説明

ウェーハの洗浄方法及びその装置

【課題】ウェーハを固定することなく洗浄して、ウェーハを把持し直す作業を省略してウェーハの洗浄時間を十分に短縮する。
【解決手段】ウェーハの洗浄方法は、ウェーハ11径よりも小さな外径を有する水平に設置される円盤状のベース12からベース全面にわたって純水を均一な高さに噴出させて噴出した純水によりベース上方にベースと同心に置かれる円板状のウェーハを水平に浮上させ、ベースから噴出する純水によりウェーハの下面を洗浄する。洗浄装置10は、ウェーハ径よりも小さな外径を有し全面に複数の同一径の噴出孔13dが形成されベース内部に噴出孔に連通する中空部12aが形成された水平に設置される円盤状のベース12と、中空部を介して複数の噴出孔から純水をベース全面にわたって均一な高さに噴出させる純水供給手段21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の半導体ウェーハを1枚ずつ洗浄する枚葉式ウェーハの洗浄方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における電子・通信機器の発展には、その中心となる半導体集積回路(LSI)の技術の進歩が大きく寄与している。一般に、LSI等の半導体デバイスの製造には、CZ法により引き上げられたシリコン単結晶をスライスして得られたウェーハに、研磨、面取り加工等を施して形成された半導体ウェーハが用いられている。このような、半導体ウェーハを用いたデバイス製造工程、或いは半導体ウェーハ自体の加工工程において、例えば、ウェーハ中に含まれる析出物の濃度分布を制御する等を目的として熱処理を施す場合があり、熱処理を施した後等にはその表面を純水により洗浄することが行われる。
【0003】
従来のウェーハの洗浄は、そのウェーハを1枚ずつ洗浄する枚葉式が知られており、その枚葉式ウェーハの洗浄装置としては、アルミやステンレスに耐食性樹脂を被覆又はカバーした板と、その板の上面に対して平行に間隔を置いて設けられたウェーハ支持体とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。ウェーハ支持体は、洗浄の対象であるウェーハを板の表面から約3mm上方に水平に保持するように構成される。具体的には、ウェーハ支持体は、ウェーハを保持するための複数のクランプを有し、その複数のクランプによりウェーハの周囲を把持してそのウェーハを板の上方で水平に固定し、その状態でウェーハ支持体は0〜6000rpmの速度で中心軸の周りでウェーハを水平方向に回転又はスピンさせることができるように構成される。そして、この洗浄装置では、板とウェーハの間に純水が供給され、ウェーハと板との間にあるギャップを充填し、その純水によりウェーハの裏面を洗浄することができるとしている。
【特許文献1】特表2004−519088号公報(明細書[0023]〜[0025]、図6a)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の洗浄装置では、ウェーハ支持体に設けられた複数のクランプにより洗浄するウェーハを水平に固定するので、そのクランプにより把持されるウェーハの周囲が十分に洗浄できない不具合があった。この点を解消するために、洗浄の途中でそのウェーハを把持するクランプの位置を変更することが行われるけれども、ウェーハを把持し直す作業が発生して、ウェーハの洗浄時間を十分に短縮できない問題点もあった。
本発明の目的は、ウェーハを固定することなく洗浄して、ウェーハを把持し直す作業を省略してウェーハの洗浄時間を十分に短縮し得るウェーハの洗浄方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、ウェーハ径よりも小さな外径を有する水平に設置される円盤状のベースからベース全面にわたって純水を均一な高さに噴出させて噴出した純水によりベース上方にベースと同心に置かれる円板状のウェーハを水平に浮上させ、ベースから噴出する純水によりウェーハの下面を洗浄することを特徴とするウェーハの洗浄方法である。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、ウェーハの下面洗浄時にベースから浮上するウェーハの上方から1又は2以上の洗浄ノズルによりウェーハの上面に純水を供給してウェーハの上面を洗浄する洗浄方法である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、洗浄ノズルからの水の供給とベースからの純水の噴出によりベースから浮上するウェーハをその円周方向に水平回転させる洗浄方法である。
【0006】
請求項4に係る発明は、ウェーハ径よりも小さな外径を有し全面に複数の同一径の噴出孔が形成されベース内部に噴出孔に連通する中空部が形成された水平に設置される円盤状のベースと、中空部を介して複数の噴出孔から純水をベース全面にわたって均一な高さに噴出させる純水供給手段とを備え、噴出した純水によりベース上方にベースと同心に置かれる円板状のウェーハを水平に浮上させ、ベースから噴出する純水によりウェーハの下面を洗浄することを特徴とするウェーハの洗浄装置である。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明であって、ベースの上方に下向きの1又は2以上の洗浄ノズルを更に備え、ウェーハの下面洗浄時にベースから浮上するウェーハの上方から洗浄ノズルによりウェーハの上面に純水を供給してウェーハの上面を洗浄する洗浄装置である。
【0007】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に係る発明であって、複数の噴出孔の一部が鉛直方向に対して15〜60度傾斜して設けられ、噴出孔からの純水の噴出によりベースから浮上するウェーハをその円周方向に水平回転させるように構成された洗浄装置である。
請求項7に係る発明は、請求項4ないし6いずれか1項に係る発明であって、浮上するウェーハの位置より高い複数のガイドがベースの外周部に立設され、浮上するウェーハがベース上方から離脱するのを防止するように構成された洗浄装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウェーハの洗浄方法及びその装置では、ウェーハ径よりも小さな外径を有する水平に設置される円盤状のベースからベース全面にわたって純水を均一な高さに噴出させて噴出した純水によりベース上方にベースと同心に置かれる円板状のウェーハを水平に浮上させ、ベースから噴出する純水によりウェーハの下面を洗浄するので、洗浄するウェーハを従来のウェーハ支持体に設けられた複数のクランプにより水平に固定するようなことをしない。このため、そのクランプにより把持される部分が洗浄できないような事態が発生することを防止することができ、洗浄の途中でそのウェーハを把持するクランプの位置を変更することを行う必要もない。このため、ウェーハを把持し直す作業を省略してウェーハの洗浄時間を十分に短縮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、ウェーハの洗浄装置10は、水平に設置されて洗浄の対象である円板状のウェーハ11(図1)が載せられるベース12を備える。この実施の形態におけるベース12は、フッ素樹脂から成るハット状の上板13と、塩化ビニール樹脂から成る平板状の下板14とを有する。図1に示すように、ハット状の上板13の周囲におけるフランジ13aには円周方向に複数の雌ねじ13bが形成され、その雌ねじ13bに対抗する下板14の周囲には下側から皿座ぐり孔14aが形成される。そして、図1の拡大図に示すように、その皿座ぐり孔14aに下側から皿小ねじ16を挿入して上板13のフランジ13aに形成された雌ねじ13bに螺合することにより下板14は上板13に取付けられ、この上板13と下板14から成るベース12の内部には中空部12aが形成される。
【0010】
図1〜図3に示すように、上板13の天面13cは平坦に形成され、その外径dが洗浄対象であるウェーハ11の外径Dよりも1.5〜5%小さく形成される。そして、この天面13cの全面にはベース12内部の中空部12aに連通する複数の同一径の噴出孔13dが形成される。図2では、洗浄対象であるウェーハ11の外径Dが30cmであって、ベース12の天面13cの外径dは290cmに形成されたものを示す。そして、噴出孔13dは直径が1mmであって、15mmピッチに天面13cの全面に形成される場合を示す。
【0011】
図1に示すように、このウェーハ11の洗浄装置10は、ベース12における中空部12aを介して複数の噴出孔13dから純水をベース12の天面13cにおける全面にわたって均一な高さに噴出させる純水供給手段21を備える。この例では、純水の噴出する天面13cからの高さは約3mmである。この純水供給手段21は、図示しない純水タンクと、そのタンクとベース12を連結する連結管22と、連結管22の中間に設けられてその連結管22を開閉するバルブ23と、図示しない供給ポンプとを備える。ベース12の下板14の中央には中空部12aに連通する雌ねじ孔14bが形成され、連結管22の一端がこの雌ねじ孔14bに連結され、連結管22の他端は図示しない純水タンクに連結される。図示しない供給ポンプは純水タンクに貯留された純水を連結管22を介してベース12の中空部12aに供給可能に構成され、バルブ23は連結管22を開閉してベース12に供給される純水の量を調整可能に構成される。
【0012】
そして、この洗浄装置10では、連結管22を介してベース12の中空部12aに供給された純水は、この中空部12aを介して複数の噴出孔13dから天面13cに噴出し、この吹き出した純水はベース12上方にベース12と同心に置かれる円板状のウェーハ11を水平に浮上させるように構成される。一方、複数の噴出孔13dの一部が鉛直方向に対して15〜60度傾斜して設けられる。この実施の形態では、複数の噴出孔13dの1割が円周方向に傾斜して設けられ、噴出孔13dからの純水の噴出によりベース12から浮上するウェーハ11をその円周方向に水平回転させるように構成される。そして、ベース12から浮上しかつ円周方向に水平回転するウェーハ11は、ベース12から噴出する純水によりそのウェーハ11の下面が洗浄されるように構成される。
【0013】
また、ベース12の上板13におけるフランジ13aには、ウェーハ11より大きな円周上に複数の雌ねじ孔13eが形成され、この雌ねじ孔13eには浮上するウェーハ11の位置より高い複数のガイド24が螺合される。従って、このガイド24はベース12の外周部に立設され、浮上するウェーハ11がベース12上方から離脱するのを防止するように構成される。そして、ベース12の上方には、下向きの1又は2以上の洗浄ノズル26が備えられる。この洗浄ノズル26は、ウェーハ11の下面洗浄時にベース12から浮上するウェーハ11の上方からウェーハ11の上面に純水を供給してウェーハ11の上面を洗浄するように構成される。
【0014】
次にこのような装置を用いた本発明のウェーハの洗浄方法を説明する。
先ず、ウェーハ11の外径Dよりも小さな外径dを有する水平に設置される円盤状のベース12からそのベース12全面にわたって純水を均一な高さに噴出させる。この純水の噴出は、図示しない供給ポンプを駆動して純水タンクに貯留された純水を連結管22を介してベース12に供給し、バルブ23により連結管22を開閉させてベース12に供給される純水の量を調整することにより行う。そして、この噴出した純水の上にウェーハ11を載せ、噴出した純水によりベース12上方にベース12と同心に置かれる円板状のウェーハ11を水平に浮上させる。そして、このベース12から噴出する純水により浮上するウェーハ11はその下面をその純水により洗浄することができる。
【0015】
ここで、ウェーハ11がベース12と同心になるのは、ベース12の天面13cにおける外径dがウェーハ11の外径Dよりも小さいことから可能になるものであって、図1の拡大図に示すように、噴出した純水はウェーハ11の下面において矢印Wで示すようにウェーハ11の外周に至り、その後ベース12の天面13cの周囲から自重により下降することになる。ベース12の天面13cにおける外径dがウェーハ11の外径Dよりも小さと、ウェーハ11の外周の純水がベース12の天面13cの周囲から下降する時、純水の表面張力によりその純水はウェーハ11の周囲をベース12の天面13c周囲側に引っ張り、これによりウェーハ11はベース12の中央に常に引っ張られ、ウェーハ11はベース12と同心になる。
【0016】
従って、本発明の洗浄方法では、洗浄するウェーハ11を従来のウェーハ支持体に設けられた複数のクランプにより水平に固定するようなことをしない。このため、そのクランプにより把持される部分が洗浄できないような事態が発生することを防止することができ、洗浄の途中でそのウェーハ11を把持するクランプの位置を変更することを行う必要もない。即ち、本発明の洗浄方法では、ウェーハ11を固定することなく洗浄するので、ウェーハ11を把持し直す作業を省略してウェーハ11の洗浄時間を十分に短縮することが可能になるのである。
【0017】
また、この実施の形態では、洗浄ノズル26を設けたので、ウェーハ11の下面洗浄時にベース12から浮上するウェーハ11の上方から1又は2以上の洗浄ノズル26によりウェーハ11の上面に純水を供給することによりウェーハ11の上面を洗浄することができる。そして、洗浄ノズル26からの水の供給とベース12からの純水の噴出によりベース12から浮上するウェーハ11をその円周方向に水平回転させるので、その洗浄にムラが生じることも回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施形態の洗浄装置の断面構成図である。
【図2】その装置の上面図である。
【図3】その装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 洗浄装置
11 ウェーハ
12 ベース
12a 中空部
13d 噴出孔
21 純水供給手段
24 ガイド
26 洗浄ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ径よりも小さな外径を有する水平に設置される円盤状のベースからベース全面にわたって純水を均一な高さに噴出させて前記噴出した純水により前記ベース上方に前記ベースと同心に置かれる円板状のウェーハを水平に浮上させ、前記ベースから噴出する純水により前記ウェーハの下面を洗浄することを特徴とするウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
ウェーハの下面洗浄時にベースから浮上するウェーハの上方から1又は2以上の洗浄ノズルにより前記ウェーハの上面に純水を供給して前記ウェーハの上面を洗浄する請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄ノズルからの水の供給とベースからの純水の噴出によりベースから浮上するウェーハをその円周方向に水平回転させる請求項1又は2記載の洗浄方法。
【請求項4】
ウェーハ径よりも小さな外径を有し全面に複数の同一径の噴出孔が形成されベース内部に前記噴出孔に連通する中空部が形成された水平に設置される円盤状のベースと、
前記中空部を介して複数の噴出孔から純水をベース全面にわたって均一な高さに噴出させる純水供給手段とを備え、
前記噴出した純水により前記ベース上方に前記ベースと同心に置かれる円板状のウェーハを水平に浮上させ、前記ベースから噴出する純水により前記ウェーハの下面を洗浄することを特徴とするウェーハの洗浄装置。
【請求項5】
ベースの上方に下向きの1又は2以上の洗浄ノズルを更に備え、ウェーハの下面洗浄時にベースから浮上するウェーハの上方から前記洗浄ノズルにより前記ウェーハの上面に純水を供給して前記ウェーハの上面を洗浄する請求項4記載の洗浄装置。
【請求項6】
複数の噴出孔の一部が鉛直方向に対して15〜60度傾斜して設けられ、前記噴出孔からの純水の噴出により前記ベースから浮上するウェーハをその円周方向に水平回転させるように構成された請求項4又は5記載の洗浄装置。
【請求項7】
浮上するウェーハの位置より高い複数のガイドがベースの外周部に立設され、前記浮上するウェーハが前記ベース上方から離脱するのを防止するように構成された請求項4ないし6いずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−34441(P2010−34441A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197412(P2008−197412)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】