説明

高周波装置

【課題】 従来の高周波装置は、高周波電力の出力周波数を可変させて、反射係数絶対値Γを小さくする制御を行っている。しかし、負荷側インピーダンスZLのリアクタンス成分Xの調整はできるが、抵抗成分Rの調整があまりできないので、反射係数絶対値Γを小さくできない場合があった。
【解決手段】 本発明の高周波装置は、周波数制御回路11によって、高周波電力の出力周波数を可変させて、反射係数絶対値Γを小さくする制御を行う。また、この制御によって反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくならない場合は、リアクタンス素子制御回路19によって、インピーダンス調整器3の内部にある可変コンデンサVC1を可変させ、反射係数絶対値Γを小さくする制御を行う。そのため、従来よりも反射係数絶対値Γを小さくできる。また、可変コンデンサVC2を用いて、さらなる調整が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プラズマエッチング、プラズマCVD等の用途に用いられるプラズマ処理装置のような負荷に電力を供給する高周波装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング、プラズマCVD等の用途に用いられるプラズマ処理装置のような負荷では、製造プロセスの進行に伴い、インピーダンスが時々刻々と変化していく。このような負荷に効率よく電極を供給するためには、負荷インピーダンスZ1(負荷だけのインピーダンス)の変化に伴い、高周波電源装置の出力端から負荷側を見たインピーダンス(以下、負荷側インピーダンスZL)を調整する必要がある。そのために、通常、高周波電力を供給する高周波電源装置だけでなく、負荷側インピーダンスZLを調整するためのインピーダンス調整器が組み合わされて用いられている。
【0003】
なお、高周波電源装置の出力端から電源側を見たインピーダンスを電源側インピーダンスZ0とすると、電源側インピーダンスZ0と負荷側インピーダンスZLとが整合したときに、反射波電力が最小となる。また、反射係数絶対値Γも最小となる。すなわち、負荷側インピーダンスZLを調整することによって、反射波電力を小さくさせることが可能となる。
【0004】
このインピーダンス調整器だけで、インピーダンスの調整をさせるものもあるが、特許文献1や特許文献2のように、高周波電源装置の出力周波数を可変させることによって、負荷側インピーダンスZLを調整できる可変周波数方式の高周波電源装置が用いられる場合がある。なお、高周波電源装置とインピーダンス調整器とを組み合わせて構成された装置を高周波装置とする。
【0005】
図7は、従来の高周波装置の構成例と高周波装置と負荷5との接続関係を示す図である。
高周波電源装置50は、インピーダンス調整器6を介して、高周波電力を負荷5に供給するものであり、出力周波数を可変できる機能を有している。
【0006】
さらに詳細に説明すると、高周波電源装置50は、電力増幅器53を用いて高周波電力を出力するものであり、電力測定器54によって測定された高周波電力出力値が、電力設定器56で設定された目標値になるように出力制御される。また、高周波電源装置の出力周波数は、周波数制御回路51によって発振周波数が制御される発振回路52の発振周波数によって定まる。この高周波電源装置50から出力された高周波電力は、同軸ケーブルからなる伝送線路2及びインピーダンス調整器6及び遮蔽された銅板からなる負荷接続部4を介して負荷5に供給される。なお、ON/OFF制御回路57は、発振回路52の出力ON/OFFを制御するものであり、発振回路52は、ON/OFF制御回路57からON信号が出力されているときに高周波信号を出力する。このON/OFF制御回路57は、高周波電源装置50に設けられた図略の電力出力スイッチを操作することによって制御されるか、又は外部装置からの制御信号によって制御される。
【0007】
インピーダンス調整器6は、内部にコンデンサやインダクタといったリアクタンス素子を有しており、このインピーダンス調整器がない場合に比べて、負荷側インピーダンスZLを変更させ、高周波電源装置によって反射波電力の調整ができるように、負荷側インピーダンスZLを調整するものである。
図7に示した例では、コンデンサC1、コンデンサC2の2つのコンデンサと、インダクタL1が、インピーダンス調整器に設けられている。なお、リアクタンス素子のリアクタンス値(コンデンサの場合はキャパシタンス、インダクタの場合はインダクタンス)は、シミュレーションや実験によって得られたデータから、負荷の特性に応じて求められた固定値である。
【0008】
負荷5は、加工部を備え、その加工部の内部に搬入したウエハ、液晶基板等の被加工物を加工(エッチング、CVD等)するための装置である。この負荷5は、被加工物を加工するために、加工部にプラズマ放電用ガスを導入し、そのプラズマ放電用ガスに高周波電源装置50から供給された高周波電力(電圧)を印加することによって、上記のプラズマ放電用ガスを放電させて非プラズマ状態からプラズマ状態にしている。そして、プラズマを利用して被加工物を加工している。
【0009】
さて、前述した高周波電源装置50で、出力周波数を変化させると、負荷側インピーダンスZLが変化するので、出力周波数を制御することによって、反射波電力を小さくさせることが可能となる。
【0010】
しかし、高周波電源装置50の出力周波数を制御するだけでは、反射波電力が十分に小さくならない場合がある。この理由は、負荷インピーダンスZ1を式(1)で表した場合に、出力周波数を変化させても、負荷インピーダンスZ1の内で変化するのは、主にリアクタンス成分Xであり、抵抗成分Rはあまり変化しないからである。なお、式(1)を見る限りにおいては、出力周波数の変化によって変化するのは、リアクタンス成分Xだけのように見える。しかし、詳細は省略するが、実際には、抵抗成分Rも少し変化する。また、式(1)において、「f」は高周波電源装置50の出力周波数、「C」は負荷の容量成分、「L」は負荷の誘導成分を示す。
Z1=R+jX=R+j(2πfL−1/(2πfC))・・ (1)
【0011】
また、高周波電源装置50の出力周波数を変化させることによって変化するリアクタンス成分Xの範囲にも限度があるので、高周波電源装置50の出力周波数を制御するだけでは、全ての負荷インピーダンスZ1に対応することができない。
【0012】
そのために、高周波電源装置50の出力周波数の制御だけで、反射波電力を小さくできるように、インピーダンス調整器6を用いて、負荷側インピーダンスZLを変化させている。
【0013】
【特許文献1】特開2006−310245号公報
【特許文献2】特開2006−286254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
高周波電源装置50とインピーダンス調整器6とを組み合わせた高周波装置によって、反射波電力が小さくなるように制御することができるが、前述したように、高周波電源装置の出力周波数を可変させることによって変化するのは、主にリアクタンス成分Xであり、抵抗成分Rはあまり変化しない。したがって、抵抗成分Rが規定値(例えば50Ω)に近くなるように、予めインピーダンス調整器6内のリアクタンス素子のリアクタンス値を設定しておく。
【0015】
ところが、負荷インピーダンスZ1は時々刻々と変化するので、製造プロセスの全ての時点において最適な設定はできない。そのために、例えば、製造プロセスの全てにおいて反射波電力が基準値以下になるように、リアクタンス素子のリアクタンス値が予め設定される。
すなわち、インピーダンス調整器6のリアクタンス素子は、固定のリアクタンス値を有するものとなる。このように固定のリアクタンス値にした方が、装置の小型化や価格の観点から見て望ましいので、可能である限り、固定のリアクタンス値のものが採用される。
【0016】
しかし、製造プロセスの全体を通じて、負荷インピーダンスZ1が大きく変動する特性の負荷の場合に、このような高周波装置を使用すると、反射波電力が十分に小さくできず、基準値を超える場合がある。
【0017】
この問題を改善するために、可変コンデンサ、可変インダクタのような可変リアクタンス素子を用い、この可変リアクタンス素子を自動的に制御することによってインピーダンス整合を行うインピーダンス自動整合器を、インピーダンス調整器の代わりに用いることが考えられる。すなわち、可変周波数方式の高周波電源装置50とインピーダンス自動整合器とが組み合わさった高周波装置となる場合である。
【0018】
しかし、インピーダンス自動整合器は、抵抗成分Rおよびリアクタンス成分Xの両方を同時に調整する制御を行うので、制御が複雑である。しかも、インピーダンス自動整合器を用いると、装置が大型化すると共に、価格も高価になる。また、インピーダンス自動整合器を用いると、インピーダンス自動整合器による整合動作と高周波電源装置50による出力周波数の調整動作とが、同時進行するので、制御が安定しない可能性もある。
【0019】
また、可変周波数方式の高周波電源装置ではなく、出力周波数固定の高周波電源装置を用い、自動的にインピーダンス整合を行うインピーダンス自動整合器だけで反射波電力を小さくする方法もあるが、反射波電力を小さくする調整速度の面で、可変周波数方式の高周波電源装置を用いた方が早い。そのため、反射波電力を小さくする調整速度が求められる用途では、可変周波数方式の高周波電源装置を用いた高周波装置が望まれる。
【0020】
本発明は、上記事情のもとで考え出されたものであって、可変周波数方式の高周波電源装置を用い、且つ、インピーダンス自動整合器を用いない構成にも関わらず、製造プロセスの全体を通じて、負荷インピーダンスZ1が大きく変動する特性の負荷の場合であっても、反射波電力を小さくすることのできる高周波装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の発明によって提供される高周波装置は、
負荷に高周波電力を供給するための高周波装置であって、
発振周波数を可変できる発振手段と、
前記発振手段から出力される発振信号を増幅させて電力発生源となり、前記負荷に高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
反射波電力に関係する反射波情報を演算して、演算した反射波情報を出力する反射波情報演算手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御する周波数制御手段と、
前記高周波電力供給手段と負荷との間に設けられ、且つ少なくとも1つの可変リアクタンス素子を有し、前記可変リアクタンス素子の1つが制御可能なインピーダンス調整手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御する素子制御手段と、
を備えたものである。
【0022】
第2の発明によって提供される高周波装置は、前記前記素子制御手段に関するものであって、前記素子制御手段は、前記周波数制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、前記制御可能な可変リアクタンス素子の制御を開始することを特徴としている。
【0023】
第3の発明によって提供される高周波装置は、前記周波数制御手段に関するものであって、前記周波数制御手段は、前記素子制御手段が制御可能な可変リアクタンス素子の制御を行っている間は、前記発振手段の発振周波数の制御を行わないことを特徴としている。
【0024】
第4の発明によって提供される高周波装置は、前記周波数制御手段に関するものであって、前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御して、前記反射波情報が基準値よりも小さくなった後に、再度、前記反射波情報が基準値よりも大きくなったときに、制御を再開することを特徴としている。
【0025】
第5の発明によって提供される高周波装置は、前記周波数制御手段に関するものであって、前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、制御を再開することを特徴している。
【0026】
第6の発明によって提供される高周波装置は、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子に関するものであって、前記可変リアクタンス素子は、高周波電力供給手段よりも負荷側のインピーダンスの抵抗成分を変化させる機能を有していることを特徴としている。
【0027】
第7の発明によって提供される高周波装置は、
負荷に高周波電力を供給するための高周波装置であって、
発振周波数を可変できる発振手段と、
前記発振手段から出力される発振信号を増幅させて電力発生源となり、前記負荷に高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
反射波電力に関係する反射波情報を演算して、演算した反射波情報を出力する反射波情報演算手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御する周波数制御手段と、
前記高周波電力供給手段と負荷との間に設けられ、且つ複数の可変リアクタンス素子を有し、前記複数の可変リアクタンス素子のうちの2つが制御可能なインピーダンス調整手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子のいずれか1つを制御する素子制御手段と、
を備えたものである。
【0028】
第8の発明によって提供される高周波装置は、前記前記素子制御手段に関するものであって、前記素子制御手段は、前記周波数制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、前記制御可能な2つの可変リアクタンス素子のうちの一方の制御を開始することを特徴としている。
【0029】
第9の発明によって提供される高周波装置は、前記前記素子制御手段に関するものであって、前記素子制御手段は、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な2つの可変リアクタンス素子のうちの一方を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、前記制御可能な2つの可変リアクタンス素子のうちの他方の制御を開始することを特徴としている。
【0030】
第10の発明によって提供される高周波装置は、前記周波数制御手段に関するものであって、前記周波数制御手段は、前記素子制御手段が制御可能な可変リアクタンス素子の制御を行っている間は、前記発振手段の発振周波数の制御を行わないことを特徴としている。
【0031】
第11の発明によって提供される高周波装置は、前記周波数制御手段に関するものであって、前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御して、前記反射波情報が基準値よりも小さくなった後に、再度、前記反射波情報が基準値よりも大きくなったときに、制御を再開することを特徴としている。
【0032】
第12の発明によって提供される高周波装置は、前記周波数制御手段に関するものであって、前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、制御を再開することを特徴としている。
【0033】
第13の発明によって提供される高周波装置は、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子に関するものであって、前記インピーダンス調整手段の制御可能な2つの可変リアクタンス素子の一方は、高周波電力供給手段よりも負荷側のインピーダンスの抵抗成分を変化させる機能を有しており、制御可能な2つの可変リアクタンス素子の他方は、高周波電力供給手段よりも負荷側のインピーダンスのリアクタンス成分を変化させる機能を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、可変周波数方式の高周波電源装置を用い、且つ、インピーダンス自動整合器を用いない構成にも関わらず、負荷側インピーダンスの抵抗成分Rおよびリアクタンス成分Xの両方を調整する制御を行えるので、反射波電力を小さくすることができる。しかも、抵抗成分Rの調整は簡単な制御で可能となる。その結果、例えば、製造プロセスの全体を通じて、負荷インピーダンスZ1が大きく変動する特性の負荷の場合であっても、反射波電力を小さくすることができる。もちろん、反射係数絶対値を小さくするように制御してもよい。
【0035】
また、制御可能な可変リアクタンス素子を2つ用いる場合であっても、高周波電力が負荷に供給されている間に、リアクタンス素子制御回路19によって同時に制御される可変リアクタンス素子は1つである。そのため、比較的簡単に可変リアクタンス素子の制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の詳細を図面を参照して説明する。
【0037】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る高周波装置の構成例と高周波装置と負荷5との接続関係を示す図である。なお、高周波電源装置1とインピーダンス調整器3とを組み合わせて構成された装置を高周波装置とする。
【0038】
高周波電源装置1は、発振回路12から出力される高周波信号を電力増幅器13を用いて増幅させ、発生した高周波電力を負荷5に供給するための装置である。高周波電源装置1から出力された高周波電力は、同軸ケーブルからなる伝送線路2及びインピーダンス調整器3及び遮蔽された銅板からなる負荷接続部4を介して負荷5に供給される。また、一般にこの種の高周波電源装置1では、数百kHz以上の周波数の高周波電力を出力している。なお、電力増幅器13は、本発明に係る高周波電力供給手段の一例である。
【0039】
ON/OFF制御回路17は、発振回路12の出力ON/OFFを制御するものであり、発振回路12は、ON/OFF制御回路17からON信号が出力されているときに高周波信号を出力する。このON/OFF制御回路17は、高周波電源装置1に設けられた図略の電力出力スイッチを操作することによって制御されるか、又は外部装置からの制御信号によって制御される。なお、発振回路12は、本発明に係る発振手段の一例である。
【0040】
高周波電源装置1の電力制御は、電力増幅器13の後段に設けられた電力測定器14によって、電力増幅器13から出力する高周波を電力値に換算して測定し、測定した電力測定値が電力設定器16で設定された電力目標値に等しくなるように出力制御する。さらに詳細には、電力測定値と電力目標値とを電力制御回路15に入力し、電力目標値に対する電力測定値の偏差がなくなるように電力増幅器13に制御信号を出力することにより行われる。
【0041】
なお、電力測定器14は、電力増幅器13から出力する高周波、すなわち進行波を電力値に換算して測定した進行波電力測定値を出力するだけでなく、反射されて負荷側から電力増幅器13に向かう反射波を電力値に換算して測定した反射波電力測定値を出力する機能を有する。電力測定器14は、例えば、方向性結合器および方向性結合器の出力を電力値に換算するための変換回路によって構成すればよい。
【0042】
また、図1において、電力制御回路15で制御される対象は、進行波電力測定値でもよいし、進行波電力測定値から反射波電力測定値を減算した負荷側電力測定値でもよい。また、図1では、負荷側電力測定値を制御対象とする場合であっても、図面を簡略化するために、電力測定器14から電力制御回路15に向かう接続線を1本で描いている。また、後述する反射係数演算回路18には、電力測定器14から出力された進行波電力測定値および反射波電力測定値が入力されるが、電力測定器14から反射係数演算回路18に向かう接続線を1本で描いている。
【0043】
また、高周波電源装置1の出力周波数は、発振回路12の発振周波数によって定まる。例えば、高周波電源装置1の出力周波数を13.56MHz±αの範囲で可変させたい場合は、発振回路12の発振周波数を13.56MHz±αの範囲で可変させればよい。また、発振回路12の発振周波数は、周波数制御回路11によって、反射波電力が小さくなるように制御される。制御方法は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示された方法を用いることができる。
【0044】
また、高周波電源装置1の出力周波数を制御したにも関わらず、後述するように、反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくならなかった場合(以上の場合)は、リアクタンス制御回路19によって、インピーダンス調整器3の可変コンデンサVC1の調整が必要となる。そのために、周波数制御回路11は、リアクタンス制御回路19に対して制御開始信号を出力する。なお、周波数制御回路11は、本発明に係る周波数制御手段の一例である。
【0045】
反射係数演算回路18は、電力測定器14から出力する進行波電力測定値と反射波電力測定値とから、反射係数の絶対値(以下、反射係数絶対値Γという)を演算して、演算した反射係数絶対値Γを出力するものである。進行波電力測定値をPf、反射波電力測定値をPrで表すと、反射係数絶対値Γは次の式(2)で表される。なお、ここで示した方法と異なる方法で反射係数絶対値Γを求めてもよい。また、反射係数演算回路18は、本発明に係る反射波情報演算手段の一例である。
反射係数絶対値Γ=√Pr/√Pf ・・・・(2)
【0046】
リアクタンス素子制御回路19は、反射係数演算部18から出力される反射係数絶対値Γに基づいて、後述するインピーダンス調整器3の内部の可変リアクタンス素子を制御するものである。この制御に関しては、図2を参照して後述する。なお、後述するように、インピーダンス調整器3の内部の可変リアクタンス素子を制御することによって、反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくなった場合は、反射係数絶対値Γを小さくするという目的を達成したので、周波数制御回路11による制御に戻る。そのために、リアクタンス制御回路19は、周波数制御回路11に対して制御開始信号を出力する。なお、リアクタンス素子制御回路19は、本発明に係る素子制御手段の一例である。
【0047】
なお、図1に示した高周波装置では、反射係数絶対値Γに基づいて、高周波電源装置1の出力周波数や、インピーダンス調整器3の可変リアクタンス素子のリアクタンスを制御する一例を示しているが、反射係数絶対値の代わりに、反射波電力測定値Pr等の反射波電力に関係する情報を用いて制御してもよい。これらの反射係数絶対値、反射波電力測定値Pr等の反射波電力に関係する情報を、本明細書では、反射波情報という。また、これらの反射波電力に関係する情報を求めるように、反射波情報演算手段を構成してもよい。
【0048】
インピーダンス調整器3は、内部にコンデンサやインダクタといったリアクタンス素子を有しており、このインピーダンス調整器がない場合に比べて、負荷側インピーダンスZLを変更させ、高周波電源装置1によって反射波電力の調整ができるように、負荷側インピーダンスZLを調整するものである。なお、インピーダンス調整器3は、本発明に係るインピーダンス調整手段の一例である。
【0049】
図1に示した例では、インピーダンス調整器3の内部には、可変コンデンサVC1、固定コンデンサC2の2つのコンデンサと、インダクタL1がある。そして、これらのリアクタンス素子によって、負荷側インピーダンスZLが調整される。このうち、可変コンデンサVC1は、リアクタンス素子制御回路19によって制御される。この可変コンデンサVC1の可変キャパシタンス範囲、固定コンデンサC2のキャパシタンスといったリアクタンス素子のリアクタンス値は、シミュレーションや実験によって得られたデータから、負荷の特性に応じて適切なものを選定すればよい。
【0050】
また、可変コンデンサVC1は、モータ(例えば、ステッピングモータ)によって、そのキャパシタンスが変更できる。すなわち、リアクタンス素子制御回路19は、実際には、モータを制御することによって、可変コンデンサVC1のキャパシタンスを変更させている。
【0051】
より詳細には、可変コンデンサVC1には、キャパシタンスを変更させるための可動部があり、この可動部の位置を変位させることによって、キャパシタンスを変更できる仕組みになっている。そのために、モータによって、可動部を変位させと、可変コンデンサVC1のキャパシタンスを変更させることができる。すなわち、可変インピーダンス素子のインピーダンスを変更させることができる。
【0052】
例えば、モータを時計周りに回転させるとキャパシタンスが大きくなり、反時計周りに回転させるとキャパシタンスが小さくなるようにすればよい。すなわち、モータの動作方向(回転方向)と動作量(回転量)を制御することによって、可変コンデンサVC1のキャパシタンスを変更させることができる。
【0053】
なお、可変コンデンサVC1の方を可変タイプにしているのは、コンデンサC2の位置よりも、こちらの位置に配置されたコンデンサのキャパシタンスを変更した方が、より抵抗成分を大きく変化させることができるからである。すなわち、可変コンデンサVC1は、負荷側インピーダンスの抵抗成分を変化させる機能を有している。さらに言えば、可変コンデンサVC1のキャパシタンスを変更すると、リアクタンス成分よりも抵抗成分の方が大きく変化する。
【0054】
ちなみに、コンデンサC2を可変コンデンサVC2にして、キャパシタンスを変更した方が、よりリアクタンス成分を大きく変化させることができる。すなわち、コンデンサC2を可変コンデンサVC2にした場合、可変コンデンサVC2は、負荷側インピーダンスのリアクタンス成分を変化させる機能を有していることになる。さらに言えば、コンデンサC2を可変コンデンサVC2にした場合、可変コンデンサVC2のキャパシタンスを変更すると、抵抗成分よりもリアクタンス成分の方が大きく変化する。
【0055】
また、本実施形態では、可変インピーダンス素子として、可変コンデンサVC1を例にして説明しているが、可変インピーダンス素子として可変インダクタを用いる場合でも、同様にモータを用いて、インダクタンスを変更できる。
【0056】
なお、図1では省略しているが、特許文献1のように、負荷5における放電の有無を検出する放電検出器17を設けて、放電の有無によって高周波電源装置の周波数制御を変更するようにしてもよい。
【0057】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る高周波装置によって反射係数絶対値Γを小さくするための制御方法を示すフローチャートの一例である。このフローチャートに沿って、反射係数絶対値Γを小さくさせる制御について説明する。なお、前述したように、反射係数絶対値の代わりに、反射波電力測定値Pr等の反射波情報を用いて制御してもよい。
【0058】
ステップ1:高周波電源装置1から負荷5への高周波電力の供給を開始する。高周波電源装置1から高周波電力が出力されて負荷5に供給され、負荷5となるプラズマ処理装置内のガスに放電開始電圧以上の電圧が印加されると放電する。
【0059】
ステップ2:放電後は、周波数制御回路11によって、反射係数絶対値Γが小さくなるように、高周波電源装置1の出力周波数を制御する。
ここでは、高周波電源装置1の出力周波数の可変範囲の中で、反射係数絶対値Γが最小となる出力周波数にすればよい。もちろん他の基準によって、出力周波数を決めてもよい。例えば、反射係数絶対値Γが最小ではなく、2番目に小さいものであっても、その周辺の出力周波数における反射係数絶対値Γを考慮すると、より反射係数絶対値Γが安定していることがある。その場合には、この反射係数絶対値Γが2番目に小さい出力周波数を選定してもよい。
【0060】
ステップ3:ステップ2で高周波電源装置1の出力周波数を制御した結果、反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくなったか否かを判定する。
基準値よりも小さくなっている場合(Yes)は、高周波電源装置1の出力周波数の制御だけでよいので、ステップ4へ進む。基準値よりも小さくなっていない場合(No)は、インピーダンス調整器3での調整が必要であるので、ステップ5へ進む。
【0061】
ステップ4:待機モードに移行し、反射係数絶対値Γを監視する。そして、反射係数絶対値Γが基準値よりも大きくなったか否かを判定する。
基準値よりも大きくなっている場合(Yes)は、反射係数絶対値Γを小さくさせるために、再度、高周波電源装置1の出力周波数の制御を行う必要があるので、ステップ2へ進む。基準値よりも大きくなっていない場合(No)は、再度、ステップ4を繰り返す。
【0062】
ステップ5:高周波電源装置1の出力周波数を制御するだけでは、反射係数絶対値Γが基準値以下にならなかった場合は、インピーダンス調整器3による負荷側インピーダンスZLの調整が必要となるので、ステップ5〜ステップ8を実行する。
ステップ5では、可変コンデンサVC1を定めた動作方向に、所定量だけ動作させる。なお、初期値は、キャパシタンスが小さくなる方向とする。もちろん、初期値をキャパシタンスが大きくなる方向としてもよい。
なお、リアクタンス素子制御回路19によってインピーダンス調整器3の内部の可変リアクタンス素子を制御しているときは、周波数制御回路11による発振回路12の発振周波数の制御は行わない。すなわち、発振回路12の発振周波数を、それまでの発振周波数に保持する。
【0063】
ステップ6:ステップ5にて、可変コンデンサVC1を動作させた結果、反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくなったか否かを判定する。
基準値よりも小さくなっている場合(Yes)は、反射係数絶対値Γを小さくするという目的を達成したので、ステップ4へ進む。基準値よりも小さくなっていない場合(No)は、可変コンデンサVC1の動作量が少ないのか否かを判定するために、ステップ7へ進む。
【0064】
なお、ステップ6において、基準値よりも小さくなっていない場合(No)が所定回数だけ連続して続いたときは、一旦、高周波電源装置1の出力周波数の制御を行った方がよい場合がある。そのために、ステップ4に進んでもよい。このような処理の基準としては、所定回数だけ連続して続いたときだけでなく、例えば、所定時間内に基準値よりも小さくならないときとしてもよい。この場合は、内部にタイマーを設ければよい。すなわち、基準値よりも小さくなっていない場合(No)でも、所定の条件を満たした場合は、ステップ4に進んでもよい。なお、この場合は、ステップ4において、反射係数絶対値Γが基準値よりも大きくなっている場合(Yes)に該当するので、ステップ2へ進むことになる。そのため、ステップ6からステップ2へ進むようにしてもよい。
【0065】
また、上述したステップ6において、反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくなっていない場合(No)に所定の条件を満たしたとき(例えば、所定回数だけ連続して続いたとき)は、何らかの異常が発生している可能性があるので、異常信号を出力するようにしてもよい。この異常信号によって、高周波電源装置1の高周波電力の出力を停止するようにしてもよい。
【0066】
ステップ7:可変コンデンサVC1を動作させた結果、反射係数絶対値Γが減少したか否かを判定する。
反射係数絶対値Γが減少した場合(Yes)は、可変コンデンサVC1の動作量が少ない可能性があるので、ステップ5へ進む。反射係数絶対値Γが減少していない場合(No)は、可変コンデンサVC1の動作方向が正しくない可能性があるので、ステップ8へ進む。
【0067】
ステップ8:ステップ7において、反射係数絶対値Γが減少していない場合(No)は、可変コンデンサVC1の動作方向が正しくない可能性があるので、可変コンデンサVC1の動作方向を反転させて、ステップ5へ進む。反転させた動作方向が、次回からの動作方向となる。
なお、反射係数絶対値Γは、時々刻々と変化するので、厳密にステップ8の処理を行うと、動作方向が、正転→反転→正転→反転・・・・という具合になり、制御が安定しない場合がある。そのため、制御の安定を図るために、例えば、所定回数だけNoが続くまで、同一の動作方向で動作させるようにしても良い。
【0068】
このように制御することで、可変周波数方式の高周波電源装置を用い、且つ、インピーダンス自動整合器を用いない構成にも関わらず、負荷側インピーダンスの抵抗成分Rおよびリアクタンス成分Xの両方を調整する制御を行えるので、反射波電力を小さくすることができる。しかも、抵抗成分Rの調整は簡単な制御で可能となる。その結果、製造プロセスの全体を通じて、負荷インピーダンスZ1が大きく変動する特性の負荷の場合であっても、反射波電力を小さくすることができる。もちろん、反射係数絶対値を小さくするように制御してもよい。
【0069】
この様子を図3を参照して、さらに説明する。なお、これまでは、反射係数絶対値Γが小さくなるように制御する例を示したが、図3では、反射波電力を用いて説明を行う。
【0070】
図3は、反射波電力の変化例を3次元的に示した図である。なお、図中の「R」は抵抗成分、「X」はリアクタンス成分を示し、縦軸に反射波電力を示す。よって、図の中央付近の窪んだ箇所が最も反射波電力が小さい箇所を示す。
【0071】
さて、前述したように、高周波電源装置の出力周波数を制御することによって、負荷側インピーダンスZLが変化する。この際、前述したように、主にリアクタンス成分Xが変化する。この負荷側インピーダンスZLの変化の軌跡の一例を軌跡100とする。
【0072】
この軌跡100で示した例のように、リアクタンス成分X分が変化する過程において、多少は反射波電力が減少するが、反射波電力が最小とはならない場合がある。これは、前述したように、高周波電源装置の出力周波数の制御だけでは、抵抗成分Rの調整があまりできないからである。
【0073】
そのために、本発明の高周波装置は、例えば、軌跡100の途中の反射波電力が最小となる出力周波数で高周波電力を供給するようにする。その後、インピーダンス調整器の可変リアクタンス素子(この例では可変コンデンサVC1)を制御することによって、抵抗成分Rの調整を行い、反射係数絶対値Γを小さくする制御を行う。この際の負荷側インピーダンスZLの変化の軌跡の一例を軌跡200とする。その結果、反射波電力を、高周波電源装置の出力周波数を制御するだけの場合に比べて小さくすることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る高周波装置の構成例と高周波装置と負荷5との接続関係を示す図である。なお、高周波電源装置1aとインピーダンス調整器3aとを組み合わせて構成された装置を高周波装置とする。
【0075】
図4に示すインピーダンス調整器3aは、図1に示したインピーダンス調整器3の固定コンデンサC2を可変コンデンサVC2に変更したものである。この
可変コンデンサVC2は、可変コンデンサVC1と同様に、モータによって、そのキャパシタンスを変更できるように構成されている。また、モータは、可変コンデンサVC1と同様に、リアクタンス素子制御回路19によって制御されるように構成されている。
【0076】
高周波電源装置1aは、図1に示した高周波電源装置1と同様であるが、前述したように、可変コンデンサVC2用のモータを制御することによって、可変コンデンサVC2のキャパシタンスを変更させるように構成されている。なお、その他に関しては、図1で示した高周波電源装置1と同様なので説明を省略する。なお、リアクタンス素子制御回路19は、便宜上、図1と同符号にしている。
【0077】
さて、上述した第1の実施形態では、可変周波数方式の高周波電源装置とインピーダンス調整器に設けられた1つの可変コンデンサ(図1に示した例では、可変コンデンサVC1)を用いて、反射波情報が小さくなるようにしていた。殆どの場合は、上述した第1の実施形態のようにすると、反射波情報を所定値以下にすることができる。しかし、稀に、反射波情報が小さくできない場合がある。この現象を、図5を用いて説明する。
【0078】
図5は、反射波電力の他の変化例を3次元的に示した図である。なお、座標などに関しては、図3と同様なので説明を省略する。
【0079】
図5に示すように、高周波電源装置の出力周波数を変更したときの負荷側インピーダンスZLの変化の軌跡の一例を軌跡101とし、インピーダンス調整器の可変コンデンサVC1を制御したときの負荷側インピーダンスZLの変化の軌跡の一例を軌跡201とする。
【0080】
この図5に示すように、高周波電源装置1の出力周波数の可変範囲の中で、反射波電力が最小となる出力周波数にし、その後、可変コンデンサVC1を制御してキャパシタンスを変更しても、図の中央付近の窪んだ箇所に到達しない場合がある。なお、図5は、説明を容易にするために、軌跡101と軌跡201とを大きくずらして描いている。
【0081】
上記のようになる原因は、高周波電源装置1の出力周波数の可変範囲の中で、反射波電力が最小となる出力周波数が、その後の可変コンデンサVC1の動作に対して最適ではないからである。例えば、図5の場合は、図に示した軌跡201の始点よりも、軌跡101の矢印選択方向に少しずらしたところに、軌跡201の始点を移動させた方が、反射波電力を小さくすることができる。
すなわち、高周波電源装置1の出力周波数の制御と可変コンデンサVC1の制御との組み合わせで考えた場合、両者を組み合わせても、反射波電力を最小にできない場合が存在する。
【0082】
このような場合、上述した図2のフローチャートの「ステップ6」で示した特殊例(「No」であっても条件を満たしたときには、ステップ4またはステップ2に進む)のように、一旦、高周波電源装置1aによる出力周波数の制御に戻ってやり直すというのも1つの方法であるが、それでも、状況が改善されないことが起こり得る。そこで、このような場合は、図4のように、固定コンデンサC2を可変コンデンサVC2に変更しておき、この可変コンデンサVC2のキャパシタンスを変更させればよい。このようにすると、それまでとは状況が変化するので、高周波電源装置1aの出力周波数の変更および可変コンデンサVC1のキャパシタンスの変更を行なうだけでは、改善できなかった問題を改善できることがある。例えば、可変コンデンサVC2のキャパシタンスを変更させると、軌跡301で示したように負荷側インピーダンスZLを変化させることが可能となる。そのため、図の中央付近の窪んだ箇所(反射波電力が小さい箇所)に到達できることがある。
【0083】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る高周波装置によって反射係数絶対値Γを小さくするための制御方法を示すフローチャートの一例である。
このフローチャートに沿って、反射係数絶対値Γを小さくさせる制御について説明する。なお、このフローチャートは、可変コンデンサVC2のキャパシタンスを変更させた制御を中心に説明したものである。また、この制御は、図2のフローチャートにおいて、ステップ6の特殊例(「No」であっても条件を満たしたときには、ステップ4またはステップ2に進む)からステップ4に進む間に挿入されるものであるので、この部分を抜き出して図示している。
【0084】
ステップ9:図2のステップ6で示した特殊例(「No」であっても条件を満たしたときには、ステップ4またはステップ2に進む)の条件に当てはまると、このステップ6から、図6のステップ9に進み、可変コンデンサVC2のキャパシタンスを調整するために、ステップ9〜ステップ12を実行する。
ステップ9では、可変コンデンサVC2を定めた動作方向に、所定量だけ動作させる。なお、初期値は、キャパシタンスが小さくなる方向とする。もちろん、初期値をキャパシタンスが大きくなる方向としてもよい。
【0085】
ステップ10:ステップ9にて、可変コンデンサVC2を動作させた結果、反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくなったか否かを判定する。
基準値よりも小さくなっている場合(Yes)は、反射係数絶対値Γを小さくするという目的を達成したので、図2のステップ4へ進む。基準値よりも小さくなっていない場合(No)は、可変コンデンサVC1の動作量が少ないのか否かを判定するために、ステップ11へ進む。
【0086】
なお、ステップ10において、基準値よりも小さくなっていない場合(No)が所定回数だけ連続して続いたときは、一旦、高周波電源装置1の出力周波数の制御を行った方がよい場合がある。そのために、ステップ4に進んでもよい。このような処理の基準としては、所定回数だけ連続して続いたときだけでなく、例えば、所定時間内に基準値よりも小さくならないときとしてもよい。この場合は、内部にタイマーを設ければよい。すなわち、基準値よりも小さくなっていない場合(No)でも、所定の条件を満たした場合は、ステップ4に進んでもよい。なお、この場合は、ステップ4において、反射係数絶対値Γが基準値よりも大きくなっている場合(Yes)に該当するので、ステップ2へ進むことになる。そのため、ステップ10からステップ2へ進むようにしてもよい。
【0087】
また、上述したステップ10において、反射係数絶対値Γが基準値よりも小さくなっていない場合(No)に所定の条件を満たしたとき(例えば、所定回数だけ連続して続いたとき)は、何らかの異常が発生している可能性があるので、異常信号を出力するようにしてもよい。この異常信号によって、高周波電源装置1の高周波電力の出力を停止するようにしてもよい。
【0088】
ステップ11:可変コンデンサVC2を動作させた結果、反射係数絶対値Γが減少したか否かを判定する。
反射係数絶対値Γが減少した場合(Yes)は、可変コンデンサVC2の動作量が少ない可能性があるので、ステップ9へ進む。反射係数絶対値Γが減少していない場合(No)は、可変コンデンサVC1の動作方向が正しくない可能性があるので、ステップ12へ進む。
【0089】
ステップ12:ステップ7において、反射係数絶対値Γが減少していない場合(No)は、可変コンデンサVC1の動作方向が正しくない可能性があるので、可変コンデンサVC1の動作方向を反転させて、ステップ9へ進む。反転させた動作方向が、次回からの動作方向となる。
なお、反射係数絶対値Γは、時々刻々と変化するので、厳密にステップ12の処理を行うと、動作方向が、正転→反転→正転→反転・・・・という具合になり、制御が安定しない場合がある。そのため、制御の安定を図るために、例えば、所定回数だけNoが続くまで、同一の動作方向で動作させるようにしても良い。
【0090】
このように制御することで、可変周波数方式の高周波電源装置を用い、且つ、インピーダンス自動整合器を用いない構成にも関わらず、負荷側インピーダンスの抵抗成分Rおよびリアクタンス成分Xの両方を調整する制御を行えるので、反射波電力を小さくすることができる。
【0091】
この第2の実施形態も、高周波電力が負荷に供給されている間に、リアクタンス素子制御回路19によって同時に制御される可変リアクタンス素子は1つである。そのため、比較的簡単に可変リアクタンス素子の制御を行うことができる。しかも、抵抗成分Rの調整は簡単な制御で可能となる。その結果、製造プロセスの全体を通じて、負荷インピーダンスZ1が大きく変動する特性の負荷の場合であっても、反射波電力を小さくすることができる。もちろん、反射係数絶対値を小さくするように制御してもよい。
【0092】
なお、本発明は、図1に示したようなインピーダンス調整器3のリアクタンス素子の構成に限定されるものではなく、他の構成のインピーダンス調整器3を用いることができる。
【0093】
また、図1に示したインピーダンス調整器3では、コンデンサC2やインダクタL1のリアクタンスは固定値であったが、リアクタンスを可変できるものであってもよい。ただし、いずれの場合にしても、高周波電力が負荷に供給されている間に、リアクタンス素子制御回路19によって同時に制御されるリアクタンス素子は1つである。そのため、比較的簡単に可変リアクタンス素子の制御を行うことができる。
【0094】
また、1つのモータで2つ以上の可変リアクタンス素子を駆動する場合が考えられる。例えば、可変コンデンサC2の代わりに、2つの可変コンデンサを並列接続し、それをモータで駆動させることができる。この場合は、並列接続された2つの可変コンデンサを1つの可変インピーダンス素子と見なせば、上記と同様に制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る高周波装置の構成例と高周波装置と負荷5との接続関係を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る高周波装置によって反射係数絶対値Γを小さくするための制御方法を示すフローチャートの一例である。
【図3】図3は、反射波電力の変化例を3次元的に示した図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る高周波装置の構成例と高周波装置と負荷5との接続関係を示す図である。
【図5】図5は、反射波電力の他の変化例を3次元的に示した図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態に係る高周波装置によって反射係数絶対値Γを小さくするための制御方法を示すフローチャートの一例である。
【図7】図7は、従来の高周波装置の構成例と高周波装置と負荷5との接続関係を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 高周波電源装置
1a 高周波電源装置
2 伝送線路
3 インピーダンス調整器
3a インピーダンス調整器
4 負荷接続部
5 負荷
11 周波数制御回路
12 発振回路
13 電力増幅器
14 電力測定器
15 電力制御回路
16 電力設定器
17 ON/OFF制御回路
18 反射係数演算回路
19 リアクタンス素子制御回路
Z0 電源側インピーダンス
Z1 負荷インピーダンス
ZL 負荷側インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に高周波電力を供給するための高周波装置であって、
発振周波数を可変できる発振手段と、
前記発振手段から出力される発振信号を増幅させて電力発生源となり、前記負荷に高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
反射波電力に関係する反射波情報を演算して、演算した反射波情報を出力する反射波情報演算手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御する周波数制御手段と、
前記高周波電力供給手段と負荷との間に設けられ、且つ少なくとも1つの可変リアクタンス素子を有し、前記可変リアクタンス素子の1つが制御可能なインピーダンス調整手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御する素子制御手段と、
を備えた高周波装置。
【請求項2】
前記素子制御手段は、前記周波数制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、前記制御可能な可変リアクタンス素子の制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の高周波装置。
【請求項3】
前記周波数制御手段は、前記素子制御手段が制御可能な可変リアクタンス素子の制御を行っている間は、前記発振手段の発振周波数の制御を行わないことを特徴とする請求項2に記載の高周波装置。
【請求項4】
前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御して、前記反射波情報が基準値よりも小さくなった後に、再度、前記反射波情報が基準値よりも大きくなったときに、制御を再開することを特徴とする請求項3に記載の高周波装置。
【請求項5】
前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、制御を再開することを特徴とする請求項3に記載の高周波装置。
【請求項6】
前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子は、高周波電力供給手段よりも負荷側のインピーダンスの抵抗成分を変化させる機能を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高周波装置。
【請求項7】
負荷に高周波電力を供給するための高周波装置であって、
発振周波数を可変できる発振手段と、
前記発振手段から出力される発振信号を増幅させて電力発生源となり、前記負荷に高周波電力を供給する高周波電力供給手段と、
反射波電力に関係する反射波情報を演算して、演算した反射波情報を出力する反射波情報演算手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御する周波数制御手段と、
前記高周波電力供給手段と負荷との間に設けられ、且つ複数の可変リアクタンス素子を有し、前記複数の可変リアクタンス素子のうちの2つが制御可能なインピーダンス調整手段と、
前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子のいずれか1つを制御する素子制御手段と、
を備えた高周波装置。
【請求項8】
前記素子制御手段は、前記周波数制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記発振手段の発振周波数を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、前記制御可能な2つの可変リアクタンス素子のうちの一方の制御を開始することを特徴とする請求項7に記載の高周波装置。
【請求項9】
前記素子制御手段は、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な2つの可変リアクタンス素子のうちの一方を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、前記制御可能な2つの可変リアクタンス素子のうちの他方の制御を開始することを特徴とする請求項8に記載の高周波装置。
【請求項10】
前記周波数制御手段は、前記素子制御手段が制御可能な可変リアクタンス素子の制御を行っている間は、前記発振手段の発振周波数の制御を行わないことを特徴とする請求項8または9に記載の高周波装置。
【請求項11】
前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御して、前記反射波情報が基準値よりも小さくなった後に、再度、前記反射波情報が基準値よりも大きくなったときに、制御を再開することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の高周波装置。
【請求項12】
前記周波数制御手段は、前記素子制御手段において、前記反射波情報が小さくなるように、前記インピーダンス調整手段の制御可能な可変リアクタンス素子を制御したにも関わらず、前記反射波情報が基準値よりも小さくならなかったときに、制御を再開することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の高周波装置。
【請求項13】
前記インピーダンス調整手段の制御可能な2つの可変リアクタンス素子の一方は、高周波電力供給手段よりも負荷側のインピーダンスの抵抗成分を変化させる機能を有しており、制御可能な2つの可変リアクタンス素子の他方は、高周波電力供給手段よりも負荷側のインピーダンスのリアクタンス成分を変化させる機能を有していることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の高周波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−181846(P2008−181846A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93974(P2007−93974)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】