説明

高周波電源装置

【課題】 方向性結合器は、高い周波数領域での反射波検出レベルが、実際よりも大きくなる周波数振幅特性を有している。そのため、高調波等の高い周波数の反射波が発生したときに、高周波電源装置内の増幅素子を保護するために、必要以上に増幅部11の出力を抑制してしまう課題があった。
【解決手段】 高周波電力の供給源となる増幅部11を備え、負荷にプラズマ発生用の高周波電力を供給する高周波電源装置において、反射波検出信号を出力する方向性結合器13と、反射波検出信号の周波数振幅特性と逆特性を有する振幅特性変換部20と、周波数振幅特性を変換した反射波検出信号を利用して、前記高周波出力手段の出力制御を行う出力電力制御部19とを備えた。高い周波数領域の反射波を検出する場合であっても、反射波の検出レベルを、実際のレベルに近づけることによって、適切なレベルで出力制御を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマエッチング、プラズマCVDを行うプラズマ処理装置等の負荷に電力を供給する高周波電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波電力を用いて発生させたプラズマを利用してウエハ、液晶基板等の被加工物に加工(プラズマエッチング、プラズマCVD等)を行うプラズマ処理システムとして、図4に示すように、異なる周波数の高周波電力を用いるプラズマ処理システムがある。
【0003】
図4は、異なる周波数の高周波電力を用いるプラズマ処理システムの接続関係を示すブロック図である。
図4において、従来の第1の高周波電源装置10は、伝送線路2及び第1の整合器3及び接続部4を介して、負荷5に第1の高周波電力(以下、第1高周波電力という)を供給するための電源装置である。この第1の高周波電源装置10の出力周波数を第1周波数f1とし、第1周波数の周期をt1とする。また、第2の高周波電源装置6は、伝送線路7及び整合器8及び負荷接続部9を介して、負荷5に第2の高周波電力(以下、第2高周波電力という)を供給するための電源装置である。この第2の高周波電源装置6の出力周波数を第2周波数f2とし、第2周波数の周期をt2とする。なお、第1周波数は、第2周波数よりも周波数が高い。例えば、第1周波数は、13.56MHz,27.12MHz,40.68MHz等の周波数が用いられる。また、第2周波数は、400kHz,2MHz等の周波数が用いられる。このように、一般にこの種の高周波電源装置では、数百kHz以上の周波数の高周波電力を出力している。なお、第1の高周波電源装置10から見た場合、第1周波数のことを基本周波数といい、第2の高周波電源装置6から見た場合、第2周波数のことを基本周波数という。
【0004】
第1の高周波電源装置10から出力する第1高周波電力は、負荷5においてプラズマを発生させるための主となるものである。また、第2の高周波電源装置6から出力される第2高周波電力は、負荷5における加工(プラズマエッチング、プラズマCVD等)を効率よく行うためのバイアス用として用いられる。これら2つの高周波電源装置から出力される2種類の高周波が重畳されて負荷5内の電極に印加される。
【0005】
高周波電源装置の出力制御は、夫々が出力する進行波電力を一定に制御する方法(進行波電力一定制御という)あるいは進行波電力から反射波電力を減じた負荷側電力を一定に制御する方法(負荷側電力一定制御という)が用いられる。
【0006】
以下、第1の高周波電源装置10、整合器3、負荷5を中心にして説明する。なお、以下の説明では、進行波電力一定制御の場合を例にして説明する。
整合器3は、整合器3の入力端301から伝送線路2を経由し高周波電源装置10側を見た電源側インピーダンスZo(通常は50Ω)と、整合器3の入力端から負荷5側を見た負荷側インピーダンスZL(整合器3及び負荷接続部4及び負荷5のインピーダンス)とを整合させることによって、高周波電源装置と負荷5との間をインピーダンス整合させる目的で用いられる装置である。
【0007】
この整合器3は、内部に図示しない可変インピーダンス素子(例えば、可変コンデンサ、可変インダクタ等)を備えていて、高周波電源装置10と負荷5との間がインピーダンス整合するように、上記の可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させる機能を有する。より具体的には、例えば高周波電源装置10の出力端101から高周波電源装置10側を見たインピーダンス(出力インピーダンス)が、例えば50Ωに設計され、高周波電源装置が、特性インピーダンス50Ωの伝送線路2でインピーダンス整合器3の入力端に接続されているとすると、インピーダンス整合器3は、当該インピーダンス整合器3の入力端301から負荷5側を見た負荷側インピーダンスZLを50Ωに変換するように可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させる。
【0008】
負荷5は、一般的にプラズマ処理装置と呼ばれるものであり、内部に電極を有するチャンバーを備え、このチャンバーの内部に搬入したウエハ、液晶基板等の被加工物を加工(エッチング、CVD等)するための装置である。この負荷5は、被加工物を加工するために、チャンバー内にプラズマ放電用ガスを導入し、内部の電極に2つの高周波電源装置から供給される高周波電力(電圧)を印加することによって、電極間に高周波電界を生じさせて、上記のプラズマ放電用ガスを放電させてプラズマ状態にしている。そして、このプラズマを利用して被加工物を加工している。
【0009】
次に、高周波電源装置10の構成について説明する。
図5は、一般的な高周波電源装置の構成例を示すブロック図である。
増幅部11は、無線周波数帯域の出力周波数を有する高周波電力を出力するものであり、後述する出力電力制御部19によって出力が制御される。また、増幅部11は、図示しない直流電源部、発振器、増幅素子等を有し、これらを用いて電力を増幅して出力する。この増幅部11は、各種の方式があるが、ここでは省略する。なお、増幅部11の増幅素子としては、例えば、FETやトランジスタ等が用いられる。増幅部11において増幅された高周波電力は、主に高調波を除去するためのローパスフィルタ12、方向性結合器13を介して負荷5に供給される。
【0010】
また、方向性結合器13では、進行波検出信号(進行波に関する信号)を出力するとともに、反射波検出信号(反射波に関する信号)を出力する。進行波側の検波部14では進行波検出信号を検波して直流に変換し、進行波電圧Vfとして出力する。また、反射波側の検波部15では反射波検出信号を検波して直流に変換し、反射波電圧Vrとして出力する。また、進行波電力演算部16では、進行波電圧Vfに基づいて進行波電力値Pfを演算し、反射波電力演算部17では、反射波電圧Vrに基づいて反射波電力値Prを演算する。
【0011】
出力電力制御部19は、出力電力設定部18において設定された高周波電力の出力電力設定値Psetと、進行波電力演算部16において演算された進行波電力値Pfとを比較し、両者が等しくなるように、増幅部11の出力電力を制御することにより、高周波電力の出力が一定になるように制御するものである。
また、出力電力制御部19は、後述するように、検出した反射波のレベルに応じて、増幅部11の出力電力を抑制する制御を行う。なお、出力電力設定値Psetは、外部の装置から入力してもよい。このような高周波電源装置としては、特許文献1に記載のようなものがある。
【0012】
次に、反射波について説明する。
(1)整合動作の完了までに発生する反射波について
上記のような構成においては、反射波が発生しても、整合器3によって、反射波が低減されるため、方向性結合器13では、進行波電圧が安定して検出され、反射波が最小となるように制御される。しかし、整合器3による整合動作が完了するまでの間は、反射波が発生する。例えば、負荷のインピーダンスが瞬時に大きく変化した場合には、整合器3による整合動作が、負荷のインピーダンスの変化速度に追いつかないため、整合動作が完了するまでの間は、反射波が大きくなる。なお、このときの反射波は基本周波数によるものが主となるが、他の周波数による反射波の影響も受ける。
【0013】
(2)高調波による反射波について
また、上記のプラズマ処理装置のような非線形の負荷では、高調波が発生し、この高調波が負荷側から高周波電源装置10側に戻るため、第1周波数よりも高い周波数の反射波が発生する。
【0014】
(3)基本周波数周辺の反射波について
図4に示すように、2つの高周波電源装置を用いる場合、通常、バイアス用の第2高周波電力の周波数(第2周波数)は、第1高周波電力の周波数(第1周波数)よりも低い周波数となる。このような場合、2つの高周波電源装置の出力周波数に大きな差異があると、第2高周波電力が原因となって、第1の高周波電源装置10側に大きな反射波が生じてしまう。
【0015】
この原因は、プラズマの状態が、あたかも第2周波数で変調したような変化をすることに起因する。すなわち、負荷5のインピーダンスが第2周波数で変調したように変化することに起因する。そのために、第1の高周波電源装置10から出力された進行波の一部は、上記第2周波数と同じ周期の変調の影響により反射されるので、反射波が生じる。
【0016】
このとき、第1の整合器3が、第2周波数の変調に追従してインピーダンス整合できればよいが、上述したように、可変インピーダンス素子(例えば、可変コンデンサ、可変インダクタ等)を駆動させてインピーダンス整合を行うために、第2周波数の変調のような高速な変化には追従できず、反射波を低減させることができない。よって、発生した反射波が第1の高周波電源装置10側に戻ってしまう。
【0017】
また、この反射波は、第1高周波電力を第2高周波電力で変調したような現象によって生じているので、反射波の周波数成分をみると、第1周波数を主成分とし、スプリアスとして第2周波数の成分が重畳している状態となる。そのため、反射波の周波数成分は、第1周波数および第1周波数周辺の周波数で大部分を占めることになる。
【0018】
ところで、高周波電源装置には、通常、図5に示すように、増幅部11の出力側にローパスフィルタ12が設けられている。しかし、このローパスフィルタ12は、主となる第1周波数に対する高調波成分を除去するローパスフィルタであるので、第1周波数周辺の周波数成分は除去できない。そのために、主成分である第1周波数に、スプリアスとして重畳している第2周波数の成分を除去することができない。
【0019】
したがって、発生した反射波が、第1の高周波電源装置10のフィルタを通過して高周波電源装置10の内部に浸入してしまうので、高周波電源装置内の増幅素子に悪影響を及ぼす。しかも、発生する反射波電力は、出力の30%程度になることもあるので、その影響は大きい。
【0020】
一方、第2の高周波電源装置6から見ると、第1周波数の周波数成分を有する反射波が高周波電源装置6側に戻る。しかし、高周波電源装置6に設けられたフィルタは、主となる第2周波数に対する高調波成分を除去するローパスフィルタであるので、第1周波数の周波数成分を除去できる。そのために、第2の高周波電源装置6側は、第1の高周波電源装置10から出力する第1高周波電力の影響を殆ど受けない。
【0021】
このように、出力周波数の異なる複数の高周波電源装置が、1つの負荷5に高周波電力を供給しているときには、高い出力周波数の方の高周波電源装置が低い出力周波数の高周波電源装置の影響を受けて反射波が発生する。
【0022】
(4)周波数混合作用による反射波について
上述した各種の周波数が、周波数混合作用によって新しい周波数成分を同時発生させて、別の周波数の反射波が発生する。
【0023】
(5)反射波に対する保護について
上述したように、各種の反射波が発生するが、反射波が発生すると、伝送線路上で進行波と反射波が合成されて定在波が発生する。このとき、反射波が大きく、定在波のレベルの高い状態で増幅部11に印加されると、増幅部11内の増幅素子(例えば、FET、トランジスタ)の最大定格(電力、電圧、電流のいずれか)を超えて、増幅素子が破損する恐れがある。
【0024】
そのため、増幅部11内の増幅素子を保護するために、反射波が発生した場合には、出力電力制御部19において、反射波のレベルに応じた出力制御を高速で行い、進行波と反射波との合成値を低減させて、結果的に、増幅素子の最大定格を超えないように制御している。すなわち、反射波のレベルに応じて、増幅部11の出力電力を抑制する制御を行う。
例えば、進行波電力演算部16において演算された進行波電力値Pfに、反射波電力演算部17において演算された反射波電力値Prを加算した電力値が、所定値を超えた場合には、増幅部11内の増幅素子を保護するために、所定値を超えた電力値に応じて、増幅部11の出力を低下させる制御が行われる。すなわち、出力電力制御部19において、増幅部11の出力を抑制する制御が行なわれる。
【0025】
したがって、出力電力制御部19は、増幅部11の出力を高周波電力の出力電力設定値Psetにしようとする機能、および、増幅部11内の増幅素子を保護するために、反射波のレベルに応じて、増幅部11の出力を抑制する機能の2つの機能を有する。
【特許文献1】特開2003−143861号公報
【特許文献2】特開2002−252207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従来技術のように、増幅部11と方向性結合器13との間にローパスフィルタを設けると、高調波による反射波を除去できる。そのため、増幅部11を反射波から保護するためには、ローパスフィルタ12を通り抜けて増幅部11に到達する反射波に対して保護をすればよいと考えることもできる。そこで、方向性結合器13の反射波側の出力段に、ローパスフィルタ12と同様のローパスフィルタを設け、そのローパスフィルタの出力レベルに応じて、増幅部11の保護をすればよいと考えることもできる。なお、方向性結合器13の反射波側の出力段に、同様のローパスフィルタを設けた文献としては、例えば、特許文献2がある。
【0027】
しかし、上述したように、反射波は、第1周波数および第1周波数の周辺だけでなく、高調波の周波数を含めた広い範囲の周波数の反射波が発生する。そのため、もし、増幅部11の出力側にあるローパスフィルタ12に異常が生じて、フィルタの機能が失われた場合、高調波による反射波が増幅部11に影響を及ぼしてしまう。
【0028】
また、ローパスフィルタは、基本的には、周波数が高くなるほど減衰率が高くなるが、図6に示すように、周波数が高くなる過程において減衰率が一旦高くなる場合があるので、周波数によっては、期待する減衰率が得られないことがある。そのため、増幅部11と方向性結合器13との間にローパスフィルタが設けられていても、高調波による反射波が大きい場合は、増幅部11に影響を及ぼす可能性がある。
【0029】
したがって、増幅部11の保護としては、高調波の周波数を含めた広い範囲の周波数の反射波を対象とした方が好ましい。そこで、方向性結合器13の反射波側の出力段に、同様のローパスフィルタを設けない構成において、方向性結合器13の出力に応じた保護を行う場合について、以下に示す。
【0030】
方向性結合器13は、周波数振幅特性に応じて、進行波検出信号および反射波検出信号を出力する。基本周波数周辺では、方向性が確保されているため、基本周波数の反射波は、進行波側での検出は抑えられる。また、基本周波数の進行波は、反射波側での検出は抑えられる。
【0031】
ところが、方向性結合器13(例えば、C−M方向性結合器13)は、一般に、一定の周波数を超えたあたりから方向性信号分離度、結合度は劣化する。そのため、高調波のような基本周波数よりも高い周波数成分では、進行波、反射波とも、実際のレベルよりも大きなレベルで検出されてしまう。例えば、基本周波数に比べて20dB結合度が劣化した周波数では、実際のレベルよりも電力換算で100倍大きなレベルで検出されてしまう。また、結合度が劣化すると、同時に方向性も急激に劣化するため、反射波が進行波側で検出される度合いが増し、同様に、進行波が反射波側で検出される度合いが増して、検出精度が劣化する。
【0032】
図7は、方向性結合器13の反射波側出力の周波数振幅特性の一例を示す図である。図7において、「A」で示した波形は、反射波側の出力の反射波検出特性を示すものであり、「B」で示した波形は、方向性結合器13の反射波側の出力の進行波検出特性を示すものである。なお、縦軸の振幅は対数表現にしている。
このように、基本周波数付近では、方向性結合器13の反射波側で検出される進行波成分が少ないので、反射波が精度良く検出できる。しかし、基本周波数よりも周波数が高くなると、結合度が劣化していき、反射波側の出力にも関わらず、進行波成分が検出されるようになる。そして、さらに周波数が高くなると、反射波、進行波とも、実際のレベルよりも大きなレベルで検出されてしまうようになる。そのため、方向性結合器13の反射波側出力は、「A」と「B」とが合成された「C」で示した波形のようになる。なお、「C」で示した波形は、図面を簡略化するために、多少スムージングして図示している。
【0033】
反射波検出信号は、前述のように、主な役割の一つとして、増幅素子の最大定格を保護する制御のために用いられる。このため、方向性結合器13が上述したような周波数振幅特性を有していると、負荷側で発生した多種の反射波に基づいて出力制御がされた場合に、適切な高周波電力の出力値よりも、出力を抑制する方向で制御されることになる。その結果、増幅素子の最大定格に対して、まだ十分に余裕があるにも関わらず、必要以上に出力を抑制してしまう現象が生じてしまうという問題があった。
【0034】
例えば、上記で例示したような、実際のレベルよりも電力換算で100倍大きなレベルで検出されてしまう場合で考えると、実際には、電力換算で10[W]の反射波が発生している場合であっても、1,000[W]の反射波として検出される場合がある。この場合は、1,000[W]の反射波が発生しているとして、抑制方向に出力制御が行われるので、増幅部11の出力は、適切な出力値よりも小さくなってしまう。
【0035】
本発明は、上記事情のもとで考え出されたものであって、基本周波数よりも高い周波数領域の反射波を検出する場合であっても、反射波の検出レベルを、実際のレベルに近づけることによって、反射波が発生しても、適切なレベルで出力制御を行う高周波電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0036】
第1の発明によって提供される高周波電源装置は、
高周波電力の供給源となる高周波出力手段を備え、負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置において、
反射波に関する検出信号を出力する反射波検出手段と、
前記反射波検出手段によって検出された反射波に関する検出信号の周波数振幅特性と逆特性を有する特性変換手段と、
前記反射波検出手段から出力され前記特性変換手段で周波数振幅特性を変換した反射波に関する信号を検波する検波手段と、
前記検波手段の出力に基づいて反射波電力値を演算する反射波電力演算手段と、
前記反射波電力演算手段で演算された反射波電力値に応じて、前記高周波出力手段の出力を抑制する制御を行う出力制御手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0037】
第2の発明によって提供される高周波電源装置は、
前記特性変換手段が、パッシブ型の高周波フィルタであることを特徴としている。
【0038】
第3の発明によって提供される高周波電源装置は、
前記反射波検出手段が、方向性結合器であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、高い周波数領域の反射波を検出する場合であっても、反射波の検出レベルを、実際のレベルに近づけることができる。それにより、反射波が発生しても、適切なレベルで高周波電力の出力制御を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の詳細を図面を参照して説明する。
【0041】
図1は、本発明に係る高周波電源装置1の構成を示すブロック図である。
高周波電源装置1は、図1に示すように、増幅部11、ローパスフィルタ12、方向性結合器13、進行波側の検波部14、反射波側の検波部15、進行波電力演算部16、反射波電力演算部17、出力電力設定部18、出力電力制御部19および振幅特性変換部20を備えている。そして、増幅部11において増幅された高周波電力は、ローパスフィルタ12、方向性結合器14を介して負荷5に供給される。この図1に示した構成のうち、振幅特性変換部20以外は、図5に示した従来の高周波電源装置10と同様であるので、説明を省略する。
また、従来の高周波電源装置10と同様に、第1の高周波電源装置1から出力する第1の高周波電力を第1高周波電力とし、第1の高周波電源装置の出力周波数を第1周波数f1とし、第1周波数の周期をt1とする。
【0042】
なお、増幅部11は、本発明の高周波出力手段の一例であり、方向性結合器14は、本発明の反射波検出手段の一例であり、反射波側の検波部15は、本発明の検波手段の一例であり、反射波電力演算部17は、本発明の反射波電力演算手段の一例であり、出力電力制御部19は、本発明の出力制御手段の一例であり、振幅特性変換部20は、本発明の特性変換手段の一例である。
【0043】
振幅特性変換部20は、方向性結合器13と反射波側の検波部15との間に設けられた高周波フィルタであり、方向性結合器13から出力される反射波検出信号の特性を変換するものである。振幅特性変換部20の出力は、反射波側の検波部15に入力される。
【0044】
図2は、振幅特性変換部20の周波数振幅特性の一例を示す図である。この図2に示すように、振幅特性変換部20は、方向性結合器13の周波数振幅特性とは逆の特性を有する。なお、図2も図7と同様に、縦軸の振幅は対数表現にしている。また、振幅特性変換部20は、コンデンサやインダクタ等の受動素子で構成されており、いわゆる、パッシブ型の高周波フィルタとなっている。振幅特性変換部20に用いられる素子の定数は、方向性結合器13の周波数振幅特性を測定またはシミュレーションし、その特性と逆の特性になるように、回路定数を定めればよい。
【0045】
前述したように、方向性結合器13で検出される反射波は周波数が高くなると、実際よりも大きなレベルで検出されてしまう。そのため、方向性結合器13の周波数振幅特性とは逆の周波数振幅特性を有する振幅特性変換部20を介して、方向性結合器13の反射波検出信号を出力させると、反射波検出信号を実際のレベルに近づけることができる。
【0046】
図3は、振幅特性変換部20の出力の一例を示す図である。なお、図3も図7と同様に、縦軸の振幅は対数表現にしている。
この図3に示すように、振幅特性変換部20を介して、方向性結合器13の反射波検出信号を出力させると、高い周波数領域において、反射波検出信号のレベルが平坦化されるので、高い周波数領域の反射波を検出する場合であっても、反射波の検出レベルを実際のレベルに近づけることができる。その後は、上述したように、反射波側の検波部15で検波し、反射波電力演算部17で反射波電力値Prを演算し、その出力を出力電力制御部19が入力する。それにより、反射波が発生しても、適切なレベルで高周波電力の出力制御を行うことが可能となる。すなわち、出力電力制御部19は、方向性結合器13で検出され、振幅特性変換部20で周波数振幅特性を変換した反射波検出信号に応じて、増幅部11の出力を抑制する制御を行う機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明に係る高周波電源装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、振幅特性変換部20の周波数振幅特性の一例を示す図である。
【図3】図3は、振幅特性変換部20の出力の一例を示す図である。
【図4】図4は、異なる周波数の高周波電力を用いるプラズマ処理システムの接続関係を示すブロック図である。
【図5】図5は、一般的な高周波電源装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】図6は、ローパスフィルタの特性の一例である。
【図7】図7は、方向性結合器13の反射波側出力の周波数振幅特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 本発明に係る高周波電源装置
2 伝送線路2
3 第1の整合器
4 負荷接続部
5 負荷5
6 第2の高周波電源装置
7 伝送線路2
8 第1の整合器
9 負荷接続部
11 直流電源部
11 増幅部
12 ローパスフィルタ
13 方向性結合器
14 進行波側の検波部
15 反射波側の検波部
16 進行波電力演算部
17 反射波電力演算部
18 出力電力設定部
19 出力電力制御部
20 振幅特性変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力の供給源となる高周波出力手段を備え、負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置において、
反射波に関する検出信号を出力する反射波検出手段と、
前記反射波検出手段によって検出された反射波に関する検出信号の周波数振幅特性と逆特性を有する特性変換手段と、
前記反射波検出手段から出力され前記特性変換手段で周波数振幅特性を変換した反射波に関する信号を検波する検波手段と、
前記検波手段の出力に基づいて反射波電力値を演算する反射波電力演算手段と、
前記反射波電力演算手段で演算された反射波電力値に応じて、前記高周波出力手段の出力を抑制する制御を行う出力制御手段と、
を備えたことを特徴とする高周波電源装置。
【請求項2】
前記特性変換手段は、パッシブ型の高周波フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記反射波検出手段は、方向性結合器であることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−243670(P2008−243670A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84239(P2007−84239)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】