説明

アルカリ現像型ソルダーレジスト及びその硬化物並びにそれを用いて得られるプリント配線板

【課題】 350〜375nmのレーザー光に対して高い光重合能力を発揮できると共に、十分な深部硬化性が得られ、さらに熱安定性が優れたアルカリ現像型ソルダーレジスト及びその硬化物並びにそれを用いてパターン形成されたプリント配線板を提供する。
【解決手段】 (A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、(b)不飽和モノカルボン酸を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させ、再度(c)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、(B)オキシムエステル系光重合開始剤、(C)1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、(D)熱硬化性成分を含み、波長350〜375nmにおける吸光度が、25μmあたり0.3〜1.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造に有用なアルカリ現像型ソルダーレジスト及びその硬化物並びにそれを用いて得られるプリント配線板に関するものであり、さらに詳しくは、最大波長が350〜375nmのレーザー発振光源によって硬化し得るアルカリ現像型ソルダーレジスト及びその硬化物並びにそれを用いて得られるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のプリント配線板の最外層には、ソルダーレジスト膜が形成されている。ソルダーレジストとは、プリント配線板の表面を覆い、はんだによる被覆や部品実装の際、回路表面に不必要なはんだが付着してしまう事を防ぐ保護コーティング材である。さらに永久保護マスクとしてプリント配線板の銅箔回路を湿度やほこりなどから保護すると同時に、電気的トラブルから回路を守る絶縁体機能があり、耐薬品性、耐熱性に優れ、はんだ付けをする際の高熱や金めっきにも耐えられる保護皮膜である。ソルダーレジストの形成方法は一般的に活性エネルギー線をマスクパターンに介して照射することによりパターンを形成するフォトリソグラフィー法が用いられている。マスクパターンを使用することにより、はんだの不必要な部分を選択することができる。
【0003】
近年、省資源あるいは省エネルギーといった環境を配慮したフォトリソグラフィー法として、レーザー光を光源とした直接描画方式(レーザーダイレクトイメージング)が実用化されている。直接描画装置とはレーザー光に感光する光硬化性樹脂組成物の膜がすでに形成されたプリント基板にパターンデータを高速に直接レーザー光を描画する装置である。マスクパターンを必要としなことが特長であり、製造工程の短縮とコストの大幅な削減が可能となり、多品種小ロット、短納期に適した手法である。
【0004】
直接描画装置は、従来のマスクパターン露光のような露光部全面を同時に露光することができないため、露光部、未露光部を選択してレーザーのシャッターをオン・オフして順々に露光している。そのため従来のマスクパターン露光と同等の露光時間を得るためには高速で露光する必要がある。さらには、従来のマスクパターン露光に使用されている光源はメタルハライドランプ等の波長が300〜500nmと広いものなのに対して、直接描画装置の光源と波長は用いられる光硬化性樹脂組成物の用途によって替わるが、一般的に光源には半導体レーザー、波長は350〜375nmを使用されることが多い。
【0005】
しかしながら、従来のソルダーレジストを波長350〜375nmの直接描画装置を用いて露光してもソルダーレジストに求められる耐熱性や絶縁性を得ることができる塗膜を形成できない。その理由としては従来のソルダーレジストに含有している光重合開始剤がベンジル、ベンゾインエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、あるいはベンゾフェノン等が用いられており、これらは、350〜375nmといった揮線のみでは十分な光重合能力を発揮することができないからである。したがって、従来の光重合開始剤からなる光重合性組成物はその応用範囲が著しく限定されていた。
【0006】
そこで350〜375nmといった揮線のみでも高い光重合能力を発揮することができる光重合開始剤やその光重合開始剤を用いた組成物の提案がなされてきた(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。しかしながら、これらの技術は、確かに350〜375nmといった揮線のみでも十分な光重合能力を発揮することができるが、光重合速度が非常に高い為に深部硬化性と表面硬化性が十分に得られず、更には熱処理後に回路上での光重合開始剤の失活が原因で感度が著しく低下し、銅回路上で剥離が生じる問題を抱えている。
【0007】
また、感光基密度を上げ、光硬化性に優れた光硬化性樹脂も提案されているが(例えば、特許文献3)、レーザーダイレクトイメージングには対応できていないのが、現状である。
【特許文献1】特開2001−235858号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】国際公開WO02/096969公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平9−80749号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、350〜375nmのレーザー光に対して高い光重合能力を発揮できると共に、十分な深部硬化性が得られ、さらに熱安定性が優れたアルカリ現像型ソルダーレジスト及びその硬化物並びにそれを用いてパターン形成されたプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、第一の態様として、(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、(b)不飽和モノカルボン酸を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させ、再度(c)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)下記一般式(I)で表わされるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤、
【化10】



(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。)

(C)1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)熱硬化性成分を含んでなる希アルカリ溶液により現像可能な組成物であって、最大波長がその乾燥塗膜の波長350〜375nmにおける吸光度が、25μmあたり0.3〜1.2であるアルカリ現像型ソルダーレジストが、350〜375nmのレーザー光に対して高い光重合能力を発揮できると共に、十分な深部硬化性が得られ、さらに熱安定性、無電解金めっき耐性、耐水性が優れたアルカリ現像型ソルダーレジストが提供される。
【0010】
また、第二の態様として、(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸(b−1)と、下記一般式(II)で表わされる
【化11】



(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表わし、mは、3〜7のいずれかの整数を表わし、nは、平均値であり、1〜4の値を表わす。)


化合物(b−2)を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)下記一般式(I)で表わされるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤、
【化12】



(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。)

(C)1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)熱硬化性成分を含んでなる希アルカリ溶液により現像可能な組成物であって、最大波長がその乾燥塗膜の波長350〜375nmにおける吸光度が、25μmあたり0.3〜1.2であるアルカリ現像型ソルダーレジストが、350〜375nmのレーザー光に対して高い光重合能力を発揮できると共に、十分な深部硬化性が得られ、さらに熱安定性、無電解金めっき耐性、耐水性が優れたアルカリ現像型ソルダーレジストが提供される。
【0011】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストの提供形態としては、液状の形態であってもよく、また、感光性ドライフィルムの形態であってもよい。
また、本発明によれば、本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストの硬化物、および該硬化物のパターンを形成してなるプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、深部硬化性が優れ、波長が350〜375nmのレーザー発振光源により、ハレーション、アンダーカットの無いパターン形成が可能であり、レーザーダイレクトイメージング用ソルダーレジストとして用いることが可能となる。
さらに、このようなレーザーダイレクトイメージング用ソルダーレジストを用いることにより、ネガパターンが不要になり、初期生産性の向上、低コスト化に貢献できる。
また、本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、深部硬化性に優れ、高感度で高解像性であることから、信頼性の高いプリント配線板を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストの特徴の一つは、(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、(b)不飽和モノカルボン酸を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させ、再度(c)多塩基酸無水物を反応させて得られる高感度のカルボキシル基含有感光性樹脂、又は(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸(b−1)と、前記一般式(II)で表わされる化合物(b−2)を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂を用いている点にある。
第二の特徴は、より高感度化するために、(B)前記一般式(I)で表わされるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤を用いている点にある。
【0014】
以下、本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストの各構成成分について、詳しく説明する。
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストに含まれるカルボキシル基含有感光性樹脂の第一の態様としては、(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、(b)不飽和モノカルボン酸を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させ、再度(c)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂である。このように、1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物(a)に、不飽和モノカルボン酸(b)を反応させた後、多塩基酸無水物(c)を付加し、さらに感光基を導入するために、1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させる。しかし、この反応により、多塩基酸無水物(c)を付加することによって生じた遊離カルボキシル基が減少し、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下するため、再度、多塩基酸無水物(c)を反応させアルカリ水溶液に対する溶解性を確保した樹脂である。
尚、この不飽和モノカルボン酸としては、第二の態様に用いられる一般式(II)で表わされる化合物を併用しても良い。
【0015】
また、第二の態様としては、(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸(b−1)と、下記一般式(II)で表わされる
【化13】



(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表わし、mは、3〜7のいずれかの整数を表わし、nは、平均値であり、1〜4の値を表わす。)

化合物(b−2)を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂である。このように、不飽和モノカルボン酸として、分子長の異なる化合物を用いることにより、分子内重合を抑制でき、さらに自由度の高い長鎖の不飽和モノカルボン酸を用いることにより、高感度化が可能となる。
【0016】
上記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)の合成に用いられる1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物(a)としては、(a−1)1分子中に2つ以上のエポキシ基を持つ多官能エポキシ樹脂、(a−2)1分子中に2つ以上のオキセタン環を持つ多官能オキセタン化合物、(a−3)1分子中に2つ以上のチイラン環を有するエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0017】
上記多官能エポキシ樹脂(a−1)としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂の第二級水酸基にエピハロヒドリンを反応させて多官能化したビスフェノール型多官能エポキシ樹脂、サルチルアルデヒドを用いたトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、及びグリシジル(メタ)アクリレートの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中で、特に好ましいものとしては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
【0018】
また、前記多官能オキセタン化合物(a−2)としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0019】
さらに、前記多官能エピスルフィド樹脂(a−3)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0020】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)の合成に用いられる不飽和モノカルボン酸(b)としては、例えばアクリル酸、アクリル酸の2量体、メタクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、及び飽和又は不飽和二塩基酸無水物と一分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類との半エステル化物、及び下記一般式(II)で表わされる
【化14】



(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表わし、mは、3〜7のいずれかの整数を表わし、nは、平均値であり、1〜4の値を表わす。)

化合物(b−2)などが挙げられる。
【0021】
上記一般式(II)で表わされる化合物(b−2)は、5員環のγ−ブチロラクトン、6員環のδ−バレロラクトン、7員環のε−カプロラクトン、8員環のζ−エナントラクトンなどのラクトンモノマーに、アクリル酸又はメタクリル酸を反応させることによって得られる。これらの中で、特にε−カプロラクトンと(メタ)アクリル酸から誘導されるε−カプロラクトン変性(メタ)アクリレートが、反応性、耐水性等から好ましい。
【0022】
これらの不飽和モノカルボン酸(b)の中で、特に好ましいものとしては、アクリル酸又はメタクリル酸(b−1)、及び上記一般式(II)で表わされる化合物(b−2)である。これら不飽和モノカルボン酸(b)は、単独又は2つ以上を組み合わせて用いても良いが、(b−1)、(b−2)を併用することが特に好ましい。
【0023】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)の合成に用いられる多塩基酸無水物(c)としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸などの酸無水物が挙げられ、これらのうち1種類以上を用いることができる。
【0024】
このようにして得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(A)の固形分酸価は、40〜110mgKOH/g、好ましくは、50〜80mgKOH/gとなる範囲である。上記範囲より酸価が低い場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下するので、好ましくない。一方、上記範囲より酸価が高い場合は、未反応の多塩基酸無水物が存在することになり、樹脂の安定性が低下するので、好ましくない。
【0025】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)は、上記樹脂に加えて、特性低下を伴わない範囲で、下記に列挙するような、公知慣用のカルボキシル基含有感光性樹脂を併用することもできる。
【0026】
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合することにより得られるカルボキシル基含有感光性共重合樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物や(メタ)アクリル酸クロライドなどによって、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性共重合樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性共重合樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性共重合樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)ポリビニルアルコー誘導体などの水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に一分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる水酸基及びカルボキシル基含有感光性樹脂、
(7)多官能エポキシ化合物と、不飽和モノカルボン酸と、一分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(8)一分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の第一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、及び
(9)多官能エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させた後、多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有観光性樹脂に、更に、分子中に1個のオキシラン環と1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂などが挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0027】
このようなカルボキシル基含有感光性樹脂(A)の配合量は、全組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0028】
本願発明に用いられる(B)オキシムエステル系光重合開始剤は、下記一般式(I)で表わされるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤であり、
【化15】



(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。)

例えば、前記特許文献1に記載されたものなどが挙げられる。このようなオキシムエステル系光重合開始剤(B)で好ましいものとしては、下記式(V)で表わされる
【化16】



化合物(2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン)、もしくは下記式(VI)、又は下記式(VII)で表わされる
【化17】











【化18】



化合物(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))が挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02が挙げられる。
【0029】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤(B)を含むアルカリ現像型ソルダーレジストは、単独でプリント配線板などの銅上に塗布した場合、銅との界面で銅原子と仮乾燥時の熱で反応し、光重合開始剤としての機能が失活するという場合があるため、後述のアミノアセトフェノン系光重合開始剤(E)、もしくはアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(F)と併用することが、好ましい。
【0030】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤(B)の配合量としては、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.01〜5質量部の割合である。オキシムエステル系光重合開始剤(B)の配合量が、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)100質量部に対して、0.01質量部未満の場合、350〜375nmの波長領域の光による光硬化性成分((A)成分及び(C)成分)の硬化が不十分となり、硬化被膜の吸湿性が高くなってPCT耐性が低下し易くなり、また、はんだ耐熱性や耐無電解めっき性も低くなり易い。一方、オキシムエステル系光重合開始剤(B)の配合量が、前記カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、20質量部を超えると、塗膜の現像性や硬化皮膜の耐無電解めっき性が悪くなり、またPCT耐性も劣ったものとなる傾向を示す。
【0031】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストに用いられる1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(C)は、活性エネルギー線照射により、光硬化して、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)を、アルカリ水溶液に不溶化、又は不溶化を助けるものである。
このような化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0032】
このような1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(C)の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)100質量部に対して、5〜100質量部、より好ましくは、1〜70質量部の割合である。前記配合量が、5質量部未満の場合、光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となるので、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下したり、塗膜が脆くなるので、好ましくない。
【0033】
本発明に用いられる(D)熱硬化性成分としては、メラミン樹脂、ベンゾクアナミン樹脂などのアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。これらの中で、多官能エポキシ化合物(D−1)、多官能オキセタン化合物(D−2)、エピスルフィド樹脂などの分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(以下、環状(チオ)エーテル化合物と略す。)が特に、好ましい。
【0034】
前記多官能性エポキシ化合物(D−1)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製エピコート807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0035】
前記多官能オキセタン化合物(D−2)としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0036】
前記1分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0037】
このような環状(チオ)エーテル化合物の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、環状(チオ)エーテル基が0.6〜2.0当量、好ましくは、0.8〜1.5当量となる範囲である。環状(チオ)エーテル化合物の配合量が、上記範囲より少ない場合、カルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、上記範囲を超えた場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0038】
上記環状(チオ)エーテル化合物を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などがある。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0039】
熱硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えばカルボキシル基含有感光性樹脂(A)、又は熱硬化性成分100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15.0質量部の割合である。
【0040】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、安定した光硬化性を得るために、前記オキシムエステル系光重合開始剤(B)に加えて、(E)下記一般式(III)で表わされる構造を持つアミノアセトフェノン系光重合開始剤、
【化19】



(式中、R4、R5は、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表わし、R6、R7は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は2つが結合した環状アルキル基を表わす。)
もしくは、(F)下記一般式(IV)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤
【化20】


(式中、R8、R9は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されたアリール基、又はいずれか一方が炭素数1〜20のカルボニル基を表わす。)

のいずれか一方、もしくは2種類を配合することが好ましい。
【0041】
上記一般式(III)で表わされる構造を持つアミノアセトフェノン系光重合開始剤(E)としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0042】
前記一般式(IV)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(F)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0043】
このようなミノアセトフェノン系光重合開始剤(E)、及びアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(F)の配合量は、前述のオキシムエステル系光重合開始剤(B)と合わせて、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜30質量部、好ましくは0.5〜15質量部となるの割合であり、かつ後述の着色顔料等を含めて、乾燥塗膜の波長350〜375nmにおける吸光度が、25μmあたり、0.3〜1.2、好ましくは0.5〜1.0となる範囲である。
【0044】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、さらに必要に応じて、上記範囲内で、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類又はキサントン類などの公知慣用の光重合開始剤を、併用してもよい。特に、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物を併用することが、深部硬化性の面から好ましい。
【0045】
さらに、上記光重合開始剤類の配合範囲内で、光開始助剤を配合することができる。光開始助剤としては、3級アミン化合物やベンゾフェノン化合物が挙げられる。具体的には、エタノールアミン類;4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン;4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)等が挙げられる。これら公知慣用の3級アミン化合物は単独で又は2種類以上の混合物として使用できる。
特に好ましい3級アミン化合物は、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンが挙げられる。これらは、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0046】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、硬化塗膜の強度や電気特性を向上させるために、(G)フィラーを配合することが好ましい。
このようなフィラー(G)としては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカが好ましく用いられる。さらに、前述の1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(C)や前述の多官能エポキシ樹脂(D−1)にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。
これらを単独で又は2種以上配合することができる。これらのフィラーは、塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの基本的な特性を向上させることはもちろんのこと、活性エネルギー線がアルカリ現像型ソルダーレジスト内を透過の際に光の反射や屈折等の妨げを抑制させる目的で用いられる。
【0047】
これらフィラー(G)の配合量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜300質量部、より好ましくは、0.1〜150質量部の割合である。前記フィラー(G)の配合量が、0.1質量部未満の場合、はんだ耐熱、金めっき耐性等の硬化塗膜特性が低下するので、好ましくない。一方、300質量部を超えた場合、組成物の粘度が高くなり印刷性が低下たり、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0048】
さらに、本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)の合成や組成物の調整のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;酢酸エチル、酢酸ブチル及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。
このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0049】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等の密着性付与剤やシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0050】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることにより、樹脂絶縁層を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)のカルボキシル基と、環状(チオ)エーテル化合物などの熱硬化性成分(D)が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0051】
上記基材としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0052】
本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストを塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
以下のように本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストを塗布し、揮発乾燥した後、得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0053】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)を用いることができる。活性エネルギー線としては、最大波長が350〜375nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、一般には5〜200mJ/cm、好ましくは5〜100mJ/cm、さらに好ましくは5〜50mJ/cmの範囲内とすることができる。上記直接描画装置としては、例えば日本オルボテック社製、ペンタックス社製等のものを使用することができ、最大波長が350〜375nmのレーザー光を発振する装置であればいずれの装置を用いてもよい。
【0054】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0056】
合成例1
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロートを備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)440g(2.0当量)、カルビトールアセテート 345gを仕込み、90℃に加熱・攪拌し、溶解した。次に、一旦80℃まで冷却し、アクリル酸 144.0g(2.0当量)、及びトリフェニルホスフィン 2.0g、メチルハイドロキノン0.8gを加えて、90〜95℃で16時間反応させ、酸価が1.6mgKOH/gの反応生成物を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸 273.6g(1.8当量)を仕込み、90℃に加熱し、8時間反応させた。この反応溶液に、グリシジルメタクリレート 241.4g(1.7当量)を添加し、90〜95℃で、12時間反応させ、さらに、テトラヒドロ無水フタル酸 182.4g(1.2当量)反応させた。最後に、粘度調整のため、出光石油化学社製の芳香族系溶剤イプゾール#150 345gを添加し、混合・撹拌後、取り出した。
このようにして得られた本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)溶液は、固形分換算の酸価が56.9mgKOH/g、固形分換算の二重結合当量が346.3、不揮発分が65.1質量%であった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂溶液を、A−1ワニスと称す。
【0057】
合成例2
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロートを備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)440g(2.0当量)、カルビトールアセテート 394gを仕込み、90℃に加熱・攪拌し、溶解した。次に、一旦80℃まで冷却し、アクリル酸 115.2g(1.6当量)と、東亜合成社製のε−カプロラクトン変性アクリル酸 86.4g(0.4当量)、及びトリフェニルホスフィン 2.0g、メチルハイドロキノン0.8gを加えて、90〜95℃で18時間反応させ、酸価が1.8mgKOH/gの反応生成物を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸 273.6g(1.8当量)を仕込み、90℃に加熱し、8時間反応させた。この反応溶液に、グリシジルメタクリレート 241.4g(1.7当量)を添加し、90〜95℃で、12時間反応させ、さらに、テトラヒドロ無水フタル酸 182.4g(1.2当量)反応させた。最後に、粘度調整のため、出光石油化学社製の芳香族系溶剤イプゾール#150 394gを添加し、混合・撹拌後、取り出した。
このようにして得られた本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)溶液は、固形分換算の酸価が54.5mgKOH/g、固形分換算の二重結合当量が361.9、不揮発分が63.0質量%であった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂溶液を、A−2ワニスと称す。
【0058】
合成例3
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロートを備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)440g(2.0当量)、カルビトールアセテート 310gを仕込み、90℃に加熱・攪拌し、溶解した。次に、一旦80℃まで冷却し、アクリル酸 86.4g(1.2当量)と、東亜合成社製のε−カプロラクトン変性アクリル酸 172.8g(0.8当量)、及びトリフェニルホスフィン 3.0g、メチルハイドロキノン0.8gを加えて、90〜95℃で18時間反応させ、酸価が2.1mgKOH/gの反応生成物を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸 273.6g(1.8当量)を仕込み、90℃に加熱し、8時間反応させた。この反応溶液に、グリシジルメタクリレート 127.8g(0.8当量)を添加し、90〜95℃で、16時間反応させた。最後に、粘度調整のため、出光石油化学社製の芳香族系溶剤イプゾール#150 310gを添加し、混合・撹拌後、取り出した。
このようにして得られた本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A)溶液は、固形分換算の酸価が51.7mgKOH/g、固形分換算の二重結合当量が388.0、不揮発分が63.6質量%であった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂溶液を、A−3ワニスと称す。
【0059】
比較合成例1
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロートを備えた2リットルのセパラブルフラスコに、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製のエピクロン N−680、エポキシ当量215)430g(2.0当量)、カルビトールアセテート 200gを仕込み、90℃に加熱・攪拌し、溶解した。次に、一旦80℃まで冷却し、アクリル酸144g(2.0当量)、及びトリフェニルホスフィン 2.0g、メチルハイドロキノン0.8gを加えて、90〜95℃で16時間反応させ、酸価が0.6mgKOH/gの反応生成物を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸 167.2g(1.1当量)を仕込み、90℃に加熱し、8時間反応させた。最後に、粘度調整のため、出光石油化学社製の芳香族系溶剤イプゾール#150 200gを添加し、混合・撹拌後、取り出した。
このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂溶液は、固形分換算の酸価が41.8mgKOH/g、固形分換算の二重結合当量が741.2、不揮発分が65.1質量%であった。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂溶液を、R−1ワニスと称す。
【0060】
上記合成例1〜3及び比較合成例のカルボキシル基含有樹脂溶液を用い、表1に示す種々の成分とともに表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、アルカリ現像型ソルダーレジストを調製した。ここで、得られたアルカリ現像型ソルダーレジストの分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ15μm以下であった。





【0061】
【表1】


【0062】
性能評価:
<表面硬化性>
このようにして調製した実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストを、ライン/スペースが300/300、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で60分間乾燥させる。乾燥後、最大波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて露光した。露光パターンは全面露光パターンを使用した。露光量は、アルカリ現像型ソルダーレジスト上40mJ/cmとなるように活性エネルギー線を照射した。露光後、現像(30℃、0.2MPa、1質量%炭酸ナトリウム水溶液)を60秒で行ってパターンを描き、150℃×60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。
このようにして得られた硬化塗膜の表面硬化性は、光沢度計マイクロトリグロス(ビッグガードナー社製)を用いて60°時の光沢度について評価した。評価基準は現像後の光沢度50以上を良好、光沢度50未満を不良とした。その評価結果を表2に示す。
【0063】
<断面形状>
実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストを、ライン/スペースが300/300、銅厚50μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させる。乾燥後、波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて露光した。露光パターンは、スペース部に20/30/40/50/60/70/80/90/100μmのラインを描画させるパターンを使用した。露光量は、上記最適露光量評価によって得られた露光量とした。露光後、炭酸ナトリウム水溶液によって現像を行ってパターンを形成し、高圧水銀灯で1000mJ/cmの紫外線照射後、150℃,60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。硬化塗膜の設計値100μmライン部のクロスセクションを観察した。
この形状を図面に記載した模式図のように、A〜Eの5段階に別けて評価した。図面は、以下のような現象が発生した時の模式図を示す。特に、A評価の場合、設計値からのずれがライン上部、下部ともに5μm以内のものとした。その結果を表2に示す。
A評価:設計幅通りの理想状態
B評価:耐現像性不足等による表面層の食われ発生
C評価:アンダーカット状態
D評価:ハレーション等による線太り発生
E評価:表面層の線太りとアンダーカットが発生
【0064】
<適正露光量>
実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストを、各評価基板の全面にスクリーン印刷により塗布した。その後、熱風循環式乾燥機で乾燥した後の塗膜に50〜130μmのラインのネガパターンをのせて波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて露光した。その後、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像処理した。この時、コダックステップタブレットNo.2(21段)で、7段の残存感度が認められる露光量を、適正露光量とした。
【0065】
<吸光度>
吸光度の測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製 Ubest−V−570DS)、及び積分球装置(日本分光株式会社製 ISN−470)を使用した。実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストをガラス板にアプリケーター塗布後、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃,30分乾燥し、アルカリ現像型ソルダーレジストの乾燥塗膜をガラス板上に作製した。紫外可視分光光度計及び積分球装置を用いて、アルカリ現像型ソルダーレジストを塗布したガラス板と同一のガラス板で、500〜300nmにおける吸光度ベースラインを測定した。作製した乾燥塗膜付きガラス板の吸光度を測定し、ベースラインから乾燥塗膜の吸光度を算出でき、目的の光の波長355nmにおける吸光度を得た。塗布膜厚のずれによる吸光度のずれを防ぐため、この作業をアプリケーターによる塗布厚を4段階に変えて行い、塗布厚と355nmにおける吸光度のグラフを作成し、その近似式から膜厚25μmの乾燥塗膜の吸光度を算出して、それぞれの吸光度とした。
その評価結果を表2に示す。
【0066】
<深部硬化性>
上記実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストを、ライン/スペースが300/300、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により、乾燥塗膜が35μmとなるように塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させる。乾燥後、最大波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて露光した。露光パターンはスペース部に20/30/40/50/60/70/80/90/100μmのラインを描画させるパターンを使用した。露光量は、それぞれ上記適正露光量で露光した。露光後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によって現像を行ってパターンを描き、150℃×60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。
得られたアルカリ現像型ソルダーレジストの硬化塗膜の最小残存ラインを200倍に調整した光学顕微鏡を用いてカウントした。また、ライン中央部を切断し、鏡面仕上げを行った後、1000倍に調整した光学顕微鏡を用いて硬化塗膜の最小残存ラインの上部径、下部径、膜厚を測長した。評価基準は最小残存ラインが小さい場合ほど、さらに下部径が設計値に近いほど深部硬化性が良好とした。その評価結果を表2に示す。
【0067】
<塗膜の色>
上記実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストを、前述の表面硬化性を調べた条件と同様に硬化して、硬化物の色を目視にて、判断した。
【0068】
<無電解金めっき耐性>
上記実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストを、回路形成されたFR−4基板にスクリーン印刷で全面塗布した。その後、80℃の熱風循環式乾燥機で30分間乾燥した後、ネガパターンをのせて波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて、上記適正露光量で露光した。その後、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像処理した。
このようにして得られた評価基板を、市販の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル3μm、金0.03μmの条件でめっきを行ない、硬化塗膜の表面状態の観察を行なった。判定基準は以下の通りである。
◎:全く変化のないもの。
○:ほとんど変化がないもの。
△:剥がれもしくは曇りが生じたもの。
×:顕著に剥がれもしくは曇りが生じたもの。
【0069】
<煮沸試験>
上記実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストを、回路形成されたFR−4基板にスクリーン印刷で全面塗布した。その後、80℃の熱風循環式乾燥機で30分間乾燥した後、ネガパターンをのせて波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて、上記適正露光量で露光した。その後、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像処理した。
このようにして得られた評価基板を、水溶性フラックスのメック(株)W121を使用し、260℃のはんだ槽に浸漬後、沸騰水中で2時間煮沸し、硬化物の色の変化を目視にて、判断した。判定基準は以下の通りである。
○:全く変化が認められないもの。
△:ほんの僅かに変色が認められるもの。
×:塗膜全体が白く変色しているもの。
【0070】
<吸水率>
予め質量を測定したガラス板に、上記実施例1〜7及び比較例1〜4のアルカリ現像型ソルダーレジストをスクリーン印刷法で塗布し、熱風循環式乾燥炉で80℃、30分乾燥させた。乾燥後、最大波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて、上記適正露光量で全面露光した。露光後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液による現像工程を通した後、150℃×60分の熱硬化をすることにより、評価サンプルを得た。これを室温まで冷却した後、評価サンプルの質量を測定した。
次に、この評価サンプルを、23℃±2℃のイオン交換水に、24時間浸漬後の重量変化を測定した。
吸水率=(W2−W1)/(W1−Wg)
ここで、W1は評価サンプルの質量、W2はイオン交換水に、24時間浸漬後の評価サンプルの質量、Wgはガラス板の質量である。
【0071】
【表2】


【0072】
露光機を、最大波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置から、メタルハライドランプ搭載の接触露光機(ORC社製のGW20)に変えて、同様の特性評価を行った。
その結果を表3に示す。












【0073】
【表3】


【0074】
前記表2に示す結果からわかるように、本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストは、350〜375nmのレーザー光に対して高い光重合能力を発揮できると共に、十分な深部硬化性が得られ、無電解金めっき耐性、煮沸耐性、吸水率に優れることが判る。一方、オキシム系光重合開始剤を用いなかった比較例1、3は、断面形状、最小残存ライン幅が劣っている。また、比較例2は、本発明の構成成分を全て含んでいるが、吸光度が本発明の範囲外であるため、表面硬化性、断面形状が劣っていた。さらに、汎用のカルボキシル基含有感光性樹脂を用いた比較例4は、表面硬化性、吸水率等が劣っていた。
尚、表2と表3を比較すると、露光機を最大波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置から、メタルハライドランプ搭載の接触露光機に変えた時、断面形状が劣ったものとなり、本発明のアルカリ現像型ソルダーレジストが最大波長350〜375nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置に適していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】露光・現像によって得られた樹脂組成物の断面形状の模式図
【符号の説明】
【0076】
1a ライン幅の設計値
1b 露光・現像後の樹脂組成物
1c 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、(b)不飽和モノカルボン酸を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させ、再度(c)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)下記一般式(I)で表わされるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤、
【化1】



(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。)

(C)1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)熱硬化性成分を含んでなる希アルカリ溶液により現像可能な組成物であって、最大波長がその乾燥塗膜の波長350〜375nmにおける吸光度が、25μmあたり0.3〜1.2であることを特徴とするアルカリ現像型ソルダーレジスト。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)の合成に用いられる不飽和モノカルボン酸(b)が、アクリル酸又はメタクリル酸(b−1)と、下記一般式(II)で表わされる
【化2】



(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表わし、mは、3〜7のいずれかの整数を表わし、nは、平均値であり、1〜4の値を表わす。)

化合物(b−2)を併用して用いることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト。
【請求項3】
(A)(a)1分子中に2つ以上の環状エーテル基又は環状チオエーテル基を持つ化合物に、アクリル酸又はメタクリル酸(b−1)と、下記一般式(II)で表わされる
【化3】



(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表わし、mは、3〜7のいずれかの整数を表わし、nは、平均値であり、1〜4の値を表わす。)

化合物(b−2)を反応させた後、(c)多塩基酸無水物を反応させた樹脂に、さらに(d)1分子中に環状エーテル基とエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物を反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂、
(B)下記一般式(I)で表わされるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤、
【化4】



(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。)

(C)1分子中分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)熱硬化性成分を含んでなる希アルカリ溶液により現像可能な組成物であって、最大波長がその乾燥塗膜の波長350〜375nmにおける吸光度が、25μmあたり0.3〜1.2であることを特徴とするアルカリ現像型ソルダーレジスト。
【請求項4】
更に、(E)下記一般式(III)で表わされる構造を持つアミノアセトフェノン系光重合開始剤、
【化5】



(式中、R4、R5は、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表わし、R6、R7は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は2つが結合した環状アルキル基を表わす。)
もしくは、(F)下記一般式(IV)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤
【化6】



(式中、R8、R9は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されたアリール基、又はいずれか一方が炭素数1〜20のカルボニル基を表わす。)

のいずれか一方、もしくは2種類を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト。
【請求項5】
前記一般式(I)で表わされるオキシムエステル基を含むオキシムエステル系光重合開始剤(B)が、下記式(V)で表わされる
【化7】



化合物、もしくは下記式(VI)、又は下記式(VII)で表わされる
【化8】



【化9】



化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト
【請求項6】
更に、(G)フィラーを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト。
【請求項7】
前記熱硬化性成分(D)が、1分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジストを、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られるアルカリ現像型ソルダーレジストのドライフィルム。
【請求項9】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト、又は前記請求項8記載のドライフィルムを、銅上にて光硬化して得られる硬化物。
【請求項10】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト、又は前記請求項8記載のドライフィルムを、レーザー発振光源にて光硬化して得られる硬化物。
【請求項11】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアルカリ現像型ソルダーレジスト、又は前記請求項8記載のドライフィルムを、最大波長が350〜375nmのレーザー光によって光硬化させた後、熱硬化して得られるプリント配線板。



【図1】
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【公開番号】特開2007−286138(P2007−286138A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110411(P2006−110411)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】