説明

エポキシ樹脂用添加剤、その組成物及びその用途

【課題】 半導体封止分野で使用されているエポキシ樹脂及びフェノール樹脂系硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物に添加して、難燃性、金属に対する接着性を向上させることが可能なエポキシ樹脂添加剤を提供する。
【解決手段】 芳香環に直結するチオール基あるいはメルカプトメチル基などを2個以上有する芳香族硫黄化合物からなるエポキシ樹脂添加剤、及び該エポキシ樹脂添加剤とエポキシ樹脂とフェノール樹脂系硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用すると共に、エポキシ樹脂の難燃性及び金属に対する接着性を高めることが可能なエポキシ樹脂用添加剤、その組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、優れた特性を有するところから、電気電子用絶縁材料、土木・建築材料、接着剤、塗料など広い分野で使用されている。エポキシ樹脂の硬化剤は、このような用途に応じ、アミン類、酸無水物類、ポリアミド類、イミダゾール類、フェノール樹脂類、ポリメルカプタン類(特許文献1〜3参照)などが使い分けられている。
【0003】
電気電子用絶縁材料分野において、エポキシ樹脂は、配線基板、半導体封止材をはじめ、各種バインダーやコーティング剤などとして使用されているが、とくに難燃性の要求される用途においては、近年の環境問題から、難燃剤由来のハロゲンを削減するという観点で、難燃性の高い樹脂やハロゲンフリーの添加剤の出現が強く望まれている。例えば、半導体の封止方法としては、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂のようなフェノール樹脂及びシリカなどの無機充填剤とからなる樹脂封止が広く使用されており、難燃性付与のためには、従来臭素化エポキシ樹脂及びアンチモン化合物が併用されていた。しかるに燃焼時のダイオキシン生成が疑われる臭素系難燃剤や発ガン性が疑われるアンチモン化合物に対する使用規制要求が強まり、これらを使用しないで所望の難燃化を達成するノンハロゲン化処方が求められていた。
【0004】
これらの課題に対して、(1)配合する無機充填剤の増量、高充填、(2)代替難燃剤の適用、(3)エポキシ樹脂や硬化剤の難燃化などが試みられている。この内、(1)の処方は、流動性、成形性などの点において満足すべき性能を発揮することはできない。また(2)の処方において、代替難燃剤として、リン酸エステルなどのリン化合物、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物の使用が試みられているが、耐湿性、流動性、成形性などの点において、必ずしも満足すべき性能が得られていない。さらに(3)の処方において、樹脂自体の難燃化を図るために、芳香族性の高いエポキシ樹脂や硬化剤が一部の封止剤に使用されているが、成形性、流動性、耐熱性、経済性などの点において、未だ充分なものとはいえない。
【0005】
半導体封止材用途におけるエポキシ樹脂においてはまた、半田の鉛フリー化に伴い、接着性、耐熱性、耐湿性などの改良も求められていた。
【0006】
【特許文献1】特公昭47−32319号公報
【特許文献2】特開昭55−102624号公報
【特許文献3】特開昭61−162517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記のような現状に鑑み、半導体の封止材として使用可能なエポキシ樹脂に対するノンハロゲン系の難燃性付与剤の検討を行った。また同時に金属への接着性を改良する添加剤の検討を行った。その結果、従来提案されているものと異なる特定の芳香族硫黄化合物が、エポキシ樹脂の成形性や耐熱性などを実質的に犠牲にすることなく、難燃性及び金属に対する接着性を向上させることを見出し、本発明に到達した。したがって本発明の目的は、エポキシ樹脂の難燃性、金属接着性等の改良に有用なエポキシ樹脂用添加剤、及びエポキシ樹脂に該添加剤を配合した難燃性、金属接着性等に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明によれば、芳香環に直結する下記一般式(1)で示される官能基を2個以上有する芳香族硫黄化合物からなるエポキシ樹脂用添加剤が提供される。
【化1】

(式中、nは0又は1以上の整数、Rは水素又はメチル基であり、2n個のRは同一であっても異なっていてもよい)
【0009】
上記芳香族硫黄化合物の好適なものの一つの例は、下記式(2)で示される硫黄化合物である。
【化2】

(式中、nは0又は1以上の整数、mは1以上の整数、Rは水素又はメチル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、直接結合、アルキレン基、S又はOである。)
【0010】
上記一般式(2)で示される芳香族硫黄化合物の好適なものの一つの例は、下記式(3)で示される硫黄化合物である。
【化3】

【0011】
上記一般式(2)で示される芳香族硫黄化合物の好適なものの他の例は、下記式(4)で示される硫黄化合物である。
【化4】

【0012】
上記一般式(1)で示される官能基を2個以上有する芳香族硫黄化合物の他の好適例として、下記一般式(5)で示される硫黄化合物を挙げることができる。
【化5】

(式中、Rは水素又はメチル基である。)
【0013】
本発明によればまた、エポキシ樹脂に、上記芳香族硫黄化合物からなる添加剤を配合してなるエポキシ樹脂組成物が提供される。このようなエポキシ樹脂組成物には、さらにフェノール樹脂系硬化剤を配合されていることが好ましく、また無機充填剤が配合されていることが好ましい。このようなエポキシ樹脂組成物は、好ましくは半導体封止用に使用される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、難燃性、金属に対する接着性を改良することが可能なエポキシ樹脂用添加剤を提供することができる。このような添加剤を配合したエポキシ樹脂組成物は、加工性、耐熱性、耐湿性、難燃性、接着性等に優れており、成形材、各種バインダー、コーティング材、積層材などに使用することができる。とくに半導体封止用として有用であり、耐熱性、耐湿性、難燃性、接着性等に優れた半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のエポキシ樹脂用添加剤は、芳香環に直結する一般式(1)で示される官能基を2個以上、好ましくは2〜4個、とくに好ましくは2〜3個有する芳香族硫黄化合物である。
【化6】

式中、nは0又は1以上の整数、例えば5以下の整数、好ましく0又は1である。Rは水素又はメチル基であり、2n個のRは同一であっても異なっていてもよい。Rは、好ましくは全て水素である。
【0016】
上記芳香族硫黄化合物の一例として、下記一般式(2)で示される硫黄化合物を挙げることができる。
【化7】

【0017】
上式においてnは0又は1以上の整数、例えば5以下の整数であり、好ましくは0又は1である。Rは水素又はメチル基であり、全てのRは同一であっても異なっていてもよい。Rは、好ましくは全て水素である。またmは1以上の整数、好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
【0018】
上式(2)で示される化合物の好適例として、下記式(3)で示される化合物をあげることができる。
【化8】

【0019】
上記式(3)において、4個のRは、水素又はメチル基から選ばれるものであるが、好ましくは全てが水素である化合物である。またXは、直接結合、アルキレン基、例えばメチレン、エチリデン、イソプロピリデンなどの基、S又はOである。上記式において、CRSH基の位置は任意であり、例えば2,2’−、2,4’−、4,4’−などの各異性体を使用することができるが、とくに4,4’−異性体である下記式(6)で示される硫黄化合物が好ましい。
【化9】

【0020】
より具体的には、上記式(6)で示される化合物として、Rが全て水素であり、Xが直接結合である、下記式(7)で示される化合物や、Rが全てHで、Xがメチレン基、S又はOである化合物などを例示することができる。
【化10】

【0021】
一般式(2)で示される芳香族硫黄化合物の他の例として、下記一般式(4)で示される硫黄化合物を例示することができる。
【化11】

【0022】
上記式(4)において、Xは、直接結合、アルキレン基、例えばメチレン、エチリデン、イソプロピリデンなどの基、S又はOである。上記式において、SH基の位置は任意であり、例えば2,2’−、2,4’−、4,4’−などの各異性体を使用することができるが、とくに4,4’−異性体である下記式(8)で示される硫黄化合物が好ましい。
【化12】

【0023】
芳香環に直結する一般式(1)で示される官能基を2個以上有する芳香族硫黄化合物の他の例として、下記一般式(5)で示される硫黄化合物を例示することができる。
【化13】

【0024】
上記式において、4個のRは、水素又はメチル基から選ばれるものであるが、好ましくは全てが水素である化合物である。また上記化合物として、o−、m−又はp−の各異性体が使用できるが、とくに下記式(9)で示されるp−異性体の使用が好ましい。
【化14】

【0025】
上記のような芳香族硫黄化合物は、エポキシ樹脂用添加剤として有用であり、とくにフェノール樹脂系硬化剤と併用することにより、半導体封止材として好ましい性質を有するエポキシ樹脂組成物を形成することができる。
【0026】
上記本発明の芳香族硫黄化合物を配合するのに使用されるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合によるアラルキル樹脂のエポキシ化物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂など、分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
上記本発明の芳香族硫黄化合物をエポキシ樹脂に配合するに際しては、フェノール樹脂系硬化剤を併用するのが好ましい。このようなフェノール樹脂系硬化剤としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であって、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フェノールナフチルアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂などを例示することができる。
【0028】
エポキシ樹脂に上記芳香族硫黄化合物又はそれとフェノール樹脂系硬化剤を配合したエポキシ樹脂組成物を、半導体封止用に使用する場合は、無機充填剤の添加は必須である。このような無機充填剤の例として、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ガラス、珪酸カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、マグネサイト、クレー、タルク、マイカ、マグネシア、硫酸バリウムなどを挙げることができるが、とくに非晶性シリカ、結晶性シリカなどが好ましい。また優れた成形性を維持しつつ、充填剤の配合量を高めるために、細密充填を可能とするような粒度分布の広い球形の充填剤を使用することが好ましい。
【0029】
上記エポキシ樹脂組成物には、必要に応じ他の添加剤、例えば硬化促進剤、カップリング剤、離型剤、着色剤、他の難燃剤、難燃助剤、低応力剤などを配合することができる。
【0030】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂をフェノール樹脂系硬化剤で硬化させるための公知の硬化促進剤を用いることができ、例えば第3級アミン、第4級アンモニウム塩、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物、第4級ホスホニウム塩などを挙げることができる。より具体的には、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンー7などの第3級アミン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラナフトエ酸ボレートなどを挙げることができる。
【0031】
カップリング剤の例としては、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系などのシラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤を、離型剤の例としてはカルナバワックス、パラフィンワックス、ステアリン酸、モンタン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィンワックスなど、また着色剤としては、カーボンブラックなどを例示することができる。難燃剤の例としては、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化合物、リン化合物など、また難燃助剤としては三酸化アンチモンなどを挙げることができる。低応力剤の例としては、シリコンゴム、変性ニトリルゴム、変性ブタジエンゴム、変性シリコンオイルなどを挙げることができる。
【0032】
上記エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂に上記芳香族硫黄化合物及びフェノール樹脂系硬化剤を配合する場合、成形性及び樹脂硬化物の特性を考慮すると、(メルカプト基+フェノール性水酸基)/エポキシ基の当量比が、0.5〜1.5、とくに0.8〜1.2の範囲にあることが好ましい。また成形性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性などを考慮すると、芳香族硫黄化合物とフェノール樹脂系硬化剤の使用割合が,メルカプト基/フェノール性水酸基の当量比で1/99〜40/60、好ましくは5/95〜35/65、とくに好ましくは10/90〜30/70となるようにするのがよい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部程度配合すると効果的である。さらに半導体封止材として使用する場合においては、無機充填剤は、その種類によっても異なるが、組成物全体の60〜93重量%を占めるような割合で配合することが好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、所定の割合の各原料を、例えばミキサーによって充分混合後、熱ロールやニーダーなどによって混練処理し、これを冷却して固化したものを適当な大きさに粉砕するなどの手法を挙げることができる。このようにして得た成形材料は、例えば低圧トランスファー成形などにより半導体素子を封止することにより、半導体装置を製造することができる。エポキシ樹脂組成物の硬化は、例えば100〜250℃の温度範囲で行うことができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0035】
[参考例1]
四つ口フラスコに、4,4’−ビスクロロビフェニル(アルドリッチ社製試薬精製品)125.5g(0.50モル)と1,4−ジオキサン753gを仕込んで攪拌させながら55℃まで昇温し、そこにチオ尿素83.6g(1.10モル)とエチレングリコール250.8gからなる溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、95℃まで昇温して30分間保持した。その後テトラエチレンペンタミン189.0g(1.00モル)を30分かけて滴下し、滴下終了後、95℃で30分間保持した。
【0036】
反応終了後、分液により下層を除去し、上層に純水3000gを加え、結晶出しを行った。結晶が析出した懸濁液から濾過によって結晶を分離し、純水1000gで5回リンスを行った。得られたケーキを、120℃で4時間、真空乾燥し、前記式(7)で示される4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニル113.4gを得た。
【0037】
尚、4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニルの同定は、H−NMR測定により行った。すなわち試料10mgをTHF−d(和光純薬(株)製、純度100%)約0.6mLに溶解し、下記条件でH−NMR測定を行った。
<測定条件>
装置 :JNM−ECA400
共鳴周波数 :400MHz(H−NMR)
溶解溶媒 :THF−d
内部基準物質:THF−d(1.73ppm)
積算回数 :16回
【0038】
測定結果を表1及び図1に示す。これらの結果は、図1に記載した化学構造を支持するものである。
【表1】

【0039】
[実施例1]
エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000P、ビフェニルアラルキル型、エポキシ当量272g/eq)、フェノールビフェニルアラルキル樹脂(エア・ウォーター・ケミカル(株)製HE200C−10、水酸基当量204g/eq)、参考例1で得た4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニル(添加剤−1)、溶融シリカ及びリン系硬化促進剤(2−(トリフェニルホスホニオ)フェノラート、以下同じ)を表2に示す割合で配合し、充分に混合した後、85℃±3℃の2本ロールで3分混練し、冷却、粉砕することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0040】
トランスファー成形機で上記エポキシ樹脂組成物を圧力100kgf/cmで175℃、5分間成形後、180℃、6時間ポストキュアを行い、難燃性及び熱時弾性率の各測定用テストピースを得た。
【0041】
これらエポキシ樹脂硬化物の特性を、次の方法により測定し、その結果を表2に併記した。
【0042】
(1)難燃性(UL94)
サンプル形状120×13×1.6mmの短冊を用いてUL−94規格の方法に従って難燃性を評価した。また10秒燃焼後の残炎時間をt1とし、消炎後さらに10秒燃焼後の残炎時間をt2とするときに、下記により評価した。
max:t1又はt2の最大値
total:サンプル5枚のt1とt2の合計
【0043】
(2)熱時弾性率
JIS K6911に準じて測定した(サンプル形状:80×10×4mmの短冊、260℃雰囲気下で10分間放置後、曲げ弾性率を測定)。
【0044】
(3)接着力
トランスファー成形機で、Ni−Pd−Auでメッキされた金属板の上にエポキシ樹脂組成物を圧力100kgf/cmで175℃、5分間成形後、成形品(2mm×2mm×2m)を得、金属板との剪断接着力を常温で測定した。
【0045】
[実施例2]
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製YX−4000H、ビフェノール型、エポキシ当量190g/eq)、フェノールアラルキル樹脂(エア・ウォーター・ケミカル(株)製HE100C−15、水酸基当量175g/eq)、参考例1で得た4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニル(添加剤−1)、溶融シリカ及びリン系硬化促進剤を表2に示す割合で配合したものを使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、その評価を行った。結果を表2に併記する。
【0046】
[実施例3]
エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000P、ビフェニルアラルキル型、エポキシ当量272g/eq)、フェノールビフェニルアラルキル樹脂(エア・ウォーター・ケミカル(株)製HE200C−10、水酸基当量204g/eq)、1,4−ビスメルカプトメチルベンゼン(アルドリッチ社製試薬品・・・添加剤−2)、溶融シリカ及びリン系硬化促進剤を表2に示す割合で配合したものを使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、その評価を行った。結果を表2に併記する。
【0047】
[実施例4]
エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000P、ビフェニルアラルキル型、エポキシ当量272g/eq)、フェノールビフェニルアラルキル樹脂(エア・ウォーター・ケミカル(株)製HE200C−10、水酸基当量204g/eq)、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド(住友精化(株)製・・・添加剤−3)、溶融シリカ及びリン系硬化促進剤を表2に示す割合で配合したものを使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、その評価を行った。結果を表2に併記する。
【0048】
[実施例5]
エポキシ樹脂(日本化薬(株)製EPPN−501H、トリフェノールメタン型、エポキシ当量162g/eq)、トリフェノールメタン型樹脂(エア・ウォーター・ケミカル(株)製HE900−80、水酸基当量100g/eq)、参考例1で得た4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニル(添加剤−1)、溶融シリカ及びリン系硬化促進剤を表2に示す割合で配合したものを使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、その評価を行った。結果を表2に併記する。
【0049】
[比較例1]
実施例1において、4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニルを使用せず、フェノールビフェニルアラルキル樹脂の使用量を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、その評価を行った。結果を表2に併記する。
【0050】
[比較例2]
実施例2において、4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニルを使用せず、エポキシ樹脂及びフェノールアラルキル樹脂の使用量を表2に示すように変えた以外は、実施例2と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、その評価を行った。結果を表2に併記する。
【0051】
[比較例3]
実施例5において、4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニルを使用せず、エポキシ樹脂及びトリフェノールメタン型樹脂の使用量を表2に示すように変えた以外は、実施例5と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、その評価を行った。結果を表2に併記する。
【0052】
【表2】

【0053】
表1の結果から明らかなように、実施例1、3及び4と比較例1を対比すると、添加剤−1〜3の配合により、難燃性がV−1からV−0に向上し、熱時弾性率が低減し、接着力が向上した。また異なるエポキシ樹脂及びフェノール樹脂系硬化剤を使用した実施例2と比較例2の対比においても、添加剤−1の配合により、残炎時間の評価Fmax及びFtotalが短縮すると共に、熱時弾性率が低減し、接着力が向上した。さらに別のエポキシ樹脂及びフェノール樹脂系硬化剤を使用した実施例5と比較例3を対比においても、添加剤−1の配合により、難燃性が燃焼からV−1に向上し、熱時弾性率が低減し、接着力が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】参考例1で得た4,4’−ビスメルカプトメチルビフェニルのH−NMRのチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環に直結する下記一般式(1)で示される官能基を2個以上有する芳香族硫黄化合物からなるエポキシ樹脂用添加剤。
【化1】

(式中、nは0又は1以上の整数、Rは水素又はメチル基であり、2n個のRは同一であっても異なっていてもよい)
【請求項2】
上記芳香族硫黄化合物が、下記一般式(2)で示される硫黄化合物である請求項1記載のエポキシ樹脂用添加剤。
【化2】

(式中、nは0又は1以上の整数、mは1以上の整数、Rは水素又はメチル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、直接結合、アルキレン基、S又はOである。)
【請求項3】
上記一般式(2)で示される硫黄化合物が、下記一般式(3)で示される硫黄化合物である請求項2記載のエポキシ樹脂用添加剤。
【化3】

(式中、Rは水素又はメチル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは、直接結合、アルキレン基、S又はOである。)
【請求項4】
上記一般式(2)で示される硫黄化合物が、下記一般式(4)で示される硫黄化合物である請求項1記載のエポキシ樹脂用添加剤。
【化4】

(式中、Xは、直接結合、アルキレン基、S又はOである。)
【請求項5】
上記一般式(1)で示される官能基を2個以上有する芳香族硫黄化合物が、下記一般式(5)で示される硫黄化合物である請求項1記載のエポキシ樹脂用添加剤。
【化5】

(式中、Rは水素又はメチル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
エポキシ樹脂に、請求項1〜5記載のエポキシ樹脂用添加剤を配合してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
さらにフェノール樹脂系硬化剤を配合してなる請求項6記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
さらに無機充填剤を配合してなる請求項6又は7記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
さらに硬化促進剤を配合してなる請求項6〜8記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
半導体封止用に使用される請求項6〜9記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項6〜10記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項12】
請求項10記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−117881(P2006−117881A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309900(P2004−309900)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(398037527)エア・ウォーター・ケミカル株式会社 (15)
【Fターム(参考)】