説明

アタッチメント光学系およびそれを用いた撮像装置

【課題】所定面に形成された1次像を撮影レンズで再結像するとき、全系が小型で良好なる光学性能を維持しつつ、1次像からの光束を撮影レンズに導光することができるアタッチメント光学系を得る。
【解決手段】結像レンズ10によって所定面21に形成された1次像をカメラ本体30内の撮影レンズ31に導光するアタッチメント光学系Atであって、アタッチメント光学系はカメラ本体に着脱可能であり、アタッチメント光学系は、最も大きい空気間隔を隔てて、物体側から像側へ順に負の屈折力の第1レンズ群22、正の屈折力の第2レンズ群23からなり、第1レンズ群の焦点距離f1、アタッチメント光学系の全系の焦点距離f、所定面からアタッチメント光学系の最も物体側のレンズ面までの距離d1、アタッチメント光学系の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの距離Lを各々適切に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像レンズによって、所定面に結像した1次像からの光束を、カメラ本体内の撮影レンズに導光する、カメラ本体の物体側に着脱可能に装着するアタッチメント光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置においてはCCDセンサ等の固体撮像素子の小型化が進み、それと共に、撮像装置全系の小型化が進んでいる。撮像素子の有効径が小さくなると同じ画角を撮影するためには撮影レンズの焦点距離が短くなる。撮影レンズの焦点距離が短くなると、それに伴って被写界深度が深くなってくる。このため、小型化を図った撮像装置では35mmカメラのような大きな撮像素子を有する撮像装置を用いたときのように背景をぼかした画像を得ることが困難になってきている。
【0003】
小さな有効面の撮像素子を用いた撮像装置において、35mmカメラと同等の被写界深度の浅い画像を得るようにした光学系が知られている(特許文献1)。特許文献1では結像レンズにより、被写界深度の浅い画像を35mmカメラの撮像素子と同程度の大きさの拡散特性を持った平行平板に結像させる。そして平行平板に結像した1次像をカメラ本体内の撮影レンズで近接撮影して、被写体深度の浅い画像を得るようにしている。
【0004】
一方、顕微鏡対物レンズによる1次像をデジタルカメラに内蔵した撮影レンズで再結像させるために、対物レンズと撮影レンズの間にリレー光学系としてアタッチメント光学系を配置した撮像装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−538499号公報
【特許文献2】特開2001−100093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結像レンズと撮影レンズとの間に着脱可能に装着し、結像レンズによって所定面に結像した1次像からの光束を撮影レンズに導光するためのアタッチメント光学系には、全体が小型でかつ良好なる光学性能を有することが要望されている。特許文献2に開示されたリレー光学系は、1次結像側から負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群からなっている。
【0007】
そして第1、第2レンズ群のレンズ構成を適切に設定して対物レンズにより形成された像をデジタルカメラ側へ導光している。特許文献2のリレー光学系は、例えば第1、第2レンズ群を1次結像面の大きさで正規化した場合、各レンズ群の焦点距離が長いため、全長が長くなり、全系が大型化する傾向がある。
【0008】
結像レンズと撮影レンズとの間に配列されるアタッチメント光学系には、撮影レンズで高い光学性能を有して再結像できるようにアタッチメント光学系が高い光学性能を有するようにレンズ構成を適切に設定することが重要になってくる。特に第1レンズ群の全体に占めるパワーや、光学全長等を適切に設定することが重要で、これらが不適切であると、全系の小型化を図りつつ、良好なる画像を得ることが困難になってくる。
【0009】
本発明は、所定面に形成された1次像を撮影レンズで再結像するとき、全系が小型で良好なる光学性能を維持しつつ、1次像からの光束を撮影レンズに導光することができるアタッチメント光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアタッチメント光学系は、結像レンズによって所定面に形成された1次像をカメラ本体内の撮影レンズに導光するアタッチメント光学系であって、
該アタッチメント光学系は前記カメラ本体に着脱可能であり、
前記アタッチメント光学系は、最も大きい空気間隔を隔てて、物体側から像側へ順に負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群からなり、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記アタッチメント光学系の全系の焦点距離をf、前記所定面から前記アタッチメント光学系の最も物体側のレンズ面までの距離をd1、前記アタッチメント光学系の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの距離をLとするとき、
−3.5<f1/f<−0.1
0.1<d1/L<1.6
なる条件式を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定面に形成された1次像を撮影レンズで再結像するとき、全系が小型で良好なる光学性能を維持しつつ、1次像からの光束を撮影レンズに導光することができるアタッチメント光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図2】実施例1のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図3】実施例2のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図4】実施例2のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図5】実施例3のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図6】実施例3のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図7】実施例4のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図8】実施例4のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図9】実施例5のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図10】実施例5のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図11】実施例6のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図12】実施例6のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図13】実施例7のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図14】実施例7のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図15】実施例8のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときのレンズ断面図
【図16】実施例8のアタッチメント光学系を撮影レンズに装着したときの収差図
【図17】本発明の撮像装置の要部概略図
【図18】平行平板からレンズ群に入射する軸外主光線の違いによるレンズ径の比較
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアタッチメント光学系及びそれを有する撮像装置について説明する。本発明のアタッチメント光学系は、結像レンズとカメラ本体内の撮影レンズとの間であって、カメラ本体に着脱可能に装着される。そして結像レンズによって所定面に形成された1次像をカメラ本体内の撮影レンズに導光する。撮影レンズは所定面に形成された1次像をアタッチメント光学系を介して撮像素子に再結像する。アタッチメント光学系は、最も大きい空気間隔を隔てて、物体側から像側へ順に負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群からなっている。
【0014】
図1、図3、図5、図7、図9、図11は本発明の実施例1乃至6のアタッチメント光学系を一例として選んだ撮影レンズ1の物体側に着脱可能に装着したときのレンズ断面図である。
【0015】
図13は本発明の実施例7のアタッチメント光学系を一例として選んだ撮影レンズ2の物体側に着脱可能に装着したときのレンズ断面図である。図15は本発明の実施例8のアタッチメント光学系を一例として選んだ撮影レンズ3の物体側に着脱可能に装着したときのレンズ断面図である。図17は本発明のアタッチメント光学系を結像レンズとカメラ本体との間であって、カメラ本体に着脱可能に装着したときの概略図である。
【0016】
レンズ断面図において、Atはアタッチメント光学系であり、最も広い空気間隔を隔てて負の屈折力の第1レンズ群Anと、正の屈折力の第2レンズ群Apを有している。Zmはアタッチメント光学系Atを装着するカメラ本体内の撮影レンズである。撮影レンズZmにおいてSPは絞り又は光量調整装置、GBはフェースプレートやローパスフィルター等のガラスブロック、IPは像面であり、撮像素子が配置されている。
【0017】
レンズ断面図において左方が物体側で右方が像側である。各実施例では結像レンズによって所定面に結像された1次像(例えば拡散板に形成された像)をアタッチメント光学系Atと撮影レンズZmによって像面IPに再結像している。
【0018】
図2、図4、図6、図8、図10、図12、図14、図16はそれぞれ、本発明の実施例1乃至8で示すアタッチメント光学系を撮影レンズに装着した状態での諸収差図である。収差図において、d、gはd線及びg線、ΔM、ΔSはメリジオナル像面、サジタル像面、倍率色収差はg線によって表している。また、Fno.はFナンバー、ωは半画角(度)である。非点収差においてはd線におけるΔM、ΔSを表示し、歪曲収差においてはd線を表示し、倍率色収差においてはd線に対するg線の収差を表示している。
【0019】
次に本発明のアタッチメント光学系を用いた撮像装置の実施例について図17を用いて説明する。図17において10は結像レンズであり、物体(被写体)を所定面、例えば拡散性のある平行平板よりなる拡散板(所定面)21に1次像(物体像)を結像(形成)している。
【0020】
20はアタッチメント光学系であり、カメラ本体30の物体側(結像レンズ10側)に着脱可能に装着され、結像レンズ10によって所定面21に結像した物体像からの光束を後続する撮影レンズ31に導光している。アタッチメント光学系20は負の屈折力の第1レンズ群22と正の屈折力の第2レンズ群23を有している。30はカメラ本体であり、撮影レンズ31と撮影レンズ31によって形成された像を受光するCCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子(撮像素子)32を内蔵している。
【0021】
本実施例において結像レンズ10、アタッチメント光学系20は、カメラ本体30の物体側に着脱可能である。尚、拡散特性をもった拡散板21とアタッチメント光学系20を一体化してカメラ本体30に対して着脱可能な構成としても良い。
【0022】
本実施例では、結像レンズ10によって拡散板21に結像した1次像(物体像)をアタッチメント光学系20を介してカメラ本体30内の撮影レンズ31によって撮像素子(CCD)32に再結像している。尚、拡散板21を用いずに結像レンズ10によって形成される空中像をアタッチメント光学系20を介してカメラ本体30内の撮影レンズ31によって撮像素子32に再結像しても良い。
【0023】
以上のように本実施例によればアタッチメント光学系20をビデオカメラ等の撮像素子32を有した撮像装置30に適用することで、小型で高い光学性能を有する撮像装置を実現している。
【0024】
各実施例では、有効撮像面積が小さな撮像素子を用いた撮像装置において、拡散板に結像した1次像をカメラ本体内の撮影レンズで近接撮影し、これにより被写界深度の浅い画像を得ている。このとき、撮影レンズの入射瞳とアタッチメント光学系の射出瞳を画面周辺光量を確保するために光軸方向で近い位置に配置する必要がある。そうしないと画面周辺光量が不足したり、光束のケラレが多くなってくる。一般にビデオカメラやデジタルカメラなどに用いられる撮影レンズの入射瞳はレンズ系内部に位置する。
【0025】
このため、アタッチメント光学系は、それからの軸外光束が収束するように構成する必要がある。そのためのレンズ構成として、各実施例ではアタッチメント光学系を最も大きい空気間隔を隔てて、物体側から順に負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群の2群から構成している。2群構成とした場合に、各レンズ群の屈折力配置として、正と正、正と負、負と正、負と負の屈折力のレンズ群よりなる4通りがある。第2レンズ群を負の屈折力を持ったレンズ群とすると、第1レンズ群への軸外光線の入射高さが高くなり、レンズ径が大きくなるため好ましくない。
【0026】
そのため第2レンズ群を正の屈折力のレンズ群としている。また、第2レンズ群が正の屈折力を持つため、色収差や歪曲収差の補正のために第1レンズ群を負の屈折力のレンズ群としている。また、各実施例のアタッチメント光学系は、拡散特性をもった平行平板からなる拡散板21からの光束のうち第1レンズ面へ入射する軸外主光線が図18(b)に示すように、収束するように入射している。これにより図18(a)のように軸外光線が光軸に対して平行に入射する場合に比べてレンズ径を小型化することができる。
【0027】
次に各実施例のアタッチメント光学系Atの特徴について説明する。アタッチメント光学系Atは最も大きい空気間隔を隔てて、物体側から像側へ順に負の屈折力の第1レンズ群An、正の屈折力の第2レンズ群Apからなる。第1レンズ群Anの焦点距離をf1、アタッチメント光学系Atの全系の焦点距離をfとする。所定面からアタッチメント光学系Atの最も物体側のレンズ面までの距離をd1とする。アタッチメント光学系Atの最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの距離をLとする。
【0028】
このとき、
−3.5<f1/f<−0.1 ・・・(1)
0.1<d1/L<1.6 ・・・(2)
なる条件式を満足している。
【0029】
条件式(1)は負の屈折力の第1レンズ群Anの焦点距離を適切に規定するものである。条件式(1)の下限を超えて第1レンズ群Anの焦点距離が長くなりすぎると、レンズ全長(第1レンズ面から像面までの長さ)が長くなってしまうため好ましくない。一方、上限を超えて第1レンズ群Anの焦点距離が短くなりすぎると、第1レンズ群An内から像面湾曲が多く発生し、これを第2レンズ群Apで補正することが困難となる。
【0030】
条件式(2)は拡散板21からアタッチメント光学系Atの最も物体側のレンズ面までの距離を規定するものである。条件式(2)の下限を超えて拡散板21からアタッチメント光学系Atの最も物体側のレンズ面までの距離が短くなりすぎると、第1レンズ群Anに入射する軸外光線の入射高さが高くなってしまう。その結果、第1レンズ群Anで像面湾曲や歪曲収差の発生量が多くなり、これらを第2レンズ群Apでの補正するのが困難となる。
【0031】
一方、上限を超えて拡散板21からアタッチメント光学系Atの第1レンズ面までの距離が長くなりすぎると、光学系の全長(第1レンズ面から最終レンズ面までの距離)が長くなってしまうため好ましくない。
【0032】
各実施例において、更に好ましくは次の諸条件のうちの1以上を満足するのが良い。第2レンズ群Apの焦点距離をf2とする。第1レンズ群Anと第2レンズ群Apの間隔をdとする。第1レンズ群Anは、像側に凹面を向けた負レンズを有し、第2レンズ群Apは、像側に凸面を向けた正レンズを有する。そして、正レンズの像側のレンズ面の曲率半径をRp2、負レンズの像側のレンズ面の曲率半径をRn2とする。このとき、次の諸条件のうちの1以上を満足するのが良い。
【0033】
0.1<f2/f<1.8 ・・・(3)
0.05<d/f<1.00 ・・・(4)
0.5<|Rp2/Rn2|<5.0 ・・・(5)
条件式(3)は第2レンズ群Apの焦点距離を適切に規定するものである。条件式(3)の下限を超えて第2レンズ群Apの焦点距離が短くなりすぎると像面湾曲や歪曲収差が多く発生してくる。一方、上限を超えて第2レンズ群Apの焦点距離が長くなりすぎると、レンズ全長が長くなってしまう。
【0034】
条件式(4)はアタッチメント光学系Atの第1レンズ群Anと第2レンズ群Apの間隔を規定するものである。条件式(4)の下限を超えて各レンズ群の間隔が短くなりすぎると、各レンズ群の焦点距離が短くなる。その結果、収差補正が困難となり、レンズ枚数を増やさなければならず、レンズ全長が長くなってくる。一方、上限を超えて各レンズ群の間隔が長くなりすぎると、レンズ全長が長くなる。
【0035】
また好ましくはアタッチメント光学系Atの第1レンズ群Anには像側に凹面を向けた負レンズを少なくとも1枚含み、第2レンズ群Apには像側に凸面を向けた正レンズを少なくとも1枚含むのが良い。そして条件式(5)を満足することが望ましい。
【0036】
条件式(5)はアタッチメント光学系Atの第1レンズ群Anに含まれる負レンズと第2レンズ群Ap中に含まれる正レンズのレンズ形状を規定するものである。条件式(5)を満足することで、諸収差を良好に補正することが容易となる。負レンズと正レンズの像側のレンズ面は曲率が比較的きつく、軸外光線の射出角が大きいため非点隔差や歪曲収差等の高次成分の収差が多く発生する。そのため条件式(5)でレンズ面の曲率を適切に規定することでこれらの収差の発生を軽減する効果がある。
【0037】
条件式(5)の下限を超えると負レンズの像側のレンズ面の凹面の曲率がきつくなり、負レンズから発生する非点隔差や歪曲を第2レンズ群Apで補正することが困難となる。逆に上限を超えると正レンズの像側のレンズ面の曲率がきつくなり、正レンズで非点隔差や歪曲等が多く発生し、これらを第2レンズ群Ap内で補正をすることが困難となる。尚、更に好ましくは条件式(1)乃至(5)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
【0038】
−3.2<f1/f<−0.1 ・・・(1a)
0.1<d1/L<1.4 ・・・(2a)
0.2<f2/f<1.4 ・・・(3a)
0.05<d/f<0.80 ・・・(4a)
0.7<|Rp2/Rn2|<4.0・・・(5a)
また、さらに好ましくは条件式(1a)乃至(5a)の数値範囲を次の如く設定すると、先に述べた各条件式が意味する効果を最大限に得られる。
【0039】
−2.8<f1/f<−0.2 ・・・(1b)
0.2<d1/L<1.2 ・・・(2b)
0.3<f2/f<0.9 ・・・(3b)
0.08<d/f<0.60 ・・・(4b)
0.9<|Rp2/Rn2|<3.2・・・(5b)
各実施例では以上のように各レンズ群を構成することによって、諸収差を良好に補正しながら、レンズ全長の短い小型のアタッチメント光学系を得ている。
【0040】
また、本発明のアタッチメント光学系および撮影レンズと、それらの光学系により形成された像を受光する撮像素子を有した撮像装置を構成することができる。近年はデジタル的に像を処理するために撮像素子としてCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などが主に使用されている。各実施例もこれに相当する撮像素子を用いて撮像装置を構成している。
【0041】
さらに、各実施例の撮像装置においては、電気的な補正手段により収差を補正するようにしている。これは、銀塩フィルムとは異なり、デジタルカメラなどでは画像をデジタルデータとして取得できるという特性を利用し、撮影レンズから得られた画像に対して画像変換処理を施し、諸収差を低減させた画像を得ている。電気的な収差補正には、電子歪曲収差補正や電子倍率色収差補正がある。電子歪曲収差補正では、ズーム位置、被写体距離、像高ごとに決められた量だけ画像の拡大または縮小を行うことにより歪曲収差を低減して、歪みの少ない画像を得ている。
【0042】
また、電子倍率色収差補正では撮像素子のカラーフィルターによって分けられた、赤色R、緑色G、青色Bの信号のうち、例えば緑色Gを基準とし、緑色Gに対する赤色R、青色Bのずれをズーム位置、被写体距離、像高に応じて各画素ごとに補正を行っている。これにより倍率色収差が少ない画像を得ている。これらの電気的な収差補正を行うことを前提とすることで、光学系全体のレンズ枚数を減らすことが容易となり、その結果レンズ全長の短縮化、レンズ系の小型化を実現している。また、非球面や異常分散ガラスを使用せずに良好な収差補正を容易にしている。
【0043】
以上のように各実施例によれば、諸収差を良好に補正しながら、全長の短い小型のアタッチメント光学系を実現することができる。この他、撮像素子の小さい撮影レンズで被写界深度の浅い画像を諸収差を良好に補正しながら、得ることができる。
【0044】
なお各実施例において以下のような構成をとっても良い。
・実施例に示したガラスの形状、枚数に限定されるものではなく、適宜変更すること。
・非球面レンズの材料はガラス材料に限らず、球面レンズ面上に樹脂材料で非球面を形成した(非球面成分を乗せた)ハイブリッドタイプの非球面レンズや、プラスチック材料より成る非球面レンズを用いること。
・一部のレンズおよびレンズ群を光軸に対して垂直方向の成分を持つように移動させ、これにより手ぶれ等の振動に伴う像ぶれを補正すること。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、本発明のアタッチメント光学系は上述の実施例で示した撮影レンズ以外にも装着可能であり、撮影レンズのズームポジションも変更可能である。
【0046】
次に本発明のアタッチメント光学系の実施例1乃至8に各々対応する数値実施例1乃至8を示す。また撮影レンズ1乃至3の数値実施例1乃至3を示す。各数値実施例においてiは物体側からの面の順番を示す。riは物体側から第i番目の面の曲率半径、diは物体側から第i番目の面と第i+1番目の面との間の面間隔、ndiは第i番目のレンズの材料のd線における屈折率、νdiは第i番目のレンズのd線におけるアッベ数を示すものとする。
【0047】
レンズ全長はレンズ最前面からレンズ最終面までの距離にバックフォーカスを加えた値である。アタッチメント光学系ではレンズ全長を撮影レンズに装着したときの値を示している。BF(バックフォーカス)はレンズ最終面から近軸像面までの距離を空気換算長により表したものである。非球面形状は、光軸方向にX軸、光軸と垂直方向H軸、光の進行方向を正とし、Rを近軸曲率半径、各非球面係数をK、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12としたとき、
【0048】
【数1】

【0049】
なる式で表している。
【0050】
また、例えば「e−Z」の表示は「10−Z」を意味する。尚、非球面は各表中の面番号の右側に*印を付している。また撮影レンズの各数値実施例において最も像側の2面は光学ブロックGに相当する平面である。表1に各実施例において平行平板の拡散板からアタッチメント光学系の最も物体側のレンズ面までの光路上の距離を示す。表2に前述の各条件式と各数値実施例における諸数値との関係を示す。
【0051】
●アタッチメント光学系

[数値実施例1]
単位 mm

面データ

面番号 r d nd νd
1 ∞ 4.57 1.83400 37.2
2 -65.476 3.83
3 -166.712 1.80 1.80518 25.4
4 24.221 26.31
5 109.568 1.90 1.92286 18.9
6 60.473 9.99 1.80400 46.6
7 -47.520 12.50

各種データ

焦点距離 10.72
Fナンバー 1.77
画角 17.94
像高 3.47
レンズ全長 125.66
BF 10.27

【0052】
[数値実施例2]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -1103.187 2.83 1.92286 18.9
2 32.660 12.12
3 63.471 10.83 1.71300 53.9
4 -44.074 12.50

各種データ

焦点距離 10.30
Fナンバー 1.80
画角 18.62
像高 3.47
レンズ全長 102.30
BF 11.01

【0053】
[数値実施例3]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 3852.940 3.72 1.83481 42.7
2 -112.114 9.73
3 -173.321 1.81 1.84666 23.9
4 28.983 19.62
5 71.579 8.19 1.71300 53.9
6 -51.894 12.50

各種データ

焦点距離 14.53
Fナンバー 1.77
画角 13.44
像高 3.47
レンズ全長 119.03
BF 10.82

【0054】
[数値実施例4]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 138.810 1.80 1.80518 25.4
2 26.944 6.02
3 -226.440 2.81 1.83400 37.2
4 -88.376 25.00
5 139.371 1.90 1.94595 18.0
6 72.292 8.07 1.77250 49.6
7 -49.354 12.50

各種データ

焦点距離 12.73
Fナンバー 1.74
画角 15.26
像高 3.47
レンズ全長 121.47
BF 9.87

【0055】
[数値実施例5]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 111.387 2.17 1.48749 70.2
2 28.153 33.51
3 68.774 1.92 1.84666 23.9
4 37.937 11.44 1.71300 53.9
5 -72.421 15.36

各種データ

焦点距離 15.17
Fナンバー 1.81
画角 12.89
像高 3.47
レンズ全長 127.81
BF 10.01

【0056】
[数値実施例6]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 88.287 9.56 1.88300 40.8
2 -39.005 1.95 1.84666 23.9
3 25.088 19.62
4 64.443 9.81 1.71300 53.9
5 -49.924 12.50

各種データ

焦点距離 13.27
Fナンバー 1.76
画角 14.67
像高 3.47
レンズ全長 117.11
BF 9.98

【0057】
[数値実施例7]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 33.181 2.00 1.94595 18.0
2 24.556 4.27
3 32.837 10.97 1.71300 53.9
4 -64.602 16.68

各種データ

焦点距離 10.82
Fナンバー 2.03
画角 7.22
像高 1.37
レンズ全長 94.31
BF 8.27

【0058】
[数値実施例8]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 -62.258 2.14 2.00069 25.5
2 77.830 17.84
3 1215.956 8.46 1.51633 64.1
4 -65.170 18.03
5 135.361 2.00 1.92286 18.9
6 71.735 8.91
7 104.054 18.35 1.78590 44.2
8 -93.982

各種データ

焦点距離 13.95
Fナンバー 2.45
画角 12.25
像高 3.03
レンズ全長 232.75
BF 24.44

【0059】
●撮影レンズデータ

〈撮影レンズ1〉

単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 35.695 1.25 1.84666 23.9
2 22.657 5.00 1.48749 70.2
3 -329.377 0.20
4 20.944 3.21 1.60311 60.6
5 69.353 (可変)
6 57.970 0.70 1.88300 40.8
7 6.660 2.73
8 -20.442 0.60 1.48749 70.2
9 13.859 0.82
10 11.989 1.39 1.92286 18.9
11 28.809 (可変)
12* 10.325 3.22 1.58313 59.4
13 -44.676 1.45
14(絞り) ∞ 2.25
15 87.302 0.60 1.76182 26.5
16 8.926 0.43
17* 12.887 2.13 1.58313 59.4
18 -72.475 (可変)
19 16.345 2.25 1.80400 46.6
20 -21.144 0.60 1.84666 23.9
21 -382.028 (可変)
22 ∞ 1.94 1.51633 64.1
23 ∞ 1.00
像面 ∞

【0060】
非球面データ
第12面
K =-1.07783e+000 A 4= 8.19258e-006 A 6=-2.80408e-007 A 8= 1.80519e-009 A10=-2.77065e-011

第17面
K = 2.68490e+000 A 4=-1.85266e-004 A 6=-9.61889e-007 A 8=-2.57003e-008

各種データ
ズーム比 9.81

広角 中間 望遠
焦点距離 6.60 27.48 64.77
Fナンバー 1.85 2.70 3.00
画角 27.87 7.24 3.09
像高 3.49 3.49 3.49
レンズ全長 65.84 65.84 65.84
BF 10.10 13.48 5.90

d 5 0.70 15.06 20.10
d11 20.24 5.88 0.84
d18 5.98 2.60 10.18
d21 7.82 11.20 3.62

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 34.05
2 6 -7.75
3 12 18.85
4 19 20.27


【0061】
〈撮影レンズ2〉

単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 37.258 1.05 1.80518 25.4
2 18.480 4.21 1.69680 55.5
3 -651.893 0.25
4 18.345 1.80 1.69680 55.5
5 29.550 (可変)
6 27.500 0.60 1.83481 42.7
7 4.076 1.72
8 -45.434 0.60 1.80400 46.6
9 7.660 0.75
10 7.275 1.29 1.92286 18.9
11 17.489 (可変)
12(絞り) ∞ 1.10
13* 9.929 2.75 1.58313 59.4
14* -21.867 0.65
15 12.114 0.60 1.84666 23.9
16 7.614 (可変)
17 13.393 2.90 1.51823 58.9
18 -5.225 0.60 1.84666 23.9
19 -8.241 (可変)
20 ∞ 2.13 1.51633 64.1
21 ∞ 1.26
像面 ∞

【0062】
非球面データ
第13面
K =-1.18213e+000
A 5= 2.41938e-006 A 7=-4.67393e-007 A 9= 1.84465e-008

第14面
K =-1.33778e+001
A 5=-1.79477e-006

各種データ
ズーム比 34.54

広角 中間 望遠
焦点距離 2.66 15.08 91.98
Fナンバー 2.06 2.46 5.25
画角 28.91 5.57 0.92
像高 1.47 1.47 1.47
レンズ全長 60.99 60.99 60.99
BF 8.64 12.70 4.88

d 5 0.65 15.94 22.49
d11 23.14 7.85 1.30
d16 7.68 3.62 11.45
d19 5.97 10.04 2.21

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 31.50
2 6 -4.49
3 12 18.89
4 17 13.11


【0063】
〈撮影レンズ3〉

単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 279.974 3.20 1.84666 23.9
2 78.637 1.78
3 103.173 7.87 1.59319 67.9
4 -482.657 0.20
5 59.095 8.61 1.49700 81.5
6 503.967 0.20
7 54.154 4.55 1.83481 42.7
8 110.728 (可変)
9 67.985 1.15 2.00069 25.5
10 10.925 3.84
11 111.580 1.00 1.85135 40.1
12* 30.012 2.66
13 -26.566 0.85 1.77250 49.6
14 40.759 0.86
15 31.027 3.10 1.94595 18.0
16 -55.061 (可変)
17(絞り) ∞ 2.53
18 89.535 0.80 1.88300 40.8
19 15.440 4.20 1.84666 23.9
20 -25.249 0.14
21 -22.306 0.80 2.00330 28.3
22 66.150 (可変)
23* 47.065 3.60 1.58313 59.4
24* -26.835 0.20
25 -205.644 2.00 1.48749 70.2
26 -34.516 0.80 1.80518 25.4
27 -229.787 (可変)
28* 30.536 3.60 1.58313 59.4
29* -48.513 0.20
30 90.175 0.90 1.92286 18.9
31 28.749 3.50 1.51633 64.1
32 -37.079 (可変)
33 ∞ 3.26 1.51633 64.1
34 ∞ 1.50
35 ∞ 20.00 1.58913 61.1
36 ∞ 2.74
像面 ∞

【0064】
非球面データ
第12面
K =-1.15140e+001 A 4= 5.79349e-005 A 6=-1.13010e-007 A 8= 1.55836e-009 A10= 2.86348e-012 A12=-4.39464e-015

第23面
K = 4.24639e+000
A 3= 1.88268e-005 A 5=-2.08701e-006 A 7=-3.11766e-009 A 9= 1.51363e-010 A11=-8.73564e-013

第24面
K =-4.83221e+000
A 3= 1.76699e-006 A 5=-3.72328e-006 A 7= 2.17282e-008 A 9=-7.42060e-011

第28面
K =-4.95770e-003 A 4= 1.93615e-005 A 6=-2.26752e-007 A 8= 1.96720e-009 A10= 1.98174e-011

第29面
K =-7.16370e+000 A 4= 3.03042e-005 A 6=-2.02825e-007 A 8= 1.98951e-009 A10= 2.14017e-011

各種データ
ズーム比 17.94

広角 中間 望遠
焦点距離 4.32 24.24 77.54
Fナンバー 2.46 2.43 2.44
画角 35.02 7.12 2.24
像高 3.03 3.03 3.03
レンズ全長 153.99 153.99 153.99
BF 23.28 27.16 24.14

d 8 0.86 35.52 46.46
d16 48.57 13.91 2.97
d22 4.00 4.00 4.00
d27 14.14 10.26 13.28
d32 4.30 8.18 5.16

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 66.57
2 9 -10.95
3 17 -54.88
4 23 38.58
5 28 25.48

【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【符号の説明】
【0067】
At:アタッチメント光学系 Ap:アタッチメント光学系の正群
An:アタッチメント光学系の負群
Zm:アタッチメント光学系を装着する撮影レンズ
SP:絞り又は光量調整装置 GB:ガラスブロック IP:像面
d:d線 g:g線 Fno:Fナンバー ω:半画角
ΔS:サジタル像面 ΔM:メリジオナル像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像レンズによって所定面に形成された1次像をカメラ本体内の撮影レンズに導光するアタッチメント光学系であって、
該アタッチメント光学系は前記カメラ本体に着脱可能であり、
前記アタッチメント光学系は、最も大きい空気間隔を隔てて、物体側から像側へ順に負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群からなり、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記アタッチメント光学系の全系の焦点距離をf、前記所定面から前記アタッチメント光学系の最も物体側のレンズ面までの距離をd1、前記アタッチメント光学系の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの距離をLとするとき、
−3.5<f1/f<−0.1
0.1<d1/L<1.6
なる条件式を満足することを特徴とするアタッチメント光学系。
【請求項2】
前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
0.1<f2/f<1.8
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のアタッチメント光学系。
【請求項3】
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔をdとするとき、
0.05<d/f<1.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のアタッチメント光学系。
【請求項4】
前記第1レンズ群は、像側に凹面を向けた負レンズを有し、前記第2レンズ群は、像側に凸面を向けた正レンズを有し、前記正レンズの像側のレンズ面の曲率半径をRp2、前記負レンズの像側のレンズ面の曲率半径をRn2とするとき、
0.5<Rp2/Rn2<5.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアタッチメント光学系。
【請求項5】
前記アタッチメント光学系は、その物体側に着脱可能に装着された結像レンズによって拡散性のある平行平板に結像した1次像からの光束を前記撮影レンズに導光することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアタッチメント光学系。
【請求項6】
被写体を所定面に結像する結像レンズと、撮影レンズを内蔵するカメラ本体と、前記結像レンズと前記カメラ本体との間であって、前記カメラ本体に着脱可能な請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアタッチメント光学系とを有し、
前記アタッチメント光学系は前記結像レンズによって所定面に結像した1次像からの光束を前記撮影レンズに導光し、
前記撮影レンズは前記アタッチメント光学系からの光束を用いて前記1次像を撮像素子に再結像することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
前記撮像装置に含まれる光学系より生ずる収差を、電気的な補正手段により補正することを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。

【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図15】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−88456(P2013−88456A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225737(P2011−225737)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】