説明

カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用および組成物

本発明は、ヒトを含む哺乳類の各種疾患治療/予防、健康改善、運動能力改善、皮膚健康状態の改善、アルコール飲料による副作用の防止等に有用である、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用および組成物を提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、カルノシナーゼ阻害剤およびL−カルノシン類との併用およびそのための組成物に関する。本発明に係るカルノシナーゼ阻害剤およびL−カルノシン類との併用および組成物は医薬品、化粧品、食品、飲料品の分野で有用である。
【背景技術】
フリーラジカル及びそれによって引き起こされる過酸化の過程は、ヒトおよび他の哺乳動物組織の構造および機能が加齢と共に低下する原因の一つと考えられている。老化およびそれに関連する病状の発症を予防する、またはできるだけ少なくするためには、すなわち長寿のためには、種々の体組織及び細胞内あるいは血漿および血流を含む体液において、天然抗酸化剤(フリーラジカル捕捉剤)を高濃度に維持して、該抗酸化剤分子を器官、組織および細胞に供給することが重要である。
L−カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン)(I)は、脊椎動物の骨格筋の非蛋白画分(例えば、非特許文献1、2)、嗅覚上皮および嗅覚球のような他組織(例えば、非特許文献3)および水晶体(例えば、非特許文献4)に存在し、最も豊富(1−20mM)な窒素系化合物の一つであることが分かっている。
いくつかの他のL−カルノシン関連天然物、例えば、N−アセチル−L−カルノシン、L−アンセリン(β−アラニル−L−3−メチルヒスチジン)及びそのN−アセチル誘導体、L−バレニン(β−アラニル−L−1−メチルヒスチジン)、L−ホモカルノシン(γ−アミノブチリル−L−ヒスチジン)及びそのN−アセチル誘導体、カルシニン(β−アラニルヒスタミン)(例えば、非特許文献5、6、7)などは、その分布、活性および代謝性変換に興味ある違いがあるけれども(例えば、非特許文献8)、数種の哺乳動物の骨格筋、心臓、および脳などの組織にミリモル濃度で存在していることが報告されている(例えば、非特許文献9)。
上記したL−カルノシン及びその関連天然物質は、最も重要な天然抗酸化剤として、細胞膜あるいは生体膜の脂質層及び水性環境において、脂質及び蛋白質(酵素を含む)、DNA及びその他の必須高分子などの水溶性分子が、活性酸素種および脂質過酸化物により損傷を受けるのを保護する作用を有することが知られている(例えば、非特許文献9,10,11,12)。
SOD(スーパーオキサイドジスムターゼ)あるいはカタラーゼなどの種々の抗酸化酵素は、水性環境下のみでその基質と反応する。一方、先に公表されたデータによれば、L−カルノシン及びその関連天然物質が優れた潜在力を有し、水酸基ラジカル、スーパーオキサイド及び一重項酸素を捕捉し、脂質の過酸化を抑制する作用を有することを示している(例えば、非特許文献13,14)。

L−カルノシン類の生理学的な性質について以下に更に詳細に説明する。
1)L−カルノシン及びその天然に存在する関連化合物は、市販されている細胞及び組織由来のSODのような抗酸化酵素及びグルタチオンやセルロプラスミンのような抗酸化システムを不活性化から保護している。水溶性のL−カルノシンは、肝臓ミクロソームにおいて脂質過酸化の際、脂質可溶性のα−トコフェロールの抗酸化作用を増強させる。それ故、L−カルノシンは肝臓チトクロームP−450の系の主要な保護物質である。L−カルノシンは細胞染色体を酸化による障害から明らかに保護することが知られている唯一の抗酸化剤である。こうした抗酸化効果は、動脈硬化、虚血性疾患(例えば脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳卒中、狭心症、心筋梗塞など)、白内障の発症と進行、及び筋肉及び皮膚の老化の予防に有用であると考えられている。また、L−カルノシンは脳の神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、てんかんなど)を改善することも知られている。最近、L−カルノシン、グルタチオン、スパーオキサイドジスムターゼ(SOD)のような抗酸化系における機能不全は、後シナプスのグルタミン酸受容体(NMDAおよびAMPA)の過剰刺激を齎し、精神分裂病、パーキンソン氏病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症などの発症及び進行に繋がると推測されている(例えば、非特許文献15)。L−カルノシンの補填は、こうした疾患の予防及び治療に有用な方法と考えられる。
2)L−カルノシンはこれまでに発見された最も優れた抗グリケーション剤であって、所謂メイラード反応、すなわち蛋白質の直接的グリケーション及び蛋白質の架橋といったアドバンスドグリケーション反応を阻害することが知られている。そのため、L−カルノシンは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症のみならず、脈管系組織の老化(例えば動脈硬化症、網膜症など)、皮膚の老化(例えばしわ)あるいは水晶体の老化(例えば白内障)などの種々の組織の老化を防止することが期待できる。極く最近、発癌性および毒性物質であるアクリルアミドが、調理中にメイラード反応により種々の食品の中に形成されることが報告されている(例えば、非特許文献16,17)。L−カルノシンを調理前の食品あるいは食料に添加することは、そのようなアクリルアミドの生成を抑制する有力な手段となると考えられる。
3)L−カルノシンは膜安定化および組織修復効果を有しており、胃腸管の潰瘍性疾患(例えば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍)あるいは皮膚の潰瘍性疾患の予防及び治療に効果的である。また、傷や火傷の治療にも効果がある。
4)L−カルノシンおよびその関連天然物は、脳のみならず心臓に対して抗虚血効果を有している。L−カルノシンは、心臓細胞のカルシウム応答を高めることにより、心臓の収縮力を増大させることが判明している。L−カルノシン注射は、虚血性発作の緊急治療に効果的であることが証明されている。
5)激しい運動による乳酸の蓄積と連動して大量のHが生成されるとき、L−カルノシンは筋肉中の酸−塩基バランスを調節する重要な役割を果たしている。従って、L−カルノシンは運動実行能力の改善に繋がる筋肉疲労の防止という役割を果たしている。L−カルノシンは、筋肉細胞膜が筋肉運動の酸性条件下、酸化されるのを防止している。最近の報告によると、筋肉中のL−カルノシン濃度は、平均体力と大いに相関している(例えば、非特許文献18)。L−カルノシンは運動による疲労回復を劇的に改善することが証明されている(しかしながら、運動能力の増大、即ち、動作性の助長を意味するのではなく、むしろ運動に対する同化応答を容易ならしめるものである)。カルノシンは疲労後の筋肉収縮能力を迅速に回復させることが証明されている。
6)最近、L−カルノシンが一酸化窒素合成酵素(NOS)の本当の基質のようであると言われている。L−カルノシンの補給は、内因性の血管緊張緩和物質である一酸化窒素(NO)の合成を刺激して、血圧を下げたり、狭心症のような虚血性疾患を予防したり、ペニスの勃起不全を改良したりすることが期待されている。
7)L−カルノシンは、アルコール飲料(例えばウイスキー、コニャック、ウオッカ、ビール、酒、ワインなど)を消費したときのエタノール代謝の主要産物であるアセトアルデヒドの捕捉剤として有効である(例えば、非特許文献19)。従って、L−カルノシンは肝臓、脳あるいは筋肉をアセトアルデヒドの毒性から保護している。L−カルノシンは、傷を治癒させる性質があるため、アルコール消費によって憎悪する胃腸管潰瘍の治療および予防に、これまた有効である。
8)慢性のアルコール性骨格筋障害は、II型繊維の選択的萎縮に特徴があり、全アルコール濫用者の2/3までが影響を受けている。L−カルノシンは、繊維の萎縮を予防する。すなわちL−カルノシンは脂質過酸化のみならず過度のアルコール摂取によって起こる障害からも脳を保護している。
9)L−カルノシンは、免疫賦活作用を有し、ハイドロコーチゾン、抗腫瘍剤あるいはその他の多くの免疫抑制剤による免疫抑制から免疫系を保護している。
10)健康と若さを保つためにL−カルノシンは次のような利点を有している。L−カルノシンおよびその関連化合物は、細胞分裂回数(ヘイフリックの限界)を増やし、生存期間の延長あるいは長寿に有用かも知れない(例えば、非特許文献20)。L−カルノシンは、結合組織細胞の若返り効果および傷の治療効果を有している。老化に近づきつつある細胞の若返りは、若さを象徴するような頻度で細胞分裂を継続させ、細胞の寿命を延長することにより達成されることが報告されている。L−カルノシンを補給した組織培養において、細胞は若い外観を保ち、その生存期間が延長した。このL−カルノシンが有する細胞生存期間を増大させるという能力は、老化細胞に対しても当てはまる。ある実験ではL−カルノシン補給により細胞の生存期間が67%延長され、こうした性質はマウスを使用してin vivoで証明された。L−カルノシンを補給されたマウスは、コントロールのマウスに比べ期間にして平均20%長く生存し、年を取ってもコントロールのマウスよりも2倍以上健康な状態を保っていた。ヒトにおいては、L−カルノシン血中濃度は加齢と共に下がり、筋肉中のL−カルノシン濃度は、10歳から70歳までの間に63%減少する。
一方、外因性のカルノシンは、代表的な例として眼に局所投与した場合でも、尿中に容易に排泄されるかまたはカルノシナーゼと呼ばれる酵素で分解されるので、組織には蓄積されない。このカルノシナーゼは、血漿、前方眼房の房水、肝臓、腎臓あるいは他の組織中に存在し、筋肉中には存在しないが(例えば、非特許文献21、22)、水晶体には存在している(例えば、非特許文献23、24)。N−アセチル−L−カルノシン、L−アンセリン、N−アセチル−L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、N−アセチル−L−ホモカルノシンまたはカルシニンなどのL−カルノシン関連天然物質は、加水分解速度がL−カルノシンよりも遅いけれども、多かれ少なかれカルノシナーゼにより加水分解または不活化される基質となり得る(例えば、非特許文献25)。
上述したように、老化あるいは栄養失調などで体の中にL−カルノシンおよび/またはその関連天然物質が不足すると、ヒトおよびその他の哺乳動物において、体の様々な機能不全が起きる。L−カルノシンまたはその関連天然物質の補給は、それ故、こうした機能不全あるいはそれから派生する疾患の治療または予防に有用であると考えられる。また、L−カルノシンおよび/またはその関連天然物質を過剰に補給することにより、こうした疾患の治療、運動能力の改善、老化の防止、皮膚の治療、生活の質(QOL)の向上などに意義があるものと考えられる。L−カルノシンは栄養補助食品として、あるいは化粧品として数ケ国においてすでに使用されているけれども、上述したようにL−カルノシンはいわゆるカルノシナーゼという酵素(血清型および組織型の二形態がある)により容易に加水分解されてβ−アラニンおよびL−ヒスチジンになり、L−カルノシンの生理的活性を完全に失うので、これらの製品は非常に有効であるとは考えられない。カルノシナーゼはヒトおよびその他の哺乳動物の小腸の内腔、血漿およびその他の組織中に広く分布しているので、経口的、非経口的あるいは局所的な投与方法に関係なく、上記した目的、即ち疾患の治療、運動能力の改善、老化の防止、皮膚の手入れ(スキンケア)、QOLの改善などを達成するためには、大過剰のL−カルノシンを投与して該酵素を飽和させ、投与したL−カルノシンが完全に加水分解されるのを防止することが推奨されている。しかしながら、大過剰のL−カルノシンによる治療は、実際的また経済的な見地からのみならず、特に組織および血漿中におけるヒスタミン放出の危険性による安全性の見地から避けるべきである。なぜなら大過剰のL−カルノシンが投与されたときには、カルノシナーゼにより体の中に過剰のヒスチジンが放出され、それは別のヒスチジン脱炭酸酵素によって過剰のヒスタミンに変換される。従って、L−カルノシンまたはその関連天然物質を分解することなく目標器官へ効果的に送達させる別の安全な方法が長い間待ち望まれていた。
一方、加水分解あるいは不活化を起こすことなく、L−カルノシン類(その関連天然物質を含む)を血漿または標的器官または別の器官への送達を増大させる目的でカルノシナーゼ阻害剤を使用することに関する文献は、これまで全く知られていなかった。ベスタチンが強力な組織カルノシナーゼ阻害剤(例えば、非特許文献26)であること、および内因性組織L−カルノシンの蓄積はベスタチン処理により増大することは公知である。しかしながら、L−カルノシンとベスタチンとをin vivoで同時に投与したとき、ベスタチンがL−カルノシンの標的器官への効果的な送達を支援することができるかどうかについては、これまで全く知られていなかった。
【非特許文献1】K.G.Crush,Comp.Biochem.Physiol.,Vol.34,3,1970
【非特許文献2】A.A.Boldyrev,S.E.Severin,Adv.Enzyme Regul.,Vol.30,175,1990
【非特許文献3】F.Margolis,Science,Vol.184,909,1974
【非特許文献4】Jay et al.,Meeting Abstr.J.Physiol.London,Vol.420,155,1990
【非特許文献5】P.R.Carnegie et al.,J.Chromatogr.,Vol.261,153,1983
【非特許文献6】L.Flancbaum et al.,Life Sci.,Vol.47,1587,1990
【非特許文献7】M.A.Babizhayev et al.,Biochemistry(Moscow),Vol.63,620,1998
【非特許文献8】M.A.Babizhayev et al.,Biochem.J.,Vol.304,509,1994
【非特許文献9】M.A.Babizhayev et al.,Biochem.J.,Vol.304,509,1994
【非特許文献10】M.A.Babizhayev et al.,Biochemistry(Moscow),Vol.63,523,1998
【非特許文献11】M.A.Babizhayev et al.,Clinica Chimica Acta,Vol.254,1,1996
【非特許文献12】J.H.Kang et al.,Molecules and Cells,Vol.13,107,2002
【非特許文献13】M.A.Babizhayev et al.,Biochem.J.,Vol.304,509,1994
【非特許文献14】T.A.Dahl,W.R.Midden,P.E.Hartman,Photochem.Photobiol.,Vol.47,357,1988
【非特許文献15】Encephale,Vol.28(2),147,2002
【非特許文献16】D.S.Mottram,et al,Nature,Vol.419,448,2002
【非特許文献17】R.H.Stadler,et al.,Nature,Vol.419,449,2002
【非特許文献18】Y.Suzuki et al.,Japan.J of Physiol.,Vol.64,199,2002
【非特許文献19】Ann.NY.Acad.Sci.,Vol.854,37 1998
【非特許文献20】R.Holliday,G.A.McFarland.,Biochemistry(Moscow),Vol.65,843,2000)
【非特許文献21】Jackson et al.,Clin.Chim.Acta,Vol.196,193,1991
【非特許文献22】Lenney et al.,Biochem.J.,Vol.228,653,1985
【非特許文献23】A.A.Boldyrev,A.Y.Dupin,M.A.Babizhayev,S.E.Severin,Biochem.Int.,Vol.15,1105,1987
【非特許文献24】J.L.Jay et al.,Meeting Abstr.J.Physiol.Lond.,Vol.420,155,1990
【非特許文献25】A.Pegova et al.,Comp.Biochem.Physiol.B.Biochem.Mol.Biol.,Vol.127(4),443,2000
【非特許文献26】S.C.Peppers,J.F.Lenney,Biol.Chem.Hoppe Seyler,Vol.369,1281,1988
【発明の開示】
本発明はカルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用および組成物に関し、カルノシン関連疾患の治療または予防、健康改善、運動能力改善、老化防止、皮膚健康状態の改善およびアルコール飲料による副作用の予防に有用である。
本発明者らは、L−カルノシン類とカルノシナーゼ阻害剤を併用することにより、哺乳類のカルノシン関連疾患の治療または予防に有用であることを見い出し、本発明を完成した。また、そのような併用あるいは組成物は、哺乳類の健康改善、運動能力改善、老化防止、皮膚健康状態の改善、アルコール飲料による副作用の防止などにも有用であることを見出した。
本発明によれば、カルノシナーゼ阻害剤をL−カルノシン類の投与と同様の経路で、同時に投与したとき、経口的、非経口的あるいは局所的に投与(皮膚、眼、口腔粘膜、鼻粘膜、呼吸器官)されたL−カルノシン類は、血漿または標的器官へ非常に高い生物学的利用率を持って効果的に送達される。各化合物の如何なる投与経路の組み合わせ、併用が可能である。そうした併用により、適用するL−カルノシン類の投与量を減らすことができ、L−カルノシンの生理的効果を著しく高めることができる。さらに、これらL−カルノシン類あるいはカルノシナーゼ阻害剤の吸収を上げるために、これらの製剤中にセルロース誘導体、ゼラチンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種を混合することが有用であることを見出した。本発明はこのような新規かつ効果的な方法に関するものである。
さらに、本発明はL−カルノシンと共に組織カルノシナーゼ阻害剤ベスタチンを投与することを特徴とする癌の新規化学療法に関する。ベスタチン自身は抗癌作用を有することは知られているが、本発明者等はL−カルノシンとの同時投与により、抗癌作用がより改善されることを見出した。これは、L−カルノシン濃度を癌細胞中で増加させることにより、正常細胞に影響を与えることなく悪性癌細胞の分裂を阻止するという、これまで知られていなかった予想外の知見である。本発明者のデータによれば、正確な分子レベルでのL−カルノシンの抗癌作用の根拠は、悪性癌細胞におけるL−カルノシンのフェロキシダーゼ活性と関連づけられる。それによると、悪性癌細胞中の鉄イオン濃度の遮断が起きて、アポトーシス、すなわち悪性癌細胞の急速な死を誘導しているのである。
本発明者らは、カルノシナーゼ阻害剤について精力的な研究を続けた結果、下記式で表されるβ−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、およびN−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)が安全かつ安価であって、L−カルノシン類との併用において実用的なカルノシナーゼ阻害剤であることを知見した。
また、下記式で表されるベスタチン(V)またはそのエステル誘導体は、癌の化学療法のみならず、本発明の目的達成のために有用なカルノシナーゼ阻害剤であることが知見された。


(式中、RおよびRは独立して水素原子または低級アルキル基を表す。)

(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表し、Rは炭素数2以上のアルキル基を表す。)

(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表す。)
すなわち、本発明は、
(1)ヒトおよびその他の哺乳類のカルノシン関連疾患の治療または予防をするための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用、
(2)ヒトおよびその他の哺乳類の健康状態を改善するための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用、
(3)化粧品またはスキンケア製品としてヒトおよびその他の皮膚の健康状態を改善するための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用、
(4)アルコール飲料による副作用を予防するための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用、
(5)前記カルノシナーゼ阻害剤が、下記式で表されるβ−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)およびベスタチン類(V)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかにに記載の併用、

(式中、RおよびRは独立して水素原子または低級アルキル基を表す。)

(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表し、Rは炭素数2以上のアルキル基を表す。)

(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表す。)
(6)カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類とを、ヒトまたはその他の哺乳動物の血漿または組織中での生理学的に有効な濃度を維持するように投与することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の併用、
(7)前記L−カルノシン類が、L−カルノシン、N−アセチル−L−カルノシン、L−アンセリン、N−アセチル−L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、N−アセチル−L−ホモカルノシンまたはカルシニンであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の併用、
(8)前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする上記(5)に記載の併用、
(9)前記N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)が、低級アルキル基でエステル化されていてもよいN−アセチル−β−アラニンであることを特徴とする上記(5)に記載の併用、
(10)前記カルノシナーゼ阻害剤が、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の併用、
(11)β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤を使用することを特徴とする血漿および細胞中のL−カルノシン類の濃度を増大させる方法、
(12)前記L−カルノシン類が、L−カルノシン、N−アセチル−L−カルノシン、N−アセチル−L−アンセリン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、N−アセチル−L−ホモカルノシンまたはカルシニンであることを特徴とする上記(11)に記載の方法、
(13)前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする上記(11)に記載の方法、
(14)L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とする医薬組成物、
(15)L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とする健康食品組成物または栄養補助食品組成物、
(16)前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする上記(15)に記載の健康食品組成物または栄養補助食品組成物、
(17)L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とする化粧品組成物またはスキンケア組成物、
(18)L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とするアルコール性飲料組成物、
(19)L−カルノシン類および/またはカルノシナーゼ阻害剤の吸収を上げるために、さらにセルロース誘導体、ゼラチンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種を更に含むことを特徴とする上記(14)〜(17)のいずれかに記載の組成物、
(20)前記L−カルノシン類が、L−カルノシン、N−アセチル−L−カルノシン、L−アンセリン、N−アセチル−L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、N−アセチル−L−ホモカルノシンまたはカルシニンであることを特徴とする上記(14)〜(18)のいずれかに記載の組成物、
(21)前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする上記(14)〜(18)に記載の組成物、
(22)L−カルノシン類とベスタチン類(V)との併用により癌患者を治療することを特徴とする癌の化学療法、
に関する。
上記式(III)および(IV)において、RおよびRは独立して水素原子または直鎖状または分岐状の低級アルキル基を、好ましくは炭素数1〜6のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基等を表す。上記(IV)式において、Rは炭素数2以上の、好ましくは炭素数2〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、すなわちエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などが例示される。
好ましいN−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)としては、N−ホルミル−β−アラニン、N−アセチル−β−アラニン、N−プロピオニル−β−アラニン、N−ブチリル−β−アラニン、N−(2−メチルプロピオニル)−β−アラニン、N−ペンタノイル−β−アラニン、N−ヘキサノイル−β−アラニン、N−ヘプタノイル−β−アラニン、およびそれらのエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルなどの炭素数1〜6の低級アルキルエステル)が例示される。中でもN−アセチル−β−アラニンが最も好ましい。上記N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)は、公知化合物であるか、公知のアシル化剤あるいはエステル化剤を使用するそれ自体公知の方法でβ−アラニン(II)から製造することができる。
好ましいN−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)としては、N−プロピオニル−L−カルノシン、N−(2−メチルプロピオニル)−L−カルノシン、N−ブチリル−L−カルノシン、N−(2−メチルプロピオニル)−L−カルノシン、N−ペンタノイル−L−カルノシン、N−ヘキサノイル−L−カルノシン、N−ヘプタノイル−L−カルノシンおよびそれらのエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルなどの炭素数1〜6の低級アルキルエステル)などが例示される。上記N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)は、公知化合物であるか、公知のアシル化剤あるいはエステル化剤を使用するそれ自体公知の方法でL−カルノシン(I)から製造することができる。
上記式(V)で表されるベスタチン類としては、ベスタチンおよびそのエステルが例示される。エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル等の炭素数1〜6の低級アルキルエステルが挙げられる。これらのベスタチンのエステルは、公知化合物であるか、公知のエステル化剤を使用してそれ自体公知の方法でベスタチンから製造することができる。
上記カルノシナーゼ阻害剤(II、III、IV、V)の他に、以下に記載する化合物なども本発明の目的達成のために使用できる。そのような化合物としては、α−アミノ酸およびそれらの誘導体(例えば、L−アラニン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、N−アセチル−L−システイン、N−アミノアシル−L−ヒスチジン(例えばGly−L−His、L−Ala−L−His、L−Val−L−His、L−Leu−L−His、L−Ileu−L−His、L−Met−L−Hisなど)、N−ヒドロキシ−α−アミノ酸;γ−アミノ酸誘導体(例えばγ−アミノブチリルヒスタミン);チオール型還元剤(例えば、ユニチオール、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール);マンガンイオン;亜鉛イオン;プロリナーゼ基質(例えば、L−Pro−L−HisなどのL−プロリン含有ペプチドおよびその誘導体);金属キレート化剤(例えばEDTA);1,10−フェナンスロリン;およびマロン酸ブチルなどが挙げられる。
さらに、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン類、例えばビタミンA,ビタミンEなどをカルノシナーゼ阻害剤として使用することができる。
本発明併用に係る一方の有効成分であるL−カルノシン類としてはL−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニンまたはそれらのアシル誘導体(例えばN−アセチル−L−カルノシン、N−アセチル−L−アンセリン、N−アセチル−L−ホモカルノシン)を例示することができる。当該アシル誘導体は、公知のアシル化剤を使用してそれ自体公知の方法で製造することができる。
L−カルノシンはヒトの体の中で主要なβ−アラニン源であるので、その加水分解は代謝上、重要である。ヒトにおいてこの加水分解反応は二つのアイソザイム、即ち、組織(細胞質)カルノシナーゼおよび血清カルノシナーゼによって触媒される。この細胞質酵素は、亜鉛依存性のメタロプロテインであり、興味深いことにそれは他の二価金属カチオンによって安定化されている。従って、酵素中の亜鉛(II)が他の二価金属カチオンと置換されると、in vitroでの酵素活性が維持されたり、増大したりする。これら二価金属カチオンの見かけの活性効果の順序は、Cd(II)>Mn(II)>>Zn(II)>Co(II)である。一方、Mn(II)によって活性化された酵素は、本来活性化剤として機能するカチオン(例えばZn(II)、Co(II))によって阻害され、Be(II)およびFe(II)のような活性化をしないイオンによっても阻害される。Cu(II)は基質の銅複合体の安定性により該酵素を阻害しない。従って、栄養目的のためには、経口によるL−カルノシンとZn(II)またはMn(II)との併用が、L−カルノシン類が組織または血清カルノシナーゼによって加水分解されるのを防止する最も容易な方法となろう。投与量は使用目的によって適宜変わりうるけれども、約5mgのZn(II)またはMn(II)と混合したL−カルノシンまたは他の関連天然誘導体(例えばアンセリンやバレニン)の一日当たり約400mgの経口投与量が、一般に成人に対して推奨される。さらに、ビタミンE(40−100IU)をL−カルノシンの生物学的利用能を高めるために、前記の経口用製剤に添加することができる。
血清カルノシナーゼの特異的な特徴には注目すべきである。該酵素は高等霊長類(ヒトおよび大型の猿)にだけ存在し、殆どの他の哺乳動物には存在しない(参照:M.C.Jackson et al.,Clin.Chim.Acta,Vol.196,193,1991)。そのため、L−カルノシン類とカルノシナーゼ阻害剤とを馬、犬などに併用する目的は、これらの種における組織カルノシナーゼを阻害することにより、組織におけるL−カルノシン類の生物学的利用能を増大させることにある。
前記カルノシナーゼ阻害剤II、III、IV、Vまたは他の化合物は、L−カルノシン類と同時に、あるいはL−カルノシン類を投与する直前あるいは直後に投与することができる。また、これらの化合物を組み合わせた組成物として投与することもできる。
カルノシナーゼ阻害剤およびL−カルノシン類あるいはそれらを含む組成物は、使用目的に応じて、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、注射剤、点滴、トローチ剤、液剤、軟膏、パップ剤、ローション、クリーム、噴霧剤、点鼻スプレイ、点鼻液、点眼剤、座剤等の適当な剤型で投与することができる。これらの製剤は、適宜、選択された添加剤および希釈剤を加えることによりそれ自体公知の方法に従って製造することができる。
経口投与に適する液体製剤の製造には、例えば、水、ショ糖、ソルビット、果糖などの糖類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類;p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤などの製剤用添加物を用いることができる。
また、カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などの固形製剤の製造には、例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニットなどの賦形剤;澱粉、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤;ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤;脂肪酸エステルなどの界面活性剤;グリセリンなどの可塑剤を用いることができる。
非経口投与に適する製剤のうち注射剤や点滴剤などの血管内投与用製剤は、好ましくは体液と等張の水性媒体を用いて調製することができる。例えば、注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩溶液とブドウ糖溶液の混合物から選ばれる水性媒体を用い、常法に従って適当な助剤とともに溶液、懸濁液または分散液として調製することができる。
また、点眼剤は、滅菌精製水や生理食塩水などの水溶性溶剤、または植物油などの非水溶性溶剤を用いて調製することができる。
腸内投与のための坐剤は、例えばカカオ脂、水素化脂肪または水素化カルボン酸などの担体を用いて調製することができる。
噴霧剤は、口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ有効成分である本発明に係る化合物を微細な粒子として分散させて吸収を促進することのできる担体を用いて調製することができる。このような担体として、例えば、乳糖またはグリセリンなどを用いることができる。本発明に係る化合物の性質などにより、エアロゾルやドライパウダーなどの形態の製剤として調製することができる。
非経口用の製剤の製造には、例えば、希釈剤、香料、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1または2以上の製剤用添加物を用いることができる。
本発明に係る医薬は、上記化合物を適当な基材と混合して軟膏剤とすることもできる。基材としては、例えば、ワセリン、流動パラフィン、シリコン、植物油などの油脂性基材;例えば、親水ワセリン、精製ラノリンなどの乳剤性基剤;例えば、マクロゴールなどの水溶性基材などが挙げられる。また、上記軟膏剤には、陰イオン型もしくは非イオン型界面活性剤などの乳化剤やパラオキシ安息香酸エステル類などの保存剤が含有されていてもよい。
また、本発明に係る医薬は、軟膏剤の他にも、例えば、パッチ剤、パップ剤、クリーム剤、硬膏剤、テープ剤、ローション剤、液剤、懸濁剤、乳剤、噴霧剤などの経皮投与製剤とすることもできる。
なお、本発明に係る上記各種形態の組成物は、L−カルノシン類及びカルノシナーゼ阻害剤の吸収を上げるために、セルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルセルロース)、ゼラチン及びポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種を含んでいるのが好ましい。
また、本発明の医薬の形態およびその製造方法は、上記に具体的に説明したものに限定されることはない。
L−カルノシン類およびカルノシナーゼ阻害剤は、アルコール含有飲料(例えばウイスキー、コニャック、ウオッカ、ビール、酒、ワインなど)に添加することができ、アルコール類飲料者が腸管、肝臓、筋肉、脳などの種々の障害を受けることから保護することができる。
L−カルノシン類の一日当たりの投与量は、その使用目的、投与方法により変わるが、その経口投与量は一般に約0.1〜200mg/kg,好ましくは約0.5〜100mg/kg,さらに好ましくは1〜50mg/kgの範囲である。投与量は必要ならば一日当たり、数回に分けて投与することができる。注射用または点滴用の投与量は、経口投与量の通常1/5〜1/20である。外用製剤の場合、L−カルノシン類は約0.1〜20%(w/w)、好ましくは約0.5〜10%(w/w)、より好ましくは約1〜5%(w/w)製剤中に含まれている。同時に使用するカルノシナーゼ阻害剤の量は、L−カルノシン1モル当たり、約0.1〜20モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、より好ましくは約1〜5モル当量である。L−カルノシン類およびカルノシナーゼ阻害剤のヒト以外の哺乳動物に対する投与量は上記したヒトの場合における投与量と同様である。
本発明に従えば、ヒトおよびその他の哺乳動物に投与したL−カルノシン類は、カルノシナーゼによる分解を受けることなく、血漿、標的器官あるいはその他の器官に効果的に送達させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下の実施例は本発明の技術的範囲を具体的に説明する。
実施例1 カルノシナーゼ阻害剤の存在下または非存在下における組織カルノシナーゼによるL−カルノシンおよび関連物質の加水分解
試料および方法:
部分的に精製した組織カルノシナーゼの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)は、雄無毛ラットの脳の粗抽出液から公知の方法で調製した(参照:Y.Courbebaisse,G.Langrand,J−F.Nicolay and M.A.Babizhayev,Proceeding of 19th IFSCC Congress,Australia,Vol.3,1996,p.1−12;M.A.Babizhayev et al.,Letters in Peptide Science,Vol.5,163,1998)。基質(450μl)の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を希釈した酵素溶液(50μl)と共にカルノシナーゼ阻害剤の存在下または非存在下に、37℃で120分間インキュベーションした。反応液の一部を0、2、3、4、5、10、20、40、60分後に取り出し、ダンシルクロライド(5mg/lのダンシルクロライド−アセトニトリル溶液)で50℃、15分間ダンシル化した。各溶液を、カラムC18DBを用いたグラジエント法(A=0.02N酢酸/アセトニトリル、90/10;B=アセトニトリル)によるHPLC分析に付した。ペプチド加水分解速度は、ダンシル化された基質の血中濃度時間曲線下面積(AUC)の減少を測定することにより求めた。
結果:
加水分解の速度は以下のとおりである。
L−カルノシン(0.3mM):78×10−6モル/分(ブランクテスト)
L−カルノシン(0.3mM)+β−アラニン(0.5mM):54×10−6モル/分
L−カルノシン(0.08mM):34×10−6モル/分(ブランクテスト)
L−カルノシン(0.08mM)+L−カルノシン(0.3mM):78×10−6モル/分(ブランクテスト)
L−カルノシン(0.08mM)+β−アラニン(0.5mM):5×10−6モル/分
L−カルノシン(0.08mM)+Gly−L−His(0.5mM):6×10−6モル/分
L−カルノシン(0.08mM)+γ−アミノブチリルヒスタミン(0.5mM):4.5×10−6モル/分
L−カルノシン(0.08mM)+L−Pro−L−His(0.5mM):9×10−6モル/分
L−カルノシン(0.08mM)+N−アセチル−β−アラニン(0.5mM):3×10−6モル/分
N−アセチル−L−カルノシン(0.08mM):1×10−6モル/分(ブランクテスト)
N−アセチル−L−カルノシン(0.08mM)+N−アセチル−β−アラニン(0.5mM):0.35×10−6モル/分
L−カルノシン(0.08mM)+ベスタチン(0.5mM):2×10−6モル/分
結論:
上記結果から分かるように、L−カルノシンまたはその関連物質は組織カルノシナーゼ阻害剤の存在下ではよりゆっくりと代謝(加水分解)されたと考えられる。この実験結果は、L−カルノシンまたはその関連物質を請求の範囲に記載された阻害剤と組み合わせてin vivoで投与した場合にも、組織カルノシナーゼ活性が阻害され、少なくともこれら天然ヒスチジン含有ジペプチドの細胞内代謝の遅延と蓄積を引き起こすことを示唆している。
実施例2 馬におけるL−カルノシンとβ−アラニンの併用
5頭のサラブレッドに、一日3回、β−アラニン(100mg/kg)およびL−カルノシン(80mg/kg)を25日間給餌した。別の実験では、別の5頭のサラブレッドにL−カルノシン(80mg/kg)を25日間同様に給餌した。6.2cmの深さで中殿筋の経皮的生検を給餌期間の直前および直後に実施した。給餌の最初の日と最後の日に1時間毎に、および5日毎の給餌後2.5時間に、ヘパリン化した血液サンプルを集めた。個々の筋肉サンプルは、凍結乾燥生検材料を切開し、重量を測り、特性を調べた。血漿および筋肉中のβ−アラニンおよびL−カルノシンの濃度は、公知の方法(参照:J.J.O’Dowd et al.,Biochim.Biophys.Acta,Vol.967,241,1988;M.Dunnett and R.C.Harris,J.Chromatography B,Vol.688,47,1997)に従い測定した。β−アラニンおよびL−カルノシンに対する血中濃度時間曲線下面積(AUC)が、吸収された服用量の指標として計算された。筋肉繊維中のカルノシン濃度は、60.5−105.5mmole/kg(L−カルノシンを給餌した馬の凍結乾燥筋肉サンプルの重重[平均値±S.D.(4−6%の平均値に相当)]から88.9−125.5mmole/kg(β−アラニン+L−カルノシンを給餌した馬の凍結乾燥筋肉サンプルの重量)[平均値±S.D.(4−6%の平均値に相当)]に増加した。そのような数値の増加は、各グループにおいて、5頭の内4頭は平均値が、統計学的に有意差(P<0.05)を有していた。筋肉内L−カルノシン濃度の変化は、β−アラニンの生物学的利用能に影響を受けているように思われる。筋肉内L−カルノシン濃度の増加は、β−アラニンの血中濃度時間曲線下面積AUC(r=0.895、P<0.05)における個々の変化と有意な相関関係があった。
考察:
高速走行あるいは長い無酸素状態に適合させた馬の毎日の筋肉活動の増加と筋肉内L−カルノシン濃度の増加とは、相関していることが報告された(参照:M.Dunnett and R.C.Harris,J.Chromatography B,Vol.688,47,1997)。こうした状況下における筋肉収縮は、急激なATPの代謝回転による無酸素解糖に基づくこと、および筋肉内乳酸濃度の大幅な増加と関連することが知られている。乳酸解離によるHの骨格筋内蓄積は、内因性H緩衝物質の非存在下では、細胞内pH値の大きな降下をもたらす。進行性の細胞内アシドーシスは、局所的な筋肉疲労の主要な原因と思われる。イミダゾール含有ジペプチド(pK6.8−7.1)は、生理的なpH値の範囲に渡って重要なH緩衝液のように作用する(参照:R.C.Harris et al.,Comp.Biochem.Physiol.,Vol.97A,249,1990)。従って、筋肉繊維中におけるL−カルノシン濃度が高いほど、高いH許容能、すなわち大きな緩衝作用を持っていることになる(参照:M.Dunnett and R.C.Harris,J.Chromatography B,Vol.688:47,1997)。L−カルノシンとカルノシナーゼ阻害剤であるβ−アラニンとの併用による経口投与は、イミダゾール含有ジペプチド、即ちL−カルノシン濃度を筋肉組織中で増加させるのに適当な方法である。
実施例3 カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシンとの併用による癌細胞におけるアポトーシス誘導
実験計画、実験手法の詳細およびヒト白血球細胞株は関根等により報告されている方法と本質的に同じであった(参考:Sekine et al Int.J.Cancer,Vol.94,485,2001)。カルノシナーゼ阻害剤であるベスタチンは、5−15μg/ml濃度の範囲内で使用し、使用L−カルノシン濃度は5mMから20mMの範囲であった。L−カルノシン(10mM)と組織カルノシナーゼ阻害剤ベスタチン(10μg/ml)とを併用すると、数種のヒト白血球細胞株においてアポトーシスを誘導した。また、ベスタチン+L−カルノシンの併用実験で固形癌細胞株においてもアポトーシスを誘導しうるかどうかを調べた。上記濃度のベスタチン単独では、直接的な癌細胞株の成長阻害を示さず、またアポトーシスの誘導も示さなかった。しかしながら、L−カルノシン+ベスタチン組成物では、有意に成長阻害効果を増大させ、使用した癌細胞株のアポトーシスを誘導した。細胞質組織カルノシナーゼに対する同様の阻害活性を有し、より細胞透過性に優れたベスタチン誘導体であるベスタチンメチルエステルをL−カルノシンと一緒に使用すると、L−カルノシン単独で使用した場合に比べ癌細胞成長がより明らかに阻害された。上記実験においては、10μg/mlのベスタチンと10mMのL−カルノシンとの併用が固形癌細胞および数種のヒト白血球細胞株におけるカスパーゼ3の活性型p17への変化過程と、ミトコンドリアチトクロームCの細胞質への排出を促進した。
考察:これらの結果は、L−カルノシン+カルノシナーゼ阻害剤の細胞内投与が、固形癌および他の細胞株のアポトーシスにおいて重要な役割を果たしていることを示唆している。
実施例4 アルコール飲料へのL−カルノシンおよびカルノシナーゼ阻害剤の添加
L−カルノシンおよびβ−アラニン含有のウオッカ(Extra Vodka Corn)は、それぞれの濃度が70mg/200gになるようにウオッカ中に激しく撹拌しながら加えることによりロシアのプラントCorn & Co.で新しく調製した。ウオッカの味および陶酔感は不変であり、定期的にウオッカを嗜むこの工場の管理者達によって20日間に渡って賞味されたが、頭痛とか肝臓毒性のような副作用は観察されなかった。5人の被験者は、混合ウオッカを毎日200g飲用した。被験者の実験前の測定値と比較して、試験最終日の20日目午前中にウオッカを飲んだ1時間後の尿中アセトアルデヒドまたはマロンアルデヒド濃度は試験開始以前と比較して増加していなかった。
実施例5 L−カルノシンとカルノシナーゼ阻害剤との口腔適用
L−カルノシンとβ−アラニンとを7人の歯肉炎患者に、混合液剤として投与した。L−カルノシンとβ−アラニンの混合剤は、歯肉組織の治癒および完全な止血を促進することが分かり、また歯肉の炎症反応は減少した。カルノシン(5mg/ml)+β−アラニン(7mg/ml)組成物は、歯肉組織における肉芽形成を有意に増加させた。L−カルノシン単独使用による歯肉組織の傷の治療データは、既に報告されている(参照:K.Nagai,Langenbecks Arch.Chir.,Vol,351,39,1980;T.Yamane et al.,J.Nihon Univ.School.Dent.,Vol,19,70,1977)。
実施例6 化粧品組成物における日焼け色素製品としてのL−カルノシンとカルノシナーゼ阻害剤β−アラニンとの混合適用
この組成物は、暗褐色毛髪、金髪および染色した毛髪、あるいは皮膚に対する色素適合を誘導することができる。
L−カルノシンとβ−アラニンとの化粧品組成物を、リン脂質レシチンと加熱して皮膚を小麦色に日焼けさせる色素を生成させた。β−アラニンは溶液それ自体では色がついていないが、チロシンおよびチロシナーゼー酸化型チロシン、ドーパまたはドパミンとの反応で呈色する。
化粧品製剤の調製:(参照:M.A.Babizhayev,Biochim.Biophys.Acta.1004(1989)363−371)。
1%L−カルノシンと2%β−アラニンとの混合物を、逆相蒸発法により調製したレシチン(卵黄ホスファチジルコリン由来)のリポゾーム中に配合した。該リポゾームは、前記化合物を負荷したリン酸緩衝液中、ヘプタンと緩衝液の混合工程および有機溶媒の除去工程からなる2工程を同時に含む若干の変法により、リン脂質の乳化液から調製した。標準的な調製においては、100mgのホスファチジルコリンを丸底フラスコ中で15mlのヘプタンに溶解し、0.1mol/l(あるいはより低濃度)のPBS緩衝液(pH7.4;5ml)を加えた。フラスコを50℃の水浴中に浸し、よくかき混ぜた後、窒素ガスをガラス毛細管からサンプルに導入した。ヘプタンは通常、0.5−1.0ml/minの割合で除去した。混合物の粘度がペースト状にまで上昇したのが観察された。その後、ゲルは比較的速やかに崩壊し、濁った粘り気のないリポゾーム懸濁液が形成され、単純ゲル滴は窒素ガスをさらに導入すると消失した。調製された化粧品組成物中の小胞の流体力学的な平均直径は、27%の多分散性を示す350nmであった。
該組成物を10人の老人の皮膚に一日2回、15日間塗布することにより、加齢に伴う脂褐素様斑点が皮膚から消失し、皮膚の色を小麦色に平滑化させるような色素適合性を示した。斑点は当初、被験者に見られたが、処置により滑らかな小麦色に変化した。青緑域(遠隔オプトファイバープローブを備えた分光蛍光光度計で測定)の皮膚の蛍光は減少し、素敵なかつ水々しい皮膚外観が増加した。励起波長365nmにおける蛍光の励起および放出スペクトルを共にモニターしたところ、脂褐素を伴う色素の蛍光強度は減少した。前記処置を受けた被験者は、前から皮膚上に見られた老人性の脂褐素様斑点が減少したと報告した。L−カルノシンだけを投与した場合には、実験の間、少し色が白くなっただけであった。皮膚から脂褐素様斑点が消失することは、β−アラニンのきれいに着色させる作用と共に、皮膚蛋白の架橋を脱架橋するL−カルノシンの作用に関連づけることができる。
実施例7 自閉症の治療
自閉症の児童に対しては、400mgのL−アンセリンと50−IUのビタミンEおよび5mgの亜鉛とを混合し1日2回、毎日経口投与するのが最も効果的であった。一部の児童では、あまり容量を高くすると脳前頭葉の過剰刺激を引き起こし、過活動型自閉症児によく見られる興奮性、過活動性、不眠などの原因になることがある。
実施例8 脳神経障害の治療
てんかん、中枢性歩行障害、脳損傷など、中枢神経系に障害を持つ児童は1日200〜2000mgのL−カルノシンと40−IU〜150−IUのビタミンEおよび4〜15mgの亜鉛の混合物を毎日経口投与することにより治療することができた。
【実施例9】
以下の製剤がそれ自体公知の方法で製造された。
1.化粧品製剤
水性グリコール液の分析組成:
L−カルノシン 10.000g
β−アラニン 15.000g
1,3−ブタンジオール 8.180g
メチルパラベンナトリウム 0.145g
水を加えて100.000gとする。
本製剤は、透明液であり、無色、軽いブタンジオール臭を有し、水、グリコール類およびアルコールに可溶であるが、ヘキサン、鉱物および植物性油には不溶である。
2.栄養補助食品用経口カプセル化製剤:
1個のゼラチンまたはライスカプセル中に下記成分を含む。
L−カルノシン 80mg
β−アラニン 100mg
3.眼科用製剤(酸化ストレスによる眼障害の治療)
L−カルノシン 1.00g
β−アラニン 1.00g
二塩基性リン酸ナトリウム 0.80g
一塩基性リン酸ナトリウム 0.15g
塩化ベンザルコニウム 0.010g
精製水を加えて100gとする。
4.アルコール性飲料
40%ウオッカ 500ml
L−カルノシン 400mg
β−アラニン 600mg
水を加えて1000mlとする。
【産業上の利用可能性】
本発明は疾患治療/予防、健康改善に有用な、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用およびそのための組成物を提供することを目的とする。また、本発明はカルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用からなる、哺乳類のカルノシン関連疾患の治療または予防法、健康改善法、運動能力の改善法、皮膚健康改善法およびアルコール飲料による副作用の予防法を提供し、医薬品、化粧品、健康食品、食品、飲料品の分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトおよびその他の哺乳類のカルノシン関連疾患の治療または予防をするための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用。
【請求項2】
ヒトおよびその他の哺乳類の健康状態を改善するための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用。
【請求項3】
化粧品またはスキンケア製品としてヒトおよびその他の哺乳類の皮膚の健康状態を改善するための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用。
【請求項4】
アルコール飲料による副作用を予防するための、カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類との併用。
【請求項5】
前記カルノシナーゼ阻害剤が、下記式で表されるβ−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)およびベスタチン類(V)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の併用。

(式中、RおよびRは独立して水素原子または低級アルキル基を表す。)

(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表し、Rは炭素数2以上のアルキル基を表す。)

(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表す。)
【請求項6】
カルノシナーゼ阻害剤とL−カルノシン類とを、ヒトまたはその他の哺乳動物の血漿または組織中での生理学的に有効な濃度を維持するように投与することを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の併用。
【請求項7】
前記L−カルノシン類が、L−カルノシン、N−アセチル−L−カルノシン、L−アンセリン、N−アセチル−L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、N−アセチル−L−ホモカルノシンまたはカルシニンであることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の併用。
【請求項8】
前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の併用。
【請求項9】
前記N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)が、低級アルキル基でエステル化されていてもよいN−アセチル−β−アラニンであることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の併用。
【請求項10】
前記カルノシナーゼ阻害剤が、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の併用。
【請求項11】
β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤を使用することを特徴とする血漿および細胞中のL−カルノシン類の濃度を増大させる方法。
【請求項12】
前記L−カルノシン類が、L−カルノシン、N−アセチル−L−カルノシン、N−アセチル−L−アンセリン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、N−アセチル−L−ホモカルノシンまたはカルシニンであることを特徴とする請求の範囲第11項に記載の方法。
【請求項13】
前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする請求の範囲第11項に記載の方法。
【請求項14】
L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とする健康食品組成物または栄養補助食品組成物。
【請求項16】
前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする請求の範囲第15項に記載の健康食品組成物または栄養補助食品組成物。
【請求項17】
L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とする化粧品組成物またはスキンケア組成物。
【請求項18】
L−カルノシン類と、β−アラニン(II)、N−アルカノイル−β−アラニン誘導体(III)、N−アルカノイル−L−カルノシン誘導体(IV)、ベスタチン類(V)、α−アミノ酸誘導体、γ−アミノ酸誘導体、チオール型還元剤、金属キレート化剤、分岐状炭化水素鎖を有する疎水性ビタミン、マンガンイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種のカルノシナーゼ阻害剤とを含有することを特徴とするアルコール性飲料組成物。
【請求項19】
L−カルノシン類および/またはカルノシナーゼ阻害剤の吸収を上げるために、さらにセルロース誘導体、ゼラチンおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種を更に含むことを特徴とする請求の範囲第14項〜第17項のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記L−カルノシン類が、L−カルノシン、N−アセチル−L−カルノシン、L−アンセリン、N−アセチル−L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、N−アセチル−L−ホモカルノシンまたはカルシニンであることを特徴とする請求の範囲第14項〜第18項のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記カルノシナーゼ阻害剤がβ−アラニン(II)であることを特徴とする請求の範囲第14項〜第18項に記載の組成物。
【請求項22】
L−カルノシン類とベスタチン類(V)との併用により癌患者を治療することを特徴とする癌の化学療法。

【国際公開番号】WO2004/064866
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508063(P2005−508063)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000351
【国際出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(503029728)イノヴェイティブ ヴィジョン プロダクツ インコーポレーテッド (2)
【出願人】(000236573)浜理薬品工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】