説明

p型Ga2O3膜の製造方法およびpn接合型Ga2O3膜の製造方法

【課題】 高品質のGa系化合物半導体からなる薄膜を形成することができるp型Ga膜の製造方法およびpn接合型Ga膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 真空層52内を減圧し、酸素ラジカルを注入しながらセル55aを加熱し、Gaの分子線90、およびセル55bを加熱し、Mgの分子線90をGa系化合物からなる基板25上に照射して、基板25上にp型β−Gaからなるp型β−Ga層を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p型Ga膜の製造方法およびpn接合型Ga膜の製造方法に関し、特に、高品質のGa系化合物半導体からなる薄膜を形成することができるp型Ga膜の製造方法およびpn接合型Ga膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外領域での発光素子は、水銀フリーの蛍光灯の実現、クリーンな環境を提供する光触媒、より高密度記録を実現する新世代DVD等で特に大きな期待が持たれている。このような背景から、GaN系青色発光素子が実現されてきた(例えば、特許文献1参照。)。 しかし、更なる短波長化光源が求められており、近年、β−Ga23のバルク系単結晶の基板作製が検討されている。
【0003】
【特許文献1】特開平05−283745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のGaからなる基板上にGaからなる薄膜をエピタキシャル成長させた場合、アクセプタなしの場合にn型導電性を示し、アクセプタを導入した場合であっても絶縁型を示し、純度の低いGaしか得られなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、高品質のGa系化合物半導体からなる薄膜を形成することができるp型Ga膜の製造方法およびpn接合型Ga膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、酸素欠陥を低減して絶縁性のGa膜を形成する第1のステップと、前記絶縁性のGa膜にアクセプタをドープしてp型Ga膜を形成する第2のステップを有することを特徴とするp型Ga膜の製造方法を提供する。
【0007】
前記第1のステップと前記第2のステップは、同時に実行されることが好ましい。
【0008】
前記第1のステップは、Ga基板上に活性酸素と金属Gaを供給するステップを含み、前記第2のステップは、前記Ga基板上に金属Mgを供給するステップを含むことが好ましい。
【0009】
前記第1のステップと前記第2のステップは、MBE法により行われることが好ましい。
【0010】
前記金属Gaは、純度6N以上のものを用いることが好ましい。
【0011】
前記活性酸素は、ラジカルガンにより供給されることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、酸素欠陥を低減して絶縁性のGa膜を形成する第1のステップと、前記絶縁性のGa膜にアクセプタをドープしてp型Ga膜を形成する第2のステップと、前記絶縁性のGa膜にドナーをドープしてn型Ga膜を形成する第3のステップを有することを特徴とするpn接合型Ga膜の製造方法を提供する。
【0013】
前記第1のステップと前記第2のステップは、所定の時限において同時に実行され、前記第1のステップと前記第3のステップは、前記所定の時限とは異なった他の時限において同時に実行されることが好ましい。
【0014】
前記第1、第2および第3のステップは、Ga系化合物からなる基板の所定の面上で行うことが好ましい。
【0015】
前記所定の面は、(100)面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高品質のGa系化合物半導体からなる薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態の係る発光素子は、基板の所定の面、例えば、(100)面上に、p型Ga膜およびn型Ga膜を形成したものである。
【0018】
(β−Ga基板の形成方法)
β−Ga基板は、FZ法により形成されたβ−Ga単結晶を(100)面で劈開したものを用いる。
【0019】
(p型β−Ga膜の形成方法)
以下、p型β−Ga膜の形成方法を説明する。
【0020】
図1は、p型β−Ga膜の形成に用いられるMBE(Molecular Beam Epitaxy)装置50を示し、(a)は一部を破断して示した斜視図、(b)はMBE装置の要部拡大図である。このMBE装置50は、排気系51により図示しない排気装置に接続された真空槽52と、この真空槽52内に設けられ、マニピュレータ53により回動、移動等が可能に支持され、基板25が取付けられる基板ホルダ54とを備える。
【0021】
真空槽52は、基板25に対向するように形成され、薄膜を構成する原子、分子ごとに収容する複数のセル55(55a,55b,・・・)と、基板25上に電子線を入射する反射高エネルギー電子線回折(RHEED)電子銃70と、電子銃70と基板60を介して相対する真空槽52の壁に形成され、電子銃70により入射された電子線の回折像を投影する蛍光スクリーン71と、真空槽52内が高温になるのを防止する液体窒素シュラウド57と、基板60の表面を分析する4重極質量分析計58と、ラジカルを供給するラジカルガン59とを備える。真空槽52は、超高真空または極高真空の状態とし、好ましくは少なくとも1×10−9torrにする。
【0022】
セル55は、例えば、薄膜として基板25上に成長させるGa等の金属材料、およびMgからなるアクセプタが充填され、ヒータ56により内容物を加熱することができるようになっている。また、セル55は、図示しないシャッタを有し、不要の場合に閉じておくことができるように構成される。
【0023】
ラジカルガン59は、酸素に熱、光、放射線などのエネルギーを供給することによりラジカル酸素(活性酸素)を発生するものである。
【0024】
ここで、MBE装置50を使用して、基板25上に成膜するには、以下のように行う。まず、β−Ga基板25を基板ホルダ54に装着し、セル55aの内部に純度6NのGa金属、およびセル55bの内部にアクセプタとしてのMg金属を収容する。次に、排気系51を動作させ、真空槽52内を5×10−9torrに減圧する。
【0025】
次に、ラジカルガン59からラジカル酸素濃度が1×10−4〜1×10−7torrとなるように、ラジカル酸素をラジカルガン59により注入しながら、セル55a,55bを所定の温度に加熱すると、GaおよびMgの分子線90が発生する。Gaの分子線90およびMgの分子線90を基板25に向けて照射すると、基板25の(100)面上にβ−Ga層が成長する。
【0026】
(p型β−Ga膜であることの検証)
図2は、ゼーベック係数の測定装置を示す図である。ゼーベック係数の測定は、加熱部81により薄膜26Aが形成された基板26の一端を加熱し、冷却部82により基板26の他端を冷却して、薄膜26Aについての加熱部81および冷却部82間の起電力を測定することにより行う。ここで、薄膜26Aは、上述のように形成されたβ−Ga膜である。
【0027】
形成されたβ−Ga膜に対して測定した結果、p型半導体の傾向を示す負のゼーベック係数が得られた。
【0028】
(n型β−Ga膜の形成方法)
上記MBE装置50を用いて、アクセプタの代わりにドナーとしての金属を用いることにより、n型のβ−Ga膜を形成する。この結果、p型のβ−Ga膜とn型のβ−Ga膜によるpn接合型のβ−Ga膜を形成することができる。
【0029】
(実施の形態の効果)
この実施の形態によれば、p型導電性を示す高品質のβ−Ga化合物半導体膜を形成することができた。このため、発光素子に使用する場合には、基板とp型β−Ga膜とはβ−Gaとして一致するため、格子定数が一致する。したがって、β−Ga膜の結晶品質の劣化を抑えることができ、発光光率の低下を抑えることができる。
【0030】
(変形例)
Ga系化合物半導体である上記β−Gaは、Cu、Ag、Zn、Cd、Al、In、Si、GeおよびSnからなる群から選ばれる1種以上を添加したGaを主成分としたGa酸化物で構成してもよい。これらの添加元素の作用は、格子定数あるいはバンドギャップエネルギーを制御するためである。例えば、(AlInGa(1−x−y)(ただし、0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y<1)で表わされるGa酸化物を用いることができる。
【0031】
p型β−Ga膜は、上記のMBE法のほか、MOCVD(有機金属気相成長)装置を用いたMOCVD法により形成してもよい。すなわち、原料ガスとして、酸素ガス、NO、TMG(トリメチルガリウム)、CpMg(ビスジクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、キャリアガスとして、Heの他に、Ar,Ne等の希ガスおよびN等の不活性ガスを用いる。なお、n型β−Ga膜を形成するには、CpMgの代わりにSiH(モノシラン)を用いる。
【0032】
また、p型導電性を示すp型β−Ga膜は、絶縁型のβ−Ga膜を形成し、その膜にアクセプタを導入することにより形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】p型半導体層の形成に用いられるMBE装置を示し、(a)は一部を破断して示した斜視図、(b)はMBE装置の要部拡大図である。
【図2】ゼーベック係数の測定装置を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
25,26 基板
26A 薄膜
50 装置
51 排気系
52 真空槽
53 マニピュレータ
54 基板ホルダ
55 セル
56 ヒータ
57 液体窒素シュラウド
58 4重極質量分析計
59 ラジカルガン
60 基板
70 電子銃
71 蛍光スクリーン
81 加熱部
82 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素欠陥を低減して絶縁性のGa膜を形成する第1のステップと、
前記絶縁性のGa膜にアクセプタをドープしてp型Ga膜を形成する第2のステップを有することを特徴とするp型Ga膜の製造方法。
【請求項2】
前記第1のステップと前記第2のステップは、同時に実行されることを特徴とする請求項1記載のp型Ga膜の製造方法。
【請求項3】
前記第1のステップは、Ga基板上に活性酸素と金属Gaを供給するステップを含み、
前記第2のステップは、前記Ga基板上に金属Mgを供給するステップを含むことを特徴とする請求項1記載のp型Ga膜の製造方法。
【請求項4】
前記第1のステップと前記第2のステップは、MBE法により行われることを特徴とする請求項1記載のp型Ga膜の製造方法。
【請求項5】
前記金属Gaは、純度6N以上のものを用いることを特徴とする請求項3記載のp型Ga膜の製造方法。
【請求項6】
前記活性酸素は、ラジカルガンにより供給されることを特徴とする請求項3記載のp型Ga膜の製造方法。
【請求項7】
酸素欠陥を低減して絶縁性のGa膜を形成する第1のステップと、
前記絶縁性のGa膜にアクセプタをドープしてp型Ga膜を形成する第2のステップと、
前記絶縁性のGa膜にドナーをドープしてn型Ga膜を形成する第3のステップを有することを特徴とするpn接合型Ga膜の製造方法。
【請求項8】
前記第1のステップと前記第2のステップは、所定の時限において同時に実行され、
前記第1のステップと前記第3のステップは、前記所定の時限とは異なった他の時限において同時に実行されることを特徴とする請求項7記載のpn接合型Ga膜の製造方法。
【請求項9】
前記第1、第2および第3のステップは、Ga系化合物半導体からなる基板の所定の面上で行うことを特徴とする請求項7記載のpn接合型Ga膜の製造方法。
【請求項10】
前記所定の面は、(100)面であることを特徴とする請求項9記載のpn接合型Ga膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−108263(P2006−108263A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290845(P2004−290845)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】