インサート材を備えた樹脂成形品及びその製造方法
【課題】インサート材の周囲に樹脂部を備え、強度と美観を向上させた樹脂成形品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】凹部を有するシート材4と、凹部に配置され、裏面がシート材4の表面に接着した平板状のインサート材3と、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部7と、を備えた。
【解決手段】凹部を有するシート材4と、凹部に配置され、裏面がシート材4の表面に接着した平板状のインサート材3と、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部7と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性のインサート材の外周を囲むように樹脂部が形成された樹脂成形品、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス等の透明性のインサート材の外周を囲むように樹脂部が形成された樹脂成形品が存在する。しかし、インサート材とインサート材の外周に形成された樹脂部との接合は一般的にそれほど強固なものではないので、樹脂成形品に曲げ力等の外力が作用した場合に、両者の接合が緩んでインサート材が樹脂部から外れることもある。こうしたことに鑑みて、図14に示すように、樹脂部7にインサート材3の受け部を形成してインサート材3の下部の支持を強化したものがある(特許文献1参照)。また、加飾が施された樹脂成形品として、図15に示すように、インサート材3の周囲の樹脂部7の表面に加飾層12aが転写された樹脂成形品がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−154479号公報
【特許文献2】特開2005−144986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14に示す樹脂成形品では、樹脂部7にインサート材3の受け部が形成されているので、樹脂成形品全体の厚みがその分厚くなる。また、インサート材3を表示部として使用する場合に、樹脂部7に不透明な樹脂を用いると、インサート材3と樹脂部7とが積層される部分は表示部として利用できず、インサート材3の表示部としての面積が小さくなる。図15に示す樹脂成形品では、樹脂成形品の表面の樹脂部7に形成される加飾転写層12aによってガラス等のインサート材3の露出面にバリが発生し、樹脂成形品の美観を損なうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、インサート材の周囲に樹脂部を備え、強度と美観を向上させた樹脂成形品、及びその製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂成形品の第1の特徴構成は、凹部を有するシート材と、
前記凹部に配置され、裏面が前記シート材の表面に接着した平板状のインサート材と、
前記シート材の表面が前記インサート材の側面に密着するように、前記シート材の裏面、かつ前記インサート材の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部と、を備えた点にある。
【0007】
この構成により、樹脂成形品のインサート材は、その裏面がシート材の表面に接着されてシート材の凹部に配置される。そして、インサート材の側面には、シート材の表面が密着するように樹脂部が射出成形により環状に形成されているので、樹脂部の射出成形の際に働く樹脂の収縮力によりインサート材の側面に位置するシート材がインサート材に向けて押し付けられて、インサート材の側面とシート材との密着度が増す。その結果、インサート材の裏面とシート材の表面との接着と、インサート材の側面とシート材の表面との密着により、インサート材がシート材の凹部内に安定的に保持される。また、シート材の凹部によってインサート材は底面と側面の両方が保持されて、樹脂成形品の剛性も高まる。さらに、樹脂成形品の表面側は、インサート材とシート材との境界が明確になり、例えば、樹脂がインサート材の表面に被るようなこともなく、外観が優れたものとなる。
【0008】
本発明に係る樹脂成形品の第2の特徴構成は、前記シート材が、前記インサート材の周縁部と嵌合する嵌合部を含む点にある。
【0009】
本構成により、樹脂成形品のインサート材の周縁部とシート材の嵌合部とが嵌合するので、インサート材の厚み方向の少なくとも一方への移動が抑制される。したがって、インサート材がシート材の凹部内に、より安定的に保持される。
【0010】
本発明に係る樹脂成形品の第3の特徴構成は、前記インサート材の裏面と、前記樹脂部の裏面とが面一状に設定された点にある。
【0011】
この構成により、樹脂成形品の裏面がほぼ平らになって、静電容量センサー等の貼り合せが容易となる。また、樹脂成形品を電子機器等の筐体に装着する際にも樹脂成形品の裏面がほぼ平らであるので容易に行うことができる。さらに、樹脂成形品の厚みをインサート材の厚みまで薄くすることができ、樹脂成形品の適用範囲が広がる。
【0012】
本発明に係る樹脂成形品の第4の特徴構成は、前記樹脂部は透明であり、前記樹脂部の裏面に成形同時転写された加飾層を更に備えた点にある。
【0013】
この構成により、樹脂成形品の樹脂部に加飾が施されるとともに、樹脂部の表面側から視認される加飾層は、透明な樹脂部が介在して深みのある意匠となって、樹脂成形品の美観が向上した。また、この加飾層によって、樹脂成形品を電子機器等の筐体に装着した際にインサート材の周囲の樹脂部の下部を隠蔽することもできる。
【0014】
本発明に係る樹脂成形品の第5の特徴構成は、前記シート材は、前記樹脂部の表面に対応する部分に加飾層を含む点にある。
【0015】
この構成により、樹脂成形品のインサート材の周囲を容易に加飾することができた。また、シート材は、樹脂部の表面に対応する部分に加飾層を含むので、樹脂部が透明性を有していなくても、樹脂成形品の表面側からシート材越しに加飾層を視認することができる。さらに、樹脂成形品の加飾層はシート材で保護されているので、加飾層が磨耗することもない。
【0016】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の第1の特徴手段は、平板状のインサート材に樹脂製のシート材を接着して複合インサート材を作製する工程と、
第1型に前記インサート材が接するように前記複合インサート材を配置する工程と、
前記第1型に配置された前記複合インサート材の前記シート材を吸引して、前記シート材を前記第1型に沿わせる工程と、
前記第1型と第2型とを型締めして、前記第2型と前記シート材との間に樹脂注入用のキャビティを形成する工程と、
前記キャビティに樹脂を注入して、前記インサート材の側面に前記シート材が密着するように前記インサート材の周囲に樹脂部を成形する工程と、を備えた点にある。
【0017】
この特徴手段により、シート材の表面がインサート材の側面に密着するように、シート材の裏面かつインサート材の周囲に、樹脂部が射出成形により環状に形成された樹脂成形品が製造できた。その結果、本発明に係る樹脂成形品の前記特徴構成において述べたように、インサート材の裏面とシート材の表面との接着と、インサート材の側面とシート材の表面との密着により、インサート材がシート材の凹部内に安定的に保持された樹脂成形品が得られた。
【0018】
また、先に、シート材に平板状のインサート材が接着した複合インサート材を作製してから、作製した複合インサート材を第1型に配置するので、金型内で複合インサート材に係るインサート材とシート材との位置ずれが抑制される。こうして、複合インサート材におけるインサート材とシート材の位置が保持された、良好な樹脂成形品を容易に製造できた。なお、シート材は、インサート材が例えばガラス等のように外力を受けて飛散する材料である場合に、インサート材の飛散を防止する役割も兼用する。
【0019】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の第2の特徴手段は、前記第1型と前記第2型との型締め前に、前記第2型に加飾シートを配置する工程を備えた点にある。
【0020】
この特徴手段により、樹脂部の成形と同時に、樹脂部の裏面に加飾が施されることとなる。ここで、樹脂部の加飾された部分は、樹脂部が透明性を有する場合に、樹脂成形品の表面側から樹脂部を介して視認されるため深みのある意匠となる。さらに、製造された樹脂成形品は、樹脂部に加飾が施されることで、樹脂部の下部を隠蔽することも可能となった。
【0021】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の第3の特徴手段は、前記シート材として、前記インサート材が接着する部分の周囲であって、前記インサート材が接着する側とは反対の面に加飾層が形成されたシート材を用いる点にある。
【0022】
この特徴手段により、シート材には予め加飾層が形成されているので、加飾シートの送り装置を金型に別途設けることなく、樹脂成形品のインサート材の周囲を加飾することができた。このように、樹脂成形品のインサート材の周囲への加飾が容易に行えるとともに、樹脂成形品の製造に用いる射出成形装置を簡素化できる。さらに、製造された樹脂成形品の加飾層はシート材で保護されているので、加飾層が磨耗することもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る複合インサート材を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程示す図である。
【図6】は第1実施形態に係る樹脂成形品の斜視図であり、(a)は樹脂成形品の表面(インサート材が露出する面)であり、(b)は樹脂成形品の裏面である。
【図7】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図11】別実施形態に係る樹脂成形品を示す図である。
【図12】別実施形態に係る樹脂成形品を示す図である。
【図13】別実施形態に係る樹脂成形品を示す図である。
【図14】従来の透明性インサート材を備えた樹脂成形品を示す断面図である。
【図15】従来の透明性インサート材を備えた樹脂成形品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る樹脂成形品について及び当該樹脂成形品の製造工程につき図1乃至図6を用いて説明する。
本発明に係る樹脂成形品は、凹部を有するシート材4と、シート材4の凹部に配置され、裏面がシート材4の表面に接着した平板状のインサート材3と、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部7とで構成されたものであり、以下の製造工程を経て製造される。
【0025】
〔第1実施形態〕
[複合インサート材を形成する工程]
インサート材3をシート材4の所定位置(シート材4の中央辺り)に接着層5(両面テープ等の感圧接着剤)により接着し、複合インサート材6を作製する。インサート材3は例えば、透明なガラスであって、両面の周縁部が面取りされており、厚みは例えば0.7mm〜1.5mmである。インサート材3として、アクリル等の合成樹脂を用いてもよく、透明でなくてもよい。なお、この発明において、インサート材3の「透明」とは、透明な物の向こう側を視認することができればよく、半透明を含む。また、シート材4及び樹脂部7の「透明」についても同様であり、半透明を含む。
【0026】
シート材4は、例えば、透明なアクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化テレフタレート(PET)等の樹脂であり、シート材4の厚みは例えば100μm〜200μmである。なお、シート材4は透明でなくてもよい。シート材4は、インサート材3が例えばガラス等のように外力を受けて飛散する材料である場合に、インサート材3の飛散を防止する役割も兼用する。
【0027】
次に、本発明に係る樹脂成形品の製造に用いる金型について説明する。
〔第1型〕
第1型1には、複合インサート材6を挿入する凹部を形成してある。第1型1の端部には、複合インサート材6を位置固定するための位置固定部1bが備えられている。当該位置固定部1bは、例えば、複合インサート材6のシート材4の孔部4aに係入可能な突起部である。このような突起部を複数箇所に形成しておく。
【0028】
第1型1には吸引部8を設けてあり、この吸引部8によって、第1型1に配置される複合インサート材6のシート材4を吸引して、シート材4を第1型1の凹部に沿わせる。また、この吸引部8は、形成した樹脂成形品Pを第1型1から取り出すために、図外の押出部材を挿入したり、高圧空気を供給する部位として利用する。なお、このシート材4の吸引に先立ち、クランプ(不図示)によってシート材4の周囲を第1型1に密着保持させる。
【0029】
〔第2型〕
第2型2は、第1型1と型締めしてキャビティ9を形成する。第2型2と第1型1とは、例えば、両者の近接・離間方向に対して直角な方向に相対移動可能に形成しておく。これにより、複合インサート材6を第1型1に装着する際には、第2型2を別の位置に待機させておき、複合インサート材6の装着後に第2型2を型締め可能な位置に移動させると良い。
【0030】
〔樹脂成形の処理手順〕
図2に示すように、図外のマニピュレータ等を用いてインサート材3が第1型1に接するように第1型1の所定の位置に複合インサート材6を配置する。第1型1の位置固定部1bは複合インサート材6のシート材4の孔部4aに係入させる。その後、シート材4の周囲はクランプ(不図示)によって第1型1に密着保持される。
【0031】
次に、図3に示すように、マニピュレータに取付けたヒーター11でシート材4を加熱した後、第1型1の吸引部8でシート材4を真空吸引して、シート材4の表面をインサート材3の側面に沿わせつつ、第1型1にも沿わせる。
【0032】
次に、図4に示すように、第2型2に第1型1を近接させ型締めする。このとき、第2型2とインサート材3の裏面側のシート材4とが当接し、シート材4と第2型2との間にキャビティ9が形成される。
【0033】
次に、第2型2に形成したゲート10からキャビティ9に樹脂を注入して、インサート材3の側面にシート材4が密着するように、樹脂部7を成形する。樹脂がある程度硬化したのち第1型1を離間させ型締めを開放し、成形品を第1型1から取り外す。その後、成形品の外周のシート材4をカットして樹脂成形品Pを得る(図5)。
【0034】
図6は樹脂成形品Pの斜視図であり、(a)は樹脂成形品の表面(インサート材が露出する面)、(b)は樹脂成形品の裏面を示している。図6に示すように、樹脂成形品Pは、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形された樹脂部7を備える。こうして、インサート材3がシート材4の凹部に安定的に保持された樹脂成形品Pを得ることができた。
【0035】
樹脂成形品Pの樹脂部7の厚みは自由に設定できるが、例えば、図6に示すように、インサート材3の裏面と、樹脂部7の裏面とが面一状に設定されていると、樹脂成形品Pの裏面が平板状になって、静電容量センサー等の貼り合せが容易となる。また、樹脂成形品Pを電子機器等の筐体に装着する際にも樹脂成形品Pの裏面が平板状であるので容易に行うことができる。さらに、樹脂成形品Pの厚みをインサート材3の厚みまで薄くすることができ、樹脂成形品Pの適用範囲が広がる。
【0036】
なお、インサート材3が合成樹脂である場合には、通常剛性が低いので、厚みの薄いインサート材3を用いると射出成形の際に働く樹脂の収縮力を受けてインサート材3が変形する可能性がある。しかし、インサート材3がガラスである場合には、硬度が十分あるので、厚みの薄いインサート材3を用いても射出成形の際に働く樹脂の収縮力によってインサート材3が変形する可能性は低い。したがって、インサート材3としてガラスを用いた場合の方が、樹脂成形品Pの薄肉化を図り易い。
【0037】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態を図7〜図10に示す。当該実施形態では、第2型2に加飾シートの一例として加飾フィルム(転写箔)12を配置する(図7)。図示は省略するが、第2型2にも加飾フィルム12を第2型2のキャビティ面の側に吸引する吸引部を設けるとよい。
【0038】
図7に示すように、図外のマニピュレータ等を用いてインサート材3が第1型1に接するように第1型1の所定の位置に複合インサート材6を配置する。第1型1の位置固定部1bは複合インサート材6のシート材4の孔部4aに係入させる。その後、シート材4の周囲はクランプ(不図示)によって第1型1に密着保持される。
【0039】
次に、図8に示すように、マニピュレータに取付けたヒーター11でシート材4を加熱した後、第1型1の吸引部8でシート材4を真空吸引して、シート材4の表面をインサート材3の側面に沿わせつつ、第1型1にも沿わせ、加飾フィルム12を第2型2の所定の位置に配置したのち、第1型1と第2型2を型締めし、ゲート10から樹脂を注入する(図9)。このとき、樹脂部7の成形と同時に樹脂部7の裏面に加飾フィルム12の加飾層12aが転写され、樹脂成形品Pの樹脂部7の裏面に加飾層12aが形成される。この場合、樹脂成形品Pの樹脂部7は透明である方が好ましい。
【0040】
その後、第1実施形態と同様にして成形品を取り出し、不要なシート材4をカットして樹脂成形品Pを得る(図10)。樹脂成形品Pは、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形された樹脂部7を備え、更に樹脂部7の裏面に成形同時転写された加飾層12aを備える。樹脂部7が透明であると、加飾層12aは、樹脂部7の表面側から視認され、透明な樹脂部7が介在して深みのある意匠となって、樹脂成形品Pの美観を向上させる。
【0041】
第2型2に配置される加飾フィルム12は、樹脂部7に融着される加飾層12aとハンドリング用の基体シート12bとが一体化されており、加飾層12aが樹脂部7に転写された後の任意の工程で基体シート12bは剥がされる。加飾層12aは一般に、最終的な樹脂成形品Pの最外層となる剥離保護層と、樹脂層に融着される接着層とを有し、一般的に剥離保護層と接着層との間に図柄層が設けられている。
【0042】
基体シート12bの材質としては、例えば、ポロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいはこれらが複合されたシートなどを用いることができる。また、基体シート12bの剥離性を高めるために、基体シート12bと加飾部12aとの間にアミノアルキド系樹脂等からなる離型層を形成してもよい。基体シート12bの厚みとしては、5〜500μmが好ましい。
【0043】
剥離保護層の材質としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いることができる。剥離保護層に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いてもよい。
【0044】
接着層は、融着させる対象の樹脂と親和性の高い材質を選択すべきである。例えば、被転写物の材質がアクリル系樹脂の場合には、アクリル系樹脂を用いるとよい。また、被転写物の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを用いるとよい。また、樹脂成形品の材質がポリプロピレン樹脂の場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を用いるとよい。接着層の厚みは、0.5〜50μmが好ましい。
【0045】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、いずれも、インサート材3の側面にシート材4が密着する構成を示したが、図11に示すように、シート材4は、インサート材3の周縁部と嵌合するに嵌合部4Aを含んでもよい。こうすると、樹脂成形品に外力が加わってインサート材3が露出する側に抜け出ようとしても、シート材4の嵌合部4Aがインサート材3の露出する側への動きを阻止するので、インサート材3の位置が維持される。
【0046】
(2)上記の第2実施形態では、加飾フィルム12(転写箔)を用いて樹脂部7の裏面に加飾層12aを転写する構成を示したが、これに代えて、図12に示すように、シート材4は、樹脂部7の表面に対応する部分に加飾層13を含んでもよい。加飾層13は、図柄層や接着層等を備えており、印刷や接着等の各種構成を用いてシート材4に形成される。こうすると、加飾シート送り装置を金型に備える必要がなくなり、樹脂成形品の表面側のインサート材3の周囲に加飾層13を容易に形成することができる。シート材4の樹脂部7の表面に対応する部分に加飾層13が形成されているので、樹脂部7が透明性を有していなくても、樹脂成形品の表面側からシート材4越しに加飾層13を視認することができる。さらに、樹脂成形品の加飾層13はシート材4で保護されているので、加飾層13が磨耗することもない。
【0047】
(3)上記実施形態では、いずれも、樹脂成形品に平板状のインサート材3を1つだけ配置しているが、図13に示すように、インサート材3を複数配置してもよい。また、インサート材3として、ガラスやアクリル樹脂の他、各種金属や石等を用いて意匠性を向上させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る樹脂成形品は、電子機器の表示部を有する各種機器の筐体や、各種の内装品、外装品等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 第1型
1b 位置固定部
2 第2型
3 インサート材
4 シート材
4A 嵌合部
4a 孔部
5 接着層
6 複合インサート材
7 樹脂部
8 吸引部
9 キャビティ
10 ゲート
12 加飾シート
12a,13 加飾層
P 樹脂成形品
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性のインサート材の外周を囲むように樹脂部が形成された樹脂成形品、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス等の透明性のインサート材の外周を囲むように樹脂部が形成された樹脂成形品が存在する。しかし、インサート材とインサート材の外周に形成された樹脂部との接合は一般的にそれほど強固なものではないので、樹脂成形品に曲げ力等の外力が作用した場合に、両者の接合が緩んでインサート材が樹脂部から外れることもある。こうしたことに鑑みて、図14に示すように、樹脂部7にインサート材3の受け部を形成してインサート材3の下部の支持を強化したものがある(特許文献1参照)。また、加飾が施された樹脂成形品として、図15に示すように、インサート材3の周囲の樹脂部7の表面に加飾層12aが転写された樹脂成形品がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−154479号公報
【特許文献2】特開2005−144986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14に示す樹脂成形品では、樹脂部7にインサート材3の受け部が形成されているので、樹脂成形品全体の厚みがその分厚くなる。また、インサート材3を表示部として使用する場合に、樹脂部7に不透明な樹脂を用いると、インサート材3と樹脂部7とが積層される部分は表示部として利用できず、インサート材3の表示部としての面積が小さくなる。図15に示す樹脂成形品では、樹脂成形品の表面の樹脂部7に形成される加飾転写層12aによってガラス等のインサート材3の露出面にバリが発生し、樹脂成形品の美観を損なうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、インサート材の周囲に樹脂部を備え、強度と美観を向上させた樹脂成形品、及びその製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂成形品の第1の特徴構成は、凹部を有するシート材と、
前記凹部に配置され、裏面が前記シート材の表面に接着した平板状のインサート材と、
前記シート材の表面が前記インサート材の側面に密着するように、前記シート材の裏面、かつ前記インサート材の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部と、を備えた点にある。
【0007】
この構成により、樹脂成形品のインサート材は、その裏面がシート材の表面に接着されてシート材の凹部に配置される。そして、インサート材の側面には、シート材の表面が密着するように樹脂部が射出成形により環状に形成されているので、樹脂部の射出成形の際に働く樹脂の収縮力によりインサート材の側面に位置するシート材がインサート材に向けて押し付けられて、インサート材の側面とシート材との密着度が増す。その結果、インサート材の裏面とシート材の表面との接着と、インサート材の側面とシート材の表面との密着により、インサート材がシート材の凹部内に安定的に保持される。また、シート材の凹部によってインサート材は底面と側面の両方が保持されて、樹脂成形品の剛性も高まる。さらに、樹脂成形品の表面側は、インサート材とシート材との境界が明確になり、例えば、樹脂がインサート材の表面に被るようなこともなく、外観が優れたものとなる。
【0008】
本発明に係る樹脂成形品の第2の特徴構成は、前記シート材が、前記インサート材の周縁部と嵌合する嵌合部を含む点にある。
【0009】
本構成により、樹脂成形品のインサート材の周縁部とシート材の嵌合部とが嵌合するので、インサート材の厚み方向の少なくとも一方への移動が抑制される。したがって、インサート材がシート材の凹部内に、より安定的に保持される。
【0010】
本発明に係る樹脂成形品の第3の特徴構成は、前記インサート材の裏面と、前記樹脂部の裏面とが面一状に設定された点にある。
【0011】
この構成により、樹脂成形品の裏面がほぼ平らになって、静電容量センサー等の貼り合せが容易となる。また、樹脂成形品を電子機器等の筐体に装着する際にも樹脂成形品の裏面がほぼ平らであるので容易に行うことができる。さらに、樹脂成形品の厚みをインサート材の厚みまで薄くすることができ、樹脂成形品の適用範囲が広がる。
【0012】
本発明に係る樹脂成形品の第4の特徴構成は、前記樹脂部は透明であり、前記樹脂部の裏面に成形同時転写された加飾層を更に備えた点にある。
【0013】
この構成により、樹脂成形品の樹脂部に加飾が施されるとともに、樹脂部の表面側から視認される加飾層は、透明な樹脂部が介在して深みのある意匠となって、樹脂成形品の美観が向上した。また、この加飾層によって、樹脂成形品を電子機器等の筐体に装着した際にインサート材の周囲の樹脂部の下部を隠蔽することもできる。
【0014】
本発明に係る樹脂成形品の第5の特徴構成は、前記シート材は、前記樹脂部の表面に対応する部分に加飾層を含む点にある。
【0015】
この構成により、樹脂成形品のインサート材の周囲を容易に加飾することができた。また、シート材は、樹脂部の表面に対応する部分に加飾層を含むので、樹脂部が透明性を有していなくても、樹脂成形品の表面側からシート材越しに加飾層を視認することができる。さらに、樹脂成形品の加飾層はシート材で保護されているので、加飾層が磨耗することもない。
【0016】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の第1の特徴手段は、平板状のインサート材に樹脂製のシート材を接着して複合インサート材を作製する工程と、
第1型に前記インサート材が接するように前記複合インサート材を配置する工程と、
前記第1型に配置された前記複合インサート材の前記シート材を吸引して、前記シート材を前記第1型に沿わせる工程と、
前記第1型と第2型とを型締めして、前記第2型と前記シート材との間に樹脂注入用のキャビティを形成する工程と、
前記キャビティに樹脂を注入して、前記インサート材の側面に前記シート材が密着するように前記インサート材の周囲に樹脂部を成形する工程と、を備えた点にある。
【0017】
この特徴手段により、シート材の表面がインサート材の側面に密着するように、シート材の裏面かつインサート材の周囲に、樹脂部が射出成形により環状に形成された樹脂成形品が製造できた。その結果、本発明に係る樹脂成形品の前記特徴構成において述べたように、インサート材の裏面とシート材の表面との接着と、インサート材の側面とシート材の表面との密着により、インサート材がシート材の凹部内に安定的に保持された樹脂成形品が得られた。
【0018】
また、先に、シート材に平板状のインサート材が接着した複合インサート材を作製してから、作製した複合インサート材を第1型に配置するので、金型内で複合インサート材に係るインサート材とシート材との位置ずれが抑制される。こうして、複合インサート材におけるインサート材とシート材の位置が保持された、良好な樹脂成形品を容易に製造できた。なお、シート材は、インサート材が例えばガラス等のように外力を受けて飛散する材料である場合に、インサート材の飛散を防止する役割も兼用する。
【0019】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の第2の特徴手段は、前記第1型と前記第2型との型締め前に、前記第2型に加飾シートを配置する工程を備えた点にある。
【0020】
この特徴手段により、樹脂部の成形と同時に、樹脂部の裏面に加飾が施されることとなる。ここで、樹脂部の加飾された部分は、樹脂部が透明性を有する場合に、樹脂成形品の表面側から樹脂部を介して視認されるため深みのある意匠となる。さらに、製造された樹脂成形品は、樹脂部に加飾が施されることで、樹脂部の下部を隠蔽することも可能となった。
【0021】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の第3の特徴手段は、前記シート材として、前記インサート材が接着する部分の周囲であって、前記インサート材が接着する側とは反対の面に加飾層が形成されたシート材を用いる点にある。
【0022】
この特徴手段により、シート材には予め加飾層が形成されているので、加飾シートの送り装置を金型に別途設けることなく、樹脂成形品のインサート材の周囲を加飾することができた。このように、樹脂成形品のインサート材の周囲への加飾が容易に行えるとともに、樹脂成形品の製造に用いる射出成形装置を簡素化できる。さらに、製造された樹脂成形品の加飾層はシート材で保護されているので、加飾層が磨耗することもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る複合インサート材を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る樹脂成形品の成形工程示す図である。
【図6】は第1実施形態に係る樹脂成形品の斜視図であり、(a)は樹脂成形品の表面(インサート材が露出する面)であり、(b)は樹脂成形品の裏面である。
【図7】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る樹脂成形品の成形工程を示す図である。
【図11】別実施形態に係る樹脂成形品を示す図である。
【図12】別実施形態に係る樹脂成形品を示す図である。
【図13】別実施形態に係る樹脂成形品を示す図である。
【図14】従来の透明性インサート材を備えた樹脂成形品を示す断面図である。
【図15】従来の透明性インサート材を備えた樹脂成形品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る樹脂成形品について及び当該樹脂成形品の製造工程につき図1乃至図6を用いて説明する。
本発明に係る樹脂成形品は、凹部を有するシート材4と、シート材4の凹部に配置され、裏面がシート材4の表面に接着した平板状のインサート材3と、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部7とで構成されたものであり、以下の製造工程を経て製造される。
【0025】
〔第1実施形態〕
[複合インサート材を形成する工程]
インサート材3をシート材4の所定位置(シート材4の中央辺り)に接着層5(両面テープ等の感圧接着剤)により接着し、複合インサート材6を作製する。インサート材3は例えば、透明なガラスであって、両面の周縁部が面取りされており、厚みは例えば0.7mm〜1.5mmである。インサート材3として、アクリル等の合成樹脂を用いてもよく、透明でなくてもよい。なお、この発明において、インサート材3の「透明」とは、透明な物の向こう側を視認することができればよく、半透明を含む。また、シート材4及び樹脂部7の「透明」についても同様であり、半透明を含む。
【0026】
シート材4は、例えば、透明なアクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化テレフタレート(PET)等の樹脂であり、シート材4の厚みは例えば100μm〜200μmである。なお、シート材4は透明でなくてもよい。シート材4は、インサート材3が例えばガラス等のように外力を受けて飛散する材料である場合に、インサート材3の飛散を防止する役割も兼用する。
【0027】
次に、本発明に係る樹脂成形品の製造に用いる金型について説明する。
〔第1型〕
第1型1には、複合インサート材6を挿入する凹部を形成してある。第1型1の端部には、複合インサート材6を位置固定するための位置固定部1bが備えられている。当該位置固定部1bは、例えば、複合インサート材6のシート材4の孔部4aに係入可能な突起部である。このような突起部を複数箇所に形成しておく。
【0028】
第1型1には吸引部8を設けてあり、この吸引部8によって、第1型1に配置される複合インサート材6のシート材4を吸引して、シート材4を第1型1の凹部に沿わせる。また、この吸引部8は、形成した樹脂成形品Pを第1型1から取り出すために、図外の押出部材を挿入したり、高圧空気を供給する部位として利用する。なお、このシート材4の吸引に先立ち、クランプ(不図示)によってシート材4の周囲を第1型1に密着保持させる。
【0029】
〔第2型〕
第2型2は、第1型1と型締めしてキャビティ9を形成する。第2型2と第1型1とは、例えば、両者の近接・離間方向に対して直角な方向に相対移動可能に形成しておく。これにより、複合インサート材6を第1型1に装着する際には、第2型2を別の位置に待機させておき、複合インサート材6の装着後に第2型2を型締め可能な位置に移動させると良い。
【0030】
〔樹脂成形の処理手順〕
図2に示すように、図外のマニピュレータ等を用いてインサート材3が第1型1に接するように第1型1の所定の位置に複合インサート材6を配置する。第1型1の位置固定部1bは複合インサート材6のシート材4の孔部4aに係入させる。その後、シート材4の周囲はクランプ(不図示)によって第1型1に密着保持される。
【0031】
次に、図3に示すように、マニピュレータに取付けたヒーター11でシート材4を加熱した後、第1型1の吸引部8でシート材4を真空吸引して、シート材4の表面をインサート材3の側面に沿わせつつ、第1型1にも沿わせる。
【0032】
次に、図4に示すように、第2型2に第1型1を近接させ型締めする。このとき、第2型2とインサート材3の裏面側のシート材4とが当接し、シート材4と第2型2との間にキャビティ9が形成される。
【0033】
次に、第2型2に形成したゲート10からキャビティ9に樹脂を注入して、インサート材3の側面にシート材4が密着するように、樹脂部7を成形する。樹脂がある程度硬化したのち第1型1を離間させ型締めを開放し、成形品を第1型1から取り外す。その後、成形品の外周のシート材4をカットして樹脂成形品Pを得る(図5)。
【0034】
図6は樹脂成形品Pの斜視図であり、(a)は樹脂成形品の表面(インサート材が露出する面)、(b)は樹脂成形品の裏面を示している。図6に示すように、樹脂成形品Pは、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形された樹脂部7を備える。こうして、インサート材3がシート材4の凹部に安定的に保持された樹脂成形品Pを得ることができた。
【0035】
樹脂成形品Pの樹脂部7の厚みは自由に設定できるが、例えば、図6に示すように、インサート材3の裏面と、樹脂部7の裏面とが面一状に設定されていると、樹脂成形品Pの裏面が平板状になって、静電容量センサー等の貼り合せが容易となる。また、樹脂成形品Pを電子機器等の筐体に装着する際にも樹脂成形品Pの裏面が平板状であるので容易に行うことができる。さらに、樹脂成形品Pの厚みをインサート材3の厚みまで薄くすることができ、樹脂成形品Pの適用範囲が広がる。
【0036】
なお、インサート材3が合成樹脂である場合には、通常剛性が低いので、厚みの薄いインサート材3を用いると射出成形の際に働く樹脂の収縮力を受けてインサート材3が変形する可能性がある。しかし、インサート材3がガラスである場合には、硬度が十分あるので、厚みの薄いインサート材3を用いても射出成形の際に働く樹脂の収縮力によってインサート材3が変形する可能性は低い。したがって、インサート材3としてガラスを用いた場合の方が、樹脂成形品Pの薄肉化を図り易い。
【0037】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態を図7〜図10に示す。当該実施形態では、第2型2に加飾シートの一例として加飾フィルム(転写箔)12を配置する(図7)。図示は省略するが、第2型2にも加飾フィルム12を第2型2のキャビティ面の側に吸引する吸引部を設けるとよい。
【0038】
図7に示すように、図外のマニピュレータ等を用いてインサート材3が第1型1に接するように第1型1の所定の位置に複合インサート材6を配置する。第1型1の位置固定部1bは複合インサート材6のシート材4の孔部4aに係入させる。その後、シート材4の周囲はクランプ(不図示)によって第1型1に密着保持される。
【0039】
次に、図8に示すように、マニピュレータに取付けたヒーター11でシート材4を加熱した後、第1型1の吸引部8でシート材4を真空吸引して、シート材4の表面をインサート材3の側面に沿わせつつ、第1型1にも沿わせ、加飾フィルム12を第2型2の所定の位置に配置したのち、第1型1と第2型2を型締めし、ゲート10から樹脂を注入する(図9)。このとき、樹脂部7の成形と同時に樹脂部7の裏面に加飾フィルム12の加飾層12aが転写され、樹脂成形品Pの樹脂部7の裏面に加飾層12aが形成される。この場合、樹脂成形品Pの樹脂部7は透明である方が好ましい。
【0040】
その後、第1実施形態と同様にして成形品を取り出し、不要なシート材4をカットして樹脂成形品Pを得る(図10)。樹脂成形品Pは、シート材4の表面がインサート材3の側面に密着するように、シート材4の裏面、かつインサート材3の周囲に、射出成形された樹脂部7を備え、更に樹脂部7の裏面に成形同時転写された加飾層12aを備える。樹脂部7が透明であると、加飾層12aは、樹脂部7の表面側から視認され、透明な樹脂部7が介在して深みのある意匠となって、樹脂成形品Pの美観を向上させる。
【0041】
第2型2に配置される加飾フィルム12は、樹脂部7に融着される加飾層12aとハンドリング用の基体シート12bとが一体化されており、加飾層12aが樹脂部7に転写された後の任意の工程で基体シート12bは剥がされる。加飾層12aは一般に、最終的な樹脂成形品Pの最外層となる剥離保護層と、樹脂層に融着される接着層とを有し、一般的に剥離保護層と接着層との間に図柄層が設けられている。
【0042】
基体シート12bの材質としては、例えば、ポロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいはこれらが複合されたシートなどを用いることができる。また、基体シート12bの剥離性を高めるために、基体シート12bと加飾部12aとの間にアミノアルキド系樹脂等からなる離型層を形成してもよい。基体シート12bの厚みとしては、5〜500μmが好ましい。
【0043】
剥離保護層の材質としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いることができる。剥離保護層に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いてもよい。
【0044】
接着層は、融着させる対象の樹脂と親和性の高い材質を選択すべきである。例えば、被転写物の材質がアクリル系樹脂の場合には、アクリル系樹脂を用いるとよい。また、被転写物の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを用いるとよい。また、樹脂成形品の材質がポリプロピレン樹脂の場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を用いるとよい。接着層の厚みは、0.5〜50μmが好ましい。
【0045】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、いずれも、インサート材3の側面にシート材4が密着する構成を示したが、図11に示すように、シート材4は、インサート材3の周縁部と嵌合するに嵌合部4Aを含んでもよい。こうすると、樹脂成形品に外力が加わってインサート材3が露出する側に抜け出ようとしても、シート材4の嵌合部4Aがインサート材3の露出する側への動きを阻止するので、インサート材3の位置が維持される。
【0046】
(2)上記の第2実施形態では、加飾フィルム12(転写箔)を用いて樹脂部7の裏面に加飾層12aを転写する構成を示したが、これに代えて、図12に示すように、シート材4は、樹脂部7の表面に対応する部分に加飾層13を含んでもよい。加飾層13は、図柄層や接着層等を備えており、印刷や接着等の各種構成を用いてシート材4に形成される。こうすると、加飾シート送り装置を金型に備える必要がなくなり、樹脂成形品の表面側のインサート材3の周囲に加飾層13を容易に形成することができる。シート材4の樹脂部7の表面に対応する部分に加飾層13が形成されているので、樹脂部7が透明性を有していなくても、樹脂成形品の表面側からシート材4越しに加飾層13を視認することができる。さらに、樹脂成形品の加飾層13はシート材4で保護されているので、加飾層13が磨耗することもない。
【0047】
(3)上記実施形態では、いずれも、樹脂成形品に平板状のインサート材3を1つだけ配置しているが、図13に示すように、インサート材3を複数配置してもよい。また、インサート材3として、ガラスやアクリル樹脂の他、各種金属や石等を用いて意匠性を向上させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る樹脂成形品は、電子機器の表示部を有する各種機器の筐体や、各種の内装品、外装品等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 第1型
1b 位置固定部
2 第2型
3 インサート材
4 シート材
4A 嵌合部
4a 孔部
5 接着層
6 複合インサート材
7 樹脂部
8 吸引部
9 キャビティ
10 ゲート
12 加飾シート
12a,13 加飾層
P 樹脂成形品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するシート材と、
前記凹部に配置され、裏面が前記シート材の表面に接着した平板状のインサート材と、
前記シート材の表面が前記インサート材の側面に密着するように、前記シート材の裏面、かつ前記インサート材の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部と、を備えた樹脂成形品。
【請求項2】
前記シート材が、前記インサート材の周縁部と嵌合する嵌合部を含む、請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記インサート材の裏面と、前記樹脂部の裏面とが面一状に設定された請求項1又は請求項2記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記樹脂部は透明であり、
前記樹脂部の裏面に成形同時転写された加飾層を更に備えた、請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項5】
前記シート材は、前記樹脂部の表面に対応する部分に加飾層を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項6】
平板状のインサート材にシート材を接着して複合インサート材を作製する工程と、
第1型に前記インサート材が接するように前記複合インサート材を配置する工程と、
前記第1型に配置された前記複合インサート材の前記シート材を吸引して、前記シート材を前記第1型に沿わせる工程と、
前記第1型と第2型とを型締めして、前記第2型と前記シート材との間に樹脂注入用のキャビティを形成する工程と、
前記キャビティに樹脂を注入して、前記インサート材の側面に前記シート材が密着するように前記インサート材の周囲に樹脂部を成形する工程と、を備えた樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記第1型と前記第2型との型締め前に、前記第2型に加飾シートを配置する工程を備えた請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記シート材として、前記インサート材が接着する部分の周囲であって、前記インサート材が接着する側とは反対の面に加飾層が形成されたシート材を用いる請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項1】
凹部を有するシート材と、
前記凹部に配置され、裏面が前記シート材の表面に接着した平板状のインサート材と、
前記シート材の表面が前記インサート材の側面に密着するように、前記シート材の裏面、かつ前記インサート材の周囲に、射出成形により環状に形成された樹脂部と、を備えた樹脂成形品。
【請求項2】
前記シート材が、前記インサート材の周縁部と嵌合する嵌合部を含む、請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記インサート材の裏面と、前記樹脂部の裏面とが面一状に設定された請求項1又は請求項2記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記樹脂部は透明であり、
前記樹脂部の裏面に成形同時転写された加飾層を更に備えた、請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項5】
前記シート材は、前記樹脂部の表面に対応する部分に加飾層を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項6】
平板状のインサート材にシート材を接着して複合インサート材を作製する工程と、
第1型に前記インサート材が接するように前記複合インサート材を配置する工程と、
前記第1型に配置された前記複合インサート材の前記シート材を吸引して、前記シート材を前記第1型に沿わせる工程と、
前記第1型と第2型とを型締めして、前記第2型と前記シート材との間に樹脂注入用のキャビティを形成する工程と、
前記キャビティに樹脂を注入して、前記インサート材の側面に前記シート材が密着するように前記インサート材の周囲に樹脂部を成形する工程と、を備えた樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記第1型と前記第2型との型締め前に、前記第2型に加飾シートを配置する工程を備えた請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記シート材として、前記インサート材が接着する部分の周囲であって、前記インサート材が接着する側とは反対の面に加飾層が形成されたシート材を用いる請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−93243(P2011−93243A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250958(P2009−250958)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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