説明

エンジン自動停止再始動装置

【課題】エンジン自動停止再始動装置において、牽引時の自動停止制御に運転者の意思を反映可能にすると共に、牽引時においても自動停止によるエネルギ消費の削減の選択を可能にする。
【解決手段】エンジン自動停止再始動装置は、運転者により操作されて自動停止の許可および禁止を切り換える自動停止禁止スイッチと、該自動停止禁止スイッチによる自動停止の許可および禁止の切換操作の有無を検出する切換操作検出手段と、被牽引物の牽引の有無を検出する牽引スイッチとを備える。エンジン自動停止再始動装置の制御手段は、自動停止禁止スイッチによる切換操作が検出され(S9)、かつ牽引が検出された(S8)ときに、牽引の有無とは無関係に、自動停止禁止スイッチに基づいて自動停止の許可および禁止を行い、自動停止禁止スイッチによる切換操作が検出されず(S9)、かつ牽引が検出された(S8)ときに、自動停止を禁止する(S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンを、自動停止条件が満たされたときに自動停止し、再始動条件が満たされたときに再始動するエンジン自動停止再始動装置に関し、詳細には、使用者により操作されて自動停止の許可および禁止を切換可能な自動停止切換操作手段を備えるエンジン自動停止再始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンのエネルギ消費(例えば、燃料消費)の削減や環境負荷物質(例えば、二酸化炭素)の排出低減を図る技術として、信号待ちなどの停車の際に、運転者によるエンジンの停止操作を要することなく、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンの自動停止(いわゆる、アイドリングストップ)を行い、所定の再始動条件が成立したとき再始動を行うエンジン自動停止再始動装置がある。
【0003】
そして、このようなエンジン自動停止再始動装置において、他の車両などの被牽引物を牽引している牽引時には、牽引していない時に比べて、車両を発進させるための所要の動力が大きくなることから、該所要動力を好適に確保するために、エンジンの自動停止が禁止されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3909695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、牽引時に自動停止が一律に禁止されるのでは、牽引時に自動停止によるエンジンのエネルギ消費の削減効果が得られない。また、車両の運転者が、自動停止によるエネルギ消費の削減を図る意思がある場合に、この意思がエンジン自動停止再始動装置に反映されない。さらに、牽引が行われる場合であっても、被牽引物の重量が比較的小さい場合など、牽引時に自動停止が行われたとしても、車両の駆動力が大きく損なわれることがない場合もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エンジン自動停止再始動装置において、使用者が牽引時の自動停止の許可および禁止を設定可能にすることにより、牽引時の自動停止制御に使用者の意思を反映可能にすると共に、牽引時においても自動停止によるエネルギ消費の削減の選択を可能にすることを目的とする。
そして、本発明は、さらに、エンジン自動停止再始動装置の使用の利便性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両(1)に搭載されたエンジン(2)の自動停止条件および再始動条件を検出する制御条件検出手段(20)と、前記自動停止条件が満たされたときに前記エンジン(2)の自動停止を行い、前記再始動条件が満たされたときに前記エンジン(2)の再始動を行う制御手段(12)とを備えるエンジン自動停止再始動装置において、使用者により操作されて前記自動停止の許可および禁止を切り換える自動停止切換操作手段(51)と、前記自動停止切換操作手段(51)による前記自動停止の許可および禁止の切換操作の有無を検出する切換操作検出手段(53)と、被牽引物(9)の牽引の有無を検出する牽引検出手段(54)とを備え、前記制御手段(12)は、前記切換操作が検出され、かつ前記牽引が検出されているときに、前記自動停止切換操作手段(51)に基づいて前記自動停止の許可および禁止を行い、前記切換操作が検出されず、かつ前記牽引が検出されているときに、前記自動停止を禁止するエンジン自動停止再始動装置である。
【0008】
これによれば、車両による牽引が行われており、かつ使用者が自動停止の許可および禁止が切換可能な自動停止切換操作手段の切換操作をしたときには、牽引が行われている場合に自動停止が一律に禁止されることなく、使用者による自動停止切換操作手段での設定に基づく自動停止の許可および禁止が行われる。この結果、牽引時においても、自動停止の許可および禁止に関する使用者の意思を反映させた自動停止の制御が可能になる。そして、牽引時にも自動停止が許可されるように使用者が自動停止禁止スイッチを切換操作することで、牽引時に使用者の意思に基づく自動停止によるエネルギ消費の削減の選択が可能になる。
また、使用者が自動停止切換操作手段の切換操作をしないときには、牽引時に、自動停止が禁止されるので、発進時に再始動が行われないことにより、トルク変動に起因する振動が少ない円滑な発進が可能になる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記車両は、前記使用者の操作により前記エンジン(2)を始動および停止するマニュアル始動停止手段(6)を備え、前記自動停止切換操作手段(51)が前記自動停止を許可する状態および前記切換操作検出手段(53)が前記切換操作を検出していない状態をそれぞれの初期状態とするとき、前記制御手段(12)は、前記切換操作が検出されず、かつ前記牽引が検出されていないときに、前記自動停止を許可し、前記牽引が検出されていない状態での前記マニュアル始動停止手段(6)による前記エンジン(2)の停止時に、前記自動停止切換操作手段(51)および前記切換操作検出手段(53)を初期状態にするものである。
これによれば、牽引がない状態でマニュアル始動停止手段によりエンジンが停止されたときに、自動停止切換操作手段が自動停止を許可する状態および切換操作検出手段による切換操作がない状態になるので、エンジンがマニュアル始動停止手段により始動された後、自動停止切換操作手段による切換操作がない場合に、牽引が行われるときに自動停止が禁止され、牽引が行われないときに自動停止が許可される。この結果、マニュアル始動停止手段によりエンジンが停止される前における自動停止切換操作手段による切換操作の有無とは無関係に、マニュアル始動停止手段によるエンジンの始動後に、切換操作を行うことなく、牽引時に自動停止が禁止され、非牽引時に自動停止が許可される設定が自動的に行われるので、エンジン自動停止再始動装置の使用の利便性が向上する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記制御手段(12)は、前記切換操作が検出され、かつ前記牽引が検出されている状態で、前記マニュアル始動停止手段(6)により前記エンジン(2)が停止された場合に、前記マニュアル始動停止手段(6)により前記エンジン(2)が始動されたときに、前記自動停止切換操作手段(51)に基づいて前記自動停止の許可および禁止を行うものである。
これによれば、切換操作があり、かつ牽引している状態でマニュアル始動停止手段によりエンジンがマニュアル停止した場合、その後に、マニュアル始動停止手段によりエンジンがマニュアル始動されたときにおいても、自動停止切換操作手段に基づく自動停止の許可および禁止の設定が保持されているので、使用者の意思が反映された状態での自動停止の制御が行われ、自動停止切換操作手段による再設定が不要になり、エンジン自動停止再始動装置の使用の利便性が向上する。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載のエンジン自動停止再始動装置において、前記牽引の終了を検出する牽引終了検出手段(55)を備え、前記制御手段(12)は、前記切換操作が検出され、かつ前記牽引の終了が検出されたときに、前記自動停止切換操作手段(51)に基づいて前記自動停止の許可および禁止を行うものである。
これによれば、牽引が終了した場合にも、牽引時の使用者の意思を反映させた設定が保持されるので、エンジンの運転が継続している状態で、引き続き牽引が行われるときの再設定が不要になり、エンジン自動停止再始動装置の使用の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジン自動停止再始動装置において、使用者が牽引時の自動停止の許可および禁止を設定可能にすることにより、牽引時の自動停止制御に使用者の意思を反映させることが可能になると共に、牽引時においても自動停止によるエネルギ消費の削減の選択が可能になる。そして、本発明によれば、さらに、エンジン自動停止再始動装置の使用の利便性の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態であるエンジン自動停止再始動装置を備える車両の模式図である。
【図2】図1のエンジン自動停止再始動装置の構成を説明する図である。
【図3】図1のエンジン自動停止再始動装置による自動停止制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明の実施形態であるエンジン自動停止再始動装置12は、例えばトレーラである車両1に搭載された走行用原動機としての内燃機関であるエンジン2の自動停止と、該自動停止状態からの始動である再始動とを行う。
【0015】
車両1は、エンジン2と、エンジン2が発生する動力を駆動輪4に伝達する動力伝達装置3と、エンジン自動停止再始動装置12を備える車両用制御装置10と、バッテリ5と、エンジン2を始動停止するために車両1の使用者としての運転者が操作するマニュアル始動停止手段としてのキースイッチ6と、車体1aに設けられて他の車両等の被牽引物9を牽引するための牽引装置8とを備える。
【0016】
エンジン2は、エンジン出力軸としてのクランク軸2aと、始動時にクランク軸2aを回転駆動する始動装置としてのスタータモータ7とを備える。
動力伝達装置3は、クランク軸2aから入力される動力を変速して駆動輪4に出力するオートマチック式の変速機3aを備える。変速機3aは、歯車式変速機または無段変速機(例えば、ベルト式無段変速機)であってもよい。
制御装置10は、エンジン自動停止再始動装置12のほかに、エンジン2において燃焼に係わる燃焼制御(例えば、空燃比制御および点火制御)を行うエンジン制御装置11と、変速機3aの変速比を制御する変速機制御装置13とを備える。そして、エンジン自動停止再始動装置12および各制御装置11,13は、コンピュータを備える。
【0017】
バッテリ5と車両用電装品(エンジン2が備えるスタータモータ7等のエンジン電装品、および制御装置10が含まれる。)との接続および遮断を切り換えるキースイッチ6は、スタータ位置で、バッテリ5とスタータモータ7とを接続し、オン位置で、スタータモータ7以外の前記車両用電装品とバッテリ5とを接続し、オフ位置で、エンジン自動停止再始動装置12以外の前記車両用電装品とバッテリ5との接続を遮断する。
そして、エンジン自動停止再始動装置12は、キースイッチ6の操作に無関係に、バッテリ5と常時接続されている。
【0018】
図2を参照すると、エンジン自動停止再始動装置12は、エンジン2の自動停止条件および再始動条件を検出する制御条件検出手段20と、エンジン2を停止するための停止手段17およびエンジン2を始動するための始動手段としてのスタータモータ7を制御する制御手段40と、運転者により操作されてエンジン自動停止再始動装置12による自動停止の許可および禁止を切り換える自動停止切換操作手段としての自動停止禁止スイッチ(または、アイドリングストップ禁止スイッチ)51と、自動停止禁止スイッチ51により設定された自動停止許可状態および自動停止禁止状態を表示する表示手段として表示ランプ52と、自動停止禁止スイッチ51による自動停止の許可および禁止の切換操作の有無を検出する切換操作検出手段53と、被牽引物9の牽引の有無を検出する牽引検出手段としての牽引スイッチ54と、牽引が終了したことを検出する牽引終了検出手段55とを備える。
制御条件検出手段20、自動停止禁止スイッチ51、切換操作検出手段53、牽引スイッチ54および牽引終了検出手段55の各検出信号は、制御手段40に入力される。
【0019】
エンジン2に備えられる停止手段17は、燃焼に関与する装置(例えば、燃料噴射弁)の作動(例えば、燃料噴射弁による燃料供給)を停止する。
そして、制御手段40は、制御条件検出手段20から入力される検出信号に基づいて、自動停止条件が満たされたときに停止手段17を作動させてエンジン2を自動停止させることによりアイドリングストップ状態にする一方で、再始動条件が満たされたときにスタータモータ7を作動させてエンジン2を再始動させる。
【0020】
制御条件検出手段20は、オフ位置およびオン位置を含むキースイッチ6の操作位置を検出するマニュアル始動停止操作検出手段21と、車両1(図1参照)の停車(すなわち、車速がゼロであること)を検出する車速センサ22と、フートブレーキの作動・非作動を検出するフートブレーキスイッチ23と、パーキングブレーキの作動・非作動を検出するパーキングブレーキスイッチ24と、機関温度としてのエンジン冷却水の温度を検出するエンジン温度センサ25と、パワーステアリグ装置により操舵補助が行われるハンドルの操舵角を検出するハンドル操作センサ26と、アクセル操作部としてのアクセルペダルの解放位置および解放位置からの操作を検出するアクセルセンサ27と、エアコンの運転要求・停止要求を検出するエアコンスイッチ28と、車室内温度を検出する車室温度センサ29と、外気温を検出する外気温度センサ31とを備える。
【0021】
そして、自動停止条件には、マニュアル始動停止操作検出手段21によりキースイッチ6がオン位置にあることが検出されている状態で、車速センサ22により車両1の停車が検出されていること、フートブレーキスイッチ23によりフートブレーキの作動が検出されていること、アクセルセンサ27によりアクセルの解放位置が検出されていること、エンジン温度センサ25によりエンジン2が暖機状態にあることを示す所定温度以下である温度が検出されていない(すなわち、エンジン2が暖機完了状態にある)こと、ハンドル操作センサ26によりパワーステアリング装置の作動が必要となる所定操舵角以上の操舵角が検出されていないこと、エアコンスイッチ28によりエアコンの停止要求が検出されているとき、エアコンスイッチ28が運転要求にあるときに車室温度センサ29によりエアコンの設定温度に対して所定温度差以上の温度差の車室内温度が検出されていないとき、外気温度センサ31により外気温が極高温(例えば、40°C以上)または極低温(例えば、−20°C以下)である温度が検出されていないこと、が含まれる。そして、エンジン2の自動停止が行われるためには、これら全ての条件が満たされることが必要である。
【0022】
また、再始動条件には、マニュアル始動停止操作検出手段21によりキースイッチ6がオン位置にあることが検出されている状態で、フートブレーキスイッチ23によりフートブレーキの非作動が検出されていること、パーキングブレーキスイッチ24によりパーキングブレーキの非作動が検出されていること、アクセルセンサ27によりアクセルの解放位置からの操作が検出されていること、が含まれる。そして、エンジン2の再始動が行われるためには、これら条件の少なくとも1つが満たされることが必要である。
【0023】
自動停止禁止スイッチ51は、操作の度に自動停止の許可および自動停止の禁止が交互に切り換わるスイッチであり、初期状態が自動停止の許可になるようにセットされている。また、表示ランプ52は、自動停止禁止スイッチ51が、自動停止許可であるとき消灯し、自動停止禁止であるとき点灯する。運転者は、表示ランプ52を通じて、自動停止禁止スイッチ51により設定されている自動停止の許可および禁止を確認できる。
切換操作検出手段53は、初期状態が切換操作のない状態になるようにセットされている。
【0024】
牽引スイッチ54は、牽引装置8が有する牽引側連結部8a(図1参照)に設けられて、被牽引物9の被牽引側連結部9a(図1参照)が牽引側連結部8aに連結されたときにオン状態になって、牽引をしていることを検出し、該連結部8a,9a同士の連結が解除されたときにオフ状態になって、牽引をしていないことを検出する。
また、牽引終了検出手段55は、牽引スイッチ54の検出信号に基づいて、牽引が検出されている状態から牽引が検出されない状態に移行したことを検出することにより、牽引の終了を検出する。
【0025】
図3を中心に、図1,図2を適宜参照して、自動停止禁止スイッチ51の切換操作の有無および牽引の有無に関連して、エンジン自動停止再始動装置12の制御手段40により実行される自動停止の制御方法を説明する。
ステップS1では、キースイッチ6がオン状態か否かが判定され、エンジン2が運転状態にあるとき、ステップS2に進んで、自動停止禁止スイッチ51による自動停止の許可および禁止の切換操作が行われたか否かが判定される。
ここで、図3で示される自動停止制御フローが始めて行われる初回の制御サイクルの際には、自動停止禁止スイッチ51および切換操作検出手段53は初期状態である。そして、自動停止禁止スイッチ51による切換操作が行われていないとき、切換操作検出手段53により検出される自動停止禁止スイッチ51の切換操作の有無を示す操作フラグFaは、切換操作がないことを示す「0」になっている。
【0026】
また、ステップS2において、自動停止禁止スイッチ51の切換操作が検出されて該切換操作があると判定されたとき、ステップS3に進んで、操作フラグFaは、自動停止禁止スイッチ51の切換操作があることを示す「1」にセットされる。
ここで、ステップS2の自動停止禁止スイッチ51の切換操作の有無の判定の際に、自動停止禁止スイッチ51が初期状態または自動停止の許可状態にあるとき、その切換操作により、自動停止禁止スイッチ51は自動停止の禁止状態になる一方、自動停止禁止スイッチ51が自動停止の禁止状態にあるとき、その切換操作により、自動停止禁止スイッチ51は自動停止の許可状態になる。
【0027】
ステップS4では、牽引スイッチ54により牽引の有無が判定され、牽引が行われておらず、牽引スイッチ54により牽引が検出されていないとき(すなわち、非牽引時)、ステップS5に進んで、牽引の有無を示す牽引フラグFbは、牽引がないことを示す「0」にセットされた後、ステップS6に進む。
ステップS6では、自動停止禁止スイッチ51の切換操作がないとき、操作フラグFa=0であるので、ステップS7に進んで、自動停止が許可される。このため、ステップS7で自動停止が許可された状態で、自動停止条件が満たされたとき、停止手段17が制御されることにより、エンジン2の自動停止が行われ、その後、次の制御サイクルが開始される。
【0028】
一方、ステップS6で自動停止禁止スイッチ51の切換操作があると判定されたとき、自動停止禁止スイッチ51により設定された自動停止の許可または禁止に基づいて自動停止の許可および禁止のいずれかが決定され、その後、次の制御サイクルが開始される。
したがって、例えば初回の制御サイクルにおける場合のように、自動停止禁止スイッチ51の切換操作が行われたことにより、自動停止が許可から禁止に切り換えられた場合、牽引がないときに、自動停止が禁止される。
【0029】
また、ステップS4において、牽引が行われていて、牽引スイッチ54により牽引が検出されているとき(すなわち、牽引時)、ステップS8に進んで、牽引フラグFbは牽引があることを示す「1」にセットされ、ステップS9に進む。ステップS9では、自動停止禁止スイッチ51の切換操作の有無が判定され、自動停止禁止スイッチ51が操作されていないとき、ステップS10に進んで、自動停止が禁止される。
初回の制御サイクルで、自動停止禁止スイッチ51が切換操作されないとき、自動停止禁止スイッチ51は自動停止の許可状態にあるので、ステップS10において、自動停止が自動的に禁止されて、自動停止および再始動が行われることなく車両が発進する。
【0030】
また、ステップS9で、自動停止禁止スイッチ51が切換操作されたと判定されたとき、自動停止が自動的に禁止されることなく、自動停止禁止スイッチ51により設定された自動停止の許可または禁止に基づいて自動停止の許可および禁止のいずれかが決定され、その後、次の制御サイクルが開始される。
【0031】
また、ステップS4で、牽引が行われたと一旦判定された後、牽引スイッチ54がオン状態からオフ状態に移行して、後の制御サイクルにおいて牽引が行われていないと判定された場合、すなわち牽引終了検出手段55により牽引が終了したと判定された場合、ステップS6の判定で、自動停止禁止スイッチ51が切換操作されていないときに、ステップS7において、自動停止が許可される一方、自動停止禁止スイッチ51が切換操作されているとき、自動停止禁止スイッチ51により設定された自動停止の許可または禁止に基づいて、自動停止の許可または禁止が行われる。
【0032】
ステップS1において、キースイッチ6によりエンジン2が停止されたとき、またはエンジン2が停止中であるとき、ステップS11に進んで、牽引の有無が判定される。エンジン2が停止される時点で牽引スイッチ54により牽引が検出されているときは、エンジン2の停止時における自動停止禁止スイッチ51の状態およびその切換操作の有無の状態(すなわち、切換操作が行われたこと、または切換操作が行われなかったこと)が保持されて、次回の制御サイクルが開始される。
そして、キースイッチ6によりエンジン2が始動されたとき、その直前でのエンジン2の停止時の自動停止禁止スイッチ51の状態およびその切換操作の有無の状態で、自動停止制御が行われる。
【0033】
一方、ステップS11で牽引が検出されない場合、ステップS12に進んで、切換操作検出手段53が初期状態にセットされ、次いでステップS13で、自動停止禁止スイッチ51が初期状態にセットされた後、次回の制御サイクルが開始される。したがって、切換操作検出手段53および自動停止禁止スイッチ51が初期状態にセットされた直後の制御サイクルにおいて、切換操作がない場合には、牽引の有無に応じて、牽引がないときに自動停止が許可され、牽引があるときに自動停止が禁止される。
【0034】
そして、この制御フローにおいて、エンジン2の運転中に、自動停止禁止スイッチ51の1回の切換操作により、牽引の有無とは無関係に、牽引時および非牽引時に自動停止が禁止され、自動停止禁止スイッチ51の2回の切換操作により、牽引の有無とは無関係に、牽引時および非牽引時に自動停止が許可される。そして、後者の場合、牽引時に自動停止が許可されるので、自動停止条件が満たされたとき、牽引時に自動停止が行われる。
【0035】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
エンジン自動停止再始動装置12は、制御手段40と、運転者により操作されて自動停止の許可および禁止を切り換える自動停止禁止スイッチ51と、自動停止禁止スイッチ51による自動停止の許可および禁止の切換操作の有無を検出する切換操作検出手段53と、被牽引物9の牽引の有無を検出する牽引スイッチ54とを備え、制御手段40は、切換操作検出手段53により自動停止禁止スイッチ51による切換操作が検出され、かつ牽引スイッチ54により牽引が検出されているときに、牽引の有無とは無関係に、自動停止禁止スイッチ51に基づいて自動停止の許可および禁止を行い、自動停止禁止スイッチ51による切換操作が検出されず、かつ牽引が検出されたときに、自動停止を禁止する。
【0036】
この構成により、車両1による牽引が行われており、かつ運転者が自動停止禁止スイッチ51の切換操作をしたときには、牽引が行われている場合に自動停止が一律に禁止されることなく、運転者による自動停止禁止スイッチ51での設定に基づく自動停止の許可および禁止が行われる。この結果、牽引時においても、自動停止の許可および禁止に関する運転者の意思を反映させた自動停止の制御が可能になる。そして、牽引時にも自動停止が許可されるように運転者が自動停止禁止スイッチ51を切換操作することで、牽引時に運転者の意思に基づく自動停止による燃料消費の削減の選択が可能になる。
また、運転者が自動停止禁止スイッチ51の切換操作をしないときには、牽引時に、自動停止が禁止されるので、発進時に再始動が行われないことにより、トルク変動に起因する振動が少ない円滑な発進が可能になる。
【0037】
制御手段40は、自動停止禁止スイッチ51による切換操作が検出されず、かつ牽引が検出されていないときに、自動停止を許可し、牽引が検出されていない状態でのキースイッチ6によるエンジン2の停止時に、自動停止禁止スイッチ51および切換操作検出手段53を初期状態にする。
この構成により、牽引がない状態でキースイッチ6によりエンジン2が停止されたときに、自動停止禁止スイッチ51が自動停止を許可する状態および切換操作検出手段53による切換操作がない状態になるので、エンジン2がキースイッチ6により始動された後、自動停止禁止スイッチ51による切換操作がない場合に、牽引が行われるときに自動停止が禁止され、牽引が行われないときに自動停止が許可される。この結果、キースイッチ6によりエンジン2が停止される前における自動停止禁止スイッチ51による切換操作の有無とは無関係に、キースイッチ6によるエンジン2の始動後に、自動停止禁止スイッチ51による切換操作を行うことなく、牽引時に自動停止が禁止され、非牽引時に自動停止が許可される設定が自動的に行われ、エンジン自動停止再始動装置12の使用の利便性が向上する。
【0038】
制御手段40は、自動停止禁止スイッチ51による切換操作が検出され、かつ牽引が検出されている状態で、キースイッチ6によりエンジン2が停止された場合に、キースイッチ6によりエンジン2が始動されたときに、自動停止禁止スイッチ51に基づいて自動停止の許可および禁止を行う。
この構成により、自動停止禁止スイッチ51による切換操作があり、かつ牽引している状態でキースイッチ6によりエンジン2がマニュアル停止した場合、その後に、キースイッチ6によりエンジン2がマニュアル始動されたときにおいても、自動停止禁止スイッチ51に基づく自動停止の許可および禁止の設定が保持されているので、運転者の意思が反映された状態での自動停止の制御が行われ、自動停止禁止スイッチ51による再設定が不要になり、エンジン自動停止再始動装置12の使用の利便性が向上する。
【0039】
制御手段40は、牽引終了検出手段55により牽引の終了が検出されたときに、自動停止禁止スイッチ51に基づいて自動停止の許可および禁止を行う。
この構成により、牽引が終了した場合にも、牽引時の運転者の意思を反映させた設定が保持されるので、エンジン2の運転が継続している状態で、引き続き牽引が行われるときの再設定が不要になり、エンジン自動停止再始動装置12の使用の利便性が向上する。
【0040】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
マニュアル始動停止手段は、プッシュスタートボタンであってもよい。
変速機3aは、マニュアル式の変速機であってもよい。この場合、車両1の動力伝達装置は、変速機3aへのエンジン2の動力の伝達および遮断を切り換えるクラッチ装置を備え、制御条件検出手段20には、クラッチ操作部としてのクラッチペダルの解放位置および該解放位置からの操作されたことを検出するクラッチスイッチと、シフトスイッチとが含まれる。該シフトスイッチは、変速機3aの非走行位置としてのニュートラル位置と走行位置である変速位置とを検出する。
自動停止条件には、クラッチスイッチによりクラッチペダルが解放位置からの操作が検出されたこと、シフトスイッチにより走行位置が検出されたことが含まれ、再始動条件には、クラッチスイッチによりクラッチペダルが解放位置からの操作が検出されたこと、シフトスイッチによりニュートラル位置が検出されたことが含まれる。
【0041】
自動停止禁止スイッチ51の初期状態は、自動停止の禁止に設定されてもよい。
車両1の使用者は、運転者以外に、場合によっては同乗者であってもよい。
エンジン2は、内燃機関以外の燃焼機関であってもよく、また電動機であってもよい。
車両1は、走行用原動機として、電動機および内燃機関から構成されるハイブリッドエンジンを備えるものであってもよい。また、車両1は、トレーラ以外の車両であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 車両
2 エンジン
6 キースイッチ(マニュアル始動停止手段)
9 被牽引物
12 エンジン自動停止再始動装置
20 制御条件検出手段
40 制御手段
51 自動停止禁止スイッチ(自動停止切換操作手段)
53 切換操作検出手段
54 牽引スイッチ(牽引検出手段)
55 牽引終了検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの自動停止条件および再始動条件を検出する制御条件検出手段と、前記自動停止条件が満たされたときに前記エンジンの自動停止を行い、前記再始動条件が満たされたときに前記エンジンの再始動を行う制御手段とを備えるエンジン自動停止再始動装置において、
使用者により操作されて前記自動停止の許可および禁止を切り換える自動停止切換操作手段と、前記自動停止切換操作手段による前記自動停止の許可および禁止の切換操作の有無を検出する切換操作検出手段と、被牽引物の牽引の有無を検出する牽引検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記切換操作が検出され、かつ前記牽引が検出されているときに、前記自動停止切換操作手段に基づいて前記自動停止の許可および禁止を行い、前記切換操作が検出されず、かつ前記牽引が検出されているときに、前記自動停止を禁止することを特徴とするエンジン自動停止再始動装置。
【請求項2】
前記車両は、前記使用者の操作により前記エンジンを始動および停止するマニュアル始動停止手段を備え、
前記自動停止切換操作手段が前記自動停止を許可する状態および前記切換操作検出手段が前記切換操作を検出していない状態をそれぞれの初期状態とするとき、
前記制御手段は、前記切換操作が検出されず、かつ前記牽引が検出されていないときに、前記自動停止を許可し、前記牽引が検出されていない状態での前記マニュアル始動停止手段による前記エンジンの停止時に、前記自動停止切換操作手段および前記切換操作検出手段を初期状態にすることを特徴とする請求項1記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記切換操作が検出され、かつ前記牽引が検出されている状態で、前記マニュアル始動停止手段により前記エンジンが停止された場合に、前記マニュアル始動停止手段により前記エンジンが始動されたときに、前記自動停止切換操作手段に基づいて前記自動停止の許可および禁止を行うことを特徴とする請求項2記載のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項4】
前記牽引の終了を検出する牽引終了検出手段を備え、
前記制御手段は、前記切換操作が検出され、かつ前記牽引の終了が検出されたときに、前記自動停止切換操作手段に基づいて前記自動停止の許可および禁止を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のエンジン自動停止再始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92671(P2012−92671A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238366(P2010−238366)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】