説明

エピタキシャル成長装置、及び基板移載方法

【課題】低水分分圧でエピタキシャル成長を行える技術を提供する。
【解決手段】このエピタキシャル成長装置1では、搬入室25と第1のロードロック室31との間に搬送室14が配置され、その搬送室14と、搬入室25と、第1のロードロック室31には、窒素ガス導入ポート20、21、28がそれぞれ設けられている。窒素ガス導入ポート20、21、28から窒素ガスを導入すると、窒素ガス雰囲気中で搬入室25から第1のロードロック室31内に基板17を搬送できる。第1のロードロック室31内に搬入された基板17は、ボートに搭載され、ボートローダ29によって熱処理室12内に搬入される。そのボートローダ29周囲には、加熱されたオイルが循環できる循環路4が配置されており、ベーキングの際に、ボートローダ29を加熱できるように構成されている。従って、従来では加熱できない部分までベーキングを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエピタキシャル成長装置の技術分野にかかり、特に、低温でエピタキシャル成長を行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、シリコン層のエピタキシャル成長は、1000℃〜1200℃程度の高温で行われている。しかし、高温でシリコン層のエピタキシャル成長を行う場合には、高温のため、基板中の不純物が一旦雰囲気ガス中に放出され、それが再びエピタキシャル層中に取り込まれるオートドーピング現象が発生する。このオートドーピング現象が発生すると、成長中のエピタキシャル層の濃度制御が困難になり、所望濃度のエピタキシャル層が得られないという問題がある。
【0003】また、基板表面にエピタキシャル層を成長させる際、基板に含まれる不純物が、エピタキシャル層側に移動したり、また、逆に、エピタキシャル層中の不純物が基板側へ移動するという現象がある。この移動は、温度が高くなると増大する傾向にあり、エピタキシャル層の濃度制御を一層困難なものにしている。
【0004】更に、集積回路ICに用いられるバイポーラトランジスタの高速化のためには、高濃度且つ薄いベース層の形成が不可欠である。しかし、従来のイオン注入技術では、チャネリングのため、40nm以下のベース層を形成することは困難であった。
【0005】近年、この問題に対する対策の一つとして、ベース層となる高不純物層を、イオン注入ではなく、エピタキシャル成長によって形成させる技術が盛んに研究されており、チャネリングが無いことから、薄いベース層を形成できると期待されている。
【0006】また、一方では、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)に於いても、ショートチャネルに有利なエピタキシャルウエハやソース・ドレイン部の選択エピタキシャル成長が期待され、その研究が進められている。
【0007】従来の一般的なシリコンエピタキシャル成長は上述したように通常1000℃〜1200℃の高温且つ大量の高純度水素雰囲気下でエピタキシャル成長させるため、シリコン基板表面に、ダメージ層や、重金属の汚染が無い限り、その結晶性が悪化することはない。
【0008】しかし、バイポーラトランジスタのベース層をエピタキシャル成長によって形成する場合には、急峻なプロファイルを得る必要がある。このため、エピタキシャル成長中の拡散を防止するために、熱処理温度をできるだけ低くする必要があり、ベース層形成のシリコンエピタキシャル成長は、500℃〜900℃という低温で行われている。
【0009】このように、低温でシリコンエピタキシャル成長を行うためには、きわめて清浄度の高い雰囲気で成膜しなければならない。特に、成膜装置内部の水分や酸素の分圧を十分に低減し、管理しなければ良好な結晶性を有するエピタキシャル成長とはならない。
【0010】上述したように、低温でシリコンエピタキシャル成長を行うためには、清浄度の高い雰囲気で行わなければならない理由を図4を参照して説明する。図4(a)〜(c)は、シリコン基板201に対するエピタキシャル成長過程を示す模式的な概要断面図である。
【0011】図4(a)に示すシリコン基板201上に、低温でシリコンエピタキシャル成長を行うためには、例えばシリコン基板201をエピタキシャル成長装置に導入する前に、その表面を希フツ酸処理等によって清浄な表面を出し行っても、エピタキシャル成長装置内部の水分や酸素の分圧が高い場合は、図4(b)に示すように、エピタキシャル成長前にシリコン基板201の表面が再び酸化されて、酸化膜が生じたり、エピタキシャル成長途中で島状に酸化膜202が形成される。このような酸化膜202が発生すると、図4(c)に示すように、シリコン結晶成長が阻害されて基板201上に成長されたシリコン成長層203内に積層欠陥204が発生し易くなる。
【0012】そしてこのような積層欠陥が発生すれば、シリコン成長層203の表面ラフネス(表面粗さ)が大きくなり、その表面が悪化し良好な結晶性が得られない。
【0013】このようなエピタキシャル成長の可否と、成長温度と、雰囲気中の水分分圧との関係については、G.Ghidini and F.W.Smith によって報告されている(J.Electrochem. Soc. vol.131,pp.2924(1984)。図2は、この文献における上記の関係を示す図である。
【0014】これによれば、エピタキシャル成長の可否の境界直線Lで示されるように、設定した成膜の温度条件(横軸)において直線L上の水分分圧以下の水分分圧で成膜しなければ酸化され易く、表面のラフネスが悪くなる。すなわち単結晶成長しない傾向があることを示し、シリコンエピタキシャル成長を低温で行う程、水分分圧を低くしなと酸化が生じ易くなることを示している。
【0015】上述した低温エピタキシャル成長における水分分圧を低減するための解決策の一つとして、図3に示す装置がある。図3の符号101は、そのようなエピタキシャル成長装置であり、複数枚一括処理するバッチ方式が採用されており、縦型の反応室112内にシリコン基板を100枚程度収容し、一括してエピタキシャル成長ができるように構成されている。
【0016】このエピタキシャル成長装置101は、第1、第2のロードロック室131、132と、搬入室125を有しており、第2のロードロック室132は、ゲートバルブ124を介して上述の反応室112に接続されている。
【0017】また、搬入室125と第1のロードロックの間と、第1のロードロック室131と第2のロードロック室132の間は、それぞれゲートバルブ122、123を介して接続されている。
【0018】第1、第2のロードロック室131、132と、反応室112には、それぞれ真空ポンプ141〜143が接続されており、各室131、132、112を個別に真空排気できるように構成されている。
【0019】このエピタキシャル成長装置101を使用する場合には、各ゲートバルブ122〜124を閉じた状態で真空ポンプ141〜143を動作させ、反応室112と第1、第2のロードロック室131、132とを個別に高真空雰囲気しておく。
【0020】第1のロードロック室131には、窒素ガス導入ポート128が設けられており、第1のロードロック室131内を真空雰囲気にした後、窒素ガス導入ポート128から窒素ガスを導入し、予め大気圧まで復圧させておく。
【0021】搬入室125内には、反応室でエピタキシャル成長を行う際に基板を裁置するためのボート116を配置しておき、ボート116上にシリコン基板を搭載した後、ゲートバルブ122を開け、ボートを第1のロードロック室131内に移動する。
【0022】次いで、ゲートバルブ122を閉じ、第1のロードロック室131を搬入室125から遮断した後、第1のロードロック室131内を真空排気する。
【0023】第2のロードロック室132は、予め5.0×10-6Pa程度の圧力まで真空排気されており、第1のロードロック室131内が同程度の圧力まで真空排気された後、第1、第2のロードロック室131、132間のゲートバルブ123を開け、ボートを第2のロードロック室132内に搬入する。
【0024】このとき、反応室112は、約5.0×10-7Pa程度の圧力まで真空排気されている。続いて、反応室112の真空排気を止めて、水素ガスを導入した直後にゲートバルブ124を開け、第2のロードロック室132内のボート116を、第2ロードロック室と反応室112の間を昇降させるための機構であるボートローダ129によって反応室112内に移載する。
【0025】符号116は、反応室112内に移載された状態のボートを示しており、シリコン基板117が搭載されている。
【0026】反応室112は石英製であり、その周囲には、発熱体115が配置されている。シリコン基板を反応室112へ移載後、所望の超高真空圧力まで真空排気後、真空排気しながら、水素ガスを導入して、発熱体115に通電して発熱させ、シリコン基板117を加熱する。シリコン基板117を約900℃程度まで昇温し、シリコン基板117表面に形成された自然酸化膜を除去する。
【0027】自然酸化膜の除去後、発熱体115への通電量を制御し、シリコン基板の温度を所望の成膜温度まで低下させた後、反応室112内にシリコンエピタキシャル層の原料となるガスを導入し、シリコン基板117表面へのシリコンエピタキシャル層成長を行う。
【0028】シリコンエピタキシャル層が所定膜厚に形成された後、反応室112へ移載したのとは逆の手順でシリコン基板117を搬入室125へ移載し、エピタキシャル成長装置101外へ取り出す。
【0029】上記のようなエピタキシャル成長装置101では、エピタキシャル成長プロセスを繰り返し行うと、反応室112の内壁にシリコン薄膜が付着形成され該薄膜が剥離する場合パーティクルになり、エピタキシャル層の欠陥原因となるため除去する必要がある。
【0030】そこで、エピタキシャル成長プロセスがある程度の回数行われた時点で、反応室112の清掃が行われており、その清掃のために、反応室112と真空ポンプ143に接続する排気経路113と第1、第2のロードロック室131、132とを大気に開放し、石英製の反応室112を取り外し、ウエットエッチング処理によってシリコン薄膜を除去し、乾燥させた後、該石英製チューブ等を元通り取り付けている。
【0031】しかしながら、清掃の際に、反応室112や排気経路113、第1、第2のロードロック室131、132の内部が大気に暴露されるため、その壁面等に水分等が吸着してしまい、超高真空雰囲気まで真空排気できなくなってしまう。
【0032】そこでこのエピタキシャル成長装置101では、第1、第2のロードロック室131、132と排気経路113に、テープヒータ126a、126b、126cが巻かれており、テープヒータ126a、126b、126cを発熱させ、第1、第2のロードロック室131、132と排気経路113とを加熱できるように構成されている。
【0033】エッチング処理後、各ゲートバルブ122〜124を閉じ、真空排気しながら第1、第2のロードロック室131、132と排気経路113とを150℃程度に加熱することで、ベーキング(第1、第2のロードロック室131、132と排気経路113の内壁に付着した水分等の焼き出し)を行えるようになっている。この時、反応室112は、発熱体115に通電して過熱しておく。図6の符号137は、第1、第2のロードロック室131、132や排気経路113の壁面を示している。
【0034】テープヒータ126a、126b、126cによるベーキングを行うと、排気経路113と、第1、第2のロードロック室131、132内の雰囲気を超高真空雰囲気まで戻すことができる。
【0035】しかしながら上記エピタキシャル成長装置101では、その構造上、ボートローダ129や、ゲートバルブ122〜124等はテープヒータを巻きつけることができない。従って、その部分は十分なベーキングが行えず、真空雰囲気中に放出された水分等が排気経路113や第2のロードロック室132内に再吸着し、所望の到達圧力まで真空排気するまでや、低い水分分圧にするまでに膨大な時間を要し、メンテナンス時間が増大し、装置の生産性を悪化させる原因となっていた。
【0036】また、このエピタキシャル成長装置101は、反応室112と第2のロードロック室132の間等の接続部分にはOリングが設けられている。このエピタキシャル成長装置101には、冷却装置150が設けられており、Oリングが設けられた部分には、冷却装置150に接続された循環路151が配置されている。そして、発熱体115を発熱させる際には、循環路151内に冷却水を循環させ、Oリング周囲を冷却することで、Oリングが熱損しないようにされている。しかし、上記のようなベーキングを行う場合には、テープヒータの周辺にもOリングが配置されているため、循環路151内から冷却水を抜き取り、循環路151内の冷却水が沸騰しないようにする必要があり、その抜き取り作業に要する時間が、更にメンテナンス時間を増大させるという問題もある。
【0037】更に、上記従来技術のエピタキシャル成長装置101では、シリコン基板117をボート116上に搭載する際に、搬入室125内が大気に開放されるため、シリコン基板117の搭載後、ボート116を搬入室125内から第1のロードロック室131内に移動させる際に、第1のロードロック室131内が大気に暴露されてしまう。
【0038】従って、第1のロードロック室131内に大気中の水分が侵入すると、第1のロードロック室131の内壁に吸着されてしまう。水分の吸着エネルギーは大きいため、その状態から、第1のロードロック131内を5.0×10-6Pa程度の圧力にするためには膨大な真空排気時間を必要とし、スループットが悪化するという問題がある。
【0039】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、反応室内部の水分分圧を低くし、低温で高品質のエピタキシャル層を形成できるエピタキシャル成長装置を提供することにある。
【0040】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、搬入室と、ロードロック室と、反応室とを有し、前記搬入室と前記ロードロック室と前記反応室とは、それぞれ個別に気密にできるように構成されると共に、前記搬入室内に配置された基板を、大気に曝さずに、前記ロードロック室を通して前記反応室内に搬入し、複数枚の基板を一括して、該反応室内でエピタキシャル成長を行うように構成されたバッチ方式のエピタキシャル成長装置であって、前記搬入室と前記ロードロック室との間には搬送室が配置され、前記搬入室と前記ロードロック室と前記搬送室には、それぞれ窒素ガス導入ポートが設けられたことを特徴とする。
【0041】請求項2記載の発明は、前記基板を反応室内部に導入するためのボートに配置した状態で前記反応室内に搬入し、基板表面にエピタキシャル成長を行えるように構成された請求項1記載のエピタキシャル成長装置であって、前記搬送室内には基板移載ロボットが配置され、カセットに搭載された状態の基板が前記搬入室内に配置されると、前記基板移載ロボットにより、前記カセットから前記基板を取り出し、前記ロードロック室内に配置されたボート上に移載できるように構成されたことを特徴とする。
【0042】請求項3記載の発明は、二つ以上のロードロック室および反応室とを有し、前記反応室前段のロードロック室内には基板を反応室内部へ出し入れする機構であるボートローダが配置され、前記ロードロック室内に、基板が搭載されたボートが搬入されると、前記ボートローダにより、前記ボートを前記反応室内に移動させ、前記反応室内で前記基板表面にエピタキシャル成長を行えるように構成されたバッチ方式のエピタキシャル成長装置であって、前記ボートローダのボートが載置された底部には循環路が配置され、該循環路内を加熱された熱媒体が循環し、前記ボートローダを加熱できるように構成されたことを特徴とする。
【0043】請求項4記載の発明は、請求項3記載のエピタキシャル成長装置であって、前記反応室とロードロック室との間等にはOリングが配置され、該Oリング付近には、冷却されたオイルが循環できる循環路が設けられたことを特徴とする。
【0044】請求項5記載の発明は、請求項2記載のエピタキシャル成長装置の内部で基板を移載する基板移載方法であって、前記カセットを前記搬入室内に配置した後、前記搬入室を大気から遮断し、前記窒素ガス導入ポートから前記搬入室内に窒素ガスを導入し、内部雰囲気を窒素ガス置換すると共に、前記搬送室と前記ロードロック室内を窒素ガス雰囲気にした後、前記搬入室と前記ロードロック室とを前記搬送室に接続し、前記移載を行うことを特徴とする。
【0045】本発明は上記のように構成されており、搬入室と、ロードロック室と、反応室とを有している。搬入室と、ロードロック室と、反応室とは、それぞれ個別に気密にできるように構成されており、また、搬入室内に配置された基板を、大気に曝さずに、ロードロック室を通して反応室内に搬入できるように構成されている。反応室内に搬入された基板を加熱しながらエピタキシャル層の原料ガスを導入すると、基板表面にエピタキシャル成長を行えるようになっている。
【0046】更に、このエピタキシャル成長装置では、搬入室とロードロック室との間に搬送室が配置され、その搬送室と、前述の搬入室及びロードロック室には、窒素ガス導入ポートがそれぞれ設けられている。
【0047】搬入室に設けられた窒素ガス導入ポートを用いれば、搬入室だけを大気に開放して基板を搬入し、大気雰囲気との間の扉を閉じ、搬入室内を大気から遮断させた後、内部に窒素ガスを導入すると、搬入室内を所望の水分濃度の窒素ガス雰囲気に置換することができる。
【0048】また、搬送室に設けられた窒素ガス導入ポートを用い、搬送室内部に窒素ガスを導入すると、搬送室内部も所望の水分濃度の窒素ガス雰囲気にすることができる。
【0049】また、ロードロック室は、予め高真空雰囲気まで真空排気しておき、ロードロック室に設けられた窒素ガス導入ポートを用い、同様に、内部を窒素ガス雰囲気にしておくと、搬入室と搬送室との間のゲートバルブ及び搬送室とロードロック室の間のゲートバルブを開け、搬送室を通し、窒素ガス雰囲気中で基板を搬入室からロードロック室内に搬入することができる。
【0050】ロードロック室内に、大気が侵入しないので、搬入後、ロードロック室と搬送室の間のゲートバルブを閉じ、ロードロック室内を真空排気すると、短時間で高真空雰囲気まで真空排気することができる。
【0051】複数のロードロック室から構成されている場合には、最も搬送室に近いロードロック室のみを用いることにより、ロードロック室の容積が小さい分さらに短時間で高真空雰囲気を達成できる。
【0052】またボートは、基板を搭載した状態で反応室内に搬入されるので、ボートに水分が吸着している場合、エピタキシャル成長層の結晶性を悪化させるが、ボートが大気に曝されないため、ボートに水分等が吸着することがなく、従って、反応室内に水分が侵入することもない。
【0053】ロードロック室内の基板を反応室内に搬入する際、基板が搭載されたボートをロードロック室内に設けられたボートローダにより、ボートごと基板を反応室内に搬入する。このエピタキシャル成長装置では、そのボートローダのボートが載置された底部に循環路が位置するようにされており、その循環路内は、加熱されたオイルが循環できるように構成されている。
【0054】従って、ベーキングを行う際に、ボートローダも加熱することができるので、ロードロック室内を短時間で超高真空雰囲気まで真空排気することができる。
【0055】この循環路は、反応室とロードロック室との間に設けられたOリング周囲にも配置されており、エピタキシャル成長を行う際には、冷却されたオイルがその循環路内を循環するように構成されている。
【0056】このように、本発明のエピタキシャル成長装置では、ベーキングを行うときに加熱される部分に冷却水は用いられていないので、ベーキングの際に冷却水が沸騰することがない。従って、水抜き作業が不要であり、ベーキングの作業時間を大幅に短縮させることができる。
【0057】
【発明の実施の形態】本発明の基板移載方法を、本発明のエピタキシャル成長装置と共に説明する。図1を参照し、符号1は、本発明の一実施形態のエピタキシャル成長装置であり、上述した従来技術のエピタキシャル成長装置101と同様に、第1、第2のロードロック室31、32と、搬送室14と、反応室12等とを有している。
【0058】このエピタキシャル成長装置1では、更に、搬入室25が設けられている。搬入室25は、搬送室14の前段に配置されており、従って、搬入室25と、搬送室14と、第1のロードロック室31と、第2のロードロック室32と、反応室12とは、この順序で配置されている。そして、各室14、25、31、32、12は、それぞれゲートバルブ9、22〜24を介して接続されており、後述するように、搬入室25内に搬入したシリコン基板をその順序で通過させ、反応室12内に搬入できるように構成されている。
【0059】このエピタキシャル成長装置1を使用する場合、予め各ゲートバルブ9、22〜24を閉じ、真空ポンプ41〜43を動作させ、第1、第2のロードロック室31、32内は5.0×10-6Pa程度の圧力、反応室12内は5.0×10-7Pa程度の圧力まで真空排気しておく。このとき、ボート16は、第1のロードロック室31内に配置しておく。
【0060】また、発熱体15に通電し、反応室12は400℃程度に昇温させておく。このエピタキシャル成長装置1は、加熱冷却装置50を有しており、発熱体15に通電する際には、Oリングが配置された部分に、後述するように、20℃程度に温度制御した熱媒体を循環させ、Oリングを冷却できるように構成されている。この冷却装置50については、後述するベーキング作業において併せて説明する。
【0061】搬入室25と、搬送室14と、第1のロードロック室31には、窒素ガス導入ポート20、21、28がそれぞれ設けられており、第1のロードロック室31は真空排気できる構成で、搬送室14と、搬入室25とは、個別に大気中で窒素置換できるように構成されている。搬入室25と搬送室14の内部に、窒素ガス導入ポート20、21から窒素ガスを導入し、内部雰囲気を窒素ガス置換しておく。
【0062】成膜対象のシリコン基板は、加熱した硫酸−過酸化水素水溶液、及び加熱したアンモニア−過酸化水素水溶液に順番に浸漬し、有機物とパーティクルを除去した後、希フッ酸液に浸漬し、金属汚染物の除去と、自然酸化膜の除去を行った後、搬入室25に設けられた扉18を開け、カセット7に搭載した状態で、搬入室25内に配置する。
【0063】配置後、直ちに扉18を閉じ、窒素ガス導入ポート20から窒素ガスを導入する。搬入室25内部にはセンサー5が設けられており、該センサー5によって搬入室25内の雰囲気を監視し、所望の水分濃度、酸素濃度になるまで窒素ガス置換を行う。
【0064】続いて、第1のロードロック室31内には、窒素ガス導入ポート28から窒素ガスを導入し、大気圧の窒素ガスで充満させる。搬送室14内には、基板移載ロボット8が配置されており、搬送室14内部と第1のロードロック室31内部が大気圧の窒素ガス雰囲気になった後、ゲートバルブ9、22を開け、カセット7内に満載されたシリコン基板17を、第1のロードロック室31内に配置されたボート16に移載する。搬送室14内にはセンサー6が設けられており、窒素ガスを導入しながら移載する際に、センサー6によって、搬送室14の内部雰囲気を監視し、所定の水分濃度、酸素濃度を維持させる。
【0065】移載完了後、ゲートバルブ9、22を閉じ、第1のロードロック室31内を5.0×10-6Paの圧力まで真空排気する。
【0066】次いで、ゲートバルブ23を開け、第2のロードロック室32内に、シリコン基板17が配置されたボート16を移動させ、ゲートバルブ23を閉めた後、第2のロードロック室32内を5.0×10-6Paの圧力まで真空排気する。
【0067】このとき、反応室12は、5.0×10-7Pa程度の圧力まで真空排気されており、第2ロードロック室32内が5.0×10-6Pa程度の圧力まで真空排気する。続いて反応室12内に水素ガスを導入し、第2のロードロック室32との間のゲートバルブ24を開ける。
【0068】ボートローダ29を動作させ、水素ガス雰囲気中でボート16を反応室12内に搬入する。ボート16を搬入後、ボードローダ上面を反応炉下面に当接し、反応室12内部への水素ガス導入を停止し、内部を真空排気する。
【0069】反応室12内部が所定圧力まで真空排気された後、水素ガスを導入しながら反応室12の周囲に配置された発熱体15を発熱させ、ボート16に配置されたシリコン基板17を約900℃程度に加熱し、シリコン基板17表面の自然酸化膜を還元除去する。
【0070】次いで、発熱体15の発熱量を制御し、シリコン基板17を所定の成膜温度まで低下させた後、シリコンエピタキシャル層の原料ガスを導入し、シリコン基板17表面へのシリコンエピタキシャル層成長を行う。
【0071】シリコンエピタキシャル層が所定膜厚に形成された後、反応室12へ搬入したのとは逆の手順で、ボート16を第2のロードロック室32を介して第1のロードロック室31内に移動させ、搬送室14内の基板移載ロボット8によって、ボート16内に配置されたシリコン基板17を、搬入室25内に配置されたカセット7に移載し、扉18から取り出す。
【0072】以上説明したように、ボート16は真空雰囲気か、窒素ガス雰囲気に置かれるため、水分の吸着が無く、反応室12内に水分が侵入しないようになっている。また、搬入室25に窒素ガス導入ポート20が設けられており、未処理のシリコン基板を搬入室25内に装着した後、窒素ガス置換を行ってから、搬入室25を搬送室14に接続するので、第1のロードロック室31内に、搬送室14を介してシリコン基板を搬入する際に、第1のロードロック室31及び搬送室14内に大気が侵入することはない。
【0073】これにより、第1、第2のロードロック室31、32内や、反応室12内を超高真空雰囲気まで真空排気する時間が短くて済み、スループットが大幅に向上する。
【0074】次に、上記エピタキシャル成長装置1のベーキング方法について説明する。このエピタキシャル成長装置1は、第1、第2のロードロック室31、32と反応室12を真空ポンプ43に接続する排気経路13には、循環路4が巻かれている。この循環路4は、ボートローダ29のボートが載置された底部や、反応室12と排気経路13との間のOリングの周囲にも配置されている。
【0075】そして、循環路4は、加熱冷却装置50に接続されており、加熱冷却装置50によって温度制御された耐熱性のオイルが循環できるように構成されている。
【0076】反応室12内でエピタキシャル成長を行う場合には、20℃程度に温度制御したオイルをOリング周囲に循環させ、発熱体15の発熱からOリングを保護している。しかし、従来技術にもあるように反応室12に付着した反応物をウエットエッチング処理により、除去を行った後は、第1、第2のロードロック室31、32や反応室12を真空排気し、加熱冷却装置50によってオイルを昇温させ、150℃程度に温度制御されたオイルを、第1、第2のロードロック室31、32、ボートローダ29周囲に配置された循環路4や、ゲートバルブ24内に配置された循環路4内を循環させている。その結果、テープヒータ26a、26bでは加熱できない部分がオイルによって加熱される。
【0077】第1、第2のロードロック室31、32や、排気経路13が150℃に安定した後、経過時間と到達圧力を記録し、第1、第2のロードロック室31、32や排気経路13内の圧力低下が飽和するまでベーキングを継続し、その後、真空排気しながら加熱冷却装置50によってオイルを25℃に降温させる。
【0078】第1、第2のロードロック室31、32や排気経路13が25℃で安定した後、経過時間と圧力とを記録し、圧力低下の飽和が確認されると、その圧力を到達圧力とする。到達圧力は真空ポンプの性能と、第1、第2のロードロック室31、32や排気経路13を構成する部材からのガス放出量、透過ガス量、リーク量で決まる。
【0079】上記加熱冷却装置50によるベーキングを行っているときには、反応室12は、発熱体15によってベーキングされている。
【0080】以上説明したように、本発明のエピタキシャル成長装置1では、加熱したオイルを循環させることで、従来では加熱できなかった部分も加熱できるため、ベーキングを十分に行えるようになっている。従って、反応室12や第1、第2のロードロック室31、32内を超高真空雰囲気まで短時間で真空排気することが可能である。
【0081】また、この循環路4内を循環するオイルは、エピタキシャル成長の際にも、ベーキングの際にも用いられるため、水抜き作業が不要であり、作業時間の短縮にも寄与できる。
【0082】図5(a)〜(c)はオイル循環路の具体的な構成を示す図である。同図(a)は、排気経路13壁面上に銅配管で構成された循環路81が溶接固定された例である。同図(b)は、ボートローダ29のボートが載置された底部に循環路82が埋め込まれた例である。同図(c)は、反応室12と排気経路13との間のOリング周囲等のOリング周囲等内の、Oリング75に近接した位置に循環路83が埋め込まれている例である。
【0083】
【発明の効果】ロードロック室や反応室内に大気が侵入しないので、低い水分分圧でエピタキシャル成長を行うことができ、従って、低温で良質な結晶のエピタキシャル成長が可能である。また、ボートローダやゲートバルブもベーキングできるので、超高真空雰囲気まで短時間で真空排気でき、反応室内の水分分圧を低くすることができる。また、水抜き作業が不要なので、ベーキング作業も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例のエピタキシャル成長装置
【図2】エピタキシャル層の結晶性と成長温度及び水分分圧の関係を説明するためのグラフ
【図3】従来技術のエピタキシャル成長装置を説明するための図
【図4】(a)〜(c):シリコン基板表面へのエピタキシャル層成長を説明するための図
【図5】(a)〜(c):循環路の構成例を示す図
【図6】テープヒータの取り付け状態を示す図
【符号の説明】
1……エピタキシャル成長装置
4……循環路
8……基板移載ロボット
12……反応室
14……搬送室
16……ボート
17……基板(シリコン基板)
20、21、28……窒素ガス導入ポート
25……搬入室
29……ボートローダ
31……第1のロードロック室
32……第2のロードロック室

【特許請求の範囲】
【請求項1】搬入室と、真空排気が可能なロードロック室と、反応室とを有し、前記搬入室と前記ロードロック室と前記反応室とは、それぞれ個別に気密にできるように構成されると共に、前記搬入室内に配置された基板を、大気に曝さずに、前記ロードロック室を通して前記反応室内に搬入し、該反応室内でエピタキシャル成長を行うように構成されたバッチ方式のエピタキシャル成長装置であって、前記搬入室と前記ロードロック室との間には基板をロードロック室へ移載するための機構を有する搬送室が配置され、前記搬入室と前記ロードロック室と前記搬送室には、それぞれ不活性ガス導入ポートが設けられたことを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【請求項2】基板を反応室内に搬入し、基板表面にエピタキシャル成長を行えるように構成された請求項1記載のエピタキシャル成長装置であって、前記搬送室内には基板移載ロボットが配置され、カセットに搭載された状態の基板が前記搬入室内に配置されると、前記基板移載ロボットにより、前記カセットから前記基板を取り出し、前記ロードロック室内に配置された反応室内部へ基板を導入するための治具であるボート上に移載できるように構成されたことを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【請求項3】二つ以上のロードロック室および反応室とを有し、前記反応室前段のロードロック室内には基板を反応室内部へ出し入れする機構であるボートローダが配置され、前記ロードロック室内に、基板が搭載されたボートが搬入されると、前記ボートローダにより、前記ボートを前記反応室内に移動させ、前記反応室内で前記基板表面にエピタキシャル成長を行えるように構成されたエピタキシャル成長装置であって、前記ボートローダのボートが載置された底部には循環路が配置され、該循環路内を加熱された熱媒体が循環し、前記ボートローダを加熱できるように構成されたことを特徴とするバッチ方式のエピタキシャル成長装置。
【請求項4】請求項3記載のエピタキシャル成長装置であって、前記反応室およびロードロック室を気密させるためのシール用のOリング付近には、冷却された熱媒体が循環できる循環路が設けられたことを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【請求項5】請求項2記載のエピタキシャル成長装置の内部で基板を移載する基板移載方法であって、前記カセットを前記搬入室内に配置した後、前記搬入室を大気から遮断し、前記不活性ガス導入ポートから前記搬入室内に不活性ガスを導入し、内部雰囲気を不活性ガス置換すると共に、前記搬送室と前記ロードロック室内を不活性ガス雰囲気にした後、前記搬入室と前記ロードロック室とを遮断するための扉を開放し反応室内に基板を導入するための治具であるボートにカセット内の基板の移載を行うことを特徴とする基板移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−216102(P2000−216102A)
【公開日】平成12年8月4日(2000.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−15420
【出願日】平成11年1月25日(1999.1.25)
【出願人】(000231464)日本真空技術株式会社 (1,740)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】