説明

オルガノポリシロキサンの製造方法、光半導体装置用組成物及び光半導体装置

【課題】光半導体装置用組成物に用いられるオルガノポリシロキサンの製造方法であって、表面のべたつきが少ない光半導体装置用組成物を得ることができるオルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法は、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンと珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンとを含有するオルガノポリシロキサン成分と、プロトン性有機溶剤とが混合された混合液を得る工程と、第2の層よりも上記高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも上記低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに、上記混合液を分液させた後、上記第1の層を分離し、該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンを得る工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応可能なオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒とを含む光半導体装置用組成物に用いられるオルガノポリシロキサンの製造方法に関する。また、本発明は、上記オルガノポリシロキサンの製造方法により得られたオルガノポリシロキサンを含む光半導体装置用組成物、並びに該光半導体装置用組成物を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)装置などの光半導体装置の消費電力は低く、かつ寿命は長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、液晶テレビ用バックライト、自動車用ランプ、照明器具及び看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置に用いられている発光素子である光半導体素子(例えばLED)が大気と直接触れると、大気中の水分又は浮遊するごみ等により、光半導体素子の発光特性が急速に低下する。このため、上記光半導体素子は、通常、光半導体装置用封止剤により封止されている。
【0004】
上記光半導体装置用封止剤として、シリコーン樹脂を含む光半導体装置用封止剤が広く用いられている。上記シリコーン樹脂は、青色から紫外領域の短波長の光に対する透過性が高く、耐熱性及び耐光性に優れている。
【0005】
しかしながら、上記シリコーン樹脂を含む封止剤を用いた場合には、封止剤の硬化物の表面がべたつくため、表面にごみなどの異物が付着しやすくなるという問題がある。また、硬化物の表面がべたつくと、パッケージ同士のくっ付き、及び実装時のピックアップノズルへの付着が生じて、光半導体装置の生産性が大きく低下するという問題がある。
【0006】
一方で、下記の特許文献1に記載のように、架橋密度が高められたシリコーン樹脂を含む封止剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−314142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の封止剤では、該封止剤に含まれるシリコーン樹脂の架橋密度が高いので、硬化物の表面のべたつきが比較的少ない。しかし、硬化物の表面のべたつきをさらに一層抑制できる封止剤が強く求められている。また、封止剤以外の用途で用いられる光半導体装置用組成物でも、該組成物が硬化した硬化物の表面のべたつきが少ないことが求められている。
【0009】
本発明の目的は、ヒドロシリル化反応可能なオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒とを含む光半導体装置用組成物に用いられるオルガノポリシロキサンの製造方法であって、光半導体装置用組成物の硬化物の表面のべたつきを抑制できるオルガノポリシロキサンの製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、上記オルガノポリシロキサンの製造方法により得られたオルガノポリシロキサンを含む光半導体装置用組成物、並びに該光半導体装置用組成物を用いた光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、ヒドロシリル化反応可能なオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒とを含む光半導体装置用組成物に用いられるオルガノポリシロキサンの製造方法であって、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンと珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンとを含有するオルガノポリシロキサン成分と、プロトン性有機溶剤とが混合された混合液を得る工程と、第2の層よりも上記高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも上記低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに、上記混合液を分液させた後、上記第1の層を分離し、該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンを得る工程とを備え、得られる上記オルガノポリシロキサンが、下記式(1)で表され、かつアルケニル基及び珪素原子に結合したメチル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、下記式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したメチル基を有する第2のオルガノポリシロキサンとの内の少なくとも一方である、オルガノポリシロキサンの製造方法が提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
上記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.30、b/(a+b+c)=0.70〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.10を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、アルケニル基及びメチル基以外のR1〜R6は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【0013】
【化2】

【0014】
上記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0〜0.30、q/(p+q+r)=0.70〜1.0及びr/(p+q+r)=0〜0.10を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、水素原子及びメチル基以外のR51〜R56は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【0015】
本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法のある特定の局面では、上記高重合度オルガノポリシロキサンは、上記プロトン性有機溶剤と相溶性を有さない。
【0016】
本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法の他の特定の局面では、上記プロトン性有機溶剤は、炭素数1〜4のアルコール溶剤である。
【0017】
本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法の他の特定の局面では、上記珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンを含まないか、又は得られる上記オルガノポリシロキサンの全体100重量%中、上記珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンを5重量%未満で含む上記オルガノポリシロキサンを得る。
【0018】
本発明に係る光半導体装置用組成物は、上記式(1)で表され、かつアルケニル基及び珪素原子に結合したメチル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、上記式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したメチル基を有する第2のオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記第2のオルガノポリシロキサンの双方が、本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法により得られたオルガノポリシロキサンである。
【0019】
本発明に係る光半導体装置用組成物は、光半導体装置において様々な用途に用いることができる。本発明に係る光半導体装置用組成物は、光半導体装置用封止剤として好適に用いられる。本発明に係る光半導体装置用組成物は、光半導体装置用封止剤であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた封止剤層とを備えており、該封止剤層が、本発明に従って構成された光半導体装置用組成物をヒドロシリル化反応させることにより形成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法は、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンと珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンとを含有するオルガノポリシロキサン成分と、プロトン性有機溶剤とが混合された混合液を得る工程と、第2の層よりも上記高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも上記低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに、上記混合液を分液させた後、上記第1の層を分離し、該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンを得る工程とを備えており、得られる上記高重合度オルガノポリシロキサンが、式(1)で表され、かつアルケニル基及び珪素原子に結合したメチル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したメチル基を有する第2のオルガノポリシロキサンとの内の少なくとも一方であるので、得られたオルガノポリシロキサンを用いた光半導体装置用組成物の硬化物の表面のべたつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法は、ヒドロシリル化反応可能なオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒とを含む光半導体装置用組成物に用いられるオルガノポリシロキサンの製造方法である。以下、上記光半導体装置用組成物を、組成物Aと記載することがある。また、光半導体装置用組成物(組成物A)の硬化物を、硬化物Bと記載することがある。
【0025】
本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法は、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンと珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンとを含有するオルガノポリシロキサン成分と、プロトン性有機溶剤とが混合された混合液を得る工程と、第2の層よりも上記高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも上記低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに、上記混合液を分液させた後、上記第1の層を分離し、該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンを得る工程とを備える。
【0026】
上記各工程により、上記高重合度オルガノポリシロキサンと上記低重合度オルガノポリシロキサンとを含有するオルガノポリシロキサン成分から、上記低重合度オルガノポリシロキサンの一部又は全部を取り除いて、上記高重合度オルガノポリシロキサンを選択的に得ることができる。すなわち、得られるオルガノポリシロキサンにおいて、上記高重合度オルガノポリシロキサンの量を比較的多くし、かつ上記低重合度オルガノポリシロキサンの量を比較的少なくすることができる。
【0027】
得られる上記オルガノポリシロキサンは、式(1)で表され、かつアルケニル基及び珪素原子に結合したメチル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したメチル基を有する第2のオルガノポリシロキサンとの内の少なくとも一方である。
【0028】
本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法では、上記第1のオルガノポリシロキサンを得てもよく、上記第2のオルガノポリシロキサンを得てもよく、上記第1のオルガノポリシロキサンと上記第2のオルガノポリシロキサンとの双方を得てもよい。本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法により得られたオルガノポリシロキサンの使用により、本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法により得られたオルガノポリシロキサンを全く用いていない場合と比べて、光半導体装置用組成物の硬化物の表面のべたつきを抑制できる。
【0029】
得られる上記オルガノポリシロキサンは、式(1)で表され、かつアルケニル基及び珪素原子に結合したメチル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したメチル基を有する第2のオルガノポリシロキサンとの双方であることが好ましい。
【0030】
上記第1のオルガノポリシロキサンと上記第2のオルガノポリシロキサンとの双方を得る場合に、本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法では、上記第1のオルガノポリシロキサンと上記第2のオルガノポリシロキサンとを別々に得てもよく、上記第1のオルガノポリシロキサンと上記第2のオルガノポリシロキサンとの双方を一度に得てもよい。
【0031】
上記高重合度オルガノポリシロキサンの量が比較的多く、かつ上記低重合度オルガノポリシロキサンの量が比較的少ないオルガノポリシロキサンを、光半導体装置用組成物Aに用いることにより、該組成物Aの硬化物Bの表面のべたつきを少なくすることができる。このため、硬化物Bの表面に、ごみ及び異物などが付着し難くなる。
【0032】
また、本発明に係る光半導体装置用組成物Aにおいて、上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記第2のオルガノポリシロキサンの双方が、本発明に係るオルガノポリシロキサンの製造方法により得られたオルガノポリシロキサンである。
【0033】
上記高重合度オルガノポリシロキサンは、上記プロトン性有機溶剤と相溶性を有さないことが好ましい。この場合には、第2の層よりも上記高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも上記低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに、上記混合液を分液させることが容易である。また、上記低重合度オルガノポリシロキサンは、上記プロトン性有機溶剤と相溶性を有することが好ましい。
【0034】
上記プロトン性有機溶剤は、炭素数1〜4のアルコール溶剤であることが好ましい。この場合には、第2の層よりも上記高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも上記低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに、上記混合液を分液させることがより一層容易である。特に、上記高重合度オルガノポリシロキサンと上記低重合度オルガノポリシロキサンとを含むオルガノポリシロキサン成分から、上記低重合度オルガノポリシロキサンの一部又は全部を取り除いて、上記高重合度オルガノポリシロキサンを選択的に得ることができる。
【0035】
好ましい上記プロトン性有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール及びジエチレングリコール等が挙げられる。
【0036】
上記プロトン性有機溶剤とともに、非プロトン性有機溶剤を用いてもよい。例えば、上記プロトン性有機溶剤に非プロトン性有機溶剤を少量混合してもよい。
【0037】
好ましい上記非プロトン性有機溶剤の具体例としては、トルエン、ヘキサン、ヘプタン及び酢酸エチル等が挙げられる。
【0038】
上記プロトン性有機溶剤とともに非プロトン性有機溶剤を用いる場合に、上記プロトン性有機溶剤100重量部に対して、上記非プロトン性有機溶剤の配合量は好ましくは40重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。
【0039】
得られる上記オルガノポリシロキサンにおいて、上記珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は少ないほどよい。該低重合度オルガノポリシロキサンの含有量が少ないほど、硬化物Bの表面のべたつきを抑制できる。得られる上記オルガノポリシロキサンの全体100重量%中、上記低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、更に好ましくは5重量%未満である。
【0040】
硬化物Bの表面のべたつきをより一層抑制する観点からは、上記珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンを含まないか、又は得られる上記オルガノポリシロキサンの全体100重量%中、上記珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンを5重量%未満で含む上記オルガノポリシロキサンを得ることが好ましい。
【0041】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X)より求められる珪素原子に結合したメチル基の含有比率はいずれも、50モル%以上であることが好ましい。
【0042】
珪素原子に結合したメチル基の含有比率(モル%)={(上記第1のオルガノポリシロキサン又は上記第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれる珪素原子に結合したメチル基の平均個数×メチル基の分子量)/(上記第1のオルガノポリシロキサン又は上記第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれる珪素原子に結合した官能基の平均個数×官能基の分子量)}×100 ・・・式(X)
【0043】
上記「官能基」は、上記第1のオルガノポリシロキサン又は上記第2のオルガノポリシロキサン中の珪素原子に直接結合している基を意味する。上記官能基が複数種ある場合に、「官能基の分子量」は、官能基それぞれの「官能基の平均個数×官能基の分子量」の総和を意味する。
【0044】
上記光半導体装置用組成物A中における上記オルガノポリシロキサンの珪素原子に結合した水素原子の数の上記光半導体装置用組成物A中における上記オルガノポリシロキサンの珪素原子に結合したアルケニル基の数に対する比(珪素原子に結合した水素原子の数/珪素原子に結合したアルケニル基の数)は、好ましくは1.0以上、好ましくは5.0以下である。第2のオルガノポリシロキサンがアルケニル基を有する場合には、上記比において、珪素原子に結合したアルケニル基の数には、第2のオルガノポリシロキサンのアルケニル基の数も含まれる。上記比が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物Bの耐熱性を高めることができる。さらに、上記光半導体装置用組成物Aを用いた光半導体装置が加熱と冷却とを繰り返し受ける過酷な環境で使用されても、硬化物Bにクラック及び剥離が生じ難くなる。さらに、硬化物B自体も、過酷な環境で使用されても変色し難くなる。また、上記組成の採用により、上記光半導体装置用組成物Aを用いた光半導体装置が高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用されても、光度が低下し難くなり、かつ上記光半導体装置が高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用されても硬化物Bの変色が生じ難くなる。
【0045】
上記ヒドロシリル化反応用触媒が白金のアルケニル錯体であり、該白金のアルケニル錯体が、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とを反応させることにより得られる白金のアルケニル錯体であることが好ましい。この場合には、上記光半導体装置用組成物Aを用いた光半導体装置が高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用されても、光度がより一層低下し難くなる。さらに、高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用されても、硬化物Bの変色がより一層生じ難くなる。
【0046】
(第1のオルガノポリシロキサン)
上記組成物Aに含まれている上記第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)は、下記式(1)で表され、アルケニル基と、珪素原子に結合したメチル基とを有する。上記第1のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合した水素原子を有さず、アルケニル基と、珪素原子に結合したメチル基とを有する第1のオルガノポリシロキサンである。第1のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合した水素原子を有さないので、第2のオルガノポリシロキサンとは異なる。アルケニル基は、珪素原子に直接結合していることが好ましい。メチル基は、珪素原子に直接結合している。なお、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子が、珪素原子に結合していてもよく、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子とは異なる炭素原子が、珪素原子に結合していてもよい。第1のオルガノポリシロキサンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
【化3】

【0048】
上記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.30、b/(a+b+c)=0.70〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.10を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、アルケニル基及びメチル基以外のR1〜R6は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び(R6SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0049】
上記式(1)は平均組成式を示す。上記式(1)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(1)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R6SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0051】
なお、一般に、上記式(1)の各構造単位において、アルコキシ基の含有量は少なく、更にヒドロキシ基の含有量も少ない。これは、一般に、第1のオルガノポリシロキサンを得るために、アルコキシシラン化合物などの有機珪素化合物を加水分解し、重縮合させると、アルコキシ基及びヒドロキシ基の多くは、シロキサン結合の部分骨格に変換されるためである。すなわち、アルコキシ基の酸素原子及びヒドロキシ基の酸素原子の多くは、シロキサン結合を形成している酸素原子に変換される。上記式(1)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合には、シロキサン結合の部分骨格に変換されなかった未反応のアルコキシ基又はヒドロキシ基がわずかに残存していることを示す。後述の式(51)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合に関しても、同様のことがいえる。
【0052】
上記式(1)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のオルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基及び上記式(1)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0053】
組成物Aの硬化性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したビニル基を有することが好ましい。また、上記第1のオルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基は、ビニル基であることが好ましい。
【0054】
上記式(1)における炭素数2〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基及びアリール基が挙げられる。
【0055】
組成物Aの硬化性を高め、硬化物Bの熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位は、R1がビニル基を表し、R2及びR3がメチル基又は炭素数2〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことが好ましい。すなわち、組成物Aの硬化性を高め、熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1−a)で表される構造単位を有することが好ましい。(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(1−a)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、下記式(1−a)で表される構造単位と下記式(1−a)で表される構造単位以外の構造単位とを含んでいてもよい。下記式(1−a)の存在により、末端にビニル基を存在させることができ、末端にビニル基が存在することによって反応機会が多くなり、組成物Aの硬化性をより一層高めることができる。なお、下記式(1−a)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、一般に隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、末端の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0056】
【化4】

【0057】
上記式(1−a)中、R2及びR3はそれぞれ、メチル基又は炭素数2〜8の炭化水素基を示す。
【0058】
上記第1のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X1)より求められる珪素原子に結合したメチル基の含有比率は50モル%以上である。このメチル基の含有比率が50モル%以上であると、硬化物Bの耐熱性がかなり高くなり、更に光半導体装置が高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用されても、光度が低下し難くなりかつ硬化物Bの変色が生じ難くなる。第1のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X1)より求められる珪素原子に結合したメチル基の含有比率は、好ましくは60モル%以上、好ましくは99.9モル%以下、より好ましくは99モル%以下、更に好ましくは98モル%以下である。上記メチル基の含有比率が上記下限以上であると、硬化物Bの耐熱性がより一層高くなる。上記メチル基の含有比率が上記上限以下であると、アルケニル基を充分に導入でき、組成物Aの硬化性を高めることが容易である。
【0059】
珪素原子に結合したメチル基の含有比率(モル%)={(上記第1のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれる珪素原子に結合したメチル基の平均個数×メチル基の分子量)/(上記第1のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれる珪素原子に結合した官能基の平均個数×官能基の分子量)}×100 ・・・式(X1)
【0060】
上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンにおいて、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0061】
(R4R5SiXO1/2) ・・・式(1−2)
【0062】
(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R4及びR5で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。具体的には、アルコキシ基がシロキサン結合の部分骨格に変換された場合には、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。未反応のアルコキシ基が残存している場合、又はアルコキシ基がヒドロキシ基に変換された場合には、残存アルコキシ基又はヒドロキシ基を有する(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。また、下記式(1−b)で表される構造単位において、Si−O−Si結合中の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0063】
【化5】

【0064】
上記式(1−2)及び(1−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−b)、(1−2)及び(1−2−b)中のR4及びR5は、上記式(1)中のR4及びR5と同様の基である。
【0065】
上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンにおいて、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0066】
(R6SiX1/2) ・・・式(1−3)
(R6SiXO2/2) ・・・式(1−4)
【0067】
(R6SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(1−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−3−c)又は(1−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R6で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R6SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0068】
【化6】

【0069】
上記式(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−c)、(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中のR6は、上記式(1)中のR6と同様の基である。
【0070】
上記式(1−b)及び(1−c)、式(1−2)〜(1−4)、並びに式(1−2−b)、(1−3−c)及び(1−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0071】
上記式(1)中、a/(a+b+c)は0以上、0.30以下である。a/(a+b+c)が上記上限以下であると、硬化物Bの耐熱性がより一層高くなり、かつ硬化物Bの剥離をより一層抑制できる。上記式(1)中、a/(a+b+c)は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。なお、aが0であり、a/(a+b+c)が0である場合、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)の構造単位は存在しない。
【0072】
上記式(1)中、b/(a+b+c)は0.70以上、1.0以下である。b/(a+b+c)が上記下限以上であると、硬化物Bが硬くなりすぎず、硬化物Bにクラックが生じ難くなる。上記式(1)中、b/(a+b+c)は、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上である。
【0073】
上記式(1)中、c/(a+b+c)は0以上、0.10以下である。c/(a+b+c)が上記上限以下であると、組成物Aの適正な粘度を維持することが容易であり、密着性がより一層高くなる。上記式(1)中、c/(a+b+c)は、好ましくは0.05以下である。なお、cが0であり、c/(a+b+c)が0である場合、上記式(1)中、(R6SiO3/2)の構造単位は存在しない。
【0074】
上記式(1)中のc/(a+b+c)は、0であることが好ましい。すなわち、上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1A)で表される第1のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。これにより、硬化物Bにクラックがより一層生じ難くなり、かつ硬化物Bがハウジング材等からより一層剥離し難くなる。
【0075】
【化7】

【0076】
上記式(1A)中、a及びbは、a/(a+b)=0〜0.25及びb/(a+b)=0.75〜1.0を満たし、R1〜R5は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、アルケニル基及びメチル基以外のR1〜R5は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【0077】
上記式(1A)中、a/(a+b)は好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下である。上記式(1A)中、b/(a+b)は好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上である。
【0078】
上記第1のオルガノポリシロキサンについて、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R6SiO3/2)、並びに(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0079】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(1)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0080】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0081】
(第2のオルガノポリシロキサン)
上記組成物Aに含まれている上記第2のオルガノポリシロキサンは、下記式(51)で表され、珪素原子に結合した水素原子と、珪素原子に結合したメチル基とを有する。水素原子とメチル基とは珪素原子に直接結合している。第2のオルガノポリシロキサンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
【化8】

【0083】
上記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0〜0.30、q/(p+q+r)=0.70〜1.0及びr/(p+q+r)=0〜0.10を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、水素原子及びメチル基以外のR51〜R56は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び(R56SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0084】
上記式(51)は平均組成式を示す。上記式(51)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(51)中のR51〜R56は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R56SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0086】
上記式(51)における炭素数2〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基及びアリール基が挙げられる。
【0087】
組成物Aの硬化性を高め、硬化物Bの熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記式(51)中、(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、R51が水素原子を表し、R52及びR53がメチル基又は炭素数2〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことが好ましい。すなわち、組成物Aの硬化性を高め、硬化物Bの熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、第2のオルガノポリシロキサンは、下記式(51−a)で表される構造単位を有することが好ましい。(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(51−a)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、下記式(51−a)で表される構造単位と下記式(51−a)で表される構造単位以外の構造単位とを含んでいてもよい。下記式(51−a)の存在により、末端に水素原子を存在させることができる。末端に水素原子が存在することによって反応機会が多くなり、組成物Aの硬化性をより一層高めることができる。なお、下記式(51−a)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、一般に隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、末端の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0088】
【化9】

【0089】
上記式(51−a)中、R52及びR53はそれぞれ、メチル基又は炭素数2〜8の炭化水素基を示す。
【0090】
組成物Aの硬化性をより一層高め、硬化物Bの熱サイクルでのクラック及び剥離をさらに一層抑制する観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンが、上記式(1−a)で表される構造単位を有し、かつ上記第2のオルガノポリシロキサンが、上記式(51−a)で表される構造を有することが特に好ましい。
【0091】
組成物Aの硬化性をより一層高める観点からは、上記第2のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したビニル基を有することが好ましい。この場合には、R51〜R56は、少なくとも1個が珪素原子を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、少なくとも1個がビニル基を表し、水素原子、メチル基及びビニル基以外のR51〜R56は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【0092】
上記第2のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X51)より求められる珪素原子に結合したメチル基の含有比率は50モル%以上であることが好ましい。このメチル基の含有比率が50モル%以上であると、硬化物Bの耐熱性がかなり高くなり、更に光半導体装置が高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用されても、光度が低下し難くなりかつ硬化物Bの変色が生じ難くなる。第2のオルガノポリシロキサンにおける下記式(X51)より求められる珪素原子に結合したメチル基の含有比率は、好ましくは60モル%以上、好ましくは99.9モル%以下、より好ましくは99モル%以下、更に好ましくは98モル%以下である。上記メチル基の含有比率が上記下限以上であると、硬化物Bの耐熱性がより一層高くなる。上記メチル基の含有比率が上記上限以下であると、珪素原子に結合した水素原子を充分に導入でき、組成物Aの硬化性を高めることが容易である。
【0093】
珪素原子に結合したメチル基の含有比率(モル%)={(上記第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれる珪素原子に結合したメチル基の平均個数×メチル基の分子量)/(上記第2のオルガノポリシロキサンの1分子あたりに含まれる珪素原子に結合した官能基の平均個数×官能基の分子量)}×100 ・・・式(X51)
【0094】
上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンにおいて、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(51−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0095】
(R54R55SiXO1/2) ・・・式(51−2)
【0096】
(R54R55SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(51−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R54及びR55で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0097】
【化10】

【0098】
上記式(51−2)及び(51−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−b)、(51−2)及び(51−2−b)中のR54及びR55は、上記式(51)中のR54及びR55と同様の基である。
【0099】
上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンにおいて、(R56SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(51−3)又は(51−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0100】
(R56SiX1/2) ・・・式(51−3)
(R56SiXO2/2) ・・・式(51−4)
【0101】
(R56SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(51−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−3−c)又は(51−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R56で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R56SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0102】
【化11】

【0103】
上記式(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−c)、(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中のR56は、上記式(51)中のR56と同様の基である。
【0104】
上記式(51−b)及び(51−c)、式(51−2)〜(51−4)、並びに式(51−2−b)、(51−3−c)、(51−4−c)及び(51−5−d)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0105】
上記式(51)中、p/(p+q+r)は0以上、0.30以下である。p/(p+q+r)が上記上限以下であると、硬化物Bの耐熱性がより一層高くなり、かつ硬化物Bの剥離をより一層抑制できる。上記式(51)中、p/(p+q+r)は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。なお、pが0であり、p/(p+q+r)が0である場合、上記式(51)中、(R51R52R53SiO1/2)の構造単位は存在しない。
【0106】
上記式(51)中、q/(p+q+r)は0.70以上、1.0以下である。q/(p+q+r)が上記下限以上であると、硬化物Bが硬くなりすぎず、硬化物Bにクラックが生じ難くなる。上記式(51)中、q/(p+q+r)は、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上である。
【0107】
上記式(51)中、r/(p+q+r)は0以上、0.10以下である。r/(p+q+r)が上記上限以下であると、組成物Aの適正な粘度を維持することが容易であり、密着性がより一層高くなる。上記式(51)中のr/(p+q+r)は、好ましくは0.05以下である。なお、rが0であり、r/(p+q+r)が0である場合、上記式(51)中、(R56SiO3/2)の構造単位は存在しない。
【0108】
上記式(51)中のp/(p+q+r)は、0であることが好ましい。すなわち、上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンは、下記式(51A)で表される第2のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。これにより、硬化物Bにクラックがより一層生じ難くなり、かつ硬化物Bがハウジング材等からより一層剥離し難くなる。
【0109】
【化12】

【0110】
上記式(51A)中、a及びbは、p/(p+q)=0〜0.25及びq/(p+q)=0.75〜1.0を満たし、R51〜R55は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、水素原子及びメチル基以外のR51〜R55は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【0111】
上記式(51A)中、p/(p+q)は好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下である。上記式(51A)中、q/(p+q)は好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上である。
【0112】
硬化物Bにおけるクラックの発生をより一層抑制し、かつ硬化物Bのハウジング材等からの剥離をより一層抑制する観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンは、上記式(1A)で表される第1のオルガノポリシロキサンであり、かつ上記第2のオルガノポリシロキサンは、上記式(51A)で表される第2のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0113】
上記第2のオルガノポリシロキサンについて、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(51)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(51)中の(R54R55SiO2/2)及び(51−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(51)中の(R56SiO3/2)、並びに(51−3)及び(51−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0114】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(51)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0115】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(51)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(51)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0116】
上記第1のオルガノポリシロキサン100重量部に対して、上記第2のオルガノポリシロキサンの含有量は好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、好ましくは400重量部以下、より好ましくは300重量部以下、更に好ましくは200重量部以下である。第1,第2のオルガノポリシロキサンの含有量がこの範囲内であると、硬化性により一層優れた組成物Aを得ることができる。
【0117】
(第1,第2のオルガノポリシロキサンの他の性質及びその合成方法)
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンのアルコキシ基の含有量は、好ましくは0.1モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。アルコキシ基の含有量が上記下限以上であると、硬化物Bの密着性が高くなる。アルコキシ基の含有量が上記上限以下であると、第1,第2のオルガノポリシロキサン及び組成物Aの貯蔵安定性が高くなり、硬化物Bの耐熱性がより一層高くなる。
【0118】
上記アルコキシ基の含有量は、第1,第2のオルガノポリシロキサンの平均組成式中に含まれるアルコキシ基の量を意味する。
【0119】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンはシラノール基を含有しないほうが好ましい。第1,第2のオルガノポリシロキサンがシラノール基を含有しないと、第1,第2のオルガノポリシロキサン及び硬化物Bの貯蔵安定性が高くなる。上記シラノール基は、真空下での加熱により減少させることができる。シラノール基の含有量は、赤外分光法を用いて測定できる。
【0120】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは1000以上、特に好ましくは5000以上、好ましくは200000以下、より好ましくは100000以下、更に好ましくは60000以下である。数平均分子量が上記下限以上であると、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、高温環境下で硬化物Bの厚みが減少しにくくなる。数平均分子量が上記上限以下であると、粘度調節が容易である。
【0121】
硬化物Bの熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンの数平均分子量は5000以上、60000以下であることが好ましい。また、硬化物Bの熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量は5000以上、60000以下であることが好ましい。
【0122】
組成物Aの硬化性をより一層高め、硬化物Bの熱サイクルでのクラック及び剥離をさらに一層抑制する観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンの数平均分子量が5000以上、60000以下であり、かつ上記第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量が5000以上、60000以下であることが特に好ましい。
【0123】
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質して求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
【0124】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンを合成する方法としては特に限定されず、アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法、及びクロロシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が挙げられる。なかでも、反応の制御の観点からアルコキシシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が好ましい。これらの方法により得られたオルガノポリシロキサン成分から、上記高重合度オルガノポリシロキサンを選択的に得ることで、上記第1,第2のオルガノポリシロキサンが得られる。
【0125】
アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物を、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、ジシロキサン化合物を加水分解して用いてもよい。
【0126】
上記第1のオルガノポリシロキサンにアルケニル基を導入するための有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0127】
上記第2のオルガノポリシロキサンに珪素原子に結合した水素原子を導入するための有機珪素化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0128】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンを得るために用いることができる他の有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0129】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンに必要に応じてアリール基を導入するための有機珪素化合物としては、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0130】
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物及びその誘導体、並びに有機酸の酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
【0131】
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸及び炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0132】
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0133】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド及びセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0134】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物及びセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒又はセシウム系触媒が好ましい。
【0135】
(ヒドロシリル化反応用触媒)
上記組成物Aに含まれているヒドロシリル化反応用触媒は、上記第1のオルガノポリシロキサン中のアルケニル基と、上記第2のオルガノポリシロキサン中の珪素原子に結合した水素原子とをヒドロシリル化反応させる触媒である。
【0136】
上記ヒドロシリル化反応用触媒として、ヒドロシリル化反応を進行させる各種の触媒を用いることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。硬化物Bの透明性を高くすることができるため、白金系触媒が好ましい。
【0138】
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
【0139】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
【0140】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
【0141】
高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をより一層抑制し、かつ硬化物Bの変色をより一層抑制する観点からは、上記ヒドロシリル化反応用触媒は、白金のアルケニル錯体であることが好ましい。高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をさらに一層抑制し、かつ硬化物Bの変色をさらに一層抑制する観点からは、上記白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とを反応させることにより得られる白金のアルケニル錯体であることが好ましい。この場合に、白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物である。また、上記白金のアルケニル錯体の使用により、硬化物Bの透明性を高くすることもできる。上記白金のアルケニル錯体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0142】
上記白金のアルケニル錯体を得るための白金原料として、上記塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO)を用いることが好ましい。
【0143】
上記白金のアルケニルを得るための上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物としては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0144】
上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物における「当量」に関しては、上記塩化白金酸6水和物1モルに対して上記2官能以上のアルケニル化合物が1モルである重量を1当量とする。上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物は、50当量以下であることが好ましい。
【0145】
上記白金のアルケニル錯体を得るために用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール及び1−ブタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。トルエン及びキシレン等の芳香族系溶媒を用いてもよい。上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0146】
上記白金のアルケニル錯体を得るために、上記成分に加えて単官能のビニル化合物を用いてもよい。上記単官能のビニル化合物としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン及びビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0147】
塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物に関して、白金元素と6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とは、共有結合していたり、配位していたり、又は共有結合しかつ配位していたりする。
【0148】
光半導体装置用組成物A中で、上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、金属原子(白金のアルケニル錯体の場合には白金原子)の重量単位で、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは1ppm以上、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記下限以上であると、組成物Aを十分に硬化させることが容易である。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記上限以下であると、硬化物Bの着色の問題が生じ難い。
【0149】
(酸化珪素粒子)
上記組成物Aは、酸化珪素粒子をさらに含むことが好ましい。該酸化珪素粒子の使用により、硬化物Bの耐熱性及び耐光性を損なうことなく、硬化前の組成物Aの粘度を適当な範囲に調整できる。従って、組成物Aの取り扱い性を高めることができる。
【0150】
上記酸化珪素粒子の一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記下限以上であると、酸化珪素粒子の分散性がより一層高くなり、硬化物Bの透明性がより一層高くなる。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記上限以下であると、25℃における粘度の上昇効果を充分に得ることができ、かつ温度上昇における粘度の低下を抑制できる。
【0151】
上記酸化珪素粒子の一次粒子径は、以下のようにして測定される。光半導体装置用組成物Aの硬化物Bを透過型電子顕微鏡(商品名「JEM−2100」、日本電子社製)を用いて観察する。視野中の100個の酸化珪素粒子の一次粒子の大きさをそれぞれ測定し、測定値の平均値を一次粒子径とする。上記一次粒子径は、上記酸化珪素粒子が球形である場合には酸化珪素粒子の直径の平均値を意味し、非球形である場合には酸化珪素粒子の長径の平均値を意味する。
【0152】
上記酸化珪素粒子のBET比表面積は、好ましくは30m/g以上、好まししくは400m/g以下である。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が30m/g以上であると、組成物Aの25℃における粘度を好適な範囲に制御でき、温度上昇における粘度の低下を抑制できる。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が400m/g以下であると、酸化珪素粒子の凝集が生じ難くなり、分散性を高くすることができ、更に硬化物Bの透明性をより一層高くすることができる。
【0153】
上記酸化珪素粒子としては特に限定されず、例えば、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ、並びにコロイダルシリカ、ゾルゲルシリカ、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ等が挙げられる。なかでも、揮発成分が少なく、かつ透明性がより一層高い硬化物Bを得る観点からは、上記酸化珪素粒子として、フュームドシリカが好適に用いられる。
【0154】
上記フュームドシリカとしては、例えば、Aerosil 50(比表面積:50m/g)、Aerosil 90(比表面積:90m/g)、Aerosil 130(比表面積:130m/g)、Aerosil 200(比表面積:200m/g)、Aerosil 300(比表面積:300m/g)、及びAerosil 380(比表面積:380m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0155】
上記有機珪素化合物としては特に限定されず、例えば、アルキル基を有するシラン系化合物、ジメチルシロキサン等のシロキサン骨格を有する珪素系化合物、アミノ基を有する珪素系化合物、(メタ)アクリロイル基を有する珪素系化合物、及びエポキシ基を有する珪素系化合物等が挙げられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを意味する。
【0156】
酸化珪素粒子の分散性をさらに一層高める観点からは、上記有機珪素化合物は、ジメチルシリル基を有する有機珪素化合物、トリメチルシリル基を有する有機珪素化合物及びポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0157】
有機珪素化合物により表面処理する方法の一例として、ジメチルシリル基を有する有機珪素化合物又はトリメチルシリル基を有する有機珪素化合物を用いる場合には、例えば、ジクロロジメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライド及びトリメチルメトキシシラン等を用いて、酸化珪素粒子を表面処理する方法が挙げられる。ポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物を用いる場合には、ポリジメチルシロキサン基の末端にシラノール基を有する化合物及び環状シロキサン等を用いて、酸化珪素粒子を表面処理する方法が挙げられる。
【0158】
上記ジメチルシリル基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、R974(比表面積:170m/g)、及びR964(比表面積:250m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0159】
上記トリメチルシリル基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、RX200(比表面積:140m/g)、及びR8200(比表面積:140m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0160】
上記ポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、RY200(比表面積:120m/g)(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0161】
上記有機珪素化合物により酸化珪素粒子を表面処理する方法は特に限定されない。この方法としては、例えば、ミキサー中に酸化珪素粒子を添加し、攪拌しながら有機珪素化合物を添加する乾式法、酸化珪素粒子のスラリー中に有機珪素化合物を添加するスラリー法、並びに、酸化珪素粒子の乾燥後に有機珪素化合物をスプレー付与するスプレー法などの直接処理法等が挙げられる。上記乾式法で用いられるミキサーとしては、ヘンシェルミキサー及びV型ミキサー等が挙げられる。上記乾式法では、有機珪素化合物は、直接、又は、アルコール水溶液、有機溶媒溶液若しくは水溶液として添加される。
【0162】
上記有機珪素化合物により表面処理されている酸化珪素粒子を得るために、組成物Aを調製する際に、酸化珪素粒子と上記第1,第2のオルガノポリシロキサン等のマトリクス樹脂との混合時に、有機珪素化合物を直接添加するインテグレルブレンド法等を用いてもよい。
【0163】
上記第1のオルガノポリシロキサンと上記第2のオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、上記酸化珪素粒子の含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記酸化珪素粒子の含有量が上記下限以上であると、硬化時の粘度低下を抑制することが可能になる。上記酸化珪素粒子の含有量が上記上限以下であると、組成物Aの粘度をより一層適正な範囲に制御でき、かつ硬化物Bの透明性をより一層高めることができる。
【0164】
(蛍光体)
上記組成物Aは、蛍光体をさらに含んでいてもよい。組成物Aが予め蛍光体を含んでいても、該蛍光体は沈降し難い。
【0165】
また、上記組成物Aは、蛍光体を含んでいなくてもよい。この場合には、組成物Aは、使用時に蛍光体が添加されて、用いられることが好ましい。組成物Aに蛍光体が添加されても、添加された蛍光体は沈降し難い。
【0166】
上記組成物Aが光半導体装置用封止剤である場合に、上記蛍光体は、光半導体装置用封止剤を用いて封止する発光素子が発する光を吸収し、蛍光を発生することによって、最終的に所望の色の光を得ることができるように作用する。上記蛍光体は、発光素子が発する光によって励起され、蛍光を発し、発光素子が発する光と蛍光体が発する蛍光との組み合わせによって、所望の色の光を得ることができる。
【0167】
例えば、発光素子として紫外線LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、青色蛍光体、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。発光素子として青色LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせて用いるか、又は、黄色蛍光体を用いることが好ましい。上記蛍光体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0168】
上記青色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl:Eu、(Ba、Sr)MgAl1017:Eu、(Sr、Ba)MgSi:Eu等が挙げられる。
【0169】
上記赤色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca)S:Eu、(Ca、Sr)Si:Eu、CaSiN:Eu、CaAlSiN:Eu、YS:Eu、LaS:Eu、LiW:(Eu、Sm)、(Sr、Ca、Bs、Mg)10(POCl:(Eu、Mn)、BaMgSi:(Eu、Mn)等が挙げられる。
【0170】
上記緑色蛍光体としては特に限定されず、例えば、Y(Al、Ga)12:Ce、SrGa:Eu、CaScSi12:Ce、SrSiON:Eu、ZnS:(Cu、Al)、BaMgAl1017(Eu、Mn)、SrAl:Eu等が挙げられる。
【0171】
上記黄色蛍光体としては特に限定されず、例えば、YAl12:Ce、(Y、Gd)Al12:Ce、TbAl12:Ce、CaGa:Eu、SrSiO:Eu等が挙げられる。
【0172】
さらに、上記蛍光体としては、有機蛍光体であるペリレン系化合物等が挙げられる。
【0173】
上記蛍光体の体積平均粒径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。
【0174】
所望の色の光を得るように、上記蛍光体の含有量は適宜調整でき、特に限定されない。光半導体装置用組成物A100重量部に対して、上記蛍光体の含有量は好ましくは0.1重量部以上、好ましくは40重量部以下である。上記光半導体装置用組成物Aの蛍光体を除く全成分100重量部に対して、上記蛍光体の含有量は好ましくは0.1重量部以上、好ましくは40重量部以下である。
【0175】
(カップリング剤)
上記組成物Aは、接着性を付与するために、カップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0176】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0177】
(他の成分)
上記組成物Aは、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー又は難燃剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0178】
なお、上記第1のオルガノポリシロキサンと、上記第2のオルガノポリシロキサンと、上記ヒドロシリル化反応用触媒とは、これらを1種又は2種以上含む液を別々に調製しておき、使用直前に複数の液を混合して、上記組成物Aを調製してもよい。例えば、上記第1のオルガノポリシロキサン及びヒドロシリル化反応用触媒を含むA液と、第2のオルガノポリシロキサンを含むB液とを別々に調製しておき、使用直前にA液とB液とを混合して、上記組成物Aを調製してもよい。なお、酸化珪素粒子又は蛍光体が用いられる場合には、酸化珪素粒子と蛍光体とはそれぞれ、A液に添加してもよく、B液に添加してもよい。このように上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記ヒドロシリル化反応用触媒と上記第2のオルガノポリシロキサンとを別々に、第1の液と第2の液との2液にすることによって保存安定性を向上させることができる。
【0179】
(光半導体装置用組成物の詳細及び用途)
上記組成物Aの硬化温度は特に限定されない。組成物Aの硬化温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。硬化温度が上記下限以上であると、組成物Aの硬化が充分に進行する。硬化温度が上記上限以下であると、パッケージの熱劣化が起こり難い。
【0180】
硬化方式は特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、組成物A及び硬化物Bの硬化収縮を抑えることができる。
【0181】
上記組成物Aの製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール又はビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上記第1のオルガノポリシロキサン、上記第2のオルガノポリシロキサン、上記ヒドロシリル化反応用触媒、及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
【0182】
上記発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、及びSiC等が挙げられる。
【0183】
上記基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、及びGaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料との間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層の材料としては、例えば、GaN及びAlN等が挙げられる。
【0184】
本発明に係る光半導体装置用組成物は、光半導体装置において様々な用途に用いることができる。本発明に係る光半導体装置用組成物は、光半導体装置用封止剤として好適に用いられる。本発明に係る光半導体装置用組成物は、光半導体装置用封止剤であることが好ましい。
【0185】
本発明に係る光半導体装置としては、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置及びフォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター及びコピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト並びにスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0186】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた封止剤層とを備えており、該封止剤層が、本発明に従って構成された光半導体装置用組成物をヒドロシリル化反応させることにより形成されている。
【0187】
本発明に係る光半導体装置では、本発明に係る光半導体装置用封止剤である組成物Aの硬化物Bにより、光半導体により形成された発光素子が封止されている。本発明に係る光半導体装置では、LEDなどの光半導体により形成された発光素子を封止するように、硬化物Bが配置されている。このため、発光素子を封止している硬化物Bにクラックが生じ難く、パッケージからの剥離が生じ難く、かつ光透過性、耐熱性、耐候性及びガスバリア性を高めることができる。
【0188】
(光半導体装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【0189】
本実施形態の光半導体装置1は、ハウジング2を有する。ハウジング2内にLEDからなる光半導体素子3が実装されている。この光半導体素子3の周囲を、ハウジング2の光反射性を有する内面2aが取り囲んでいる。本実施形態では、光半導体により形成された発光素子として、光半導体素子3が用いられている。
【0190】
内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面2aに到達した光が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。光半導体素子3を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、封止剤層4が充填されている。該封止剤層4は、光半導体装置用封止剤である光半導体装置用組成物の硬化物である。
【0191】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体装置の実装構造等は適宜変形され得る。
【0192】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0193】
(合成例1)精製前の第1のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン476g、及びビニルメチルジメトキシシラン5.3gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム2.2gを水144gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去し、反応液に酢酸2.4gを加え、減圧下で加熱した。その後、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(A)を得た。
【0194】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(A)は、下記の平均組成式(A1)を有していた。
【0195】
(MeSiO2/20.99(ViMeSiO2/20.01 …式(A1)
【0196】
上記式(A1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0197】
得られたポリマー(A)のメチル基の含有比率は99モル%であった。得られたポリマー(A)100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は70重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は30重量%であった。
【0198】
(合成例2)精製前の第2のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン438g、及びメチルジエトキシシラン48gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸2.1gと水144gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(H)を得た。
【0199】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(H)は、下記の平均組成式(H1)を有していた。
【0200】
(MeSiO2/20.91(HMeSiO2/20.09 …式(H1)
【0201】
上記式(H1)中、Meはメチル基を示す。
【0202】
得られたポリマー(H)のメチル基の含有比率は99.7モル%であった。得られたポリマー(H)100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は70重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は30重量%であった。
【0203】
(白金アルケニル錯体Aの合成)
環流管を備えた反応フラスコに、塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO、300mg)、及び2−プロパノール(4.6ml)を入れて、窒素雰囲気下にて室温で20分間攪拌した。20分後、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、400mg)を加えて、ガスの発生がなくなるまで攪拌し、次に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(8当量、864mg)を加え、反応溶液を60℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、無水硫酸マグネシウム(300mg)を加えて5分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルを溶媒に用いてセライトろ過を行い、溶液量が5gになるまで濃縮し、白金アルケニル錯体Aの溶液を得た。
【0204】
(白金アルケニル錯体Bの合成)
環流管を備えた反応フラスコに、塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO、300mg)、及び2−プロパノール(4.6ml)を入れて、窒素雰囲気下にて室温で20分間攪拌した。20分後、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、400mg)を加えて、ガスの発生がなくなるまで攪拌し、次に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(20当量、2.16g)を加え、反応溶液を60℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、無水硫酸マグネシウム(300mg)を加えて5分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルを溶媒に用いてセライトろ過を行い、溶液量が5gになるまで濃縮し、白金アルケニル錯体Bの溶液を得た。
【0205】
(白金アルケニル錯体Cの合成)
環流管を備えた反応フラスコに、塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO、300mg)、及び2−プロパノール(4.6ml)を入れて、窒素雰囲気下にて室温で20分間攪拌した。20分後、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、400mg)を加えて、ガスの発生がなくなるまで攪拌し、次に2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン(20当量、3.99g)を加え、反応溶液を60℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、無水硫酸マグネシウム(300mg)を加えて5分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルを溶媒に用いてセライトろ過を行い、溶液量が5gになるまで濃縮し、白金アルケニル錯体Cの溶液を得た。
【0206】
(実施例1)
(1)ポリマーの精製
得られたポリマーA100重量部と、プロトン性有機溶剤であるメタノール100重量部とを混合して、混合液を得た。得られた混合液を第2の層よりも高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに上記混合液を分液させた後、第1の層を分離し、高温減圧下で乾燥させて該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンA−1を得た。
【0207】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンA−1は、下記の平均組成式(A1)を有していた。
【0208】
(MeSiO2/20.98(ViMeSiO2/20.02 …式(A1)
【0209】
上記式(A1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0210】
得られたオルガノポリシロキサンA−1のメチル基の含有比率は98モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンA−1の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は93重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は7重量%であった。
【0211】
得られたポリマーH100重量部と、プロトン性有機溶剤であるメタノール100重量部とを混合して、混合液を得た。得られた混合液を第2の層よりも高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに上記混合液を分液させた後、第1の層を分離し、高温減圧下で乾燥させて該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンH−1を得た。
【0212】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンH−1は、下記の平均組成式(H1)を有していた。
【0213】
(MeSiO2/20.91(HMeSiO2/20.09 …式(H1)
【0214】
上記式(H1)中、Meはメチル基を示す。
【0215】
得られたオルガノポリシロキサンH−1のメチル基の含有比率は99.7モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンH−1の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は95重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は5重量%であった。
【0216】
(2)光半導体装置用封止剤の調製
得られたオルガノポリシロキサンA−1(8g)、得られたオルガノポリシロキサンH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0217】
(実施例2)
(1)ポリマーの精製
得られたポリマーA100重量部と、プロトン性有機溶剤であるエタノール100重量部とを混合して、混合液を得た。得られた混合液を第2の層よりも高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに上記混合液を分液させた後、第1の層を分離し、高温減圧下で乾燥させて該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンA−2を得た。
【0218】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンA−2は、下記の平均組成式(A2)を有していた。
【0219】
(MeSiO2/20.98(ViMeSiO2/20.02 …式(A2)
【0220】
上記式(A2)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0221】
得られたオルガノポリシロキサンA−2のメチル基の含有比率は98モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンA−2の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は98重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は2重量%であった。
【0222】
(2)光半導体装置用封止剤の調製
得られたオルガノポリシロキサンA−2(8g)、実施例1で得られたオルガノポリシロキサンH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0223】
(実施例3)
(1)ポリマーの精製
得られたポリマーA100重量部と、プロトン性有機溶剤であるイソプロピルアルコール100重量部とを混合して、混合液を得た。得られた混合液を第2の層よりも高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに上記混合液を分液させた後、第1の層を分離し、高温減圧下で乾燥させて該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンA−3を得た。
【0224】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンA−3は、下記の平均組成式(A3)を有していた。
【0225】
(MeSiO2/20.98(ViMeSiO2/20.02 …式(A3)
【0226】
上記式(A3)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0227】
得られたオルガノポリシロキサンA−3のメチル基の含有比率は98モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンA−3の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は89重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は11重量%であった。
【0228】
(2)光半導体装置用封止剤の調製
得られたオルガノポリシロキサンA−3(8g)、実施例1で得られたオルガノポリシロキサンH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0229】
(実施例4)
実施例1で得られたオルガノポリシロキサンA−1(8g)、実施例1で得られたオルガノポリシロキサンH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Bの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0230】
(実施例5)
実施例1で得られたオルガノポリシロキサンA−1(8g)、実施例1で得られたオルガノポリシロキサンH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Cの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0231】
(実施例6)
実施例1で得られたオルガノポリシロキサンA−1(6g)、実施例1で得られたオルガノポリシロキサンH−1(3g)、及び白金アルケニル錯体Bの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0232】
(実施例7)
(1)ポリマーの精製
得られたポリマーA100重量部と、プロトン性有機溶剤であるメタノール300重量部とを混合して、混合液を得た。得られた混合液を第2の層よりも高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに上記混合液を分液させた後、第1の層を分離し、高温減圧下で乾燥させて該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンA−6を得た。
【0233】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンA−6は、下記の平均組成式(A6)を有していた。
【0234】
(MeSiO2/20.98(ViMeSiO2/20.02 …式(A6)
【0235】
上記式(A6)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0236】
得られたオルガノポリシロキサンA−6のメチル基の含有比率は98モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンA−6の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は94重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は6重量%であった。
【0237】
(2)光半導体装置用封止剤の調製
得られたオルガノポリシロキサンA−6(8g)、実施例1で得られたオルガノポリシロキサンH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0238】
(実施例8)
(1)ポリマーの精製
得られたポリマーA100重量部と、プロトン性有機溶剤であるメタノール20重量部とを混合して、混合液を得た。得られた混合液を第2の層よりも高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに上記混合液を分液させた後、第1の層を分離し、高温減圧下で乾燥させて該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンA−7を得た。
【0239】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンA−7は、下記の平均組成式(A7)を有していた。
【0240】
(MeSiO2/20.98(ViMeSiO2/20.02 …式(A7)
【0241】
上記式(A7)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0242】
得られたオルガノポリシロキサンA−7のメチル基の含有比率は98モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンA−7の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は89重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は11重量%であった。
【0243】
(2)光半導体装置用封止剤の調製
得られたオルガノポリシロキサンA−7(8g)、実施例1で得られたオルガノポリシロキサンH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0244】
(参考例1)
(1)ポリマーの精製
得られたポリマーA100重量部と、非プロトン性有機溶剤であるアセトン100重量部とを混合して、1層の混合液を得た。この1層の混合溶液を高温減圧下で揮発成分を除去してオルガノポリシロキサンA−4を得た。
【0245】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンA−4は、下記の平均組成式(A4)を有していた。
【0246】
(MeSiO2/20.99(ViMeSiO2/20.01 …式(A4)
【0247】
上記式(A4)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0248】
得られたオルガノポリシロキサンA−4のメチル基の含有比率は99モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンA−4の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は70重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は30重量%であった。
【0249】
(2)光半導体装置用封止剤の調製
得られたポリマーA−4(8g)、実施例1で得られたポリマーH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0250】
(参考例2)
(1)ポリマーの精製
得られたポリマーA100重量部と、非プロトン性有機溶剤であるヘキサン100重量部とを混合して、1層の混合液を得た。この1層の混合溶液を高温減圧下で揮発成分を除去してオルガノポリシロキサンA−5を得た。
【0251】
29Si−NMRより化学構造を同定した結果、オルガノポリシロキサンA−5は、下記の平均組成式(A5)を有していた。
【0252】
(MeSiO2/20.99(ViMeSiO2/20.01 …式(A5)
【0253】
上記式(A5)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0254】
得られたオルガノポリシロキサンA−5のメチル基の含有比率は99モル%であった。得られたオルガノポリシロキサンA−5の100重量%中、珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンの含有量は70重量%、珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンの含有量は30重量%であった。
【0255】
(2)光半導体装置用封止剤の調製
得られたポリマーA−5(8g)、実施例1で得られたポリマーH−1(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0256】
(比較例1)
合成例1で得られたポリマーA(8g)、合成例2で得られたポリマーH(2g)、及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0257】
(評価)
(光半導体装置の作製)
銀めっきされたリード電極付きポリフタルアミド製ハウジング材に、ダイボンド材によって主発光ピークが460nmの発光素子が実装されており、発光素子とリード電極とが金ワイヤーで接続されている構造において、得られた光半導体装置用封止剤を注入し、150℃で2時間加熱して硬化させ、光半導体装置を作製した。
【0258】
(光半導体装置用封止剤の硬化物の表面の粘着性(べたつき)の評価)
得られた光半導体装置を、23℃及び50RH%の雰囲気下で24時間放置した。24時間放置した後直ちに、光半導体装置用封止剤の硬化物の表面の粘着性(べたつき)を、硬化物に指を接触させて確認した。指を接触させた場合に粘着性(べたつき)をほとんど感じない場合には、粘着性なしとして「○」と評価し、指の表面が粘着性(べたつき)を感じた場合には、粘着性ありとして「×」と評価した。
【0259】
結果を下記の表1に示す。
【0260】
【表1】

【符号の説明】
【0261】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体素子
4…封止剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化反応可能なオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒とを含む光半導体装置用組成物に用いられるオルガノポリシロキサンの製造方法であって、
珪素原子の数が10を超える高重合度オルガノポリシロキサンと珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンとを含有するオルガノポリシロキサン成分と、プロトン性有機溶剤とが混合された混合液を得る工程と、
第2の層よりも前記高重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第1の層と、該第1の層よりも前記低重合度オルガノポリシロキサンを多く含む第2の層とに、前記混合液を分液させた後、前記第1の層を分離し、該第1の層に含まれているオルガノポリシロキサンを得る工程とを備え、
得られる前記オルガノポリシロキサンが、下記式(1)で表され、かつアルケニル基及び珪素原子に結合したメチル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、下記式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したメチル基を有する第2のオルガノポリシロキサンとの内の少なくとも一方である、オルガノポリシロキサンの製造方法。
【化1】

前記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.30、b/(a+b+c)=0.70〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.10を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、アルケニル基及びメチル基以外のR1〜R6は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【化2】

前記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0〜0.30、q/(p+q+r)=0.70〜1.0及びr/(p+q+r)=0〜0.10を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、水素原子及びメチル基以外のR51〜R56は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【請求項2】
前記高重合度オルガノポリシロキサンが、前記プロトン性有機溶剤と相溶性を有さない、請求項1に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項3】
前記プロトン性有機溶剤が、炭素数1〜4のアルコール溶剤である、請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項4】
前記珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンを含まないか、又は得られる前記オルガノポリシロキサンの全体100重量%中、前記珪素原子の数が10以下である低重合度オルガノポリシロキサンを5重量%未満で含む前記オルガノポリシロキサンを得る、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
下記式(1)で表され、かつアルケニル基及び珪素原子に結合したメチル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、
下記式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したメチル基を有する第2のオルガノポリシロキサンと、
ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、
前記第1のオルガノポリシロキサン及び前記第2のオルガノポリシロキサンの双方が、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法により得られたオルガノポリシロキサンである、光半導体装置用組成物。
【化3】

前記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.30、b/(a+b+c)=0.70〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.10を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、アルケニル基及びメチル基以外のR1〜R6は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【化4】

前記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0〜0.30、q/(p+q+r)=0.70〜1.0及びr/(p+q+r)=0〜0.10を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がメチル基を表し、水素原子及びメチル基以外のR51〜R56は、炭素数2〜8の炭化水素基を表す。
【請求項6】
光半導体装置用封止剤である、請求項5に記載の光半導体装置用組成物。
【請求項7】
光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた封止剤層とを備え、
前記封止剤層が、請求項6に記載の光半導体装置用組成物をヒドロシリル化反応させることにより形成されている、光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197328(P2012−197328A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60545(P2011−60545)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】