説明

高誘電性薄膜用コーティング溶液及びこれを用いた誘電薄膜の製造方法、並びにこの製造方法により製造される誘電薄膜およびこの誘電薄膜を含むエンベッディドキャパシタ

【課題】高い誘電性を有する薄膜の製造のためのコーティング溶液、及びこれを用いた誘電薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】チタニウムアルコキサイド、β−ジケトンまたはβ−ジケトン改質化合物、及び電子供与基に改質されたベンゾ酸を含んで成る薄膜製造のためのコーティング溶液及び上記コーティング溶液を低温で乾燥して薄膜を結晶化させる誘電薄膜の製造方法を提供する。このように提供されるチタニウムコーティング溶液は非常に安定しており、基板の種類にかかわらず低温で薄膜工程進行が可能なだけでなく、PCB工程内でインライン工程進行が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い誘電性を有する薄膜の製造のためのコーティング溶液及びこれを用いた誘電薄膜の製造方法に関し、より詳しくは、安定化された前駆体を含む誘電薄膜製造用コーティング溶液及び上記コーティング溶液を基板に適用した後、低温で乾燥し高い誘電性を有する誘電薄膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の軽薄短小、集積化(convergence)、急激なエンベッディド(embedded)傾向および入力/出力端子数の増加により、能動集積回路チップの周りにキャパシタを含む多数の受動素子はより小さな容量に、より多い機能を搭載せざるを得ない現実に直面するようになった。また、入力端子に安定的な電源を供給するためにデカップリング用キャパシタが使用されるが、このようなデカップリングキャパシタは電力領域と接地領域の距離を近接するようにして、面(plane)インダクタンス及びバイア(via)インダクタンスを減少させ高周波領域での低インピーダンス領域を拡張させなければならない。
【0003】
かかる目的のために、デカップリングキャパシタを集積回路チップの直下にエンベッディングさせる方法が最適の解決策として台頭された。エンベッディング方法中、薄膜を利用したエンベッディドキャパシタは能動集積回路チップの下の印刷回路基板内に誘電薄膜を形成させたキャパシタを利用して電力領域と接地領域の距離を最も近接するように配置することによって、キャパシタと連結される導線の長さを最小化し高周波領域において低いインピーダンス領域を効果的に減少させることができる。
【0004】
このようなエンベッディドキャパシタの製造時に高い誘電率を有する材料を利用してキャパシタの面積を最小化しようとする研究が続いており、現在最も実用的な材料としてはSrTiO3、BST、またはPLZTなどの複合金属酸化物誘電体が有用に用いられている。なお、その実用化において、温度特性の改善と共に多様な半導体素子の製造工程に適するように誘電体薄膜の低温成膜化が求められている。
【0005】
誘電薄膜の製造方法には、真空蒸着法、スパッタリングなどの物理的な方法や、有機金属化合物を用いて熱分解などで誘電体薄膜を得るゾルゲル法、化学的蒸着などの化学的な方法が使用され、この中でも、コストの面からゾルゲル法が最も一般的に使用されている。
【0006】
特許文献1では、強誘電体の製造のために原料物質として有機金属化合物を含有するコーティング液及びゾルゲル方法を利用して強誘電体膜を製造する方法を開示しており、ATiO3(この時、A=Ba、Sr、Ca、Mg、またはPb)、またはBi4Ti312の有機金属化合物、安定化剤として、例えば、β−ジケトン及び酸化剤として過酸化水素を含んでなるコーティング液が提供される。
【0007】
特許文献2では、ゾルゲル法によるPZT誘電膜の製造方法及びキャパシタの製造方法を開示しており、この特許では有機金属化合物、及びアルカノアミンを含有するコーティング溶液を乾燥して薄膜を形成し、ペロブスカイト(perovskite)結晶を得るために酸化焼結して、誘電薄膜を製造することを開示している。
【0008】
特許文献3では、ゾルゲル法を利用した複合金属酸化物誘電体の薄膜製造方法を開示しており、この特許では前駆体溶液を基板にスピンコーティングして薄膜化し、これを乾燥した後、乾燥ゲルを500乃至600℃の高温で熱処理して薄膜を結晶化することを開示している。
【0009】
このように、従来技術では一般的にゾルゲル法を利用してスピンコーティングにより誘電薄膜を蒸着させた後、300乃至400℃で熱分解過程を経て600℃以上で薄膜結晶化のための熱処理工程をするのが一般的である。
【0010】
【特許文献1】特開平7−037422号公報
【特許文献2】米国特許第5776788号明細書
【特許文献3】米国特許第5593495号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、従来技術で高温熱処理工程を必ず経らなければならなかった誘電薄膜の結晶化段階を排除し、基板の種類にかかわらず低温で誘電薄膜を結晶化させることのできる薄膜製造用コーティング溶液及びこれを用いた薄膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、チタニウムアルコキサイド、β−ジケトンまたはβ−ジケトン改質化合物、電子供与基に改質されたベンゾ酸、水及び溶媒を含んで成る高誘電性薄膜製造用コーティング溶液が提供される。
【0013】
また、本発明により、基板上にコーティング溶液をスピンコーティングして誘電薄膜を蒸着する段階と、上記蒸着された基板を低温で乾燥して薄膜を結晶化させる段階とを含む誘電薄膜の製造方法が提供される。
【0014】
さらに、本発明により、上記製造方法で製造された誘電薄膜を含むエンベッディドキャパシタが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって提供される誘電薄膜用コーティング溶液はチタニウムとβ−ジケトンが安定した前駆体構造を成しており、低温結晶化特性が向上して窮極的に相形性温度を100〜300℃に顕著に低めることが可能であり、ウェーハ、金属ホイル、エポキシボード等の基板種類にかかわらず薄膜工程が可能なだけでなく、PCB工程内でインラインに工程進行が可能であり、エンベッディドキャパシタに適用されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0017】
本発明によって提供される誘電薄膜製造用コーティング溶液は、チタニウムアルコキサイド、このようなチタニウム化合物の着火安定化剤としてβ−ジケトンまたは改質されたβ−ジケトン化合物、電子供与基に改質されたベンゾ酸及び残部の溶媒を含んでなり、その結果、チタニウム含有コーティング溶液は非常に安定し、従来技術のように誘電薄膜の結晶化のために必ず要求される高温か焼工程を通さず約100〜300℃の低温乾燥工程を行って結晶化特性を向上させる。
【0018】
本発明のコーティング溶液に添加されるチタニウムアルコキサイドは、テトライソプロピルタイタネート、テトラ−ノルマル−ブチルタイタネート、またはテトラキス(2−エチルヘキシル)タイタネートが使用可能であり、特に、テトライソプロピルタイタネートを使用することが好ましい。チタニウムアルコキサイドはコーティング溶液を基準に10〜15vol%添加することが好ましく、この時、上記チタニウムアルコキサイドの量が10vol%以下に添加される場合には使用されるキャパシタの誘電率発現に問題があり、添加量が15vol%より多い場合にはチタニウムの金属成分が残存するようになるので、漏洩電流のような電気的特性が低下される恐れがある。
【0019】
上記チタニウムアルコキサイドの着火安定化剤として、β−ジケトンまたはβ−ジケトン改質化合物が好ましく使用され、このような化合物の例にはこれに制限するものではないが、ペンタン−2,4−ジオン、5−アミノ−4−ハイドロキシ−ペンタノンまたは酢酸2−メトキシ−エチルエステルが含まれ、このようなβ−ジケトンまたはβ−ジケトン改質化合物はチタニウムアルコキサイドと配位構造を成して、非常に安定化された前駆体を形成する。着火安定化剤はコーティング溶液を基準に3〜5vol%添加することが好ましい。使用される着火安定剤が3vol%以下である場合にはコーティング溶液において適正なレベルに達することができないので、チタニウムアルコキサイドとの配位構造形成による立体障害効果及び誘導効果を十分導き出すことができず安定した前駆体溶液の形成が難しくなる。
【0020】
さらに、上記コーティング溶液に酸触媒として添加されるベンゾ酸はアミノ基、アルキル基、またはアルコキシ基のような電子供与基(electron donating group)に改質されたベンゾ酸が好ましく、特にアミノベンゾ酸が好ましい。従来技術では酸触媒として酢酸が一般的に使用されるが、このような場合にはH+に解離される傾向が相対的に高く水に対する反応性が高くなる結果をもたらす。酸触媒として添加されるベンゾ酸はコーティング溶液を基準に1〜2vol%添加することが好ましく、その添加量が1vol%以下である場合には反応性が少なくなり、添加量が2vol%以上である場合には反応性が大きくなるため適正反応性を維持しにくい。
【0021】
上記酸触媒と共に添加される水は蒸溜水が好ましく、添加量はコーティング溶液を基準に3〜5vol%が好ましい。またコーティング溶液の溶媒には任意のアルコールが好ましく、特に、イソプロパノールを使用することが好ましい。
【0022】
本発明による誘電薄膜用コーティング溶液は、先ず、溶媒であるイソプロパノールにチタニウムアルコキサイドとβ−ジケトンまたはβ−ジケトンが改質された化合物を混合し常温で、200〜300rpmの速度で1〜2時間撹拌して、安定した前駆体を形成する。さらにこれに酸触媒及び水を添加して200〜300rpmの速度で24〜48時間撹拌して作製することができる。
【0023】
このように提供されたコーティング溶液においてチタニウムアルコキサイドと着火安定化剤であるβ−ジケトンまたはβ−ジケトン改質化合物は、配位構造によって非常に安定化された前駆体を形成し、このような前駆体に電子供与基に改質されたベンゾ酸のような酸触媒を添加することによって、水に対する安全性がより増加される。このようなコーティング溶液の安全性は誘導効果、立体障害効果、及び酸触媒のイオン化傾向の減少などによって説明され得る。
【0024】
先ず、チタニウムアルコキサイドと着火安定化剤であるβ−ジケトン化合物から成る前駆体の配位構造は次のように表すことができる。
【化1】

上式中、Rはアルキル基を表す。
【0025】
上記式のように、チタニウムはβ−ジケトン化合物と配位結合を形成し、二重結合と単一結合が互いに交差しながら電子が均一に分散した共鳴構造を成すため、非常に安定化した前駆体を形成し、さらに、チタニウムの周りにアルコキシのようにバルキー(bulky)な基が位置しており水分子などの攻撃が減少され前駆体の安全性をより増加させる。
【0026】
また、本発明の前駆体に添加される酸触媒として電子供与基に改質されたベンゾ酸は、従来技術において酸触媒として使用される酢酸に比べ、pKa値が高いため酢酸に比べて相対的にH+の解離を妨げ前駆体と水との反応性を低める効果がある。
【0027】
本発明の一実施態様において、基板上に上記コーティング溶液をスピンコーティングして誘電薄膜蒸着する段階と、上記蒸着された基板を低温で乾燥して薄膜を結晶化させる段階とを含む誘電薄膜の製造方法が提供される。
【0028】
本発明によって提供されるチタニウムアルコキサイド、β−ジケトンまたは β−ジケトン改質化合物、電子供与基に改質されたベンゾ酸及び残部の水を含んで成るコーティング溶液を3000〜5000rpmの速度で10〜20秒間スピンコーティングして基板に適用した後誘電薄膜を蒸着させ、その後100〜300℃の低温で乾燥し、誘電性の高い誘電薄膜を得ることができる。
【0029】
これはゾルゲル方法を利用したものであって、従来技術では誘電薄膜を蒸着させた後に300乃至400℃の温度範囲で熱分解過程を経て、その後600℃以上の温度で薄膜結晶化のための熱処理工程を行うのが一般的であるが、本発明では従来技術のような高温での熱処理過程が要求されず、基板の種類にかかわらず低温で誘電薄膜を結晶化することができる方法を提供することを特徴とするものであって、ウェーハ、金属ホイル、エポキシボードなど基板の種類にかかわらず薄膜工程が可能なだけでなくPCB工程内でインラインに工程進行が可能である。
【0030】
本発明による誘電薄膜は、先ず、基板に上記コーティング液を100〜300nmの厚さに適用し、3000〜5000rpmの速度で10〜20秒間スピンコーティングして薄膜を蒸着した後、これを100℃〜300℃の低温でオーブンあるいはホットプレートを利用して30分間乾燥して薄膜を結晶化して、製造することができる。特に好ましくは、コーティング液の厚さは300nmに適用し、スピンコーティングは4000rpmの速度で17秒間行うことが好ましい。
【0031】
上記のように、本発明によって提供される誘電薄膜用コーティング溶液はチタニウムとβ−ジケトンが安定した前駆体構造によって、例えば、水に対して非常に安定し、低温結晶化の特性が向上し窮極的に相形性温度を100〜300℃に顕著に低める効果があり、ウェーハ、金属ホイル、エポキシボードなど基板の種類にかかわらず薄膜工程が可能なだけでなく、PCB工程内でインラインに工程進行が可能であり、またエンベッディドキャパシタに適用され得る。
【0032】
以下、本発明を次の実施例に従ってより具体的に説明するが、これにより本発明が制限されるものではない。
【0033】
(製造例1)
79.8mlのイソプロパノールにテトライソプロピルタイタネート11.7mlとペンタン−2,4−ジオン4.5mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。これに電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0034】
(製造例2)
79.8mlのイソプロパノールにテトライソプロピルタイタネート11.7mlと5−アミノ−4−ハイドロキシ−ペンタノン4.2mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。これに電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0035】
(製造例3)
79.8mlのイソプロパノールにテトライソプロピルタイタネート11.7mlと酢酸2−メトキシ−エチルエステル4.2mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。さらにこれにpKa値が酢酸より高い電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0036】
(製造例4)
79.8mlのイソプロパノールにテトラ−ノルマル−ブチルタイタネート11.7mlとペンタン−2,4−ジオン4.2mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。さらにこれにpKa値が酢酸より高い電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0037】
(製造例5)
79.8mlのイソプロパノールにテトラ−ノルマル−ブチルタイタネート11.7mlと5−アミノ−4−ハイドロキシ−ペンタノン4.2mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。さらにこれにpKa値が酢酸より高い電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0038】
(製造例6)
79.8mlのイソプロパノールにテトラ−ノルマル−ブチルタイタネート11.7mlと酢酸2−メトキシ−エチルエステル4.2mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。さらにこれにpKa値が酢酸より高い電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0039】
(製造例7)
79.8mlのイソプロパノールにテトラキス(2−エチルヘキシル)タイタネート11.7mlと着火安定剤であるペンタン−2、4−ジオン4.2mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。さらにこれにpKa値が酢酸より高い電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0040】
(製造例8)
79.8mlのイソプロパノールにテトラキス(2−エチルヘキシル)タイタネート11.7mlと5−アミノ−4−ハイドロキシ−ペンタノン4.2mlを 添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。さらにこれにpKa値が酢酸より高い電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【0041】
(製造例9)
79.8mlイソプロパノールにテトラキス(2−エチルヘキシル)タイタネート11.7mlと酢酸2−メトキシ−エチルエステル4.2mlを添加した後、常温で、200rpmの速度で1時間撹拌して、安定した前駆体を形成した。さらにこれにpKa値が酢酸より高い電子供与基に改質されたベンゾ酸1.5ml及び蒸溜水2.5mlを添加し、300rpmの速度で48時間撹拌してTiO2ゾル溶液を作製した。
【実施例1】
【0042】
Pt/Ti/SiO2ウェーハ上に上記製造例1乃至9によるコーティング溶液をスピンコーティング法で4000rpm/17secで3回繰り返して300nmの薄膜を形成した。このように蒸着されたTiO2薄膜を200℃/30分間ホットプレートまたはオーブンを利用して乾燥した。
【0043】
このように製造された試片を用いて一定時間が経った後、電気的特性を測定した。試片の電気的特性はインピーダンス・アナライザ(Impedance Analyzer (Agilent、4294A))を利用して40Hz〜1MHzの周波数条件で誘電率を測定し、その結果を図2に示した(Aの場合、ホットプレート乾燥、Bの場合オーブン乾燥)。
【0044】
(比較例1)
コーティング段階ごとに450℃/10分、650℃/2分間熱分解して有機物を除去し、その後650℃/30分間熱処理工程を行ったことを除いて、実施例1と同じく行い、その結果を図2に示した(Cの場合)。
【0045】
図2に示すように、周波数による程度の差はあるが、高温で熱処理した場合(C)と本発明によるコーティング溶液を低温で乾燥した場合(A及びB)がほぼ類似した誘電率変化様相を表し、このような誘電率の変化様相に基づいた場合、低温で乾燥した薄膜が結晶性を表すことが判る。
【実施例2】
【0046】
ウェーハ上に蒸着されたコーティング溶液を300℃で乾燥したことを除いて、実施例1と同じく行い、その結果を図1に示した。
【0047】
図1から判るように、実施例1による試片の場合に比較例1による450℃の熱分解及び650℃の塑性工程を経た試片のように非晶質状態でアナターゼ型への相転移が起こることがX−rayピークから分かる。
【0048】
また、上記製作された試片の結晶化有無を確認するためにSEM(Scanning Electron Microscopy)を利用して上記製作された試片中、低温で乾燥したサンプルの表面及び断面写真を撮影した結果、図3の (a)及び(b)から観察できるように実施例2に従って300℃で乾燥した試片に結晶化が進行されグ粒界(grain boundary)を形成していることが確認できる。
【0049】
上記したように、本発明によるコーティング溶液を用いることによって低温結晶化特性が向上し窮極的に相形成温度を100〜300℃に顕著に低めることができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の低温工程および従来技術の高温工程によるXRD回折パターングラフである。
【図2】本発明の低温工程および従来技術の高温工程の周波数による静電容量グラフである。
【図3】本発明の低温工程による試片の表面(a)及び断面(b)のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニウムアルコキサイド、β−ジケトンまたはβ−ジケトン改質化合物、電子供与基に改質されたベンゾ酸、水及び溶媒を含んで成る高誘電性薄膜製造用コーティング溶液。
【請求項2】
前記チタニウムアルコキサイドは、テトライソプロピルタイタネート、テトラ−ノルマル−ブチルタイタネート、またはテトラキス(2−エチルヘキシル)タイタネートであることを特徴とする、請求項1に記載の高誘電性薄膜製造用コーティング溶液。
【請求項3】
前記β−ジケトンまたはβ−ジケトン改質化合物は、ペンタン−2,4−ジオン、5−アミノ−4−ハイドロキシ−ペンタノンまたは酢酸2−メトキシ−エチルエステルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の高誘電性薄膜製造用コーティング溶液。
【請求項4】
前記改質されたベンゾ酸はアミノベンゾ酸であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高誘電性薄膜製造用コーティング溶液。
【請求項5】
前記溶媒はイソプロパノールであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高誘電性薄膜製造用コーティング溶液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項によるコーティング溶液を基板にスピンコーティングして誘電薄膜を蒸着する段階と、
前記蒸着された基板を低温で乾燥して薄膜を結晶化させる段階と、
を含む誘電薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記スピンコーティング速度は3000〜5000rpmであり、乾燥温度は100〜300℃であることを特徴とする、請求項6に記載の誘電薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記基板はウェーハ、金属ホイルまたはエポキシボードであることを特徴とする、請求項6または7に記載の誘電薄膜の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法により製造される誘電薄膜。
【請求項10】
請求項9による誘電薄膜を含むエンベッディドキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−126354(P2007−126354A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272931(P2006−272931)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】