説明

高表面積炭素及びその製造方法

本発明は、高表面積多孔質炭素材料及びこの材料の製造方法を提供する。特に、前記炭素材料は、バイオマスに由来し、材料の改良された吸着およびガス貯蔵能力を増進する大きい中間細孔及び微小細孔表面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高表面積多孔質炭素材料、特にバイオマス系活性炭材料に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着、液体浄化、気体浄化、気体貯蔵及びモノリス構造物用の、一般的に活性炭と呼ばれる炭素材料は、多くの源泉から広く入手することができる。有用な炭素材料は、高い表面積及び最適な直径を有する高密度の細孔を有する。表1に、吸着に関して臨界的であると考えられる直径(即ち、それよりも小さいと分子が細孔の中にフィットしない細孔直径)を列挙する。観察及び理論は、分子を吸着するための最適直径は、水素、アセチレン及びメタンについて、それぞれ6Å、6Å及び11Åの最適細孔直径であり、臨界直径の約2.7倍である点で一致する傾向がある。
【表1】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化石燃料由来であろうとバイオマス由来であろうと、利用可能な炭素が、2000m2/gを超える表面積を有することはまれであり、環境温度及び500psigの圧力で、天然ガス(メタン)中で自重の>20%を吸着し貯蔵することができないような、細孔直径及び細孔体積を有することが一般的である。従って、天然ガス及び他のエネルギーキャリヤーの高い貯蔵容量を増進する範囲内の直径を有する高い表面積および高体積の細孔を有する、好ましくはバイオマス由来の、従って再生可能である炭素材料についての要求が存在する。これらの特性を有する活性炭は、広範囲の用途、例えば、車両の燃料タンク、バッテリー、電気キャパシタ、分離及び精製装置並びに触媒に於いて有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の種々の態様の中で、一つの態様は、約50重量%よりも多いバイオマス由来の炭素及び約1500m2/gよりも大きいDFT表面積を含む活性炭を提供する。該活性炭は、また、直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の約0.6cc/gよりも大きい細孔体積、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔の約0.4cc/gよりも大きい細孔体積、及び、細孔体積の少なくとも約20%が、直径が約20Å〜約50Åの範囲である細孔を含むような細孔分布を含む。
【0005】
本発明の他の態様は、約2850m2/gよりも大きいDFT表面積、及び、直径が約10Åよりも小さい細孔の約0.5cc/gよりも大きい細孔体積を含む、バイオマス由来の活性炭を包含する。
【0006】
本発明の更なる態様は、約50重量%よりも多いバイオマス由来の炭素及び約1500m2/gよりも大きいDFT表面積を含む活性炭を提供する。該活性炭は、また、約0.25よりも大きい10−20多孔度、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔の約0.4cc/gよりも大きい細孔体積、並びに、細孔体積の少なくとも約30%が、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔を含むような細孔分布を含む。10−20多孔度は、cc/gでの、10Å〜20Åの直径を有する細孔の体積に、g/ccでの、見掛け密度を掛けたものとして定義される。
【0007】
本発明の更に他の態様は、活性炭の製造方法を包含する。前記方法は、約40重量%よりも多くの炭素を含有するバイオマス供給原料を、約350℃〜約850℃の温度で炭化して、約900m2/gよりも大きいDFT表面積、及び、直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の約1.0cc/gよりも大きい細孔体積を有する炭を形成することを含む。前記方法は、更に、前記炭を、約9よりも大きいpHを有するアルカリ性材料の存在下で、約600℃〜約1000℃の温度で活性化して、約1700m2/gよりも大きいDFT表面積、1.1cc/gよりも大きい全細孔体積、及び、細孔体積の少なくとも20%が、直径が約20Å〜約50Åの範囲である細孔を含むような細孔分布を有する活性炭を形成することを含む。
【0008】
本発明の他の態様及び特徴については、ある部分は明らかであり、ある部分は以下に指摘されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、好ましい炭素合成方法に於ける主要な工程を示すブロックフローダイヤグラムである。活性炭生成物の性能に影響を与え得る重要なパラメーターを、右に列挙する。
【図2】図2は、電気デバイスに於ける使用を意図されたモノリス材料を製造するために、グラファイト含有量を増加するように設計された代替合成経路を示すブロックフローダイヤグラムである。
【図3】図3は、塩基活性化工程に於いて異なる比率の塩基処理で製造された活性炭の、体積/体積メタン貯蔵等温線を示す。吸収は20℃で行われる。
【図4】図4は、塩基活性化工程に於いて異なる比率の塩基処理で製造された活性炭の、重量メタン貯蔵等温線を示す。吸収は20℃で行われる。
【図5】図5は、塩基活性化工程に於いて異なる比率の塩基処理で製造された活性炭の、窒素等温線を示す。吸収は77Kで行われる。
【図6】図6は、細孔体積及び表面積がメタン吸着に及ぼす影響のグラフ図である。
【図7】図7は、圧力低下を克服するための二つの異なるチャネル選択肢を示す。
【図8】図8は、異なる温度の塩基活性化で製造された活性炭の窒素等温線を示す。吸収は77Kで行われる。
【図9】図9は、20℃での高性能重量メタン貯蔵等温線を示し、本発明の好ましい実施形態が、目標が最小重量メタンタンクである場合に、大きい微小細孔体積及び大きい中間細孔体積を有する炭素(例えば、Ba5.32、表7)であることを示す。
【図10】図10は、20℃での高性能体積メタン貯蔵等温線を示し、本発明の好ましい実施形態が、目標が最小体積メタンタンクである場合に、大きい微小細孔体積及び小さい中間細孔体積を有する炭素(例えば、S−33/k、表7)であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
多くの用途に於いて優れた性能利点を有するような、特に高い中間細孔体積及び高い表面積を有する活性炭材料が見出された。或る種の好ましい実施形態に於いて、該炭素材料は、1500m2/gを超えるDFT表面積を有する。特に、本発明の或る種の活性炭は、直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の1cc/gを超える細孔体積を有する。炭素材料のこの特徴は、表2に要約されるような用途−特異的装置に於ける優れた性能をもたらす。他の実施形態に於いて、該活性炭は、2850m2/gを超えるDFT表面積を有し、これらの炭素は、天然ガス(メタン)貯蔵、水素貯蔵、液体からの可溶性金属の除去形態及び気体の浄化を含む用途に於いて、優れた性能を提供する。
【0011】
これらの活性炭材料の製造に於いては、多段階の方法が使用される。該方法には、望ましい初期微小細孔及び中間細孔体積を製造する第一炭化工程と、中間細孔及び微小細孔体積の有用な分布を維持して高表面積を製造する第二工程と、が含まれる。ブリケット化工程は、活性炭を高密度化し、気体貯蔵、電気デバイス及び流体処理カートリッジなどの用途に於いて有用であるモノリス状材料を提供する。
【表2】

I.中間細孔材料
【0012】
本発明の一つの態様は、多孔質であり、50重量%よりも多い炭素を含有する、バイオマス系活性炭を提供する。更に、該活性炭は、吸着を改良する下記の特性、即ち、1500m2/gよりも大きいDFT表面積、10Å〜50Åの直径を有する細孔の約0.6cc/gよりも大きい細孔体積、10Å〜20Åの直径を有する細孔の約0.4cc/gよりも大きい細孔体積、及び、細孔体積の少なくとも約20%が、20Å〜50Åの直径を有する細孔を含むような細孔分布を有する。更に好ましくは、該活性炭は、直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の約0.8cc/gよりも大きい細孔体積を有する。なお更に好ましくは、該活性炭は、直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の約1.1cc/gよりも大きい細孔体積を有する。
【0013】
これらの特性は、20℃及び500psigの天然ガス圧力で、天然ガス中で自重の15%よりも多くを吸着する能力を含む、良好な天然ガス(メタン)吸着を提供する。典型的には、微小細孔体積は0.32〜1.2cc/gであり、中間細孔体積は0.25cc/gよりも大きい。
【0014】
或る種の用途のための材料は、下記のように、表面積と細孔体積との臨界的組合せに一層依存性である。
●10Å〜50Åの直径を有する細孔の1.0cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、メタン貯蔵タンクに於いて使用することができる。
●10Åよりも小さい直径を有する細孔の0.5cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、水素貯蔵タンクに於いて使用することができる。好ましくは、該活性炭は、少なくとも1重量%の、60よりも小さい原子量の金属を含有する。水素貯蔵タンクの活性炭は、1%よりも大きい重量パーセンテージで共吸着剤化合物(この化合物は、7.5Å〜12Åの臨界直径を有する)を含有することができる。
●10Å〜50Åの直径を有する細孔の1.0cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、メタンを他の気体から分離する分離器内で使用することができる。
●10Å〜50Åの直径を有する細孔の1.2cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、揮発性有機化合物吸着剤に於いて使用することができる。
●好ましい活性炭は、水から有機化合物を除去するための水処理吸着剤として使用することができる。
【0015】
或る種の他の用途のための材料は、下記のように、表面積に一層依存性である。
●10Å〜50Åの直径を有する細孔の1.0cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、バッテリーに於いて使用することができる。このバッテリーに於ける活性炭は、更に、5重量%よりも多くの、リチウム、ナトリウム、鉛、コバルト、鉄及びマンガンからなる群から選択された金属を含有していてよい。
●更に、0.1重量%よりも多くの、白金、ルテニウム、パラジウム、銅、クロム、コバルト、銀、金及びバナジウムからなる群から選択された金属を含有している好ましい活性炭は、触媒担体として使用することができる。
●好ましい活性炭は、燃料電池内の触媒担体として使用することができる。
●10Å〜50Åの直径を有する細孔の1.0cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、イオン交換材料として使用することができる。
●好ましい活性炭は、水から金属を除去するための水処理吸着剤として使用することができる。ある種の水処理用途に於いて、活性炭は、水中の標的とする物質の吸着を改良するために、2重量%より多くの金属を含有することができる。
II.微小細孔材料
【0016】
本発明の他の態様は、非常に高い比表面積を有する活性炭材料を提供する。これらのバイオマス系活性炭材料は、多孔質であり、50重量%よりも多くの炭素を含有し、改良された吸着特性を有する。これらの活性炭は、下記の特性、即ち、2850m2/gよりも大きい窒素DFT表面積及び10Åよりも小さい直径を有する細孔の0.5cc/gよりも大きい細孔体積を有する。更に好ましくは、この材料は、10Åよりも小さい直径範囲内の細孔の0.50cc/gよりも大きい細孔体積を有する活性炭である。なお更に好ましくは、この材料は、10Åよりも小さい直径範囲内の細孔の0.70cc/gよりも大きい細孔体積を有する活性炭である。更に好ましくは、このDFT表面積は3100m2/gよりも大きい。
【0017】
或る種の微小細孔用途のための材料は、下記のように、表面積と細孔体積との臨界的組合せに一層依存性である。
●約10Åよりも小さい直径を有する細孔の約0.50cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、モレキュラーシーブに於いて使用することができる。
●約10Å〜約15Åの直径を有する細孔の約0.7cc/gよりも大きい細孔体積を有する好ましい活性炭は、アセチレン貯蔵タンクに於いて使用することができる。
●約2500m2/gよりも大きいBET表面積を有する好ましい活性炭は、電気キャパシタに於いて使用することができる。
III.体積基準の貯蔵材料
【0018】
本発明の更に他の態様は、体積当たり基準の貯蔵を最大にする材料を包含する。好ましい活性炭は、約50重量%よりも多い最近のバイオマス由来の炭素、及び約1500m2/gよりも大きいDFT表面積;10−20多孔度(これは、cc/gでの、10Å〜20Åの直径を有する細孔の体積に、g/ccでの、見掛け密度を掛けたものとして定義される)を含み、ここで、10−20多孔度は約0.25よりも大きい。該活性炭は、更に、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔の約0.4cc/gよりも大きい細孔体積、及び、細孔体積の少なくとも約30%が、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔を含むような細孔分布を含む。更に好ましくは、該活性炭は、10−20多孔度(これは、cc/gでの、10Å〜20Åの直径を有する細孔の体積に、g/ccでの、見掛け密度を掛けたものとして定義される)(ここで、10−20多孔度は約0.3よりも大きい)、及び、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔の約0.5cc/gよりも大きい細孔体積を有する。約10重量%よりも大きい濃度で存在する金属は、メタン貯蔵タンク、水素貯蔵タンク、アセチレン貯蔵タンク、キャパシタ、バッテリー及びモレキュラーシーブなどの用途に於いて、性能を増強することができる。
IV.活性炭の製造方法
【0019】
本発明の更なる態様は、活性炭の製造方法を提供する。図1は、本発明の好ましい方法をブロックフローで示す。この実施形態は、バイオマスの調製、酸浸漬、炭化、及び塩基の存在下での炭の活性化の連続工程を含む。多数の用途のために、活性炭を洗浄して、塩基を除去するために、水を使用することができる。必要に応じて、洗浄された塩基は、リサイクル及び再使用のために回収することができる。必要に応じて、リン酸を、リサイクルのために回収することができる。必要に応じて、活性炭をブリケットに圧縮することができる。図2は、電気デバイスに於いて使用するための、より高度のグラファイト材料を製造するために、より高い温度の塩基活性化による代替実施形態を示す。
【0020】
一般的に、この方法は、多孔質で、50重量%よりも多い最近のバイオマス由来の炭素を含有する活性炭を製造する。この方法は、40重量%よりも多くの炭素を含有するバイオマス供給原料を、約350℃〜約850℃の温度で炭化して、約900m2/gよりも大きいDFT表面積及び直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の約1.0cc/gよりも大きい細孔体積を有する炭を製造することを含む。この方法は、更に、該炭を、約9よりも大きいpHを有するアルカリ性材料の存在下で、約600℃〜約1000℃の温度で活性化して、約1700m2/gよりも大きいDFT表面積、1.1cc/gよりも大きい全細孔体積、及び、細孔体積の少なくとも20%が、直径が約20Å〜約50Åの範囲である細孔を含むような細孔分布を有する活性炭を製造することを含む。
【0021】
好ましくは、該塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化ベリリウムからなる群から選択された金属水酸化物であり、該バイオマスは、トウモロコシの穂軸、木材製品、オリーブの種、モモの種、ココナツの殻及びナッツの殻からなる群から選択され、該炭は、バイオマス及びリン酸の混合物(ここで、リン酸とバイオマスとの質量比は、0.5:1〜1:1である)から製造され、該活性炭は、該炭及び金属水酸化物の混合物(ここで、金属水酸化物とバイオマスとの質量比は、1:1〜5:1である)から製造される。
【0022】
製造手順は、表3に要約したような工程で、バイオマスを予備処理すること及びバイオマスを酸浸漬することで開始する。一般的に、より小さい粒子サイズは、より低い温度で浸漬を容易にし、酸が粒子の中心に到達することを確実にする。リン酸(H3PO4)は、他の酸に比較して、バイオマスのセルロース及びリグニン含有物とよく反応する。より高い酸含有量は、一般的に、バイオマスのリグノ−セルロース系物質のより良いリン酸化をもたらす。しかしながら、非常に高い値は、過活性化及び微孔性の損失になり得る。より低い浸漬温度は、一般的に、リグニン及びヘミセルロースへの酸の攻撃が、過剰でなく、従って、リン酸化及び架橋の実際の温度に到達する前の構造的損傷が最小であることを確実にする。より高い温度は、正しい温度に到達する前に、バイオマスに於ける構造的変化を起こし得る。12時間の浸漬時間が、一般的に、酸がバイオマスの内部に均一に到達することを確実にする。
【0023】
バイオマスを炭化するための好ましい手段は、トウモロコシの穂軸、果実の種及び木材を含む群からバイオマスを選択すること、粒子サイズを5〜100メッシュまで減少させること、水中の50〜70%の濃度でリン酸を使用すること、及び酸をバイオマスに対して約0.8:1〜約1.3:1の質量比で混合すること、このバイオマス−酸混合物を30〜75℃で8〜14時間浸漬すること、並びに(酸から)過剰の水を170℃で約2時間蒸発させることを含む。
【0024】
バイオマスを炭化させるための代表的な手段は、バイオマスとしてトウモロコシの穂軸を選択すること、粒子サイズを約20〜30メッシュまで減少させること、水中の約70%の濃度でリン酸を使用すること、及びリン酸をバイオマスに対して約0.9:1〜約1:1の質量比で混合すること、このバイオマス−酸混合物を約30℃で約12時間浸漬すること、並びに(酸から)過剰の水を170℃で約2時間蒸発させることを含む。
【表3】

【0025】
炭の炭化及び洗浄のための条件を、表4に要約する。加熱速度は遅いが、全温度範囲に亘る必要はない。炭化時間は、最終温度での時間の期間である。炭化は、約300℃よりも高い温度での昇温工程の間でも起こる。好ましい粒子サイズは、低温度での浸漬を容易にし、酸が粒子の中心に到達することを確実にする粒子サイズに関係している。
【0026】
好ましい炭化条件は、2℃/分よりも小さい加熱速度で炭化温度まで加熱すること及び400〜600℃の温度で0.5〜3時間炭化させることである。代表的な条件は、約0.5℃/分の速度で炭化温度まで加熱すること及び約450℃の温度で1.5時間炭化させることである。
【表4】

【0027】
塩基を添加すること、塩基活性化及び塩基を除去するために洗浄することのための条件を、表5に要約する。好ましい塩基は、それがしばしば、他の塩基よりも小さい直径を有する細孔を作るので、KOHである。より小さい粒子サイズは、KOHと炭のより良い反応を可能にする。
【0028】
塩基を添加すること及び活性化のための好ましい条件は、塩基を、900m2/gよりも大きい表面積及び0.3cc/gよりも大きい中間細孔体積を有する炭に添加すること(ここで、塩基は、塩基対炭の質量比が、約1.5:1〜約5:1であるように、KOH、NaOH及びLiOHからなる群から選択される)である。活性化は、好ましくは、酸素の不存在下で、例えば、窒素パージして、700〜900℃で、約0.1〜約3時間実施される。全てではないが、殆どの用途のために、環境温度まで冷却した後、活性炭を水で、洗浄水が7.0よりも低いpHを有するまで洗浄する。
【0029】
代表的な条件は、約2.5:1〜約4:1の質量比でKOHを使用すること、及び約800℃で酸素の不存在下で約1時間活性化することを含む。
【表5】

【0030】
ある種の実施形態に於いて、活性炭は、更に、ブリケットに加工することができる。ブリケット化のための好ましい条件を、表6に要約する。最適量のバインダーは、十分な圧縮強度及び摩耗強度をモノリスに与え、より高い密度を助長する。より高いバインダー添加は、細孔を塞ぎ、微小細孔体積を減少し得る。好ましいブリケット化温度は、バインダーがガラス転移相にまで到達することを可能にし、より良い圧縮強度及び摩耗強度を有するモノリスを提供する。好ましい圧力は、高い片密度(見掛け密度)並びにより良い圧縮強度及び摩耗強度を有するモノリスをもたらす。16000psiよりも高い圧力も有効であり、ある場合には好ましいであろう。一部の細孔がバインダーによって閉塞され得る場合には、ブリケット内の細孔構造を開くために、圧縮時間及び高温での後処理が必要であろう。
【0031】
ブリケット化のための好ましい条件は、40〜100メッシュの活性炭粒子を約20〜40%のブリケットバインダー、例えば、ポリ塩化ビニリデン又は変性ダイズ油と混合することを含む。ブリケットバインダーとして使用するために、植物油、好ましくはダイズ油を変性するための好ましい方法は、植物油を増粘することである。好ましい増粘方法は、油を、約200℃〜約400℃の温度で、酸素の不存在下で、粘度が、少なくとも200cPであるが40000cP未満にまで増加するような適切な期間の時間、加熱することである。好ましくは、ブリケットは、約150〜180℃の温度で、約14000〜16000psiの圧力で、約1〜2時間プレスすることによって形成される。好ましい後処理熱分解は、約700〜900℃の温度で行われる。
【0032】
ブリケット化のための代表的な条件は、50〜100メッシュの活性炭粒子を約30%のブリケットバインダー、例えば、ポリ塩化ビニリデン又は変性ダイズ油と混合することを含む。ブリケットは、約175℃の温度で、約16000psiの圧力で、約990分間プレスし、次いで約750℃の温度で加熱することによって形成される。
【表6】

【0033】
電気化学用途のためのブリケットを製造するとき、より高いグラファイト含有量をもたらす活性化条件及び電気伝導性を有する又は増進するバインダーを使用することが好ましい。
【0034】
例えば、本発明の活性炭材料の用途には、メタン貯蔵(特に、ブリケット実施形態で)、水素貯蔵(特に、ブリケット実施形態で)、ごみ埋め立て地ガスからのメタンの精製、天然ガス井戸からのメタンの精製、化学プロセスからの放出のために処理されたガスからの揮発性有機化合物の吸着、液体合成の生成物からの触媒の吸着(ブリケット実施形態でのカートリッジの使用を含む)、金属及び酸触媒用の担体、並びにバッテリー及び/又は燃料電池内で使用するための電極アセンブリが含まれる。例えば、実施例5は、水溶液から可溶性金属を除去するための用途を示す。
定義
【0035】
本発明の理解を容易にするために、幾つかの用語を下記に定義する。
【0036】
本明細書中に使用される「活性炭」は、表面積を増加させるための第二熱処理方法(>300℃)を受けた炭を指す。
【0037】
「BET表面積」は、窒素吸着等温線のブルナウアー−エメット−テラー(BET)分析から計算される。
【0038】
本明細書中に使用される用語「バイオマス」は、最近の有機物質(ここで、「最近の」は、一般的に、それが、過去10年以内に光合成の直接的又は間接的結果として産生されたことを意味する)を指す。炭素材料が、バイオマス由来であるか又は化石燃料由来であるかどうかを同定するために、炭素14年代測定法を使用することができる。
【0039】
語句「バイオマス系材料」は、人工的な化学的又は熱的方法によってバイオマスから製造された材料を指す。
【0040】
本明細書中に使用される用語「炭」は、約900m2/gよりも大きいDFT表面積を有する材料を製造するために、一度熱処理(>300℃)されたバイオマスを指す。
【0041】
「DFT表面積」は、窒素吸着等温線の密度関数理論(DFT)分析から計算される。
【0042】
本明細書中に使用される「中間細孔」は、約20Å〜約500Åの直径を有する細孔を指す。
【0043】
本明細書中に使用される「微小細孔」は、約20Åよりも小さい直径を有する細孔を指す。
【0044】
本明細書中に使用される用語「10−20多孔度」は、cc/gでの、10Å〜20Åの直径を有する細孔の体積に、g/ccでの、見掛け密度を掛けたものを指す。本明細書中に使用される用語「7.5−20多孔度」は、cc/gでの、7.5Å〜20Åの直径を有する細孔の体積に、g/ccでの、見掛け密度を掛けたものを指す。
【0045】
種々の変更が、本発明の範囲から逸脱することなく前記の材料及び方法に於いてなすことができ、前記の説明及び以下に示される実施例に含まれる全ての事は、例示として解釈され、限定する意味ではないことが意図される。
【実施例】
【0046】
下記の実施例は、本発明の種々の実施形態を示す。下記の結論は、本発明の実施形態に関して引き出すことができる。
●本発明の最良の性能を発揮するサンプルは、この規準に適合しないにもかかわらず良い性能を発揮したS−33/k以外は、1.8cc/gよりも大きい細孔体積を有していた。更に広く記載すると、好ましい材料は、1.2cc/gよりも大きい細孔体積を有していた。換言すると、好ましい材料は、直径が約7.5Å〜約50Åの範囲内であった細孔の約1.0cc/gを超える細孔体積を有していた。
●メタン表面積は、7.5Åよりも大きく、50(又は40)Åよりも小さい細孔体積と相関関係がある。
●メタン吸収は、7.5Åよりも小さい細孔体積と相関関係がない。
●500psigよりも高い圧力でのメタン吸収(500psigでの過剰吸着で正の勾配)は、20〜40Åの直径範囲内の細孔によって増強される。これは、20〜30Åの直径範囲内の実質的細孔体積を有する本発明の実施形態の固有の利点である。
●水素吸収は、10Åよりも小さい直径を有する細孔に於ける細孔体積と相関関係がある。
●メタン貯蔵のための、最適なKOH:炭比は、約2.5:1〜4.0:1である。
●活性化温度及びKOHの僅かに低下した組合せは、より多くの<7.5Åの細孔及び非常に高い表面積をもたらす。新規な材料は、<7.5Åの範囲内の>0.5cc/gの細孔体積で作られた。この処理の解釈は、より高い温度によって、KOHが、10Åよりも大きい値まで細孔直径を増加させ続けることである。約10Å付近の直径を有する細孔の体積を最大にするために、活性化温度、KOH濃度及び活性化時間の最適値が存在する。これらの最適値は、サンプルS56及びBa5.1を製造するために使用されたもの(表7参照)に近い。
●50℃ではなくて80℃での浸漬は、より大きい密度をもたらす。密度は、炭化する前の、75℃〜100℃の温度での少なくとも2時間の浸漬によって増加する傾向がある。
●浸漬に於けるより高い酸濃度は、より大きい密度をもたらす。
●キャパシタ機能性は、高い表面積と相関関係がある。
[実施例1]好ましい炭素サンプルの製造及びキャラクタリゼーション
【0047】
一連の実験を、最終の炭素細孔体積、細孔サイズ分布及び表面積への、異なるパラメーター(例えば、リン酸処理及びKOH活性化)の影響を示すために実施した。明瞭性の目的のために、塩基(好ましくはKOH)活性化前の炭素材料を炭と呼び、塩基活性化後の炭素材料を活性炭と呼ぶ。
【0048】
乾燥し粉砕したトウモロコシの穂軸を、0〜70体積%の範囲内の異なった濃度のリン酸と、1:1.5(トウモロコシの穂軸のグラム:リン酸/水溶液のグラム)の重量比で混合した。これは、水無しの基準で酸質量対トウモロコシの穂軸質量のほぼ0.8:1の比である。トウモロコシの穂軸を、異なった温度でリン酸の中に約8〜10時間浸漬した。その後、この混合物を165〜175℃で2時間加熱することによって、過剰のリン酸を除去した。次いで、浸漬したトウモロコシの穂軸を、窒素雰囲気中で、400〜800℃の範囲内の一定温度で1時間炭化して、炭を形成させた。炭化の後、炭を、流出液が約7のpHを有するまで、水で十分に洗浄して、過剰の酸を除去した。
【0049】
より高い細孔体積及びより高い表面積を得るために、リン酸によって得られた炭を更に処理した。該炭を、様々な量のKOHフレーク及び水と混合して、スラリーを形成させた。次いで、このスラリーを、不活性雰囲気中で(例えば、窒素下で)700〜900℃の温度に1時間加熱した。次いで、最終生成物を、流出液が約7のpHを有するまで、水で十分に洗浄して、反応の間に形成されたカリウム固体を除去した。炭のKOH活性化によって、活性炭が形成された。
【0050】
製造された全ての炭/炭素のキャラクタリゼーションを、QuantachromeからのAutosorb 1−C機器を使用して、77KでのN2吸着によって行った。等温線の分析は、異なった情報を得るために種々の方法を適用することによって実施した。BET式を使用して、N2等温線からBET表面積を得た。T−法を使用して、P/P0=0.0315まで吸着されたN2の体積から、微小細孔体積及び中間細孔分画の外部表面積を見出した。DFT法を使用して、細孔サイズの関数としての表面積を推定し、他方、BET法を使用して、全表面積を報告した。他の方法で報告しない限り、これらのパラメーターを、活性炭の製造に於いて使用した。
【0051】
表7に、本発明の幾つかの実施形態の製造、キャラクタリゼーション及び性能を要約する。メタン貯蔵のために、好ましいサンプルは、170g/kg(メタンのグラム/活性炭のキログラム)よりも大きい過剰のメタン吸着を有していた。更に好ましいサンプルは、また、160V/Vよりも大きい体積/体積メタン貯蔵容量を有していた。
【0052】
メタン吸収分析−体積が約10ccの円筒形圧力容器に、測定した質量の炭素を、最大限の約85%まで充填した。この容器を閉じ、140℃の温度で、約0.02バール絶対圧(真空)に4時間付した。真空に付されたことに起因する質量変化を測定し、容器内の炭素の質量を、この変化に基づいて減らした。次いで、この円筒を、メタンで20℃で500psigまで1時間加圧して、該圧力及び温度で平衡させた。真空状態から、これらの条件での平衡までの質量増加を測定した。[吸収されたメタンの質量−容器内の空いた空間内のメタンの質量]を、炭素の質量で割って、炭素の質量当たりのメタンの過剰の吸着を得た。
【表7】

a 過剰の吸着、mads,eは、吸着されたメタンの質量と等体積の吸着されていないメタンの質量との差を示す。過剰の吸着は、表面積にのみ依存し、表面が如何に強くメタンを吸着するかに依存する。即ち、過剰の吸着は、サンプルの細孔体積に依存しない。
b 貯蔵された量、mstは、細孔空間内に存在するメタンの全質量(吸着されたメタン+吸着されていないメタン)を示す。これは、過剰の吸着からmst/ms=mads,e/ms+(ρa-1−ρs-1)ρmethane(式中、msはサンプルの質量を示し、ρaはサンプルの見掛け密度fを示し、ρsはサンプルの骨格密度fを示し、ρmethaneは与えられた温度及び圧力でのバルクメタンの密度を示す)として計算した。重量貯蔵容量、mst/msは、見掛け密度、ρaが減少した場合に増加する。体積貯蔵容量、ρast/msは、ρaが減少した場合に減少する。
c 体積/体積貯蔵容量、V/Vは、サンプルの体積当たりの(ρa/ms)、25℃及び大気圧でのメタンの体積として表される、貯蔵された量、として計算した。
d 窒素吸着等温線のブルナウアー−エメット−テラー(BET)分析から計算した。
e 窒素吸着等温線の密度関数理論(DFT)分析から計算した。
f 見掛け密度、ρaは、細孔空間を含むサンプルの密度を示し、ρa=(Vpore/ms+ρs-1-1(式中、Vporeはサンプルの全細孔体積を示し、msはサンプルの質量を示し、ρsはサンプルの骨格密度(細孔空間なしのサンプルの密度)を示す)から計算した。
g 下限の3Åは、多孔度を評価するために使用される窒素の結果として意味される。機器のソフトウエアは、この値を、<7.5Åとして報告した。
h 10−20多孔度は、cc/gでの、10Å〜20Åの直径を有する細孔の体積に、g/ccでの、見掛け密度を掛けたものとして定義される。7.5−20多孔度は、cc/gでの、7.5Å〜20Åの直径を有する細孔の体積に、g/ccでの、見掛け密度を掛けたものとして定義される。
[実施例2]炭化工程でのパラメーター研究
【0053】
表8に、40〜60メッシュのトウモロコシの穂軸原料を使用して、リン酸によって炭化する際のパラメーター研究結果を要約する。
【0054】
C−シリーズは、リン酸濃度の影響を示し、ここで、リン酸のより高い濃度は、製造された炭のより高い表面積をもたらす。この炭化工程は、一貫して、少なくとも900m2/gのBET表面積を有する炭を製造する。
【0055】
ST−シリーズは、酸浸漬温度の影響を示す。80℃よりも高い浸漬温度は
BET表面積を劇的に減少させ、炭密度を増加させる。
【0056】
HTT−シリーズは、炭化温度の影響を示し、ここで、並はずれて高い炭化温度は、減少した微小細孔体積及び減少した表面積をもたらす。450℃付近の炭化温度は、一貫して、少なくとも900m2/gのBET表面積を有する炭を製造した。約450℃を超える炭化温度は、表面積及び微小細孔体積を減少させた。
【0057】
N−シリーズは、400、450及び500℃の温度の狭い範囲で、次のKOH活性化を伴って、炭化温度の影響を再評価する。工程パラメーターは、80%リン酸、酸対供給原料の1.5g/g比、80℃で24時間の浸漬、1.5℃/分での示された炭化温度までの加熱、示された温度での1.5時間の炭化、2g/gのKOH:炭比、最大オーブン速度で活性化温度までの加熱、790℃で1時間の活性化、一晩冷却及び真空吸引フィルター内で中性pHまでの水による洗浄を含んでいた。メタン吸収研究のための炭素の質量は、ほぼ一定の体積であり、より高い炭化温度は、より高い密度の炭素をもたらした。従って、過剰吸着(g/g)は400〜500℃範囲に亘ってほぼ一定であったけれども、V/V貯蔵容量は、温度が上昇すると共に増加した。
【0058】
RH−シリーズは、加熱速度の影響を示す。約0.5℃/分を超える炭化速度は、表面積及び微小細孔体積を減少させた。
【表8】

[実施例3]活性化工程のパラメーター研究
【0059】
表9に、KOHによる活性化に関するパラメーター研究結果を要約する。実施例1のデフォルト工程条件を適用する。
【0060】
KC−シリーズは、3000m2/gを超えるBET表面積を達成するために、2.0を超えるKOH:炭比をどのように使用できるかを示す。KOH:炭比が増加すると共に、密度が低下した。3.0よりも大きいKOH:炭比で、微小細孔体積が減少した。サンプルを800℃の温度で1時間活性化した。この活性化のために使用した炭を、50%リン酸に、50℃で8時間浸漬させ、450℃で炭化し、1℃/分で炭化温度まで加熱した。図3、4及び5は、吸着への圧力(メタン及び窒素)の影響を示す。
【0061】
Ba−シリーズは、メタン吸収を重視して、KOH:炭比を再評価する。表7に記載したものに加えて、製造条件には、20〜40メッシュのトウモロコシの穂軸供給原料の使用、24時間の浸漬時間、炭化温度までの1.5℃/分での加熱、1.5時間の炭化時間、炭化後の40メッシュまでの粉砕、オーブン内での一晩の冷却及び790℃で1時間のKOH活性化が含まれていた。図6は、細孔体積及びBET表面積をメタン吸収とグラフ的に相関させており、最終的に、過剰のメタン吸着における20〜50Åの直径を有する細孔の重要性を示している。KOHの量が大きくなるほど、活性化の間に蒸気として失われる炭素の量が大きくなる。図6の相関関係に基づいて、本発明の実施形態のメタン吸収は、7.5〜50Åの直径を有する細孔の体積と最も良く相関関係にあった。この知見は、文献の推測及び/又はメタン吸収をもたらす際に20Åよりも大きい細孔直径が重要であると考えない知見とは異なっている。臨界分子直径に基づいて、約6〜30Åの細孔体積は、500psig及び20℃でのメタン吸収のために最も重要である。より高い貯蔵圧力は、より大きい細孔直径を一層有効に利用するであろう。
【0062】
KOH−HTT−シリーズは、活性炭特性への活性化温度の影響を示す。酸浸漬は8時間であり、1℃/分で炭化温度にまで加熱した。密度は、活性化温度が上昇すると共に減少した。活性炭BET表面積及び全細孔体積に於ける最大値は、850℃付近の活性化温度に対応した。表中に要約された臨界パラメーターの最適値を組み合わせて、バイオマス、例えば、トウモロコシの穂軸を、3000m2/gを超えるBET表面積を有する活性炭に転化することができる経路を規定する。
【表9】

[実施例4]Darco炭素による制御研究
【0063】
市販の炭素Darco G−60(24,227−6、100メッシュ炭素)及びDarco B(27,810−6)を、本発明の炭素に対する比較のために評価し、本発明の炭素に従って調製した。これらの市販の製品は、100〜325メッシュの粒子サイズ並びにそれぞれ600及び1500m2/gの報告されたBET表面積を有していた。
【0064】
Darco G−60を、0、2、2.25及び2.5のKOH:炭素比で、窒素流下で790℃で活性化した。活性化の後、それぞれのサンプルを、ブフナー漏斗内で中性にまで洗浄した。それぞれの過剰の吸着(g/kg)は、22.2、85.2、63.4及び28.2であった。それぞれの嵩密度は、それぞれ、0.149、0.206、0.300及び「未知」であった。Darco B製品は、メタンを57.4g/kgで吸着した。
【0065】
更なる処理をしないDarco製品の表面積を比較することによって、これらのデータは、表面積が、単独で、高いメタン貯蔵能力をもたらさないことを示している。これらのデータは、また、トウモロコシの穂軸以外の供給原料から製造された炭素が、どのように、5重量%よりも多いメタンを吸着する材料に転換できるかを示している。これらのデータは、また、比較的高い表面積の炭素の処理を、どのように、KOH処理によって更に増強できるかを示している。
[実施例5]水についての銅カチオンの吸着の例証
【0066】
本発明の炭素材料を、水から金属を除去するためのそれらの能力について評価した。約9mg/Lの銅カチオンを蒸留水に添加した。表10のブランクサンプルによって報告したように、この混合物で発光分光法を実施した。等質量の5種の炭素をこの原液と混合して、銅を除去した。2種の市販の製品(Calgon及びDarco)を試験し、報告したような結果であった。表10中に記載した最後の3種のサンプルは、この実施形態の方法によって製造したサンプルである。最良の吸着は、KC4サンプル(表9参照)によって示された。この実施例は、水から金属を吸着するための、本発明の活性炭、特に、20〜50Å直径範囲内に細孔体積の45%よりも多くを有し且つ2.0cc/gよりも大きい全細孔体積を有する材料、の有効性を示している。
【表10】

[実施例6]活性炭上に触媒を担持させることの例証
【0067】
Pt、Cu、Pd、Cr、Niなどの金属を炭素上に担持できることが知られている。ナノスケール流動デバイスとして機能する、非常に多孔質の炭素ベースの円板触媒の有効性を例証するために、亜クロム酸銅触媒を、例証及び更なる研究のために選択した。
【0068】
この反応の条件は、それらが、触媒の炭素担体のガス化を起こさない範囲内であった。表11は、栓流反応器内で実施される、粉末形態での炭素担持亜クロム酸銅触媒を使用するグリセリンのプロピレングリコールへの転化での予備的データの幾つかを示す。これは、また、従来の亜クロム酸銅触媒及び活性炭上に担持された亜クロム酸銅触媒について、転化率と生産性との間の比較も示す。この反応は220℃で実施し、水素対グリセリンモル比は約20:1であった。触媒1及び触媒2は、異なった金属担持量で、高度に多孔質の炭素(表7のKC3に類似のもの)上に担持された触媒である。
【表11】

【0069】
(電子顕微鏡によって観察された)炭素上の金属粒子のサイズは、20nmよりも小さく、これは、金属粒子を、炭素の細孔サイズ分布の大部分を構成する微小細孔内に堆積させることができることを示している。亜クロム酸銅触媒上でのグリセロールのプロピレングリコールへの転化は、この反応が、プロピレングリコールとアセトールとの平衡転化を達成するために必要な時間よりも長い時間行われるとき、生成物分解をもたらすであろう。このため、結果(全て98%転化率を超えても)は、炭素上の低い触媒担持量が、同じ市販の触媒よりも著しく一層有効であることを示す。生産性に於ける更なる増加が、マイクロ反応器構成での圧縮された円板において期待される。均一な流れを促進し、圧力低下を減少させるために、チャネルを、例えば図7によって示されるように、圧縮された円板内に含ませることが好ましい。クローズドチャネルアプローチが好ましい。クローズドチャネルを作る一つの方法は、2つの反対の面からブリケットの中にチャネルを開けることである。
[実施例7]実施例細孔サイズ分布
【0070】
表12に、表7のサンプルKC3と同様の方法によって製造した炭素の、実施例細孔サイズ分布を要約する。
【表12】

[実施例8]炭素ペーストキャパシタ
【0071】
活性炭サンプルS−56を、当該技術分野で公知の方法によって、炭素ペーストキャパシタに於ける用途のために評価した。このキャパシタは、炭素ペーストキャパシタに於ける用途のための最良の入手可能な炭素の幾つかについての数個の対照代表よりも良く性能を発揮した。S−56の良好な性能は、10Åよりも小さい直径の細孔における高い細孔体積によって可能になる高表面積に起因する。
[実施例9]水素貯蔵
【0072】
水素吸着及び貯蔵を、サンプルS−33/kに於いて77及び300Kで評価した。500psigで、これらのサンプルは、それぞれ、70及び10g/kg(H2:炭素)の水素を可逆的に吸着した。
[実施例10]より高い圧力での吸着
【0073】
図3、4、5、8及び9は、吸着への圧力(メタン及び窒素)の影響を示す。図10は、Ba5.32及びS−30サンプルについての貯蔵された量(全吸着)の追加の実施例を示す。
【0074】
吸着された天然ガス(ANG)貯蔵の利点は、より低い圧力でガスを貯蔵できることである。ANG貯蔵の主な利点は、(図10中に圧縮された天然ガス、CNGとして示されている)吸着剤無しで同じタンク内に貯蔵することに対して、同じ圧力でより多くのガスを貯蔵することができることである。より高い圧力でANGを使用するとき、好ましい炭素は、500psigでの等温線上でより高い正勾配を有する等温線を有し、これは、より高い圧力が、全吸着を増加し続けることを示している。本発明の幾つかの実施形態、特に、10〜50Åの直径を有する細孔で1.1cc/gを超える細孔体積を有するKC3のようなものは、より高い圧力でのANG貯蔵のために特に良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.約50重量%よりも多いバイオマス由来の炭素、
b.約1500m2/gよりも大きいDFT表面積、
c.直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の約0.6cc/gよりも大きい細孔体積、
d.直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔の約0.4cc/gよりも大きい細孔体積、及び
e.細孔体積の少なくとも約20%が、直径が約20Å〜約50Åの範囲である細孔を含むような細孔分布、
を含む活性炭。
【請求項2】
直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の細孔体積が、約0.8cc/gよりも大きい、請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の細孔体積が、約1.1cc/gよりも大きい、請求項1に記載の活性炭。
【請求項4】
前記活性炭が、約20℃の温度及び約500psigの圧力で、メタン中で自重の約15%よりも多くを吸着し貯蔵することができる、請求項3に記載の活性炭。
【請求項5】
前記活性炭が、メタン貯蔵タンク、メタンガス分離器、揮発性有機化合物吸着剤、水処理吸着剤、電気キャパシタ、バッテリー、触媒、燃料電池及びイオン交換材料からなる群から選択された製品中に使用される、請求項3に記載の活性炭。
【請求項6】
前記水処理吸着剤が、更に、約2重量%よりも高い濃度で金属を含有する、請求項5に記載の活性炭。
【請求項7】
前記バッテリーが、更に、約5重量%よりも高い濃度で金属を含有し、該金属が、リチウム、ナトリウム、鉛、コバルト、鉄及びマンガンからなる群から選択される、請求項5に記載の活性炭。
【請求項8】
前記触媒が、更に、約0.1重量%よりも高い濃度で金属を含有し、該金属が、白金、ルテニウム、パラジウム、銅、クロム、コバルト、銀、金及びバナジウムからなる群から選択される、請求項5に記載の活性炭。
【請求項9】
直径が約7.5Å〜約16.0Åの範囲である細孔の細孔体積が、約0.5cc/gよりも大きい、請求項3に記載の活性炭。
【請求項10】
前記活性炭がアセチレン貯蔵タンク内に使用される、請求項9に記載の活性炭。
【請求項11】
約2850m2/gよりも大きいDFT表面積、及び、直径が約10Åよりも小さい細孔の約0.5cc/gよりも大きい細孔体積を有する、バイオマス由来の活性炭。
【請求項12】
直径が約10Åよりも小さい細孔の細孔体積が、約0.7cc/gよりも大きい、請求項11に記載の活性炭。
【請求項13】
前記活性炭が、メタン貯蔵タンク、水素貯蔵タンク、アセチレン貯蔵タンク、キャパシタ、バッテリー及びモレキュラーシーブからなる群から選択された製品中に使用される、請求項12に記載の活性炭。
【請求項14】
前記メタン貯蔵タンク又は水素貯蔵タンクの活性炭が、更に、少なくとも1重量%の濃度で金属を含有し、該金属が、60よりも小さい原子量を有する、請求項13に記載の活性炭。
【請求項15】
前記水素貯蔵タンクの活性炭が、更に、少なくとも1重量%の濃度で共吸着剤を含有し、該共吸着剤が、約7.5Å〜約12Åの臨界直径を有する、請求項14に記載の活性炭。
【請求項16】
a.約50重量%よりも多いバイオマス由来の炭素、
b.約1500m2/gよりも大きいDFT表面積、
c.約0.25よりも大きい10−20多孔度、
d.直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔の約0.4cc/gよりも大きい細孔体積、及び
e.細孔体積の少なくとも約30%が、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔を含むような細孔分布、
を含む活性炭。
【請求項17】
前記10−20多孔度が約0.3よりも大きく、直径が約10Å〜約20Åの範囲である細孔の細孔体積が約0.5cc/gよりも大きい、請求項16に記載の活性炭。
【請求項18】
前記活性炭が、更に、約10重量%よりも多い濃度で金属を含有し、メタン貯蔵タンク、水素貯蔵タンク、アセチレン貯蔵タンク、キャパシタ、バッテリー及びモレキュラーシーブからなる群から選択された製品中に使用される、請求項17に記載の活性炭。
【請求項19】
a.約40重量%よりも多くの炭素を含有するバイオマス供給原料を、約350℃〜約850℃の温度で炭化して、約900m2/gよりも大きいDFT表面積、及び、直径が約10Å〜約50Åの範囲である細孔の約1.0cc/gよりも大きい細孔体積を有する炭を形成することと、
b.前記炭を、約9よりも大きいpHを有するアルカリ性材料の存在下で、約600℃〜約1000℃の温度で活性化して、約1700m2/gよりも大きいDFT表面積、約1.1cc/gよりも大きい全細孔体積、及び、細孔体積の少なくとも約20%が、直径が約20Å〜約50Åの範囲である細孔を含むような細孔分布を有する活性炭を形成することと、
を含む活性炭の製造方法。
【請求項20】
前記バイオマス供給原料が、トウモロコシの穂軸、木材製品、オリーブの種、モモの種、ココナツの殻及びナッツの殻からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アルカリ性材料が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化ベリリウムからなる群から選択された金属水酸化物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記炭が、バイオマス及びリン酸の混合物から製造され、リン酸のバイオマスに対する質量比が、約0.5:1〜約1:1の範囲内である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記活性炭が、炭及び金属水酸化物の混合物から製造され、金属水酸化物のバイオマスに対する質量比が、約1:1〜約5:1の範囲内である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記活性炭が、約20℃の温度及び約500psigの圧力で、メタン中で自重の約15%よりも多くを吸着し貯蔵することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記バイオマス供給原料が、約0.4g/ccよりも小さい見掛け密度を有し、炭化される前に、リン酸中に、約75℃〜約100℃の温度で少なくとも2時間浸漬される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
更に、前記活性炭をバインダーと共に、約130℃〜約180℃の温度で約13000psi〜約17000psiの圧力でプレスして、ブリケットを形成することと、該ブリケットを約600℃〜約1200℃の温度で加熱することと、を含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−509174(P2010−509174A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536479(P2009−536479)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084061
【国際公開番号】WO2008/058231
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509129174)キュレーターズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミズーリ (1)
【Fターム(参考)】