説明

(ピロールカルボキサミド)−(ベンズアミド)−(イミダゾールカルボキサミド)モチーフを有する抗菌化合物

ArおよびRが本明細書で定義されるような式(I)の化合物は、抗菌特性を有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗菌活性を有する芳香族化合物ならびにその合成および使用方法に関する。なお、本出願は2002年12月10日付で出願した米国特許仮出願第60/432,465号の恩典を主張するものであり、その内容は参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府が後援した研究または開発の下で行われた発明の権利に関する記載
本発明は米海軍の宇宙・海洋戦闘システムコマンド(Space and Naval Warfare Systems Command)から与えられた助成金番号N65236-99-1-5427の下で政府の支援により実施された。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
コンパクト・ディスクで提出した「配列表」、表、またはコンピュータプログラムリストの付録の参照
該当なし
【背景技術】
【0004】
関連分野の説明
20世紀初期および中期におけるペニシリンおよび他の抗菌薬の発見は、細菌感染を治療する医療専門家の能力に関して楽観的な期間をもたらした。しかしながら、継続的に発見されている新たな株を加えた薬剤耐性細菌株の進化により、新たな抗菌薬、好ましくは、細菌耐性の発現をいっそう困難にするため、既存の抗菌薬とは構造的に異なる抗菌薬または異なる作用機序を利用する抗菌薬を開発することが引き続き必要であるとの認識に至っている。
【0005】
新たな抗菌化合物の例示的な最近の開示としては、Ge et al., WO 01/74898 (2001);2002年4月24日付で出願されたBaird et al., 米国特許出願第10/132887号;2002年6月6日付で出願されたBurli et al., 米国特許出願第10/165856号;2002年6月6日付で出願されたMcMinn et al., 米国特許出願第10/165433号;2002年6月6日付で出願されたBurli et al., 米国特許出願第10/165857号;2002年6月6日付で出願されたBurli et al., 米国特許出願第10/165764号;および2002年8月2日付で出願されたBurli et al., 米国特許仮出願第60/400671号が挙げられる。上記の出願には、複数の芳香族カルボキサミド単位により特徴付けられる抗菌化合物が開示されている。本発明は、同じく複数の芳香族カルボキサミド単位を有するが、しかし識別可能な構造モチーフを有する抗菌化合物に関する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明により、式(I)記載の化合物、ならびにその溶媒和物、プロドラッグ、および薬学的に許容される塩が提供される:

式中
Arは、非置換もしくは置換フェニル基、非置換もしくは置換5員ヘテロアリール基、非置換もしくは置換6員ヘテロアリール基、非置換もしくは置換6,6-縮合環アリールもしくはヘテロアリール基、非置換もしくは置換5,5-縮合環ヘテロアリール基;非置換もしくは置換5,7-縮合環アリールもしくはヘテロアリール基、または非置換もしくは置換6,5-縮合環ヘテロアリール基であり;かつ
Rは、12もしくはそれ以下のpKbを有する塩基性基または四級化窒素基を含むC1〜C28のアルキルまたはヘテロアルキル部分である。
【0007】
発明の詳細な説明
略語および定義
「アルキル」という用語は、単独でまたは別の置換基の一部として、特に明記しない限り、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C1-C10は、1から10個までの炭素を意味する)、直鎖か分岐鎖、もしくは環式炭化水素ラジカル、またはその組み合わせを意味し、これは、完全に飽和していても、単不飽和または多不飽和であってもよく、ならびに二価および多価ラジカルを含むことができる。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどのその同族体および異性体のような基が挙げられる。不飽和アルキル基は、一つまたは複数の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにさらに高級の同族体および異性体が挙げられる。
【0008】
「アルキレン」という用語は、単独でまたは別の置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-により例証されるとおり、アルカンから誘導される二価ラジカルを意味する。一般に、アルキル(またはアルキレン)基は、1個から24個までの炭素原子を有し、10個またはそれより少ない炭素原子を有する基は、本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に6個またはそれより少ない炭素原子を有する、短鎖アルキルまたはアルキレン基である。
【0009】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、その従来の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子の残部に付着したアルキル基を指す。
【0010】
「ヘテロアルキル」という用語は、単独でまたは別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、指示された数の炭素原子ならびにO、N、SiおよびSからなる群より選択される1個から3個のヘテロ原子からなる、安定な直鎖か分岐鎖、もしくは環状炭化水素ラジカル、またはその組み合わせを意味し、窒素および硫黄原子は任意で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意で四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基内部のいずれかの位置に配置されていてもよい。ヘテロ原子Siは、ヘテロアルキル基のいずれの位置に配置されていてもよく、分子の残部に対してアルキル基が付着する位置を含む。例としては、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、および-CH=CH-N(CH3)-CH3が挙げられる。2個までのヘテロ原子は、例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3のように連続することができる。同様に「ヘテロアルキレン」という用語は、単独でまたは別の置換基の一部として、-CH2-CH2-S-CH2CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-により例証されるとおり、ヘテロアルキルから誘導される二価ラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子は、鎖末端の一方または両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基の場合、連結基の方向は示唆されない。
【0011】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単独でまたは他の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状型を表す。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、分子の残部に対して複素環が付着する位置を占有することができる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられる。
【0012】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、単独でまたは別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。さらに「ハロアルキル」のような用語には、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルが包含されることが意図される。例えば「ハロ(C1-C4)アルキル」という用語には、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどが包含されることが意図される。
【0013】
「アリール」という用語は、特に明記しない限り、単環または共に融合されるか共有結合される多環(三環まで)でありうる、多不飽和の、典型的には芳香族の炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、OおよびSより選択されるヘテロ原子を0個から4個含むアリール基(または環)を指し、その際に、窒素および硫黄原子は任意で酸化されており、かつ窒素原子は任意で四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に付着されていてもよい。アリールおよびヘテロアリール基の非制限的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれに対する置換基は、下記の許容される置換基の群より選択される。
【0014】
簡潔にするため、「アリール」という用語は、他の用語と組み合わせて使用する場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記のアリールおよびヘテロアリール環の両方を含む。従って「アリールアルキル」という用語には、炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子により置換されているアルキル基を含むアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)に、アリール基が付着したラジカル(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)が包含されることが意図される。
【0015】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)のそれぞれには、示したラジカルの置換型および非置換型の両方が包含されることが意図される。各タイプのラジカルに対する好ましい置換基を以下に示す。
【0016】
アルキル、ヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアルキルラジカル(多くの場合、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基を含む)に対する置換基は、0個から(2m'+1)個 (式中、m'はそのようなラジカルにおける炭素原子の総数である)の範囲にある数の-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-CNおよび-NO2より選択される種々の基とすることができる。R'、R''およびR'''はそれぞれ独立して、水素、非置換(C1-C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリール、1個から3個のハロゲンで置換されたアリール、非置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリール-(C1-C4)アルキル基を指す。R'およびR''が同じ窒素原子に付着する場合、これらは、窒素原子と共に5員、6員、または7員環を形成することができる。例えば、-NR'R''には、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが包含されることが意図される。置換基に関する上記の論述から、「アルキル」という用語が、ハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)のような基を包含すると意図されることを当業者は理解するであろう。好ましくは、置換アルキルおよびヘテロアルキル基は、1個から4個の置換基、さらに好ましくは1個、2個または3個の置換基を有する。例外は、本発明において好ましく、かつ意図もされるパーハロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチルなど)である。
【0017】
同様に、アリールおよびヘテロアリール基に対する置換基は、多様であって、0個から芳香族環系での開放原子価の総数の範囲にある数の-ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-CONR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-S(O)2R'、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2NR'R''、-N3、-CH(Ph)2、パーフルオロ(C1-C4)アルコキシ、およびパーフルオロ(C1-C4)アルキルより選択され、その際に、R'、R''およびR'''は独立して、水素、(C1-C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリールおよびヘテロアリール、(非置換アリール)-(C1-C4)アルキル、ならびに(非置換アリール)オキシ-(C1-C4)アルキルより選択される。
【0018】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子における二つの置換基は、式-T-C(O)-(CH2)q-U- (式中、TおよびUは独立して-NH-、-O-、-CH2-または単結合であり、かつqは0から2の整数である)の置換基で任意に置換されていてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子における二つの置換基は、式-A-(CH2)r-B- (式中、AおよびBは独立して-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または単結合であり、かつrは1から3の整数である)の置換基で任意に置換されていてもよい。そのように形成された新たな環の単結合の一つは、二重結合で任意に置換されていてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子における二つの置換基は、式-(CH2)s-X-(CH2)t- (式中、sおよびtは独立して0から3の整数であり、かつXは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR'-である)の置換基で任意に置換されていてもよい。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は、水素または非置換(C1-C6)アルキルより選択される。
【0019】
本明細書では「ヘテロ原子」という用語には、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)が包含されることが意図される。
【0020】
「薬学的に許容される塩」という用語には、本明細書に記述される化合物に見られる特定の置換基に応じて、比較的毒性のない酸または塩基とともに調製される活性化合物の塩が包含されることが意図される。本発明の化合物に比較的酸性の官能基が含まれる場合、中性型のそのような化合物を、十分な量の所望の塩基と、そのまま、または適当な不活性溶媒中、接触させることにより塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウム塩、または類似の塩が挙げられる。本発明の化合物に比較的塩基性の官能基が含まれる場合、中性型のそのような化合物を、十分な量の所望の酸と、そのまま、または適当な不活性溶媒中、接触させることにより酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などのような無機酸から誘導されるもの、ならびに酢酸、アスコルビン酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、ラクトビオン酸などのような、比較的毒性のない有機酸から誘導される塩が挙げられる。同様に、アルギン酸塩などのようなアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩(例えば、Berge, S.M., et al,「Pharmaceutical Salts」, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照されたい)も含まれる。本発明のある種の特定の化合物には、化合物を塩基または酸付加塩のどちらにも変換可能とする塩基性および酸性官能基の両方が含まれる。
【0021】
中性型の化合物は、従来どおりに、その塩を塩基または酸と接触させて、親化合物を単離することにより再生させることができる。化合物の親型は、極性溶媒における溶解性のような特定の物理特性が各種の塩型とは異なるが、しかしその他の点では、その塩は、本発明の目的のため、化合物の親型と等価である。
【0022】
塩型に加えて、本発明により、プロドラッグ型の化合物が提供される。本明細書に記述される化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学的変化を容易に受けて、本発明の化合物を与える化合物である。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境での化学的または生化学的方法により、本発明の化合物に変換させることができる。例えば、プロドラッグを、適当な酵素または化学試薬を有する経皮パッチ容器に入れた場合、本発明の化合物に徐々に変換させることができる。
【0023】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和型ならびに水和型を含む溶媒和型として存在することができる。一般に、溶媒和型は、非溶媒和型と等価であり、本発明の範囲内に包含されることが意図される。本発明の特定の化合物は、多晶質または非晶質の形態として存在することができる。一般に、全ての物理的形態は、本発明が意図する用途に等価であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0024】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(キラル中心)または二重結合を保有し;ラセミ体、ジアステレオマー、立体異性体および個々の異性体は、全て本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0025】
本発明の化合物には、その化合物を構成する一つまたは複数の原子に、天然にはない比率の原子同位体が含まれてもよい。例えば、化合物は放射性同位体(例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)のような)で放射線標識されていてもよい。本発明の化合物の同位体変異体は全て、放射活性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0026】
化合物
本発明の化合物は、特徴的な構造モチーフとして、以下に示されるような、N-メチルピロールカルボキサミド(「Py」)単位、p-ベンズアミド(「Ph」)単位、および1-メチル-イミダゾールカルボキサミド(「Im」)単位の配列を有する:

Py-Ph-Imモチーフは、化合物(I)

ならびにその溶媒和物、プロドラッグ、および薬学的に許容される塩で具現化され、
式中
Arは、非置換もしくは置換フェニル基、非置換もしくは置換5員ヘテロアリール基、非置換もしくは置換6員ヘテロアリール基、非置換もしくは置換6,6-縮合環アリールもしくはヘテロアリール基、非置換もしくは置換5,5-縮合環ヘテロアリール基;非置換もしくは置換5,7-縮合環アリールもしくはヘテロアリール基、または非置換もしくは置換6,5-縮合環ヘテロアリール基であり;かつ
Rは、12もしくはそれ以下のpKbを有する塩基性基または四級化窒素基を含むC1〜C28(好ましくはC1〜C18)のアルキルまたはヘテロアルキル部分である。
【0027】
例示的な5員ヘテロアリール基としては、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、フラニル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、フラザニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、およびチエニル基が挙げられる。例示的な6員ヘテロアリール基としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、およびトリアジニル基が挙げられる。例示的な6,6-縮合環アリールまたはヘテロアリール基としては、ナフチル、キノリル、およびイソキノリル基が挙げられる。例示的な6,5-縮合環ヘテロアリール基としては、ベンゾチエニル、インドリル、およびベンゾフラニル基が挙げられる。
【0028】
Ar部分は、以下からなる群より選択されることが好ましい:

【0029】
R部分は

であることが好ましく、
式中、R1およびR2は独立して、C1〜C16アルキルまたはヘテロアルキル部分であり、かつ互いに連結して、これらが結合する窒素と共に、5〜7員環を形成してもよい。R1もしくはR2のどちらか、またはその両方が置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。
【0030】
好ましいR部分の例としては、以下が挙げられる:

【0031】
化合物(I)のR部分は、12もしくはそれ以下のpKbを有する塩基性基または四級化窒素基を有する(または、逆に言えば、塩基性基の共役酸は、2を超えるpKa(pKa = 14 - pKb)を有する)。好ましくは、pKbは10未満であり、さらに好ましくは、5未満である。塩基性基は窒素含有基、例えば、アミン、アミジン、グアニジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、またはアニリンであることが好ましい。以下のような、第一級、第二級または第三級の脂肪族アミンが好ましい:

例示的な第四級窒素基としては、以下のようなアルキルピリジニウムおよびテトラアルキルアンモニウム基が挙げられる:

【0032】
化合物(I)の具体例は表Aに示される。
【0033】
(表A)化合物(I)








【0034】
当業者は、表の化合物(I)のいくつかが、活性化合物(I)に変換可能な、プロドラッグであることを理解するものと思われる。プロドラッグ化合物(I)の例としては、A-59〜A-62、A-66〜A-67、およびA-73〜A-74が挙げられる。当業者は同様に、表Aのいくつかの化合物(I)が、他の化合物(I)を合成するための中間体(例えば、化合物A-47およびA-62)として役立ち得ることを理解するものと思われる。
【0035】
本発明の化合物は、抗細菌特性および/または抗真菌特性を有することが見出されており、従って、真核生物において感染症を予防するのにおよび/または治療するのに使用することができる。ヒトでの抗感染症の用途としては、本発明の化合物の有効量を、任意で薬学的に許容される担体と組み合わせて使用する。組成物は乾燥していてもよく、または溶液であってもよい。治療は、既存の感染症に対抗する場合には、反応性とすることができ、感染症に罹りやすい生物で感染を予防する場合には、予防的とすることができる。本発明の化合物は、薬剤耐性菌株、例えば、MRSA(メチシリン耐性S. アウレウス(S. aureus))、MRSE(メチシリン耐性S. エピデルミディス(S. epidermidis))、PRSP(ペニシリン耐性S. ニューモニエ(S. pneumoniae))またはVRE(バンコマイシン耐性エンテロコッキ(Enterococci))による感染症を治療するのに使用されることが好ましい。「薬剤耐性」とは、細菌が従来の抗生物質による治療に耐性であることを意味する。
【0036】
治療できる宿主生物としては、真核生物、特に植物および動物が挙げられる。植物は、小麦、米、トウモロコシ、大豆、モロコシ、およびアルファルファのような農業的に重要な作物とすることができる。関心対象の動物としては、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、および霊長類(ヒトを含む)が挙げられる。従って、本発明の別の局面では、化合物(I)の有効量を細菌感染の治療を必要とする患者に投与する段階を含む、細菌感染、特にグラム陽性菌による感染を治療する方法が提供される。本発明の化合物は、哺乳類における細菌感染または真菌感染の治療用の薬剤の調製に使用することができる。化合物は、経口的に、局所的に、非経口的に(例えば、静脈内に、皮下に、腹腔内に、経皮的に)または吸入により投与することができる。
【0037】
本発明者らの発明の実践は、限定する目的ではなく例証する目的で提供される以下の実施例を参照することにより、さらに理解することができる。
【0038】
合成-概論
t-ブチルオキシカルボニルに対してBoc(およびその対応する無水物に対して(Boc)2O);ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリドに対してBopCl;ジイソプロピルエチルアミンに対してDIEA;ジシクロヘキシルカルボジイミドに対してDCC;4-(ジメチルアミノ)ピリジンに対してDMAP;N,N-ジメチル-ホルムアミドに対してDMF;O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェートに対してHATU;2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェートに対してHBTU;MP-シアノボロハイドライドに対してMP-CNBH3;N-メチルピロリドンに対してNMP;ジエチルエーテルに対してEt2O;酢酸エチルに対してAcOEt;ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロフォスフェートに対してPyBop;室(気)温に対してRT;およびプロトンNMRに対して1H-NMRを含む、種々の用語に対し、よく用いられる略語および頭字語を利用する。
【0039】
中間化合物および最終化合物の構造は、1H-NMRおよび質量分析法により確認した。特に断りのない限り、1H-NMRおよび質量スペクトルは、指定の構造と一致し、顕著な不純物の存在を示さなかった。
【0040】
(a) 本発明の特定化合物の合成との関連で記述される中間体は、必要な変更を加えて、本発明の他の化合物の作製にも使用できること;(b) ある種の実験の項では、中間化合物の調製しか記述されないこと(これは、本発明の最終化合物へのその組込みが、本明細書に記載の合成方法に従ってまっすぐに進むためである);ならびに(c) 本明細書で繰返されるある種の反応について、詳細な反応および作業条件は、簡略にするため、どの場合にも示されない場合があり、本出願の他の箇所に記述される条件は、必要以上に実験することなく、手近にその事例に適応できることを当業者は理解するものと思われる。
【0041】
合成-基本手順
化合物(I)を作製するための2種類の一般的な合成戦略を記述する。図1aでは、Ar、Py、およびPhを含む中間体(Ia)をImおよびR(またはRの前駆物質)を含む補完的な中間体(Ib)とカップリングさせて、化合物(I)を得る。図1bでは、Py、Ph、ImおよびR(またはRの前駆物質)を含む中間体(Ic)を芳香族カルボン酸(Id)とカップリングさせて、化合物(I)を得る。どちらのスキームでも、R基をカップリング工程後にさらに修飾するかまたは誘導体化して、化合物(I)において異なる所望のRを得ることができる。通常、最終化合物は、逆相HPLC(Hamilton PRP-1カラム、60分でCH3CN/0.5% AcOH水溶液を0%から60%へ、310 nmでUV検出)を利用して精製した。
【0042】
合成-特定化合物
実施例A
アミン4
図2を参照して、1-メチル-4-ニトロイミダゾール-2-カルボン酸エチル1(10.0 g, 50 mmol)および1(2-アミノエチル)-4-ヒドロキシピペリジン2(10.0 g, 69 mmol)の1,4-ジオキサン(10 mL)溶液を1時間還流し、RTまで冷却して、CH2Cl2(200 mL)で処理した。有機溶液をH2O(3×100 mL)および塩水(50 mL)で洗浄して、乾燥(Na2SO4)させた。この溶媒を蒸発させて、生じた固形物をAcOEt/ヘキサンから2回再結晶させて、黄色の結晶性ニトロ化合物3(5 g, 収率34%)を得た。ニトロ化合物3(3.0 g, 10 mmol)をCH2Cl2/MeOH (100 ml;10対1)に溶解させて、Pd/カーボンブラック(150 mg)で処理した。この混合液をH2雰囲気(5気圧)下でRTにて2時間撹拌し、セライトに通して濾過した。濾液の蒸発によりアミン4(2.5 g, 93%)を得た。これはさらに精製せず、続くカップリング反応に使用した。
【0043】
実施例B
カルボン酸11
図3を参照して、アミノエステル6(2.7 g)のAcOEt(20 mL)溶液をRTにてピリジン(20 mL)およびニトロ酸クロリド5(3.6 g)で処理し、1時間還流し、RTまで冷却して、AcOEt(200 mL)およびH2O(100 mL)で希釈した。有機層をH2O(3×100 mL)および塩水で洗浄した。溶媒の蒸発によりニトロエステル7を黄色の固形物として得た。MeOHに溶解させたニトロエステル7のPd触媒による水素化(上記と同様)によりアミノエステル8を得た。
【0044】
イソキノリンカルボン酸9 (1.5 g)、HBTU(3.7 g)、およびDIEA(2 mL)のNMP(30 mL)溶液を35℃で30分間撹拌し、アミノエステル8(2.2 g)で処理して、60℃で2時間撹拌した。RTまで冷却後、この混合液を氷水(300 mL)に注ぎ込んで、生じた沈殿物をH2O(3×50 mL)で洗浄し、乾燥させて、三量体エステル10を得た。60℃で2時間、MeOH/H2O中にて1M NaOHを用いたエステル10の処理、および1M HClを用いたpH 5までの酸性化により、沈殿物を形成させた。この沈殿物をH2Oで洗浄し、乾燥させて、カルボン酸11を蒼白色の固形物として得た。
【0045】
実施例C
化合物A-19
図4を参照して、カルボン酸11(5.0 g, 12.0 mmol)およびBopCl(3.0 g, 13.2 mmol)のNMP(40 mL)溶液をRTにてDIEA(3.1 g, 24.0 mmol)およびDMAP(0.3 g, 2.5 mmol)で処理し、30分間撹拌して、アミン4(3.5 g, 13.3 mmol)のNMP(5 mL)溶液で処理した。この混合液を60℃で30分間撹拌し、それから撹拌氷水450 mLに注ぎ込んだ。生じた沈殿物を回収し、H2O(2×100 mL)で洗浄し、凍結乾燥させて、化合物A-19 (4.1 g, 収率52%)を得た。

【0046】
実施例A、B、およびCはともに、特に化合物A-19に関連して、図1aの一般的アプローチを利用した化合物(I)の合成について例証しているが、しかしカルボン酸11および/またはアミン4の類似体を用いることにより同様の方法で他の化合物(I)を作製して、そのような他の化合物(I)を得ることができる。化合物A-10は、そのような方法により合成された。
【0047】
実施例D
アミン-アセタール14
図5を参照して、1-メチル-4-ニトロイミダゾール-2-カルボン酸エチル1(4.0 g, 20 mmol)および2,2-ジメトキシエチルアミン12(3.5 g, 33 mmol)の混合液を110℃で20分間撹拌し、AcOEt(200 mL)で処理し、H2O(3×50 mL)および塩水で洗浄して、乾燥(Na2SO4)させた。この溶液を20 mLに濃縮し、ヘキサン(100 mL)で処理し、-10℃に12時間冷却して、ニトロ-アセタール13(3.5 g, 収率69%)の黄色結晶を得た。ニトロ-アセタール13の水素化をアミン4について上述した同一手順に従って行い、アセタール14を定量的に得た。
【0048】
実施例E
化合物15
図6を参照して、カルボン酸11(4.6 g, 11.1 mmol)およびBopCl(2.81 g, 11.1 mmol)のNMP(30 mL)溶液をDIEA(7.0 mL)およびDMAP(0.12 g, 1.1 mmol)で処理し、RTで30分間撹拌し、アセタール14(3.2 g, 14.0 mmol)のNMP(3 mL)溶液で処理して、60℃で30分間撹拌した。この溶液を撹拌氷水300 mLに注ぎ込んだ。生じた沈殿物を濾過により回収し、H2O(2×50 mL)で洗浄し、凍結乾燥下で乾燥させて、化合物15(5.2 g, 収率75%)を得た。Ar-Py-Ph-Imの骨格を持つ化合物15は、以下の実施例Fで説明されるように、化合物(I)を合成するために多目的に使える中間体である。
【0049】
実施例F
化合物17
さらに図6を参照して、MP-シアノボロハイドライド(200 mg)を化合物15(70 mg)およびアミン16(100 mg)のTHF(3 mL)溶液に加えた。Cl2CHCO2H(0.5 mL)を加えた。この混合液を密封して、150℃で10分間、マイクロ波反応器に入れた。固形物を濾過により除去し、得られた溶液をHPLCにより精製して、化合物17を得た。
【0050】
実施例D、E、およびFはともに、多数の化合物(I)を所望のアミン16による化合物15の還元的アミノ化によって作製できる図1aのアプローチの変形について例証している。この方法で作製できる化合物の具体例には、A-11〜A-18、A-20〜A-46、A-48〜A-52、A-54、A-69〜A-72、およびA-81が挙げられる。
【0051】
実施例G
化合物18
図7を参照して、二量体18は、DMF中で90℃にて15時間、Boc-保護アミノピロールOBtエステルを4-アミノ安息香酸エチルにカップリングさせることにより調製した。
【0052】
化合物20
さらに図7を参照して、カルボン酸18(1.7 g, 4.5 mmol)およびBopCl(1.27 g, 5.0 mmol)のNMP(20 mL)溶液をDIEA(1.3 g, 10.0 mmol)およびDMAP(0.12 g, 1.0 mmol)で処理し、RTで30分間撹拌し、アミン4(1.34 g, 5.0 mmol)のNMP(2 mL)溶液で処理して、60℃で30分間撹拌した。この溶液を撹拌氷水300 mLに注ぎ込んだ。生じた沈殿物を濾過により回収し、H2O(2×100 mL)で洗浄し、凍結乾燥して、保護された化合物19(1.46 g, 収率54%)を得た。19(0.80 g)のMeOH(10 mL)溶液をRTにてHClガスで処理し、30分間撹拌し、それからEt2O(100 mL)で処理した。生じた沈殿物を濾過により回収し、乾燥させて、アミン20を塩酸塩(700 mg, 92%)として得た。
【0053】
実施例H
化合物22
さらに図7を参照して、カルボン酸21(ArCO2H, 0.12 mmol, 1.2当量)、HATU(46 mg, 0.12 mol)、DIEA(31 mg, 0.24 mmol)のNMP(1 mL)混合液をRTで30分間撹拌し、アミン20(58 mg, 0.1 mmol, HCl塩)のDIEA(65 mg, 0.5 mmol)およびNMP(1 mL)溶液で処理して、60℃で30分間撹拌した。未精製物質の分取HPLC精製により、化合物22を得た。
【0054】
実施例FおよびGはともに、図1bの一般的アプローチによる化合物(I)の合成について例証している。アミン20とカップリングさせるのに適当なカルボン酸21を選択することで、各種の化合物(I)を合成することができる。この方法で合成される化合物の例としては、化合物A-1〜A-7およびA-9が挙げられる。
【0055】
実施例I
化合物A-47
図8を参照して、エチルエステル1(20 g)および1(2-アミノエチル)ピペラジン23(20 g)の混合液をジオキサン中で10分間100℃に加熱した。RTまで冷却後、Et2O(1000 mL)を混合液に加えた。生じた沈殿物を濾過により回収し、AcOEt(3×200 mL)、Et2O(2×100 mL)で洗浄し、乾燥させて、ニトロ中間体24(23 g, 収率82%)を得た。ニトロ中間体24(5.6 g)のCH2Cl2(100 mL)溶液をRTにて(Boc)2O(4.8 g)およびDMAP(0.24 g)で処理し、1時間撹拌して、0.1 N NaOH(50 mL)、H2O(50 mL)および塩水で洗浄し、それから乾燥(Na2SO4)させた。溶媒の蒸発により、ニトロ化合物25が黄色の固形物(4.5 g, 収率52%)として残った。MeOHおよびCH2Cl2に溶解させたニトロ化合物25のPd触媒による水素化により、対応するアミノイミダゾール26を定量的に得た。実施例Cの手順を利用して、カルボン酸11とのアミノイミダゾール26のカップリングを行い、化合物A-55を得た。MeOH中でのHClによる化合物A-55の脱保護(上記のとおり)により、化合物A-47を塩酸塩として得た。
【0056】
実施例J
化合物A-63
図9は、化合物A-63およびその同族化合物A-77〜A-80の合成について図解している。この手順を、特に化合物A-63に関連して本明細書に記述する。つまり、化合物A-47の塩酸塩(115 mg)および酸化プロピレン(200 mg)のNMP(1 mL)およびDIEA(0.3 mL)溶液を135〜180℃で10分間加熱した。分取HPLC精製により、化合物A-63を酢酸塩として得た。化合物A-77〜A-80は同様に、必要な変更を加えて、化合物A-47から調製した。
【0057】
実施例K
化合物A-58
さらに図9を参照して、化合物A-47の塩酸塩(50 mg)のDMF(2 mL)およびDIEA(0.1 mL)溶液をBrCH2CN(0.1 mL)で処理して、RTで10分間撹拌した。未精製混合液のHPLC精製により、化合物A-58を酢酸塩として得た。
【0058】
実施例L
化合物A-75
化合物A-47は、図10に図解されているように、本発明の他の化合物を合成するための前駆物質として役立ち得る。化合物A-47の塩酸塩(137 mg)および(D)-グルクロン酸(77 mg)のNMP(10 mL)およびDIEA(1.0 mL)溶液をPyBop(230 mg)で処理して、60℃で12時間撹拌した。未精製混合液のHPLC精製により、化合物A-75を酢酸塩として得た。
【0059】
実施例M
化合物A-56
さらに図10を参照して、化合物A-47の塩酸塩(50 mg)のNMP(5 mL)およびDIEA(1.0 mL)溶液をCH3SO2Cl(50 mg)で処理して、RTで30分間撹拌した。未精製混合液のHPLC精製により、化合物A-56を酢酸塩として得た。
【0060】
実施例N
化合物A-64およびA-65
さらに図10を参照して、Boc-Gly-OH(114 mg, 0.65 mmol)およびBopCl(165 mg, 0.65 mmol)のNMP(2 mL)溶液をDIEA(167 mg, 1.3 mmol)およびDMAP(16 mg, 0.13 mmol)で処理し、RTで30分間撹拌し、それから化合物A-47の塩酸塩(360 mg, 0.5 mmol)のNMP(1 mL)およびDIEA(0.5 mL)溶液で処理した。この混合液を60℃で30分間撹拌し、それから撹拌氷水40 mLに注ぎ込んだ。生じた沈殿物を濾過により回収し、H2O(2×20 mL)で洗浄し、凍結乾燥により乾燥させて、化合物(170 mg, 収率43%)を得た。化合物A-64(130 mg)のMeOH(10 mL)溶液をRTにて無水HClガスの気流で2分間処理した。Et2O(40 mL)の付加により沈殿物を得た。この沈殿物を濾過により回収し、乾燥させて、化合物A-65を塩酸塩として得た。
【0061】
実施例O
化合物A-61およびA-62
図11を参照して、0℃で、DCC(2.06 g, 10 mmol)およびDMAP(122 mg, 1 mmol)をBoc-Gly-OH 27(1.75 g, 10 mmol)および2-ブロモエタノール28(1.24 g, 10 mmol)のCH2Cl2(20 mL)溶液に加えた。この混合液を0℃で30分間撹拌して、生じた沈殿物を濾過により除去した。この濾液を濃縮して未精製の中間体29を得た。これをさらに精製せず、次の反応に使用した。中間体29のDMF(100 mL)溶液をニトロ中間体24(2.8 g, 10 mmol)およびNEt3(1.01 g, 10 mmol)で処理し、60℃で12時間撹拌し、それからAcOEt(200 mL)で処理した。有機層をH2O(3×100 mL)および塩水で洗浄して、乾燥(Na2SO4)させた。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(SiO2)で未精製物質を精製し、Boc保護化合物30(1.2 g)を得た。化合物30のPd触媒による水素化により、化合物31を得た。カルボン酸11との31のカップリングを実施例Cの手順に従って行い、化合物A-61を得た。飽和HCl/MeOH溶液中での化合物A-61の脱保護により、化合物A-62を塩酸塩として得た。
【0062】
実施例P
化合物A-66およびA-67
図13を参照して、化合物A-66およびA-67は、実施例Oで記述した手順に従い、化合物3および35から合成した。
【0063】
実施例Q
化合物A-68
化合物A-66(100 mg)、SO3・NEt3、NMP(4 mL)およびDIEA(0.2 mL)の混合液を140℃で2分間撹拌し、RTまで冷却し、H2O 30 mLで処理し、それから1M HCl水溶液を用いてpH = 4まで酸性化した。生じた沈殿物を遠心により回収し、H2O(2×30 mL)で洗浄して、化合物A-68を得た。
【0064】
実施例R
化合物A-73およびA-76
図11に戻って、化合物A-62は、本発明の他の化合物に対する前駆物質として役立ち得る。実施例Qの手順を利用した化合物A-62および三酸化硫黄-トリエチルアミン複合体の反応により、化合物A-73を得た。実施例Lの手順に従った化合物A-62および(D)-グルクロン酸の反応により、化合物A-76を得た。
【0065】
実施例S
化合物A-74
化合物A-74は、実施例Lの手順を利用して、化合物A-66および(D)-グルクロン酸から調製した。
【0066】
実施例T
化合物A53、A-57、A-59、およびA-60
図12を参照して、化合物A-19(200 mg)のNMP(5 mL)溶液をRTにてDIEA(0.1 mL)および塩化アクリロイル32(100 mg)で処理した。この混合液をRTで10分間撹拌して、AcOEt(20 mL)で希釈した。生じた沈殿物を濾過により回収し、Et2Oで洗浄し、乾燥させて、中間体33を得た。中間体33(50 mg)のNMP(2 mL)溶液をRTにてN-イソプロピルピペラジン(0.5 mL)で処理し、それから60℃で30分間撹拌した。粗生成物をHPLCにより精製して、化合物A-53を得た。化合物A-57、A-59、およびA-60は同様に、適当なアミン34を用いることで、この一般的なアプローチにより、必要な変更を加えて作製した。
【0067】
実施例U
化合物A-7
化合物A-7は、MeOH中でのPd触媒による水素化により、化合物A-8から調製し、続けてHPLCによる精製を行った。
【0068】
インビトロ生物活性-最小阻害濃度
インビトロ生物活性のデータは、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC 27660、メチシリン耐性株(MRSA);ATCC13709、メチシリン感受性株(MSSA))、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)(ATCC 29212)、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)(ATCC 11778)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 49619)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(ATCC 38247)、大腸菌(Escherichia coli)(ATCC 25922)、およびモラクセラ(Moraxella)(現在では、ブランハメラ(Branhamella))カタラーリス(catarrhalis)(ATCC 25238)を含む、さまざまな微生物について収集した。本発明のいくつかの化合物が、グラム陰性細菌である大腸菌に対する活性、つまりポリ(複素芳香族カルボキサミド)抗菌薬の間ではあまり見られない特性を示すことは注目に値するものである。
【0069】
好ましくは、本発明の化合物は、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC 27660)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 49619)、およびエンテロコッカス・フェシウム(ATCC 29212)のうちの少なくとも一つに対して4 μg/mLまたはそれ以下の最小阻害濃度を有する。
【0070】
これらの化合物の最小阻害濃度(MIC)は、(1)米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の書類M7-A4(NCCLS, 1997)のガイドライン;(2)米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の書類M11-A4(NCCLS, 1997)のガイドライン;ならびに(3)米国臨床検査標準委員会(NCCLS)の書類M27-T(NCCLS, 1995)のガイドラインおよび参照方法に規定されているとおり、マイクロタイタープレートでの米国臨床検査標準委員会(NCCLS)のブロス微量希釈アッセイを利用して測定した。抗真菌アッセイの場合、Murray, PR., 1995「Manual of Clinical Microbiology」(ASM Press, Washington, DC.)で推奨される方法を採用した。
【0071】
この結果は、下記の表Bに示されており、次のように記号化されている:
以下に対して試験した生物:
A = S.アウレウスATCC 13709
B = S.アウレウスATCC 27660
C = E.フェカーリスATCC 29212
D = B.セレウスATCC 11778
E = S.ニューモニエATCC 49619
F = C.アルビカンスATCC 38247
G = 大腸菌ATCC 25922
H = M.カタラーリス(ATCC 25238)
活性:
+++ = MIC < 4 μg/mL
++ = 4 < MIC < 12 μg/mL
+ = 12 < MIC < 32 μg/mL
>32 = 32 μg/mLを超えるMIC
【0072】
(表B)



【0073】
インビトロ生物活性-拡散分析
本発明の化合物に関する拡散アッセイは、NCCLSガイドライン(抗菌感受性試験の基準実施法M100-S12 vol.22および抗菌ディスク感受性試験の基準実施法M2-A7 vol.20)に従い、以下の変更を加えて行った:
1. 処方クリームのディスク拡散:無菌の濾紙ディスクを0.85%塩化ナトリウム液で湿らせて、クリームをディスクの片面に塗布した。このディスクを、クミーム面を下にして、寒天(トリプティックソイ寒天培地、またはTSA)の上に置いた。
2. 1.2%陽イオン調整ミューラー・ヒントン寒天(CAMHB)重層培地のウェルからの処方クリームの拡散:ガラスシリンダーを使用して、試験微生物を含有する1.2% CAMHBの15ml重層培地のなかにウェルを作り出した。クリームをこのウェルに塗布した。
【0074】
一般的に、植菌部位(ディスクまたは場合によってはウェル)からの寒天を介した薬剤の拡散により、試験化合物の濃度勾配が生じる。細菌増殖が薬剤により阻害されることで、阻害域が生ずる。阻害域が大きいほど、活性の高い化合物ということになる。
【0075】
化合物の活性は、ディスク周辺の阻害域の測定により決定した。この結果は表C、D、およびEに示されている。表Cの拡散結果では、化合物なしの拡散が測定されている。表DおよびEの拡散結果では、クリームに処方された化合物の拡散が測定されている。
【0076】
(表C)非処方化合物のディスク拡散

(6.3 mmはディスクの直径であり、阻害域/拡散なしを示す。)
滅菌水に6倍希釈した後に見られた化合物の沈殿
【0077】
(表D)処方クリームのディスク拡散

(6.3 mmはディスクの直径であり、阻害域/拡散なしを示す。)
バシトラシン、ネオマイシン、およびポリミキシンBを含有
【0078】
(表E)1.2% CAMHA重層培地のウェルからの処方クリームのディスク拡散

(8 mmはウェルの直径であり、阻害域/拡散なしを示す。)
【0079】
上記の結果から、試験化合物が、局所用抗生物質として用いるのに必要な拡散特性を有することが実証される。
【0080】
インビボ生物活性
本実施例により、マウスの好中球減少性の大腿モデルを用いて、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウスATCC 33591による感染に対するインビボ効果が実証される。
【0081】
S.アウレウスATCC 33591の培養液を対数増殖期にまで一晩増殖させて、それから600 nmの光学密度およそ0.1までリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)に希釈したところ、濃度およそ108 cfu/mLとなった。この懸濁液を最終濃度106 cfu/mLとするためリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)に100倍希釈した。
【0082】
非近交系の雌ICRマウス(体重およそ25グラム)を、植菌前の第1日および第4日に、シクロホスファミド(200 mg/kg体重、腹腔内注射)を用いた処理により好中球減少性にさせた。マウス3〜5匹の群に、細菌(およそ106 cfu/mL) 0.05 mLをその大腿前部に植菌した。各群を感染から2時間後、媒体または試験化合物で経静脈的に処理した。マウスを処理後の所定の時点(例えば、5時間または24時間)で屠殺して、大腿を無菌的に回収した。各大腿を無菌の生理食塩水に入れて、ホモジナイズした。寒天プレートにプレーティングするため、組織ホモジネート液を適当に希釈した。コロニー数を記録(cfu/大腿)して、対照群と比較した。このデータは、下記の表Fに示されている。
【0083】
(表F)マウスの好中球減少性の大腿モデル

【0084】
インビボ効果が、媒体のみを投与した動物でのコロニー数(log cfu/グラム組織)と比べたときの、化合物で処理した動物でのコロニー数の減少により示された。
【0085】
本発明の前述の詳細な説明には、本発明の特定の部分または局面と主にまたはもっぱら関連している文が含まれている。これは明確化のためおよび便宜のためであること、特定の特徴は、開示されている文のみではなくそれ以上に関連する可能性があること、ならびに本明細書の開示には、別の文で見出される情報の適当な組み合わせが全て包含されることが理解されるべきである。同様に、本明細書の各種の図面および説明は、本発明の特定の態様に関連するが、特定の特徴が特定の図面または態様との関連で開示される場合、そのような特徴は、別の図面もしくは態様との関連で、別の特徴と組み合わせて、または本発明のなかで広く、適当である限り、使用することもできると理解されるべきである。
【0086】
さらに、本発明はある種の好ましい態様に関して特に記述されているが、本発明はそのような好ましい態様に限定されることはない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
(図1〜図13)図1a、図1b、図2〜13は、本発明の化合物を作製するのに使用される化学反応を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)記載の化合物、ならびにその溶媒和物、プロドラッグ、および薬学的に許容される塩:

式中、Arは、非置換もしくは置換フェニル基、非置換もしくは置換5員ヘテロアリール基、非置換もしくは置換6員ヘテロアリール基、非置換もしくは置換6,6-縮合環アリールもしくはヘテロアリール基、非置換もしくは置換5,5-縮合環ヘテロアリール基;非置換もしくは置換5,7-縮合環アリールもしくはヘテロアリール基、または非置換もしくは置換6,5-縮合環ヘテロアリール基であり;および
Rは、12もしくはそれ以下のpKbを有する塩基性基または四級化窒素基を含むC1〜C28のアルキルまたはヘテロアルキル部分である。
【請求項2】
Arが、非置換もしくは置換フェニル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、フラニル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、フラザニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、ナフチル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、インドリル、またはベンゾフラニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Arが、以下からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:

【請求項4】
Arが

である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Rが

である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Rが

である、請求項1記載の化合物:
式中、R1およびR2は独立して、C1〜C16アルキルまたはヘテロアルキル部分であり、かつ互いに連結して、これらが結合する窒素と共に、5〜7員環を形成してもよい。
【請求項7】
Rが、以下からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:

【請求項8】
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(ATCC 27660)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(ATCC 49619)、およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(ATCC 29212)のうちの少なくとも一つに対して4 μg/mLまたはそれ以下の最小阻害濃度を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
請求項1記載の化合物の有効量を細菌感染の治療を必要とする患者に投与する段階を含む、哺乳類において細菌感染を治療する方法。
【請求項10】
細菌感染が薬剤耐性菌による感染である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
哺乳類における細菌感染の治療用の薬剤を調製するための請求項1記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2006−509027(P2006−509027A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558657(P2004−558657)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/039260
【国際公開番号】WO2004/052304
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(503459372)オーシェント ファーマシューティカルズ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】