説明

ウエハ搬送ロボット及びウエハの解放方法

【課題】ウエハの把持を解放した後におけるウエハの位置ズレを抑え、且つウエハの搬送に要する時間を短縮する。
【解決手段】ウエハ2が載置されるハンド20と、ウエハ2が載置される載置位置Aからウエハ2をハンド20から降ろす降ろし位置Dまでハンド20を移動させるための移動装置10において、ハンド20は、載置されたウエハ2を受け部23に押圧してウエハ2を把持し、且つ、押圧を解除してウエハ2を解放するための押圧装置30を備えており、制御装置40は、載置位置Aにてウエハ2が載置されると押圧装置30を制御してウエハ2を把持し、移動装置10を制御してハンド20をウエハ2を押圧する方向に移動させながら減速して降ろし位置Dへと移動させ、且つ、ハンド20が減速している間に、押圧装置30を制御してウエハ2を解放させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハの搬送に利用されるウエハ搬送ロボット、及び該ウエハ搬送ロボットにおけるウエハの解放方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を製造する半導体処理設備内には、半導体処理を施すための処理装置間でウエハ等の基板を受け渡しするため、基板を搬送するロボットが備えられている。この種のロボットのアームの先端部には、基板を保持するための基板保持装置が取り付けられる(例えば特許文献1参照)。この種のロボットを備えた設備では、ある処理装置内の基板が所定の載置位置で基板保持装置に載置され、基板を保持した基板保持装置を移動させることによって基板が搬送され、所定の降ろし位置で基板保持装置から基板が降ろされて別の処理装置内へと移される。
【0003】
特許文献1に開示された基板保持装置は、ロボットのアームに連結されるアーム連結部と、アーム連結部に取り付けられた基板保持部とを有する。基板保持部の先端部には、先端受け部が設けられている。アーム連結部にはクランプシリンダが設けられている。クランプシリンダにはピストンロッドが進退可能に挿入され、ピストンロッドの先端にはプッシャが設けられている。プッシャは、クランプシリンダにエアを供給することでピストンロッドによって押し出され、基板のエッジを先端受け部に向けて押圧するよう構成されている。このように基板のエッジを押圧することで、プッシャと先端受け部とにより基板が把持される。また、基板保持装置から基板を降ろす際には、その前にプッシャを後退させることで基板の押圧が解除され、基板が解放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−134586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の基板保持装置は、プッシャと先端受け部とにより基板を把持することで、同時に基板を位置決めするよう構成されている。しかし、基板を把持する際、プッシャにより基板を介して先端受け部が押圧されることにより、基板保持部の先端側が下側に反ってしまう。このため、把持した基板を解放すると、基板保持部が弾発力を発揮して反りを戻す、所謂スプリングバックを生ずる。このスプリングバックによって基板は、元部受け部の方へと押し戻される。よって、把持時に位置決めされていた基板は、基板を解放した後に位置ズレを生じてしまう。
【0006】
また、基板を解放するときのプッシャの後退が速いときほど、スプリングバックの影響や、プッシャの後退時の衝撃で基板保持部に生じるブレの影響による位置ズレは大きくなる。このため、従来、載置位置と降ろし位置との間の所定位置で基板保持装置の移動を停止させた状態において、プッシャの後退が遅くなるよう制御しながら基板の解放を行っている。このように従来の方法によって位置ズレを抑制しようとすれば、基板の搬送に要する時間が長くなり、搬送効率の低下を招くおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、ウエハの把持を解放した後におけるウエハの位置ズレを抑えることができ、且つウエハの搬送に要する時間を短縮することができるウエハ搬送ロボット、及び該ロボットにおけるウエハの解放方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明に係るウエハ搬送ロボットは、ウエハが載置されるハンドと、前記ハンドを、前記ウエハが載置される載置位置から載置された前記ウエハを前記ハンドから降ろす降ろし位置まで移動させるための移動装置と、前記ハンドに載置された前記ウエハのエッジを支持するための受け部と、前記ハンドに載置された前記ウエハを前記受け部に押圧して前記受け部と共に前記ウエハを把持し、且つ前記ウエハの押圧を解除して前記ウエハを解放するための押圧装置と、前記移動装置の動作を制御して前記ハンドを前記載置位置から前記降ろし位置へ移動させ、且つ前記押圧装置の動作を制御して前記ウエハを把持及び解放させる制御装置と、を備えるウエハ搬送ロボットであって、前記制御装置が、前記載置位置にて前記ウエハが載置されると前記押圧装置を制御して前記ウエハを把持し、前記移動装置を制御して前記ハンドを前記ウエハを押圧する方向に移動させながら減速して前記降ろし位置へと移動させ、且つ、前記ハンドが減速している間に、前記押圧装置を制御して前記ウエハを解放させるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
これにより、ウエハは、自身が押圧される方向に移動しているハンドが減速している間に解放される。このため、ウエハには、自身が押圧されていた方向、即ち受け部に向かって、慣性力が作用する。よって、ウエハの解放によってウエハにハンドのスプリングバックによる弾発力が作用しても、その弾発力を打ち消すように慣性力が作用するので、ウエハがハンド上で位置ズレするのを抑えることができる。しかも、ハンドの移動中にウエハが解放されるため、ハンドの停止中にウエハを解放する形態と比較して、ウエハの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0010】
前記ハンドは、前記押圧装置により前記ウエハが押圧されると撓み、且つ前記ウエハの押圧が解除されるとスプリングバックを生じ、前記ウエハが解放されてから減速が完了するまでの時間が前記ハンドの前記スプリングバックに要する時間よりも長くてもよい。
【0011】
これにより、ハンドの減速が完了する前にスプリングバックが完了して当該弾発力が消滅する。この場合には、当該弾発力によってウエハに位置ずれが生じたとしても、その時点から減速が完了するまでの間に作用する慣性力によってウエハが受け部に向かって移動するので、降ろし位置におけるハンド上のウエハの位置ズレを抑えることができる。
【0012】
前記移動装置は、前記ハンドを、前記押圧装置により前記ウエハが押圧される方向に延びる第1移動経路と、前記第1移動経路の終点から前記降ろし位置へと鉛直方向に延びる第2移動経路とを含む所定の移動経路上を移動させるよう構成されており、前記制御装置は、前記ハンドが前記第1移動経路の前記終点で減速を完了して方向転換するべく前記第1移動経路に沿って前記終点の手前で減速している間に、前記押圧装置を駆動して前記ウエハを解放させるように構成されていてもよい。
【0013】
この場合、ハンドが第1移動経路の終点に到達した時点では、その手前でウエハに慣性力が作用するため、ウエハのエッジを受け部に支持させた状態とすることができる。その後、ハンドは、第2移動経路に沿って鉛直方向に移動するだけである。このため、ウエハは解放した後のハンドの移動中に、ウエハがハンド上で位置ズレするのを抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係るウエハの解放方法は、ウエハが載置されるハンドと、前記ハンドを、前記ウエハが載置される載置位置から載置された前記ウエハを前記ハンドから降ろす降ろし位置まで移動させるための移動装置と、前記ハンドに載置された前記ウエハのエッジを支持するための受け部と、前記ハンドに載置された前記ウエハを前記受け部に押圧して前記受け部と共に前記ウエハを把持し、且つ前記ウエハの押圧を解除して前記ウエハを解放するための押圧装置と、を備えるウエハ搬送ロボットにおける、ウエハの解放方法であって、前記載置位置にて前記ウエハが載置されると前記押圧装置を動作させて前記ウエハを把持し、前記移動装置を動作させて前記ハンドを前記ウエハを押圧する方向に移動させながら減速して前記降ろし位置へと移動させ、前記ハンドが減速している間に、前記押圧装置を動作させて前記ウエハを解放させることを特徴としている。
【0015】
これにより、前述した本発明に係るウエハ搬送ロボットと同様、ウエハを解放した後におけるウエハの位置ズレを抑えることができ、且つウエハの搬送に要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウエハの把持を解放した後におけるウエハの位置ズレを抑えることができ、且つウエハの搬送に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るウエハ搬送ロボットの斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すハンドの平面図、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線に沿って切断して示すハンドの断面図である。
【図3】図3(a)はウエハを把持した状態でのハンドの平面図、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線に沿って切断して示すハンドの断面図である。
【図4】図4は、図1に示すウエハ搬送ロボットの制御系の構成を中心に示すブロック線図である。
【図5】図5は、図1に示すハンドの移動経路を示す模式図である。
【図6】図6は、図5に示す制御装置により実行される、ハンドの移動、ウエハの把持及び解放の各方法の手順を複合的に示すフローチャートである。
【図7】図7(a)はウエハを解放した状態でのハンドの平面図、図7(b)は図7(a)のVIIb−VIIb線に沿って切断して示すハンドの断面図である。
【図8】図8は、図6に示す手順に従って載置位置から降ろし位置までハンドを移動させた場合の所要時間を、従来例と比較して説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合もある。
【0019】
[用途]
図1に示すウエハ搬送ロボット1は、半導体素子を製造する半導体処理設備内において、半導体素子の材料であるウエハ2を搬送するために利用される。ウエハ2には、半導体ウエハとガラスウエハとが含まれる。半導体ウエハには、例えばシリコンウエハ、その他の半導体単体のウエハ、及び化合物半導体のウエハが含まれる。ガラスウエハには、例えばFPD用ガラス基板、MEMS用ガラス基板、及びサファイア(単結晶アルミナ)ウエハが含まれる。半導体処理設備には、例えば熱処理、不純物導入処理、薄膜形成処理、リソグラフィー処理、洗浄処理、及び平坦化処理といった処理をウエハ2に施す複数の処理装置が設置されている。ウエハ搬送ロボット1は、これら処理装置間でウエハ2を搬送する。
【0020】
[移動装置]
ウエハ搬送ロボット1は、いわゆる水平多関節型の4軸ロボットのエンドエフェクタに、ウエハ2が載置されるハンド20を適用して成る。ウエハ搬送ロボット1は、半導体処理設備内で固定される基台11を有し、基台11には昇降軸12が設けられている。基台11が設備内で適正に設置されると、昇降軸12の軸線A1が鉛直に向けられる。以下の方向の概念は、このように基台11を設置した場合の方向に基づいている。
【0021】
基台11には、例えばエアシリンダから成る昇降アクチュエータ13が内蔵されている。昇降アクチュエータ13が動作することにより、昇降軸12は基台11の上面側にて上下方向に昇降する。
【0022】
昇降軸12の上端部には、長尺の第1アーム14が設けられている。第1アーム14は昇降軸12の上端部から水平に延びている。第1アーム14の一端部は、昇降軸12に対して鉛直軸線A1周りに揺動可能に連結され、昇降軸12には、例えば電気モータから成る第1揺動アクチュエータ15が内蔵されている。第1揺動アクチュエータ15が動作することにより、第1アーム14が昇降軸12に対し水平面内を揺動する。
【0023】
第1アーム14の他端部の上面側には、長尺の第2アーム16が設けられている。第2アーム16は第1アーム14の他端部から水平に延びている。第2アーム16の一端部は、第1アーム14に対して鉛直軸線A2周りに揺動可能に連結されており、第1アーム14の他端部には、例えば電気モータから成る第2揺動アクチュエータ17が内蔵されている。第2揺動アクチュエータ17が動作することにより、第2アーム16が第1アーム14の他端部に対して水平面内を揺動する。
【0024】
第2アーム16の他端部の上面側には、ウエハ2が載置されるハンド20が設けられている。ハンド20は、第2アーム16の他端部に対して鉛直軸線A3周りに揺動可能に連結され、第2アーム16の他端部には、例えば電気モータから成る第3揺動アクチュエータ18が内蔵されている。第3揺動アクチュエータ18が動作することにより、ハンド20が第2アーム16の他端部に対して水平面内を揺動する。
【0025】
上記構成によれば、各アクチュエータ13,15,17,18の動作に応じて昇降軸12、第1アーム14、第2アーム16及びハンド20が駆動され、ハンド20が上下及び水平に移動する。なお、第1及び第2揺動アクチュエータ15,17の動作速度を適宜制御することにより、ハンド20は水平面内で任意の経路に沿って移動可能となる。
【0026】
このウエハ搬送ロボット1においては、昇降軸12、昇降アクチュエータ13、第1アーム14、第1揺動アクチュエータ15、第2アーム16、第3揺動アクチュエータ17、第3揺動アクチュエータ18が、ハンド20を移動させるための移動装置10を成す。
【0027】
[ハンド]
図2(a)に示すように、ハンド20は、平面視略矩形状の取付板21を有している。取付板21の一端部は第2アーム16の他端部に揺動可能に連結されている。取付板21は、第2アーム16の他端部から水平に延びている。
【0028】
取付板21の他端部には、ハンド本体22が設けられている。ハンド本体22は、平面視でY状且つ線対称に形成された板材から成る。なお、図中の一点鎖線A4はハンド本体22の対称軸線である。Y状のハンド本体22は単一の基端部と、該基端部から二股に分かれて延びる一対の先端部とを有する。ハンド本体22の基端部は、取付板21の他端部に固定され、ハンド本体22は取付部21から水平に延びている。
【0029】
ハンド20は、円盤状のウエハ2を載置するべく構成され、ハンド本体22は、載置されるウエハ2の直径よりも大きい長手寸法を有している。ハンド本体22の一対の先端部の上面側には、ハンド本体22に載置されたウエハ2のエッジを支持する第1受け部23が1つずつ設けられている。ハンド本体22の基端部の上面側には、対称軸線A4を挟むようにして一対の第2受け部24が設けられている。
【0030】
図2(b)に示すように、第1受け部23は、ウエハ2のエッジを載置して支持するための載置部25と、ウエハ2のエッジを突き当てて支持するための突き当て部26とを有している。載置部25の上面は第1載置面27を成している。第1載置面27は、基端側から先端側に向かうにしたがって上がるよう傾斜している。突き当て部26は、載置部25の先端部から上方に突出するよう設けられている。よって突き当て部26は、第1載置面27の先端縁から上方に延びる突き当て面28を有する。他方、第2受け部24の上面は第2載置面29を成している。第2載置面29は、先端側から基端側に向かうにしたがって上がるよう傾斜している。
【0031】
図2(a)に示すように、上記構成のハンド20にウエハ2が載置されると、ウエハ2のエッジが一対の第1載置面27及び一対の第2載置面29に載置される。このとき、ウエハ2の中心は第1受け部23と第2受け部24の間に配置される。よって、図2(b)に示すように、各載置面27,29は、ウエハ2の内径側に向かうにしたがって下がるよう傾斜している。よって、各載置面27,29はウエハ2のエッジを線接触で支持することができる。
【0032】
図2(a)に示すように、一対の突き当て面28は、上向きに延びているため平面視において線で表される。これら突き当て面28は、平面視で対称軸線A4上に中心Owが位置する仮想円の弧を成す曲面となっている。この仮想円は、載置されるべきウエハ2の平面視外形に合うよう設計される。すなわち、図2(a)の二点鎖線は、突き当て面28の曲率設計に際しての作図線であって、載置されるべきウエハ2の平面視外形を示す線である。ハンド20に載置されたウエハ2は、エッジを一対の突き当て面28に突き当てたときに、適正に配置された状態となる。このようにウエハ2をハンド20上で配置すると、搬送先の処理装置でウエハ2を降ろしたときに、その処理装置内でウエハ2が所定の位置に位置する。
【0033】
[押圧装置]
図2(a)に示すように、ウエハ搬送ロボット1は、ウエハ2を第1受け部23に押圧して第1受け部23と共にウエハ2を把持し、且つウエハ2の押圧を解除してウエハ2解放するための押圧装置30を有している。押圧装置30は、シリンダ31を有しており、シリンダ31は取付板21の上面側に配置されている。シリンダ31内にはプランジャ32が進退可能に挿入されている。シリンダ31及びプランジャ32の軸線は、平面視において対称軸線A4と重なるように設計されている。つまり、ハンド20の幅方向において一対の第1受け部23の中央に配置されている。プランジャ32の一端部には、ピストン33が設けられ、このピストン33によりシリンダ31の内部がプランジャ32側の第1空間34と、その反対側の第2空間35とに気密に区画されている。第1及び第2空間34,35は、エア供給装置36よりエアが供給され得るように構成されている。
【0034】
第1空間34にエアが供給されると、プランジャ32は、対称軸線A4に沿ってシリンダ31内へと後退する。第2空間35にエアが供給されると、プランジャ32は、シリンダ31から第1受け部33が位置する先端側に向かって対称軸線A4に沿って前進する。
【0035】
図2(b)に示すように、プランジャ32の他端部には、プッシャ37が設けられている。プッシャ37は略直方体状に形成され、プッシャ37の一側面がプランジャ32の他端部に固定されている。プッシャの37のうち一側面と反対側の外面は、押圧面38を成している。押圧面38は、第1受け部23の突き当て面28と、対称軸線A4の延在方向(すなわち、プランジャ32及びプッシャ37の進退方向)に対向している。なお、押圧面38は先端側に向かうにしたがって下がるように傾斜している。
【0036】
図3(a)及び図3(b)に示すように、ウエハ2が載置された状態でプランジャ32が前進すると、プッシャ37の押圧面38がウエハ2のエッジを、先端側の第1受け部23に向けて対称軸線A4に沿って押圧する。これにより、ウエハ2のエッジが一対の突き当て面28に突き当てられる。このようにして、ウエハ2は、プッシャ37の押圧面38と一対の突き当て面28とによって把持される。
【0037】
ウエハ2の把持時には、押圧装置30による押圧力Fpがウエハ2を介し突き当て面28に作用する。この押圧力Fpが増大するほどウエハ2はより強固に把持される。他方、ハンド本体22は、板状であって、取付板21に片持ち梁状に固定されている。かかるハンド本体22の先端部に配置された第1受け部23の突き当て面28に押圧力Fpが作用すると、ハンド本体22の一対の先端部が互いに離れるように弾性変形し、かつ、ハンド本体22の各先端部が下方に反り返るようにして弾性変形する。ハンド本体22は、この弾性変形をなるべく抑制するよう高剛性の材料から製作されているものの、強固に把持するための押圧力Fpが作用するため、結果としてウエハ2の把持時にハンド本体22には僅かながら弾性変形が生じる。
【0038】
図2(a)及び(b)に戻り、プランジャ32が後退すると、プッシャ37の押圧面38がウエハ2から遠ざかるよう移動し、突き当て面28に作用していた押圧力が解除される。これによりウエハ2が解放される。
【0039】
[制御装置]
図4はウエハ搬送ロボット1の制御系の構成を中心に示すブロック線図であり、図4中の実線は電気的接続を示し、二重線は機械的接続を示し、点線は空間的連通を示している。図4に示すように、ウエハ搬送ロボット1は、制御装置40を有している。制御装置40は、記憶部41及び演算部42を有している。記憶部41及び演算部42は、例えば、それぞれ、マイクロコンピュータのメモリ及びCPUから成る。演算部42には、オペレータにより操作される操作器45の出力と、プランジャ32のストロークを検出するストロークセンサ46の出力とが入力されている。操作器45では、例えばウエハ搬送ロボット1の起動及び停止といった指令を入力することができる。演算部42は、操作器45で起動の指令が入力されると、移動装置10及び押圧装置30にそれぞれ制御信号を出力してこれらの動作を制御するよう構成されている。
【0040】
記憶部41には、所定の経路に沿ってハンド20を移動させると共に、ハンド20に載置されたウエハ2を把持及び解放するための手順を指示するプログラムが予め記憶されている。演算部42は、記憶部41から当該プログラムを読み出して実行することにより、移動装置10の各アクチュエータ13,15,17,18と、押圧装置30のエア供給装置36の動作を制御する。この制御を通じ、昇降軸12、第1アーム14、第2アーム16及びハンド20が駆動され、ハンド20が、ウエハ2が載置される載置位置からウエハ2を降ろす降ろし位置まで移動される。また、シリンダ31の第1空間34又は第2空間35(図2参照)にエアが選択的に供給され、ハンド20に載置されたウエハ2を把持及び解放させることができる。
【0041】
図5に示すように、ハンド20の移動経路50は、半導体処理設備内の2つの処理装置3,4の間に設定される。移動経路50は、ある処理装置3内のウエハ2がハンド20に載置される位置である載置位置Aと、ハンド20に載置されているウエハ2を降ろして別の処理装置4へ移す位置である降ろし位置Dとを結んでいる。
【0042】
移動経路50には、載置位置Aから点Bに至る第1往路51と、点Bから点Cに至る第2往路52と、点Cから降ろし位置Dに至る第3往路53と、降ろし位置Dから載置位置Aに至る復路54とが含まれる。第1乃至第3往路51〜53に沿ってハンド20を移動させることにより、処理装置3から処理装置4へとウエハ2を搬送することができる。復路54に沿ってハンド20を載置位置Aに戻すことにより、ウエハ2を再び搬送することができる。
【0043】
第2往路52は、始点である点Bから終点である点Cに向かって、水平面内を直線状に延びている。また、第2往路52に沿って点Bから点Cへとハンド20が移動する間は、ハンド20の移動方向を押圧装置30によってウエハ2を押圧している方向(以下、「押圧方向」という)と一致させる。なお、前述したように、プランジャ32は水平な対称軸線A4に沿って進退するため、押圧方向は実質的に鉛直成分を含まない。したがって、第2往路52に沿ってハンド20を移動させるときには、昇降アクチュエータ13は停止するよう制御され、昇降軸12を停止させる。他方、第1乃至第3揺動アクチュエータ15,17,18は、ハンド20が押圧方向に沿うようにして水平移動し続けるように、互いに独立した所定の動作速度で動作するよう制御される。
【0044】
第3往路53は、始点である点Cから終点である降ろし位置Dに向かって、鉛直下向きに直線状に延びている。したがって、第3往路53に沿ってハンド20を移動させるときには、第1乃至第3揺動アクチュエータ15,17,18は停止するよう制御される。他方、昇降アクチュエータ13が、昇降軸12を下降させるよう制御される。
【0045】
なお、第1往路51は、便宜的に鉛直上方に延びる直線により示されているが、実際はどのような向きの経路でもよい。また、第1往路51は一直線状の経路に限られず、曲線状の経路であってもよいし、載置位置Aと第2往路42の始点である点Bとの間で移動方向が1回以上転換するような折線状の経路であってもよい。復路54も第1往路51と同様にして、どのように設定されていてもよい。
【0046】
[移動方法、把持方法、解放方法]
図6は、制御装置40の演算部42により実行される、ハンド20の移動、ウエハ2の把持及び解放の方法の手順を複合的に示したフローチャートである。図示するフローを繰り返すことにより、2つの処理装置3,4の間でウエハ2が繰り返し搬送されることとなる。ここでは、便宜的に、ハンド20が復路54に沿って載置位置Aへ戻っている状況下で当該フローが開始するものとしている。なお、この状況下では、プランジャ32及びプッシャ37は後退している。
【0047】
まず、ハンド20を載置位置Aで停止させ(ステップS1)、載置位置Aでウエハ2をハンド20に載置する(ステップS2)。ウエハ2がハンド20に載置されると、プランジャ32を前進させ、プッシャ37の押圧面38と第1受け部23の一対の突き当て面28とによりウエハ2を把持する(ステップS3)。
【0048】
演算部42は、ストロークセンサ46からの入力によりプランジャ32のストロークが所定値以上であると、ウエハ2が把持されたものと判定し、降ろし位置Dに向けてハンド20の移動を開始する(ステップS4)。まず、ハンド20は、載置位置Aから第1往路51に沿って点Bに向かって移動する。ハンド20が点Bに到着すると、ハンド20の移動方向を転換し、点Cに向けてハンド20の移動を開始する(ステップS5)。これにより、ハンド20は、第2往路52に沿って、ウエハ2を押圧する方向に移動していく。
【0049】
次いで、第2往路52の終点である点Cでハンド20の移動方向を転換すべく、第2往路52上の点C手前の点Pで、ハンド20の減速を開始する(ステップS6)。つまり、第1乃至第3揺動アクチュエータ15,17,18の制動を開始するよう制御する。そして、点Cに到達する前であってハンド20を減速させながら移動させている間に、第2往路52上の点C手前の点Qで、プランジャ32及びプッシャ38を後退させ、ウエハ2を解放する(ステップS7)。その後、演算部42は、点Cでハンド20の移動を停止し(ステップS8)、ストロークセンサ46からの入力に基づいてプランジャ32が最小ストロークまで後退したことを確認する。
【0050】
図7に示すように、ウエハ2が解放されると、把持時に弾性変形していたハンド本体22が、弾発力を発揮して元の形状に復帰する、所謂スプリングバックを生じる。このとき、プランジャ32が速く後退すると、ハンド本体22の弾発力がプッシャ37の押圧面38で受け止めきれず、ウエハ2には弾発力に基づく外力Fsが作用する。二股に分かれたハンド本体22の先端部は、互いに近づくようにして元の形状に復帰するため、ウエハ2に作用する外力Fsには、ハンド本体22の基端側に向かう成分が含まれている。また、この外力Fsには、プランジャ32の後退により発生する衝撃も含まれ、かかる衝撃がハンド本体22に作用することによってハンド本体22にブレを発生させるおそれがある。
【0051】
他方、押圧が解除されたウエハ2には、ウエハ2の質量とハンド20の減速度(すなわち負の加速度)とに基づいて、慣性力Fiが移動方向に作用する。移動方向は、ウエハ2を押圧していた方向と一致していることから、慣性力Fiの主な成分は、第1受け部23が配置されているハンド本体22の先端部に向かう成分となる。つまり、慣性力Fiは、上記外力Fsを打ち消すようにしてウエハ2に作用する。このため、ウエハ2が、弾発力に基づく外力Fsによってハンド20上で位置ズレするのを抑制することができる。
【0052】
ここで、ウエハ2を解放してから点Cに到達するまでに要する時間は、スプリングバックの開始から完了までに要する時間よりも長く設定される。このため、スプリングバックが完了して弾発力が消滅した後にも、ウエハ2に慣性力Fiを作用させることができる。これにより、ウエハ2のエッジを突き当て面28に突き当てることができる。
【0053】
前述したように、突き当て面28はウエハ2の平面視形状に合うよう設計されている。このため、ウエハ2の解放後に外力Fsの影響でウエハ2が前述した適正位置からズレても、ウエハ2のエッジが一対の突き当て面28に突き当たると、ウエハ2は突き当て面28によって案内され、適正に配置されるよう位置決めされる。したがって、ハンド20が点Cに到着した時点において、ウエハ2はハンド20上で適正に配置された状態で、一対の第1受け部23及び一対の第2受け部24に支持される。
【0054】
図6に戻り、点Cでハンド20の移動方向を鉛直下向きに転換し、降ろし位置Dに向けてハンド20の移動を開始し(ステップS9)、降ろし位置Dでハンド20の移動を停止し(ステップS10)、降ろし位置Dでウエハ2をハンド20から降ろして処理装置4へ移す(ステップS11)。
【0055】
ハンド20が鉛直下向きに移動しているときには、ウエハ2は一対の第1載置面27及び一対の第2載置面29により支持された状態を維持する。このため、ウエハ2を解放した状態でハンド20を移動させても、ウエハ2がハンド20上で変位するおそれは低い。したがって、降ろし位置Dでハンド20から降ろしたウエハ2が、搬送先の処理装置4内で位置ズレするのを抑制することができる。
【0056】
ウエハ2を降ろし位置Dで降ろした後は、載置位置Aに向けてハンド20の移動を開始する(ステップS12)。以上の手順を何度も繰り返すことにより、処理装置3,4間で多数のウエハ2が順次搬送される。
【0057】
なお、ステップS6における減速開始の指令、ステップS7におけるウエハ2の解放開始の指令は、ハンド20の位置を参照して行ってもよく、時間を参照して行ってもよい。つまり、移動中のハンド20の位置を逐次検知し、ハンド20が第2往路52上の点P及び点Qに位置したと検知されたときに、ステップS6の指令及びステップS7の指令をそれぞれ行ってもよい。また、点Cに到着する時点を制御装置40に予め認識させておき、当該到着時点から所定の時間遡った時点で、ステップS6の指令及びステップS7の指令をそれぞれ行ってもよい。
【0058】
次に、図8を参照して、図6に示す手順に従ってハンド20を載置位置Aから降ろし位置Dまでハンド20を移動させた場合の所要時間について、従来例と比較して説明する。なお、従来例と本実施形態とは、移動装置10の構成、ハンド20の移動経路50、及びハンド20を移動させている間の各アクチュエータ13,15,17,18の動作速度が同一であるとする。
【0059】
一点鎖線で示す従来例においては、ハンド20が第2往路52の終点である点Cに到着した後に、ハンド20の移動を停止している状態でウエハ2を解放し、プランジャ32及びプッシャ37の後退が完了するのを待機する。そして、この後退が完了したと判断した後に、降ろし位置Dに向けてハンド20の移動を開始することとなる。したがって、従来例においては、少なくともウエハ2を解放する動作の開始から終了までに要する時間T1だけ、ハンド20を点Cで停止させておく必要がある。
【0060】
実線で示す本実施形態においては、ハンド20が点Cに到着する前に、ウエハ2が解放される。このため、本実施形態においては、ハンド20を点Cで停止させる時間が、従来例と比較して、ウエハ2の解放時点からハンド20の到着時点までの時間T2だけ、短くなる。そして、本実施形態においてハンド20が降ろし位置Dに到着する時点が、従来例と比較して、当該時間T2だけ早くなる。このように本実施形態においては、1枚のウエハ2を搬送するために要する時間が従来よりも短くなるため、単位時間当たりに搬送可能なウエハ2の枚数を増やすことができる。
【0061】
また、図8に示した従来例においては、プランジャ32及びプッシャ37の後退速度が本実施形態と同一としている。前述したように、プランジャ32及びプッシャ37の後退が速いと、スプリングバックに起因してウエハ2に作用する外力が大きくなり、ウエハ2を解放した後のウエハ2の位置ズレ量が大きくなる。
【0062】
本実施形態では慣性力によって当該外力を打ち消すことができるため、停止した状態でウエハ2を解放する従来例と比較して、位置ズレ量を小さくすることができる。従来例においてウエハ2の位置ズレを抑制するためには、プランジャ32及びプッシャ37の後退速度を制御する機器を付加した上で、この後退速度を遅くする必要が生じる。つまり、ウエハ2の解放の開始から完了までに要する時間T1を長くする必要が生じる。本実施形態では、プランジャ32及びプッシャ37の後退速度を遅らせなくても、ウエハ2の位置ズレを抑制することができる。
【0063】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、降ろし位置Dへと鉛直に延びる第3往路53は、下向きに限られず上向きであってもよい。また、第3往路53は適宜省略可能であり、図5に二点鎖線で示すように、ウエハ2を押圧する方向に延びる経路152の終点を降ろし位置Dとしてもよい。また、ウエハ搬送ロボット1の移動装置10を構成する部分には、図1に示した水平多関節型の4軸ロボットに限られず、他の形態のロボットが適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ウエハの把持を解放した後におけるウエハの位置ズレを抑えることができ、且つウエハの搬送に要する時間を短縮することができるという作用効果を奏し、半導体処理設備内で利用されるウエハを把持するロボットに適用すると有益である。
【符号の説明】
【0065】
1 ウエハ搬送ロボット
2 ウエハ
10 移動装置
20 ハンド
23 第1受け部(受け部)
30 押圧装置
40 制御装置
50 移動経路
52 第2往路(第1移動経路)
53 第3往路(第2移動経路)
A 載置位置
C 点(第1移動経路の終点)
D 降ろし位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハが載置されるハンドと、
前記ハンドを、前記ウエハが載置される載置位置から載置された前記ウエハを前記ハンドから降ろす降ろし位置まで移動させるための移動装置と、
前記ハンドに載置された前記ウエハのエッジを支持するための受け部と、
前記ハンドに載置された前記ウエハを前記受け部に押圧して前記受け部と共に前記ウエハを把持し、且つ前記ウエハの押圧を解除して前記ウエハを解放するための押圧装置と、
前記移動装置の動作を制御して前記ハンドを前記載置位置から前記降ろし位置へ移動させ、且つ前記押圧装置の動作を制御して前記ウエハを把持及び解放させる制御装置と、を備えるウエハ搬送ロボットであって、
前記制御装置が、
前記載置位置にて前記ウエハが載置されると前記押圧装置を制御して前記ウエハを把持し、前記移動装置を制御して前記ハンドを前記ウエハを押圧する方向に移動させながら減速して前記降ろし位置へと移動させ、且つ、前記ハンドが減速している間に、前記押圧装置を制御して前記ウエハを解放させる
ように構成されている、ウエハ搬送ロボット。
【請求項2】
前記ハンドは、前記押圧装置により前記ウエハが押圧されると撓み、且つ前記ウエハの押圧が解除されるとスプリングバックを生じ、
前記ウエハが解放されてから減速が完了するまでの時間が前記ハンドの前記スプリングバックに要する時間よりも長い、請求項1に記載のウエハ搬送ロボット。
【請求項3】
前記移動装置は、前記ハンドを、前記押圧装置により前記ウエハが押圧される方向に延びる第1移動経路と、前記第1移動経路の終点から前記降ろし位置へと鉛直方向に延びる第2移動経路とを含む所定の移動経路上を移動させるよう構成されており、
前記制御装置は、前記ハンドが前記第1移動経路の前記終点で減速を完了して方向転換するべく前記第1移動経路に沿って前記終点の手前で減速している間に、前記押圧装置を制御して前記ウエハを解放させるように構成されている、請求項1又は2に記載のウエハ搬送ロボット。
【請求項4】
ウエハが載置されるハンドと、
前記ハンドを、前記ウエハが載置される載置位置から載置された前記ウエハを前記ハンドから降ろす降ろし位置まで移動させるための移動装置と、
前記ハンドに載置された前記ウエハのエッジを支持するための受け部と、
前記ハンドに載置された前記ウエハを前記受け部に押圧して前記受け部と共に前記ウエハを把持し、且つ前記ウエハの押圧を解除して前記ウエハを解放するための押圧装置と、
を備えるウエハ搬送ロボットにおける、ウエハの解放方法であって、
前記載置位置にて前記ウエハが載置されると前記押圧装置を動作させて前記ウエハを把持し、
前記移動装置を動作させて前記ハンドを前記ウエハを押圧する方向に移動させながら減速して前記降ろし位置へと移動させ、
前記ハンドが減速している間に、前記押圧装置を動作させて前記ウエハを解放させる、
ウエハの解放方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−159738(P2011−159738A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19260(P2010−19260)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】