、1.77相当)溶液を、内部温度が−50℃以上に上昇しないように注意し、カニューレを用いて40分かけて添加した。添加が完了した後、オレンジ色の混合物を冷却槽中で更に1時間撹拌した。その後、冷却槽から取り出し、徐々に(およそ40分間)−20℃まで昇温した。混合物を2Lの氷水に注意深く注入し、20分間撹拌し、デカンテーションにより上澄み液層を取除いた。有機混合物を、水(2×1L)で洗浄し、(MgSOで)乾燥し、その後、減圧下で濃縮し、油状の黄色い固体を得た。この固体をヘキサン/CHCl(1:1)中に懸濁させ、試料の溶出に用いられるものと同様の溶剤系を用いて、200gのシリカゲルに通すことによって、その固体を予備精製した。半精製材料(〜85%、H NMR)を、第2のシリカプラグ(400gシリカ)に通し、ヘキサン/CHCl(3:1)を用いて抽出し、4−アセチル[2,2]パラシクロファンのクリーンな試料をオフホワイトの固体(186g、69%)として得た。100gの2(480mmol)を用いて、82gの3を白色粉末(82g、68%)として得た。
【0042】
(実施例5:4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファンの調製)
乾燥CCl(420mL)中で、窒素雰囲気下の実施例1(82g、328mmol)からの4−アセチル[2,2]パラシクロファンの懸濁溶液に、PCl(83g 399mmol、 1.22 相当)を加えた。混合物を2時間還流し、その間にすべての材料が溶解した。混合物は室温に冷却し、徐々に氷水(2L)に注入した。上澄み層をデカンテーションにより取除き、乳白色の有機層を洗浄(水、3×1L)した。その後、減圧下でほとんどの溶剤を除去した。混合物をシリカゲル(200g、CHCl溶出)のパッドを通過させ、ろ過乾燥(MgSO)し、減圧下で濃縮し、およそ15%(H NMR)程度に汚染された4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファンの試料を得た。第2のプラグ(200g シリカ、ヘキサン/CHCl 1:1溶出)では、純度およそ95%の4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファンを得た。第3のプラグ(200g シリカ、ヘキサン/CHCl3:1 溶出)では、4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファンの分析試料を白色固体(69g 77%)として得た。
【0043】
試料を暗所に室温で10日間静置した。その間に、かなり暗色化し、フラスコ中には茶緑の残渣が残った。この材料を、200gのシリカのパッドを通し、ヘキサンおよびCHCl 1:1で溶出し、4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファン(63g 72%、適時使用のため冷凍庫に保存しすることが好ましい)のクリーンな試料を得た。不活性雰囲気下で保存/包装されていない、CClを有する、186gの4−アセチル[2,2]パラシクロファン(186 mmol)を用いることにより、H NMR分光分析では純度85%以上である127gの4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファン(64%)を得た。
【0044】
(実施例6:4−(エチニル)[2,2]パラシクロファンの調製)
−78度に冷却した窒素雰囲気下の2Lの丸底フラスコに4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファン(63g 233.5mmol)および無水テトラヒドロフラン(THF)(710mL)を入れた。この溶液に、LDA(385mL、1.8M、693mmol、2.97相当)を20分間以上加えた。この添加が完了した後、暗い茶色になった溶液をこの温度で更に1.5時間撹拌し、その後冷却槽から取り出し、徐々に0℃まで昇温した(およそ1時間)。この混合物に水(100mL)を加え、次にエーテル(150mL)を加えた。この有機層を回収し、洗浄(水、2×400mL)し、乾燥(MgSO)し、減圧下で濃縮し、油状の黄色い固体を得た。この固体をヘキサン/CHCl(1:1)中に懸濁させ、試料の溶出に用いられるものと同様の溶剤系を用いて、250gのシリカゲルに通すことによって、予備精製した。半精製材料(およそ85%、H NMR)を、第2のシリカプラグ(250g シリカ)に通し、ヘキサン/CHCl(3:1)を用いて抽出し、ガスクロマトグラフィー−質量分光分析装置では純度98%以上である4−エチニル[2,2]パラシクロファンのクリーンな試料を、オフホワイトの固体(41.8g、75%)として得た。127gの、純度およそ85%の4−(1−クロロビニル)[2,2]パラシクロファンを用いることにより、4−エチニル[2,2]パラシクロファンを得た。
【0045】
(実施例7:4−アセチル トシルヒドラゾン[2,2]パラシクロファンの合成)
およそ2.06gの4−アセチル[2,2]パラシクロファン(実施例4に記載)、 1.78gのトシルヒドラジド、15mLのエタノールおよび濃縮HClを1滴、50mLの丸底フラスコに入れ混合した。この丸底フラスコを、マイクロ還流凝縮器を用いて窒素パージ下で70℃に加熱した。3時間後、この溶液を室温まで冷却した。混合物をエルレンマイヤーフラスコに移し、エタノール中で再結晶させた。
【0046】
(実施例8:4−ビニル[2,2]パラシクロファンの合成)
およそ2.75gの実施例7からの4−アセチル トシルヒドラゾン[2,2]パラシクロファンをオーブン乾燥したフラスコに入れ、乾燥窒素でパージし、次に30mLの無水THFを100mL3首丸底フラスコに加えた。フラスコを、液体窒素/アセトン槽を用いて−90℃に冷却した。試薬/n−ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M)を持続色素が得られるまで、注射器で滴下した(合計容量16mL)。明赤色の溶液が生成された。試薬n−ブチル リチウムを注射器で4mLアリコット添加した。この溶液を室温まで昇温した。昇温するにつれ、色が赤から茶色に変化した。室温では、茶色から緑に変化した。およそ25mLの脱イオンHOを添加し、色は黄色に変化した。2×15mL部分のジエチルエーテルを用いて、各相を分離し、水相を抽出した。結合した有機物は10mLの脱イオンHO、2×15mL部分の飽和NaClを用いて洗浄し、無水MgSOを用いて乾燥した。次に有機相をろ過し、真空中で80℃に回転蒸発した。液体残渣は55℃の真空オーブンに一晩入れた。生成物を、190℃に加熱した油槽を用いて、250mTorrのショートパスのカラム上で真空精製した。ガスクロマトフラフィー−質量分光分析器の測定では、4−ビニル[2,2]パラシクロファンはm/e=220g/molの揮発性不純物で形成されていた。
【0047】
(実施例9)
ポリ(エチニル−p−キシレン)をシリコン基板上に蒸着した。この蒸着は、4−エチニル[2,2]パラシクロファン(EPC)を前駆体として用いて行った。およそ1.0gのEPCを、ステンレス鋼の真空フランジを有する、1インチ×6インチのパイレックス(登録商標)の昇華チャンバ内に入れた。このチャンバを、従来の粗引きポンプを用いて10mTorr未満のベース圧力に排気した。粗引きポンプの上のチャンバに取り付けた液体窒素トラップを用いて、蒸気がポンプに浸入するのを防いだ。昇華チャンバをバルブを介して1.5インチ×12インチのインコネル製の熱分解チャンバに接続した。この熱分解チャンバも、10mTorr未満のベース圧力に排気し、抵抗加熱炉を用いて680℃に加熱した。熱分解チャンバをステンレス鋼の真空フランジを介して蒸着チャンバに接続した。ポリマーがこの接続領域の壁に蒸着されるのを防ぐために加熱テープを用いて、この接続領域をおよそ145℃に加熱した。同様の理由で、前駆体の凝縮を防ぐために昇華と熱分解チャンバを接続する領域も加熱テープを用いて135℃まで加熱した。
【0048】
昇華チャンバを排気しながら114℃に加熱した。温度がおよそ1分間安定した時に、昇華チャンバと熱分解チャンバとの間のバルブを閉じた。熱分解チャンバに接続された、直径4インチのステンレス鋼で形成される蒸着チャンバを、大気圧にした。入手したままで用いた<100>結晶面に主面を有する3インチのパターン形成されていないシリコンウエハを、蒸着チャンバ内の大きい(およそ3mm)メッシュの試料ホルダに載せ、蒸着チャンバを10mTorr未満に排気した。熱分解チャンバと昇華チャンバの間のバルブを開け、圧力を上昇させ、ウエハの後方で250℃静電容量型圧力計により測定した圧力が、ベース圧力よりおよそ1.1〜2.0mTorr高くなるようにした。
【0049】
およそ20分後、180nmの薄膜がシリコンウエハ上に蒸着された。ポリマー蒸着速度はおよそ9nm/minであった。その結果できた薄膜は、エチニル基であることを示唆する3290cm−1での赤外線吸収を示した。昇華と熱分解チャンバの間のバルブを遮断して、蒸着を中止した。蒸着チャンバに通気し、シリコンウエハを取り出した。
【0050】
(実施例10)
実施例7で蒸着した膜を架橋した。この架橋は、薄膜が蒸着したシリコンウエハを真空アニール炉に入れることによって行われる。アニール炉は粗引きポンプを用いておよそ7.5mTorrのベース圧力に排気した。アニール炉を、アルゴンガスの200mTorrのパージを用いて5分間バージした。パージ後、薄膜をおよそ30分間、380℃でアニールした。炉を止めておよそ100℃まで冷ましてアニールを終了し、炉を通気し、ウエハを取り出した。
【0051】
3290cm−1での赤外線吸収ピークは認められなかった。このピークが無いということは実質的に架橋が行われたことを示唆する(250℃で30分間アニールした同様のウエハは、3290cm−1ピークの部分的な減少を示しただけであった)。蒸着され架橋された膜の誘電率は2.8、漏れ電流は1MV/cmのときに0.8×10−9A/cm、分解特性は3.0 MV/cmであった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る前駆体の概略図である。
【図2】前駆体を用いるCVD蒸着に係る基板の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造する方法であって、ポリマーを基板上に形成する工程と、前記製品を完成させる工程とを含み、前記ポリマーを基板上に形成する工程は、1)架橋可能な部分を有する置換パラシクロファンを含有する前駆体のガス流を確立する工程と、2)フェニル部分間の炭素結合連鎖を開裂することによって前記前駆体を分解し、分解した前駆体を形成する工程と、3)前記基板を前記分解した前駆体に接触させる工程と、4)前記架橋可能な部分の少なくとも一部の反応を通じて架橋を引き起こすためのエネルギーを提供する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記架橋可能な部分はアルキニルを含有する請求項1の方法。
【請求項3】
前記架橋可能な部分は前記前駆体の前記フェニル部分に結合されるエチニル部分を含有する請求項2の方法。
【請求項4】
前記架橋可能な部分はアルケニルを含有する請求項1の方法。
【請求項5】
前記製品はデバイスを備える請求項1の方法。
【請求項6】
前記デバイスは電子デバイスを備える請求項5の方法。
【請求項7】
前記基板は孔を有する領域を備え、前記ポリマーは前記孔を封止する請求項6の方法。
【請求項8】
前記領域は超低k電気絶縁材を備える請求項7の方法。
【請求項9】
前記基板は、前記分解した前駆体に接触している間は、−30から200℃の範囲の温度に維持される請求項7の方法。
【請求項10】
前記分解は、前記前駆体のガス流を500から850℃の範囲の温度に曝すことによって行われる請求項9の方法。
【請求項11】
前記基板は、前記分解した前駆体に接触している間は、−30から100℃の範囲の温度に維持される請求項1の方法。
【請求項12】
前記分解は、前記前駆体のガス流を500から850°の範囲の温度に曝すことによって行われる請求項1の方法。
【請求項13】
前記デバイスを完成させる連続工程は、前記ポリマーを接着剤として用いて接着を起こし、第2の基板を前記基板に接着する工程を含む請求項1の方法。
【請求項14】
前記ガス流は昇華によって生成する請求項1の方法。
【請求項15】
前記基板は多孔質材料を備える請求項1の方法。
【請求項16】
前記基板は、銅の領域と誘電材料の領域とを備える露出した表面を有し、それによって前記誘電材料の領域上で選択的に蒸着が発生する請求項1の方法。
【請求項17】
前記完成させる連続工程は前記架橋後に前記基板上にリン化タングステンコバルトを蒸着する工程を備える請求項16の方法。
【請求項18】
前記基板は、多孔質誘電材料を備えるパターン形成されていない蒸着面を有し、前記架橋ポリマーの前記形成は前記多孔質誘電材料上で発生する請求項1の方法。
【請求項19】
製品を製造する方法であって、ポリマーを基板上に形成する工程を備え、前記形成工程は、1)架橋可能な部分を有する置換パラシクロファンを含有する前駆体のガス流を確立する工程と、2)フェニル部分間の炭素結合連鎖を開裂することによって前記前駆体を分解し、分解した前駆体を形成する工程と、3)前記基板を前記分解した前駆体に接触させる工程とを備える方法。
【請求項20】
前記架橋可能な部分はアルキニルを含有する請求項19の方法。
【請求項21】
前記架橋可能な部分は前記前駆体の前記フェニル部分に結合されるエチニル部分を含有する請求項20の方法。
【請求項22】
前記架橋可能な部分はアルケニルを含有する請求項19の方法。
【請求項23】
前記分解は、前記前駆体のガス流を500から850℃の範囲の温度に曝すことによって行われる請求項19の方法。
【請求項24】
ベンジル環位置に置換基を有する[2,2]パラシクロファンであって、前記置換基は−C≡C−R’および−C=C−R’を含有し、ここで、R’はメチル、エチル、イソプロピルおよびt−ブチルからなる群から選択される、[2,2]パラシクロファン。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−533306(P2008−533306A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502008(P2008−502008)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009347
【国際公開番号】WO2006/101902
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(500499508)ブルーワー サイエンス アイ エヌ シー. (45)
【Fターム(参考)】