説明

エリプソメーター装置および単結晶シリコンに形成された反射防止膜の測定方法

【課題】単結晶シリコン太陽電池表面上に成膜された反射防止膜の膜厚および屈折率を有効に測定するためのエリプソメーター装置を得ること。
【解決手段】実施の形態にかかるエリプソメーター装置10は、反射防止膜が形成された測定試料1の反射防止膜が形成された面へレーザー光を照射する光源5と、前記測定試料から反射された反射光に基づいて反射光の偏光変化量を測定することにより前記反射防止膜の膜厚および屈折率を測定する検出器6と、前記測定試料を試料設置面にて保持し、前記試料設置面と垂直な方向を軸にして前記測定試料を回転する回転角度調節部と、前記測定試料を傾斜させる傾斜調節部とを有するステージ2と、前記ステージをステージ設置面上に保持する支持部7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコン上に成膜された反射防止膜の膜厚および屈折率を測定するエリプソメーター装置および単結晶シリコンに形成された反射防止膜の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エリプソメーターは、特許文献1に開示されているように、物質の表面で光が反射する際の偏光状態の変化を観測して、その物質の光学定数(屈折率、消衰係数)を、また、物質の表面に薄膜層が存在する場合は、その膜厚および光学定数を測定する。
【0003】
一般に、表面に薄膜を有する試料の表面に直線偏光を斜め上方から入射させれば、試料表面上の測定対象物である薄膜の厚さや屈折率、消衰係数によって反射光の偏光状態が変化する。
【0004】
これは、P偏光とS偏光で反射の位相のずれ方と反射率によって反射光に差があるためで、この反射光の偏光変化量を測定し、解析計算を行うことによって、試料表面の薄膜の厚さや屈折率を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−131136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、テクスチャ形成された単結晶シリコン太陽電池の表面上は、表面の凹凸構造により、反射光が表面の凹凸部分で乱反射されるため、反射率が低い。さらに、表面上に成膜された反射防止膜により、反射光は屈折するため、エリプソメーターで得られる光強度は非常に弱い。従って、上記従来の技術によれば、エリプソメーターによる反射防止膜の膜厚および屈折率の測定が困難なことが問題であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単結晶シリコン太陽電池表面上に成膜された反射防止膜の膜厚および屈折率をエリプソメーターにて有効に測定するためのエリプソメーター装置および単結晶シリコンに形成された反射防止膜の測定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の実施の形態にかかるエリプソメーター装置は、反射防止膜が形成された測定試料の反射防止膜が形成された面へレーザー光を照射する光源と、前記測定試料から反射された反射光に基づいて反射光の偏光変化量を測定することにより前記反射防止膜の膜厚および屈折率を測定する検出器と、前記測定試料を試料設置面にて保持し、前記試料設置面と垂直な方向を軸にして前記測定試料を回転する回転角度調節部と、前記測定試料を傾斜させる傾斜調節部とを有するステージと、前記ステージをステージ設置面上に保持する支持部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単結晶シリコン太陽電池上の反射防止膜の膜厚および屈折率をエリプソメーターにて測定する際、より多くの反射光を検出することが可能となる。これにより、反射光が弱くてエリプソメーターでは従来測定することができなかったテクスチャ形成された単結晶シリコン太陽電池表面上に成膜された反射防止膜の膜厚および屈折率の測定が実現されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態にかかるエリプソメーター装置の構成の模式図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかるエリプソメーター装置のステージを正面から見た模式図である。
【図3】図3は、実施の形態にかかるエリプソメーター装置のステージを横から見た模式図である。
【図4】図4は、実施の形態にかかる単結晶シリコンウエハの凹凸形状を正面から見た模式図である。
【図5】図5は、実施の形態にかかる単結晶シリコンウエハの凹凸形状を斜めから見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるエリプソメーター装置および単結晶シリコンに形成された反射防止膜の測定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
本発明の実施の形態にかかるエリプソメーター装置10について図1、図2および図3を参照して説明する。図1は、実施の形態にかかるエリプソメーター装置10の構成の模式図であり、図2は、エリプソメーター装置10のステージ2を正面から見た模式図であり、図3は、エリプソメーター装置10のステージ2を横から見た模式図である。
【0013】
測定試料1は、表面処理の実施により表面に凹凸が形成された後、反射防止膜を成膜した単結晶シリコン太陽電池である。ステージ2は、真空ポンプにより測定試料1を吸着させることが可能な構成となっており、測定試料1はこれにより、ステージ2の主表面である試料設置面へ吸着させられている。ステージ2は支持部7によりステージ設置面(地面)の上に支えられている。
【0014】
また、図2に示すように、ステージ2はステージ回転角度調節部3を備え、測定試料1を試料設置面に垂直な方向を軸として角度θ1だけ回転させることが可能である。図2に示すように、試料設置面がy軸に垂直、即ち、ステージ設置面(x−y平面)に垂直な場合は、z軸方向に対して角度θ1だけ測定試料1を回転させることが可能である。また、後述するように、試料設置面が測定試料1と共に傾斜している場合であっても、試料設置面に垂直な方向を軸として角度θ1だけ測定試料1を回転させることが可能である。この角度θ1はステージ回転角度調節部3により後述する傾斜の有無にかかわらず微調整することが可能である。
【0015】
さらに、図3に示すように、ステージ2はステージ傾斜調節部4を備え、ステージ2自体が試料設置面と共に、x軸(紙面垂直方向)周りに回転して傾斜することが可能である。この試料設置面の傾斜により測定試料1も共に傾斜する。図3に示した本実施の形態のエリプソメーター装置10のステージ2の試料設置面はx軸(紙面垂直方向)周りに回転して試料設置面とy軸方向(あるいはステージ設置面、即ちx−y平面)とのなす角度がθ2となるように傾斜させることが可能な構造になっている。この角度θ2はステージ傾斜調節部4により、微調整が可能な構造となっている。
【0016】
光源5はレーザーを光源としており、ここからステージ2にセットされた測定試料1の反射防止膜が形成された面へレーザー光を照射する。測定試料1から反射された反射光は、光の偏光状態を検出する光検子と、光検子により得られた光を電気信号として出力する検出部からなる検出器6により検出され、反射光の偏光変化量を測定し、解析計算を行うことで測定試料1の反射防止膜の膜厚および屈折率が測定される。これにより単結晶シリコン太陽電池上に成膜された反射防止膜の膜質評価が可能となる。
【0017】
上述した回転角度θ1および傾斜角度θ2について、測定試料1からの十分な光強度の反射光を適切に検出器6で得るために望ましい角度について図4および図5を用いて説明する。図4は、単結晶シリコンウエハの凹凸形状を正面から見た模式図であり、図5は、単結晶シリコンウエハの凹凸形状を斜めから見た模式図である。
【0018】
一例として、表面および側面の面方位が[100]の単結晶シリコンウエハを用いて試料を作製した場合について説明する。図4は、ウエハ側面の面方位が[100]の場合の試料の表面凹凸構造の模式図である。この場合、表面凹凸構造の一表面である面aをx軸に対して水平となるように回転させるためには、図4に示すようにθ1を45°に設定すればよい。また、その他の例として、ウエハ側面の面方位が[110]の場合があるが、この場合はθ1は0°となる。
【0019】
次に、図5のように面aをy軸に対して水平とするため、角度θ2を設定する。一般的なウエハ表面の面方位は[100]である。そのため、角度θ2は、arccos(1/√3)≒54.7°となり、一般的な単結晶シリコンウエハを用いる際には、θ2は54.7°に設定すればよい。上記のように角度θ1およびθ2を設定することで、面aがx軸およびy軸に対して水平な面、即ちステージ設置面(地面)と水平な面となるように測定試料1をセットすることができ、測定試料1からの反射光を検出器6において適切な角度で得ることが可能となる。これにより、光強度の弱い反射光でも、検出器側でより多くの光を得ることができ、反射防止膜の膜厚および屈折率の測定が可能となる。
【0020】
従来、単結晶シリコン太陽電池セルにおいてテクスチャ形成された表面に成膜された反射防止膜の膜厚および屈折率測定をエリプソメーターにて行う場合、充分な反射光が得られないため、測定が困難であった。
【0021】
しかし、本実施の形態のエリプソメーター装置においては、より多くの反射光を検出してエリプソメーターによる単結晶シリコン太陽電池表面上に成膜された反射防止膜の膜厚および屈折率の測定を可能とするため、単結晶シリコン太陽電池のテクスチャの形状、即ち表面凹凸形状に合わせてウエハの回転および傾斜角度調整が可能なステージを装置に用いる。これにより、光強度の弱い反射光でも反射角度を適切に調整することで多くの反射光を検出できるため、テクスチャ形成された表面を有する単結晶シリコン太陽電池上に成膜された反射防止膜の膜厚および屈折率の測定が可能となる。
【0022】
更に、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。
【0023】
例えば、上記実施の形態においてに示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。更に、上記実施の形態における構成要件を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明にかかるエリプソメーター装置および単結晶シリコンに形成された反射防止膜の測定方法は、単結晶シリコン太陽電池の表面上に成膜された反射防止膜の測定に有用であり、特に、テクスチャ形成された単結晶シリコン太陽電池の表面上の測定に適している。
【符号の説明】
【0025】
1 測定試料
2 ステージ
3 ステージ回転角度調節部
4 ステージ傾斜調節部
5 光源
6 検出器
7 支持部
10 エリプソメーター装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止膜が形成された測定試料の反射防止膜が形成された面へレーザー光を照射する光源と、
前記測定試料から反射された反射光に基づいて反射光の偏光変化量を測定することにより前記反射防止膜の膜厚および屈折率を測定する検出器と、
前記測定試料を試料設置面にて保持し、前記試料設置面と垂直な方向を軸にして前記測定試料を回転する回転角度調節部と、前記測定試料を傾斜させる傾斜調節部とを有するステージと、
前記ステージをステージ設置面の上に保持する支持部と、
を備えたことを特徴とするエリプソメーター装置。
【請求項2】
前記傾斜調節部は、前記ステージを傾斜させることにより前記測定試料を前記試料設置面と共に傾斜させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエリプソメーター装置。
【請求項3】
前記回転角度調節部は、前記測定試料を少なくとも45°回転することが可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエリプソメーター装置。
【請求項4】
前記傾斜調節部は、前記試料設置面と前記ステージ設置面との角度が54.7°となるように前記ステージおよび前記試料設置面を傾斜させることが可能である
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のエリプソメーター装置。
【請求項5】
ウエハ表面の面方位が[100]で、当該ウエハ表面上に反射防止膜が形成されている単結晶シリコンウエハをステージの試料設置面にて保持する工程と、
前記試料設置面と地面とがなす角度を54.7°とするように前記試料設置面を傾斜する傾斜工程と、
前記傾斜工程による傾斜効果も含めて前記ウエハ表面の凹凸構造の一表面が前記地面と水平となるように、前記試料設置面と垂直な方向を軸にして前記測定試料を回転する回転工程と、
前記一表面が前記地面と水平な状態で、前記反射防止膜へレーザー光を照射し、その反射光の偏光変化量を測定することにより前記反射防止膜の膜厚および屈折率を測定する測定工程と、
を含むことを特徴とする単結晶シリコンに形成された反射防止膜の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2900(P2013−2900A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133039(P2011−133039)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】