GPS用周波数帯域において帯域外サプレッション効果をもつアンテナデュプレクサ
【解決手段】アンテナデュプレクサに、送信周波数帯域において動作しかつ出力端子をもつ送信フィルタと、受信周波数帯域において動作しかつ入力端子をもつ受信フィルタと、前記送信フィルタの出力端子に接続されたアンテナ接続部と、前記アンテナ接続部および前記受信フィルタの入力端子に接続されたマッチング素子とを設置し、マッチング素子に、送信フィルタおよび受信フィルタとともに、0.50×f0≦f≦0.75×f0(ここで、f0(受信周波数帯域の中間周波数)は2000MHzを上回る)の周波数帯域における送信信号を抑圧させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(全地球測位システム:Global Positioning System)の周波数帯において、帯域外サプレッション効果(送信帯域外の周波数強度を抑圧する効果)をもつアンテナデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナデュプレクサ(アンテナ共用器または分波器)は、例えば携帯情報端末において、送信信号を、受信路(受信された信号の伝播路で、感度のよいローノイズアンプが設けられている)へ流入させることなく、送信路からアンテナへ送るために用いられる。これは、アンテナデュプレクサは、大電力の送信信号を、理想的には通過帯域において低挿入損失で、送信路へ伝送する能力を有しなければならないことを意味する。なぜならば、これこそが、低消費電力下で通信能力を確保する唯一の方途だからである。受信路を、高レベルの送信信号から保護するためには、送信路において強い帯域外サプレッションが求められる。
【0003】
一方、アンテナデュプレクサは、受信信号レベルが低い場合にも高い受信感度を実現するため、アンテナから受信路に入る信号を、減衰がそれ以上生じないようにして受信しなければならない。このため、受信フィルタにおける低挿入損失も、必要な前提条件となる。
【0004】
さらに、アンテナデュプレクサは、他の無線システムに干渉を引き起こさないよう、望ましくない周波数帯域に送信信号が放出されるのを防止しなければならない。また、GPS用のきわめて低レベルの受信周波数帯域に、GPS受信装置が干渉を受けるおそれのある送信信号が放出されるのも防止しなければならない。これを実現するためには、アンテナデュプレクサが、その用いられる周波数帯域に応じて、GPS用周波数帯域、無線LAN用周波数帯域、送信信号の調波周波数帯域等において、強い帯域外サプレッション能力をもつことが必要である。
【0005】
したがって、アンテナデュプレクサは、理想的には、通過帯域において低挿入損失である一方、帯域外においては高いサプレッション効果を有するものでなければならない。モバイル通信の分野においては、ノイズが非常に小さくなるというフィルタ特性をもつSAW(表面弾性波;Surface Acoustic Wave)アンテナデュプレクサまたはBAW(バルク弾性波;Bulk Acoustic Wave)アンテナデュプレクサを用いるのが好ましい。
【0006】
アンテナデュプレクサの回路は、例えば特許文献1に開示されている。
【0007】
しかし、モバイル通信用の2GHz帯で、複数のバンド(周波数帯域;例えばバンドI、バンドII、バンドIII、バンドIVまたはバンドVII)に用いるアンテナデュプレクサの場合、1GHz帯用のそれに比べて、上記すべての条件を同時に満たすのは困難である。
【0008】
SAWアンテナデュプレクサの場合、通過帯域から離れた周波数においても低挿入損失でかつブロードバンドで高い帯域外サプレッション効果をもつDMSフィルタ(2重モードSAWフィルタ)構造だけを送信フィルタに用いるわけにはいかない。なぜならば、DMS構造は、特に2GHz帯において、所望のパワーハンドリングを有しないからである。したがって、SAWアンテナデュプレクサの送信フィルタは、いわゆる「ラダー(はしご)型」構造にしてある。
【0009】
BAWアンテナデュプレクサの場合、いわゆるカプルド共振器(coupled resonator)構造を用いると、非常に複雑なプロセスが必要になる。このため、BAWアンテナデュプレクサの送信フィルタにおいても、今のところ、ラダー型構造が用いられている。
【0010】
しかし、送信フィルタにラダー型構造を用いた場合には、挿入損失について所望のレベルを確保すると、ブロードバンドでの帯域外サプレッションが十分でなくなるという根本的な障害がある。
【0011】
さらに、ラダー型構造であると、高周波数帯において周波数の分散損失が増大し、低挿入損失の実現が困難になる。ラダー型構造を低挿入損失にするための手段は、一つは、直列共振器に対して並列の容量比を減少させるというものであり、もう一つは、ラダー型構造を構成する基本素子の数を減少させるというものである。
【0012】
しかし、このような両手段とも、ブロードバンドにおける帯域外サプレッションレベルの低下を招くため、送信フィルタに対する要求を満たさない。他方、両手段を逆の意味で、すなわち、要求されるブロードバンドでの帯域外サプレッションを実現しうるように用いるならば、挿入損失が増大し、バンドパスフィルタのバンド幅が狭まるとともに、ロールオフ勾配が小さくなる。
【0013】
一方、送信帯域幅よりも上り側においてナローバンドを選択する場合には、弾性波ポールの位置(ポイント)を移動させる(特許文献1参照)等の手段により、付加的に帯域外サプレッションを実現することができる。
【0014】
他方、送信帯域幅よりも下り側においてナローバンドのサプレッションを実現するための手段は、非常に限られている。しかし、現実には、自動車のGPS用周波数帯(1574〜1577MHz)は、乗員のモバイル通信用送信帯域(2GHz帯用のアンテナデュプレクサに対応する)よりも下り側に位置する。
【0015】
アンテナデュプレクサの回路、特に2GHz帯の中間的な周波数での使用を予定されているアンテナデュプレクサの回路(GPS用周波数帯の送信信号について高度の帯域外サプレッションを行うことを目的とする)において、通過帯域外サプレッションを増大させる方法として知られているのは、GPS帯域よりも下り側において、弾性波ポールのポイントを慎重に定めるというものである。
【0016】
しかし、この方法には、リアクタンス素子(一般にコイル)を追加しなければならないという欠点がある。コイルのインダクタンスは、弾性波ポールのポイントが通過帯域から離れれば離れるほど、大きくしなければならない。また、通過帯域と弾性波ポールの周波数に挟まれた周波数帯において、帯域外サプレッション能力がかなり減少するという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第19932649号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、公知のアンテナデュプレクサと比べて、送信周波数帯域において低挿入損失で、同時に他の周波数帯域において(特にGPS帯域に属する送信信号について)、高いサプレッション能力をもつアンテナデュプレクサを提供することである。特に、本発明は、GPS帯域において40dBを超える帯域外サプレッション効果をもつ送信フィルタを有し、かつ受信周波数の下限が2000MHzを上回り、さらに送信周波数帯域における挿入損失が2dB未満であるアンテナデュプレクサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題は、請求項1に記載のアンテナデュプレクサによって解決される。請求項1を引用する請求項2以下には、本発明の有利な効果を発揮しうる種々の態様を記載してある。
【0020】
すなわち、本発明に係るアンテナデュプレクサは、送信周波数帯域において動作しかつ出力端子をもつ送信フィルタと、受信周波数帯域において動作しかつ入力端子をもつ受信フィルタと、前記送信フィルタの出力端子に接続されたアンテナ接続部と、このアンテナ接続部および前記受信フィルタの入力端子に接続されたマッチング素子とを備える。この送信フィルタ、受信フィルタおよびマッチング素子を備えるアンテナデュプレクサに係る回路は、0.50×f0≦f≦0.75×f0(ここで、f0(受信周波数帯域の中間周波数)は2000MHzを上回る)の周波数帯域における送信信号について高い帯域外サプレッション効果を有する。
【0021】
受信フィルタの通過帯域周波数におけるインピーダンスを、アンテナデュプレクサに要求されるアンテナインピーダンス(一般に50Ω)に複製するだけでなく、送信フィルタの周波数帯域における開放インピーダンスに変換することもできる回路は、マッチング素子として用いることができる。さらに、本発明に係るアンテナデュプレクサに用いるマッチング素子は、送信フィルタが少なくとも40dBの帯域外サプレッション効果を発揮するように、受信周波数帯域の中間周波数の50〜75%の帯域における受信フィルタのインピーダンスを、短絡インピーダンスに変換することもできる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、マッチング素子は、上記の課題を解決するために、いわゆるλ/4ラインを含む。λ/4ラインとは、所望の動作周波数f0をもつ電磁波の波長λの4分の1に相当する長さをもつ導電体である。この動作周波数f0と波長λは、信号ライン上における電磁場の伝播速度cを介して、下記数1に示すように関連づけられている。
【0023】
【数1】
【0024】
ここで、c0は真空中の光速度、μrおよびεrは、それぞれ、信号ラインを包囲する絶縁体の相対透過率および相対誘電率である。
【0025】
本発明のさらに好ましい態様によれば、マッチング素子は、容量素子、インダクタ素子または抵抗素子(リアクタンス素子)を含む回路からなる。本発明に係る前述の3つの効果(〔1〕GPS帯域において40dBを超える帯域外サプレッション効果をもつ送信フィルタを有する。〔2〕受信周波数の下限が2000MHzを上回る。〔3〕送信周波数帯域における挿入損失が2dB未満である。)は、例えば、図2B〜図2Gに示すようなPi回路またはT回路の形態をとるマッチング素子により実現される。このような回路は、例えば、アンテナ接続部と受信フィルタの間に接続されたインダクタ素子、および並列に接地された容量素子を含む。一方、容量素子をアンテナ接続と受信フィルタの間に接続し、この容量素子を、インダクタ素子を介して並列に接地することも可能である。
【0026】
送信フィルタまたは受信フィルタは、SAWフィルタを含むバンドパスフィルタ回路を備えているのが好ましい。このようなSAWフィルタは、圧電基板と、この上に設けられた金属製のインターデジタルトランスデューサ(櫛型電極)とからなる。SAWフィルタは、受動素子として働くため付加的な電源を必要とせず、かつ周波数によって決まる挿入損失プロファイルを変化させうるため(すなわち、高い自由度をもつため)、携帯情報端末に用いるのに特に適している。
【0027】
本発明に係るアンテナデュプレクサにおける送信フィルタと受信フィルタの好ましい態様は、SAW直列共振器からなる基本的素子と、SAW並列共振器とを接続してラダー型構造としたものである。この場合、基本素子を構成するすべての共振器は、互いに直列に接続する。他方、基本的素子と接続する並列共振器は、対応する直列共振器と大地との間に接続する。ラダー型構造のフィルタは、パワーハンドリングが高いという特長があるため、パワーアンプとアンテナとを結ぶ送信路に接続するのに特に適している。
【0028】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、受信フィルタにおいてアンテナ側に位置するラダー型構造の基本的素子に接続する。なぜならば、この位置は、送信に係る全出力に晒されることが多いからである。本発明に係るアンテナデュプレクサにおいては、特に並列共振器が、受信フィルタを通過してはならない送信信号を、大地を介して分散させる。
【0029】
モバイル通信用に認可される2GHzを超える周波数帯について見ると、基板材料によって決まる電気弾性カップリング係数k(下記数2参照)は、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)のバンドII向け等のバンドパスフィルタの周波数帯域(バンド幅)よりもかなり上り側に周波数帯域を形成する。
【0030】
【数2】
【0031】
数2において、frはSAWフィルタの周波数、faはその反共振周波数である。用途によって定まるバンド幅よりもやや高い周波数帯域を設定しなければならない場合には、追加の措置を講じないと、ハンド幅が大きくなりすぎたり、サプレッションに係るロールオフ勾配が小さくなったりする。
【0032】
本発明者らは、圧電基板上で容量素子(ただし非アクティブタイプの弾性波素子)を、例えばインターデジタル構造にして配置する(並列または直列をなす共振器と並列に接続する)と、挿入損失が実現され、バンドパス特性も改善されることを見出した。
【0033】
一方、表面弾性効果をもつインターデジタル構造を避けたい場合には、電気弾性カップリング係数kができるだけ小さくなるように、容量素子を、基板の結晶軸に整合させて配置すればよい。これは、インターデジタル構造は、基板との間では、ほとんど電気弾性相互作用を及ぼさないということを意味する。したがって、インターデジタル構造をなす容量素子とラダー型フィルタにおける他の構成要素との相互作用は、実際には、容量素子の電気容量特性によって限定される。ただし、非アクティブタイプの弾性波共振器を加えると、アクティブタイプSAWフィルタの周波数frとその反共振周波数faとの効果的な周波数の分離が減殺される。
【0034】
この場合、(直列の共振器と並列に接続するインターデジタル構造(非アクティブタイプ)によれば、パスバンド(通過帯域)特性曲線において右側のロールオフ勾配が改善し、他方、並列の共振器と並列に接続するインターデジタル構造(非アクティブタイプ)によれば、左側のロールオフ勾配が改善する。一方、送信フィルタの周波数を受信フィルタのそれよりも低くする現行の周波数割当てに関する条約下においては、本発明に係るアンテナデュプレクサによれば、周波数サプレッションに係る送信バンドの右側のロールオフ勾配、および受信バンドの左側のロールオフ勾配が大きくなる。しかし、本発明に係る、非アクティブタイプのインターデジタル構造を、直列共振器および並列共振器と並列に接続するという技術思想は、上記の条約に準ずるためのものではなく、より一般的に、周波数サプレッションに係る上り側と下り側のロールオフ勾配の傾きを改善するために案出したものである。
【0035】
本発明のさらに他の態様によれば、重みづけ機能のあるインターデジタルトランスデューサが提供される。重みづけは、例えば、隣り合う指状電極の長手方向における相対的な位置を、適当な重みづけ関数に従って変化させることにより行う。こうすると、パスバンドの形状を最適化することができる。
【0036】
上記以外の重み付け方法として、長手方向に沿った特定の領域において、適当な重みづけ関数に従って、エネルギー付与に係る指状電極の指の数を減らす、いわゆる「省略重みづけ」がある。
【0037】
その外、指状電極の幅を、その位置に対応させて増加させるという重み付け方法もある。これら種々の重み付け方法を採用すると、損入損失のマッチングをとる際の自由度が高まる。
【0038】
アンテナデュプレクサの受信フィルタにおいて、送信バンドについてだけでなく、広い周波数帯について厳格なサプレッションが要求される場合には、DMSフィルタを受信フィルタ内に接続することによって、有利な効果が得られる。DMSフィルタを用いるのは、受信フィルタにおけるパワーハンドリング条件が、送信フィルタのそれに比べてかなり緩いためである。DMSフィルタを用いると、さらに、インピーダンス変換能力が得られるとともに、フィルタ出力のバランスも改善する。
【0039】
本発明の効果は、バンドパスフィルタに、弾性共振器としてBAW素子を接続すると、さらに改善される。
【0040】
素子の小型化をさらに進めるという業界の傾向に鑑み、送信フィルタまたは受信フィルタにおいて、共通の接地パッド(半導体チップ上の金属表面)を用い、大地への接続を複数個とると、本発明の効果は一層向上する。上記共通の接地パッドとしての金属表面は、一般に基板上で大きな面積を占める。このような共通の接地パッドを用いると、接地パッドの全体的な数が減少し、半導体チップ上のスペースを節減することができる(したがって製造コストも節減することができる)。
【0041】
1つまたは複数のフィルタ回路(例えば、圧電基板上にインターデジタルトランスデューサとして設けられるBAWフィルタ、または絶縁基板上で層状をなすBAWフィルタ)を含む半導体チップは、HTCC(高温共焼成セラミック)製取付け基板、LTCC(低温共焼成セラミック)製取付け基板、またはラミネート状の取付け基板上に配置し、所望の態様で接続することができる。好ましい態様においては、フィルタ回路として、取付け基板に複数の層を設け、各層の間および/または上には、リアクタンス素子(抵抗器等)、インダクタ素子、容量素子その他の回路素子(金属製λ/4ライン等)を配置する。ここで、リアクタンス素子は、互いに連結することができる。
【0042】
周波数が高くなるにつれて、半導体チップまたは取付け基板上における電磁波の波長は短くなる。このため、マッチング素子を、チップまたは基板上の一部にのみ形成する態様もある。
【0043】
特に受信フィルタの入力端子の隣に容量素子をもつマッチング回路の場合、この容量素子は、半導体チップ上に設けるのが好ましい。したがって、電気容量をもつ非アクティブタイプの弾性波素子をインターデジタル構造にして配置するか、またはアクティブタイプの弾性波素子を、同時に上記3つの効果を発揮しうるよう、寸法を適切なものにして配置する。
【0044】
λ/4ラインは、半導体チップでの相互接続により形成することもできる。また、マッチング回路における各回路素子は、多層取付け基板において、多層状に集積化することができる。
【0045】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、受信周波数帯の中間周波数f0が2000MHzを上回るような用途に適している。現行の周波数割当てに関する条約の下では、例えば多くのWCDMA用バンドについて、1000MHzを超える送信周波数帯域は、0.50×f0≦f≦0.75×f0の範囲内に収まる。一方、GPSの受信周波数帯域も、上記0.50×f0≦f≦0.75×f0の範囲内に収まる。これらの周波数帯域に係るλ/4ラインは、マッチング素子、またはマッチング回路の一部(リアクタンス素子の形をとる)として、「チップ上に」集積化される。例えば、マッチング素子がLC回路である場合には、回路を構成する容量素子またはインダクタ素子の一部またはすべてを、チップの表面に形成する。
【0046】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、送信周波数帯域における挿入損失を、1400〜1700MHzの範囲内で2dB未満に抑え、同時に、送信フィルタおよび受信フィルタと接続されたマッチング素子によって帯域外周波数を抑圧するようになっているのが好ましい。
【0047】
送信フィルタは、第1のパスバンドをもつ第1のバンドパスフィルタを備え、受信フィルタは、第2のパスバンドをもつ第2のバンドパスフィルタを備えるのが好ましい。現時点では、WCDMA用として特に好ましいのは、以下の周波数帯域である。
−第1のパスバンドが1710〜1755MHzで、第2のパスバンドが2110〜2155MHzであるもの(バンドIV)。
−第1のパスバンドが1710〜1770MHzで、第2のパスバンドが2110〜2170MHzであるもの(バンドX)。
−第1のパスバンドが1900〜1920MHzで、第2のパスバンドが2600〜2620MHzであるもの(バンドXV)。
−第1のパスバンドが1920〜1980MHzで、第2のパスバンドが2110〜2170MHzであるもの(バンドI)。
−第1のパスバンドが2010〜2025MHzで、第2のパスバンドが2585〜2600MHzであるもの(バンドXVI)。
−第1のパスバンドが2500〜2570MHzで、第2のパスバンドが2620〜2690MHzであるもの(バンドVII)。
【0048】
上記の周波数帯域から概括的にいうと、本発明に係るアンテナデュプレクサは、1710MHz〜2690MHzのすべてのWCDMAバンドに好適である。
【0049】
特に、本発明のアンテナデュプレクサは、WCDMAバンドVIIに用いると、GPS帯域に干渉のおそれがある送信信号について、良好なサプレッション効果を発揮することができる。
【0050】
本発明に係る、マッチング素子、送信フィルタおよび受信フィルタからなるアンテナデュプレクサは、1574〜1577MHzの周波数帯域(現時点におけるGPS帯域)において、送信信号を少なくとも50dB抑圧することができる。したがって、本発明に係るアンテナデュプレクサは、位置確認のためのGPS受信機が付いた携帯情報端末に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る、アンテナ接続部と、受信用入力端子をもつ受信フィルタと、送信用出力端子をもつ送信フィルタと、マッチング素子とを備えるアンテナデュプレクサを示す回路図である。
【図2A】λ/4ラインを示す回路図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2C】本発明の他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2D】本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2E】本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2F】本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2G】本発明のさらに他の実施形態に係アンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図3A】圧電基板上のインターデジタル構造を示す模式的平面図である。
【図3B】半導体チップ上におけるBAWフィルタの層構造を示す断面図である。
【図4】非アクティブタイプの弾性波共振器を備えた、ラダー型に類似した構造のフィルタ回路を示す回路図である。
【図5】本発明に係るアンテナデュプレクサにおける送信フィルタの伝送特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に係るアンテナデュプレクサを、複数の実施形態と添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0053】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナデュプレクサADの回路図を示す。マッチング素子AEは、送信フィルタの出力端子SFAと受信フィルタの入力端子EFEに接続されている。信号ラインは、送信フィルタの出力端子SFAとマッチング素子AEとを結ぶとともに、アンテナ接続部AAを有している。アンテナ接続部AAは、アンテナANと電気的に接続している。送信フィルタSFと受信フィルタEFは、いずれも、ラダー型フィルタ構造LFを有するバンドパスフィルタBPFからなっている。受信フィルタEFは、出力側に、さらにDMSフィルタ(2重モードSAWフィルタ)DMSを有している。受信フィルタEFの入力側における第1の素子は、並列共振器PRである。並列共振器PRは、受信フィルタの入力端子EFEを大地Mに接続している。送信フィルタSFには、2つの並列共振器を両者共通の接地パッドMAP(大地Mに電気的に接続している)にどのように接続するかの指示が与えられる。圧電基板上に設けられる共通の接地パッドMAPは、基板上の接地パッドの数を減らして、スペースを節約する効果を発揮する。
【0054】
図2Aは、いわゆるλ/4ラインL4を示す回路図である。λ/4ラインL4は、所望の動作周波数をもつ電磁波の波長(λ)の4分の1に相当する長さをもつ導電体である。λ/4ラインは、基板上に曲がりくねった形状で設けるか、または多層基板中において複数の層からなる導電性の帯として設ける。
【0055】
図2Bは、本発明の一実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる回路VE(いわゆる「Pi回路」)を示す。ここで、インダクタ素子IEは、アンテナ接続部AAと受信フィルタEFに接続されている。さらに、インダクタ素子IEの2つの電極は、それぞれ、容量素子KEを介して、大地にも接続されている。この回路は、λ/4ラインをもつ回路としてだけでなく、マッチング素子AEとしても用いられる。
【0056】
図2Cは、本発明の他の実施形態に係る、本発明の他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる回路VEを示す。この回路VEも、Pi回路であり、容量素子KEを備えている。容量素子KEは、アンテナ接続部AAと受信フィルタの入力端子EEFに接続されている。また、この容量素子KEの2つの電極は、それぞれ、インダクタ素子IEを介して、大地にも接続されている。
【0057】
図2Dは、本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEは、いわゆる「T回路」であり、直列に接続された2つのインダクタ素子IEを備えている。これら2つのインダクタ素子IEは、アンテナ接続部AAおよび受信フィルタの入力端子EEFに接続されている。また、2つのインダクタ素子IEの間に位置する接合ポイントは、容量素子KE(T回路の並列アームをなす)を介して、大地に接続されている。
【0058】
図2Eは、本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEも、T回路であるが、直列に接続された2つの容量素子KEを備えている。これら2つの容量素子KEは、アンテナ接続部AAおよび受信フィルタの入力端子EFEに接続されている。また、2つの容量素子KEの間に位置する接合ポイントは、インダクタ素子IE(T回路の並列アームをなす)を介して、大地に接続されている。
【0059】
図2Fは、本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEは、図2Bに示す回路を基礎としている。しかし、本図において受信フィルタEFと大地の間に接続されている容量素子KEは、半導体チップ上でインターデジタル構造SRをなすアクティブタイプまたは非アクティブタイプの弾性波素子である。
【0060】
図2Gは、本発明のさらに他の実施形態に係る、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEは、図2Eに示す回路を基礎としている。しかし、本図において、受信フィルタ入力端子EFEに接続されている容量素子KEは、半導体チップ上でインターデジタル構造SRをなすアクティブタイプまたは非アクティブタイプの弾性波素子である。
【0061】
図3Aは、圧電基板PSu上に形成されたインターデジタル構造IDSを模式的に示す平面図である。インターデジタル構造IDSは、櫛形をなす2つの指状の小電極EFIが互いに入り組んだ櫛型電極である。表面弾性波の振動は、小電極EFIの配置に応じて圧電基板PSu上で励振され、小電極EFIに対して直角をなすように、圧電基板PSuの表面上を伝播する。
【0062】
図3Bは、半導体チップ上におけるBAWフィルタBRの基本構造を示す断面図である。取付け基板TS上には、圧電層PSを挟む2つの電極ELが設けられている。高周波交流電圧が2つの電極間に印加されると、両電極は、圧電層PCに、この圧電層PCの厚さに応じて、3次元的な弾性振動を引き起こす。
【0063】
図4は、2つの非アクティブタイプの弾性波共振器AIRを備えたラダー型フィルタ回路LFを示す。圧電基板は、一般に結晶質であり、かつその結晶軸に沿って異方性である。この結晶面および/またはこの結晶面上には、インターデジタル構造に従って弾性波が励振される方向と、弾性波がほとんど励振されない方向とが存在するが、圧電基板上には、後者の方向に対応するインターデジタル構造をもつ非アクティブタイプの弾性波共振器AIRが生成されている。図4においては、2つの共振器AIRを45°回転させて描くことによって、これを表している。なお、この図4も、これ以外の図も模式的なものであり、角度も寸法も正確には表されていない。
【0064】
図5は、本発明に係るアンテナデュプレクサ(WCDMAのバンドVII用)のTxフィルタにおけるパスカーブ(伝送特性)を示すグラフである。矢印Aは、GPS用周波数帯におけるサプレッション効果がきわめて高いこと(矢印Bで示す規格よりもはるかに低い−60dB程度にまで低下している)を示している。
【0065】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態には、追加の共振器その他の回路素子を含む変形例、LC回路、または抵抗素子、容量素子もしくはインダクタ素子を含む他の回路も含まれる。
【符号の説明】
【0066】
AA アンテナ接続部
AD アンテナデュプレクサ
AE マッチング素子
AIR 共振器
AN アンテナ
BPF バンドパスフィルタ
BR BAWフィルタ
DMS 2重モードSAWフィルタ
EF 受信フィルタ
EFE 受信フィルタの入力端子
EFI 指状電極
EL 電極
IDS インターデジタル構造
IE インダクタ素子
KE 容量素子
L4 λ/4ライン
LF ラダー型フィルタ構造
M 大地
MAP 大地パッド
PR 並列共振器
PS 圧電基板
PSu 圧電基板
SF 送信フィルタ
SFA 送信フィルタの出力端子
SR インターデジタル構造
TS 取付け基板
VE マッチング回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(全地球測位システム:Global Positioning System)の周波数帯において、帯域外サプレッション効果(送信帯域外の周波数強度を抑圧する効果)をもつアンテナデュプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナデュプレクサ(アンテナ共用器または分波器)は、例えば携帯情報端末において、送信信号を、受信路(受信された信号の伝播路で、感度のよいローノイズアンプが設けられている)へ流入させることなく、送信路からアンテナへ送るために用いられる。これは、アンテナデュプレクサは、大電力の送信信号を、理想的には通過帯域において低挿入損失で、送信路へ伝送する能力を有しなければならないことを意味する。なぜならば、これこそが、低消費電力下で通信能力を確保する唯一の方途だからである。受信路を、高レベルの送信信号から保護するためには、送信路において強い帯域外サプレッションが求められる。
【0003】
一方、アンテナデュプレクサは、受信信号レベルが低い場合にも高い受信感度を実現するため、アンテナから受信路に入る信号を、減衰がそれ以上生じないようにして受信しなければならない。このため、受信フィルタにおける低挿入損失も、必要な前提条件となる。
【0004】
さらに、アンテナデュプレクサは、他の無線システムに干渉を引き起こさないよう、望ましくない周波数帯域に送信信号が放出されるのを防止しなければならない。また、GPS用のきわめて低レベルの受信周波数帯域に、GPS受信装置が干渉を受けるおそれのある送信信号が放出されるのも防止しなければならない。これを実現するためには、アンテナデュプレクサが、その用いられる周波数帯域に応じて、GPS用周波数帯域、無線LAN用周波数帯域、送信信号の調波周波数帯域等において、強い帯域外サプレッション能力をもつことが必要である。
【0005】
したがって、アンテナデュプレクサは、理想的には、通過帯域において低挿入損失である一方、帯域外においては高いサプレッション効果を有するものでなければならない。モバイル通信の分野においては、ノイズが非常に小さくなるというフィルタ特性をもつSAW(表面弾性波;Surface Acoustic Wave)アンテナデュプレクサまたはBAW(バルク弾性波;Bulk Acoustic Wave)アンテナデュプレクサを用いるのが好ましい。
【0006】
アンテナデュプレクサの回路は、例えば特許文献1に開示されている。
【0007】
しかし、モバイル通信用の2GHz帯で、複数のバンド(周波数帯域;例えばバンドI、バンドII、バンドIII、バンドIVまたはバンドVII)に用いるアンテナデュプレクサの場合、1GHz帯用のそれに比べて、上記すべての条件を同時に満たすのは困難である。
【0008】
SAWアンテナデュプレクサの場合、通過帯域から離れた周波数においても低挿入損失でかつブロードバンドで高い帯域外サプレッション効果をもつDMSフィルタ(2重モードSAWフィルタ)構造だけを送信フィルタに用いるわけにはいかない。なぜならば、DMS構造は、特に2GHz帯において、所望のパワーハンドリングを有しないからである。したがって、SAWアンテナデュプレクサの送信フィルタは、いわゆる「ラダー(はしご)型」構造にしてある。
【0009】
BAWアンテナデュプレクサの場合、いわゆるカプルド共振器(coupled resonator)構造を用いると、非常に複雑なプロセスが必要になる。このため、BAWアンテナデュプレクサの送信フィルタにおいても、今のところ、ラダー型構造が用いられている。
【0010】
しかし、送信フィルタにラダー型構造を用いた場合には、挿入損失について所望のレベルを確保すると、ブロードバンドでの帯域外サプレッションが十分でなくなるという根本的な障害がある。
【0011】
さらに、ラダー型構造であると、高周波数帯において周波数の分散損失が増大し、低挿入損失の実現が困難になる。ラダー型構造を低挿入損失にするための手段は、一つは、直列共振器に対して並列の容量比を減少させるというものであり、もう一つは、ラダー型構造を構成する基本素子の数を減少させるというものである。
【0012】
しかし、このような両手段とも、ブロードバンドにおける帯域外サプレッションレベルの低下を招くため、送信フィルタに対する要求を満たさない。他方、両手段を逆の意味で、すなわち、要求されるブロードバンドでの帯域外サプレッションを実現しうるように用いるならば、挿入損失が増大し、バンドパスフィルタのバンド幅が狭まるとともに、ロールオフ勾配が小さくなる。
【0013】
一方、送信帯域幅よりも上り側においてナローバンドを選択する場合には、弾性波ポールの位置(ポイント)を移動させる(特許文献1参照)等の手段により、付加的に帯域外サプレッションを実現することができる。
【0014】
他方、送信帯域幅よりも下り側においてナローバンドのサプレッションを実現するための手段は、非常に限られている。しかし、現実には、自動車のGPS用周波数帯(1574〜1577MHz)は、乗員のモバイル通信用送信帯域(2GHz帯用のアンテナデュプレクサに対応する)よりも下り側に位置する。
【0015】
アンテナデュプレクサの回路、特に2GHz帯の中間的な周波数での使用を予定されているアンテナデュプレクサの回路(GPS用周波数帯の送信信号について高度の帯域外サプレッションを行うことを目的とする)において、通過帯域外サプレッションを増大させる方法として知られているのは、GPS帯域よりも下り側において、弾性波ポールのポイントを慎重に定めるというものである。
【0016】
しかし、この方法には、リアクタンス素子(一般にコイル)を追加しなければならないという欠点がある。コイルのインダクタンスは、弾性波ポールのポイントが通過帯域から離れれば離れるほど、大きくしなければならない。また、通過帯域と弾性波ポールの周波数に挟まれた周波数帯において、帯域外サプレッション能力がかなり減少するという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第19932649号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、公知のアンテナデュプレクサと比べて、送信周波数帯域において低挿入損失で、同時に他の周波数帯域において(特にGPS帯域に属する送信信号について)、高いサプレッション能力をもつアンテナデュプレクサを提供することである。特に、本発明は、GPS帯域において40dBを超える帯域外サプレッション効果をもつ送信フィルタを有し、かつ受信周波数の下限が2000MHzを上回り、さらに送信周波数帯域における挿入損失が2dB未満であるアンテナデュプレクサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題は、請求項1に記載のアンテナデュプレクサによって解決される。請求項1を引用する請求項2以下には、本発明の有利な効果を発揮しうる種々の態様を記載してある。
【0020】
すなわち、本発明に係るアンテナデュプレクサは、送信周波数帯域において動作しかつ出力端子をもつ送信フィルタと、受信周波数帯域において動作しかつ入力端子をもつ受信フィルタと、前記送信フィルタの出力端子に接続されたアンテナ接続部と、このアンテナ接続部および前記受信フィルタの入力端子に接続されたマッチング素子とを備える。この送信フィルタ、受信フィルタおよびマッチング素子を備えるアンテナデュプレクサに係る回路は、0.50×f0≦f≦0.75×f0(ここで、f0(受信周波数帯域の中間周波数)は2000MHzを上回る)の周波数帯域における送信信号について高い帯域外サプレッション効果を有する。
【0021】
受信フィルタの通過帯域周波数におけるインピーダンスを、アンテナデュプレクサに要求されるアンテナインピーダンス(一般に50Ω)に複製するだけでなく、送信フィルタの周波数帯域における開放インピーダンスに変換することもできる回路は、マッチング素子として用いることができる。さらに、本発明に係るアンテナデュプレクサに用いるマッチング素子は、送信フィルタが少なくとも40dBの帯域外サプレッション効果を発揮するように、受信周波数帯域の中間周波数の50〜75%の帯域における受信フィルタのインピーダンスを、短絡インピーダンスに変換することもできる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、マッチング素子は、上記の課題を解決するために、いわゆるλ/4ラインを含む。λ/4ラインとは、所望の動作周波数f0をもつ電磁波の波長λの4分の1に相当する長さをもつ導電体である。この動作周波数f0と波長λは、信号ライン上における電磁場の伝播速度cを介して、下記数1に示すように関連づけられている。
【0023】
【数1】
【0024】
ここで、c0は真空中の光速度、μrおよびεrは、それぞれ、信号ラインを包囲する絶縁体の相対透過率および相対誘電率である。
【0025】
本発明のさらに好ましい態様によれば、マッチング素子は、容量素子、インダクタ素子または抵抗素子(リアクタンス素子)を含む回路からなる。本発明に係る前述の3つの効果(〔1〕GPS帯域において40dBを超える帯域外サプレッション効果をもつ送信フィルタを有する。〔2〕受信周波数の下限が2000MHzを上回る。〔3〕送信周波数帯域における挿入損失が2dB未満である。)は、例えば、図2B〜図2Gに示すようなPi回路またはT回路の形態をとるマッチング素子により実現される。このような回路は、例えば、アンテナ接続部と受信フィルタの間に接続されたインダクタ素子、および並列に接地された容量素子を含む。一方、容量素子をアンテナ接続と受信フィルタの間に接続し、この容量素子を、インダクタ素子を介して並列に接地することも可能である。
【0026】
送信フィルタまたは受信フィルタは、SAWフィルタを含むバンドパスフィルタ回路を備えているのが好ましい。このようなSAWフィルタは、圧電基板と、この上に設けられた金属製のインターデジタルトランスデューサ(櫛型電極)とからなる。SAWフィルタは、受動素子として働くため付加的な電源を必要とせず、かつ周波数によって決まる挿入損失プロファイルを変化させうるため(すなわち、高い自由度をもつため)、携帯情報端末に用いるのに特に適している。
【0027】
本発明に係るアンテナデュプレクサにおける送信フィルタと受信フィルタの好ましい態様は、SAW直列共振器からなる基本的素子と、SAW並列共振器とを接続してラダー型構造としたものである。この場合、基本素子を構成するすべての共振器は、互いに直列に接続する。他方、基本的素子と接続する並列共振器は、対応する直列共振器と大地との間に接続する。ラダー型構造のフィルタは、パワーハンドリングが高いという特長があるため、パワーアンプとアンテナとを結ぶ送信路に接続するのに特に適している。
【0028】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、受信フィルタにおいてアンテナ側に位置するラダー型構造の基本的素子に接続する。なぜならば、この位置は、送信に係る全出力に晒されることが多いからである。本発明に係るアンテナデュプレクサにおいては、特に並列共振器が、受信フィルタを通過してはならない送信信号を、大地を介して分散させる。
【0029】
モバイル通信用に認可される2GHzを超える周波数帯について見ると、基板材料によって決まる電気弾性カップリング係数k(下記数2参照)は、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)のバンドII向け等のバンドパスフィルタの周波数帯域(バンド幅)よりもかなり上り側に周波数帯域を形成する。
【0030】
【数2】
【0031】
数2において、frはSAWフィルタの周波数、faはその反共振周波数である。用途によって定まるバンド幅よりもやや高い周波数帯域を設定しなければならない場合には、追加の措置を講じないと、ハンド幅が大きくなりすぎたり、サプレッションに係るロールオフ勾配が小さくなったりする。
【0032】
本発明者らは、圧電基板上で容量素子(ただし非アクティブタイプの弾性波素子)を、例えばインターデジタル構造にして配置する(並列または直列をなす共振器と並列に接続する)と、挿入損失が実現され、バンドパス特性も改善されることを見出した。
【0033】
一方、表面弾性効果をもつインターデジタル構造を避けたい場合には、電気弾性カップリング係数kができるだけ小さくなるように、容量素子を、基板の結晶軸に整合させて配置すればよい。これは、インターデジタル構造は、基板との間では、ほとんど電気弾性相互作用を及ぼさないということを意味する。したがって、インターデジタル構造をなす容量素子とラダー型フィルタにおける他の構成要素との相互作用は、実際には、容量素子の電気容量特性によって限定される。ただし、非アクティブタイプの弾性波共振器を加えると、アクティブタイプSAWフィルタの周波数frとその反共振周波数faとの効果的な周波数の分離が減殺される。
【0034】
この場合、(直列の共振器と並列に接続するインターデジタル構造(非アクティブタイプ)によれば、パスバンド(通過帯域)特性曲線において右側のロールオフ勾配が改善し、他方、並列の共振器と並列に接続するインターデジタル構造(非アクティブタイプ)によれば、左側のロールオフ勾配が改善する。一方、送信フィルタの周波数を受信フィルタのそれよりも低くする現行の周波数割当てに関する条約下においては、本発明に係るアンテナデュプレクサによれば、周波数サプレッションに係る送信バンドの右側のロールオフ勾配、および受信バンドの左側のロールオフ勾配が大きくなる。しかし、本発明に係る、非アクティブタイプのインターデジタル構造を、直列共振器および並列共振器と並列に接続するという技術思想は、上記の条約に準ずるためのものではなく、より一般的に、周波数サプレッションに係る上り側と下り側のロールオフ勾配の傾きを改善するために案出したものである。
【0035】
本発明のさらに他の態様によれば、重みづけ機能のあるインターデジタルトランスデューサが提供される。重みづけは、例えば、隣り合う指状電極の長手方向における相対的な位置を、適当な重みづけ関数に従って変化させることにより行う。こうすると、パスバンドの形状を最適化することができる。
【0036】
上記以外の重み付け方法として、長手方向に沿った特定の領域において、適当な重みづけ関数に従って、エネルギー付与に係る指状電極の指の数を減らす、いわゆる「省略重みづけ」がある。
【0037】
その外、指状電極の幅を、その位置に対応させて増加させるという重み付け方法もある。これら種々の重み付け方法を採用すると、損入損失のマッチングをとる際の自由度が高まる。
【0038】
アンテナデュプレクサの受信フィルタにおいて、送信バンドについてだけでなく、広い周波数帯について厳格なサプレッションが要求される場合には、DMSフィルタを受信フィルタ内に接続することによって、有利な効果が得られる。DMSフィルタを用いるのは、受信フィルタにおけるパワーハンドリング条件が、送信フィルタのそれに比べてかなり緩いためである。DMSフィルタを用いると、さらに、インピーダンス変換能力が得られるとともに、フィルタ出力のバランスも改善する。
【0039】
本発明の効果は、バンドパスフィルタに、弾性共振器としてBAW素子を接続すると、さらに改善される。
【0040】
素子の小型化をさらに進めるという業界の傾向に鑑み、送信フィルタまたは受信フィルタにおいて、共通の接地パッド(半導体チップ上の金属表面)を用い、大地への接続を複数個とると、本発明の効果は一層向上する。上記共通の接地パッドとしての金属表面は、一般に基板上で大きな面積を占める。このような共通の接地パッドを用いると、接地パッドの全体的な数が減少し、半導体チップ上のスペースを節減することができる(したがって製造コストも節減することができる)。
【0041】
1つまたは複数のフィルタ回路(例えば、圧電基板上にインターデジタルトランスデューサとして設けられるBAWフィルタ、または絶縁基板上で層状をなすBAWフィルタ)を含む半導体チップは、HTCC(高温共焼成セラミック)製取付け基板、LTCC(低温共焼成セラミック)製取付け基板、またはラミネート状の取付け基板上に配置し、所望の態様で接続することができる。好ましい態様においては、フィルタ回路として、取付け基板に複数の層を設け、各層の間および/または上には、リアクタンス素子(抵抗器等)、インダクタ素子、容量素子その他の回路素子(金属製λ/4ライン等)を配置する。ここで、リアクタンス素子は、互いに連結することができる。
【0042】
周波数が高くなるにつれて、半導体チップまたは取付け基板上における電磁波の波長は短くなる。このため、マッチング素子を、チップまたは基板上の一部にのみ形成する態様もある。
【0043】
特に受信フィルタの入力端子の隣に容量素子をもつマッチング回路の場合、この容量素子は、半導体チップ上に設けるのが好ましい。したがって、電気容量をもつ非アクティブタイプの弾性波素子をインターデジタル構造にして配置するか、またはアクティブタイプの弾性波素子を、同時に上記3つの効果を発揮しうるよう、寸法を適切なものにして配置する。
【0044】
λ/4ラインは、半導体チップでの相互接続により形成することもできる。また、マッチング回路における各回路素子は、多層取付け基板において、多層状に集積化することができる。
【0045】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、受信周波数帯の中間周波数f0が2000MHzを上回るような用途に適している。現行の周波数割当てに関する条約の下では、例えば多くのWCDMA用バンドについて、1000MHzを超える送信周波数帯域は、0.50×f0≦f≦0.75×f0の範囲内に収まる。一方、GPSの受信周波数帯域も、上記0.50×f0≦f≦0.75×f0の範囲内に収まる。これらの周波数帯域に係るλ/4ラインは、マッチング素子、またはマッチング回路の一部(リアクタンス素子の形をとる)として、「チップ上に」集積化される。例えば、マッチング素子がLC回路である場合には、回路を構成する容量素子またはインダクタ素子の一部またはすべてを、チップの表面に形成する。
【0046】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、送信周波数帯域における挿入損失を、1400〜1700MHzの範囲内で2dB未満に抑え、同時に、送信フィルタおよび受信フィルタと接続されたマッチング素子によって帯域外周波数を抑圧するようになっているのが好ましい。
【0047】
送信フィルタは、第1のパスバンドをもつ第1のバンドパスフィルタを備え、受信フィルタは、第2のパスバンドをもつ第2のバンドパスフィルタを備えるのが好ましい。現時点では、WCDMA用として特に好ましいのは、以下の周波数帯域である。
−第1のパスバンドが1710〜1755MHzで、第2のパスバンドが2110〜2155MHzであるもの(バンドIV)。
−第1のパスバンドが1710〜1770MHzで、第2のパスバンドが2110〜2170MHzであるもの(バンドX)。
−第1のパスバンドが1900〜1920MHzで、第2のパスバンドが2600〜2620MHzであるもの(バンドXV)。
−第1のパスバンドが1920〜1980MHzで、第2のパスバンドが2110〜2170MHzであるもの(バンドI)。
−第1のパスバンドが2010〜2025MHzで、第2のパスバンドが2585〜2600MHzであるもの(バンドXVI)。
−第1のパスバンドが2500〜2570MHzで、第2のパスバンドが2620〜2690MHzであるもの(バンドVII)。
【0048】
上記の周波数帯域から概括的にいうと、本発明に係るアンテナデュプレクサは、1710MHz〜2690MHzのすべてのWCDMAバンドに好適である。
【0049】
特に、本発明のアンテナデュプレクサは、WCDMAバンドVIIに用いると、GPS帯域に干渉のおそれがある送信信号について、良好なサプレッション効果を発揮することができる。
【0050】
本発明に係る、マッチング素子、送信フィルタおよび受信フィルタからなるアンテナデュプレクサは、1574〜1577MHzの周波数帯域(現時点におけるGPS帯域)において、送信信号を少なくとも50dB抑圧することができる。したがって、本発明に係るアンテナデュプレクサは、位置確認のためのGPS受信機が付いた携帯情報端末に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る、アンテナ接続部と、受信用入力端子をもつ受信フィルタと、送信用出力端子をもつ送信フィルタと、マッチング素子とを備えるアンテナデュプレクサを示す回路図である。
【図2A】λ/4ラインを示す回路図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2C】本発明の他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2D】本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2E】本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2F】本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図2G】本発明のさらに他の実施形態に係アンテナデュプレクサに用いられる、容量素子、インダクタ素子および抵抗素子からなる回路の回路図である。
【図3A】圧電基板上のインターデジタル構造を示す模式的平面図である。
【図3B】半導体チップ上におけるBAWフィルタの層構造を示す断面図である。
【図4】非アクティブタイプの弾性波共振器を備えた、ラダー型に類似した構造のフィルタ回路を示す回路図である。
【図5】本発明に係るアンテナデュプレクサにおける送信フィルタの伝送特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に係るアンテナデュプレクサを、複数の実施形態と添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0053】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナデュプレクサADの回路図を示す。マッチング素子AEは、送信フィルタの出力端子SFAと受信フィルタの入力端子EFEに接続されている。信号ラインは、送信フィルタの出力端子SFAとマッチング素子AEとを結ぶとともに、アンテナ接続部AAを有している。アンテナ接続部AAは、アンテナANと電気的に接続している。送信フィルタSFと受信フィルタEFは、いずれも、ラダー型フィルタ構造LFを有するバンドパスフィルタBPFからなっている。受信フィルタEFは、出力側に、さらにDMSフィルタ(2重モードSAWフィルタ)DMSを有している。受信フィルタEFの入力側における第1の素子は、並列共振器PRである。並列共振器PRは、受信フィルタの入力端子EFEを大地Mに接続している。送信フィルタSFには、2つの並列共振器を両者共通の接地パッドMAP(大地Mに電気的に接続している)にどのように接続するかの指示が与えられる。圧電基板上に設けられる共通の接地パッドMAPは、基板上の接地パッドの数を減らして、スペースを節約する効果を発揮する。
【0054】
図2Aは、いわゆるλ/4ラインL4を示す回路図である。λ/4ラインL4は、所望の動作周波数をもつ電磁波の波長(λ)の4分の1に相当する長さをもつ導電体である。λ/4ラインは、基板上に曲がりくねった形状で設けるか、または多層基板中において複数の層からなる導電性の帯として設ける。
【0055】
図2Bは、本発明の一実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる回路VE(いわゆる「Pi回路」)を示す。ここで、インダクタ素子IEは、アンテナ接続部AAと受信フィルタEFに接続されている。さらに、インダクタ素子IEの2つの電極は、それぞれ、容量素子KEを介して、大地にも接続されている。この回路は、λ/4ラインをもつ回路としてだけでなく、マッチング素子AEとしても用いられる。
【0056】
図2Cは、本発明の他の実施形態に係る、本発明の他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる回路VEを示す。この回路VEも、Pi回路であり、容量素子KEを備えている。容量素子KEは、アンテナ接続部AAと受信フィルタの入力端子EEFに接続されている。また、この容量素子KEの2つの電極は、それぞれ、インダクタ素子IEを介して、大地にも接続されている。
【0057】
図2Dは、本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEは、いわゆる「T回路」であり、直列に接続された2つのインダクタ素子IEを備えている。これら2つのインダクタ素子IEは、アンテナ接続部AAおよび受信フィルタの入力端子EEFに接続されている。また、2つのインダクタ素子IEの間に位置する接合ポイントは、容量素子KE(T回路の並列アームをなす)を介して、大地に接続されている。
【0058】
図2Eは、本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEも、T回路であるが、直列に接続された2つの容量素子KEを備えている。これら2つの容量素子KEは、アンテナ接続部AAおよび受信フィルタの入力端子EFEに接続されている。また、2つの容量素子KEの間に位置する接合ポイントは、インダクタ素子IE(T回路の並列アームをなす)を介して、大地に接続されている。
【0059】
図2Fは、本発明のさらに他の実施形態に係るアンテナデュプレクサに用いられる、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEは、図2Bに示す回路を基礎としている。しかし、本図において受信フィルタEFと大地の間に接続されている容量素子KEは、半導体チップ上でインターデジタル構造SRをなすアクティブタイプまたは非アクティブタイプの弾性波素子である。
【0060】
図2Gは、本発明のさらに他の実施形態に係る、容量素子KEとインダクタ素子IEからなる本発明の一実施形態に係る回路VEを示す。この回路VEは、図2Eに示す回路を基礎としている。しかし、本図において、受信フィルタ入力端子EFEに接続されている容量素子KEは、半導体チップ上でインターデジタル構造SRをなすアクティブタイプまたは非アクティブタイプの弾性波素子である。
【0061】
図3Aは、圧電基板PSu上に形成されたインターデジタル構造IDSを模式的に示す平面図である。インターデジタル構造IDSは、櫛形をなす2つの指状の小電極EFIが互いに入り組んだ櫛型電極である。表面弾性波の振動は、小電極EFIの配置に応じて圧電基板PSu上で励振され、小電極EFIに対して直角をなすように、圧電基板PSuの表面上を伝播する。
【0062】
図3Bは、半導体チップ上におけるBAWフィルタBRの基本構造を示す断面図である。取付け基板TS上には、圧電層PSを挟む2つの電極ELが設けられている。高周波交流電圧が2つの電極間に印加されると、両電極は、圧電層PCに、この圧電層PCの厚さに応じて、3次元的な弾性振動を引き起こす。
【0063】
図4は、2つの非アクティブタイプの弾性波共振器AIRを備えたラダー型フィルタ回路LFを示す。圧電基板は、一般に結晶質であり、かつその結晶軸に沿って異方性である。この結晶面および/またはこの結晶面上には、インターデジタル構造に従って弾性波が励振される方向と、弾性波がほとんど励振されない方向とが存在するが、圧電基板上には、後者の方向に対応するインターデジタル構造をもつ非アクティブタイプの弾性波共振器AIRが生成されている。図4においては、2つの共振器AIRを45°回転させて描くことによって、これを表している。なお、この図4も、これ以外の図も模式的なものであり、角度も寸法も正確には表されていない。
【0064】
図5は、本発明に係るアンテナデュプレクサ(WCDMAのバンドVII用)のTxフィルタにおけるパスカーブ(伝送特性)を示すグラフである。矢印Aは、GPS用周波数帯におけるサプレッション効果がきわめて高いこと(矢印Bで示す規格よりもはるかに低い−60dB程度にまで低下している)を示している。
【0065】
本発明に係るアンテナデュプレクサは、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態には、追加の共振器その他の回路素子を含む変形例、LC回路、または抵抗素子、容量素子もしくはインダクタ素子を含む他の回路も含まれる。
【符号の説明】
【0066】
AA アンテナ接続部
AD アンテナデュプレクサ
AE マッチング素子
AIR 共振器
AN アンテナ
BPF バンドパスフィルタ
BR BAWフィルタ
DMS 2重モードSAWフィルタ
EF 受信フィルタ
EFE 受信フィルタの入力端子
EFI 指状電極
EL 電極
IDS インターデジタル構造
IE インダクタ素子
KE 容量素子
L4 λ/4ライン
LF ラダー型フィルタ構造
M 大地
MAP 大地パッド
PR 並列共振器
PS 圧電基板
PSu 圧電基板
SF 送信フィルタ
SFA 送信フィルタの出力端子
SR インターデジタル構造
TS 取付け基板
VE マッチング回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信周波数帯域において動作しかつ出力端子(SFA)をもつ送信フィルタ(SF)と、
受信周波数帯域において動作しかつ入力端子(EFE)をもつ受信フィルタ(EF)と、
前記送信フィルタの出力端子(SFA)に接続されたアンテナ接続部(AA)と、
前記アンテナ接続部(AA)および前記受信フィルタの入力端子(EFE)に接続されたマッチング素子(AE)とを備えるアンテナデュプレクサ(AD)であって、
前記マッチング素子(AE)は、前記送信フィルタ(SF)および受信フィルタ(EF)とともに、0.50×f0≦f≦0.75×f0(ここで、f0(受信周波数帯域の中間周波数)は2000MHzを上回る)の周波数帯域における送信信号について、少なくとも40dBの周波数強度抑圧効果を有するようになっているアンテナデュプレクサ。
【請求項2】
前記マッチング素子(AE)は、λ/4ラインを含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項3】
前記マッチング素子(AE)は、容量素子(KE)、インダクタ素子(IE)または抵抗素子もしくはリアクタンス素子を含む回路(VE)からなることを特徴とする請求項1に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項4】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、圧電基板(PSu)上に形成されたSAWフィルタを含むバンドパスフィルタ回路(BPF)からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項5】
ラダー型フィルタ回路(LF)からなることを特徴とする請求項4に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項6】
前記ラダー型フィルタ回路(LF)は、直列共振器(SR)とそれぞれ並列に接続された複数のインターデジタル構造(IDS,AIR)を有し、このインターデジタル構造を形成する指状電極(EFI)は、電気弾性カップリング係数が無視できる程度となるように、圧電基板(PSu)上に配置されるようになっていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項7】
前記ラダー型フィルタ回路(LF)は、直列共振器(SR)とそれぞれ並列に接続された複数のインターデジタル構造(IDS,AIR)を有し、このインターデジタル構造を形成する指状電極(EFI)は、電気弾性カップリング係数が無視できる程度となるように、圧電基板(PSu)上に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項8】
重みづけインターデジタルトランスデューサを有することを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項9】
前記直列共振器は、重みづけインターデジタルトランスデューサを有することを特徴とする請求項8に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項10】
前記受信フィルタ(EF)は、DMSフィルタ(DMS)を備えることを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項11】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、BAWフィルタを含むバンドパスフィルタ回路(BPF)からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項12】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、共通の接地パッド(MAP)を介して大地と接続された複数の素子を含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項13】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、HTCC製、LTCC製、またはラミネート状の取付け基板上に設けられた1つまたは複数の半導体チップに形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項14】
前記マッチング素子(AE)は、半導体チップの少なくとも一部に集積化されていることを特徴とする請求項13に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項15】
前記取付け基板(TS)は、前記マッチング素子(AE)が少なくとも一部に集積化された多層構造をなすことを特徴とする請求項13に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項16】
前記受信周波数帯域は、2000MHzを上回ることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項17】
送信周波数帯域における挿入損失が2dB未満であり、前記マッチング素子(AE)、送信フィルタ(SF)および受信フィルタ(EF)は、1400〜1700MHzの周波数帯域において、送信信号の強度を少なくとも45dB抑圧するようになっていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項18】
前記送信フィルタ(SF)は、第1のパスバンドをもつ第1のバンドパスフィルタを有し、前記受信フィルタ(EF)は、第2のパスバンドをもつ第2のバンドパスフィルタを有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項19】
前記第1のパスバンドは1710〜1755MHzで、前記第2のパスバンドは2110〜2155MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項20】
前記第1のパスバンドは1710〜1770MHzで、前記第2のパスバンドは2110〜2170MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項21】
前記第1のパスバンドは1900〜1920MHzで、前記第2のパスバンドは2600〜2620MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項22】
前記第1のパスバンドは1920〜1980MHzで、前記第2のパスバンドは2110〜2170MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項23】
前記第1のパスバンドは2010〜2025MHzで、前記第2のパスバンドは2585〜2600MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項24】
前記第1のパスバンドは2500〜2570MHzで、前記第2のパスバンドは2620〜2690MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項25】
前記マッチング素子(AE)、送信フィルタ(SF)および受信フィルタ(EF)は、1574〜1577MHzの周波数帯域において、送信信号の強度を少なくとも50dB抑圧するようになっていることを特徴とする請求項1乃至24のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項26】
GPS受信機が付いた携帯情報端末に用いるようになっていることを特徴とする請求項1乃至25のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項27】
前記マッチング素子は、容量素子(KE)、インダクタ素子(IE)または抵抗素子からなるPi回路またはT回路の形態をとることを特徴とする請求項3に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項28】
前記マッチング素子は、圧電基板上に形成されたアクティブタイプまたは非アクティブタイプのインターデジタル構造(IDS)を有することを特徴とする請求項27に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項1】
送信周波数帯域において動作しかつ出力端子(SFA)をもつ送信フィルタ(SF)と、
受信周波数帯域において動作しかつ入力端子(EFE)をもつ受信フィルタ(EF)と、
前記送信フィルタの出力端子(SFA)に接続されたアンテナ接続部(AA)と、
前記アンテナ接続部(AA)および前記受信フィルタの入力端子(EFE)に接続されたマッチング素子(AE)とを備えるアンテナデュプレクサ(AD)であって、
前記マッチング素子(AE)は、前記送信フィルタ(SF)および受信フィルタ(EF)とともに、0.50×f0≦f≦0.75×f0(ここで、f0(受信周波数帯域の中間周波数)は2000MHzを上回る)の周波数帯域における送信信号について、少なくとも40dBの周波数強度抑圧効果を有するようになっているアンテナデュプレクサ。
【請求項2】
前記マッチング素子(AE)は、λ/4ラインを含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項3】
前記マッチング素子(AE)は、容量素子(KE)、インダクタ素子(IE)または抵抗素子もしくはリアクタンス素子を含む回路(VE)からなることを特徴とする請求項1に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項4】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、圧電基板(PSu)上に形成されたSAWフィルタを含むバンドパスフィルタ回路(BPF)からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項5】
ラダー型フィルタ回路(LF)からなることを特徴とする請求項4に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項6】
前記ラダー型フィルタ回路(LF)は、直列共振器(SR)とそれぞれ並列に接続された複数のインターデジタル構造(IDS,AIR)を有し、このインターデジタル構造を形成する指状電極(EFI)は、電気弾性カップリング係数が無視できる程度となるように、圧電基板(PSu)上に配置されるようになっていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項7】
前記ラダー型フィルタ回路(LF)は、直列共振器(SR)とそれぞれ並列に接続された複数のインターデジタル構造(IDS,AIR)を有し、このインターデジタル構造を形成する指状電極(EFI)は、電気弾性カップリング係数が無視できる程度となるように、圧電基板(PSu)上に配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項8】
重みづけインターデジタルトランスデューサを有することを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項9】
前記直列共振器は、重みづけインターデジタルトランスデューサを有することを特徴とする請求項8に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項10】
前記受信フィルタ(EF)は、DMSフィルタ(DMS)を備えることを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項11】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、BAWフィルタを含むバンドパスフィルタ回路(BPF)からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項12】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、共通の接地パッド(MAP)を介して大地と接続された複数の素子を含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項13】
前記送信フィルタ(SF)または受信フィルタ(EF)は、HTCC製、LTCC製、またはラミネート状の取付け基板上に設けられた1つまたは複数の半導体チップに形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項14】
前記マッチング素子(AE)は、半導体チップの少なくとも一部に集積化されていることを特徴とする請求項13に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項15】
前記取付け基板(TS)は、前記マッチング素子(AE)が少なくとも一部に集積化された多層構造をなすことを特徴とする請求項13に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項16】
前記受信周波数帯域は、2000MHzを上回ることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項17】
送信周波数帯域における挿入損失が2dB未満であり、前記マッチング素子(AE)、送信フィルタ(SF)および受信フィルタ(EF)は、1400〜1700MHzの周波数帯域において、送信信号の強度を少なくとも45dB抑圧するようになっていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項18】
前記送信フィルタ(SF)は、第1のパスバンドをもつ第1のバンドパスフィルタを有し、前記受信フィルタ(EF)は、第2のパスバンドをもつ第2のバンドパスフィルタを有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項19】
前記第1のパスバンドは1710〜1755MHzで、前記第2のパスバンドは2110〜2155MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項20】
前記第1のパスバンドは1710〜1770MHzで、前記第2のパスバンドは2110〜2170MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項21】
前記第1のパスバンドは1900〜1920MHzで、前記第2のパスバンドは2600〜2620MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項22】
前記第1のパスバンドは1920〜1980MHzで、前記第2のパスバンドは2110〜2170MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項23】
前記第1のパスバンドは2010〜2025MHzで、前記第2のパスバンドは2585〜2600MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項24】
前記第1のパスバンドは2500〜2570MHzで、前記第2のパスバンドは2620〜2690MHzであることを特徴とする請求項18に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項25】
前記マッチング素子(AE)、送信フィルタ(SF)および受信フィルタ(EF)は、1574〜1577MHzの周波数帯域において、送信信号の強度を少なくとも50dB抑圧するようになっていることを特徴とする請求項1乃至24のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項26】
GPS受信機が付いた携帯情報端末に用いるようになっていることを特徴とする請求項1乃至25のいずれかに記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項27】
前記マッチング素子は、容量素子(KE)、インダクタ素子(IE)または抵抗素子からなるPi回路またはT回路の形態をとることを特徴とする請求項3に記載のアンテナデュプレクサ。
【請求項28】
前記マッチング素子は、圧電基板上に形成されたアクティブタイプまたは非アクティブタイプのインターデジタル構造(IDS)を有することを特徴とする請求項27に記載のアンテナデュプレクサ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2012−506185(P2012−506185A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531493(P2011−531493)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063510
【国際公開番号】WO2010/043687
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063510
【国際公開番号】WO2010/043687
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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