説明

PVD法によって製造される暗色金属効果顔料

本発明は金属効果顔料に関し、その金属効果顔料は、少なくとも1種の金属Mを含み、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、25〜58原子パーセントの平均酸素含量を有する、実質的に均質な化学組成を有している。本発明はさらに、前記金属効果顔料を製造するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
PVD法によって製造される金属効果顔料は以前から知られている。それらは、極端な高光沢、極めて良好な被覆能力、および独特な光学的性質を特徴としている。それらは、厚みが薄く(約30〜70nm)、極端に平滑な表面を有しているために、それらを基材に適用した後では、基材に極めて密着する傾向を有している。このことから、その基材が極めて平滑である場合には、鏡のような外観が得られる。
【背景技術】
【0002】
純粋な金属効果顔料の中で、市販品として今日までよく知られているものは、アルミニウム顔料だけである。そのような例としては、Metalure(登録商標)(Avery Dennison製造、ECKART販売)、Decomet(登録商標)(Schlenk)、またはMetasheen(登録商標)(Ciba)などが挙げられる。
【0003】
そのような顔料は、せいぜいのところ、“銀色”の色合いしか与えられない。
【0004】
このようにして、金属層ベースの上にPVD法によって製造される顔料については、US2,839,378“Method of making metal flakes”に詳しい記載がある。その特許明細書には、鏡様の顔料の製造が記載されていて、それらは極端に薄い層の厚みを有しており、基材の上に蒸着されて“剥離層”として得られる。金属層をアプライし、得られた箔を剥離させてから、機械的応力をかけることにより、所望の粒子サイズに微粉砕する。
【0005】
そのようにして製造された顔料をコーティング配合の中で使用することは、US2,941,894“Metallised coating compositions”に詳しい記載がある。その特許明細書では、その顔料の高反射率、低顔料化レベル、および高被覆能力が強調されている。
【0006】
蒸着法によって35〜45nmの範囲の厚みを有する金属顔料を製造するための方法は、US4,321,087にさらに詳しい記述があるが、それに含まれるのは、剥離コートの適用、金属化方法、溶媒浴中での分離および粒子の濃縮方法、ならびに所望の顔料サイズを得るための超音波微粉砕の使用である。
【0007】
Averyの名前による特許出願PCT/US99/24782には、顔料物質の層と剥離コート層とからなる多層構造の実現性が記載されており、またPCT/US02/14161には、剥離コート物質の外部供給を使用する連続コーティングのための方法がポリマーを用いてコーティングされたワイヤーによってより効率的に実施することが可能となる技術が開示されている。PCT/US02/38292には、コーティングと剥離の組合せのためのユニットの実現性が開示されているが、それらの操作は、減圧下で別個に実施される。
【0008】
WO2004/026971およびWO2004/026972は、高光沢で、金色の金属効果顔料に関するが、それらのものは、銅ベースの合金およびその他の金属合金成分を含み、真空中で蒸着させた金属箔を分離し、微粉砕することによって製造される。
【0009】
同様にして、金属的光沢を有し、その色度が干渉に起因し、多層構造を示す顔料が、かなり以前から知られている。それらの顔料の基礎となっている光学原理は、ファブリーペロー干渉効果である。その製品は一般に、誘電層と金属層とを交互に含む。それらの顔料は、例外的に高いカラーフロップ性を有している。
【0010】
それらの顔料の大きな欠点の一つは、多層構造の結果として、それらの粒子が比較的に厚いことである。このことは、必然的に、被覆面積の低下および被覆能力の低下を招く。
【0011】
上述の引用文献に開示されている効果顔料はすべて、それらが、金属顔料として銀色または金色の印象しか与えないか、または、干渉顔料の場合においては光学的に変化するカラー印象しか与えないという欠点を有している。
【0012】
しかしながら、豊かな黒色または灰色効果がますます必要とされている。したがって、たとえば、自動車産業においては、黒色または灰色効果を有するエナメルが強く求められている。これらの効果エナメルは、通常の黒色顔料たとえばカーボンブラック顔料と、慣用される金属顔料、特にアルミニウム顔料との混合物から製造される。“慣用される金属顔料”という用語は、摩砕プロセスによって得られる顔料を意味している。そのような顔料は、“コーンフレーク”型および“1ドル銀貨”型の金属顔料として区別されている。
【0013】
黒色効果顔料のスペクトルを増やすことを目的とした実験には、事欠かない。たとえばDE103 46 167A1には、マグネタイトからなるコーティングと屈折率nが1.8未満の無色コーティングとを含む光沢性黒色干渉顔料が開示されている。しかしながら、それらの顔料は、金属顔料の被覆力およびそれらに典型的な金属フロップ性に欠けている。
【0014】
最後に、EP1 522 606A1には、黒色酸化アルミニウム箔を製造するための方法が開示されている。この箔はもっぱら、レーザーマーキングの目的のために使用される。ここでは、高光沢のような金属的な性質は望ましくなく、それは後からの酸化を実施することによって防止することができる。前記明細書には、効果顔料については何の言及もされていない。
【0015】
さらに、WO2005/064035A1には、誘電物質から製造される薄い微小板が開示されている。しかしながら、その誘電物質は金属的な性質を有する金属ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、新規な暗色〜黒色効果を示す金属効果顔料を提供することである。それらが意図しているのは、黒色の印象を与えると同時に、高光沢と傑出した輝度フロップ性を有することである。
【0017】
本発明のまた別な目的は、そのような顔料を製造するための方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、少なくとも1種の金属Mと、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、25〜58原子パーセントの範囲の平均酸素含量とを含む実質的に均質な化学組成の金属効果顔料を提供することにより、達成される。
【0019】
さらに、その目的は、以下の工程を含む方法によって達成される:
a)真空チャンバー内において、酸素の存在下に少なくとも1種の金属Mを用いた物理的蒸着法(PVD)よって基材を蒸着コーティングしてその上に金属層を形成し、その金属層が、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、25〜58原子パーセントの範囲の平均酸素含量を含む実質的に均質な化学組成であるようにする工程、
b)基材からその金属層を分離する工程、
c)その金属層を微粉砕して効果顔料を製造する工程、
d)場合によっては、その金属効果顔料を分散体またはペーストとする工程。
【0020】
効果顔料を用いてコーティングされた物品は常に、視角および/または入射角に依存して変化する光学的印象を示す。高光沢は別にして、いわゆる輝度フロップ性、すなわちグロス角(gloss angle)からより鋭角の入射角および/または視角にするとその輝度が低下することが、金属効果顔料を特徴付ける性質の一つである。高光沢コーティングの場合においては、入射光の可能な限りの最大量が鏡面反射され、そのために、入射光のわずかな部分だけが散乱的に拡散される。
【0021】
それとは対照的に、黒色コーティングの上に当たる可視光は、そのほとんどが均等に吸収され、その極めてわずかな部分だけが反射される。したがって、高光沢黒色コーティングの場合においては、鏡面反射が極めて高い要求を満たすことが必要とされる。このことは、実用面においては、主として極めて平滑な表面と透明性を持つ顔料を使用することによって達成される。高光沢で黒色のピアノラッカーの印象は実質的に、数多くの作業工程において、極端にまで平滑に研磨された木材表面に帰せられる。
【0022】
産業分野においては、コストの面から、そのような手の込んだ手順を用いて基材を調製することは不可能である。その場合、豊かな黒色のコーティングは通常、黒色顔料たとえばカーボンブラックを使用し、少量の金属効果顔料を添加することによって達成される。
【0023】
新規な黒色効果顔料を追求する場合、黒色を与え、さらに金属フロップ性のような金属的な印象を与える顔料に最大の関心が寄せられる。さらに、それらは好ましくは、青色の色合いを有しているべきである。従来技術において公知の黒色コーティングでは、きわめて鈍角の入射角および/または視角の場合においては、望ましくない褐色の色合いを呈することが多い。
【0024】
極めて驚くべきことには、少なくとも1種の金属M(1種または複数の金属M)と、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、25〜58原子パーセントの範囲の平均酸素含量とを含む実質的に均質な化学組成を有している場合には、従来においては得ることができなかったフロップ挙動を示す新規な暗色金属効果顔料を得ることが可能となるということが見出された。その顔料は、PVD法によって製造するのが好ましいが、その理由は、それが極端に平滑な表面とするのに役立つからである。
【0025】
前記顔料は、光学的に有効なただ一つの層を含む効果顔料である。すなわち、その顔料は、層構造の中の異なった層の相互作用によって引き起こされる光学効果をもたらす従来からの顔料ではない。したがって、暗色、好ましくは黒色のカラー印象を達成するために慣用される干渉層を必要としない。
【0026】
好ましい実施態様においては、その平均酸素含量は、いずれもMおよび酸素の合計含量を基準にして、30〜58原子パーセント、好ましくは30〜57原子パーセント、より好ましくは35〜56原子パーセント、最も好ましくは40〜55原子パーセントである。測定値は、それぞれの顔料について、全体の顔料厚みでの平均値である。顔料のある部分においては、その酸素濃度が上記のものからかなり外れることもあり得る。特に、顔料表面における酸素の濃度は、金属の酸化物層が自然に形成されるために、より高くなる可能性がある。この酸化物層は通常、数ナノメートルの厚みしか有していないので、本発明の目的においては光学的に有効な層ではない。
【0027】
酸素含量が25原子パーセント未満であるか、あるいは58原子パーセントを超えると、本発明の顔料の暗色のカラー印象を達成することが不可能となる。酸素含量が25原子パーセント未満にまで低下すると、その効果顔料は、光学的性質に関して、金属的な特性が明らかに強くなり、金属に固有の色が主として現れる。その一方で、酸素含量が58原子パーセントを超えると、透明性が顕著に増大するようになり、その顔料が金属的な特性を失い、ほとんど酸化物としての特性となる。
【0028】
本発明の効果顔料は、純粋で化学量論的な金属酸化物ではあり得ない。むしろ、驚くべきことには、その顔料は、光学的性質に関しては、金属的な特性を有している。このことには、赤外、可視、およびUV波長領域における、電磁放射線の典型的な非常に強い吸収が含まれる。このことに、特有の高被覆能力、金属的光沢、および驚くべきことには、極端に高い輝度フロップ性が組み合わされる。酸素が高含量であることは、酸化物および/または亜酸化物の形成に起因すると考えられる。その顔料は、特定の分子構造は有していない。それらは、準化学量論的な酸化物または金属と酸化物との混合物の形態で存在することができる。その顔料は、“金属的ガラス粒子”の性質を有しているのが好ましい。本発明の顔料は、“金属的ガラス粒子”と呼ぶことができるが、その理由は、それらがX線的に非晶質的な特性を有することが可能であるからであるが、これについては、X線回折法によって決定することができる。
【0029】
その機械的な性質に関しては、本発明の効果顔料はもろくなる傾向があり、そのために酸化物またはガラス粒子に匹敵する。
【0030】
公知のPVD金属顔料と比較すると、それらは用途面での利点を提供する。PVD金属顔料は、それらが薄く、金属としての延性を有しているためにカールしやすい。それらは、その屈曲性のために基材にうまく“密着する”ことができはするが、その一方では、顔料のわずかな部分が常に適用後に変形を受けたり、あるいは極端な場合にはバインダーを硬化させると“カール”したりすることさえある。この現象には、顔料の光学的品質の劣化が伴う。さらに、それらは機械的に不安定となるが、それは、たとえば強い剪断力の効果の影響を受けやすいことからもはっきりわかる。WO99/35194には、機械的な性質を改良するために、誘電体たとえばSiOからなる層によって両面を支持された金属PVD顔料の記載がある。その誘電層は、同様にして、PVD法によって金属層に適用される。これは極めて複雑なプロセスであって、その経済的効率は、金属酸化物層の場合には、金属層の場合よりも気化させるのにはるかに多くの時間を必要とするという事実により、特に悪影響を受ける。
【0031】
本発明の効果顔料は、ただ一つの層で所望の機械的な剛性を示す。その顔料はカールすることなく、また、その長さ方向に波打ちや膨れがまったく無い平滑な表面を有し、極めて均質な外観を示す。
【0032】
さらに、機械的に安定であることが、本発明の顔料を製造するのに有利に働いているが、その理由は、それによって金属層を微粉砕して顔料を製造することがずいぶん容易となるからである。
【0033】
金属Mは、アルミニウム、マグネシウム、クロム、銀、銅、亜鉛、スズ、マンガン、鉄、コバルト、チタン、タンタル、モリブデン、ならびにそれらの混合物および合金からなる群より選択するのが好ましい。上述の金属が、暗色の性質が観察されることのためになる。アルミニウムおよびその合金ならびにクロムが特に好ましい。
【0034】
本発明の効果顔料における金属Mと酸素の合計含量は、90〜100原子パーセント、好ましくは95〜100原子パーセント、より好ましくは98〜100原子パーセントの範囲である。残りの部分は、他の金属、または、さらには、典型的には市販されている純粋な形態の金属Mの中に存在しうるようなケイ素に由来することができる。しかしながら、残りの部分が、かわりに非金属、たとえば窒素、ホウ素、炭素(炭化物)、水素および/または硫黄であってもよい。
【0035】
上述の原子パーセントは、効果顔料を基準にしたものであって、たとえば、耐腐食性を向上させるために適用されうるような二次コーティングは含めない。
【0036】
酸素含量は各種の方法によって求めることができる。EDX分析(エネルギー分散型X線分析)によって求めるのが好ましい。この目的のためには、電子顕微鏡と組み合わされた装置を使用するのが好ましいが、その例としては、EDAX製のEDAX Genesis、バーション3.60が挙げられる。
【0037】
その分析方法を以下に記述する:
EDX分析においては、電子顕微鏡の走査電子ビームを、サンプル表面から、そのビームのエネルギーと対象の物質とによって決まってくる深さにまで侵入させ、そのエネルギーをその物質中の原子に移行させる。ビーム電子のエネルギーが高いために、核に最も近い励起原子の殻(K殻またはL殻)から電子をたたき出す。このプロセスの間に、2種類の機構によってX線が発生する。電子の強い減速によって、連続的に分配された放射線が生じる(制動放射)。殻への再充填によって、不連続なX線スペクトル(その原子に特有の線スペクトル)が発生する。その線スペクトルを基準にして、元素を明確に同定することができる。
【0038】
調べるサンプルから放出されるX線スペクトルを、エネルギー分散型X線分析装置によって測定する。それは、バックグラウンドである制動放射と、一連のX線スペクトル線とからなる。その放出する元素を、線の位置から求めることが可能であり、それらの線の高さが、サンプル中に含まれるそれらの相対的な量の目安となる。
【0039】
EDX元素分析においては、元素の含量を正しく読み取るためには、いくつかの重要な制限に気を付けなければならない。調べるサンプルは、
a)組成に関しては均質でなければならず、
b)十分に厚くて、走査電子ビームがそのサンプルによって完全に吸収されなければならず、そして
c)マトリックスおよび/または基材が原因の攪乱因子を有することなく、電子ビームに対して自由に暴露されなければならない。
【0040】
元素の原子番号が大きい程、核に近い電子の間の結合が強くなる。したがって、イオン化させるのに必要なエネルギーは原子番号と共に大きくなる。分析する元素に適するように、電子ビームの運動エネルギーを合わせてやらなければならない。調べる物質に入り込む電子ビームの侵入深さは、そのビームのエネルギーに依存する。電子ビームは、洋ナシの形状の強度分布でサンプルに入り込む(“励起洋ナシ”)。このことは、薄層を分析すると観察することができるが、それは、高エネルギー電子によって薄層は容易に侵入されるからである。薄層(厚み250nm未満)を測定する場合には、運動エネルギーはほんの数KeVでなければならない。それ故、より重い元素の場合には、より高い殻の励起にスイッチさせる必要がある。したがって、その分析は、元素のL線またはM線を評価することによって実施しなければならない。
【0041】
具体的には、薄層で、微小板形状の顔料を分析する際に実施するアプローチ方法は次の通りであり、そのEDX測定ユニットは、分析を実施するより前に、適切な市販の標準の助けを用いて較正しておかなければならない。
【0042】
調べる層の厚みは、電子顕微鏡で作り出された画像の助けを借りて求めなければならない。高電圧(約10〜20kV)で元素分析を行うと、調べたサンプルの中に存在するすべての元素と、さらには支持基材の中に存在する他の元素についての情報が得られる。その層の厚みと元素組成に基づき、モンテカルロ・シミューションプログラム(EDAX Flight−E、バージョン3.1−E)の助けを借りて、その層の容積が、物質が破壊されることなく侵入電子ビームによって飽和される点で、その電子エネルギーを求めることができる。そのような場合には、その励起洋ナシが最大の容積を有する。
【0043】
次の工程では、X線の線がそのビームエネルギーで励起されるかどうか、そして励起されるとすれば、どれが励起されるかを調べる必要がある。運動励起エネルギーは、観察されたスペクトルの線にいくぶんかは従って合わせてやらなければならない可能性がある。
【0044】
そのようにして求めたパラメーターを使用して第一の試験測定を実施し、分析しなければならない。もしもスペクトル中に、基材の中に存在する元素のX線の線が検出できるようであるならば、使用したビームエネルギーが高すぎるのであって、修正しなければならない。
【0045】
そこで、ビーム電圧を徐々に上げながら、その層についての測定を数回実施して、その読みを評価する。求められた元素含量は、偏差が極めてわずかしかないようにしなければならない。電圧を上げていくにつれて、分析結果における軽量元素の割合が顕著に減少するような場合には、そのビームエネルギーが高すぎるのであって、低下させなければならない。
【0046】
そのようにして求めた最適のパラメーターを使用して、その層の上のいくつかの点で測定を実施し、元素含量を求める。その測定結果について、信頼性をチェックしなければならず、読みの偏差が約5%を超えないようにするべきである。
【0047】
酸素含量を求めるためのまた別な方法が、ESCA法(化学分析電子分光法)またはオージェ分光法であって、それぞれはスパッタリング法と組み合わされる。この場合、効果顔料の厚みを増やしながら、その元素組成の貫通プロファイルを得ることも可能である。したがって、顔料の表面における酸素含量と顔料の内部における酸素含量との間の違いを区別することが可能となる。
【0048】
一般的には、これら二つの方法は相互に一致する数値を与える。それらの数字が一致せず、互いの間でたとえば10%を超える偏差が存在するようならば、疑わしい場合には、EDX法を優先させなければならない。
【0049】
本発明の金属効果顔料の平均的な幾何学的厚みは、好ましくは25〜250nm、より好ましくは30〜200nm、さらにより好ましくは40〜150nm、そして最も好ましくは50〜130nmの範囲である。
【0050】
層の厚みが25nm未満であると、その顔料の透明性が高すぎ、また機械的な影響に対して過度に敏感となってしまう。層の厚みが250nmを超えると、その被覆面積がますます低下し、さらなる利点がまったく得られない。それに加えて、物理的蒸着法を含む製造プロセスがますます非経済的となる。好適に調製されたサンプルの平均の厚みは、SEMによってカウントして、十分に多くの数の顔料粒子(少なくとも20個)を含む面積を無作為に選択することによって求めることができる。
【0051】
層の厚みが約100nm以上の顔料の場合においては、層の厚みを求めるために、スプレッディング指数法を使用することができる。この方法は、たとえば、Th.RehnerおよびKlimits;farbe+lack62(1956(10))464ページもしくはTh.Rehner farbe+lack71(1965(8))649ページに記載された方法、またはDE103 15 775A1に記載された、極めて薄い顔料のために使用される方法を使用することにより実施することができる。しかしながら、この目的を達成するためには、サンプルの密度を、たとえばHe比重瓶法の助けを借りて、別途に求めなければならない。
【0052】
本発明の効果顔料は、いずれの場合においても微小板の形状である。累積分布曲線のd50値によって表される、それらの長さは、通常2〜250μm、好ましくは5〜150μm、より好ましくは7〜50μmの範囲である。その粒子サイズ分布は通常、レーザー回折法を用いて測定される。
【0053】
本発明の金属効果顔料は、40〜1,500、好ましくは180〜1,000、より好ましくは200〜500の範囲の形状因子を有している。その形状因子は、累積分布曲線のd50値の、微小板形状顔料の平均厚みに対する比率として定義される。
【0054】
驚くべきことには、本発明の効果顔料は、極端に高い輝度フロップ性を示す。これは、ドローダウン物の助けを借りて求めることができる。ドローダウン物は、他の効果顔料および/もしくは着色顔料または艶消剤を添加しない、慣用される、すなわち無水のエナメル系の中で得るのが好ましい。ニトロセルロースエナメル、たとえば、市販されているニトロセルロースエナメルであるMorton製のDr.Renger Erco Bronzemischlack 2615eを使用するのが特に好ましい。効果顔料の濃度を十分に高くして、良好な被覆面積と、含まれる金属の種類、金属の含量、および層の厚みに依存して、1〜8重量%の範囲を示すドローダウン物が得られるようにするべきである。
【0055】
このドローダウン物を用いて、CieLab表色系で規定される輝度値およびフロップ指数値を求める。その輝度は、一定の入射角の45度とグロス角に対する各種の視角とで、多角度色彩計、たとえばBerlinのOptronic Multiflash製の変角分光光度計を使用して測定し、L指数を求める。15度、25度、45度、および110度の視角が特に好適である。
【0056】
輝度フロップ性は、次式に従いDuPontによって定義される(A.B.J.Rodriguez、JOCCA、(1992(4))150〜153ページ)。
【0057】
【数1】

【0058】
本発明の効果顔料のフロップ指数値は、23〜55、好ましくは25〜50、より好ましくは30〜45の範囲である。その顔料は、グロス角の近くでは、従来からの摩砕プロセスを用いて製造されたアルミニウム顔料に匹敵するような様子で、比較的に輝いて見える。しかしながら、視角がより鋭角になってくると、その輝度値は極めて急速に低下し、45度の視角では、黒色コーティングの場合の値に近いような値に達する。このため、そのような並外れて高いフロップ指数値の結果となる。
【0059】
しかしながら、PVD法を用いて製造され、これまでに得られた最も高輝度の効果顔料を代表する高光沢アルミニウム顔料は、対応する適用においては20〜約30の範囲のフロップ指数値を有していることが知られている。
【0060】
このように、一般的には、本発明の効果顔料のフロップ指数値は、従来技術において開示されている顔料のフロップ指数値よりも顕著に高いが、場合によってはそれらと重複することもある。したがって、さらなる特徴付けのための係数として、輝度指数L45゜を使用する。本発明の効果顔料のL45゜指数値は、6〜30、好ましくは7〜25、より好ましくは8〜20ランバートの範囲である。これらの数値が非常に低いことが、暗色への強いフロップ性を裏付けている。従来技術において公知の金属PVD顔料は35を超えるL45゜指数値を有している。
【0061】
好ましい実施態様においては、金属Mには、いずれもクロムおよび酸素の合計含量を基準にして、40〜52原子パーセント、好ましくは42〜48原子パーセントの範囲の平均酸素含量とともにクロムが実質的に含まれている。それらの顔料は、35〜55、好ましくは37〜45の範囲の並外れて高いフロップ指数値と、わずかに青色の色合いを有している。そのL45゜指数値の範囲は、6〜25、好ましくは7〜25、より好ましくは8〜15である。
【0062】
さらに、それらは、DIN50 017に規定される凝縮水試験(一定の気候における凝縮水)のようなストレス試験において傑出した安定性を示すと同時に、DIN EN ISO 2409に規定されるような高い接着強度(碁盤目試験)(DIN EN ISO 2409に規定されている)を有している。たとえばQUV試験のようなUVストレス試験においても、傑出した結果が同様に得られる。
【0063】
毒性の面で問題となる可溶性Cr(IV)化合物の分析的に検出可能な含量は、1ppmをはるかに下まわる。
【0064】
また別な好ましい実施態様においては、金属Mには、いずれもMおよび酸素の合計含量を基準にして、35〜55原子パーセント、好ましくは40〜51原子パーセント、より好ましくは42〜50原子パーセントの範囲の平均酸素含量とともにアルミニウムが実質的に含まれる。
【0065】
本発明の効果顔料は極めて平滑な表面を有している。したがって、適用媒体中で誘導される散乱効果が最小限にとどまり、暗色であるにも関わらず、比較的に高い光沢が達成される。
【0066】
特に水ベースのエナメルまたは水性印刷インキ中で使用する場合、本発明の効果顔料を安定化させるためには、場合によってはそれらを耐食層でコーティングすることが可能であり、それらの中に完全に包み込むのが好ましい。
【0067】
この目的のためには、一般的に使用される方法を用いることができるが、そのような方法としてはたとえば、有機的に変性させたリン酸および/もしくはホスホン酸、および/またはそれらの誘導体を用いて処理する方法が挙げられる。さらに、クロメート処理層の形成、バナジウム化合物および/またはモリブデン化合物を用いた処理、およびそれらの方法を組み合わせたものもまた適切である。さらに、ポリマーを用いるかまたは金属酸化物を用いて効果顔料をコーティングすることもまた可能である。金属酸化物は、SiO、酸化ホウ素、酸化アルミニウムを含んでいるのが好ましく、それらの水酸化物およびオキシ水和物も含まれる。
【0068】
特に好ましい実施態様においては、好ましくは本発明の効果顔料を完全に包み込む耐食層はSiOを含む。ゾルゲル法を用いて効果顔料に適用し、効果顔料を完全に包み込む層が特に好ましい。
【0069】
別の実施態様においては、そのようにして腐食から保護された本発明の効果顔料が、たとえばシラン、チタン酸塩またはアルミン酸塩によってもたらされる、有機化学的表面変性を示すこともまた可能である。そのような表面変性は、効果顔料に、周囲の適用媒体に対するなじみやすさを与えることができる。たとえば、そのような有機化学的二次コーティングは、効果顔料とエナメルまたは塗料のバインダーとの間に化学結合をもたらし、それによって本発明の効果顔料に共有結合を与えることが可能である。
【0070】
本発明の金属効果顔料を製造するための方法には以下の工程が含まれる:
a)真空チャンバー内において、酸素の存在下に少なくとも1種の金属Mを用いた物理的蒸着法(PVD)により、好ましくは移動中の、ウェブ(web)の形態であってもよい基材を蒸着コーティングしてその基材の上に金属層を形成し、その金属層が、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、25〜58原子パーセントの平均酸素含量を有する実質的に均質な化学組成を有するようにする工程、
b)基材から、好ましくは有機溶媒中で、その金属層を分離する工程、
c)その金属層を、好ましくは有機溶媒中で、微粉砕して顔料を形成させる工程、
d)場合によっては、その金属効果顔料を分散体またはペーストとする工程。
【0071】
その分散体は有機溶媒中に存在するのも好ましい。本発明の方法の一つの変法においては、その分散体中の有機溶媒の割合は少なくとも70重量%である。
【0072】
本発明の効果顔料は、より濃縮されたたとえばペーストのような形態で存在することもできる。この場合、その溶媒含量は、その金属効果顔料ペーストを基準にして、60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0073】
電子ビーム法または抵抗加熱もしくは輻射加熱法を使用することにより、金属を用いて基材を蒸着コーティングしてもよい。
【0074】
金属は、移動しているシートの上に蒸着させて、金属的光沢を示す箔を形成するのが好ましく、それは後にシートから分離することができる。金属箔の輝度指数Lは、そのシートの上で求めることができるが、拡散測定形状(diffuse measurement geometry)を採用し、色彩計を使用して、シートを通してかまたはその金属箔の表面において直接的にかのいずれかでその輝度指数を求めることが可能である。そうして得られる輝度指数は、実質的には差がない。輝度指数Lは、好ましくは30より大きく、より好ましくは40より大きく、最も好ましくは50より大きい。
【0075】
金属層の厚みは、透過率測定の方法によってモニターすることができる。その被覆薄片はいくぶん酸化物的な性質を有しているために、透過率の値は通常、純粋な金属を気化させて得られる値よりも低い。
【0076】
金属Mに代えて合金を使用する場合には、その合金は、個別の蒸発器(フラッシュ蒸発、ジャンピングビーム蒸発など)から複数の金属を共存凝結させることによるか、あるいは、適切な蒸発方法たとえばスパッタリングもしくは電子ビーム法などによるかのいずれかで製造される。
【0077】
蒸着コーティング工程においては、各種の方法によって酸素を供給することができる。それらの方法としては、真空チャンバーに、大気中の酸素から分子状の酸素を供給する方法や、酸素ガスを計量仕込みする方法などが挙げられる。後者は、反応性物理的蒸着法と呼ばれている。別な方法として、酸素源として真空チャンバー中に存在する水分を使用することも可能である。その水分は、大気に由来するものであってもよいし、あるいは水分を保有する物質に由来するものであってもよい。好適な水分を保有する物質の例は、水和化合物である。水和化合物は、それ自体の蒸着を防止するために、十分に低い揮発性を示すものでなければならない。しかしながら、水和化合物は都合よく水分を放出するが、そのためにはおそらく熱を加えることが必要であろう。さらに、蒸着の際に、真空チャンバーの中に水蒸気を計量添加することもまた可能である。加えて、好ましくは移動中の基材たとえば、その剥離コートに金属が蒸着される移動しているシートから、酸素を発生させることもできる。当然のことながら、所望により、これらの代替方法を各種組み合わせて使用することによって酸素を利用することも可能である。
【0078】
工程a)における真空度は、比較的に高いものでなければならない。その真空度は、好ましくは2×10−4〜約1×10−1mbar、より好ましくは5×10−4〜1×10−2mbar、最も好ましくは7×10−4〜5×10−3mbarの範囲である。それとは対照的に、従来技術に開示されたPVD金属顔料を製造する場合には、使用される製造方法にもよるが、通常1×10−4mbar以下の真空中で金属を気化させる。
【0079】
チャンバーの真空度は、蒸着チャンバーの容積、シートの幅と前進速度、および酸素源の供給速度(分圧)に、独立して依存する。基材の上の蒸着部分における混合物中の金属と酸素との比率は正確でなければならないが、そのためには、当業者はそれ相応に真空度を調節するであろう。
【0080】
金属と酸素とからなり、本発明によって定義された方法で蒸着された層は、明らかに脆い。このことは、本発明の方法の工程b)およびc)のためには、大きな利点である。その層は極めて容易に分離することができ、難なくそれを微粉砕して所望のサイズの顔料とすることができる。微粉砕の際には、鋭い破断端が形成されるが、このことが、その端における散乱効果が低いことに寄与し、そのために本発明の効果顔料に最適な光学的品質が与えられる。
【0081】
本発明の金属効果顔料は、コーティング、エナメル、自動車用エナメル、粉体エナメル、印刷インキ、デジタル印刷インキ、プラスチック、化粧品配合物、特にマニキュア液において使用される。
【実施例】
【0082】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0083】
実施例1:
本発明の実施態様を、PVDコンベヤーベルトシステム(図1参照)を用いて製造した。そのチャンバー容積は約1.5mである。真空は、2台のフォアポンプ(それぞれEdwards製)と1台の拡散ポンプ(Varian製)を用いて発生させる。
【0084】
剥離コートを有する幅40cm、厚み23μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートをコーティングのために使用した。別な作業工程において前もって、アセトン可溶性メタクリル酸メチル樹脂からなる剥離コートを塗布した。
【0085】
そのシートを0.5m/分の前進速度で移動させ、抵抗加熱法によってその上にクロムを蒸着させた。振動結晶測定装置(モデルFTM7、Edwards製)を使用して蒸着率をモニターし、加熱出力と前進速度によってその層の厚みを調節した。金属コーティングプロセスの間、水に浸された数枚の厚紙を真空チャンバーの中に存在させた(水、すなわち酸素のソースとして)。それらは、チャンバーを真空引きするより前に、チャンバーの中に置いておいた。
【0086】
コーティングされたシートの透過率測定を同時に実施したが、蒸着された金属の層の厚みはそこから計算することができる。
【0087】
個々の層のための酸素分圧を、チャンバーの真空度を一定のレベルとすることによりモニターした。しかしながら、金属膜さらには顔料の酸素含量は、チャンバーの真空度によって変動した。正確なパラメーターを表1に列記する。
【0088】
コーティングプロセスが完了してから、真空チャンバーに通気して、金属被覆されたPETシートをそこから取り出した。コーティングされたシートの小片を切り出して、光学的な試験のために取っておいた。シート物質の大部分を、別の剥離ユニットの中でアセトン中に分散させ、それによってコーティングをPETシートから分離した。
【0089】
剥離コート層を溶解することによって、シートからコーティングを分離した。その分離された層パッケージをろ過によって分け、形成されたフィルターケーキをアセトンで洗浄することによって、剥離コートから完全に解放した。その洗浄された層パッケージを顔料懸濁液とし、微粉砕して所望の粒子サイズとした。
【0090】
比較例2:
湿らせた厚紙なしで実施例1を繰り返したが、そのために真空条件が改善されてしまい、蒸着率が低下した(表1参照)。
【0091】
実施例3:
実施例1を繰り返したが、ただし、抵抗加熱法を使用してアルミニウムを蒸着させた。正確なプロセスパラメータに関しては、表1を参照されたい。
【0092】
実施例4:
実施例1を繰り返したが、ただし、抵抗加熱法を使用し、5m/分の前進速度でアルミニウムを蒸着させた。正確なプロセスパラメータに関しては、表1を参照されたい。
【0093】
【表1】

【0094】
比較例5:
市販されているPVDアルミニウム顔料であるMetalure(登録商標)A41010AE(Avery Dennison製造、ECKART GmbH & Co.KG販売)。
【0095】
EDX測定
すべてのサンプル中の酸素および金属の組成を、EDXにより、上述の測定方法を用いて求めた。いずれの場合においても、電子ビームの励起エネルギーは3keVとした。酸素のKα線(励起エネルギー:約0.5keV)、クロムのLα線(励起エネルギー:約0.6keV)、およびアルミニウムのKα線(励起エネルギー:約1.5keV)を励起させた。クロムを含有するサンプルについては、装置に付属のソフトウェアプログラムによって近接しているピークを適合させ、HDP(holographic peak deconvolution)によって分析を実施し、それに従って評価した。
【0096】
ESCA/XPS測定
顔料はさらに、ESCAにより、それらの元素組成ならびに金属および酸素含量についても調べた。顔料を、アセトン中に取り込み、ガラス支持体の上で蒸発乾燥させることによって調製した。この方法においては、面にほとんど平行に配向する顔料が得られた。Thermo VG Scientific製の装置、タイプESCALAB250を使用して測定を実施した。励起のためには、単色のAlのKα放射線を使用した(15kV、150W、スポットサイズ500μm)。その装置の透過関数は、銅のサンプルで測定した。6eV/0.05mAビーム電流の電子エネルギーを有する“フラッドガン”を用いて電荷補償した。最初に、全体スペクトル(パスエネルギー:80eV)を記録した。次いで、30eVのパスエネルギーを使用して、高分解能スペクトルを測定した。サンプルはスパッタし、次いで高分解能スペクトルを測定した。このようにして、組成の貫通プロファイルを求めた。
【0097】
サンプルの層の平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)の下で、有意にランダムなエリアにおける粒子(>20粒子)をカウントすることにより求めた。視野面に対する個々の顔料粒子の推定方位角を評価し、計算に用いた。視角に対して実質的に垂直な粒子だけについて、測定を行った。
【0098】
最後に、サイズ分布を決定するために、慣用されるレーザー回折法を用いた(Cilas 1064装置を使用)。その累積分布曲線から常法に従ってd50値を求め、平均サイズの目安とした。
【0099】
結果:
【0100】
【表2】

【0101】
比較例も、比較的に高い酸素含量を示す。これは、PVD法によって製造される効果顔料の公知の特徴であるが、その理由はたとえば、シート物質中に存在する酸素が、ある程度は、蒸着プロセスの間に金属層の中に移行することが可能であるからである。しかしながら、比較すると、本発明の顔料ははるかに高い酸素含量を示す。
【0102】
光学的性質:
本発明の実施例1、3、および4ならびに比較例2で得られた蒸着箔について、まず、光学的な特性を求めた。この目的のために、Minolta製のスペクトル光度計を用いて、拡散測定形状(積分球)中で箔の輝度指数Lを測定した。基材としては、Byk Gardner製の試験カードNo.2853(黒色および白色のコントラスト紙)を、それぞれ黒色バックグラウンドの上、および白色バックグラウンドの上で使用した。箔は両方の面から測定したが、最初に金属の側を上にして、次いでシートの側を上にして測定した。コーティングはいずれも、比較的に高い輝度指数Lを示すが、このことは、光沢のスコアが比較的に高いことを示している。比較例2において使用したシートで得られた数値が最も高いが、それは、そのシートの金属含量がより高いからということで容易に説明することができる。
【0103】
【表3】

【0104】
それぞれの顔料を、2gの慣用されるニトロセルロースエナメル(Dr.Renger Erco Bronzemischlack 2615e、Morton製)の中に混ぜ込んだ。1回分の効果顔料を取り出して、塗装ブラシを用いてエナメル中に分散させた。
【0105】
仕上がったエナメルを、ドクターブレードを用いてByk Gardner製の試験カードNo.2853(黒色および白色のコントラスト紙)に塗布して、その上に厚み50μmの湿潤膜を形成させた。
【0106】
顔料化レベルを選択して、十分な被覆面積を示す層が形成されるようにする。よって、バックグラウンドが測色データに影響することはない。
【0107】
メーカーの取扱説明書に従って(Optronic Multiflash、Berlin)、ドローダウン物を比色的に測定する。入射角は45度に一定として、グロス角に対して15度、20度、25度、45度、55度、70度、75度、および110度の視角で、L、a、およびb指数を求める(光源:D65)。
【0108】
種々の角度で得られた輝度指数値を、図2にグラフで示す。さらに、ナイフコーティングされたカードについて、白色位置と黒色位置で測定し、それぞれのL指数を測定した。
【0109】
本発明の実施例において測定された輝度指数値は、15度の視角ではまだ極めて高いが、その後は急激に低下することが明らかに見て取れる。特に実施例1においては、45度の視角で黒色カードの低い輝度指数値にほとんど達しており、さらに大きな視角になると、指数値は黒色カードの指数値よりもさらに低い。
【0110】
それぞれの比較例において得られる輝度指数値は、それぞれの金属の値よりも常に高い。
【0111】
表4に、15度、45度、および110度の視角における輝度指数、ならびにDuPontに従ってそれから計算したフロップ指数値を示す。さらに、主観的なカラー印象も記載する。
【0112】
【表4】

【0113】
本発明の実施例1の効果顔料は、驚異的なフロップ指数41.2を有している。そのように高いフロップ指数を有する金属効果顔料は、これまで事実上、知られていない。さらに、この実施例から誘導された塗布エナメルは、ある程度の青色の色合いを示す。そのような効果は大いに求められていたものであるが、その理由は、たとえば従来技術において公知の金属性黒色効果塗料はいずれも、望ましくない褐色の色合いを有しているからである。
【0114】
その一方で、酸素含量が低い比較例2の効果顔料は、極めて弱いフロップ性を示す。純粋なPVDアルミニウム顔料(比較例5)に比較すると、実施例3において製造されたアルミニウムサンプルはより高いフロップ指数を有し、そして実施例4においてはより低いフロップ指数を有している。本発明の効果顔料(本発明実施例)および比較例の効果顔料の光学的印象の間の主な違いは、輝度が低下しているところに見られる。したがって、たとえば本発明の実施例の効果顔料のL45゜指数値は、比較例5の効果顔料のそれよりも、10単位を超えて低い。
【0115】
きわめて驚くべきことであるが、本発明の塗布された顔料は、きわめて強い明色〜暗色のフロップ効果を示す。特に、視角および/または入射角がより鋭角となるにつれて、暗色(黒色)の外観が強くなる。この効果は、比較例2においてはそれほど顕著ではない。
【0116】
したがって、これらの結果は極めて驚くべきことであって、箔の輝度指数値から推論することは不可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施例におけるPVDコンベヤーベルトシステムの図式表示である。
【図2】同、種々の角度で得られた輝度指数値を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の金属Mを含み、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、25〜58原子パーセントの平均酸素含量を有する、実質的に均質な化学組成を有することを特徴とする、金属効果顔料。
【請求項2】
前記金属効果顔料が、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、30〜57原子パーセントの平均酸素含量を有することを特徴とする、請求項1に定義される金属効果顔料。
【請求項3】
前記金属効果顔料が、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、35〜56原子パーセントの平均酸素含量を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に定義される金属効果顔料。
【請求項4】
Mおよび酸素の合計含量が、効果顔料を基準にして、90〜100原子パーセントであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に定義される金属効果顔料。
【請求項5】
少なくとも1種の金属Mが、アルミニウム、マグネシウム、クロム、銀、銅、亜鉛、スズ、マンガン、鉄、コバルト、チタン、タンタル、モリブデン、ならびにそれらの混合物および合金からなる群より選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に定義される金属効果顔料。
【請求項6】
前記効果顔料が、25nm〜250nmの平均厚みを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に定義される金属効果顔料。
【請求項7】
前記金属Mが、実質的にクロムからなり、クロムおよび酸素の合計含量を基準にして、35〜48原子パーセントの平均酸素含量を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に定義される金属効果顔料。
【請求項8】
前記金属Mが、実質的にアルミニウムからなり、アルミニウムおよび酸素の合計含量を基準にして、30〜55原子パーセントの平均酸素含量を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に定義される金属効果顔料。
【請求項9】
前記効果顔料が、PVD顔料であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に定義される金属効果顔料。
【請求項10】
それが、耐食層でコーティングされ、好ましくは完全に包み込まれることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に定義される金属効果顔料。
【請求項11】
好ましくは包み込む耐食層が、SiOを含むかまたはSiOからなることを特徴とする、請求項10に定義される金属効果顔料。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に定義される金属効果顔料を製造するための方法であって、
前記方法が以下の:
a)真空チャンバー内において、酸素の存在下に物理的蒸着法(PVD)によって基材に少なくとも1種の金属Mを適用して基材の上に金属コーティングを形成し、前記コーティングが、Mおよび酸素の合計含量を基準にして、25〜58原子パーセントの平均酸素含量を有する実質的に均質な化学組成を有するようにする工程、
b)基材から前記金属コーティングを分離する工程、
c)前記金属コーティングを微粉砕して金属効果顔料を形成させる工程、
d)場合によっては、前記金属効果顔料を分散体またはペーストとする工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
酸素が、前記真空チャンバー中に水分および/または大気酸素の形態で存在することを特徴とする、請求項12に定義される金属効果顔料を製造するための方法。
【請求項14】
工程a)の際に、前記真空チャンバーの中に酸素ガスの計量仕込みを実施することを特徴とする、請求項12に定義される金属効果顔料を製造するための方法。
【請求項15】
工程a)を、2×10−4〜1×10−1mbarの真空圧下で実施することを特徴とする、請求項12〜14に定義される金属効果顔料を製造するための方法。
【請求項16】
工程b)および/またはc)を、溶媒、好ましくは有機溶媒の中で実施することを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に定義される金属効果顔料を製造するための方法。
【請求項17】
工程d)において、前記金属効果顔料が、好ましくは有機溶媒を用いて分散体とされ、前記好ましい有機溶媒の含量が、分散体の全重量を基準にして、少なくとも70重量%であることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか1項に定義される金属効果顔料を製造するための方法。
【請求項18】
コーティング、ワニス、自動車用エナメル、粉体ベースのワニス、印刷インキ、デジタル印刷インキ、プラスチック物質、または化粧品配合物における、請求項1〜11のいずれか1項に定義される金属効果顔料の使用。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−526873(P2009−526873A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553697(P2008−553697)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001280
【国際公開番号】WO2007/093401
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】