説明

DLL回路

【課題】補間回路の最小動作周期を低減でき、DLLの最大動作周波数を向上させることができる、DLL回路を提供する。
【解決手段】位相検知回路21は、入力される基準クロック信号とレプリカ回路17から出力されるクロック信号との位相の差を検知し遅延制御回路22に出力する。遅延制御回路22は、位差の信号を基に、基準クロック信号の位相を調整する制御信号を出力する。そして、遅延制御回路22から出力される制御信号を基に、マルチプレクサ12、13は、粗調整遅延回路10からインバータ2段分の遅延差を有する信号を選択して出力し、第1の微調整遅延回路14は、マルチプレクサから入力した2段分の遅延差の信号を基に、インバータ1段分の遅延差を有する信号を出力する。第2の微調整遅延回路15は、この1段分の遅延差を有する信号に基づいてクロック信号の位相を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に、補間回路の最小動作周期を低減でき、DLLの最大動作周波数を向上させることができる、DLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子システムは高速化され、システムを構成する半導体装置間のデータ転送速度は非常に高速化されている。そのため半導体装置においても高速データ転送動作が求められ、半導体装置内部ではクロックに同期させたクロック同期方式が採用されている。例えば半導体記憶装置としては、シンクロナスDRAM( Synchronous Dynamic Random Access Memory、以下SDRAMと略記する)がある。さらにSDRAMを進化させ、クロックの立上り/立ち下がりエッジに同期させたDDR(Double Data Rate)、DDR2及びDDR3方式のSDRAMが開発されている。
【0003】
これらのSDRAMにおいては、クロックに同期させるためにDLL(Delay−Locked Loop)回路が採用され、内部クロックと外部クロックとのタイミングを同期させている。
【0004】
図6に、CMOSを用いた従来のDLL回路の構成例を示す(特許文献1を参照)。図6に示すDLL回路は、本願発明と共通の部分が多いので、その構成の概要について説明しておく。
【0005】
図6に示すDLL回路において、粗調整遅延回路10は、複数の遅延素子11を縦続接続して構成される遅延回路である。この粗調整遅延回路10は、基準クロック信号を入力し、互いに異なる遅延時間の複数のタップのうち選択されたタップより、入力した信号を遅延させた信号を出力する遅延回路(「ディレイライン」ともいう)である。
【0006】
マルチプレクサ12(ODD)は、粗調整遅延回路10の奇数番目のタップから出力される奇位相信号の一つを選択して出力するスイッチであり、マルチプレクサ(EVEN)13は、粗調整遅延回路10の偶数番目のタップから出力される偶位相信号の一つを選択して出力するスイッチである。マルチプレクサ12、13から出力される奇位相信号(O0)と偶位相信号(E0)を入力とする微調遅延回路18は補間回路である。位相検知回路21は微調遅延回路18の出力信号と基準クロック信号との位相差を検出し、遅延制御回路22に出力する。マルチプレクサ12、13は、遅延制御回路22からの出力信号に基づき、粗調整遅延回路10の偶数番目のタップと、粗調整遅延回路10の奇数番目のタップをそれぞれ選択する。また微調遅延回路18は遅延制御回路22の出力に基づき、入力信号の位相差を内分する比率を変える。尚、図6には図示されていないが、出力クロックはレプリカ回路に入力され、レプリカ回路の出力が位相検知回路に入力される構成が一般的であり、この構成によって、DLL回路はレプリカ回路における遅延量に対応した位相の調整を入力信号に対して行なうものである。
【0007】
また、図7は、図6に示したDLL回路の構成において、粗調整遅延回路(CDL;Coarse Delay Line)10と、粗調整遅延回路(CDL)10の出力から奇位相信号と偶位相信号を選択出力するマルチプレクサ(MUX)12、13と、微調遅延回路(FDL;Fine Delay Line)18の接続構成の一例を示す図である。図6に示した粗調整遅延回路10は、CDL101〜104に対応しており、微調遅延回路18は、FDL210に対応している。
【0008】
図7を参照すると、CDL201は、第0番目奇位相COUTO0、第0番目偶数位相COUTE0の信号を出力し、CDL202は、CDL201の出力を入力し、第1番目奇位相COUTO1、第1番目偶数位相COUTE1の信号を出力する。また、CDL203は、CDL202の出力を入力し、第2番目奇位相COUTO2、第2番目偶数位相COUTE2の信号を出力し、CDL204は、CDL203の出力を入力し、第3番目奇位相COUTO3、第3番目偶数位相COUTE3の信号を出力する。第0乃至第3の奇位相COUTO0〜3は、マルチプレクサ205に入力され、遅延制御回路22の出力である選択信号によりその一つが選択され、第0乃至第3の偶相COUTE0〜3は、マルチプレクサ206に入力され、遅延制御回路22の出力である選択信号によりその一つが選択され、マルチプレクサ205、マルチプレクサ206の出力は、それぞれ、次の段のマルチプレクサ207,マルチプレクサ208に入力され、マルチプレクサ207,マルチプレクサ208の出力が補間回路210に入力される。
【0009】
また、図8は、図7の粗調整遅延回路(CDL)一段の構成を示す図であり、遅延素子を構成するCMOSゲート回路にインバータを使用した例である。図8において、入力信号CDLjを入力とするインバータ211の後段に、2段一組のインバータ対が7組直列接続され、最後尾にインバータ226が接続されて出力端子に接続されCDLj+1が出力される。
【0010】
また、入力信号CDLjを入力とするインバータ211の後段には、トライステートインバータ(クロックドインバータ)311が接続され、トライステートインバータ311の出力ノードには、遅延段を構成するインバータ対の偶数番目の組(214と215、218と219、222と223)の出力が、トライステートインバータ313、315、317を介して接続されており、バッファ227に入力に接続され、バッファ227の出力が奇数位相出力端子COUTOjに接続されている。
【0011】
また、遅延段の第1組を構成するインバータ対212、213の出力がトライステートインバータ312に接続され、トライステートインバータ312の出力には、遅延段を構成するインバータ対の奇数番目の組(216と217、220と221、224と225)の出力が、トライステートインバータ314、316、318を介して接続されており、バッファ228に入力に接続され、バッファ228の出力が偶数位相出力端子COUTEjに接続されている。
【0012】
上記構成により、奇数位相出力端子COUTOjと、偶数位相出力端子COUTEjとに、インバータ2段分の遅延差を有する信号を発生させている。
【0013】
このように、従来の粗調整遅延回路においては、インバータ対により2段分ごとに遅延信号を発生させ、遅延段を構成するインバータ対の奇数番目の組の出力と、遅延段を構成するインバータ対の偶数番目の組の出力とを選択して、2段分の遅延差を持つ2つの信号を出力するように構成されている。そして、この異なるタイミングの2出力を微調遅延回路18で補間することによって高精度の位相調整を実現している。
【0014】
上述したように、粗調整遅延回路10から出力されて補間される2出力の遅延時間差は、最低でもインバータ2段分となる。このため、微調遅延回路18では、最低でもインバータ2段分の遅延時間差を持つ信号に対して補間を行なうことになる。
【0015】
例えば、図9に示すように、インバータ2段分の差分の信号をE0及びO0とし、補間された信号をMIX0_Tとすると、遅延制御回路22からの制御信号によってE0の寄与が100%と制御された場合、MIX0_Tの立下り波形はE0のみによって決められる。
【0016】
一方、O0の寄与が100%の場合、MIX0_Tの立下り波形はO0のみによって決められる。さらに、E0とO0の補同比率に応じて、MIX0_Tの立下り波形、すなわちMIX0UTの立下りタイミングは決められる。なお、MIX0UTの立上りタイミングは、逆相信号を同様に補間する回路によって決められる。
【0017】
ここで、図9に示すように、インバータの遅延時間をtDとすると、2tD差の入力E0とO0を線形に補間するために、しきい値VDD/2まで補間信号MIX0_Tが放電される時間は2tD以上を要する。さらにE0−O0間の遅延時間2tD、及び補間信号MIX0_TがVSSに到達する時間2tDを要するため、補間信号MIX0_Tの立ち下がり動作に合計6tDを要する。すなわち、両エッジを補間するためには、補間回路の最小動作周期tCYCは12tDとなり、DLL回路の最大動作周波数を律速していた。したがって、DLL回路の最大動作周波数を向上させるために、この補間回路の最小動作周期tCYCを短縮することが望まれていた。
【特許文献1】特開2003−91331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、従来のDLL回路においては、最低でもCMOSゲート回路(例えば、インバータ)2段分の遅延時間差を持つ信号に対して補間を行なっており、その分、補間回路の最小動作周期tCYCが長くなりDLLの最大動作周波数を律速していた。このため、DLL回路の最大動作周波数を高めるために、この補間回路の最小動作周期tCYCを短縮することが望まれていた。
【0019】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、補間回路の最小動作周期を低減でき、DLLの最大動作周波数を向上させることができる、DLL回路、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のDLL回路は、複数の第1の遅延素子を有し、第1の信号を遅延して第2の信号を出力する第1の遅延回路と、複数の第2の遅延素子を有し、前記第1の信号を遅延して第3の信号を出力する第2の遅延回路とを備え、前記第1の信号の一方から他方への論理レベルの変化に対応して前記第2の信号に現れる一方から他方への論理レベルの変化の遅延時間と、前記変化に対応して前記第3の信号に現れる一方から他方への論理レベルの変化の遅延時間との差は前記第1の遅延素子1段の遅延時間と実質的に等しいことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のDLL回路は、前記第1の遅延素子の数と前記第2の遅延素子の数とは互いに等しいことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のDLL回路は、前記遅延素子の各々はMOSトランジスタを含んで構成され、複数の前記第2の遅延素子のうち少なくとも一つはゲート長において前記第1の遅延素子と異なっていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明のDLL回路は、前記遅延素子の各々はMOSトランジスタを含んで構成され、複数の前記第2の遅延素子のうち少なくとも一つはゲート幅において前記第1の遅延素子と異なっていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のDLL回路は、前記第1及び第2の遅延回路の各々は第4の信号及び選択信号をさらに受け、前記選択信号が第1の状態のときは前記第1の信号に応答して前記第2及び第3の信号を出力し、第2の状態のときは前記第1の信号に代えて前記第4の信号に応答して前記第2及び第3の信号を出力することを特徴とする。
【0025】
また、本発明のDLL回路は、入力信号に対して所定の遅延量を有する出力信号を発生するDLL回路において、前記入力信号を遅延した中間信号であってその遅延量の変化単位が遅延素子1段分の遅延量よりも大きい中間信号を生成し出力する粗調整遅延部と、前記中間信号を遅延した第1及び第2の信号であってそれぞれの前記中間信号に対する遅延量の差が遅延素子1段分の遅延量に実質的に等しい前記第1及び第2の信号を生成し前記出力信号を発生する微調整遅延部とを備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明のDLL回路は、前記微調整遅延部は、前記中間信号を受けて前記第1及び第2の信号を発生する第1微調整遅延回路と、前記第1及び第2の信号を合成し出力端に前記出力信号を発生する第2微調整遅延回路とを備えたことを特徴とする。
【0027】
また、本発明のDLL回路は、前記第2微調整遅延回路は、入力ノードに前記第2の信号を受け、出力が前記出力端に接続された第1の制御回路と、入力ノードに前記第3の信号を受け、出力が前記出力端に接続された第2の制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明のDLL回路は、前記中間信号は、第1の中間信号及び第2の中間信号からなり、前記第1の中間信号と前記第2の中間信号とは、前記入力信号に対して異なる遅延時間を有し、前記微調整遅延部は前記第1及び第2の中間信号のうち前記入力信号に対する遅延量が小さいほうの信号に応答して前記第1及び第2の信号を生成することを特徴とする。
【0029】
また、本発明のDLL回路は、前記出力信号を受け、レプリカ出力信号を発生するレプリカ回路と、前記レプリカ出力信号の位相と前記入力信号の位相との位相差を検知し、位相判定信号を発生する位相検知回路と、前記位相判定信号に基づき前記第1及び第2の中間信号の前記入力信号に対する遅延量を示す情報を生成し、前記情報を前記微調整遅延部に供給する遅延制御回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明のDLL回路においては、CMOSゲート回路2段分の遅延差(例えば、インバータ2段分の遅延差)を有する信号を、CMOSゲート回路1段分の遅延差(例えば、インバータ1段分の遅延差)を有する信号に変換し、この1段分の遅延差を有する信号に基づいて位相を調整するようにしたので、これにより、補間回路の最小動作周期を低減し、DLLの最大動作周波数を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[本発明のDLL回路の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係わるDLL回路の構成を示す図である。
図1に示すDLL回路は、粗調整遅延部30、微調整遅延部31、レプリカ回路17、位相検知回路21及び遅延制御回路22を有している。粗調整遅延部30は、粗調整遅延回路10、マルチプレクサ12、13を含み、微調整遅延部31は、第1の微調整遅延回路(第1微調整遅延回路)14と、第2の微調整遅延回路(第2微調整遅延回路)15を含む。
また、図1に示すDLL回路において、粗調整遅延回路10と、マルチプレクサ12、13と、位相検知回路21は、図6に示す従来技術のDLL回路と同様な構成のものであり、同一の符号を付している。また、遅延制御回路22についても図6と同様な構成であるが、図1に示す遅延制御回路22は、第1微調整遅延回路14へ出力する信号SELRE、SEL4INVEを生成する点と、第2微調整遅延回路15へ出力する電圧信号VPEO、VNEO、VPM、VNMを生成する点とが異なる。
【0032】
以下、図1を参照して、その構成について説明する。図1に示すDLL回路において、粗調整遅延回路10は、複数の遅延素子11を縦続接続して構成される遅延回路である。この粗調整遅延回路10は、基準クロック信号を入力し、互いに異なる遅延時間の複数のタップのうち選択されたタップより、入力した信号を遅延させた信号を出力する遅延回路(「ディレイライン」ともいう)である。
【0033】
マルチプレクサ12(ODD)は、粗調整遅延回路10の奇数番目のタップから出力される奇位相信号の一つを選択して出力するスイッチであり、マルチプレクサ(EVEN)13は、粗調整遅延回路10の偶数番目のタップから出力される偶位相信号の一つを選択して出力するスイッチである。
【0034】
マルチプレクサ12、13から出力される奇位相信号(O0)と偶位相信号(E0)は、第1の微調整遅延回路14に入力される。また、第1の微調整遅延回路14から出力される信号PHE0及びPHMは、第2の微調整遅延回路(FDL;Fine Delay Line)15の入力信号となる。第2の微調整遅延回路15は補間回路である。
【0035】
バッファ回路16は、DQ信号を出力するためのバッファ回路であり、レプリカ回路17は、バッファ回路16のレプリカ(複製)であり、バッファ回路16と同じプロセス、電圧、温度依存性(PVT依存性)をもつバッファ回路である。
【0036】
位相検知回路21は、入力される基準クロック信号と、レプリカ回路17の出力信号(レプリカ出力)との位相比較を行ない、位相差の信号を位相判定結果として、遅延制御回路22に出力する回路である。
【0037】
遅延制御回路22は、位相検知回路21から出力される位相判定結果の信号を基に、遅延調整量を決定し、粗調整遅延回路10及びマルチプレクサ12、13における遅延信号の選択信号を生成する。また、遅延制御回路22は、第1の微調整遅延回路14を制御する制御信号SELRE及びSEL4INVを生成し、また、第2の微調整遅延回路15を制御する制御電圧信号VPE0、VNE0、VPM、VNMを生成する。
【0038】
この遅延制御回路22は、位相検知回路21から出力される位相判定結果の信号を基に、アップ(UP)/ダウン(DOWN)するカウンタ23と、カウンタ23における計測値をデジタル/アナログ変換して出力するDAC(DAコンバータ)24を備えており、第2の微調整遅延回路15を制御する制御電圧信号VPE0、VNE0、VPM、VNMは、DAC24から出力される。
【0039】
なお、前述の第1の信号は、信号E0(偶位相信号)が、第2の信号は、信号O0(奇位相信号)がそれぞれ相当する。また、第3の信号は、信号PHEOが相当し、第4の信号は信号PHMが相当する。また、前述の遅延制御回路22から出力される第1の制御信号は、遅延制御回路22からマルチプレクサ12、13に出力される信号が相当し、前述の第2の制御信号は、第1の微調整遅延回路14に出力される信号SELRE、SEL4INVが相当する。また、前述の第3の制御信号は、第2の微調整遅延回路15に出力される制御電圧信号VPE0、VNEO、VPM、VNMが相当する。
【0040】
図2は、図1に示すDLL回路における第1の微調整遅延回路14の構成を示す図である。この第1の微調整遅延回路14は、粗調整遅延回路10により生成される偶数段相当遅延インバータによる2段差の遅延信号O0、E0から1段差の遅延信号PHE0、PHEMを生成する回路である。
【0041】
図2に示す第1の微調整遅延回路14において、偶位相信号である遅延信号E0がインバータ100に入力され、奇位相信号である遅延信号O0がインバータ120に入力される。
【0042】
インバータ100に入力された遅延信号E0は、インバータ100により論理反転され、3段インバータ101、102、103を含む遅延部130の入力信号となり、また、4段相当のインバータ111、112、113を含む遅延部131の入力信号となる。ここで、「4段相当インバータ」とは4段分の遅延時間を持つ3段構成のインバータである。
【0043】
一方、インバータ120に入力された遅延信号O0は、インバータ120により論理反転され、3段インバータ121、122、123を含む遅延部132の入力信号となり、また、4段相当のインバータ114、115、113を含む遅延部133の入力信号となる。
【0044】
図に示す4段相当のインバータの内、インバータ112及び115がトライステートのインバータで構成され、遅延制御回路22から出力される制御信号SEL4INVEよって、入力される遅延信号E0及びO0のうち早い信号が選択され、インバータ116及び117を通して、第2の微調整遅延回路15への入力信号PHMが生成される。
【0045】
また、遅延信号E0は、インバータ100、3段インバータ101、102、103を経て、信号CDLEとして出力され、この信号CDLEはトライステートのインバータ104の入力信号となる。一方、遅延信号O0は、インバータ120、3段インバータ121、122、123を経て、信号CDLOとして出力され、この信号CDLOはトライステートのインバータ106の入力信号となる。
【0046】
このトライステートのインバータ104及び106のコントール端子は共通接続されるとともに、遅延制御回路22から出力される制御信号SELREが入力される。また、インバータ104及びインバータ106の出力側は共通接続されるとともに、インバータ105の入力に接続されている。この構成により、制御信号SELREによって、遅延信号E0及びO0の内から一方の信号が選択され、第2の微調整遅延回路15への入力信号PHE0が生成される。
【0047】
なお、図2に示す例では、3段構成のインバータ(例えば、インバータ101、102、103)と、4段相当の3段構成のインバータ(例えば、インバータ111、112、113)を使用する例を示したが、これは、「2段構成のインバータと、3段相当の2段構成のインバータ」としてもよく、また、「4段構成のインバータと、5段相当の4段構成のインバータ」としてもよい。すなわち、また、「n(n≧2)段構成のインバータと、n+1段相当のn段構成のインバータ」とすることができる。また、インバータは他のCMOSゲート回路であってもよく、例えば、ナンド(NAND)回路であってもよい。
【0048】
なお、前述の遅延部131及び遅延部133の遅延時間は、インバータ111〜115を構成するMOSトランジスタのゲート長、ゲート幅を調整することで、4段相当の遅延時間に調整することが可能である。
【0049】
図4(A)に、本発明に好適な補間回路、すなわち、第2の微調整遅延回路15の構成例を示す。図4(A)に示す補間回路は、2つのクロックドインバータを有している。第1のクロックドインバータは、PchMOSトランジスタMP11と、PchMOSトランジスタMP12と、NchMOSトランジスタMN11と、NchMOSトランジスタMN12とを直列に接続して構成されている。
【0050】
このMP11等で構成される第1のクロックドインバータにおいて、トランジスタMP11のソースは電源VDDに接続されており、トランジスタMN12のソースは接地電位GNDに接続されている。また、トランジスタMP11及びMN12は、ゲートが共通接続されており、この共通接続されたゲートに、第1の微調整遅延回路14においてE0側またはO0側から生成された制御電圧信号PHE0が入力される。また、トランジスタMP12のゲートには遅延制御回路22で生成される制御電圧信号VPE0が入力され、トランジスタMN11のゲートには、遅延制御回路22で生成される制御電圧信号VNE0が入力される。
【0051】
また、もう一方の第2のクロックドインバータは、PchMOSトランジスタMP21と、PchMOSトランジスタMP22と、NchMOSトランジスタMN21と、NchMOSトランジスタMN22とを直列に接続して構成されている。
【0052】
このMP21等で構成される第2のクロックドインバータにおいて、トランジスタMP21のソースは電源VDDに接続されており、トランジスタMN22のソースは接地電位GNDに接続されている。また、トランジスタMP21及びMN22は、ゲートが共通接続されており、この共通接続されたゲートに、第1の微調整遅延回路14においてE0側またはO0側の早い方の信号側から生成された信号PHMが入力される。また、トランジスタMP22のゲートには遅延制御回路22で生成される制御電圧信号VPMが入力され、トランジスタMN21のゲートには、遅延制御回路22で生成される制御電圧信号VNMが入力される。
【0053】
また、第1のクロックドインバータの出力端子(トランジスタMP12のドレインとトランジスタMN11のドレインの接続点)と、第2のクロックドインバータの出力端子(トランジスタMP22のドレインとトランジスタMN21のドレインの接続点)とは、ノードMIX0により共通接続されており、ノードMIX0の出力信号は、2段のインバータ151及び152を通して、信号MIXOUTとして出力される。
このように、補間回路は、2つのクロックドインバータを使用して容易に構成することが可能である。
【0054】
図4に示す補間回路の構成により、位相検知回路21の比較結果によって制御される遅延制御回路22内のカウンタ23及びDAC24により生成される信号VPE0、VNEO、VPM、VNMと、第1の微調整遅延回路14から入力される信号入力PHE0とPHMから、補間ノードMIX0の立上り及び立下り波形を制御することで、出力MIXOUTのタイミングが決定される。
【0055】
例えば、図4(B)の波形のように、遅延制御回路22からの信号によってPHE0の寄与が100%と制御された場合、VPE0が低電位、VNE0が高電位となり、MIXOの立下り波形は信号PPE0のみによって決まる。また、遅延制御回路22からの信号によってPHMの寄与が100%と制御された場合、VPMが低電位、VNMが高電位となり、MIXOの立下り波形は信号PHMのみによって決まる。さらに、信号PHE0とPHMとの補同比率に応じて、MIXOの立下り波形、すなわちMIXOUTの立下りタイミングは決められる。
【0056】
なお、本発明のDLL回路においては、効果を最大限にするために、立上り及び立下りの制御信号は共有される。また、デューティ制御回路(図示せず)を粗調整遅延回路10の前に前置し、デューティ補正をかけたクロックを粗調整遅延回路10及び第1の微調整遅延回路14及び第2の微調整遅延回路15に入力する構成とすることもできる。
【0057】
なお、前述の第1のPchMOSトランジスタはPchMOSトランジスタMP11が、第2のPchMOSトランジスタはPchMOSトランジスタMP12が、第1のNchMOSトランジスタはNchMOSトランジスタMN11が、第2のNchMOSトランジスタはNchMOSトランジスタMN12がそれぞれ相当する。また、前述の第3のPchMOSトランジスタはPchMOSトランジスタMP21が、第4のPchMOSトランジスタはPchMOSトランジスタMP22が、第3のNchMOSトランジスタはNchMOSトランジスタMN21が、第4のNchMOSトランジスタはNchMOSトランジスタMN22がそれぞれ相当する。また、前述の第1の制御電圧信号は信号VPE0が、第2の制御電圧信号は信号VNE0が、第3の制御電圧信号は信号VPMが、第4の制御電圧信号は信号VNMがそれぞれ相当する。
【0058】
[本発明のDLL回路の動作の説明]
次に、図2に示す第1の微調整遅延回路(1段差生成回路)14における遅延回路の動作を、図3に示す段数対照表を用いて説明する。
【0059】
まず、粗調整遅延回路10において遅延時間最短の出力対が選択され、E0がO0に先行する場合、E0を0段目とすると、O0は2段差の2段目となる(表の第1列)。
【0060】
この場合、遅延制御回路22から出力される信号がHigh(SELRE=H)となって、PHE0はE0からのCDLEが選択されるため6段目(インバータ100、101、102、103、104、105)となる。また、遅延制御回路22から出力される信号SEL4INVEがHigh(SEL4INVE=H)となって、信号CDLMはE0からの遅延が選択されるため「インバータ1段(インバータ100)+4段相当インバータ4段分(インバータ111、112、113)」によって5段目となり、さらに信号PHMは、インバータ116、115により7段目となる。すなわち、信号PHE0とPHMの差は「6→7段」の1段となり、これが、第2の微調整遅延回路15により補間される。
【0061】
このときの第1の微調整遅延回路14おいて生成される1段差波形(シミュレーション波形)を図5に示す。図5において、粗調整遅延回路10から出力される信号E0及びO0は、2段差(2×tD)の信号である。この信号E0及びO0から信号CDLE、CDLM、及びCDLD生成され、さらに信号PHE0及びPHMが生成される。この信号PHE0及びPHMは1段差(1×tD)の信号であり、この信号PHE0及びPHMが補間回路である第2の微調整遅延回路15に入力される。
【0062】
第2の微調整遅延回路15では、図4(B)に示すようにPHE0の寄与が100%の最速からPHMの寄与100%までの1段差が補間される。
【0063】
つづいて、信号PHMの寄与が100%になりさらに遅延時間を増加させようとすると、信号SELREがLow(SELRE=L)となり、信号PHE0はO0からの遅延が選択されるため8段目となり(信号O0は信号E0より2段遅れているため)、信号PHMは7段目のままなので、PHMとPHE0の差は「7→8段」の1段となる(表1の第2列)。
【0064】
さらに、O0の寄与が100%となると、粗調整遅延回路10の出力対のE0側が切り替わって、O0が2段目、E0が4段目になり、第3列のように信号PHE0と信号PHMの差が「8→9」段の1段となる。同様にして、遅延時間を増大させるときには、常に1段差を補間することになる。
【0065】
ここで補間回路は、図4(B)に示すように、従来例の半分である1tD差の入力信号PHE0とPHMを補間すればよいので、しきい値VDD/2まで補間ノードが放電される時間は1tD以上しか要しない。さらにPHE0−PHM間の遅延時間は1tD、補間ノードがVSSに到達する時間は1tDしか要しない。すなわち、補間ノードの立ち下がり動件には合計3tD、両エッジを補間するためには補間回路の最小周期tCYCは6tD、すなわち従来の12tDの半分となり、DLLの最大動作周波数は大幅に向上する。
【0066】
なお、以上の説明のように、1段差生成回路では立上り信号と立下り信号は分離していないが、これは粗調整遅延回路10の遅延素子列が1列で補間回路の制御も単純になるという理由の他に、図4(B)に示すように、立上りと立下りで補間比率を共通にすることで、補間回路でのパルス幅を補間比率によらず一定として、High幅及びLow幅を一定にし、その和、すなわち最小動作周期を最小にできるという利点を有する。その結果、DLL回路の最大動作周波数を向上させることが可能になる。
【0067】
さらに、クロック信号のデューティを検知する回路とデューティ調整回路(図示せず)を設け、デューティを50%に調整するためのデューティ調整回路を粗調整遅延回路10の入力側に前置して、補間回路の入力パルスのHigh幅とLow幅を一定にすると、よりいっそう効果的である。
【0068】
[本発明の他の実施の形態]
上述した実施の形態では、第1の微調整遅延回路(1段差生成回路)として、4段分相当の遅延時間を有する3段構成のインバータを使用する例を示したが、レイテンシを最小にするために3段分の遅延時間の2段バッファの構成例も挙げることができる。また、サイクル時間を最小にしたときに波形なまりを最小にするためにフアンアウトをよくした5段分の遅延時間の4段バッファの構成例も挙げられる。
【0069】
以上、説明したように、本発明のDLL回路では、第1の微調整遅延回路によって、2つの入力信号の遅延差をインバータ2段分から1段分に半減することで、第2の微調整遅延回路(補間回路)における最小動作周期を半減し、DLLの最大動作周波数を大幅に向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のDLL回路は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0071】
なお、本発明の請求項1に記載の第1の信号は、遅延信号E0又は遅延信号O0のいずれか一方に対応し、請求項5に記載の第4の信号は、遅延信号E0又は遅延信号O0のいずれか他方に対応する。また、本発明に記載の第1の遅延素子は、インバータ101、102、103、121、122、123に対応し、第1の遅延回路は、遅延部130、132に対応する。また、本発明の請求項1に記載の第2の信号は、信号CDLE及び信号CDLOに対応し、本発明の請求項1に記載の第3の信号は、信号CDLMに対応する。
また、本発明に記載の第2の遅延素子は、インバータ111〜115に対応し、第2の遅延遅延回路は、遅延部131に対応する。
また、本発明に記載の選択信号は、信号SEL4INVE及び信号SELREに対応する。また、本発明に記載の第1の状態は、信号SEL4INVE及び信号SELREが共にHighの状態に対応する。また、本発明に記載の第2の状態は、信号SEL4INVE及び信号SELREがともにLowの状態に対応する。
【0072】
また、本発明に記載の中間信号は、奇位相信号(O0)及び偶位相信号(E0)に対応し、本発明の請求項6に記載の第1の信号は、信号PHEO及び信号PHMのいずれか一方に対応し、本発明の請求項6に記載の第2の信号は、信号PHEO及び信号PHMのいずれか他方に対応する。また、本発明の正牛工6に記載の出力信号は、第2の微調整遅延回路15の出力信号である信号MIXOUT、すなわち、出力クロック信号に対応する。
また、本発明に記載の第1の制御回路は、第1及び第2のクロックドインバータのいずれか一方に対応し、本発明に記載の第2の制御回路は、第1及び第2のクロックドインバータのいずれか他方に対応する。
また、本発明に記載の第1の中間信号は、奇位相信号(O0)及び偶位相信号(E0)のいずれか一方に対応し、第2の中間信号は、奇位相信号(O0)及び偶位相信号(E0)のいずれか他方に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係るDLL回路の構成図である。
【図2】第1の微調整遅延回路の構成を示す図である。
【図3】第1の微調整遅延回路の動作を説明するための段数対照表を示す図である。
【図4】第2の微調整遅延回路(補間回路)の構成を示す図である。
【図5】第1の微調整遅延回路におけるシミュレーション波形を示す図である。
【図6】従来のDLL回路の構成例を示す図である。
【図7】粗調整遅延回路の構成例を示す図である。
【図8】図7の粗調整遅延回路(CDL)一段の構成を示す図である
【図9】従来の補間回路の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0074】
MN11、MN12、MN21、MN22…NchMOSトランジスタ
MP11、MP12、MP21、MP22…PchMOSトランジスタ
10…粗調整遅延回路、11…遅延素子、12、13…マルチプレクサ
14…第1の微調整遅延回路、15…第2の微調整遅延回路
16…バッファ回路、17…レプリカ回路
21…位相検知回路、22…遅延制御回路、23…カウンタ、24…DAC
30…粗調整遅延部、31…微調整遅延部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の遅延素子を有し、第1の信号を遅延して第2の信号を出力する第1の遅延回路と、
複数の第2の遅延素子を有し、前記第1の信号を遅延して第3の信号を出力する第2の遅延回路とを備え、
前記第1の信号の一方から他方への論理レベルの変化に対応して前記第2の信号に現れる一方から他方への論理レベルの変化の遅延時間と、前記変化に対応して前記第3の信号に現れる一方から他方への論理レベルの変化の遅延時間との差は前記第1の遅延素子1段の遅延時間と実質的に等しいことを特徴とするDLL回路。
【請求項2】
前記第1の遅延素子の数と前記第2の遅延素子の数とは互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載のDLL回路。
【請求項3】
前記遅延素子の各々はMOSトランジスタを含んで構成され、
複数の前記第2の遅延素子のうち少なくとも一つはゲート長において前記第1の遅延素子と異なっていることを特徴とする請求項2に記載のDLL回路。
【請求項4】
前記遅延素子の各々はMOSトランジスタを含んで構成され、
複数の前記第2の遅延素子のうち少なくとも一つはゲート幅において前記第1の遅延素子と異なっていることを特徴とする請求項2に記載のDLL回路。
【請求項5】
前記第1及び第2の遅延回路の各々は第4の信号及び選択信号をさらに受け、前記選択信号が第1の状態のときは前記第1の信号に応答して前記第2及び第3の信号を出力し、第2の状態のときは前記第1の信号に代えて前記第4の信号に応答して前記第2及び第3の信号を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のDLL回路。
【請求項6】
入力信号に対して所定の遅延量を有する出力信号を発生するDLL回路において、
前記入力信号を遅延した中間信号であってその遅延量の変化単位が遅延素子1段分の遅延量よりも大きい中間信号を生成し出力する粗調整遅延部と、
前記中間信号を遅延した第1及び第2の信号であってそれぞれの前記中間信号に対する遅延量の差が遅延素子1段分の遅延量に実質的に等しい前記第1及び第2の信号を生成し前記出力信号を発生する微調整遅延部とを備えることを特徴とするDLL回路。
【請求項7】
前記微調整遅延部は、前記中間信号を受けて前記第1及び第2の信号を発生する第1微調整遅延回路と、前記第1及び第2の信号を合成し出力端に前記出力信号を発生する第2微調整遅延回路とを備えたことを特徴とする請求項6に記載のDLL回路。
【請求項8】
前記第2微調整遅延回路は、
入力ノードに前記第2の信号を受け、出力が前記出力端に接続された第1の制御回路と、
入力ノードに前記第3の信号を受け、出力が前記出力端に接続された第2の制御回路とを備えたことを特徴とする請求項7に記載のDLL回路。
【請求項9】
前記中間信号は、第1の中間信号及び第2の中間信号からなり、
前記第1の中間信号と前記第2の中間信号とは、前記入力信号に対して異なる遅延時間を有し、
前記微調整遅延部は前記第1及び第2の中間信号のうち前記入力信号に対する遅延量が小さいほうの信号に応答して前記第1及び第2の信号を生成することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のDLL回路。
【請求項10】
前記出力信号を受け、レプリカ出力信号を発生するレプリカ回路と、
前記レプリカ出力信号の位相と前記入力信号の位相との位相差を検知し、位相判定信号を発生する位相検知回路と、
前記位相判定信号に基づき前記第1及び第2の中間信号の前記入力信号に対する遅延量を示す情報を生成し、前記情報を前記微調整遅延部に供給する遅延制御回路とを備えたことを特徴とする請求項9に記載のDLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−284266(P2009−284266A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134775(P2008−134775)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】