説明

アミノフェノールエステルからの直鎖ポリエステルアミド

本発明は、アミノフェノールエステルおよび二塩基酸に由来する反復単位によって合成された直鎖生分解性ポリエステルアミド(PEA)ポリマーに関連する。これらのPEAは、以下の式によって表されるモノマー反復、ならびに医療用デバイスをコーティングする、形成するまたは含む多種多様の使用、組合せ医療用デバイスおよび徐放性製剤を含む医薬組成物を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年9月22日に出願された米国仮出願第61/098,839号の優先権を主張し、ここに引用することでその開示全体はあらゆる目的において本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
医療用デバイス分野における最近の進歩は、組合せ製品、すなわち物理的または機械的な機能と医薬的効力とを有するデバイスにしばしば集中している。このデバイスを実現する1つの方法は、組合せ製品の薬物リザーバとして生分解性または非生分解性のポリマーシステムを使用することによるものである。このようなポリマーシステムは、組織との主要な接点となり、よって生体適合性であるべきである。さらに組合せ製品はより複雑になってきたため、さらに所望される特徴が明確になってきた。例えば、あるポリマーシステムは「生体に有益」であるように設計され、すなわちポリマーがタンパク質吸着および細胞沈着を制御するとのことである(米国特許第7,186,789号明細書)。
【0003】
このようなポリマーおよびポリマーシステムは、周囲組織への医薬品の送達ビヒクルとして作用して、物理的または機械的な機能を有する組合せ製品の別の目的を果たし得る。組合せ製品におけるポリマーシステムの送達ビヒクルは、薬物を送達するステントのコーティング(米国特許第7,056,591号明細書、米国特許第7,005,137号明細書、米国特許第6,953,560号明細書、米国特許第6,776,796号明細書、米国特許出願公開第2006/0115449号明細書、米国特許出願公開第2005/0131201号明細書)や、ハンドリング性能を向上させるおよび/または薬物送達のための外科用メッシュのコーティング(米国特許出願公開第2007/0198040号明細書)、組織ポケットを安定化させて、薬物を送達するためのペースメーカー用パウチのコーティング(米国特許出願公開第2008/0132922号明細書)、薬物溶出性縫合糸(Ming et al.,2007)、ならびに薬物溶出性乳房インプラントカバー(2008年3月28日に出願した米国特許出願第12/058,060号)の形態をとっている。
【0004】
医療提供者や患者がより高い製品性能を必要とするため、有効な実体としてのポリマーに求められる要求は増大してきた。例えば、当初のステントコーティングのいくつかは、ステントを包囲するポリマーシステムフィルムであった。これらのフィルムは、ステント拡張の力によって薬物を血管壁に直接送達して、フィルムはステント自体によって所定の位置に保持されていた(米国特許第5,634,946号明細書、米国特許第5,674,287号明細書)。ステントコーティングの分野での現在の研究は、ポリマーの生体適合性(国際公開第2007/056134号パンフレット、米国特許第5,317,077号明細書、米国特許第5,216,115号明細書、米国特許第5,099,060号明細書)や、溶融粘度(米国特許出願公開第2008/0187567号明細書)、タンパク質吸着特徴(米国特許出願公開第2006/0115449号明細書)、親水性または物理機械特性(米国特許出願公開第2005/0131201号明細書)を最適化することに集中している。
【0005】
多くのポリマークラスが公知であり、多様なこれらが組合せ製品に使用されているが、アミノ酸チロシンを含有する合成ポリマーは、ポリマー特性を最適化する多くの利点および機会を与える。これらの利点は、一部はチロシン固有の生体適合性、毒性の消失、芳香族の性質、および3つの潜在的な重合部位、すなわちフェノール性水酸基、アミノ基、およびカルボン酸基に由来する。
【0006】
合成ポリマーでのチロシンの当初の使用の1つは、アミノ酸保護チロシンがチロシンエステルと2量体化されてモノマーのジフェノール性化合物を形成したKohnおよびLangerの研究から生まれた。このジチロシンジフェノールはジシアネートと共重合してチロシンベースのポリイミノカーボネートを生成し、新たな免疫調節剤を生成した(米国特許第4,863,735号明細書)。続いてKohnは、チロシンベースポリマーのいくつかのポリマークラスを発明して、そのクラスでチロシンエステルがデスアミノチロシン(すなわちそのアミノ基が欠如したチロシン)と2量体化して「チロシン由来ジフェノール」を形成した。これらのジフェノールを2つの活性部位を含有する試薬によって縮合して、「ポリアリレート」(ポリエステル)およびポリカーボネート(例えば米国特許第7,271,234号明細書、米国再発行特許発明第37,795号明細書、米国再発行特許発明第37,160号明細書、米国特許第5,216,115号明細書、米国特許第5,099,060号明細書)、ポリイミノカーボネート(例えば米国特許第4,980,449号明細書)、ポリエーテル、ポリチオカーボネート、ポリホスホネート(例えば米国特許第5,912,225号明細書)およびその他を含む複数の異なるポリマークラスを形成した。チロシン由来ジフェノールポリマーは、重合後にチロシン側鎖エステルが遊離酸に変換されるものであるが、このポリマーの後期に開発された一群のポリマーは、きわめて用途の広い生体適合性物質であることが示されている(米国特許第6,120,491号明細書)。
【0007】
チロシン由来ジフェノールポリアリレートは、ヘルニア修復メッシュおよびペースメーカーカバーなどの抗菌溶出併用デバイスに利用されている。これらは薬物溶出性ステントコーティング、乳房インプラントカバー、および他の用途などの併用薬物デバイス製品にも使用されている。チロシン由来ジフェノールポリカーボネートは、完全吸収性心血管ステントとして使用されている(Kohn et al.,2005)。
【0008】
他のチロシン由来ジフェノール性ポリマーがPacetti et al.(米国特許出願公開第2006/0115449号明細書)に記載されている。このポリマーは、薬物溶出性ステントコーティングとして使用するためのチロシン由来ジフェノールポリカーボネートおよびポリイミノカーボネートを含む。Pacettiは、自身の「チロシンジペプチドベースの生体吸収性ポリマー」が機械的強度の利点を有するのは、ジフェノール性部分が剛性の上昇によって、より高いガラス転移温度(T)を与えるためであることに言及した。Kohn et al.およびBaluca(それぞれ米国特許出願公開第2008/0187567号明細書および米国特許出願公開第2008/0112999号明細書)は、チロシン由来ジフェノールを含有するN置換モノマーおよびポリマーを開示し、窒素の保護により非保護種と比較してより低いガラス転移温度が与えられ、おそらく物質に処理可能性を与えるのに十分なほどガラス転移温度を低下させると思われることを指摘した。Moses et al.は、エステルの代わりに側鎖アミドを有するチロシン由来ジフェノール性モノマーおよびポリマーを開示している(国際公開第2007/056134号パンフレット)。
【0009】
チロシンは適切な構成要素と共重合されると、吸収性併用医療用デバイス製品に毒性の消失、生体適合性および剛性などの長所を与える。例えばKohnのチロシン由来ジフェノールポリカーボネート(米国特許第5,198,507号明細書)およびポリアリレート(米国特許第5,216,115号明細書)は、ポリ乳酸およびグリコール酸ベースの系と比較してそのガラス転移温度が比較的高いために、デバイスに剛性を与える。これらのポリマーファミリのガラス転移温度はポリマーの主鎖または側鎖の炭素数を増加させることによって加減することができるが(Brocchini et al.,1997)、これらのポリアリレートの大半の吸収時間は1年を超え、対応するポリカーボネートでは5〜10年を超える(Tangpasuthadol et al.,2000a、Tangpasuthadol et al.,2000b)。
【0010】
これらのポリマーは一般に、数週間から数か月の間のいずれか(例えば吸収性PGAまたはPLGA縫合糸(Ethicon))から3〜6か月(心血管ステントコーティングおよび/または薬物送達システム(Conor,Biosensors))まで多様である吸収時間を必要とし、大半の吸収性医療製品が要求する吸収時間を満足しないため、これらのポリマーは多くの医療上の要求に十分でない。さらに長い吸収時間によって認可手続きに極めて費用がかかることになる理由は、最適なインプラント部位の生体適合性を完全吸収によって示す必要があり得るためである。例えば、吸収に2年かかるポリマーコーティングを用いた製品は、認可の手続きに進む前に、少なくとも2年の前臨床プログラムと、続いて2〜3年の臨床プログラムを必要とする。
【0011】
したがってポリマー吸収時間は、物理化学特性、生体適合性および薬物溶出時間と共に、かなりの数の組合せ製品の成功に寄与するであろう。Kohnは遊離酸側鎖のジフェノールモノマー構造への選択的導入によって、チロシン由来ジフェノールポリアリレートおよびポリカーボネートの吸収時間を限定された範囲に短縮したが(米国特許第6,120,491号明細書)、これらの側鎖の導入によって、これらの物質の合成の複雑さおよびコスト、ならびにガラス転移温度が(一部の場合では、ポリマー処理可能性の範囲外まで、著しく上昇した(米国特許出願公開第2008/0187567号明細書)。さらに遊離酸側鎖の添加によって、遊離酸側鎖を含有するこれらのポリマー断片の吸収時間が短縮されたが、分解プロセスではなお、エステル側鎖を含有する長いポリマー断片は遊離酸を含有しない最初のポリマーの吸収時間と同等の吸収時間のままであった(米国特許第6,120,491号明細書)。
【0012】
したがって1年未満の吸収時間を有する生分解性かつ生体適合性ポリマーの一群に対する、好ましくは付随する薬物溶出可能性ならびに20〜85℃の有用な範囲のガラス転移温度を有し、6か月未満の吸収時間を有するポリマーの一群に対する要求がなお存在する。本発明は、以下に記載するように、チロシンエステルなどのアミノフェノール系エステルおよび二塩基酸から形成された直鎖ポリエステルアミドを提供することによって、当分野のこのような欠点や更なる利点に対処する。さらに本発明のポリマーは、遊離酸側鎖およびエステル化側鎖の両方を含むことができるが、これらのポリマーは高速な吸収時間を与えるために遊離酸側鎖の存在を必要とせず、また、米国特許第6,120,491号明細書に開示されたポリマーよりも安価で容易に合成することができる。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、生分解性ポリエステルアミド(PEA)ポリマーに関し、各種のR基を適切に選択することによって、かなりの数のポリマーが生理学的条件下で医学的に関連する期間内に吸収可能である。さらにこれらの特性は安価および簡単な合成経路によって達成され、同時にチロシンおよび関連芳香族の存在に関連した強固な機械的および物理的な特徴ならびに毒性の消失がポリマーに与えられる。
【0014】
したがって本発明の合成PEAポリマーは、以下の式によって表されるアミノフェノール−二塩基酸の反復単位を含み、
【化1】

式中、
Rは、−(CR−または−CR=CR−であり、
は水素、1〜20個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリールもしくはアルキルエーテル、または−(RO((CRO)−Rであり、
各Rは独立して、1〜30個の炭素原子を有する2価の直鎖もしくは分枝の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルもしくはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−であり、
およびRはそれぞれ独立して、水素または1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝の置換もしくは非置換のアルキルであり、
は独立して、直鎖または分枝の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
は独立して、直鎖または分枝の置換または非置換の飽和または不飽和の低級アルキルであり、
芳香環は0〜4個のZ置換基を有し、この置換基はそれぞれ独立して、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群より選択され、
Yは、
【化2】

であり
aは0〜10であり、
各qは独立して1〜4であり、
各rは独立して1〜4であり、および
各sは独立して1〜5000である。
【0015】
詳細な実施形態において、本発明のポリマーは、少なくとも約0.01%〜100%の反復単位を含み、したがってコポリマーおよびホモポリマーを含む。
【0016】
本発明の別の態様は、1つ又は複数の第2のポリマーとブレンドされた本発明のポリマーに関する。第2のポリマーは、生体適合性でもあるが、特定の用途に必要とされるように生分解性、吸収性または安定性であることが可能である。とりわけ完全吸収性生成物のための、特に有用な第2のポリマーの非制限的なリストは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)ならびにジフェノール由来またはチロシン由来ジフェノールポリアリレートおよびポリイミノカーボネートなどを含む。本発明のポリマーブレンドは1つ又は複数の薬物をさらに含み、したがって医薬組成物を含むことができる。
【0017】
本発明のまた別の態様において、本発明のポリマーおよび/またはブレンドは、様々な薬物放出プロフィールおよび特徴を有する製剤を提供するために、1つ又は複数の薬物、および場合により1つ又は複数の医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に製剤することができる。このような薬物はこれに限定されるわけではないが、抗菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、成長因子、抗腫瘍剤および抗線維化剤を含む。医薬組成物は、ミクロスフェア、微小粒子、ロッド、ペースト、フィルム、クリーム、錠剤などを含む一連の物理的製剤を含む。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、1つ又は複数の薬物を含む又は含まない、本発明の1つ又は複数のPEAポリマーもしくはポリマーブレンドを含む又はそれから形成される医療用デバイスを提供する。また、本発明は、1つ又は複数の薬物を含む又は含まない、本発明の1つ又は複数のPEAポリマーもしくはポリマーブレンドによってコーティングされた医療用デバイスをさらに含む。このようなデバイスは、これに限定されないが、インプラント型または挿入型デバイス、例えばステント、外科用メッシュ、別のデバイス(例えばペースメーカー、除細動器、神経刺激器、インプラント型ポンプ、乳房インプラント)と併せて使用できるカバーリング、パウチ、ポケット、バッグなど、創傷閉鎖補助材、単独でまたは他の医療用デバイスと併せて使用するためのフラットシートまたはフィルム、ならびに任意の種類のカテーテルを含む。本発明で使用するようなコーティングは、存在する場合、デバイスの任意の表面に部分または完全コーティングとして配置可能であり、単層化または多層化することができる。コーティングは、使用または要求に適した1つ又は複数の薬物を含むおよび含まない、本発明の他のポリマーまたは他の生体適合性ポリマーとのブレンドを含むことができる。
【0019】
なおさらなる態様において、本発明は、本発明の医療用デバイス(1つ又は複数の薬物を含む又は含まない)を患者にインプラントすることまたは本発明の医薬組成物の治療的有効量を投与することによって、患者の障害または疾患を予防、治療または改善する方法を提供する。本発明のインプラント型または挿入型組成物および医療用デバイスは、心血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連障害、眼の疾患を治療もしくは改善するために、患者の身体部分、肢、組織もしくは臓器の解剖学的修復、再建、置換もしくは増強を行うために、またはパルス発生器を含むインプラント型デバイス、除細動器、インプラント型ポンプ、乳房インプラントなどを安定化するために使用することができる。したがって本発明の方法は、例えば瘢痕化、疼痛および感染を含む、同程度の未処置医療用デバイスのインプラントに関連する病的状態を予防または改善することができる。
【0020】
またなおさらなる態様において、本発明は、約2当量のアミノフェノールおよび約1当量の第1の二塩基酸をカップリング剤と、アミド結合を優先的に形成する時間および条件下で反応させて、アミノフェノール−ジアミド−アミノフェノールのトリマーを生成すること、トリマーを回収して、このトリマーを約1当量の第2の二塩基酸と第2のカップリング剤の存在下である時間にわたって、前記PEAポリマーを形成する条件下でさらに反応させることおよびポリマーを回収することによる、厳密に交互配置されたPEAポリマーを合成する方法に関する。この合成方法によって、PEAポリマー中の二塩基酸およびアミノフェノールを予測可能な構造的方式で容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ポリマーコーティングしたメッシュでのランダムポリマーおよび交互ポリマーの生理学的分解条件下で保持された質量をグラフで示す:(白四角)TEグルタレート交互、(黒四角)TEジグリコレートランダム、(白丸)TEジグリコレート交互、(黒丸)TEジグリコレートランダム。
【図2】ポリマーコーティングしたメッシュでのランダムポリマーおよび交互ポリマーの生理学的分解条件下で保持された分子量をグラフで示す:(白四角)TEグルタレート交互、(黒四角)TEグルタートランダム、(白丸)TEジグリコレート交互、(黒丸)TEジグリコレートランダム。
【図3】ポリマーコーティングしたメッシュでの3つの異なるランダムポリマーの、生理学的分解条件下で保持された分子量をグラフで示す:(黒ひし形)TEスクシネート、(黒四角)TEグルタレート、(黒丸)TEジグリコレート。
【図4】ポリマーコーティングしたメッシュでの4つのランダムポリマーの、生理学的分解条件下でのリファンピン放出の累積パーセンテージをグラフで示す:(黒ひし形)TEスクシネート、(黒四角)TEグルタレート、(黒丸)TEジグリコレート、(黒三角)TE:15Tグルタレート。
【図5】p(TEスクシネート)(黒三角)に対する、チロシン由来ジフェノール性ポリマー、p(デスアミノチロシルチロシンエチルエステルスクシネート)(黒ひし形)の生理学的条件下での分子量損失をグラフにより比較する。ポリマーp(デスアミノチロシルチロシンエチルエステルスクシネート)は、p(DTEスクシネート)と省略される。
【図6】p(10%デスアミノチロシルチロシン90%デスアミノチロシルチロシンエチルエステルスクシネート)(黒ひし形)、p(15%デスアミノチロシルチロシン85%デスアミノチロシルチロシンエチルエステルスクシネート)(黒四角)、およびTEスクシネート(黒三角)の質量損失をグラフで比較する。
【図7】本発明の各種のポリマーからのチロフィバンの放出をグラフで示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
定義および省略形:
本明細書に記載する化合物は不斉中心を有し得る。すべてのキラル形、ジアステレオマー形、およびラセミ形は本発明に含まれる。オレフィンなどの幾何異性体も本明細書に記載する化合物中に存在することができ、このようなすべての安定な異性体は本発明で考慮される。
【0023】
「安定な化合物」または「安定な構造物」は本明細書では、反応混合物からの有用な程度の純度までの単離に耐えるために、および製剤または使用のために、十分に頑強である化合物または分子を意味する。
【0024】
本明細書で使用する場合、文脈から明らかでない限り、「アルキル」は、規定された数の炭素原子を有する、分枝鎖および直鎖飽和脂肪族炭化水素基を意味する。直鎖および線形は互換的に使用される。本明細書で使用する場合、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。置換されているとき、置換基は、ハライド、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載するような追加の置換基、および本発明の分子の合成に適合する同様のものを含むことができる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」は、直鎖または分枝配置のどちらかであり、1個以上の不飽和炭素間2重結合を有する炭化水素鎖、例えばエテニル、プロペニルなどを意味する。「低級アルケニル」は、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基である。本明細書で使用する場合、「アルキニル」は、直鎖または分枝配置のどちらかであり、1個以上の炭素間3重結合を有する炭化水素鎖、例えばエチニル、プロピニルなどを意味する。「低級アルキニル」は、2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基である。炭素原子の数が規定されていない場合、ここでアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、1〜20個の炭素原子を有することを意味する。アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基はそれぞれ、2価であるアルキル、アルケニル、およびアルキニル基である。置換されているとき、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基の置換基は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載するような追加の置換基、ならびに本発明の分子の特性および合成に適合する同様のものを含むことができる。
【0026】
本明細書で使用する場合、「飽和または不飽和アルキル」は、任意の飽和度、すなわち完全飽和(アルキルのように)、1個以上の2重結合(アルケニルのように)または1個以上の3重結合(アルキニルのように)を有する、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基のいずれかを指す。
【0027】
アルキル基の例は、これに限定されるわけではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、ノニル、デシルなどを含む、アルキレンおよびアルケニレン基は、これに限定されるわけではないが、メチレン、エチレン、プロピレン、プロペニレン、ブチレン、ブタジエン、ペンテン、n−ヘキセン、イソヘキセン、n−ヘプテン、n−オクテン、イソオクテン、ノネン、デセンなどを含む。当業者は、多くの直鎖および分枝炭化水素基を熟知している。アルキニル基はエチニルおよびプロピニル基を含み、アルキニレン基は−C≡C−、−C≡C−CH−、−CH−C≡C−CH−、−CH−C≡C−CHCH−などを含む。
【0028】
本明細書で使用する場合、「アリール」は、少なくとも1個の芳香族炭素環を含有する任意の安定な6〜14員単環式、2環式または3環式環、例えばフェニル、ナフチル、インダニル、テトラヒドロナフチル(テトラリニル)などを意味する。置換されているとき、置換基は、ハライド、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、または本明細書に記載するような追加の置換基、ならびに本発明の分子の特性および合成に適合する同様のものを含むことができる。アリーレンは2価のアリール基を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「アルキルアリール」は、アリール基がアルキル基に結合される部分を指し、この部分が次に分子への置換基の結合点となる。例えばベンジルエステルは、フェニル環に付着したメチレンが式COOR(Rはベンジルエステルである)におけるエステルの酸素に結合されている、アルキルアリール部分を表す。この部分のアリール基は場合により、本明細書の定義に従って置換することができる。アルキルアリーレンは、アルキレン、アリーレンなどと同様に、2価のアルキルアリール基である。
【0030】
「置換された」という用語は、本明細書で使用する場合、指定された原子の1個以上の水素が、指定された原子の正常な価数を超えないという条件で、示された基から選択されたものによって置き換えられること、および置換によって安定な化合物が生じることを意味する。文脈から明らかでない限り、置換基が示されなければ、価数は水素によって満たされる。
【0031】
「ラジカル」、「基」、「官能基」、および「置換基」という用語は、いくつかの文脈で互換的に使用することが可能であり、共に使用して化学構造をさらに説明することが可能である。例えば「官能基」という用語は、化学構造に対して鎖中にある、ペンダント基である、および/または末端にあることができる化学構造可変部である、化学「基」または「ラジカル」を指すことができる。官能基は置換され得る。
【0032】
「ハライド」または「ハロ」基は、ハロゲン原子であり、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基およびヨード基を含む。「アルコキシ」という用語は、R−−O−−で表される少なくとも1個の酸素置換基を有するアルキル基を指す。
【0033】
ポリマーおよびそのサブ単位を呼ぶための本明細書で使用する省略形は、BnまたはBz、ベンジル、D、デス−アミノチロシン、dgまたはdlg、ジグリコレート、EまたはEt、エチル、glu、グルタレート、MまたはMe、メチル、P、4−ヒドロキシフェニルグリシン、PEG、ポリエチレングリコール、PPG、ポリプロピレンオキシド、succ、スクシネート、T、チロシン、およびTE、チロシンエチルエステルを含む。
【0034】
ポリマーの説明:
本発明は、生分解性PEAポリマーに関する。これらの合成ポリマーは、式
【化3】

によって表される1個以上の反復単位を含み、
式中
Rは−(CR−または−CR=CR−であり、
は水素、1〜20個の炭素原子を有する、飽和もしくは不飽和アルキル、アリール、アルキルアリールもしくはアルキルエーテル、または−(RO((CRO)−Rであり、
各Rは独立して、1〜30個の炭素原子を有する、2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルもしくはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−であり、
およびRは独立して、水素または1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキルであり、
は独立して、直鎖または分枝、低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
は独立して、直鎖または分枝、置換または非置換、飽和または不飽和低級アルキルであり、
芳香環は0〜4個のZ置換基を有し、そのそれぞれは独立してハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群より選択され、
Yは
【化4】

であり、
aは0〜10であり、
各qは独立して1〜4であり、
各rは独立して1〜4であり、および
各sは独立して1〜5000である。
【0035】
これらのポリマーは、式p(−AP−X−)によって一般に表すことができる、アミノフェノール単位および二塩基酸単位を有する生分解性PEAポリマーであり、式中、nは、ポリマー中の反復単位の実際の数または重量平均数である。アミノフェノール(AP)は、式Iに示す構造を有し、
【化5】

二塩基酸(X)は、式IIに示す構造を有する。
【化6】

【0036】
これらのモノマー単位(または合成経路によって他の前駆体)が縮合条件下で重合されるとき、得られるポリマーはエステル結合およびアミド結合の両方を有する主鎖と、(Rの選択によって)エステルまたは遊離酸を有する側鎖とを有する。ポリマーの反復モチーフは構造AP−Xを有するが、ポリマーのこの単純な表現は、アミノフェノールと二塩基酸との各種のカップリング順列を、すなわちアミノフェノールと二塩基酸との間のカップリングが、アミド結合を生成するためのAPのアミン官能基と酸基の1つとの間の反応によって起こるのか、またはエステル結合を生成するためのAPの水酸官能基と酸基の1つとの間の反応によって起こるのかを反映していない。したがってAP−X反復単位は、下の構造のどちらか(それぞれ「反復a」または「反復b」)によって表すことができる。
【化7】

【0037】
しかしこの単純な構造表現(−AP−X−)がこの単位の別の単位に対する相対関係を示していないのは、この単位をアミド結合またはエステル結合によってさらに共に結合することができるからである。したがって本明細書に記載するアミノフェノール部分および二塩基酸部分を含有する、本発明のポリマーの実際の構造は、合成経路の選択、カップリング剤の選択およびアミド結合またはエステル結合を形成する際の選択的反応性によって変わる。
【0038】
したがって本発明のポリマーは、反復aおよびbのランダムコポリマーまたは反復a、反復bもしくは反復aおよびb両方の厳密に交互配置されたコポリマーであり、特定のポリマー構造は本明細書に記載するような合成方法によって決定される。
【0039】
命名の目的で、反復aおよびbのランダムコポリマーは、単純な式p(−AP−X−)、AP−Xによってまたはランダムabポリマーと呼ばれ、このような名称は互換的に使用される。このポリマークラスの名称は、これらの表現に基づいているため、ランダムabポリマーは、開始物質とは無関係に、アミノフェノール部分とそれに続く二塩基酸部分に由来して命名される。例えばアミノフェノール部分としてのチロシンエチルエステル(TE)と二塩基酸部分としてのコハク酸とのランダム共重合によって作製されたポリマーは、p(TEスクシネート)またはTEスクシネートと呼ばれる。二塩基酸部分がグルタル酸に変更された場合、このランダムコポリマーはp(TEグルタレート)またはTEグルタレートになる。さらに明瞭にするために、または強調するために、例えばTEスクシネートランダムまたはp(TEスクシネート)ランダムのように、ランダムという用語がポリマー名に付加され得る。ポリマーが名称の後に何も付けずに呼ばれる場合、ここでそのポリマーはランダムコポリマーである。
【0040】
これらのモノマー単位から得ることができる、2つの厳密に交互配置されたコポリマーのクラス:(1)同等の形式である、「反復a」、したがって形式(a)もしくは「反復b」、したがって形式(b)のどちらかである、単一の反復の直鎖列、または(2)交互配置された「反復a」および「反復b」の、したがってこれらのポリマーに対する同等の表現である、形態(ab)または(ba)の直鎖列がある。すべての場合で、nは反復単位の数である。ポリマーでは、nは通常、反復単位の分子量で割ったポリマーの平均分子量から計算される。
【0041】
命名の目的で、(a)形態の厳密に交互配置されたポリマーは、p(−O−AP−X−)または交互「a」ポリマーと呼ばれる。交互「a」ポリマーが発生するのは、反応条件が、アミノフェノールの遊離アミンが反応条件によって制御されるように最初に二塩基酸(または他の適切な試薬)と反応して、アミド結合を形成し、さらなる反応のために水酸基を遊離させたままにしておくようなときである。例えばアミノフェノール部分としてのチロシンエチルエステル(TE)と(二塩基酸部分を与えるための)無水コハク酸との共重合によって作製されたポリマーは、交互「a」ポリマーを生じさせ、本明細書ではp(O−TEスクシネート)またはO−TEスクシネートと呼ばれる。
【0042】
命名の目的で、(ab)形態のポリマーは、aおよびb反復を異なる二塩基酸と共に有するときには、p(−AP−X−AP−X−)、p(AP−X−APX)またはAP−X−APXと呼ばれ、aおよびb反復を同じ二塩基酸と共に有するときには、「p(−AP−X−)交互」またはAP−X交互と呼ばれる。
【0043】
2つの異なる二塩基酸を有するポリマーは、例えば2当量のアミノフェノールを1当量の第1の二塩基酸とアミド結合形成に有利な条件下で反応させることと、アミノフェノール2単位および二塩基酸1単位からなるために本明細書ではトリマーとも呼ばれる反応生成物、すなわち構造AP−X−APを有する化合物を単離することによって作製できる。このトリマーを第2の二塩基酸と、第2の二塩基酸が第1の二塩基酸と異なる場合にポリマーp(−AP−X−AP−X−)を生成する、または第2の二塩基酸が第1の二塩基酸と同じである場合にポリマーp(−AP−X−)交互を生成する重合条件下で反応させる。例として、TEおよびコハク酸から作製された最初のトリマーは、TE−スクシネート−TEと呼ばれる。TE−スクシネート−TEとグルタル酸との反応によってポリマーp(TE−スクシネート−TEグルタレート)が生成されるのに対して、コハク酸との反応によってポリマーp(TEスクシネート)交互が生成される。本発明のポリマーは、混合アミノフェノール反復、混合二塩基酸反復および混合トリマー反復、またはこのような混合物の任意の組合せから作製されたポリマーも含む。これらの複合ポリマーでは、混合部分は、2つの部分の名称の間にコロンを配置して、部分の一方のパーセンテージを示すことによって呼ばれる。例えばp(TE:10TBzスクシネート)ランダムは、ランダム合成条件下での90%チロシンエチルエステルおよび10%チロシンベンジルエステルと当モル量の二塩基酸のコハク酸との混合物を使用することによって作製されたポリマーである混合された第2の二塩基酸を有する。厳密に交互配置された(ab)ポリマーの例は、p(TE−ジグリコレート−TE10PEG−ビス−スクシネート:アジペート)である。このポリマーは、TE−ジグリコレート−TEトリマーを調製することと、これを10%PEG−ビス−コハク酸および90%アジピン酸の混合物と共重合することによって作製される。混合トリマーを含む厳密に交互配置された(ab)ポリマーの例は、p(TE−スクシネート−TE:35TE−グルタレート−TEスクシネート)である。このポリマーは、各トリマーの個別の合成を行うことと、単離したトリマーを示された比(65mol% TE−スクシネート−TE/35モル% TE−グルタレート−TE)で混合することと、等モル量のコハク酸と共重合することとによって作製される。このように複雑であるため、特に厳密に交互配置された(ab)ポリマーについて、各種の構成要素および相対量を表に示すほうが容易であることが多い。表1にいくつかの厳密に交互配置された(ab)ポリマーの例を示す。表1において、Tは合成後のポリマーのガラス転移温度である。Mol.Wt.は、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定したような合成後のポリマーの重量平均分子量(M)である。
【0044】
本発明のポリマーの例は、これに限定されるわけではないが、表1に示したポリマーならびに(1)ポリマー中のアミノフェノール単位がチロシンエステル、例えばチロシンメチルエステル、チロシンエチルエステル、チロシンベンジルエステル、遊離チロシン、または4−ヒドロキシフェニルグリシンのメチル、エチル、プロピルもしくはベンジルエステルおよび4−ヒドロキシフェニルグリシンによって提供されるポリマー、ならびに(2)二塩基酸単位がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ジグリコール酸、ジオキサオクタン酸、PEG酸またはPEG−ビス−二塩基酸(例えばPEG−ビス−スクシネートまたはPEG−ビス−グルタレート)であるポリマーを含む。混合アミノフェノール反復を含むポリマーでは、ポリマーは約5〜約40%または約10〜約30%の第1のアミノフェノール反復を含有し、残りは第2のアミノフェノール反復である。混合二塩基酸反復を含むポリマーでは、ポリマーは約10〜約45%または約20〜約40%の第1の二塩基酸反復を含有し、残りは第2の二塩基酸反復である。混合トリマー反復を含むポリマーでは、ポリマーは約5〜約40%または約10〜約30%の第1のトリマーを含有し、残りの第2のトリマーである。上述のあらゆる可能な順列から作製したポリマーが本発明によって考慮される。本発明の詳細なポリマーのさらなる例は、p(TEスクシネート)、p(TEスクシネート)交互、p(TEグルタレート)、p(TEグルタレート)交互、p(TEジグリコレート)、p(TEジグリコレート)交互、p(TE:15Tグルタレート)、T 78、Mol wt.74kDa、およびp(TE:15TBzグルタレート)を含む。この最後のポリマーは、p(TE:15Tグルタレート)の調製で使用される中間ポリマーの例である、すなわちTBzのベンジルエステルは、公知の方法を使用して、例えば水素化によってベンジル基を除去することによって、遊離カルボン酸に変換される。
【0045】
本発明の他のポリマーは、厳密に交互配置されたポリマーはTE−スクシネート−TE、TE−グルタレート−TE、TE−アジペート−TE、TE−ジグリコレート−TE、およびTE−X−TEモノマーからなる群より選択されるトリマーを用いて合成されたポリマーを含み、ここでXは、他の種を含む又は含まないPEG単位、例えば2当量の二塩基酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ジグリコール酸またはその他との縮合によって2官能化されたPEGからなる。これらのトリマーのいずれもコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ジグリコール酸、ジオキサオクタン酸、PEG酸およびPEG−ビス−二塩基酸(例えばPEG−ビス−スクシネートおよびPEG−ビス−グルタレート)からなる群より選択される二塩基酸反復、またはこれらの二塩基酸もしくは他の二塩基酸の任意の混合物と共重合することができる。
【0046】
これらのポリマーのいくつかのガラス転移温度は実施例で与えられる。さらにp(TEスクシネート)のTは84℃であり、p(TE:15Tグルタレート)のTは78℃である。
【0047】
【表1】

【0048】
本発明のポリマーは、生体適合性および生分解性である。生体適合性ポリマーは、生体組織または生体系と適合性であり、動物もしくはヒトにおいてまたは動物もしくはヒトによっての使用を許容されるポリマーである。したがって生体適合性ポリマーは、著しいまたは許容されない程度の生理学的危害を一切引き起こすことはない。例えば生体適合性は、生体適合性ポリマーがいずれのもしくはいずれの著しい量の炎症または免疫反応を引き起こさない、または生体組織もしくは生体系に対して毒性もしくは有害でないことを示すことによって評価できる。したがって生体適合性ポリマーは、生体対象または組織に有害な影響を及ぼさずに、摂取、インプラント、挿入、注射、配置またはそうでなければ使用することができる。
【0049】
本明細書で使用する場合、「生分解性ポリマー」は、その作用がポリマーの部分的または完全にかかわらず分解および/または破壊を引き起こす、生理学的条件下で加水分解もしくは酸化に不安定な結合を有する、または酵素作用もしくは他のインビボ破壊プロセス、またはそのいずれかの組合せを受けやすいポリマーである。生分解性であるポリマーが、例えば破壊生成物の性質およびサイズならびに他の因子に依存し得る、各種の吸収時間を有することが理解されるべきである。
【0050】
本明細書で使用する場合、「吸収性ポリマー」は、(1)生理学的条件下で、すなわち水、酵素または他の細胞プロセスの存在下で不安定である少なくともいくつかの結合を有する反復主鎖単位を有する、生分解性であるポリマーならびに(2)全体またはその分解生成物としてのポリマーがインビボまたは生理学的条件下で任意の機構(吸収、可溶化、毛管作用、浸透圧、化学作用、酵素作用、細胞作用、溶解、崩壊、腐食など、またはこれらのプロセスの任意の組合せを含む)によって対象にポリマーの所期の生物学的使用に適した生理学的に関連する時間尺度で吸収および/または同化され得る、ポリマーである。
【0051】
吸収性ポリマーは、破壊したときに、それ自体がポリマー性またはモノマー性であり得るより小型の断片を生成する、切断可能な主鎖結合を含有する。これらのより小型の断片は分解するか、またはさらに分解することが可能であり、生理学的使用部位において水溶性となるか、またはマクロファージによる貪食、細胞による処理もしくはそうでなければ細胞環境または組織からの除去が可能なサイズとなり、当初のインプラント部位からのポリマーの完全なまたは実質的に完全な分解および消失(すなわち吸収)が引き起こされる。吸収は例えば、生理学的条件下でのポリマーの質量損失または重量損失を当分野で公知の方法で測定することによって評価することができる。
【0052】
吸収性ポリマーが完全にまたは実質的に吸収されるとき、ここでポリマー(しかし必ずしもそのモノマー反復単位またはそのより小型のポリマー断片ではない)はもはや存在しないか、またはもはや対象中でただちに検出できない。例えばポリマーがインプラントされた医療用デバイス表面のコーティングである場合、ポリマーはそのデバイス表面にはもはや存在しない、または検出できない。もちろん、特に吸収プロセスの早期段階で評価した場合には、部分吸収も観察され得る。同様にポリマーが医療用デバイス(例えば縫合材料、ステープル、デバイスカバーリング、インプラント、プラグ)または徐放性組成物(例えば薬物製剤またはワクチン担体)に形成される場合、ここでデバイスまたは組成物はもはや生理学的使用部位にて存在し得ない、または検出され得ない。
【0053】
吸収の時間尺度は所期の用途によって変る。本発明のポリマーは、生理学的条件での例えば2、3日から数週間または数カ月または数年などのより長期間の範囲内での、迅速な吸収を提供するように操作することができる。医学的に関連する期間は、所期の用途によって変り、例えば1〜30日、30〜180日および1〜24カ月、ならびに5日、1、2、3、4、5または6週間、2、3、4、6か月以上などの間のすべての時間を含む。したがって本発明は、生理学的条件下で、医学的に関連する時間尺度で、基R、R、Rなどの適切な選択に基づいて、吸収することができる生体適合性生分解性ポリマーを含む。
【0054】
したがって本発明のポリマーは、式によって表される1個以上のアミノフェノール−二塩基酸反復単位を含み、
【化8】

式中、変数は上で定義した通りであり、基−C(O)−R−C(O)−は、主鎖において窒素および酸素とひとまとめにされて、ポリマーのポリエステルアミド主鎖のエステル結合およびアミド結合を形成する。芳香環に結合された酸素は、芳香環のR基に対してオルト、メタまたはパラ位にあることができ、好ましくはパラ位にある。
【0055】
さらに詳細には、Rは−(CR−または−CR=CR−、式中、aは0〜10である。aがゼロである場合、ここでRは結合である。各RおよびRは独立して、水素または1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝低級アルキル基である。例えばRおよびRがどちらも水素であり、aが2である場合、ここでその部分はエチレンである。特定の実施形態において、R基はこれに限定されるわけではないが、結合、メチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレンを含む。
【0056】
は、水素、1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和アルキル、アリール、アリールエステル、アルキルアリールまたはアルキルエーテル、または−(RO((CRO)−Rであり、後者の部分はアルキレンオキシドを形成する。
【0057】
特定の実施形態において、R基は、水素、メチル、エチル、プロピル,ブチル(t−ブチルを含む)、ヘキシル、アリル、ベンジル、およびアルキレンオキシド(例えばPEG)である。Rがアリールエステルであるとき、ここで置換基は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンなどを含むパラベンであることができる。別のアリールエステルは、デスアミノチロシルエステル、例えばデスアミノチロシルメチルエステル、デスアミノチロシルエチルエステルなどである。
【0058】
がアルキレンオキシドであるとき、その基は式−(RO((CRO)−R、(r、q、s、R、R、RおよびRは本明細書で定義する通りである)によって表すことができる。これらの式は、ポリエチレングリコール鎖(PEG)、例えばCHO(CHCHO)CH−または−CHCHO(CHCHO)CHCH−およびポリプロピレングリコール(PPG)鎖、例えばCHCHCHO(CHCHCHO)CHCHCH−などを含む。ポリ(アルキレングリコール)の例は、これに限定されるわけではないが、PEG、PPG、ポリ(テトラメチレングリコール)、PLURONIC(登録商標)ポリマーならびにその任意の誘導体、類似体、ホモログ、コンジナー、塩、コポリマーおよび組合せを含む。周知であるように、アルキレンオキシドは、作製可能であるか、または各種のサイズおよび組合せで市販されている。PEGの場合、サイズはPEG200、PEG400、PEG600、PEG1000などを含む。PLURONIC(登録商標)ポリマーの場合、ポリエチレンブロックおよびポリプロピレンブロックの比ならびに全体のサイズを変化させることができる。このようなすべての変化は、本発明で使用するために考慮される。
【0059】
全体として、RおよびRの選択によってアミノフェノール部分の性質が決定される。本発明のポリマーにおける好ましいアミノフェノール部分は、チロシンメチルエステル(TM)、チロシンエチルエステル(TE)、チロシンベンジルエステル(TBz)およびチロシン(T)を含み、これはRがCHであり、Rがそれぞれメチル、エチル、ベンジルまたは水素であるときに形成される。本発明のポリマーの別のアミノフェノール部分は、4−ヒドロキシフェニルグリシンおよびそのエステル、例えばPE、PMおよびPBzである。
【0060】
は独立して、1〜30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、2価アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。Rは、二塩基酸部分、すなわち重合方法に応じて、2個のアミド結合、2個のエステル結合またはアミド結合およびエステル結合によって連結された−C(O)−R−C(O)−の一部を形成する。
【0061】
したがってRは、2価炭化水素基であり、直鎖もしくは分枝,置換もしくは非置換であることができる。このような基は、1〜30個の炭素原子を有するアルキレン、アルケニレン、アリーレン、アルキルアリーレン部分ならびにより大型の2価アルキレンオキシドまたはアリーレンオキシド部分(これらの基の反復単位の数に基づいて)を含む。一例として、Rが2価アルキレンオキシドであるとき、その基は式−(RO((CRO)(R−、(r、q、s、R、R、RおよびRは本明細書で定義する通りである)によって表すことができる。この部分は、ポリエチレングリコール鎖(PEG)、例えばCHO(CHCHO)CH−または−CHCHO(CHCHO)CHCH−およびポリプロピレングリコール鎖、例えばCHCHCHO(CHCHCHO)CHCHCH−などを含む。便宜上、これらの鎖はPEG酸と呼ばれる(これらの部分を縮合する方法のため)。さらにRは、PEG−ビス−酸と呼ばれる、式−(RCO((CRO)CO(R−によって表すことがてきる。詳細な実施形態において、この式は、PEGビス−スクシネートを二塩基酸ベース部分として有するポリマーを与える。PEGビス−スクシネートは、二塩基酸のカルボニルとひとまとめにされて、式
−C(O)CHCHC(O)O(CHCHO)C(O)CHCHC(O)−
によって表され、どちらのRもエチレンであり、r、RおよびRは共にエチレン基を形成する。どちらのRもn−プロピレンであることを除いて式が同じである場合、ここで相当する部分はPEGビス−グルタレートである。
【0062】
詳細な実施形態において、R(すなわちHO−C(O)−R−C(O)−OH)によって形成された二塩基酸部分は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸、ならびにジグリコール酸(式中、Rは−CHOCH−である)、ジオキサオクタン酸(Rは−CHOCHCHOCH−である)、アルキレンオキシド誘導体、例えばPEG、PEGビス−スクシネートなどを含む。本発明により、これらの二塩基酸単位は重合したときにアミドまたはエステル主鎖結合を有する。
【0063】
およびRも基−(RO((CRO)(R−および(RCO((CRO)CO(Rに存在し、各RおよびRは独立して、水素または1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝低級アルキル基である。これらの官能基において、RおよびRがどちらも水素であり、rが2であるとき、ここでその部分はエチレンであり、酸素とひとまとめにされたときにPEGの反復エチレンオキシド部を形成する。RおよびRがどちらも水素であり、rが3であるとき、ここで酸素とひとまとめにされて、これらはPPGのプロピレンオキシド反復を形成する。−(RO((CRO)(R−および−(RCO((CRO)CO(R−では、大半の実施形態において、RおよびRは水素であり、rは2または3である。
【0064】
は独立して、直鎖もしくは分枝低級アルキレンまたはアルケニレン基である。好ましい実施形態において、Rはメチレン、エチレンまたはプロピレンである。
【0065】
は独立して、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換、飽和または不飽和低級アルキルである。特定の実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル(t−ブチル、n−ブチル、イソブチル)などである。
【0066】
本発明により、アミノフェノールのアリール環は0〜4個のZまたはZ置換基を有することができる。芳香環のある位置の価数がそうでなければ満たされない場合、ここでその位置は水素原子を有する。ZまたはZはそれぞれ独立して、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群より選択される。
【0067】
またはZの少なくとも一方が存在し、臭素またはヨウ素であるとき、ここでポリマーは放射線不透過性であり、米国特許第6,475,477号明細書に記載された用途を有する。例えば放射線不透過性医療用デバイスの使用によって、非侵襲技法でデバイスの生分解および吸収(完全吸収性であるデバイスの場合)を含む、デバイスの存在および/または消失をモニターすることができる。同様に、本発明のポリマーから形成された放射線不透過性ミクロスフェアは、造影剤としてまたは薬物送達に有用であり得て、再びx線、CATスキャンなどの非侵襲技法によってモニターすることができる。
【0068】
このようなポリマーは、一般的なハロゲン化反応を使用して重合前にハロゲン化されているアミノフェノール部分から調製することができる。このような反応は芳香環でハロゲン原子にとって好ましい位置(例えばオルト)を有する傾向があるが、ハロゲン原子は任意の利用可能な位置にあり得ることが考慮される。
【0069】
は、保護水酸基、保護アミノ基および保護カルボン酸基でもあることができる。本発明の使用に加えて、いくつかの例において、このような保護置換基を有するポリマーは、本発明の他のポリマーを調製するための中間体として使用することができる。OH基、NH基およびCOOH基の保護基は当分野で周知であり、これらが安定であり、かつ本発明のポリマーを生成するのに使用される合成方法と適合するという条件で、いずれも本発明による使用に好適である。
【0070】
アミノフェノールおよび二塩基酸の2官能性のために、塩基性モノマー単位(ここでは任意に反復aと呼ぶ)は、別の単位aを添加することができるか、または次のモノマー単位として反復bを添加することができるかのどちらかである。したがって変数Yはこれを反映して、アミド結合を有する反復a(左下)またはエステル結合を有する反復b(右下)として定義される。
【化9】

ランダムポリマーでは、次の各Yはランダムに「反復a」または「反復b」のどちらかである。厳密に交互配置された(a)ポリマーでは、Yは常に「反復a」である。厳密に交互配置された(ab)ポリマーでは、Yは常に「反復b」である。さらに各Rは、ポリマーの種類および使用した異なる二塩基酸モノマーの数に応じて、同じまたは異なることが可能である。
【0071】
各aの値は独立して0または整数1〜10の1つである。aがゼロであるとき、対応する基は省略され、炭素単結合が存在する。各qおよびrの値は独立して、整数1、2、3または4の1つである。
【0072】
各sの値は独立して、約1〜約5000であり、アルキレンオキシド鎖の反復単位の数を決定する。したがってsは、1からまたは5から約10にまで、約15にまで、約20にまで、約30にまで、約40にまで、約50にまで、約75にまで、約100にまで、約200にまで、約300にまで、約500にまで、約1000にまで、約1500にまで、約2000にまで、約2500にまで、約3000にまで、約4000にまでおよび約5000にまで及ぶことができる。さらにアルキレンオキシド鎖の長さが分子量、例えばPEG200、PEG400、PEG600などによって示されるとき、ここでsは整数である必要はないが、ポリ(アルキレンオキシド)の引用した(または測定した)分子量に基づくアルキレンオキシド反復単位の平均数を表す、小数値として示すこともできる。
【0073】
したがって、一実施形態において,本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化10】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化11】

であり、
式中、RおよびR’は同じであり、R’は−(CR−または−CR=CR−であり、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0074】
別の実施形態において、本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化12】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化13】

であり、
式中、RおよびR’は異なり、R’は−(CR−または−CR=CR−であり、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0075】
別の実施形態において、本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化14】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化15】

であり、
式中、RおよびR’は同じであり、R’は−(CR−または−CR=CR−であり、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0076】
別の実施形態において、本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化16】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化17】

であり、
式中、RおよびR’は異なり、R’は−(CR−または−CR=CR−であり、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0077】
なお他の実施形態において、本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化18】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化19】

であり、
式中、RおよびR’は同じであり、独立して−CH−O−CH−、−CHCHCH−、−CHCH−から選択され、R’は−(CR−または−CR=CR−であり、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0078】
なお他の実施形態において、本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化20】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化21】

であり、
式中、RおよびR’は異なり、独立して−CH−O−CH−、−CHCHCH−、−CHCH−から選択され、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0079】
なお他の実施形態において、本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化22】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化23】

であり、
式中、RおよびR’は同じであり、独立して−CH−O−CH−、−CHCHCH−、−CHCH−から選択され、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0080】
なお他の実施形態において、本発明のポリマーは、構造Aのポリマーを含み:
【化24】

式中、ZはHであり、Rは−CH−であり、Rは低級アルキルであり、Yは:
【化25】

であり、
式中、RおよびR’は異なり、独立して−CH−O−CH−、−CHCHCH−、−CHCH−から選択され、R’は、水素、低級アルキル、またはベンジルであり、Z’は、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、およびR’は、1〜30個の炭素原子を有する2価、直鎖もしくは分枝、置換もしくは非置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アルキルエーテルまたはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−である。
【0081】
本発明による特定のポリマーの例を下の表2に示す:
【0082】
【表2A】

【表2B】

【0083】
本発明のポリマーは、生体適合性および生分解性であることができる。ヘテロポリマー(またはコポリマー)を作製するために、ポリマー命名の文脈でも記載したように、アミノフェノールおよび/または二塩基酸(もしくは適切な開始物質)の混合物を使用して本発明のポリマーを合成することができる。
【0084】
ポリマーがコポリマーであるとき、ポリマーは少なくとも約0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15%から約30、40、50、60、75、90、95または99%までの任意の範囲の組合せで、少なくとも約0.01%〜100%の反復モノマー単位を含有する。ある実施形態において、ポリマーのアミノフェノール部分における遊離酸形態の反復単位の範囲は約5〜約50%であり(すなわちRはHである−Rがベンジルであり、ベンジルは次に従来の合成方法、例えば加水分解によって除去される中間体によって調製)、残りのR基はアルキルまたは加水分解に対して安定である他のエステルである。これらのポリマーでは、遊離酸の好ましい範囲は約10〜約30%、さらに好ましくは約10または約15%である。
【0085】
代わりにまたは加えて、コポリマーは二塩基酸部分の様々な比を有することができるので、混合物は本明細書に記載する約20%〜約80%の少なくとも1つの二塩基酸を有し、好ましくは本明細書に記載する2つ以上の二塩基酸の混合物である。好ましい混合二塩基酸は、各種のアルキレンオキシド型部分の組合せ、例えばPEG酸もしくはPEG−ビス−アルキル酸またはこれらのアルキレンオキシド型部分と他の、特に小型の二塩基酸、好ましくは必ずしもというわけではないが、天然型二塩基酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸およびジグリコール酸との組合せである。アルキレンオキシド混合物では、混合物は約20、25、30、35、40、45〜約50%の1つのアルキレンオキシドを、多くの実施形態において、約50%の各アルキレンオキシドを含有する。アルキレンオキシド−他の二塩基酸の混合物では、混合物は約20、25、30、35、40、45または50%のアルキレンオキシドを含有し、残りは他の二塩基酸である。これらの組合せでは、大半の実施形態におけるアルキレンオキシドの量は、約20〜約40%である。
【0086】
さらにアミノフェノールのエステル部分は、アルキルエステルもしくは別のクラスのエステル、例えばアルキルアリールエステル、またはアルキレンオキシド鎖もしくはエーテル鎖を有するエステル、または別の適合する官能基を使用することによって変化させることができる。このエステル部分を遊離酸に変換するために、米国特許第6,120,491号明細書に記載されているように加水分解によって除去できるベンジルエステル(また他の容易に加水分解可能な部分)を使用して、またはポリマーの主鎖を加水分解することなくベンジル基を優先的に除去する他の技法によって、ポリマーを合成することができる。したがって本発明のポリマーは、各種の置換基の間で変動を有するアミノフェノールと二塩基酸の混合物によって作製することが可能であり、すなわち相違は反復単位のR、R〜R10、Zまたは他の変数のいずれかに存在することができる。最後に、コポリマー中の他のモノマー単位は、このような部分がポリマーの特性を失わず、共重合してアミノフェノールおよび二塩基酸部分とのポリマーを形成できるという条件で、実質的に異なっていてもよい。
【0087】
本発明のポリマーの破壊は、当分野で公知のインビトロまたはインビボ方法を使用して多種多様の方法で評価することができる。インビトロ方法によってインビボ分解を模倣することが有用であり得る。例えば37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中でのポリマーコートデバイス(または主に本発明のポリマーから形成された組成物またはデバイス)のエージングは、加水分解性分解プロセスを再現し得る。質量損失は、37℃のPBS中に配置されているデバイス片、ポリマーまたは他の関連物質のフィルムの重量損失測定値を使用してインビトロで、またはポリマーが体液に暴露されるように好適な多孔質容器内に材料を皮下的にインプラントすることによってインビボで評価することができる。生理学的媒体または外植片容器からの定期的なデバイスの取出しと、続いての乾燥および秤量によって、材料の質量損失に関連する情報が生じる。分子量損失は、分子量を決定するために、外植され、乾燥させて、およびGPCにかけた試料から所定の時点に分子量を評価することによって測定することが可能である。破壊生成物の特性も当業者に公知の方法によって決定することができる。さらに必要に応じて、インビボ動物モデルを使用して、インビボおよびインビトロ分解挙動を相関させることができる。
【0088】
合成:
本発明のポリマーは、ポリマー化学分野で公知の技法を使用して、多種多様の方法によって合成できる。4つの方法が以下で説明されるが、これらの方法の変形は、当業者の知識の範囲内である。
【0089】
これらの第1の方法は、トリマージオールを合成することと、そのジオールを二塩基酸と縮合して所望のポリマーを生成することとによって、厳密に交互配置された(ab)ポリマーを提供する。第1のステップは、HOBT(ヒドロキシベンゾトリアゾール)などの穏やかなカップリング剤を使用することによって、エステル結合形成よりもアミド結合形成に有利な条件下で行われる。したがってモノマーを反応させてトリマーを生成する。
HO−AP−NH+HO−C(O)−R2a−C(O)−OH→HO−AP−NH−C(O)−R2a−C(O)−NH−AP−OH。
トリマーは以下に示す構造によって表すこともできる:
【化26】

トリマーは精製され、DPTS(4−ジメチルアミノピリジニウム4−トルエンスルホナート)などのより強力なカップリング試薬を使用して第2の二塩基酸、HO−C(O)−R2b−C(O)OHと反応させて、以下に示す厳密に交互配置された反復単位を得る:
[O−AP−NH−C(O)−R2a−C(O)−NH−AP−O−C(O)−R2b−C(O)]
【0090】
第2の方法は、最初にトリマーを保護アミンによって合成することによって、厳密に交互配置されたポリマーである(ab)ポリマーも生成する。これはアミン保護アミノフェノールに二塩基酸をカップリングすることと、各末端に保護アミンを有する得られたトリマーを単離することと、アミンを脱保護することと、縮合条件下で第2のジオールと反応させることとによって達成される。例えばHO−AP−NHYおよびHO−C(O)−R2a−C(O)OHはカップリングされてYHN−AP−O−C(O)−R2a−C(O)−O−AP−NHYを生成し、式中、Yはトリマー中のエステル結合の存在下で除去することができる保護基であり、APは水酸基およびアミン基以外のアミノフェノール構造の残りの省略形である。脱保護の後、第2の二塩基酸、HO−C(O)−R2b−C(O)OHを使用してこのトリマーを重合して、厳密に交互配置された(ab)ポリマーを形成する。
【0091】
第3の方法は、アミノフェノールを無水物と反応させて、以下の例示的な反応スキームに示すような遊離OH基および遊離COOH基を有するダイマーを生成することによって、厳密に交互配置された(a)ポリマーを生成する:
HO−AP−NH+RC(O)−O−C(O)−R→HO−AP−NH−C(O)−R−COOH。
反応生成物を精製して、さらなるカップリング試薬を添加して自己縮合を進行させて、以下に概略的に示すような、その中で二塩基酸が片側にアミド結合を有し、反対側にエステル結合を有するポリマーを生成する:
−(−O−AP−NH−C(O)−R−C(O)−)(−O−AP−NH−C(O)−R−C(O)−)(−O−AP−NH−C(O)−R−C(O)−)−。
【0092】
第4の合成方法は、アミノフェノールおよび二塩基酸のランダムコポリマーを生成する。この方法では、例えば米国特許第5,216,115号明細書、米国特許第5,317,077号明細書、米国特許第5,587,507号明細書、米国特許第5,670,602号明細書、米国特許第6,120,491号明細書、米国再発行発明第37,160号明細書、および米国債発行発明第37,795号明細書ならびに文献、他の特許および特許出願に記載されているように、等モル量の各化合物をカップリング試薬、好ましくは強反応性カップリング試薬、および触媒の存在下で反応させる。当業者は本発明のポリマーを合成するために、これらの手順をただちに変更することができる。これらのポリマーは一般に、低〜中程度の分子量(30〜60kDa)を有する。
【0093】
ポリマーおよび合成中間体は、抽出、沈殿、濾過、再結晶などの通常の方法を使用して当業者が精製することができる。
【0094】
上述の方法のカップリング剤の例は、これに限定されるわけではないが、EDCI・HCl(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DPTSと組合せたDIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)、PPTS(ピリジニウムトシレート)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)を含む。EDCI・HClの使用は、上述の第1の合成方法の第1のステップでトリマーを生成するために好ましい。好適な溶媒は、これに限定されるわけではないが、純粋の、またはより少量のNMPもしくはDMFと組合せた、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンを含む。
【0095】
したがって上述の第1の合成方法は、約2当量のアミノフェノールおよび約1当量の第1の二塩基酸をカップリング剤と、アミド結合を優先的に形成して、アミノフェノール−ジアミド−アミノフェノールのトリマーを生成する時間および条件下で反応させること、トリマーを回収して、このトリマーを約1当量の第2の二塩基酸と第2のカップリング剤の存在下である時間にわたって、前記PEAポリマーを形成する条件下でさらに反応させることおよびポリマーを回収することによって、対応するランダムポリマーよりも分子量が少なくとも40〜100%大きい、厳密に交互配置されたPEAポリマーを合成する方法に関する本発明の方法を提供する。この合成方法によって、PEAポリマー中の二塩基酸およびアミノフェノールを予測可能な構造的方式で容易に変更することができる。
【0096】
この方法では、第1のカップリング反応は、アミド結合形成に有利な条件下で行われる。このような条件は穏やかなカップリング条件を使用して、より弱いカップリング試薬を用いる。このステップに特に有用なカップリング試薬は、有機溶媒中で共触媒HOBtを用いたEDCI・HClである。反応時間は、反応を完了に近づける、または完了に至らせるように選択すべきであり、すなわちポリマーのさらなる分子量の増加がほとんどまたは全く見られなくなるまでである。代表的な反応時間は、少なくとも一晩(12〜16時間)〜約(24〜48時間)で変動し、当業者がただちに決定することができる。反応温度も当業者がただちに決定することができる。第2のカップリング反応では(トリマーの単離後)、より強力なカップリング剤を使用してエステル結合形成を促進する。いくつかの場合では、反応がある時間にわたって進行した後に、第2の反応は、第2の二塩基酸の少量の追加量(1〜10%)を用いて反応をスパイクすることによって、追加の分子量の増加を達成する。
【0097】
この方法では、第1および第2の二塩基酸は同じまたは異なることが可能であり、どちらの二塩基酸も2つ以上の異なる二塩基酸の混合物を含むことができる。同様に、トリマーの混合物を使用することができる。有用なカップリング剤および溶媒の例は、上または実施例に記載されている。
【0098】
使用:
本発明のポリマーは、生体適合性生分解性ポリマーが必要なときに、医療用デバイスをコーティングするための、完全または部分吸収性医療用デバイスを形成するための、特異的な方式で薬物を送達するための(このようなデバイスと併せて、またはポリマー、薬物および他の薬剤を含む医薬組成物の一部としてのどちらかで無数の生物学的使用を有する。ポリマーは薬物が存在しなくても有用であることを理解すべきである。例えば外科用メッシュへのポリマーコーティングは、メッシュの剛性を向上させ、これによりインプラント時の取扱いが容易になり、それでもなお長時間にわたって軟化して、患者にとって快適であるメッシュが提供される。さらにポリマーコーティングされたフラットメッシュは、3次元形状に形成することが可能であり、これは外科的修復で有用であり得る。完全吸収性デバイスは、溶解前のある期間にわたって強度を与えることを目的とする縫合糸として、一時的な創傷閉鎖、例えば大腿骨プラグなどとして使用することができる。
【0099】
本発明のポリマーのさらなる使用は例えば、多種多様の用途のためにコーティングされた外科用メッシュについて記載されている、2007年2月8日に出願されたU.S.Serial No.11/672,929、心調律管理デバイス、神経刺激装置ならびに他のインプラント型医療用デバイスの完全および部分吸収性カバーリング、パウチ、バッグおよびコーティングメッシュについて記載されている、2006年11月6日に出願されたU.S.Serial No.60/864,597、ならびに乳房インプラント用の吸収性カバーリングについての2007年3月29日に出願されたU.S.Serial No.60/908,960に詳細に記載されている。
【0100】
本発明の組成物を使用して、(i)生分解性ポリマーから利益を得ることができる用途に十分な機械特性を有する、(ii)ポリマー担体から得た追加の分子を実質的に含まない薬剤を放出することができる、(iii)所定の放出速度および吸収速度を有するように設計することができる、ならびに(iv)生物活性および/または生物有用性であるだけでなく、ポリマーから形成された医療用製品もしくはコーティングの物理特性および/または機械特性も制御する薬剤と組合せることができる、医療用製品およびコーティングを形成することができる。
【0101】
ブレンド:
薬物放出および吸収特徴を操作する追加の方法は、ポリマーをブレンドすることである。したがって本発明は、本発明のポリマーの他の生体適合性ポリマー、例えば他の生分解性ポリマーとのブレンドを提供する。これらの他のポリマーは、これに限定されるわけではないが、とりわけポリ乳酸、ポリグリコール酸ならびにそのコポリマーおよび混合物、例えばポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA、)ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)およびポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ(オキサ)エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−co−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトンco−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチラート(PHBT)およびポリヒドロキシブチラートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ホスフェートエステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、マレイン酸無水物コポリマー、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−co−(2.5%トリメチレンカーボネート)]、ポリ(オルトエステル)、他のチロシン由来ポリアリレート、他のチロシン由来ポリカーボネート、他のチロシン由来ポリイミノカーボネート、他のチロシン由来ポリホスホネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリサッカライド、例えばヒアルロン酸、キトサンおよび再生セルロース、ならびにタンパク質、例えばゼラチンおよびコラーゲン、ならびにその混合物およびコポリマー、ならびにPEG誘導体または上記のいずれかのブレンドを含む。
【0102】
ブレンドを使用することにより、デバイスの一部または全部について様々な吸収時間を有する部分吸収性デバイスおよび完全吸収性デバイスを作製する性能を含め、多くの利点が得られる。例えば部分吸収性デバイスは、長時間にわたって多孔性が向上して、ひいては組織を内殖させ得る。当業者はただちにブレンドするポリマーの組合せを選択して、ブレンドに必要な各ポリマーの量を決定して特定の生成物を生成するまたは特定の結果を達成することができる。
【0103】
薬物:
大半の実施形態において、本発明のポリマー、モノマーおよびブレンドと適合性である1つ又は複数の薬物、生物学的薬剤、または活性成分は、本発明のポリマー、モノマー、もしくはブレンドによりコーティングもしくは形成された医薬組成物もしくは医療機器に包含される、医薬組成物もしくは医療機器に形成される、または医薬組成物もしくは医療機器と併せてもしくは組合せて使用することができる(「適合性」は、薬物がポリマーを分解せず、ポリマーが薬物を分解しないことを意味する)。このような薬物および薬剤の用量は、当分野で公知であり、治療的有効量で使用される。ポリマーの分解および吸収を測定することに加えて、当業者は、同じ技法ならびに他の技法を使用して薬物放出をモニターすることができる。例えば抗生物質活性は阻害アッセイの領域によって測定することができ、疼痛軽減は疼痛およびそれ以上の動物モデルで測定することができる。
【0104】
本発明により、薬物および生物活性剤は、これに限定されるわけではないが,麻酔薬、抗菌薬(抗生物質、抗真菌剤および抗細菌剤を含む)、抗炎症剤、線維形成抑制剤、抗瘢痕化剤、細胞増殖抑制剤、成長因子などを含む。
【0105】
本明細書で使用する場合、「薬物(drug)」という用語は、小型分子または大型分子例えばタンパク質、核酸などにかかわらず、あらゆる種類の治療剤を含むために使用される。本発明の薬物は、単独でまたは組合せて使用できる。
【0106】
本明細書で使用する場合、「治療的有効量」は、障害または疾患を治療、改善または予防する所望の治療効果を達成するために宿主への投与が必要である、薬物または生物活性剤のその量を指す。例えば治療的有効量は、使用中の特定の薬物または生物学的薬剤に関連して、抗菌薬活性、疼痛軽減、抗炎症活性、抗線維症活性、抗腫瘍または抗癌活性などを提供するその量であり得る。公知の薬物の潜在的な治療的有効量は、文献で入手できるか、または新規もしくは公知の薬物については、当分野で公知の方法、技法および標準を使用して決定することができる。
【0107】
非ステロイド性抗炎症剤の例は、これに限定されるわけではないが、アセトアミノフェン、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、フルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、メロキシカム、メチルサリチレート、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチンおよびトロラミンを含む。
【0108】
麻酔薬の例は、これに限定されるわけではないが、リドカイン、ブピバカイン、メピバカインおよびキシロカインを含む。局所麻酔薬は弱い抗細菌特性を有し、急性疼痛および感染の予防の二重の役割を果たすことができる。
【0109】
抗菌薬の例は、これに限定されるわけではないが、アミノグリコシド、例えばアミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、およびトブラマイシン、抗生物質、例えばバシトラシン、クリンダマイシン、ダプトマイシン、リンコマイシン、リネゾリド、メトロニド、ポリミキシン、リファキシミン、バンコマイシン、セファロスポリン、例えばセファゾリン、マクロライド抗生物質、例えばエリスロマイシン、アジスロマイシンなど、β−ラクタム抗生物質、例えばペニシリン、キノロン、例えばシプロフロキサシン、スルホンアミド、例えばスルファジアジン、テトラサイクリン、例えばミノサイクリンおよびテトラサイクリン、および他の抗生物質、例えばリファンピン、トリクロサン、クロルヘキシジン、シロリムスおよびエベロリムスを含む。
【0110】
使用することができる他の薬物は、これに限定されるわけではないが、ケフレックス、アシクロビル、セファラジン、マルファレン(malphalen)、プロカイン、エフェドリン、アドリアマイシン、ダウノマイシン、プルンバギン、アトロピン、キニン、ジゴキシン、キニジン、生物活性ペプチド、セファラジン、セファロチン、シス−ヒドロキシ−L−プロリン、メルファラン、ペニシリンV、ニコチン酸、ケモデオキシコール酸、クロランブシルおよび抗新生物剤、例えばパクリタキセル、シロリムス、5−フルオロウラシルなどを含む。有用なタンパク質の例は、細胞増殖抑制剤、例えば上皮増殖因子拮抗薬を含む。
【0111】
本発明の好ましい抗菌剤は、単独のまたは組合わされた、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサン、シロリムスおよびエベロリムスを含む。リファンピンおよびミノサイクリンは、抗菌剤の好ましい組合せである。
【0112】
ロイコトリエン阻害薬/および拮抗薬は、抗炎症剤であり、これに限定されるわけではないが、ロイコトリエン受容体拮抗薬、例えばアシタザノラスト、イラルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、ベルルカスト、ザフィルルカストおよびジロートンを含む。
【0113】
医薬製剤:
本発明のポリマーおよびブレンドは、1つ又は複数のこれらの分子、1つ又は複数の薬物(活性成分として)、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤することができる。医薬的に許容される担体は、滅菌液体、例えば水および石油、動物、植物または合成起源の油を含む油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与されるときに好ましい担体である。食塩溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、特に注射用液剤のための液体担体として使用することもできる。好適な製薬担体は周知である。薬理活性剤に加えて、組成物は、作用部位への送達のために医薬的に使用することができる調製物への活性化合物の処理を促進する賦形剤および助剤を含む好適な医薬的に許容される担体を含有し得る。非経口投与に好適な製剤は、水溶性形態、例えば水溶性塩の活性化合物の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁剤は、必要に応じて油性注射用懸濁剤として投与され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油または合成脂肪エステル、例えばエチルオレアートまたはトリグリセリドを含む。水性注射用懸濁剤は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、およびデキストランを含む、懸濁剤の粘度を上昇させる物質を含有することができる。場合により、懸濁剤懸濁剤は安定剤も含有することができる。リポソームを使用して、細胞中への送達のために薬剤をカプセル化することもできる。
【0114】
本発明による全身投与のための医薬製剤は、経腸、非経口または局所投与のために製剤することができる。実際に、全3種類の製剤を同時に使用して、活性成分の全身投与を達成することができる。
【0115】
経口投与に好適な製剤は、硬および軟ゼラチンカプセル剤、丸剤、コート錠を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤または吸入剤およびその制御放出形態を含む。
【0116】
本発明のポリマーおよびブレンドは、これらの化合物の哺乳動物への数日間、少なくとも数週間、1カ月またはそれ以上の期間にわたる持続送達を可能にする、医薬組成物中に包含させることもできる。このような製剤は、U.S.Pat.Nos.5,968,895および6,180,608 B1に記載されている。
【0117】
局所投与では、いずれの一般的な局所製剤、例えば液剤、懸濁剤、ゲル、軟膏または膏薬なども使用することができる。このような局所製剤の調製は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesによって例示されているように、医薬製剤の分野で十分に記載されている。局所用途では、本発明のポリマーおよびブレンドは、粉剤またはスプレー剤として特にエアゾール形態で投与することもできる。活性成分は、全身投与に適した医薬組成物で投与することができる。公知であるように、薬物が全身投与される場合、その薬剤は経口投与のために粉剤、丸剤、錠剤などとして、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤として調製することができる。静脈内、腹腔内または病変内投与では、活性成分は、注射によって投与することが可能な液剤または懸濁剤として調製することができる。ある場合において、活性成分を坐剤形態に、または皮膚もしくは筋肉内注射に基づくデポー剤用の長期放出製剤として製剤することが有用であり得る。一実施形態において、本発明のポリマーおよびブレンドは吸入療法を促進し得る。吸入療法では、ポリマーまたはブレンドは活性成分と共に、定量吸入器による投与に有用な液剤または乾燥粉剤吸入器に好適な形態とすることができる。
【0118】
医療用デバイス:
本発明のポリマーおよびブレンドを使用して、任意の軟組織欠損を再建、補強、ブリッジ、交換、修復、支持、安定化、定置または強化するために使用されるインプラント型プロテーゼをコーティングまたは形成することができる。例えば本発明によって治療できる軟組織欠損は、これに限定されるわけではないが、鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、臍ヘルニア、腹部ヘルニア、切開創ヘルニア、筋肉ヘルニア、横隔膜ヘルニア、腹胸部ヘルニアおよび胸部ヘルニアを含む、ヘルニアを含む。プロテーゼは、筋肉弁の構造補強、血管完全性の提供、靭帯の修復/置換、および膀胱スリング、乳房リフト、または器官バッグ/ラップを用いて行われるような器官の支持/定置/再定置のために使用することもできる。プロテーゼは、軟組織を含む再建処置、例えば整形外科用移植片の支持体/安定化、再建外科用移植片の支持体、および骨折の支持体として使用できる。プロテーゼは、一般にメッシュ、膜、またはパッチであり、製織または不織メッシュなどを含む。
【0119】
さらに本発明のポリマーおよびブレンドは、創傷閉鎖補助材、例えばステープル、縫合糸、タック、リング、ネジなどにコーティングをする、または創傷閉鎖補助材を形成するために使用することができる。
【0120】
本発明のポリマーおよびブレンドを使用して、インプラント型医療用デバイスのパウチ、カバーリング、ポケットなどに形成されたメッシュをコーティングするために、またはメッシュを形成するために使用することができる。このようなインプラント型医療用デバイスは、これに限定されるわけではないが、心調律管理デバイス、例えばペースメーカー、除細動器、パルス発生器ならびに他のインプラント型デバイス、例えばインプラント型アクセスシステム、神経刺激装置、脊髄刺激装置、乳房インプラントまたはその他のインプラント型医療用デバイスを含む。したがってカバーリング、パウチ、ポケットなどは、これらのデバイスの所定の位置への固定、疼痛軽減の提供、瘢痕化または線維化の抑制、細菌の増殖または感染の抑制または予防、他の薬物のインプラント部位の送達の役割を果たすことができる。
【0121】
本発明のポリマーおよびブレンドは、一時的なまたは多少の時間制限のある治療上の必要性を有する任意のインプラント型または挿入型医療用デバイスならびに永続的機能を備えた医療用デバイス(例えば関節置換)と併せて使用することもできる。例えばこのようなポリマーを使用して、開存した血管を残しながら、十分な治癒期間の後に完全に吸収されるようになる、完全吸収性血管ステントを形成することができる。完全吸収性ステントは、1つ又は複数の薬剤と併せて使用され得る。
【0122】
本ポリマーおよびブレンドが有用である医療用デバイスのさらに詳細なおよび他の例は、これに限定されるわけではないが、カテーテル(例えば腎臓または血管カテーテル、例えばバルーンカテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば大静脈フィルタ)、ステント(心血管ステント、脳ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、消化管ステントおよび食道ステントを含む)、ステント移植片、脳動脈瘤フィラーコイル(Guglilmi)デタッチャブルコイルおよび金属コイルを含む)、血管移植片、心筋プラグ、大腿骨プラグ、パッチ、ペースメーカーおよびペースメーカーリード、心臓弁、血管弁、生検デバイス、無傷皮膚および損傷皮膚(創傷を含む)への治療剤送達用パッチ、軟骨、骨、皮膚および他のインビボ組織再生のための組織工学用足場、手術部位の縫合糸、縫合糸アンカー、吻合クリップおよび吻合リング、組織ステープルならびに結紮クリップ、整形外科用固定デバイス、例えば足首、膝、および手部分の干渉ネジ、靭帯結合および半月板修復のためのタック、骨折固定のためのロッドおよびピン、頭蓋顎顔面修復のためのネジおよびプレート、歯科用デバイス、例えば抜歯後の空隙充填材および歯周外科手術後の組織再生誘導膜フィルム、ならびに体内にインプラントまたは挿入される各種のコーティング基材を含む。
【0123】
本明細書に記載する医療用デバイスのいずれかによるポリマーおよびブレンドの使用は、1つ又は複数の薬物を含み、1つ又は複数の薬剤と共に使用することができる。
【0124】
したがって本発明は、デバイスを患者にインプラントすることによる、特に心血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連障害、眼の疾患などの障害および疾患、または解剖学的な修復、再建、置換もしくは増強のための、本発明のポリマーまたはブレンドを、例えばコーティングとして、カバーリングと併せてまたは完全もしくは部分デバイスとして含む医療用デバイスまたは医療用デバイスアセンブリをインプラントすることを含む、患者の障害または疾患を治療する方法を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態において、方法を使用して、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離または穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工移植片の吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍による閉塞またはその組合せを治療するためにステントをインプラントする。
【0126】
他の実施形態において、方法を使用して、ヘルニアを含む任意の軟組織欠損を再建、補強、ブリッジ、交換、修復、支持、安定化、定置または強化するために外科用メッシュをインプラントする。
【0127】
なお他の実施形態において、方法を使用して、医療用デバイスアセンブリ、例えばカバーリングもしくはパウチ内のCRM、パウチもしくはカバーリング内の神経刺激装置、またはパウチもしくはカバーリング内の乳房インプラントをインプラントする。
【0128】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の本発明に対して各種の省略、追加および修正がなされ得ることと、ならびにこのようなすべての修正および変更が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内に含まれるものとすることが、当業者によって認識される。本明細書で引用するすべての参考文献、特許、特許出願または他の文書は、ここに引用することであらゆる目的において本明細書の一部をなすものとする。
【実施例】
【0129】
(実施例1)
(一般的な方法)
分子量(Mol.Wt.)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、3個の架橋ポリスチレンカラムを使用して、0.8ml/分にてDMF/0.1% TFA中で流下させ、R検出器を使用してポリエチレングリコール標準に対して測定することによって決定した。
【0130】
値は、DSCにより10℃/分の加熱勾配を使用して決定した。報告値は、第2の勾配サイクルから計算した。
【0131】
プロトンnmrスペクトルは、DMSOでテトラメチルシランを内部較正標準として決定した。
【0132】
(実施例2)
(厳密に交互配置された(ab)ポリマーの合成)
(A.p(TE−Dg−TE 35%PEG400−ビス−スクシネート:アジペート)の合成)
(ステップ1:TE−Dg−TEの合成)
チロシンエチルエステル遊離塩基(0.2564モル、53.65g)をジグリコール酸(0.1275モル、17.1g)と、HOBT.HOおよびEDCI・HClの存在下でN−メチルピロリジノン(NMP)溶媒中で反応させた。反応は3〜30℃にて16〜18時間の期間にわたって行った。液液抽出精製の間にエチルアセテートを使用した。収率:90%。融点:128〜129℃。質量:517.21(M+1)。
【0133】
NMR:9.2−9.25ppm(2H,1重線、)、8.25−8.32ppm(2H,2重線)、6.95−7.15ppm(4H,2重線)、6.6−6.7ppm(4H,2重線)、4.4−4.5ppm(2H,4重線)、4.0−4.01ppm(4H,4重線)、3.85−3.98(4H,4重線)、2.82−2.89ppm(4H,多重線)、1.08−1.16ppm(6H,3重線)。
【0134】
(ステップ2:p(TE−Dg−TE 35%Peg400−ビス−スクシネート:アジペート)の合成)
TE−Dg−TE(0.1モル、51.66g)をPEG400−ビス−コハク酸(0.035モル、22.27g)およびアジピン酸(0.065モル、9.5g)ならびにDPTSおよびジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)の存在下、塩化メチレン溶媒中で反応させた。反応は32〜38℃にて18〜20時間の期間にわたって行った。ポリマーの沈殿にイソプロピルアルコールを使用した。収率:88%。GPC:>100kDa。T:19〜22℃。
【0135】
NMR:8.37−8.38ppm(d,1H)、7.24−7.26ppm(m,4H)、6.99−7.02ppm(m,4H)、4.48−4.55ppm(q,1H)、4.15−4.2ppm(t,4H)、4.0−4.04ppm(q,2H)、3.88−3.96ppm(m,4H)、3.59−3.65ppm(t,4H)、3.47−3.54ppm(m,32H)、2.95−3.1ppm(m,1H)、2.81−2.86ppm(t,4H)、2.67−2.70ppm(t,4H)、2.62−2.68ppm(m,4H)、1.72−1.82ppm(m,4H)、1.1−1.15ppm(t,3H)。
【0136】
(B.p(TEジグリコレート)交互の合成)
この合成は、ステップ2で第1のステップと同じ二塩基酸、すなわちジグリコール酸を使用したことを除いて、一般に本実施例のA節と同じステップに従った。収率:75%.分子量:47kDa。多分散指数(PDI):1.25。T:56.1℃。
【0137】
NMR:8.45ppm(2H,NH,d)、8.3ppmおよび8.2ppm(<0.1H,NH,2重線)、7.3ppm 7.1ppm(8H,芳香族,a)、4.45ppm(2H,メチニル,m)、4.1ppm(4H,ジグリコレート,q)、3.9ppm(4H,O−CH,q)、3.1ppm(4H,ベンジル,m)、1.1ppm(6H,末端メチル,q/m)。
【0138】
(C.p(TEグルタレート)交互の合成)
この合成は、ステップ1で二塩基酸がグルタル酸を、ステップ2で同じ二塩基酸、すなわちグルタル酸を使用したことを除いて、一般に本実施例のA節と同じステップに従った。
収率:61%。分子量:60kDa、PDI:1.24、T:70℃。
【0139】
NMR:8.45ppm 8.35ppm(2H,NH2重線:1:14)、7.3ppm 7.1ppm(全8H,芳香族,a)、4.45ppm(2H,メチニル,m)、4.1ppm(4H,O−CH,m)、2.8ppm(4H,末端グルタリル,m)、2.7ppm(4H,ベンジル,m)、1.6ppm(2H,中央グルタリル,m)、1.1ppm(6H,末端メチル,t)。
【0140】
(D.表1のポリマーの合成)
これらのポリマーの合成は一般に、示されたアミノフェノール、トリマー(timer)および二塩基酸を使用して、この実施例のA節に記載された通りに行った。表1に、これらのポリマーの多くの分子量(GPCによって決定)およびTを示す。
【0141】
(実施例3)
(ランダムAP−Xポリマーの合成)
(A.一般合成経路)
ランダムポリマーは一般に、U.S.Patent Nos.5,216,115および5,597,507に記載されているように、カルボジイミド媒介カップリング反応を使用して合成した。簡潔には、等モル量のアミノフェノールおよび二塩基酸を、DIPCをカップリング剤として使用して、4−ジメチルアミノピリジウムパラ−トルエンスルホン酸(DPTS)の存在下、塩化メチレン中で縮合した。遊離酸部分を含有するポリマーについては、同様の合成は、U.S.Patent No.6,120,491に記載されているように、最初に対応するベンジルエステル含有ポリマー(すなわちアミノフェノールはベンジルエステルを有していた)を合成して、次に水素化することによって行い、遊離酸含有ポリマーを得た。ポリマーは通常、イソプロパノールからの反復沈殿によって単離した。
【0142】
(B.p(TEジグリコレート)ランダムの合成)
合成は一般に、アミノフェノールとしてのチロシンエチルエステルおよび二塩基酸としてのジグリコール酸を使用して、この実施例のA節に記載された通りに行った。収率:60%。
分子量27kDa。PDI:1.50。T:54.5℃。
【0143】
NMR:8.45ppm 8.35.ppm(2H,NH2重線:1:1.6)、7.3ppm 7.1ppm(全8H,芳香族,a)、4.45ppm(2H,メチニルm)、4.1ppm(4H,O−CH,m)、2.9ppm(4H,末端グルタリル,m)、2.7ppm 2.4ppm(4H,ベンジル,m)、1.8ppm(2H,中央グルタリル,m)、1.1ppm(6H,末端メチル,t)。
【0144】
(C.p(TEグルタレート)ランダムの合成)
合成は一般に、アミノフェノールとしてのチロシンエチルエステルおよび二塩基酸としてのグルタル酸を使用して、この実施例のA節に記載された通りに行った。分子量:44kDa、PDI:1.19、T:68℃。
【0145】
(D.p(TEスクシネート)ランダムの合成)
合成は一般に、アミノフェノールとしてのチロシンエチルエステルおよび二塩基酸としてのコハク酸を使用して、この実施例のA節に記載された通りに行った。
【0146】
(実施例4)
(ポリマー分解および質量損失の試験)
これらの試験では、示したポリマーおよび薬物は存在する場合、有機溶媒に溶解させて、外科用ポリプロピレンメッシュにスプレーコーティングした。通例、9:1 テトラヒドロフラン/メタノールによるポリマーの、または比が1:1:8 リファンピン:ミノサイクリン:ポリマーの1%溶液をメッシュの各面でスプレーノズルを反復して通過させることにより各面が所望の量の抗菌薬固定ポリマーでコーティングされるまで、外科用メッシュにスプレーコーティングする。メッシュを使用前に真空乾燥器で少なくとも72時間乾燥させて、分解試験用のサイズに切断する。
【0147】
分子量(MW)プロファイル:MWの減少を時間の関数としてモニターするために、メッシュを0.01M PBSまたはTween20を含む0.01M PBS(50〜100mL)によって37℃にて振とうしながらインキュベートする。各時点において、ポリマー試料を溶媒に溶解し、濾過して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による分析のために分析用バイアルに移す。
【0148】
質量損失プロファイル:質量損失分析のために、メッシュを0.01M PBSまたはTween20を含む0.01M PBS(50〜100mL)によって37℃にて振とうしながらインキュベートする。バイアル内の緩衝液を定期的な間隔で交換して、可溶性分解構成要素について分析する。各時点において、3個の小型バイアルから緩衝液1〜2mLを濾過して、逆相HPLCによる分析のために分析用バイアルに移す。またはデバイスを洗浄、乾燥および秤量して(最終重量)、最初の重量から最終重量を引くことによって質量損失を決定することができる。
【0149】
ポリマーコーティングしたメッシュでのランダムポリマーおよび交互ポリマーの生理学的分解条件下で保持された質量の結果を図1に示す。生理学的分解条件下で保持された分子量の結果を、ランダムポリマーおよび交互ポリマーについては図2に、3つの異なるランダムポリマーについては図3に示す。
【0150】
(実施例5)
(薬物放出試験)
ポリマーフィルムは、収率10%(w/v)ポリマー溶液を得るために十分なポリマーを9:1 テトラヒドロフラン(THF)およびメタノール(MeOH)に溶解することによって作製する。ポリマーが溶解した後に、リファンピンおよびミノサイクリンを各薬物が溶液中で3%に達するまで添加して、十分に混合する。乳房インプラントの形状のポリプロピレンまたはデルリンの型をホルダーの上に固定して、DipTech Systems,Incによる浸漬装置を使用して溶液中にゆっくり入れて、ゆっくり出して浸漬を行い、各連続浸漬の間を10〜60分間隔とする。浸漬した型を室温にてブロー乾燥器で5時間、次に50℃の乾燥器で16時間乾燥させる。乾燥後に、成形ポリマーによって、型から容易に剥離される乳房インプラントカバーリングが生成される。このカバーリングを50℃にて72時間さらに乾燥させて型から外す。小型円板または小型片をこれらのカバーリングから切出して、薬物放出試験に使用する。
【0151】
または、溶液をテフロン(登録商標)でコーティングしたガラス表面に注いで、塗布用ナイフを用いて0.25mmまで広げることができる。アルミニウム箔で包んだガラス皿をフィルムに被せて、室温にて一晩乾燥させる。フィルムを剥離して、アンバーバッグ(amber bag)に入れ、真空乾燥器で50℃にて3日間乾燥させた。乾燥したフィルムを約10mgの小型片に切断する。
【0152】
コーティングしたメッシュを使用する場合、実施例4に記載したようにメッシュにスプレーコーティングして、乾燥後に薬物放出試験用の小片として切断する。
【0153】
円板、小片またはメッシュを、PBS 10mLを含有する20mLバイアルに入れる。一定分量の緩衝液を分析のために定期的に取出し、代わりに新たな緩衝液を加える。試料をHPLCで分析して、放出されたリファンピンおよび/またはミノサイクリンの累積量を決定する。
【0154】
図4の結果は、ポリマーコーティングメッシュにおける4つのランダムポリマー:TEスクシネート、TEグルタレート、TEジグリコレート、およびTE:15Tグルタレートの、生理学的条件下でのリファンピンの累積パーセンテージ放出を示す。
【0155】
(実施例6)
(比較の分子量および質量損失)
ポリプロピレンメッシュにスプレーコーティングしたp(DTEスクシネート)および本発明のポリマーであるp(TEスクシネート)の分子量を、実施例4に記載するように決定する。保持された分子量として表した分子量損失を図5に示す。
【0156】
質量損失の比較例を図6に示し、図6では、スプレーコーティングされたポリプロピレンメッシュの生理学的条件下での質量損失が、本発明のポリマーであるp(TEスクシネート)に対する、2つのチロシン由来ジフェノールポリアリレートp(10%デスアミノチロシルチロシン90%デスアミノチロシルチロシンエチルエステルスクシネート)およびp(15%デスアミノチロシルチロシン85%デスアミノチロシルチロシンエチルエステルスクシネート)について示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、
Rは、−(CR−または−CR=CR−であり、
は水素、1〜20個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリールもしくはアルキルエーテル、または−(RO((CRO)−Rであり、
各Rは独立して、1〜30個の炭素原子を有する2価の直鎖もしくは分枝の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、2価のアルキルエーテルもしくはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−であり、
およびRはそれぞれ独立して、水素または1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝の置換もしくは非置換のアルキルであり、
は独立して、直鎖もしくは分枝の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
は独立して、直鎖または分枝の置換または非置換の飽和または不飽和の低級アルキルであり、
芳香環は0〜4個のZ置換基を有し、この置換基はそれぞれ独立して、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群より選択され、
Yは、
【化2】

であり
aは0〜10であり、
各qは独立して1〜4であり、
各rは独立して1〜4であり、および
各sは独立して1〜5000である)
によって表されるモノマー単位を含んでなる合成ポリマー。
【請求項2】
各Rが独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびベンジルからなる群より選択される請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Rがメチレンまたはエチレンである請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
各Rが独立して、メチル、エチル、n−プロピル、−CHOCH−、および−(CHCO−(CHCH−O)−C(O)−(CH−、および−(CHO(CHCHO)(CH−からなる群より選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマーと1つ又は複数の薬物とを含む医薬組成物。
【請求項6】
請求項4に記載のポリマーと1つ又は複数の薬物とを含む医薬組成物。
【請求項7】
前記1つ又は複数の薬物が、抗菌剤、抗細菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤、ロイコトリエン阻害薬、化学治療剤からなる群より選択される請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記1つ又は複数の薬物が、抗菌剤、抗細菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤、ロイコトリエン阻害薬、化学治療剤からなる群より選択される請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記1つ又は複数の薬物が、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサン、およびその組合せからなる群より選択される抗菌剤である請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記1つ又は複数の薬物が、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン,バンコマイシン、トリクロサン、およびその組合せからなる群より選択される抗菌剤である請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の1つ又は複数のポリマーを備える医療用デバイス。
【請求項12】
請求項4に記載の1つ又は複数のポリマーを備える医療用デバイス。
【請求項13】
1つ又は複数の薬物をさらに備える請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
1つ又は複数の薬物をさらに備える請求項12に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
前記医療用デバイスが、ステント、コーティングステント、外科用メッシュ、フィルムコーティングデバイス、デバイスカバーリングまたはカテーテルである請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
前記医療用デバイスが、ステント、コーティングステント、外科用メッシュ、フィルムコーティングデバイス、デバイスカバーリングまたはカテーテルである請求項12に記載の医療用デバイス。
【請求項17】
前記1つ又は複数の薬物が、抗菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤およびロイコトリエン阻害薬からなる群より選択される請求項13に記載の医療用デバイス。
【請求項18】
前記1つ又は複数の薬物が、抗菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤およびロイコトリエン阻害薬からなる群より選択される請求項14に記載の医療用デバイス。
【請求項19】
医療用デバイスと、この医療用デバイスの表面上に位置する又はこの医療用デバイスの表面に接着されたコーティングとを備える医療用デバイスであって、前記コーティングが、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマーの1つ又は複数の層を含むものである医療用デバイス。
【請求項20】
医療用デバイスと、この医療用デバイスの表面上に位置する又はこの医療用デバイスの表面に接着されたコーティングとを備える医療用デバイスであって、前記コーティングが、請求項4に記載のポリマーの1つ又は複数の層を含むものである医療用デバイス。
【請求項21】
前記コーティングの1つ又は複数の層が、1つ又は複数の薬物をさらに含むものである請求項19に記載の医療用デバイス。
【請求項22】
前記コーティングの1つ又は複数の層が、1つ又は複数の薬物をさらに含むものである請求項20に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
前記1つ又は複数の薬物が、抗菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤およびロイコトリエン阻害薬からなる群より選択される請求項21に記載の医療用デバイス。
【請求項24】
前記1つ又は複数の薬物が、抗菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤およびロイコトリエン阻害薬からなる群より選択される請求項22に記載の医療用デバイス。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマーの1つ又は複数と、1つ又は複数の第2のポリマーとを含むポリマーブレンド。
【請求項26】
請求項4に記載のポリマーの1つ又は複数と、1つ又は複数の第2のポリマーとを含むポリマーブレンド。
【請求項27】
前記1つ又は複数の第2のポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸ならびにそのコポリマーおよび混合物、例えばポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)およびポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ(オキサ)エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−co−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトンco−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチラート(PHBT)およびポリヒドロキシブチレートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ホスフェートエステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、マレイン酸無水物コポリマー、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−co−(2.5%トリメチレンカーボネート)]、ポリ(オルトエステル)、チロシン由来ポリアリレート、チロシン由来ポリカーボネート、チロシン由来ポリイミノカーボネート、チロシン由来ポリホスホネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリサッカライド、例えばヒアルロン酸、キトサンおよび再生セルロース、タンパク質、ゼラチン、コラーゲン、その混合物およびコポリマー、ならびにPEG誘導体または上記のいずれかのブレンドからなる群より選択される請求項25に記載のポリマーブレンド。
【請求項28】
前記1つ又は複数の第2のポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸ならびにそのコポリマーおよび混合物、例えばポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、setポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)およびポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ(オキサ)エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−co−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトンco−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチラート(PHBT)およびポリヒドロキシブチレートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ホスフェートエステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、マレイン酸無水物コポリマー、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−co−(2.5%トリメチレンカーボネート)]、ポリ(オルトエステル)、チロシン由来ポリアリレート、チロシン由来ポリカーボネート、チロシン由来ポリイミノカーボネート、チロシン由来ポリホスホネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリサッカライド、例えばヒアルロン酸、キトサンおよび再生セルロース、タンパク質、ゼラチン、コラーゲン、その混合物およびコポリマー、ならびにPEG誘導体または上記のいずれかのブレンドからなる群より選択される、請求項26に記載のポリマーブレンド。
【請求項29】
抗菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤およびロイコトリエン阻害薬からなる群より選択される1つ又は複数の薬物をさらに含む請求項27に記載のポリマーブレンド。
【請求項30】
抗菌剤、麻酔薬、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化剤およびロイコトリエン阻害薬からなる群より選択される1つ又は複数の薬物をさらに含む請求項28に記載のポリマーブレンド。
【請求項31】
患者の障害または疾患を治療する方法であって、患者に請求項11に記載の医療用デバイスを移植することを含み、前記障害が、心血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連障害、眼の疾患、または解剖学的な修復、再建、置換もしくは増強である方法。
【請求項32】
患者の障害または疾患を治療する方法であって、患者に請求項12に記載の医療用デバイスを移植することを含み、前記障害が、心血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連障害、眼の疾患、または解剖学的な修復、再建、置換もしくは増強である方法。
【請求項33】
前記モノマー単位の反復が、(a)の形態で厳密に配置される請求項1に記載のポリマー。
【請求項34】
前記モノマー単位の反復が、(ab)の形態で厳密に配置される請求項1に記載のポリマー。
【請求項35】
(ab)で厳密に配置されるPEAポリマーを合成する方法であって、
(a) 約2モル当量のアミノフェノールと約1モル当量の第1の二塩基酸とを、第1のカップリング剤の存在下で、アミド結合が優先的に形成する時間および条件で反応させて、それによりアミノフェノール−二塩基酸−アミノフェノールのトリマーを生成するステップと、
(b) 任意で前記トリマーを回収するステップと、
(c) 約1当量の前記トリマーと約1当量の第2の二塩基酸とを、第2のカップリング剤の存在下で、前記(ab)で厳密に配置されるPEAポリマーが形成する時間および条件で反応させるステップと
を含む方法。
【請求項36】
前記アミノフェノールおよび前記二塩基酸が、それぞれ以下の構造:
【化3】

(式中
Rは−(CR−または−CR=CR−であり、
は水素、1〜20個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリールもしくはアルキルエーテル、または−(RO((CRO)−Rであり、
は独立して、1〜30個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝の置換もしくは非置換のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルキルアリーレン、2価のアルキルエーテルもしくはアリールエーテル部分、−(RO((CRO)(R−、または−(RCO((CRO)CO(R−であり、
およびRはそれぞれ独立して、水素または1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝の置換もしくは非置換のアルキルであり、
は独立して、直鎖または分枝の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
は独立して、直鎖または分枝の置換または非置換の飽和または不飽和の低級アルキルであり、
芳香環は0〜4個のZ置換基を有し、この置換基はそれぞれ独立して、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護水酸基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群より選択され、
aは0〜10であり、
各qは独立して1〜4であり、
各rは独立して1〜4であり、および
各sは独立して1〜5000である)
を有する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記合成ポリマーが、p(TEスクシネート)、p(TEスクシネート)交互、p(TEグルタレート)、p(TEグルタレート)交互、p(TEジグリコレート)、p(TEジグリコレート)交互、p(TE:15Tグルタレート)およびp(TE:15TBzグルタレート)からなる群より選択される請求項1に記載の合成ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−503092(P2012−503092A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528070(P2011−528070)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/057860
【国際公開番号】WO2010/033995
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(508125575)タイレックス・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】TYRX INC.
【Fターム(参考)】