説明

エンジンの制御装置

【課題】エンジンの自動停止後の再始動時において始動性および加速性を高める。
【解決手段】吸排気通路に設けられる制御弁24a,26aと、電力の供給を受けて前記制御弁を駆動する制御弁駆動手段24b,26bと、電動モーター50と制御弁駆動手段24b,26bに電力を供給する電力供給手段60とを設け、電力供給手段60を、エンジンの自動停止後エンジンの再始動条件が成立して電動モーター50が稼動されてエンジンの回転が再開するまでの間は、制御弁駆動手段24b,26bへの電力の供給を停止して、エンジンの回転が再開するのに伴い、制御弁駆動手段24b,26bへの電力の供給を開始するよう構成し、制御弁駆動手段24b,26bを、電力の供給を受けることで制御弁24a,26aを記エンジンの出力トルクが増大する側に駆動するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させ、その後、自動的にエンジンを再始動させるエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを自動で停止、再始動させるいわゆるアイドルストップ制御を実施するエンジンの制御装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アイドル時にエンジンを一旦自動的に停止させ、その後の発進操作等の条件成立時にエンジンを再始動させる装置が開示されている。この装置では、再始動モードの一つとして、スターターでアシストしつつ膨張行程気筒での燃焼及びその次の圧縮行程気筒での燃焼によりエンジンを再始動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−004985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のようなエンジンの自動停止および再始動は、交差点での停止、再始動等のようにエンジンの停止後、比較的早期に車両を発進させる状況で実施されることが多い。そのため、このようにエンジンの自動停止および再始動が行われる装置では、より高い始動性と再始動後のより高い加速性とが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、始動性および加速性をより高めることのできるエンジンエンジンの制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに当該エンジンを自動停止させるとともに、予め設定されたエンジンの再始動条件が成立したときに電動モーターを用いてエンジンを再始動させるエンジンの制御装置において、エンジンに連設される吸気通路と排気通路の少なくとも一方に設けられて当該通路内のガスの流通状態を変更可能な制御弁と、電力の供給を受けて前記制御弁を駆動する制御弁駆動手段と、前記電動モーターと前記制御弁駆動手段に電力を供給する電力供給手段とを備え、前記電力供給手段は、前記エンジンの自動停止後前記エンジンの再始動条件が成立して前記電動モーターが稼動されることで前記エンジンの回転が再開するまでの間は、前記制御弁駆動手段への電力の供給を停止して、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記制御弁駆動手段への電力の供給を開始し、前記制御弁駆動手段は、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記電力の供給を受けることで前記制御弁を前記エンジンの出力トルクが増大する方向に駆動することを特徴とするエンジンの制御装置を提供する(請求項1)。
【0008】
この装置によれば、エンジンの自動停止後エンジンの回転が再び開始するまでの間、前記制御弁駆動手段への電力供給が停止されて再始動時にこの制御弁駆動手段での電力消費が回避されており、前記電力供給手段から前記電動モーターに供給される電力を確保することができ、この電動モーターによりエンジンの再始動をより確実に行うことができる。しかも、前記エンジンの再始動条件が成立して前記電動モーターの稼動に伴いエンジンの回転が再開した直後に前記制御弁駆動手段により前記制御弁が前記エンジンの出力トルクが増大するように駆動されており、再始動後のエンジンの出力トルクを高めて加速性を向上することができる。
【0009】
本発明において、前記排気通路に設けられて当該排気通路を通過する排気で駆動されるタービンと、前記吸気通路に設けられて前記タービンの駆動力によって当該吸気通路を通過する吸気を昇圧するコンプレッサとを有するターボ過給機を備え、前記排気通路は、前記タービンの上流と下流とを連通して当該タービンをバイパスするバイパス通路を有し、前記制御弁駆動手段は、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記制御弁を前記バイパス通路の流路面積を減少させる方向に駆動するのが好ましい(請求項2)。
【0010】
この構成では、エンジンの再始動時において前記エンジンの回転再開直後に前記バイパス通路の流路面積が減少することで前記タービンに流入する排気量が増大するため、エンジンの回転再開後すなわち再始動後のエンジンの出力が高められる。
【0011】
また、本発明において、前記排気通路に設けられて当該排気通路を通過する排気で駆動されるタービンと、前記吸気通路に設けられて前記タービンの駆動力によって当該吸気通路を通過する吸気を昇圧するコンプレッサとを有するターボ過給機を備え、前記制御弁は、前記排気通路のうち前記タービンの上流に設けられて、当該タービン上流の排気通路の流路面積を変更可能であり、前記制御弁駆動手段は、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記制御弁を前記タービン上流の排気通路の流路面積を減少させる方向に駆動するのが好ましい(請求項3)。
【0012】
この構成では、エンジンの再始動時において前記エンジンの回転再開直後に前記タービン上流の排気通路の流路面積が減少することでタービンに流入する排気の流速が高められるため、エンジンの回転再開後すなわち再始動後のエンジンの出力が高められる。
【0013】
前記構成において、前記制御弁を付勢する付勢手段を有し、前記制御弁は、前記電力供給手段により前記制御弁駆動手段に電力が供給されていない状態では前記付勢手段の付勢力により当該制御弁による変更が可能な前記流路面積が最大となる位置に配置されるとともに、前記制御弁駆動手段に電力が供給された状態では当該制御弁駆動手段により前記電力の供給に伴って前記付勢手段の付勢力に抗して前記流路面積を減少させる方向に駆動されることが好ましい(請求項4)。
【0014】
このようにすれば、付勢手段により制御弁を付勢するという簡単な構成で、前記制御弁駆動手段に電力が供給されていない状態において、前記バイパス通路あるいはタービン上流の排気通路の流路面積を最大として排気抵抗を小さくし、これによりエンジンを容易に再始動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、電動モーターへ供給される電力を確保してエンジンの始動性を高めることができるとともに、再始動後の加速性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエンジンの制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るエンジンの制御装置の制御手順を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態に係るエンジンの制御装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るエンジンの制御装置の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は前記エンジンの制御装置100の概略構成図である。このエンジンの制御装置100は、エンジン1と、第1ターボ過給機(ターボ過給機)30と、第2ターボ過給機(ターボ過給機)40と、スタータモーター(電動モーター)50と、バッテリー(電力供給手段)60と、ECU90と、各種制御弁24a,26aを有している。
【0019】
前記エンジン1は、シリンダーブロック2aとその上に載置されるシリンダーヘッド2bとを備えている。このシリンダーブロック2aとシリンダーヘッド2bとの内部には、ピストン4が嵌挿された複数のシリンダー3が形成されている。シリンダーブロック2aには、ピストン4に連結されたクランクシャフト6が支持されている。各ピストン4の上方にはシリンダーヘッド2bとの間でそれぞれ燃焼室5が区画されている。シリンダーヘッド2bには、各燃焼室5に連通する吸気ポート9と排気ポート10とが形成されている。また、前記シリンダーヘッド2bには、吸気ポート9および排気ポート10をそれぞれ燃焼室5から遮断するための吸気バルブ11および排気バルブ12と、燃焼室5に燃料を噴射するためのインジェクタ7とが取り付けられている。本実施形態では、エンジン1はディーゼルエンジンであって、前記インジェクタ7から噴射された燃料が燃焼室5で自着火することによりエンジン1が駆動される。
【0020】
また、前記エンジン1には、エンジン1の回転数を検出するためのクランク角センサ17が設けられている。このクランク角センサ17は、複数の歯を有しクランクシャフト6と一体に回転するローター18の前記歯の通過に伴って信号を出力するものであり、クランクシャフト6が所定量回転する毎に信号を出力する。本実施形態では、前記ローター18は6°刻みの歯を54歯有しており、クランクシャフト6が6℃A回転する毎にパルス信号が出力される。このクランク角センサ17から出力された検出信号は前記ECU90に入力される。
【0021】
前記吸気ポート9には、吸気通路15が連結されており、この吸気通路15および吸気ポート9を通って燃焼室5内に吸気が導入される。前記排気ポート10には排気通路16が連結されており、この排気通路16および排気ポート10を通って燃焼室5から大気中に排気が導出される。
【0022】
前記第1ターボ過給機30は、吸気通路15に設けられた第1コンプレッサ32と排気通路16に設けられた第1タービン34とを有しており、第1タービン34が排気を受けて回転することにより第1コンプレッサ32が回転し、これにより吸気を加圧する。
【0023】
同様に、前記第2ターボ過給機40は、吸気通路15に設けられた第2コンプレッサ42と排気通路16に設けられた第2タービン44とを有しており、第2タービン44が排気を受けて回転することにより第2コンプレッサ42が回転し、これにより吸気を加圧する。前記第2コンプレッサ42は、第1コンプレッサ32よりも下流側に設けられており、前記第2タービン44は、第1タービン34よりも上流側に設けられている。
【0024】
前記吸気通路15には、前記第2コンプレッサ42の上流部分と下流部分とを連結してこの第2コンプレッサ42をバイパスする吸気バイパス通路15aが設けられている。また、排気通路16には、前記第2タービン44の上流部分と下流部分とを連結してこの第2タービン44バイパスする第2排気バイパス通路(バイパス通路)16aと、この第2排気バイパス通路16aよりも下流側において、前記第1タービン34の上流部分と下流部分とを連結してこの第1タービン34をバイパスする第1排気バイパス通路(バイパス通路)16bとが設けられている。
【0025】
前記吸気バイパス通路15aには、バイパスバルブ22aが設けられている。このバイパスバルブ22aは、前記吸気バイパス通路15aを開閉してこの吸気バイパス通路15aの流路面積を変更することで、吸気バイパス通路15aを通過する吸気量ひいては前記第1コンプレッサ32に流入する吸気量を変更する。
【0026】
前記第2排気バイパス通路16aには、前記制御弁の一つであるレギュレートバルブ24aが設けられている。このレギュレートバルブ24aは、前記第2排気バイパス通路16aを開閉してこの第2排気バイパス通路16aの流路面積を変更することで、第2排気バイパス通路16aを通過する排気量を変更する。この排気量の変更に伴い、前記第2タービン44に流入する排気量すなわち第2タービン44の回転力ひいては前記第2コンプレッサ42の回転力が変更され吸気の過給圧が変更される。
【0027】
前記第2排気バイパス通路16bには、前記制御弁の一つであるウエストゲートバルブ26aが設けられている。このウエストゲートバルブ26aは、前記第2排気バイパス通路16bを開閉してこの第2排気バイパス通路16bの流路面積を変更することで、この第2排気バイパス通路16bを通過する排気量を変更する。この排気量の変更に伴い、前記第1タービン34に流入する排気量すなわち第1タービン34の回転力ひいては前記第1コンプレッサ32の回転力が変更され吸気の過給圧が変更される。
【0028】
前記バイパスバルブ22aは、負圧式バルブアクチュエータ22bにより駆動される。この負圧式バルブアクチュエータ22bは、エンジン1の回転とともに回転して負圧を生成する吸引ポンプ70からの負圧供給を受けて前記バイパスバルブ22aを駆動する。このバイパスバルブ22aは、スプリング(不図示)により開き側に付勢されており、負圧式バルブアクチュエータ22bは、このスプリングの付勢力に抗してバイパスバルブ22aを閉じ側に駆動する。すなわち、このバイパスバルブ22aは、負圧式バルブアクチュエータ22bに設けられた負圧室が大気圧とされることで前記スプリングの付勢力により全開位置すなわち前記吸気バイパス通路15aの流路面積が最大となる位置に配置される一方、前記負圧室の負圧が大きくなるのに伴って前記流路面積を小さくする側に駆動される。このように、バイパスバルブ22aは、負圧式バルブアクチュエータ22bにより駆動されていない状態では全開となるいわゆるノーマリーオープンタイプのバルブである。
【0029】
一方、前記レギュレートバルブ24aとウエストゲートバルブ26aとは、いずれもステッピングモーター(制御弁駆動手段)24b,26bにより駆動される。これらステッピングモーター24b,26bは、それぞれ前記ECU90を介して前記バッテリー60から電力を受けることで前記レギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aをそれぞれ駆動する。
【0030】
これらレギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aは、それぞれスプリング(不図示)により開き側に付勢されており、前記ステッピングモーター24b,26bは、これらスプリングの付勢力に抗してレギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aをそれぞれ閉じ側に駆動する。すなわち、これらバルブ24a,26aは、各ステッピングモーター24b,26bに電力が供給されていない状態では前記スプリングの付勢力により全開位置すなわち前記第1排気バイパス通路16aおよび第2排気バイパス通路16bの流路面積が最大となる位置に配置される一方、各ステッピングモーター24b,26bが電力供給を受けて稼動することでこれらステッピングモーター24b,26bにより前記流路面積を小さくする側に駆動される。
【0031】
前記のように、レギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aは、いずれもステッピングモーター24b,26bにより駆動されていない状態では全開となるいわゆるノーマリーオープンタイプのバルブである。従って、このステッピングモーター24b,26bにより駆動されていない状態では、前記第1排気バイパス通路16a、第2排気バイパス通路16bのいずれもが開放されるため、シリンダー3から排出された排気は、抵抗の大きい前記第1タービン34および第2タービン44を通ることなくこれら排気バイパス通路16a,16bを通って大気中に流出することができる。そのため、これらステッピングモーター24b,26bの故障等により各バルブ24a,26aが駆動されない場合においてもエンジン1は容易に駆動される。
【0032】
なお、前記バイパスバルブ22a,レギュレートバルブ24a,ウエストゲートバルブ26aの開度は、前記負圧式バルブアクチュエータ22b、各ステッピングモーター24b,26bが稼動可能状態においては運転条件に応じて適宜変更される。
【0033】
前記スタータモーター50は、エンジン1を始動するためのものである。このスタータモーター50は、モーター50aとピニオンギア50bとを有している。ピニオンギア50bは、モーター50aの出力軸上にて相対回転不能な状態で往復移動する。また、クランクシャフト6には、図略のフライホイールと、このフライホイールに固定されたリングギア6aが、回転中心に対して同心に設けられている。そして、このスタータモーター50を用いてエンジンを再始動する場合には、前記ピニオンギア50bが所定の噛合位置に移動して、前記フライホイールに固定されたリングギア6aに噛合することにより、クランクシャフト6が回転駆動されるようになっている。
【0034】
前記バッテリー60は、種々の機器に電力を供給するためのものである。本エンジンの制御装置100では、同一のバッテリー60から前記スタータモーター50、前記ステッピングモーター24b,26bおよびECU90に電力が供給されている。
【0035】
前記ECU90は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行するためのCPUと、RAMやROMからなりプログラム及びデータを格納するメモリと、各種信号の入出力を行なうI/Oバスとを備えている。このECU90は、前記I/Oバスを介して前記クランク角センサ17等からの検出信号を受け、この検出信号に基づき種々の演算をおこなうとともに、前記ステッピングモーター24b,26b、前記スタータモーター50および前記インジェクタ7等の各アクチュエータを制御するためのものである。このECU90は、前記バッテリー60からの電力供給を受けて作動し、前記ステッピングモーター24b,26bおよびスタータモーター50等にはこのECU90を介してバッテリー60からの電力が供給される。
【0036】
このECU90による本エンジンの制御装置100の制御手順を、図2のフローチャートおよび図3のタイミングチャートを用いて説明する。
【0037】
まず、ステップS1にて、イグニッションキーの操作によらずにエンジン1を自動停止させるエンジン1の自動停止条件が成立したかどうかを判定する。例えば、車速が所定値(例えば0)以下である、ブレーキペダル操作がなされている、バッテリー60の電圧が所定値以上である等の場合に、自動停止条件が成立したと判定される。
【0038】
このステップS1での判定がNOすなわち自動停止条件が成立していない場合は、ステップS1を繰り返す。一方、このステップS1での判定がYESすなわち自動停止条件が成立した場合は、ステップS2にて、エンジン1を自動停止させるアイドルストップ制御を実施する。具体的には、インジェクタ7による燃料噴射を停止して、エンジン1を自動停止させる。燃料噴射が停止されることでエンジン1はしばらく後に停止する。また、インジェクタ7による燃料噴射停止とともに、次の再始動に備えて、エンジン1の停止位置を所定の位置に制御する。本実施形態では、圧縮行程にあるピストン4が下死点に近い位置で停止すようにエンジン1への負荷の変更等を行う。
【0039】
次に、ステップS3にて、エンジン1が停止しているかどうかを判定する。具体的には、エンジン1の回転数が0以下であるかどうかを判定する。ステップS3での判定がYESすなわちエンジン1が停止したと判定されると、ステップS4に進む。この判定がNOの場合はステップS3を繰り返す。
【0040】
ここで、イグニッションキーがオフ操作されることでエンジン1を停止させた場合と異なり、この自動停止中、前記ECU90はバッテリー60からの電力を受けて作動しており、このECU90を介して前記ステッピングモーター24b,26bへの通電は可能である。しかしながら、本エンジンの制御装置100では、後述するように、自動停止後に実施される再始動時にこれらステッピングモーター24b,26bへの通電が行われることで始動性が悪化するのを回避するべく、ステップS4において、前記ステッピングモーター24b,26bへの通電を停止する。
【0041】
前記ステッピングモーター24b,26bへの通電が停止されこれらステッピングモーター24b,26bによる駆動力を失った前記レギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aは、前記スプリングの付勢力により全開となる。
【0042】
次に、ステップS5にて、エンジンの再始動条件が成立したかどうかを判定する。例えば、アクセルペダルの踏み込み量が所定値以上であれば、このエンジンの再始動条件が成立したと判定される。この判定がNOの場合はステップS5を繰り返し、この判定がYESとなるとステップS6に進む。
【0043】
ステップS6では、エンジン1を再始動させる再始動制御を実施する(図3の時刻t1)。すなわち、スタータモーター50を駆動してクランクシャフト6を強制回転させるとともに、インジェクタ7による燃料噴射を開始する。本実施形態では、エンジン1の自動停止時に圧縮行程で停止したシリンダー3内に燃料を噴射する。前述のように、この圧縮行程で停止したシリンダー3内のピストン4は下死点近傍に位置している。そのため、スタータモーター50によるクランクシャフト6の強制回転に伴いシリンダー3内の空気は十分に圧縮され、このシリンダー3内にて燃料は確実に自着火し、エンジン1は再始動する。前記クランクシャフト6の回転に伴い、前記クランク角センサ17からはパルス信号が出力される。
【0044】
このエンジン1の再始動制御が実施されるステップS6では、前記ステップS4において各ステッピングモーター24b,26bへのバッテリー60からの通電は停止されたままであり、これらステッピングモーター24b,26bによるバッテリー60の電力消費は行われていない。そのため、このステップS6において、スタータモーター50には十分な電力が供給され、スタータモーター50によって確実にエンジン1が再始動される。特に、スタータモーター50の駆動初期は、図3に示すように、その突入電流として非常に高い電流が必要になるが、この突入電流を確保することができる。また、このスタータモーター50での高い電力消費に加えてステッピングモーター24b,26bでの電力消費によってバッテリー60の電圧降下が大きくなりECU90の作動等に影響を及ぼすのを回避することができる。
【0045】
一方、再始動後の加速性能を高めるためには、エンジン1の出力トルクを高めるべく、前記レギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aを早期に閉じて第1ターボ過給機30および第2ターボ過給機40が早期に過給を行うことが望ましい。ここで、前記スタータモーター50が回転を開始した後はこのスタータモーター50を流れる電流は低下し、スタータモーター50での消費電力は低下する。そこで、本エンジンの制御装置100では、前記スタータモーター50が回転を開始して前記電流が低下した直後に前記レギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aを全閉とする。具体的には、スタータモーター50の回転に伴ってクランクシャフト6が回転を開始した直後にこれらバルブ24a,26aを全閉とするよう前記各ステッピングモーター24b,26bの通電を開始する。
【0046】
すなわち、ステップS7にて、エンジン1すなわちクランクシャフト6の回転が開始したかどうかを判定する。本実施形態では、前記クランク角センサ17からパルス信号が出力されたことによりエンジン1の回転が開始されたと判定する。より詳細には、このクランク角センサ17のパルス信号が立ち上がる、あるいは、立ち下がることにより、エンジン1の回転が開始されたと判定する。この判定がNOの場合はステップS7を繰り返す。一方、この判定がYESであり、エンジン1の回転が開始すると(図3の時刻t2)、ステップS8に進み、前記各ステッピングモーター24b,26bへの電力供給を開始する。
【0047】
前記各ステッピングモーター24b,26bは電力の供給を受けて、前記レギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aを全閉とする。これにより、第1ターボ過給機30および第2ターボ過給機40が過給を開始する。
【0048】
以上のように、本エンジンの制御装置100によれば、エンジン1の自動停止後エンジン1の回転が開始するまでの間、各ステッピングモーター24b,26bへの通電が停止されており、再始動時にこれらステッピングモーター24b,26bによる電力消費が回避されてスタータモーター50への電力を確保することができ、エンジン1の再始動を確実に行うことができる。そして、エンジン1の回転開始直後に前記ステッピングモーター24b,26bへの通電を開始してこれらステッピングモーター24b,26bにより前記レギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aを全閉として前記第1ターボ過給機30および第2ターボ過給機40による過給を開始しており、再始動後のエンジン1の出力トルクを高めて加速性を向上することができる。
【0049】
ここで、前記ステップS7にてエンジン1の回転を検出する具体的方法は前記に限らない。例えば、エンジン回転数が所定値以上となることでエンジン1の回転が開始されたとしてもよい。ただし、前記のように、クランク角センサ17からパルス信号が出力されたことでエンジン1の回転が開始されたとすれば、エンジン1の微小回転後(本実施形態ででは6℃A)に前記ステップS8を実行してレギュレートバルブ24aおよびウエストゲートバルブ26aを駆動することができ、より早期に過給を開始することができる。
【0050】
なお、前記バッテリー60からの電力を受けて電動式のアクチュエータで駆動される制御弁は前記レギュレートバルブ24a、ウエストゲートバルブ26aに限らない。例えば、前記バイパスバルブ22aを前記バッテリー60からの電力を受けて駆動するステッピングモーターにより駆動させてもよい。
【0051】
この場合には、エンジン1の自動停止後エンジン1の回転開始までの間、このステッピングモーターへの電力供給を停止し、エンジン1の回転開始後、このステッピングモーターによりバイパスバルブ22aを閉じ側に制御する。バイパスバルブ22aにより前記吸気バイパス通路15aが閉じられると、吸気が前記第2コンプレッサ32に導入されてこの第2コンプレッサ32により加圧されることでエンジン1の出力は増大し、加速性が高められる。
【0052】
また、図4に示すように、前記第1タービン34および第2タービン44の代わりに、タービン134の翼直前の流路面積を変更してこのタービン134の翼に導入される排気の流速を変更可能なバルブ134aが設けられたいわゆるVGT(Variable Geometry Turbo)を設け、このバルブ134aをステッピングモーター134bにより駆動するよう構成してもよい。
【0053】
この場合には、エンジン1の自動停止後エンジン1の回転開始までの間、このステッピングモーター134bへの電力供給を停止し、エンジン1の回転開始後、このステッピングモーター134bによりバルブ134aを閉じ側に制御してタービン134に流入する排気を絞り流速を増大させる。タービン134に流入する排気流速が増大すると、タービン134の回転は高められ過給効率が向上する結果エンジン1の出力は増大し、加速性が高められる。
【0054】
また、前記制御弁を、前記吸気ポート11に設けられてシリンダー3内に流入する吸気にスワールを付与するためのSCV(Swirl Control Valve)等としてもよい。
【0055】
また、前記レギュレートバルブ24a等を駆動する具体的手段は前記ステッピングモーター24bに限らず、前記バッテリー60からの電力を受けてこのレギュレートバルブ24a等を駆動するものであればよい。
【0056】
また、前記エンジン1は、ディーゼルエンジンに限らず、火花点火式エンジンでもよい。この場合には、前記エンジン1の再始動時において、エンジン1の自動停止時に膨張行程にあったシリンダー3内から燃焼を開始させるようするのが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1 エンジン
15 吸気通路
16 排気通路
17 クランク角センサ
24a レギュレートバルブ(制御弁)
24b ステッピングモーター(制御弁駆動手段)
26a ウエストゲートバルブ(制御弁)
26b ステッピングモーター(制御弁駆動手段)
30 第1ターボ過給機(ターボ過給機)
32 第1コンプレッサ(コンプレッサ)
34 第1タービン(タービン)
40 第2ターボ過給機(ターボ過給機)
42 第2コンプレッサ(コンプレッサ)
44 第2タービン(タービン)
50 スタータモーター(電動モーター)
60 バッテリー(電力供給手段)
90 ECU
100 エンジンの制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに当該エンジンを自動停止させるとともに、予め設定されたエンジンの再始動条件が成立したときに電動モーターを用いてエンジンを再始動させるエンジンの制御装置において、
エンジンに連設される吸気通路と排気通路の少なくとも一方に設けられて当該通路内のガスの流通状態を変更可能な制御弁と、
電力の供給を受けて前記制御弁を駆動する制御弁駆動手段と、
前記電動モーターと前記制御弁駆動手段に電力を供給する電力供給手段とを備え、
前記電力供給手段は、前記エンジンの自動停止後前記エンジンの再始動条件が成立して前記電動モーターが稼動されることで前記エンジンの回転が再開するまでの間は、前記制御弁駆動手段への電力の供給を停止して、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記制御弁駆動手段への電力の供給を開始し、
前記制御弁駆動手段は、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記電力の供給を受けることで前記制御弁を前記エンジンの出力トルクが増大する方向に駆動することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
前記排気通路に設けられて当該排気通路を通過する排気で駆動されるタービンと、前記吸気通路に設けられて前記タービンの駆動力によって当該吸気通路を通過する吸気を昇圧するコンプレッサとを有するターボ過給機を備え、
前記排気通路は、前記タービンの上流と下流とを連通して当該タービンをバイパスするバイパス通路を有し、
前記制御弁は、前記バイパス通路に設けられて、当該バイパス通路の流路面積を変更可能であり、
前記制御弁駆動手段は、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記制御弁を前記バイパス通路の流路面積を減少させる方向に駆動することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
前記排気通路に設けられて当該排気通路を通過する排気で駆動されるタービンと、前記吸気通路に設けられて前記タービンの駆動力によって当該吸気通路を通過する吸気を昇圧するコンプレッサとを有するターボ過給機を備え、
前記制御弁は、前記排気通路のうち前記タービンの上流に設けられて、当該タービン上流の排気通路の流路面積を変更可能であり、
前記制御弁駆動手段は、前記エンジンの回転が再開するのに伴い、前記制御弁を前記タービン上流の排気通路の流路面積を減少させる方向に駆動することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のエンジンの制御装置において、
前記制御弁を付勢する付勢手段を有し、
前記制御弁は、前記電力供給手段により前記制御弁駆動手段に電力が供給されていない状態では前記付勢手段の付勢力により当該制御弁による変更が可能な前記流路面積が最大となる位置に配置されるとともに、前記制御弁駆動手段に電力が供給された状態では当該制御弁駆動手段によって前記電力の供給に伴って前記付勢手段の付勢力に抗して前記流路面積を減少させる方向に駆動されることを特徴とするエンジンの制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−144684(P2011−144684A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3570(P2010−3570)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】