説明

MEMSデバイス及びその製造方法

【課題】簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子の特性への影響を低減できるMEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】基板と、前記基板上に配置されたMEMS素子と、前記MEMS素子を覆い、前記MEMS素子との間に空間を確保するケースと、前記基板と前記ケースとが接触又は近接する位置に前記ケースの上面の少なくとも一部を露出させて配置される封止材と、を含むことを特徴とするMEMSデバイスを提供する。また、MEMS素子を基板上に配置し、ケースにより前記MEMS素子を覆い、前記MEMS素子と前記ケースとの間に空間を確保し、前記基板と前記ケースとが接触又は近接する位置に、前記ケースの上面の少なくとも一部を露出させて封止材を形成することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造を有してパッケージ化されたMEMSデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型軽量化、多機能化や高機能化が進み、実装される電子部品に高密度化が要求されている。このような要求に応じて各種電子部品が半導体デバイスとして製造されるものが増加している。また、回路素子として製造される半導体デバイス以外に、各種センサ等も半導体デバイスとして製造され、小型軽量化が図られている。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて小型MEMSデバイスが実用化されている。
【0003】
このようなMEMSデバイスのパッケージとして、従来、樹脂モールドパッケージが利用されている。樹脂モールドパッケージは、蓋付のMEMSチップをリードフレームあるいはケースに載置した後、樹脂で覆い、その後樹脂を硬化させる。一般に、樹脂としてエポキシ樹脂等が用いられる。このような樹脂モールドパッケージは、外部からの衝撃や水分からMEMS素子を保護する。しかし、樹脂が硬化した際に発生する応力がMEMSデバイス躯体に影響を及ぼすことがあった。例えば、検出部に薄肉状の梁やダイアフラムを有するタイプのMEMSデバイスでは、樹脂による応力により検出精度が低下する問題があった。
【0004】
そこで、従来のMEMSパッケージとして、パッケージ内部に中空構造を有するものがある。例えば、基板上に載置されたMEMS素子の周囲の空間を確保するキャビティ確保部(プラスチックケース)によりMEMS素子を覆った後、その上から樹脂を塗布してパッケージ化したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−226571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1により提案されたMEMSパッケージによると、MEMS素子を覆うケース全体を樹脂で覆うため、樹脂を塗布する際にケースに歪みが発生し、MEMS素子の性能に影響を与えてしまう可能性がある。また、高度な加工精度が要求され、製造工程が煩雑となり、製造コストが高くなる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子の特性への影響を低減することのできるMEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、基板と、前記基板上に配置されたMEMS素子と、前記MEMS素子を覆い、前記MEMS素子との間に空間を確保するケースと、前記基板と前記ケースとが接触又は近接する位置に前記ケースの上面の少なくとも一部を露出させて配置される封止材と、を含むことを特徴とする。このMEMSデバイスによれば、封止材でケースの上面を全て覆わずに、ケースの側面に封止材を配置して基板とケースとを固定させるため、MEMS素子に対する応力の影響を低減することができる。従って、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子の特性への影響を低減することができる。
【0009】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、前記MEMS素子の上部と前記ケースとの間には凸部材が配置され、前記凸部材により前記MEMS素子の上部の空間が確保されることを特徴とする。このMEMSデバイスによれば、凸部材をケースの内面に当接させる構造をとることにより、ケースの加工精度によらず、MEMS素子について一定の可動範囲を確保することができる。これにより、MEMS素子の特性への影響を低減することができる。
【0010】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、前記MEMS素子が、支持部及び前記支持部に対して変位する可動部を含み、前記ケースの内面は前記可動部の変位を規制することを特徴とする。このMEMSデバイスによれば、ケース内面がMEMS素子の可動部の過度な変位を規制するため、MEMS素子の破損を防止することができる。また、可動部上に蓋部材を形成せずともケースの内面が蓋部材として機能することから、簡易な製造方法によりMEMSデバイスを製造することができる。さらに、蓋部材を含まないことからMEMSデバイスを低背化して小型化することも可能となる。
【0011】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、前記凸部材は、フィラー含有樹脂であることを特徴とする。凸部材をフィラー含有樹脂とすることにより、凸部材の強度を高めることができるため、MEMSデバイスの耐衝撃性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、前記封止材が、樹脂の発泡体であることを特徴とする。基板とケースとを樹脂の発泡体により固定させることにより、ケース内に水分が混入することを防ぎ、MEMSデバイスの電極部分等が腐食することを防ぐことができる。また、耐衝撃性を高め、樹脂による応力の発生を抑えてMEMS素子の特性への影響を低減することができる。
【0013】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、前記発泡体は、独立気泡構造であることを特徴とする。発泡体が独立気泡構造であることにより、より湿気や温度等の影響を受けにくく、耐衝撃性を向上させたMEMSデバイスを提供することができる。
【0014】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスは、前記発泡体は、曲げ弾性率が0.1MPa以上5GPa以下のシリコーン樹脂材料を用いることを特徴とする。このMEMSデバイスによれば、樹脂による応力の発生を抑えてMEMS素子の特性への影響を低減することができる。
【0015】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、MEMS素子を基板上に配置し、ケースにより前記MEMS素子を覆い、前記MEMS素子と前記ケースとの間に空間を確保し、前記基板と前記ケースとが接触又は近接する位置に、前記ケースの上面の少なくとも一部を露出させて封止材を形成することを特徴とする。この製造方法により製造されたMEMSデバイスによれば、封止材でケースの上面を全て覆わずに、ケースの側面に封止材を配置して基板とケースとを固定させるため、MEMS素子に対する応力の影響を低減することができる。従って、簡易な製造方法で、MEMS素子の特性への影響を低減することのできるMEMSデバイスを製造することができる。
【0016】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記MEMS素子の上部と前記ケースとの間には凸部材が配置され、前記凸部材により前記MEMS素子の上部の空間が確保されることを特徴とする。この製造方法により製造されたMEMSデバイスによれば、凸部材をケースの内面に当接させる構造をとることにより、ケースの加工精度によらず、MEMS素子について一定の可動範囲を確保することができる。これにより、MEMS素子の特性への影響を低減することができる。
【0017】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記MEMS素子は、支持部及び前記支持部に対して変位する可動部を含み、前記ケースの内面は前記可動部の変位を規制することを特徴とする。この製造方法により製造されたMEMSデバイスによれば、ケース内面がMEMS素子の可動部の過度な変位を規制し、破損を防止することができる。また、可動部上に蓋部材を形成せずともケースの内面が蓋部材として機能することから、簡易な製造方法でMEMSデバイスを製造することができる。さらに、蓋部材を含まないことからMEMSデバイスを低背化して小型化することも可能となる。
【0018】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記凸部材は、フィラー含有樹脂であることを特徴とする。凸部材をフィラー含有樹脂とすることにより、凸部材の強度を高めることができるため、MEMSデバイスの耐衝撃性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記封止材は、樹脂の発泡体であることを特徴とする。基板とケースとを樹脂の発泡体により固定させることにより、ケース内に水分が混入することを防ぎ、MEMSデバイスの電極部分等が腐食することを防ぐことができる。また、耐衝撃性を高め、樹脂による応力の発生を抑えてMEMS素子の特性への影響を低減することができる。
【0020】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記発泡体は、独立気泡構造であることを特徴とする。発泡体が独立気泡構造であることにより、より湿気や温度等による影響を受けにくく、耐衝撃性を向上させたMEMSデバイスを提供することができる。
【0021】
また、本発明の一実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法は、前記発泡体は、曲げ弾性率が0.1MGPa以上5GPa以下のシリコーン樹脂材料を用いることを特徴とする。このMEMSデバイスによれば、樹脂による応力の発生を抑えてMEMS素子の特性への影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子の特性への影響を小さくすることのできるMEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るMEMSデバイスの概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。
【図2】図1に示した本発明の第1の実施の形態に係るMEMSデバイスに含まれるMEMS素子の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示した本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の上面を示す平面図である。
【図4】図1に示した本発明の第1の実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法を説明するための断面図であり、(a)は、基板上に形成されたMEMS素子を示す断面図、(b)は、MEMS素子をケースにより覆う工程を説明するための断面図、(c)は、基板とケースとを固定させる封止材の形成工程を説明するための断面図である。
【図5】図1に示した本発明の第1の実施の形態に係るMEMSデバイスの他の例の概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るMEMSデバイスの概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。
【図7】図6に示した本発明の第2の実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法を説明するための断面図であり、(a)は、基板上に形成されたMEMS素子を示す断面図、(b)は、MEMS素子を覆うケースの形成工程を説明するための断面図、(c)は、基板とケースとを固定させる封止材の形成工程を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るMEMSデバイスの概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。
【図9】図8に示した本発明の第3の実施の形態に係るMEMSデバイスの製造方法を説明するための断面図であり、(a)は、基板上に形成されたMEMS素子を示す断面図、(b)は、MEMS素子上の蓋部材の上面に凸部材が配置された状態を示す断面図、(c)は、凸部材を介して配置されるケースの形成工程を説明するための断面図、(d)は、基板とケースとを固定させる封止材の形成工程を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るMEMSデバイスの他の例の概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係るMEMSデバイスの概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明のMEMSデバイス及びその製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0025】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係るMEMSデバイスの構成について図1を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態に係るMEMSデバイスの概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。なお、図1(a)は、図1(b)に示したA1−A1´線の断面図である。
【0026】
図1を参照すると、MEMSデバイス100は、基板101、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、配線105a、105b、ケース106、及び封止材107を含む。
【0027】
基板101は、配線を有する。基板101は、また、有機材料を含む基板であってもよい。図1においては、基板101を1つの層として図示しているが、多層構造のプリント配線基板であってもよい。例えば、3層構造のプリント配線基板であってもよい。3層構造である場合、基板101は、導電物質を含む配線層、絶縁物質を含む絶縁層、及び導電物質を含む配線層を有する。導電物質とは、金属などであり、例えば、銅、銀、金、ニッケル、パラジウムなどを用いることができる。絶縁物質には、絶縁性樹脂を用いる。例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネートなどを用いることができる。上記樹脂は、単体で用いられてもよく、2種類以上の樹脂を組み合わせて用いられてもよい。また、上記樹脂に、ガラス、タルク、シリカなどの無機フィラーを併用して用いてもよい。しかしこれに限定されず、基板101の層は3層以下であってもよく、3層以上であってもよい。
【0028】
基板101上には制御IC102が配置され、制御IC102上にはMEMS素子103が配置される。制御IC102は、MEMS素子103を制御するために用いられるが、MEMS素子103からの信号を増幅するなど、MEMS素子103から出力される信号を処理するものであってもよい。また、MEMS素子103から出力される信号の処理以外の処理を行うものであってもよい。図1に図示したように、基板101と制御IC102とは、配線105bにより電気的に接続される。また、制御IC102とMEMS素子103とは、配線105aにより電気的に接続される。なお、制御IC102とMEMS素子103又は基板101とが金属バンプ等を介して接続されてもよく、この場合には、配線105a、105bを不要とすることができる。
【0029】
MEMS素子103は、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ等の、静電、ピエゾ、圧電、流体等を検出方式とするMEMSセンサや、MEMSミラー等を含み、MEMS素子全般を示すものである。なお、本願では、一例として、支持部と、支持部に対して変位する可動部とを含む力学量センサである場合を以下に説明する。この場合、MEMS素子103の可動部は外力に応じて変位し、可動部の変位が加速度あるいは角速度等を示す電気信号の変化として検出される。しかし、これに限定されず、他の多様なMEMS素子が適用されてもよい。
【0030】
図1に示したMEMS素子103の構成例について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、MEMSデバイス100に含まれるMEMS素子103の一例を示す断面図であり、図3は、図2に示したMEMS素子103の上面を示す平面図である。なお、図2は、図3に示したMEMSデバイス100のA2−A2´線の断面図である。
【0031】
図2を参照すると、MEMSデバイス100に含まれるMEMSデバイスは、基板101、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bを含む。また、図2に図示したように、MEMS素子103は、可動部103a、錘部103b、及び支持部103cを含み、図3に図示したように、ピエゾ抵抗素子121を有する加速度センサであってもよい。
【0032】
図2及び図3を参照して、MEMS素子103の動作を簡単に説明する。MEMS素子103に外力が加わると、MEMS素子103の錘部103bが変位し、この変位に伴って可動部103aが撓む。可動部103aが撓むと、可動部103aに配置されたピエゾ抵抗素子121に力が加わり、ピエゾ抵抗素子121の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化を検出して、MEMS素子103に加えられた外力、例えば、加速度の大きさ、方向などを検出する。MEMS素子103からの信号は、ピエゾ抵抗素子121に接続されている配線122に接続された外部接続端子120から配線105a、105bを通じて外部に伝達される。
【0033】
MEMS素子103の上面には、支持部103cに固定され、可動部103aと錘部103bとを覆う蓋部材104が配置されてもよい。蓋部材104は、MEMS素子103が可動部103aの微小な変位を検出することから、MEMS素子103の上部を保護するために配置され、可動部103aの上方向への過大な変位を制限し、破損を防止する。従って、蓋部材104にはある程度の強度が必要とされる。例えば、蓋部材104は、シリコン基板、セラミック基板、絶縁性樹脂基板、金属板等で形成されてもよい。また、図1に示すMEMS素子103は可動部を基板101側に向けて配置することも可能である(フリップチップ配置)。この場合、MEMS素子103の基板101側面及び基板101の反対側面に蓋部材104が配置されるようにしてもよい。MEMS素子103は可動部を基板101側に向けて配置する場合、MEMS素子103と基板101又は制御IC102とを配線105a、105bで接続する代わりに、金属バンプ等を介して接続するようにしてもよい。
【0034】
このように、基板101上に、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bが配置される。
【0035】
以下、図1及び図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るMEMSデバイス100の構成を、製造方法とともに説明する。図4は、図1に示したMEMSデバイスの製造方法を説明するための断面図であり、(a)に、基板上に形成されたMEMS素子を示す断面図、(b)に、MEMS素子をケースにより覆う工程を説明するための断面図、(c)に、基板とケースとを固定させる封止材の形成工程を説明するための断面図を示す。
【0036】
まず、図4(a)に図示したように、基板101上には、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bが配置される。次に、図4(b)に図示したように、図4(a)に図示した制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bを覆って、基板101上には、ケース106が配置される。
【0037】
ケース106は、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bが収納される中空な空間を有する枡状の形状を有する。ケース106は、図示したように、四角形の枡状の形状を有してもよいが、半球をくり抜いたような形状や、角が面取りされたラウンド形状を有するように形成してもよい。角部を有さないことにより、応力を分散させ、ケース106を破損し難い形状とすることができる。ケース106の内側の高さ(枡形状を有するケース106の内側の深さ)は、基板101から蓋部材104の上面までの高さに50μm以下の値を加えた高さであることが望ましい。これよりもケース106の内側の高さが大きくなると、ケース106の内面と蓋部材104との間隙が大きくなり、MEMSデバイス100の高さが過大となり、低背化が困難となるからである。ケース106は、樹脂、金属、セラミック、シリコーン等の材料を用いて、モールド成形等により形成されてもよい。また、ケースが金属性であれば、金属絞り加工によりケースを成形してもよい。なお、ケース106に用いられる材料は、基板101に用いられる材料との熱膨張係数差が、±5ppm以内であることが望ましい。これにより、熱応力によるクラック等の発生を防ぐことができる。ケース106は、シリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の接着剤等を用いて、基板101に固定されてもよい。
【0038】
次に、図4(c)に図示したように、基板101とケース106とが接触又は近接する位置106−1に、封止材107が配置される。封止材107は、ケース106の上面を全て覆わないものとする。なお、ケース106の上面とは、ケース106を基板101に配置した場合に、基板101を上下関係の基準にしたときのケース106の上の面である。ケース106の上面を封止材107で覆わないことにより、基板101とケース106とを固定しつつケース106に対する封止材107による応力を軽減することができ、MEMSデバイス100自体の軽量化も可能となる。また、封止材107は、ケース106と基板101とが接触又は近接する位置106−1を封止することにより、ケース106内部に外部から水分が混入することを防ぐ。これにより、封止材107は、配線105a、105b等を含むMEMSデバイス100の電極部分が腐食することを防ぐことができる。なお、封止材107には、一般的な樹脂材料を用いてもよい。また、封止材107は、ケース106と基板101とを固定するように配置されるものであれば、図1及び図4(c)に図示した形状に限定されない。
【0039】
封止材107は、ケース106内に外部から水分が混入することを防止するため、吸水性の低い樹脂材料を用いることが望ましく、基板101上に封止材107が配置されるので、封止材107は、絶縁性を有することが望ましい。吸水性の低い樹脂材料は、種々の材料の吸水率に基づいて考察すると次のようになる。吸水率の測定条件の一例として、温度85°C、湿度85%RHの恒温室内で樹脂を保存し、その保存前と72時間保存後の樹脂の質量変化を測定し、樹脂の質量に占める割合から求めることができる。この測定条件を用いて、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂の各吸水率を測定すると、シリコーン系樹脂の吸水率は0.02%、アクリル系樹脂の吸水率は0.68%、エポキシ系樹脂の吸水率は1.0%、ポリイミド系樹脂の吸水率は0.12%、ウレタン系樹脂の吸水率は0.6%であった。したがって、封止材107としては、シリコーン系樹脂を選択することが望ましい。
【0040】
このような樹脂を用いた封止材107として、曲げ弾性率は、0.1MGPa以上5GPa以下であることが望ましい。なお、曲げ弾性率は、JIS K6911規格に基づいて測定したものとする。曲げ弾性率が5GPa以下の樹脂材料であれば、発泡体106が硬化収縮する際の応力の発生を抑え、蓋部材104に反りが発生すること等を防止することができる。しかし、曲げ弾性率が0.1MPa未満である場合には、吸水性が大きくなり、電極パッド等の酸化防止効果が低下する虞がある。また、流動性が高まることにより、耐衝撃性や強度の面において、発泡体の効果が低下する虞がある。従って、曲げ弾性率が、0.1MPa以上5GPa以下の樹脂を選択することが望ましい。
【0041】
また、封止材107は、樹脂を発泡させた発泡体であってもよい。例えば、熱処理により発泡させた樹脂の発泡体であってもよく、他の多様な発泡方法により形成されたものであってもよい。
【0042】
封止材107を発泡体とする場合には、発泡体は独立気泡構造、連続気泡構造のいずれであってもよいが、MEMSデバイス100内に水分が混入することを防ぐため、独立気泡構造とすることが好ましい。独立気泡構造の封止材107によれば、樹脂の応力を気泡により分散させることもでき、衝撃吸収材として耐衝撃性を向上させることもできる。また、独立気泡構造であることにより、断熱効果が期待でき、温度によるMEMSデバイス特性への影響も低減させることができる。
【0043】
封止材107が発泡体である場合には、気泡密度は、10個/cm以上1010個/cm以下であることが望ましい。気泡密度が、10個/cmより小さいと、ひずみを吸収し難くなり、また気泡密度が1010個/cmより大きいと、強度が不足する虞があるからである。なお、気泡密度は、封止材107の破断面を走査型電子顕微鏡により観察して算出したものである。また、封止材107の硬度としては、アスカーC硬度計で測定したとき、アスカーC硬度で5以上30以下であることが望ましい。アスカーC硬度が5より小さいと、変形し易く強度不足となり、またアスカーC硬度が30より大きいと、応力が大きくなる虞があるからである。
【0044】
以上のように、第1の実施の形態に係るMEMSデバイス100は、上述したケース106及び封止材107により基板101上のMEMS素子103を封止することにより形成される。
【0045】
なお、複数のMEMS素子103が基板101上に配置される場合には、ケース106及び封止材107によりMEMS素子103を封止した後、ダイシングブレード等により切断して個片化される。これにより、図1に示したMEMSデバイス100が形成される。
【0046】
上述したMEMSデバイス100によれば、ケース106により基板101上の制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bを覆った後、樹脂を用いた封止材107でケース106と基板101とを固定することにより、MEMS素子103に対して生じる応力を低減することができる。これにより、MEMS素子103の検出精度に及ぼす影響を小さくすることができる。また、基板101とケース106とが接触又は近接する位置106−1を封止材107で封止するため、ケース106内に水分が混入することを防ぐことができる。さらに、封止材107に樹脂の発泡体を用いた場合には、封止材107が衝撃吸収材として機能するため、MEMS素子の耐衝撃性を向上させる効果を期待でき、外部環境の温度や湿度の影響を受けにくく、厳しい環境下であっても安定した動作を実現できるという効果を期待できる。また、ケース106は、封止材107を用いて基板101に固定されるので、ケース106により基板101上の制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bを覆ったときにケース106と基板101との間に多少の隙間があってもよい。したがって、ケース106の加工に高精度は要求されない。このように、本発明の第1の実施の形態に係るMEMSデバイス100によれば、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子103の特性への影響を小さくすることができる。
【0047】
また、第1の実施の形態に係るMEMSデバイス100の構成は、図1に示したものに限定されず、例えば、図5に示した構成であってもよい。
【0048】
図5は、図1に示したMEMSデバイス100の他の例の概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。なお、図5(a)は、図5(b)に示したA3−A3´線の断面図である。
【0049】
図5に図示したMEMSデバイス110は、図1に示す例と同様、基板111、制御IC112、MEMS素子113、蓋部材114、配線115a、115b、ケース116、及び封止材117を含む。図5に示すMEMSデバイス110は、基板111に制御IC112とMEMS素子113とが横に並んで配置されている点において、図1に示すMEMSデバイス100と構成が異なる。図5に示すように、基板111と制御IC112とは、配線115bにより電気的に接続される。また、制御IC112とMEMS素子113とは、配線115aにより電気的に接続される。なお、本実施の形態に係るMEMSデバイス110において、基板111と制御IC112との配置の仕方は図5に示す形態に限定されるわけではなく、如何なる配置形態を採用してもよい。図1に示すMEMS素子103と同様に、図5に示すMEMS素子113についても、可動部を基板111側に向けて配置することも可能である。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係るMEMSデバイスの構成について図6及び図7を参照して説明する。
【0051】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るMEMSデバイス200の概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。なお、図6(a)は、図6(b)に示したB1−B1´線の断面図である。
図7は、図6に示したMEMSデバイス200の製造方法を説明するための断面図を示し、(a)に、基板上に形成されたMEMS素子を示す断面図、(b)に、MEMS素子を覆うケースの形成工程を説明するための断面図、(c)に、基板とケースとを固定させる封止材の形成工程を説明するための断面図を示す。
【0052】
図6を参照すると、MEMSデバイス200は、基板101、制御IC102、MEMS素子103、配線105a、105b、ケース206、及び封止材207を含む。図6に図示されたように、第2の実施の形態に係るMEMSデバイス200は、MEMS素子103上に配置される蓋部材104を含まない点において、第1の実施の形態に係るMEMSデバイス100と構成が異なる。従って、以下、基板101、制御IC102、MEMS素子103、及び配線105a、105bについては、第1の実施の形態で説明した構成と同様であるため、説明については省略する。
【0053】
なお、第2の実施の形態に係るケース206は、第1の実施の形態に係るケース106と同様の形状を有し、同様の材料を用いて形成されてもよい。また、第2の実施の形態に係るケース206は、第1の実施の形態に係るケース106とは異なり、MEMS素子101が蓋部材104を上部に有さないことから、ケース206を蓋部材104と同様に機能させる必要がある。このため、ケース206の内側の高さは、基板101からMEMS素子103の上面までの高さに50μm以下の値を加えた高さとし、ケース206をMEMS素子103の過度な変位を制限するストッパとして機能させることが望ましい。このように、第2の実施の形態に係るケース206は、MEMSデバイス200が蓋部材104を含まないことから、第1の実施の形態に係るケース106と比較して低背化することができるため、MEMSデバイス200自体を小型化することも可能となる。
【0054】
以下、MEMSデバイス200の製造方法について説明する。まず、図7(a)に図示したように、基板101上には、制御IC102、MEMS素子103、及び配線105a、105bが配置される。次に、図7(b)に図示したように、MEMS素子103及び制御IC102を覆って、基板101上にはケース206が配置される。
【0055】
次に、図7(c)に図示したように、基板101とケース206とが接触又は近接する位置207−1に、封止材207が配置される。封止材207は、第1の実施の形態に係る封止材106と同様の材料を用いて形成されてもよく、封止材107と同様にケース106の上面を覆わないことが望ましい。また、封止材207の形状は、図1及び図5に図示した封止材107、117の形状と異なり、図6及び図7(c)に図示したように、ケース206の高さよりも低い位置に封止材207が形成されてもよい。なお、封止材207は、基板101とケース206とが接触又は近接する位置207−1を封止するものであればよい。
【0056】
以上のように、第2の実施の形態に係るMEMSデバイス200が形成される。このような構成を有するMEMSデバイス200によれば、ケース206によりMEMS素子103を覆った後、樹脂を用いた封止材207でケース206と基板101とを固定するので、MEMS素子103に対して生じる応力を低減することができる。また、ケース206の上面に封止材207が配置されないことからケース206の上面を歪ませることなく、MEMS素子103の可動部の可動範囲をほぼ一定に確保することができる。これにより、MEMS素子103の検出精度に及ぼす影響を小さくすることができる。また、第1の実施の形態に係るMEMSデバイス100と比較して、MEMS素子103上に蓋部材104を配置せずとも、ケース206を蓋部材104として機能させることができるため、製造工程を簡略化でき、且つケース206を低背化することができるため、MEMSデバイス200を小型化することも可能となる。このように、本発明の第2の実施の形態に係るMEMSデバイス200によれば、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子103の特性への影響を小さくすることができる。
【0057】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係るMEMSデバイスの構成について図8及び図9を参照して説明する。
【0058】
図8は本発明の第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300の概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイス300の断面図であり、(b)はMEMSデバイス300の上面図である。なお、図8(a)は、図8(b)に示したC1−C1´線の断面図である。図9は、図8に示したMEMSデバイス300の製造方法を説明するための断面図であり、(a)に、基板上に形成されたMEMS素子を示す断面図、(b)に、MEMS素子上の蓋部材の上面に凸部材が配置された状態を示す断面図、(c)に、凸部材を介して配置されるケースの形成工程を説明するための断面図、(d)に、基板とケースとを固定させる封止材の形成工程を説明するための断面図を示す。
【0059】
図8を参照すると、MEMSデバイス300は、基板101、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、配線105a、105b、ケース306、封止材307、及び凸部材308を含む。第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300は、基板101上に形成された制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bについては、図1に図示された第1の実施の形態に係るMEMSデバイス100と同様の構成を有する。従って、以下、基板101、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bについては、第1の実施の形態で説明した構成と同様であるため、説明については省略する。
【0060】
以下、MEMSデバイス300の製造方法について説明する。まず、図9(a)に図示したように、基板101上には、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bが配置される。
【0061】
次に、図9(b)に図示したように、蓋部材104の上面には、凸部材308が配置される。ここで、凸部材308は、蓋部材104の上部とケース306との間の空間を確保するために配置されるものである。凸部材308は、樹脂、金属、セラミック、シリコーン等を材料として、一般的な印刷方法やディスペンサ等を用いて蓋部材104上に塗布して硬化させ、凸状に形成される。凸部材308は、例えば、蓋部材104の上面の4隅に凸状に形成されてもよく、上面の縁部に沿って形成されてもよい。なお、凸部材308は、後述する工程において凸部材308上に形成されるケース306と蓋部材104とを接合し、蓋部材104の上部とケース306の内側との間の空間を安定して維持できるものであれば、上述した形状に限定されない。また、凸部材308の高さについても、仕様に応じて、蓋部材104の上部とケース306の内側との間の空間を維持可能な値に設定すればよく、例えば5μm以上50μm以下とすればよい。また、凸部材308に用いられる材料は、蓋部材104及びケース306に用いられる材料との熱膨張係数差が±5ppm以内であることが望ましい。これにより、クラック等を生じさせずに、ケース306と蓋部材104とを、凸部材308を介して固定させることが容易になる。なお、凸部材308の材料として樹脂を用いる場合には、樹脂中に無機フィラーやビーズを含めてもよい。これにより、凸部材308の高さの調整が容易となり、凸部材308の強度を強化させることができる。また、凸部材308は、シリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の接着剤等を用いて蓋部材104に接着されてもよい。
【0062】
次に、図9(c)に図示したように、蓋部材104上に形成された凸部材308上に、制御IC102、MEMS素子103、及び蓋部材104を覆い、基板101上から距離dだけ離隔されたケース306が配置される。ケース306は、第1の実施の形態に係るケース106と同様の形状を有し、同様の材料を用いて形成されてもよい。また、ケース306は、ポリイミド系樹脂やエポキシ系樹脂等の接着剤等を用いて凸部材308に接着されてもよい。なお、基板101とケース306との距離dは、5μm以上50μm以下であってもよい。このように、基板101とケース306とが距離dだけ離隔して配置されることから、蓋部材104の上面からケース306の内面までの空間を維持するにあたり、ケース306の加工精度によらず、ケース306の内面に当接させる凸部材308の高さを調整することにより可能となる。
【0063】
次に、図9(d)に図示したように、基板101とケース306とが近接する位置307−1に、封止材307が配置される。封止材307は、基板101とケース306とが距離dだけ離隔した隙間を充填し、基板101とケース306とを固定するように配置される。なお、封止材307は、第1の実施の形態に係る封止材106と同様の材料を用いて形成されてもよく、封止材107と同様にケース306の上面を覆わないものとする。また、封止材307は、図8及び図9(d)に図示した形状に限定されず、基板101とケース206とが接触又は近接する位置307−1を封止するものであればよい。
【0064】
以上のように、第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300が形成される。このような構成を有するMEMSデバイス300によれば、ケース306により制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、及び配線105a、105bを覆った後、樹脂を用いた封止材307でケース306と基板101とを固定することにより、MEMS素子103に対して生じる応力を低減することができる。また、ケース306の加工精度によらず、ケース306の内面に当接させる凸部材308の高さを調整することで、蓋部材104の上部とケース306の内側との間の空間を維持することが可能となる。従って、本発明の第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300によれば、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子103の特性への影響を小さくすることができる。
【0065】
また、第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300の構成は、図8に示したものに限定されず、例えば、図10に示した構成であってもよい。
【0066】
図10は、図8に示したMEMSデバイス300の他の例の概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。なお、図8(a)は、図8(b)に示したC2−C2´線の断面図である。
【0067】
図10に図示したMEMSデバイス310は、図8に示す例と同様、基板101、制御IC102、MEMS素子103、蓋部材104、配線105a、105b、ケース306、及び封止材307を含む。ただし、図10に示すMEMSデバイス310は、蓋部材104の上面とケース306の内面とを接触させて凸部材308を含まない点において、図8に図示したMEMSデバイス300と構成が異なる。図10に図示したMEMSデバイス310は、蓋部材104にMEMS素子103の可動部の一定の可動範囲を確保させることにより、MEMS素子103の検出精度に及ぼす影響を小さくすることができる。また、MEMSデバイス310によれば、蓋部材104の上面に凸部材308を形成しないことにより、図8に図示したMEMSデバイス300と比較して、製造工程を簡略化し、MEMSデバイス310を低背化して小型化することも可能となる。
【0068】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態に係るMEMSデバイス400の構成について図11を参照して説明する。
【0069】
図11は、本発明の第4の実施の形態に係るMEMSデバイス400の概略構成を示す図であり、(a)はMEMSデバイスの断面図であり、(b)はMEMSデバイスの上面図である。なお、図11(a)は、図11(b)に示したC3−C3´線の断面図である。
【0070】
図11を参照すると、MEMSデバイス400は、基板101、制御IC102、MEMS素子103、配線105a、105b、ケース406、封止材407、及び凸部材408を含む。図11に図示されたように、第4の実施の形態に係るMEMSデバイス400は、MEMS素子103上に配置される蓋部材104を含まない点において、第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300と構成が異なる。従って、基板101、制御IC102、MEMS素子103、及び配線105a、105bについては、第3の実施の形態で説明した構成と同様であるため、説明については省略する。また、ケース406、封止材407、及び凸部材408については、第3の実施の形態で説明した構成と同様の材料及び製造方法を用いて形成されてもよい。このため、ケース406、封止材407、及び凸部材408について、第3の実施の形態と同様の構成を有する点については、説明を省略する。
【0071】
なお、図11に図示したように、第4の実施の形態に係る凸部材408は、第3の実施の形態に係る凸部材308とは異なり、MEMS素子103の支持部上に配置され、MEMS素子103の上部とケース406との間の空間を確保する。ここで、ケース406の内側の高さを、基板101からMEMS素子103の上面までの高さに50μm以下の値を加えた高さとしてもよい。これにより、ケース406をMEMS素子103の過度な変位を制限するストッパとして機能させることができる。なお、凸部材408の高さは、可動部の変位を規制できる値に設定すればよく、例えば5μm以上50μm以下であってもよい。また、第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300と比較すると、第4の実施の形態に係るMEMSデバイス400は、蓋部材104を含まないことから低背化することができるため、MEMSデバイス400自体を小型化することも可能となる。
【0072】
従って、図11に図示されたMEMSデバイス400によれば、第3の実施の形態に係るMEMSデバイス300と比較して、MEMS素子103上に蓋部材104を配置せずとも、ケース406を蓋部材104として機能させることができるため、ケース406によりMEMS素子103の可動部の一定の可動範囲を確保させることが可能となり、製造工程を簡略化できる。従って、本発明の第4の実施の形態に係るMEMSデバイス400によれば、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子103の特性への影響を小さくすることができる。
【0073】
以下、第2の実施の形態に係るMEMSデバイス200の実施例及び比較例について説明する。
【0074】
(実施例1)
エポキシ樹脂からなるプリント基板(50mm×200mm×0.2mm)に、3.5mm角のチップ面積で電極パターンを配置加工した両面配線基板101を用意した。
【0075】
制御IC102(1.9mm×1.9mm、0.1mmt)をシリコーン系のダイアタッチ剤、XE13−C2476(東芝モメンティブ製)を用いて、基板101上にダイアタッチし、さらにその上にMEMS素子103として加速度センサチップ(1.4mm×1.2mm×0.6mm)を積層ダイアタッチした。
【0076】
制御IC102と基板101とを、MEMS素子103と制御IC102とを、それぞれ25μmの金ワイヤでワイヤボンディングを行い、結線した。
【0077】
エポキシモールド材としてCEL−9750ZHF10(日立化成製)をカプセルの金型(内形2.3mm×2.3mm×0.7mmt、外形2.8mm×2.8mm×0.8mmt)にトランスファーモールド成型し、ケース206を作製した。
【0078】
ケース206をダイボンディング、ワイヤボンディング済みの基板101に、接着材としてヘンケル製QMI538を用いて貼り合わせ、150℃、1時間で硬化した。
【0079】
ケース206と基板101とが接触又は近接する位置に、ケース206と基板101との隙間を充填し、ケース206と基板101とを固定させるように、封止材207として液状ポッティング材のCV5401A(パナソニック電工製)をディスペンサで塗布し、熱処理として150℃、1時間、熱硬化を行った。
【0080】
ダイシングブレードにより切断して個片化し、MEMSデバイス200を得た。
【0081】
このMEMSデバイス200の25℃でのオフセット電圧を調べたところ、−5mV〜+5mVの範囲に収まっていた。また、オフセット電圧の−30℃〜85℃の温度依存性を調べたところ、−2mVから+2mVに収まっていた。
【0082】
(実施例2)
実施例1と同様の工程で、ケース206を、シリコンのDRIE加工により作製し、MEMSデバイス200を得た。その他の構成は、実施例1と同じである。
【0083】
このMEMSデバイス200の25℃でのオフセット電圧を調べたところ、−5mV〜+5mVの範囲に収まっていた。また、オフセット電圧の−30℃〜85℃の温度依存性を調べたところ、−2mVから+2mVに収まっていた。
【0084】
(実施例3)
実施例1と同様の工程で、ケース206を、メタルの絞り加工で作製し、MEMSデバイス200を得た。その他の構成は、実施例1と同じである。
【0085】
このMEMSデバイス200の25℃でのオフセット電圧を調べたところ、−5mV〜+5mVの範囲に収まっていた。また、オフセット電圧の−30℃〜85℃の温度依存性を調べたところ、−2mVから+2mVに収まっていた。
【0086】
(比較例1)
実施例1乃至3と異なり、ケースを形成せず、液状ポッティング材のみで基板上のMEMS素子及び制御ICを封止する成型加工を行った。その他は、実施例1乃至3と同じ構成である。液状ポッティング材のCV5401A(パナソニック電工製)をディスペンサで塗布し、熱処理150℃、1時間、熱硬化を行った。硬化後ダイシングブレードにて、切断して個片化し、加速度センサパッケージであるMEMSデバイスを得た。
【0087】
しかしながら、この加速度センサパッケージの25℃でのオフセット電圧を調べたところ、−5mV〜+5mVの範囲を外れてしまった。
【0088】
以上の実施例と比較例とによれば、応力の影響が大きくなると、MEMS素子のオフセット電圧も大きくなることがわかる。従って、本発明に係るMEMSデバイスによれば、ケースによりMEMS素子を覆った後、樹脂を用いた封止材でケースと基板とを固定することにより、MEMS素子に対して生じる応力を低減することができることがわかる。よって、本発明によれば、MEMS素子の特性への影響を小さくすることができる。
【0089】
以上のように、本発明の第1乃至第4の実施の形態に係るMEMSデバイスによれば、簡易な製造方法により製造することができ、MEMS素子の特性への影響を小さくすることのできるMEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
100…MEMSデバイス、101…基板、102…制御IC、103…MEMS素子、104…蓋部材、105a、105b…配線、106…ケース、107…封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置されたMEMS素子と、
前記MEMS素子を覆い、前記MEMS素子との間に空間を確保するケースと、
前記基板と前記ケースとが接触又は近接する位置に前記ケースの上面の少なくとも一部を露出させて配置される封止材と、
を含むことを特徴とするMEMSデバイス。
【請求項2】
前記MEMS素子の上部と前記ケースとの間には凸部材が配置され、
前記凸部材により前記MEMS素子の上部の空間が確保されることを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記MEMS素子は、支持部及び前記支持部に対して変位する可動部を含み、
前記ケースの内面は前記可動部の変位を規制することを特徴とする請求項1または2に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記凸部材は、フィラー含有樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
前記封止材は、樹脂の発泡体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のMEMSデバイス。
【請求項6】
前記発泡体は、独立気泡構造であることを特徴とする請求項5に記載のMEMSデバイス。
【請求項7】
前記発泡体は、曲げ弾性率が0.1MGPa以上5GPa以下のシリコーン樹脂材料を用いることを特徴とする請求項6に記載のMEMSデバイス。
【請求項8】
MEMS素子を基板上に配置し、
ケースにより前記MEMS素子を覆い、前記MEMS素子と前記ケースとの間に空間を確保し、
前記基板と前記ケースとが接触又は近接する位置に、前記ケースの上面の少なくとも一部を露出させて封止材を形成することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記MEMS素子の上部と前記ケースとの間には凸部材が配置され、
前記凸部材により前記MEMS素子の上部の空間が確保されることを特徴とする請求項8に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項10】
前記MEMS素子は、支持部及び前記支持部に対して変位する可動部を含み、
前記ケースの内面は前記可動部の変位を規制することを特徴とする請求項8または9に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項11】
前記凸部材は、フィラー含有樹脂であることを特徴とする請求項9に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項12】
前記封止材は、樹脂の発泡体であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項13】
前記発泡体は、独立気泡構造であることを特徴とする請求項12に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項14】
前記発泡体は、曲げ弾性率が0.1MGPa以上5GPa以下のシリコーン樹脂材料を用いることを特徴とする請求項13に記載のMEMSデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−35337(P2012−35337A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174905(P2010−174905)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】