カートリッジ型ケミカルアブソーバー
【課題】レチクル収納容器内部に設置する汚染物質等を吸着し除去するケミカルアブソーバーを容易に交換可能とする手段を提供する。
【解決手段】ケミカルアブソーバーを挟持するカートリッジ本体およびストッパーからなるカートリッジをレチクル収納容器の蓋体の側面にピン部および溝部の結合により固定する。カートリッジはケミカルアブソーバー抜け防止機構を有し、ケミカルアブソーバーは抜け防止機構で確実に抑えられてカートリッジに固定される。抜け防止機構は、少なくとも1つ以上の突起を有する抜け防止突起部、および突起を受け、突起に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部からなる。さらに、カートリッジはヒンジ部を有し、レチクル収納容器の蓋体角部にも設置することが可能である。連結部を介してカートリッジ本体とストッパーを一体として成形することもできる。
【解決手段】ケミカルアブソーバーを挟持するカートリッジ本体およびストッパーからなるカートリッジをレチクル収納容器の蓋体の側面にピン部および溝部の結合により固定する。カートリッジはケミカルアブソーバー抜け防止機構を有し、ケミカルアブソーバーは抜け防止機構で確実に抑えられてカートリッジに固定される。抜け防止機構は、少なくとも1つ以上の突起を有する抜け防止突起部、および突起を受け、突起に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部からなる。さらに、カートリッジはヒンジ部を有し、レチクル収納容器の蓋体角部にも設置することが可能である。連結部を介してカートリッジ本体とストッパーを一体として成形することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質(ガスを含む)等を吸着し除去するケミカルアブソーバーをレチクル収納容器に取り付けるためのカートリッジ型ケミカルアブソーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、特にLSIにおいて使用されるトランジスタ、配線、拡散層、コンタクトホールなどのパターンは年々小さくかつ狭くなってきている。2007年における工業上の最小線幅は約55nm〜65nmであり、2012年には約32nmのパターンが要求されている。このようなパターンを形成するには、フォトリソ技術を用いる。すなわち、光(紫外光やX線も含む)または電子線をレチクルに照射し、半導体基板上のフォトレジストを露光することにより、微細パターンを形成する。レチクル上には、半導体基板上に形成される実際のパターン(実パターン)と同じ程度のサイズ(等倍投影露光の場合は、実パターンと同じサイズ、縮小投影露光の場合は、実パターンより縮小の分だけ拡大したサイズ)の微細化された回路パターンが形成されている。従って、レチクル上に微小なゴミや微粒子などの異物が付着すると、その異物等もパターン形成される。その結果、半導体基板上にはパターン欠陥として存在し、半導体デバイスが本来の機能を有しないものとなる。従って、レチクルにゴミを付着させないことが重要であり、レチクルは通常レチクル収納容器に収納されて取り扱われる。しかし、レチクル収納容器中にわずかな汚染物質(たとえば、水分、有機性ガス、塩基性ガス、または酸性ガスなどの化学物質等)が存在すると、レチクル表面が変質してスミアなどが形成される。この場合もスミア等の異物により、異物等もパターン形成される。その結果、半導体基板上にはパターン欠陥として存在し、半導体デバイスが本来の機能を有しないものとなる。
【0003】
従って、レチクル収納容器内に存在するわずかな汚染物質も除去する必要がある。そのことを目的として、たとえば、フォトマスクブランク収納容器の底にガス吸着用カセットを設置することが開示されている(特開2006-154018)が、ガス吸着用カセットの構造が開示されていないことや、開示内容においては、ガス吸着用カセットの占める面積または体積が大きくなり、フォトマスクブランク収納容器全体の容積を大きくしてしまうという問題がある。また、フォトマスク収納容器のガス供給口にケミカルフィルターを装着することが開示されている(特開2005-115033)が、開示のケミカルフィルターでは、ケミカルフィルターの面積または体積が小さくなり、容器内の雰囲気に存在する汚染物質を十分に吸着し除去できないという問題がある。
【特許文献1】特開2006-154018
【特許文献2】特開2005-115033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記説明したように、レチクル収納容器内に存在する汚染物質(汚染ガスを含む、以下同じ)を除去するために、フォトマスク収納容器のガス供給口にケミカルフィルターを装着することが開示されている(特開2005-115033)が、開示のケミカルフィルターでは、ケミカルフィルターの面積または体積が小さくなり、容器内の雰囲気に存在する汚染物質を十分に吸着し除去できないという問題がある。さらに、ケミカルフィルターを交換する時にガス供給口を交換しなければならず容易に取り外しできないという問題がある。さらに、交換の際には、外気とのシールを確実にするために気密性を確認するなどの検査を行う必要があり、かなりの時間と人手がかかるので、交換費用が極めて高くなるという問題がある。
【0005】
さらに、フォトマスクブランク収納容器の底にガス吸着用カセットを設置することが開示されている(特開2006-154018)が、ガス吸着用カセットの構造が開示されていないことや、開示内容においては、ガス吸着用カセットの占める面積または体積が大きくなり、フォトマスクブランク収納容器全体の容積を大きくしてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明はケミカルアブソーバーを取り付けるためのケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下、カートリッジ)の構造を単純化するとともに、容易にレチクル収納容器に取り付ける構造を有するカートリッジを提供する。具体的には、次のような構造または手段を用いる。
(1)レチクル収納容器の内部に装着されるカートリッジ型ケミカルアブソーバーは、汚染物質等を吸着し除去するケミカルアブソーバーおよび前記ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の内部に固定し取り付けるカートリッジから少なくとも構成されることを特徴とする。
(2)カートリッジは、少なくともカートリッジ本体およびストッパーからなるとともに、前記カートリッジ本体およびストッパーによりケミカルアブソーバーを挟持し固定することを特徴とする。
(3)レチクル収納容器は、カートリッジを固定するためのカートリッジ固定部を有していて、カートリッジは、レチクル収納容器のカートリッジ固定部と結合し、カートリッジをレチクル収納容器に固定するためのカートリッジ固定機構を有するとともに、ケミカルアブソーバー抜け防止機構を有することを特徴とする。
(4)レチクル収納容器のカートリッジ固定部はピン形状であり、カートリッジのカートリッジ固定機構は前記ピン形状と嵌合する溝または孔形状であることを特徴とする。
(5)(3)におけるケミカルアブソーバー抜け防止機構は、カートリッジ本体およびストッパーに設けられていて、それらの両者が相互に協同しながらケミカルアブソーバーの抜け防止をすることを特徴とする。
(6)カートリッジ本体およびストッパーは、ケミカルアブソーバーをそれらの両者の間に挟持した状態において、堅嵌め、熱溶着または超音波融着により固定および結合されていて、さらにケミカルアブソーバーがカートリッジ型ケミカルアブソーバーより抜け出すことを防止する抜け防止機構を有することを特徴とする。
(7)(5)における抜け防止機構は、少なくとも1つ以上の突起を有する抜け防止突起部、および前記突起部を受け前記突起部に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部からなることを特徴とする。
(8)カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器の蓋体内側においてレチクル収納容器内に配置されたレチクルに対して80度以上の角度、好適には90度の角度で取り付けられていることを特徴とする。
(9)カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、ヒンジ部を有していて、ヒンジ部においてカートリッジを曲げることによりレチクル収納容器の角部に設置されることを特徴とする。
(10)カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器の蓋体内側で、レチクル収納容器内に配置されたレチクルに対して10度以下の角度、好適には0度の角度で(水平に)取り付けられていることを特徴とする。
(11)連結部を介してカートリッジ本体とストッパーを一体化して成形し、連結部で折り曲げてカートリッジ本体とストッパーの間にケミカルアブソーバーを挟持して、カートリッジ本体とストッパーをスナップ方式または熱圧着等で固定することを特徴とする。
(12)蓋体またはレチクル収納容器本体の面に平行に取り付けるストレートタイプと蓋体または収納容器本体のコーナー部に屈曲させて取り付ける折り曲げタイプの両方に適用できるカートリッジであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の手段により本発明は次のような効果がある。
(1)ケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下、カートリッジ)に取り付けたケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の内部の必要な場所にできるだけ広い面積を有して設置できるので、レチクル収納容器の内部に存在する化学物質等の汚染を効果的および効率的にケミカルアブソーバーに吸着して除去できる。
(2)カートリッジは単純な構造であるとともに、ケミカルアブソーバーを容易にカートリッジに取り付けて固定できるので、必要最小限の費用でケミカルアブソーバーを取り付けたカートリッジ型ケミカルアブソーバーを作製できる。
(3)ケミカルアブソーバー自体は強度が弱いが、ケミカルアブソーバーを取り付けたカートリッジ型ケミカルアブソーバーはレチクル収納容器のハンドリングに対応可能な充分な強度を持つことができる。
(4)レチクル収納容器はカートリッジ固定部を有し、カートリッジはカートリッジ固定機構を有するので、レチクル収納容器の内部、特に蓋体内側に容易に取り付けをすることができ、かつ容易に取り外しをすることができる。その結果、ケミカルアブソーバーを取り付けたカートリッジ型ケミカルアブソーバーの交換費用を著しく低減できる。
(5)カートリッジに取り付けたケミカルアブソーバーを容易に取り外しできるので、消耗品であるケミカルアブソーバーを容易に交換することができる。
(6)カートリッジにケミカルアブソーバーを取り付けることにより、ケミカルアブソーバーに直接触れずに容易に固定できるので、ケミカルアブソーバーの破損や劣化をさせることなく、また異物を付着させずにケミカルアブソーバーを使用できる。
(7)カートリッジはケミカルアブソーバー抜け防止機構を有するので、取り扱い時および使用時にケミカルアブソーバーがずれたり抜けたりすることがなく、信頼性の高いカートリッジ型ケミカルアブソーバーを実現できる。
(8)ケミカルアブソーバーの方向性を確実に規制できるため、ケミカルアブソーバーの安定した効果を実現できる。たとえば、塩基性吸着層、有機物吸着層、および酸性吸着層の3層構造のアブソーバーにおいて、レチクル側に確実に酸性吸収層を向けたい場合には、あらかじめ酸性吸着層が内側を向くように規制されたカートリッジを用いることができる。
(9)カートリッジ本体とストッパーが一体化して成形されるので、金型個数、部品点数および工数が削減されるので、カートリッジのコストを大幅に低減できる。
(10)ストレートタイプと折り曲げタイプを同一のカートリッジで共通化できるので、カートリッジのコストを大幅に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10をレチクル収納容器(ケース)1に配置した状態を示す図である。図1(a)は、レチクル収納容器の蓋体上面2の上側から見た図であり、レチクル4やカートリッジ型ケミカルアブソーバー10の配置が分かるように、透視して示している。図1(b)は、レチクル収納容器の側面から見た図であり、同様に透視して示している。図1のレチクル収納容器1においては、レチクル4の角部がレチクル収納容器1の端面の中心位置付近に来るように、レチクル4がレチクル収納容器1の内部に配置されている。しかし、レチクル4はこのように配置されなくとも、レチクル収納容器1の内部に自由に配置できることは言うまでもない。たとえば、レチクル4の端辺とレチクル収納容器1の端面とが平行になるように、レチクル4をレチクル収納容器1の内部に配置することも可能である。本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は、レチクル収納容器1の角部に折り曲げられて配置されている。本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は、後に詳細に説明するヒンジ部を有していて、このヒンジ部で折り曲げられ、レチクル収納容器1の角部にヒンジ部がくるように、レチクル収納容器1に取り付けられる。図1における本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は、薄い直方体形状をしていて、レチクル収納容器1の少ない隙間でも効率良く配置できるようになっている。レチクル収納容器1が密閉されたとき、すなわち、レチクル収納容器1の蓋体(蓋体上面2を含む)とレチクル4が配置されるレチクル収納容器1の本体(本体底面3を含む)とを合体させると、レチクル収納容器1の内部はシール材8により外気と隔絶され、レチクルはレチクル収納容器1の内部の気体に取り囲まれる。この気体が非常にクリーンで汚染等のない状態であれば、レチクル表面等が変質することはない。しかし、実際には、外気と接触したときに、外気に含まれる汚染等をレチクル収納容器1の内部に持ち込むこともある。また、レチクル4や、レチクル収納容器1を構成する材料などからわずかな汚染物質(ガスを含む)が発生する可能性がある。さらに、レチクル収納容器1に呼吸弁9が備わっている場合には、外気の圧力と容器内の圧力を調節できるようになっているので、レチクル収納容器1が密閉されていても呼吸弁9を通して外気が流入する場合がある。その際に外気の汚染がレチクル収納容器1の内部に入り込む。これらのような場合には、レチクル収納容器1の内部の汚染等により、レチクルが変質し、異物やスミアなどの欠陥がレチクル表面に形成される。これらにより、レチクル表面上に形成されたクロムパターンなどが変化したり、スミアによりレチクル光の進路や光度が変化したりして、半導体ウエハに形成されるパターンに欠陥を生じ、半導体デバイスの歩留りや信頼性を劣化させる。しかし、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10をレチクル収納容器1の内部に設置すれば、レチクル収納容器内部および外気からの汚染等をケミカルアブソーバーに吸着し除去できる。
【0009】
図1において、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は蓋体の2箇所の角部に配置されているが、これらの箇所だけでなく、呼吸弁9側にも配置できる。この場合は、カートリッジ型ケミカルアブソーバーの形状を呼吸弁9について回避するような形状にすればよい。さらに、レチクル収納容器1の内部における他の隙間にも設置できることは言うまでもない。たとえば、本体底面3または蓋体上面2の隙間に配置することもできる。
【0010】
図2は、本発明に用いられるケミカルアブソーバー11の構造を示す図である。図2(a)に示すように、有機物質(ガスを含む、以下同じ)用化学吸着層15と酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16の三つの化学吸着層を、酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16とで有機物質用化学吸着層15を挟み込んだ状態に積層形成して配置した状態を略示している。このように、有機物質用化学吸着層、酸性物質用化学吸着層、及びアルカリ性物質用化学吸着層の三種類の化学吸着層を全て配置すれば汚染物質(ガスを含む、以下同じ)の大半を吸着除去することができる。また、三種類の化学吸着層14、15、および16を積層することにより面積効率が向上し、さらに有機物質用化学吸着層15を酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16との間に挟み込む配置にすることにより、酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16とが相互に化学反応を起こすことも防止することができる。もちろん、そして、酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16とが相互に化学反応を起こさないようなものであれば、3種類の吸着層を自由な順番に配置可能である。また、たとえば、酸性の汚染物質を最初に吸着したい場合には、酸性物質用化学吸着層14を外側に配置することも自由にできる。さらに、ウエハ収納容器の使用環境等に合わせて吸着・除去したい物質に応じて吸着層の種類を変更することも可能であり、効率的かつ効果的に汚染物質を吸着除去することができる。また、図2に示されたような3枚に限られず、汚染物質の種類や汚染物質の存在量などの使用環境に合わせて、1枚または2枚或いは4枚以上にすることもできる。図2(a)に示されるように、積層された三種類の化学吸着層14、15、および16を、気体は通過するが固形粒子は通過しない多孔質の膜状フィルター(メンブレンフィルター)12と13で一まとめに囲繞してその内側に封止するのが好ましい。そのようにすることで、ケミカルアブソーバーを形成するガス吸着物質がケミカルアブソーバー外に拡散することを防止することができると同時に、ガス吸着物質の吸着機能が空気中のガス以外の粒状物等によって劣化することを防止することができる。そのような膜状フィルターとしては、PTFEやPFA等のような四フッ化エチレン樹脂系の多孔質フィルムを用いることができ、厚みを例えば0.02〜0.05mm程度と極めて薄く形成することもできる。図2(b)に示されるように膜状フィルター12と13の外縁部を全周にわたって融着するとよい。重ね合わされた二枚の膜状フィルター12と13を外縁部と各化学吸着層14、15、および15の間の部分とにおいて互いに融着部17において融着することにより、化学吸着層が膜状フィルターの内側に封止された状態になる。
【0011】
図2はケミカルアブソーバーの折り曲げないタイプのものであるが、図3は、ケミカルアブソーバーを折り曲げるタイプのものである。このタイプのケミカルアブソーバー21は、化学吸着部および膜状フィルター部22が2つに分離されていて、外縁部の融着部23は図2(b)における融着部17と同様であるが、その外に2つに分離されている分離部24も融着される。この分離部24でケミカルアブソーバー21を折り曲げることができる。もしこの分離部24がなくフィルター部22で折り曲げた場合には、フィルター部に損傷が入る可能性がある。但し、損傷の入る可能性がないか損傷が入っても問題ないケミカルアブソーバーである場合には、敢えて分離部24を形成する必要がない。このようなケミカルアブソーバー21を用いることにより、図1に示すようなレチクル収納容器1の角部に本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10を設置可能となる。尚、ケミカルアブソーバーを幾つかの部分に区切る必要がある場合にも、上記の分離部を形成することもできる。
【0012】
図4は、ケミカルアブソーバーを取り付けるためのケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下カートリッジという)の1実施形態を示す図である。カートリッジは、少なくともカートリッジ本体33およびストッパー34からなる。カートリッジ本体33を図4の(S)、(T)、(U)および(V)に示す。(S)は、カートリッジ本体33を表側から見た図、(T)は上から見た図、(U)は横から見た図、(V)は裏側から見た図である。この実施形態において、カートリッジ本体33は窓35を有していて、ケミカルアブソーバー31をカートリッジに取り付けて、レチクル収納容器にカートリッジ型ケミカルアブソーバーを固定したときに、ケミカルアブソーバー31の化学吸着層が存在する化学吸着層部30にレチクル収納容器内のガス(気体)が接触し通過しやすいような構造になっている。カートリッジ本体33の表側には、カートリッジ固定機構36を有している。カートリッジ固定機構は、レチクル収納容器に設けられたカートリッジ固定部(たとえば、ピン部)と結合して、カートリッジをレチクル収納容器に固定するものである。この実施形態においては、カートリッジ固定機構36は、B−Bにおける拡大断面図(X)に示すように、レチクル収納容器に設けられたカートリッジ固定部(たとえば、ピン部)を受ける溝部37を有するものである。レチクル収納容器のピンは溝部37の下方から挿入され、カートリッジをレチクル収納容器に固定する。この固定機構によりカートリッジはレチクル収納容器に固定され、レチクル収納容器の運搬時などにおける振動によってもカートリッジがズレたりして動くことはない。本実施形態においては、2箇所にカートリッジ固定機構36を設けているが、確実に固定できれば1箇所でも良いし、或いは、さらに固定を確実にするために3箇所以上に設けても良い。
【0013】
ケミカルアブソーバー31は、カートリッジ本体33およびストッパー34に挟まれて固定される。その際、カートリッジはケミカルアブソーバー31の抜け防止機構39を有することも可能である。カートリッジ本体33の表側に設置した抜け防止機構39のA−Aの拡大断面を(W)に示す。(W)に示されるように、カートリッジ本体33の抜け防止機構39は、少なくとも1つ以上の突起38を有する抜け防止突起部である。また、ストッパー34の抜け防止機構39は、前記突起を受け前記突起に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部である。ケミカルアブソーバー31は、この抜け防止機構39で抑えられて確実に固定され、レチクル収納容器に設置されて激しい振動が加わってもケミカルアブソーバー31がカートリッジ型ケミカルアブソーバーから抜けることはない。尚、ケミカルアブソーバー31の融着部35がこの抜け防止機構31に接触することが好適である。何故なら、抜け防止機構39は凹凸部でケミカルアブソーバー31を挟んでいるので、化学吸着部30をこの凹凸部により受けた場合には化学吸着部30に損傷を与えるおそれがあるからである。尚、抜け防止の突起がストッパーの厚さより高い場合には、その受け側を溝または穴にしても良い。
【0014】
また、抜け防止突起部がストッパー側に、それを受ける凹部または平面を有する抜け防止溝部がカートリッジ本体に設けられる抜け防止機構でも良いことは自明である。この実施形態においては、ケミカルアブソーバー31の抜け防止機構は、凹凸部によりケミカルアブソーバー31を挟んでケミカルアブソーバー31の抜け防止を行うものであるが、他の機構を有した抜け防止機構でも良い。たとえば、熱溶着や超音波融着で固定しても良いし、或いは汚染物質が発生しないような接着剤により固定しても良い。さらに、この抜け防止機構はカートリッジ本体およびストッパーの結合部分と兼用しても良い。
【0015】
カートリッジ本体33はストッパー34を固定するピン40を有していて、このピンがストッパー34の溝41と結合することにより、カートリッジ本体33にストッパー34が確実に固定される。この状態を拡大したものが、C−Cの拡大断面図(Y)および組み立てた状態のC−C近傍の拡大断面図(Z)である。カートリッジ本体のツメ(ピン)40がストッパーの溝41と嵌合してカートリッジ本体33およびストッパー34が結合する。尚、ツメ(ピン)がストッパー側に、それを受ける溝がカートリッジ本体に取り付けられていても良いことは自明である。さらに、この固定はピンおよび溝によるものに限られず、他の固定方法でも良い。たとえば、カートリッジ本体33およびストッパー34をクランプで固定しても良いし、熱溶着や超音波融着で固定しても良いし、或いは汚染ガスが発生しないような接着剤により固定しても良い。
【0016】
尚、カートリッジ本体およびストッパーの材質は、汚染ガス発生の比較的少ないか或いは全くないものが好ましい。たとえばポリプロピレン、ポリカーボネートやポリテトラフルオロエチレン樹脂などの熱硬化性樹脂、さらにはセラミックであり、或いは、ステンレス、クロム鋼、モリブデン鋼などの金属や合金でも良いし、さらにはこれらの組合せでも良い。
【0017】
図9は、ケミカルアブソーバーを取り付けるためのケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下カートリッジという)の別の実施形態を示す図である。この実施形態に示すカートリッジは、カートリッジの中心付近にヒンジ部を有するもので、ヒンジ部でカートリッジを折り曲げることが可能である。カートリッジは、少なくともカートリッジ本体133およびストッパー134からなる。カートリッジ本体133を図9の(S)、(T)、(U)および(V)に示す。(S)は、カートリッジ本体133を表側から見た図、(T)は上から見た図、(U)は横から見た図、(V)は裏側から見た図である。この実施形態において、カートリッジ本体133は上部135が開いていて、ケミカルアブソーバー131をカートリッジに取り付けて、レチクル収納容器にカートリッジ型ケミカルアブソーバーを固定したときに、ケミカルアブソーバー131の化学吸着層が存在する化学吸着層部130にレチクル収納容器内のガス(気体)が接触し通過しやすいような構造になっている。カートリッジ本体133の表側には、カートリッジ固定機構136を有している。カートリッジ固定機構は、レチクル収納容器に設けられたカートリッジ固定部(たとえば、ピン部)と結合して、カートリッジをレチクル収納容器に固定するものである。この固定機構によりカートリッジはレチクル収納容器に固定され、レチクル収納容器の運搬時などにおける振動によってもカートリッジがズレたりして動くことはない。本実施形態においては、3箇所にカートリッジ固定機構136を設けている。図4に示す場合より1つ多いが、カートリッジを折り曲げる部分、すなわちヒンジ部142付近もしっかりとレチクル収納容器に固定するためである。但し、確実に固定できれば1箇所でも良いし、或いは、さらに固定を確実にするために4箇所以上に設けても良い。
【0018】
ケミカルアブソーバー131は、カートリッジ本体133およびストッパー134に挟まれて固定される。その際、カートリッジはケミカルアブソーバー131の抜け防止機構139を有することも可能であり、図4において説明した内容と同様である。
【0019】
カートリッジ本体133はストッパー134を固定するピン140を有していて、このピン140がストッパー134の溝141と結合することにより、カートリッジ本体133にストッパー134が確実に固定される。
【0020】
図9に示す実施形態においては、カートリッジはヒンジ部142を有していて、このヒンジ部142でカートリッジを折り曲げることができる。ケミカルアブソーバーもこれに対応して、図3において説明したものと同様の分離部132を有している。ケミカルアブソーバーをカートリッジ本体およびストッパーで挟持し固定したときに、この分離部132がヒンジ部142に配置するようにする。これによりケミカルアブソーバーのフィルター部130に損傷を与えることはない。
【0021】
図5は、図9に示したようなカートリッジ型ケミカルアブソーバーの個々の部品を組合わせた状態を示した図である。図5(a)はストッパー53側から見た図であり、図5(b)は図5(a)の裏側、すなわちカートリッジ本体側から見た図である。
【0022】
カートリッジ本体52はストッパー53と結合するツメ56を有していて、ストッパー53(53Aおよび53B)は前記ツメ56と結合する溝57を有している。図5(a)は、これらのツメ56および溝57が結合してストッパー53がカートリッジ本体52に組み合わされた状態を示している。ケミカルアブソーバー54は、カートリッジ本体52とストッパー53によって挟持され固定される。図には示されていないが、前述したように、ケミカルアブソーバーは、カートリッジ本体52とストッパー53に装備された抜け防止機構によってしっかりと押さえられていて、ケミカルアブソーバー54がカートリッジ型ケミカルアブソーバー51から移動したり抜けることはない。カートリッジ本体52は、レチクル収納容器のカートリッジ固定部(ピン)と結合し、カートリッジをレチクル収納容器に固定するためのカートリッジ固定機構(溝)58を有する。
【0023】
ストッパー53は2つの部分AおよびBに分かれていて(53Aおよび53Bで示す)、この2つのストッパーでケミカルアブソーバー54を押さえる。このように2つに分かれている場合は、それぞれについて確実にケミカルアブソーバー54を挟持できる。また、このストッパー53の上部部分はケミカルアブソーバー54の挟持(押さえ)部分がない。このようなストッパーの場合は、上部の挟持(押さえ)部分がない場所にもケミカルアブソーバーの化学吸着部61を配置することができるので、ケミカルアブソーバーの化学吸着部分の面積(体積)を大きくでき、汚染物質の吸着量を増やすことが可能である。また、ストッパーAおよびBを同じ形状およびサイズにすることもできるので、同一部品を裏返してAおよびBを取り替えて使用することも可能である。さらに、本実施形態においては、カートリッジ本体52の上部の挟持(押さえ)部分もないので、汚染物質がケミカルアブソーバーの一方側から入って、ケミカルアブソーバーで汚染物質を吸着除去し、汚染物質のなくなった状態(ガスを含む)で他方の側から出て行くことが可能であり、かつその逆もまた可能であるから、汚染物質の吸着除去効率がより一層向上する。図5から良く理解できるように、化学吸着部61にカートリッジ本体52およびストッパー53はケミカルアブソオーバー54の融着部62のみを押さえ、化学吸着部61を押さえないような構造となっている。これにより前述したように、化学吸着部61に力が加わったり化学吸着部61を損傷することもない。
【0024】
本実施形態においては、カートリッジの中心付近にヒンジ部60を有しているので、このヒンジ部60においてカートリッジ型ケミカルアブソーバー51を折り曲げることができる。従って、ヒンジ部をレチクル収納容器の蓋体角部などの曲がった所に合わせて折り曲げた状態で、カートリッジ型ケミカルアブソーバーを配置できる。尚、この実施形態ではケミカルアブソーバーを下側で保持しているが、ケミカルアブソーバー全面あるいは上側で保持しても良い。ストッパーおよびカートリッジ本体の固定は、突起(ツメ)および溝(または穴)により行っているが、熱溶着や超音波融着により固定しても良い。
【0025】
図6は、図9および図5に示すようなヒンジ部を有するカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の角部に設置した状態を示した図である。図6(a)はカートリッジ本体72が見えるように描いた図であり、図6(b)はストッパー73が良く分かるように描いた図である。図1に示した図について、レチクル収納容器の蓋体の内側から見た図と考えることもできる。カートリッジ本体72、ケミカルアブソーバー74およびストッパー73を結合したカートリッジ型ケミカルアブソーバーを、カートリッジのヒンジ部80で約90度折り曲げて、レチクル収納容器の蓋体にカートリッジ固定機構部78において固定する。カートリッジのヒンジ部80は蓋体角部75の付近に設置される。このようにヒンジ部を有するカートリッジ型ケミカルアブソーバーによって、蓋体のスペースを有効に用いてレチクル収納容器の化学物質を効果的に吸着除去することが可能となる。
【0026】
図7は、図4に示したようなカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態の他の実施形態を示す図である。カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、蓋体の側面にほぼ平行に、蓋体の1つの側面全体に配置されている。従って、かなり広い面積(または体積)のケミカルアブソーバーを設置できるので、レチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となる。図7においては、レチクル収納容器蓋体の1つの側面81にのみカートリッジ型ケミカルアブソーバー82を配置して示しているが、他の側面にも配置しても良く、さらにレチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となる。さらに、この図からも分かるように、蓋体上面83にも全面または部分的にカートリッジ型ケミカルアブソーバーを設置可能である。この場合は、かなりの広い面積のケミカルアブソーバーを配置できるので、さらに、レチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となることは言うまでもない。
【0027】
図8は、図7と同様のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態を示す図であり、レチクルとの位置関係を示す図である。図8(a)は蓋体側面から蓋体内部を透視して見た図である。図8(b)は、ケミカルアブソーバーの配置が良く分かるように、ケミカルアブソーバーの配置部分を拡大したものである。カートリッジ型ケミカルアブソーバー91は、蓋体側面92に沿ってほぼ平行に配置されている。レチクル95との位置関係については、この図から分かるように、カートリッジ型ケミカルアブソーバー91とレチクル95とのなす角度が約80度以上、好適には90度である。このようにすることにより、レチクル収納容器内部に存在する汚染物質を効果的・効率的にケミカルアブソーバーによって吸着除去できるので、レチクル表面付近におけるガスの清浄度を高めることができる。
【0028】
図8には示していないが、カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器本体底面94にも設置可能である。すなわち、レチクル95に対して約10度以下、好適には0度の角度を有してカートリッジ型ケミカルアブソーバーを配置する。この場合も、かなり広い面積のケミカルアブソーバーを配置できるので、さらにレチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となることは言うまでもない。特にレチクル95下面(レチクル収納容器本体底面94側)に最も近い所にケミカルアブソーバーが存在するので、レチクル95下面付近の汚染物質を効果的・効率的にケミカルアブソーバーによって吸着除去できる。この結果、レチクル95下面付近におけるガスの清浄度を高めることができる。
【0029】
さらに、図8には示していないが、カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器蓋体上面93にも設置可能である。すなわち、レチクル95に対して約10度以下、好適には0度の角度を有してカートリッジ型ケミカルアブソーバーを配置する。この場合も、かなりの広い面積のケミカルアブソーバーを配置できるので、さらに、レチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となることは言うまでもない。特にレチクル95上面(レチクル収納容器蓋体上面93側)に最も近い所にケミカルアブソーバーが存在するので、レチクル95上面付近の汚染物質を効果的・効率的にケミカルアブソーバーによって吸着除去できる。この結果、レチクル95上面付近におけるガスの清浄度を高めることができる。
【0030】
図10は、カートリッジ本体とストッパーが一体化している場合の実施例を示す図である。カートリッジ本体とストッパーが一体化している場合におけるカートリッジをカートリッジ部と呼ぶ。すなわち、カートリッジ部は、カートリッジ本体、ストッパーおよびカートリッジ本体とストッパーを連結する連結部からなる。図10(a)はカートリッジ部200を組立て前の状態の平面図を示し、図10(b)はその組立て前の状態におけるカートリッジ部200の上面図であり、図10(c)は図10(a)の裏側から見た図であり、図10(d)はその組立て前の状態におけるカートリッジ部200の側面図である。
【0031】
図10(a)に示すように、カートリッジ本体201とストッパー202は、連結部204により連結していて、一体化している。よって、カートリッジ本体とストッパーと連結部は一つの部品として成形できる。従って、(図4および図9に示すような)カートリッジ本体とストッパーが別個になっている場合に比べて、成形金型個数を削減することができ、かつ一体物となっていることにより、部品点数を削減できるだけでなく、カートリッジ本体とストッパーの材質を同一にすることも容易であり品質も均一化し安定する。このようにすることにより、カートリッジ本体201、ストッパー202および連結部204は1つの金型で同時に成形することができる。また、1回の成形によりカートリッジ作製を行うことができるので、工数の大幅削減とそれによるコストダウンをはかることができる。図10における実施例では、カートリッジ本体201の中央付近にヒンジ部210を有していて折り曲げることができるようになっている。すなわち、折り曲げないで使用することもできるし(ストレートタイプと呼ぶ)、ヒンジ部210で折り曲げて使用することもできる(折り曲げタイプと呼ぶ)ようになっている。このように、ストレートタイプと折り曲げタイプの兼用が可能で、この点からも金型個数や工数を削減することができるし、全体の部品点数も少なくすることもできるので、カートリッジ部の大幅なコストダウンが可能である。
【0032】
図10(a)から分かるように、カートリッジ本体201は、図4に示すものと同様な窓205とそのまわりを囲む(カートリッジ本体)フレーム203からなる長方形形状になっている。また、カートリッジ本体201は、嵌合機構(溝部)206およびケミカルアブソーバー押さえ207を有している。
【0033】
図10(a)に示すように、ストッパー202は2つの部分202Aおよび202Bに分かれている。このストッパー202の分離部分202Aおよび202Bは、カートリッジ本体201のヒンジ部210を挟んだ左右の部分に対応している。ストッパー202Aおよび202Bは、それぞれカートリッジ本体201に連結部204を介してつながっていて、カートリッジ本体と一体になっている。また、ストッパー202(すなわち、202Aおよび202B)も窓209とそのまわりを囲む(ストッパー)フレーム208からなる長方形形状になっている。さらに、ストッパー202は、嵌合機構(凸部)211およびケミカルアブソーバー押さえ212を有している。
【0034】
カートリッジ部200の上面図である図10(b)から分かるように、図4および図9と同様のカートリッジ固定機構(溝部)213を有している。ヒンジ部210を挟んで、カートリッジ本体は左右に分離されていて、ストッパー202もストッパーA(202A)とストッパーB(202B)に分かれている。
【0035】
図10(c)は、図10(a)に示すカートリッジ部200の裏側を示す図であるが、こちらの側にケミカルアブソーバーが搭載される。ケミカルアブソーバーは、ストレートタイプになる場合には図4に示すような分離部のないものでも図9に示すような分離部のあるものでも良いが、折り曲げタイプになる場合には図9に示すような分離部のあるものが望ましい。何故なら、図4に示すような分離部のないものは折り曲げたときにケミカルアブソーバーも折れ曲がるので、ケミカルアブソーバーにダメージが入る可能性があるからである。
【0036】
ケミカルアブソーバーがカートリッジ本体201にセットされ、連結部204が折り曲げられ、ケミカルアブソーバーはカートリッジ本体201とストッパー202に挟まれて固定される。しかし、単純に押さえただけではケミカルアブソーバーが抜けたりずれたりするので、図10(c)に示すように、カートリッジ本体201には抜け防止機構215がついていて、ストッパー202についている抜け防止機構214と協同してケミカルアブソーバーを固定する。この抜け防止機構は、図10(c)においては、ストッパー202側の抜け防止機構214の1つの突起がカートリッジ本体201側における2つの突起の間に嵌合するようになっていて、ケミカルアブソーバーの周縁部をカートリッジ本体201とストッパー202の両方から押さえつけたり、および/またはこれらの突起がケミカルアブソーバーの周縁部に食い込んだりして、ずれを防止または抜けを防止できるようになっている。もちろん片方の突起だけで充分ケミカルアブソーバーの抜け防止またはズレ防止が可能であれば、片方だけの突起だけでも良い。或いは、もっと確実にケミカルアブソーバーの抜け防止またはズレ防止を行う必要があれば、突起を増やしたり抜け防止機構を増やしたりしても良い。上記の抜け防止機構の場合は、ケミカルアブソーバーを取り外したり交換したりすることも容易である。或いは、抜け防止機構は他の方式でも良い。ケミカルアブソーバーの周縁部をカートリッジ本体201のフレーム203やストッパー202のフレーム208に接着や熱圧着し付着することにより、ケミカルアブソーバーがカートリッジ部から抜けたり、或いはケミカルアブソーバーがカートリッジ部内でずれたりすることが防止できる場合には、図10(c)に示す抜け防止機構214や215は必ずしも必要がない。また、1種類の抜け防止機構だけでなく、種々の抜け防止機構を組み合わせて良い。
【0037】
連結部204が折り曲げられ、ストッパー202の嵌合機構(凸部)211がカートリッジ本体201の嵌合機構(凹部または穴)206と嵌合されて、カートリッジ本体201とストッパー202が固定される。尚、ストッパー側に嵌合機構(凹部または穴)があり、カートリッジ本体側に嵌合機構(凹部または穴)があっても良いし、これらを混在させて組み合わせても良い。さらに、この固定方法は一種のスナップ方式であるが、上記の嵌合機構(凸部および凹部等)以外のスナップ方式や、或いは別の固定方式でも良い。たとえば、接着剤を用いたり、熱圧着等で固定したりしても良い。上記のスナップ方式の場合には、固定したカートリッジ本体201とストッパー202を再度分離することもできるので、繰り返して使用することができる。たとえば、ケミカルアブソーバーだけを交換することもできるし、固定されたカートリッジ本体201とストッパー202の固定状態をはずして内側を洗浄することもできる。また、カートリッジ本体とストッパーの固定は種々の固定方法を組み合わせても良い。
【0038】
この固定された状態を示した図が図11と図12である。図11はストレートタイプであり、図12は折り曲げタイプである。容器に取り付けた場合において、図11(a)は容器壁側から見た図であり、図11(b)は容器内側から見た図である。連結部204で折り曲げられて、カートリッジ本体201およびストッパー202は嵌合機構206、211によってしっかりと固定されている。また、ケミカルアブソーバー220もカートリッジ本体201とストッパー202に挟まれて固定されている。この状態で、カートリッジはたとえば図7に示されるように容器にセットされる。図11においては容器内側の方にカートリッジ固定機構(溝部)213があるが、容器壁側にスペースがある場合には、容器壁側の方にカートリッジ固定機構(溝部)213があっても良い。容器側にカートリッジ固定機構(凸部)があり、カートリッジ固定機構(溝部または凹部または穴等)213と嵌合してカートリッジ部200が容器に固定される。尚、カートリッジ固定機構(凸部)がカートリッジ部側に、カートリッジ固定機構(凹部)が容器側にあっても良い。容器の洗浄性という観点からは、容器側のカートリッジ固定機構は凸部形状であることが望ましい。
【0039】
容器内の気体が窓209を通してケミカルアブソーバー220を通過して、容器内の気体中の不純物がケミカルアブソーバー220に吸収および/または吸着されて、容器内の雰囲気が清浄化される。尚、ケミカルアブソーバー220はケミカルアブソーバー押さえ207、212によって、窓209からケミカルアブソーバー220がはみ出さないように押さえられている。ケミカルアブソーバー220が窓からはみ出すおそれがなければ、ケミカルアブソーバー押さえはなくても良い。ストレートタイプの場合は、ヒンジ部210においては、当然折り曲げられていない。また、図7においては、カートリッジ部の面を蓋体や容器本体の側面に平行に配置するように描いているが、蓋体上面や容器本体底面に平行に配置しても良い。図10〜12においてカートリッジ固定機構はカートリッジ部の面から突き出しているが、カートリッジ固定機構はカートリッジ部の面と平行な位置にあっても良い。この場合にはカートリッジ部のカートリッジ固定機構の溝部はカートリッジ部の面に対して垂直方向に向いていて、容器側のカートリッジ固定機構(凸部)もカートリッジ設置面に存在し、容器側のカートリッジ固定機構(凸部)はカートリッジ部の面に対して垂直方向に向いている。
【0040】
図12(a)は容器内側から見た図であり、図12(b)は容器壁側から見た図である。カートリッジ部200はカートリッジ本体201のヒンジ部210において折り曲げられている。ストッパー202はカートリッジ201のヒンジ部210を挟んで2つに分離されているので、ストッパー202に関係なくカートリッジ本体201のヒンジ部210の曲げに対応してカートリッジ部が折り曲げられる。容器にセットされる状態に合わせて、カートリッジ本体201のヒンジ部210において任意に折り曲げ角度を調整できる。図12においては、カートリッジ固定機構(溝部)213が容器壁側に存在しているが、容器壁側にスペースがない場合には、容器内側にカートリッジ固定機構(溝部)を持ってきても良い。図12で示す折り曲げタイプのカートリッジは図6に示す場合と同様に、蓋体や容器本体のコーナー部に設置される。
【0041】
カートリッジ固定機構213の他に、カートリッジ本体やストッパーに図11(a)および図12(a)に示すような凹状部219、221を設けて、カートリッジ部200がカートリッジ固定機構213で容器に固定されたときに、容器側に備えた突状部(図示せず)と係合または嵌合させてカートリッジ部200を容器に確実に固定させても良い。これら凹状部219、221(およびこれらと係合する容器側の突状部)を設けて容器と固定させることにより、上下方向へのカートリッジ部の抜けやズレを確実に防止することができる。特に、搬送時などの振動が加わった場合には有効な手段となる。容器側の突状部はカートリッジ部の設置面に備えるだけでなく、カートリッジ部設置面と垂直な面に備えても良い。尚、カートリッジ部側に突状部を設け、容器側に備えた凹状部と係合させても良い。さらに、このような凹状部または突状部は、図10〜12に示すカートリッジ固定機構213と同様にカートリッジ本体やストッパーの面からはみ出させても良い。或いは、カートリッジ固定機構213を補助する他の係合手段または嵌合手段を用いても良い。
【0042】
以上説明したように、図10に示すようなカートリッジは図11および図12に示すようにストレートタイプにも折り曲げタイプにも使用できるので、極めて応用力が高いことが分かる。このようなカートリッジを使用することにより、カートリッジ型ケミカルアブソーバーの大幅なコスト低減が可能となる。
【0043】
図10におけるストッパー202Bは長方形形状であるカートリッジ本体201の長辺側に連結部204を介してつながっているが、カートリッジ本体201の短辺側(図10(a)に示すC、D)に連結部を介してつなげても良い。この場合、カートリッジ部一体だけの金型は横長になるが、縦にカートリッジ部を複数配列することにより正方形に近いバランスの良い成形金型にすることができるという利点もある。
【0044】
本明細書にて説明したカートリッジ本体、ストッパーおよび連結部等のカートリッジを構成する材料は、主として高分子材料である。高分子材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、PEE(ポリエステルエラストマー)、PBTE(ポリブチレンテレフタレートエラストマー),PBNE(ポリブチレンナフタレートエラストマー)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PUE(ポリウレタンエラストマー)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などが挙げられる。これらの高分子材料は1種類だけでなく、複数組み合わせて用いても良い。
【0045】
本明細書においては、主にレチクル収納ケースについて説明したが、半導体または液晶等のマスクを使用する分野において使用されるマスク収納容器、半導体等の分野に用いられるウエハ収納容器や半導体収納容器、あるいは表示体等や太陽電池に用いられる基板等の収納容器にも適用可能である。これらの場合において収納ケース(容器)内に配置されるレチクルに相当するものは、マスク収納容器ではマスクであり、ウエハ収納容器や半導体収納容器ではウエハや半導体基板であり、レチクルも含めたこれらを総称すると基板と称することができる。従って、レチクル収納容器も含めたこれらの収納容器を総称すると基板収納容器と称することができる。さらに、本明細書の各実施形態にて説明した内容について、ある実施形態において説明したことであって、他の実施形態において説明していない内容についても、当該実施形態と矛盾しない範囲内で適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、半導体プロセス等におけるレチクルまたはフォトマスク処理工程において、利用することができる。特に、レチクル、フォトマスクまたは半導体を用いる半導体産業において、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器に配置した状態を示す図である。
【図2】図2は、本発明に用いられるケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図3】図3は、本発明に用いられる折り曲げるタイプのケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図4】図4は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図5】図5は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの実施形態を示す図である。
【図6】図6は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの他の実施形態を示す図である。
【図7】図7は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態を示す図である。
【図8】図8は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態を示す図である。
【図9】図9は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図10】図10は、カートリッジ本体とストッパーが一体となったカートリッジ型ケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図11a】図11a(図11(a))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーのストレートタイプを示す図で、容器壁側から見た図である。
【図11b】図11b(図11(b))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーのストレートタイプを示す図で、容器内側から見た図である。
【図12a】図12a(図12(a))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーの折り曲げタイプを示す図で、容器内側から見た図である。
【図12b】図12b(図12(b))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーの折り曲げタイプを示す図で、容器壁側から見た図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・レチクル収納容器(ケース)、2・・・蓋体上面、
3・・・レチクル収納容器本体底面、4・・・レチクル、5・・・上側リテーナ、
6・・・下側リテーナ、7・・・固定スライダー、8・・・シール材、
9・・・呼吸弁、10・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
11・・・ケミカルアブソーバー、12、13・・・膜状フィルター、
14・・・酸性物質用吸着層、
15・・・有機物質用吸着層、16・・・アルカリ性物質用吸着層、17・・・融着部、
21・・・ケミカルアブソーバー、22・・・化学吸着部および膜状フィルター部、
23・・・熱融着部、24・・・分離部、30・・・化学吸着部、
31・・・ケミカルアブソーバー、32・・・融着部、33・・・カートリッジ本体、
34・・・ストッパー、35・・・窓、36・・・カートリッジ固定機構(溝部)、
37・・・溝部、38・・・突起、39・・・抜け防止機構、
40・・・ピン、41・・・溝、51・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
52・・・カートリッジ本体、53・・・ストッパー、53A・・・ストッパーA、
53B・・・ストッパーB、54・・・ケミカルアブソーバー、55・・・分離部
56・・・ツメ、57・・・溝、58・・・カートリッジ固定機構(溝)、
61・・・化学吸着部、62・・・融着部、71・・・蓋体側面、
72・・・カートリッジ本体、73・・・ストッパー、74・・・ケミカルアブソーバー、
75・・・蓋体角部、76・・・ツメ(溝)、77・・・蓋体上面、
78・・・カートリッジ固定機構、80・・・ヒンジ部、
81・・・蓋体側面、82・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
83・・・蓋体上面、91・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
92・・・蓋体側面、93・・・蓋体上面、94・・・本体底面、95・・・レチクル、
96・・・呼吸弁、97・・・キャップ、98・・・下面支持突起、99・・・リップ条、
100・・・凸条、101・・・シール、102・・・シール受部、
103・・・上面支持リテーナ、104・・・バネ体、130・・・化学吸着層部、
131・・・ケミカルアブソーバー、132・・・分離部、
133・・・カートリッジ本体、134・・・ストッパー、135・・・上部(開口部)、
136・・・カートリッジ固定機構(溝部)、139・・・抜け防止機構、
140・・・ピン、141・・・溝、142・・・ヒンジ部、
200・・・カートリッジ部、201・・・カートリッジ本体、202・・・ストッパー、
203・・・フレーム、204・・・連結部、205・・・窓、
206・・・嵌合機構(溝部)、207・・・ケミカルアブソーバー押さえ、
208・・・フレーム、209・・・窓、210・・・ヒンジ部、
211・・・嵌合機構(凸部)、212・・・ケミカルアブソーバー押さえ、
213・・・カートリッジ固定機構(溝部)、214、215・・・抜け防止機構、
219、221・・・凹状部、220・・・ケミカルアブソーバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質(ガスを含む)等を吸着し除去するケミカルアブソーバーをレチクル収納容器に取り付けるためのカートリッジ型ケミカルアブソーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、特にLSIにおいて使用されるトランジスタ、配線、拡散層、コンタクトホールなどのパターンは年々小さくかつ狭くなってきている。2007年における工業上の最小線幅は約55nm〜65nmであり、2012年には約32nmのパターンが要求されている。このようなパターンを形成するには、フォトリソ技術を用いる。すなわち、光(紫外光やX線も含む)または電子線をレチクルに照射し、半導体基板上のフォトレジストを露光することにより、微細パターンを形成する。レチクル上には、半導体基板上に形成される実際のパターン(実パターン)と同じ程度のサイズ(等倍投影露光の場合は、実パターンと同じサイズ、縮小投影露光の場合は、実パターンより縮小の分だけ拡大したサイズ)の微細化された回路パターンが形成されている。従って、レチクル上に微小なゴミや微粒子などの異物が付着すると、その異物等もパターン形成される。その結果、半導体基板上にはパターン欠陥として存在し、半導体デバイスが本来の機能を有しないものとなる。従って、レチクルにゴミを付着させないことが重要であり、レチクルは通常レチクル収納容器に収納されて取り扱われる。しかし、レチクル収納容器中にわずかな汚染物質(たとえば、水分、有機性ガス、塩基性ガス、または酸性ガスなどの化学物質等)が存在すると、レチクル表面が変質してスミアなどが形成される。この場合もスミア等の異物により、異物等もパターン形成される。その結果、半導体基板上にはパターン欠陥として存在し、半導体デバイスが本来の機能を有しないものとなる。
【0003】
従って、レチクル収納容器内に存在するわずかな汚染物質も除去する必要がある。そのことを目的として、たとえば、フォトマスクブランク収納容器の底にガス吸着用カセットを設置することが開示されている(特開2006-154018)が、ガス吸着用カセットの構造が開示されていないことや、開示内容においては、ガス吸着用カセットの占める面積または体積が大きくなり、フォトマスクブランク収納容器全体の容積を大きくしてしまうという問題がある。また、フォトマスク収納容器のガス供給口にケミカルフィルターを装着することが開示されている(特開2005-115033)が、開示のケミカルフィルターでは、ケミカルフィルターの面積または体積が小さくなり、容器内の雰囲気に存在する汚染物質を十分に吸着し除去できないという問題がある。
【特許文献1】特開2006-154018
【特許文献2】特開2005-115033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記説明したように、レチクル収納容器内に存在する汚染物質(汚染ガスを含む、以下同じ)を除去するために、フォトマスク収納容器のガス供給口にケミカルフィルターを装着することが開示されている(特開2005-115033)が、開示のケミカルフィルターでは、ケミカルフィルターの面積または体積が小さくなり、容器内の雰囲気に存在する汚染物質を十分に吸着し除去できないという問題がある。さらに、ケミカルフィルターを交換する時にガス供給口を交換しなければならず容易に取り外しできないという問題がある。さらに、交換の際には、外気とのシールを確実にするために気密性を確認するなどの検査を行う必要があり、かなりの時間と人手がかかるので、交換費用が極めて高くなるという問題がある。
【0005】
さらに、フォトマスクブランク収納容器の底にガス吸着用カセットを設置することが開示されている(特開2006-154018)が、ガス吸着用カセットの構造が開示されていないことや、開示内容においては、ガス吸着用カセットの占める面積または体積が大きくなり、フォトマスクブランク収納容器全体の容積を大きくしてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明はケミカルアブソーバーを取り付けるためのケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下、カートリッジ)の構造を単純化するとともに、容易にレチクル収納容器に取り付ける構造を有するカートリッジを提供する。具体的には、次のような構造または手段を用いる。
(1)レチクル収納容器の内部に装着されるカートリッジ型ケミカルアブソーバーは、汚染物質等を吸着し除去するケミカルアブソーバーおよび前記ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の内部に固定し取り付けるカートリッジから少なくとも構成されることを特徴とする。
(2)カートリッジは、少なくともカートリッジ本体およびストッパーからなるとともに、前記カートリッジ本体およびストッパーによりケミカルアブソーバーを挟持し固定することを特徴とする。
(3)レチクル収納容器は、カートリッジを固定するためのカートリッジ固定部を有していて、カートリッジは、レチクル収納容器のカートリッジ固定部と結合し、カートリッジをレチクル収納容器に固定するためのカートリッジ固定機構を有するとともに、ケミカルアブソーバー抜け防止機構を有することを特徴とする。
(4)レチクル収納容器のカートリッジ固定部はピン形状であり、カートリッジのカートリッジ固定機構は前記ピン形状と嵌合する溝または孔形状であることを特徴とする。
(5)(3)におけるケミカルアブソーバー抜け防止機構は、カートリッジ本体およびストッパーに設けられていて、それらの両者が相互に協同しながらケミカルアブソーバーの抜け防止をすることを特徴とする。
(6)カートリッジ本体およびストッパーは、ケミカルアブソーバーをそれらの両者の間に挟持した状態において、堅嵌め、熱溶着または超音波融着により固定および結合されていて、さらにケミカルアブソーバーがカートリッジ型ケミカルアブソーバーより抜け出すことを防止する抜け防止機構を有することを特徴とする。
(7)(5)における抜け防止機構は、少なくとも1つ以上の突起を有する抜け防止突起部、および前記突起部を受け前記突起部に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部からなることを特徴とする。
(8)カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器の蓋体内側においてレチクル収納容器内に配置されたレチクルに対して80度以上の角度、好適には90度の角度で取り付けられていることを特徴とする。
(9)カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、ヒンジ部を有していて、ヒンジ部においてカートリッジを曲げることによりレチクル収納容器の角部に設置されることを特徴とする。
(10)カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器の蓋体内側で、レチクル収納容器内に配置されたレチクルに対して10度以下の角度、好適には0度の角度で(水平に)取り付けられていることを特徴とする。
(11)連結部を介してカートリッジ本体とストッパーを一体化して成形し、連結部で折り曲げてカートリッジ本体とストッパーの間にケミカルアブソーバーを挟持して、カートリッジ本体とストッパーをスナップ方式または熱圧着等で固定することを特徴とする。
(12)蓋体またはレチクル収納容器本体の面に平行に取り付けるストレートタイプと蓋体または収納容器本体のコーナー部に屈曲させて取り付ける折り曲げタイプの両方に適用できるカートリッジであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の手段により本発明は次のような効果がある。
(1)ケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下、カートリッジ)に取り付けたケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の内部の必要な場所にできるだけ広い面積を有して設置できるので、レチクル収納容器の内部に存在する化学物質等の汚染を効果的および効率的にケミカルアブソーバーに吸着して除去できる。
(2)カートリッジは単純な構造であるとともに、ケミカルアブソーバーを容易にカートリッジに取り付けて固定できるので、必要最小限の費用でケミカルアブソーバーを取り付けたカートリッジ型ケミカルアブソーバーを作製できる。
(3)ケミカルアブソーバー自体は強度が弱いが、ケミカルアブソーバーを取り付けたカートリッジ型ケミカルアブソーバーはレチクル収納容器のハンドリングに対応可能な充分な強度を持つことができる。
(4)レチクル収納容器はカートリッジ固定部を有し、カートリッジはカートリッジ固定機構を有するので、レチクル収納容器の内部、特に蓋体内側に容易に取り付けをすることができ、かつ容易に取り外しをすることができる。その結果、ケミカルアブソーバーを取り付けたカートリッジ型ケミカルアブソーバーの交換費用を著しく低減できる。
(5)カートリッジに取り付けたケミカルアブソーバーを容易に取り外しできるので、消耗品であるケミカルアブソーバーを容易に交換することができる。
(6)カートリッジにケミカルアブソーバーを取り付けることにより、ケミカルアブソーバーに直接触れずに容易に固定できるので、ケミカルアブソーバーの破損や劣化をさせることなく、また異物を付着させずにケミカルアブソーバーを使用できる。
(7)カートリッジはケミカルアブソーバー抜け防止機構を有するので、取り扱い時および使用時にケミカルアブソーバーがずれたり抜けたりすることがなく、信頼性の高いカートリッジ型ケミカルアブソーバーを実現できる。
(8)ケミカルアブソーバーの方向性を確実に規制できるため、ケミカルアブソーバーの安定した効果を実現できる。たとえば、塩基性吸着層、有機物吸着層、および酸性吸着層の3層構造のアブソーバーにおいて、レチクル側に確実に酸性吸収層を向けたい場合には、あらかじめ酸性吸着層が内側を向くように規制されたカートリッジを用いることができる。
(9)カートリッジ本体とストッパーが一体化して成形されるので、金型個数、部品点数および工数が削減されるので、カートリッジのコストを大幅に低減できる。
(10)ストレートタイプと折り曲げタイプを同一のカートリッジで共通化できるので、カートリッジのコストを大幅に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10をレチクル収納容器(ケース)1に配置した状態を示す図である。図1(a)は、レチクル収納容器の蓋体上面2の上側から見た図であり、レチクル4やカートリッジ型ケミカルアブソーバー10の配置が分かるように、透視して示している。図1(b)は、レチクル収納容器の側面から見た図であり、同様に透視して示している。図1のレチクル収納容器1においては、レチクル4の角部がレチクル収納容器1の端面の中心位置付近に来るように、レチクル4がレチクル収納容器1の内部に配置されている。しかし、レチクル4はこのように配置されなくとも、レチクル収納容器1の内部に自由に配置できることは言うまでもない。たとえば、レチクル4の端辺とレチクル収納容器1の端面とが平行になるように、レチクル4をレチクル収納容器1の内部に配置することも可能である。本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は、レチクル収納容器1の角部に折り曲げられて配置されている。本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は、後に詳細に説明するヒンジ部を有していて、このヒンジ部で折り曲げられ、レチクル収納容器1の角部にヒンジ部がくるように、レチクル収納容器1に取り付けられる。図1における本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は、薄い直方体形状をしていて、レチクル収納容器1の少ない隙間でも効率良く配置できるようになっている。レチクル収納容器1が密閉されたとき、すなわち、レチクル収納容器1の蓋体(蓋体上面2を含む)とレチクル4が配置されるレチクル収納容器1の本体(本体底面3を含む)とを合体させると、レチクル収納容器1の内部はシール材8により外気と隔絶され、レチクルはレチクル収納容器1の内部の気体に取り囲まれる。この気体が非常にクリーンで汚染等のない状態であれば、レチクル表面等が変質することはない。しかし、実際には、外気と接触したときに、外気に含まれる汚染等をレチクル収納容器1の内部に持ち込むこともある。また、レチクル4や、レチクル収納容器1を構成する材料などからわずかな汚染物質(ガスを含む)が発生する可能性がある。さらに、レチクル収納容器1に呼吸弁9が備わっている場合には、外気の圧力と容器内の圧力を調節できるようになっているので、レチクル収納容器1が密閉されていても呼吸弁9を通して外気が流入する場合がある。その際に外気の汚染がレチクル収納容器1の内部に入り込む。これらのような場合には、レチクル収納容器1の内部の汚染等により、レチクルが変質し、異物やスミアなどの欠陥がレチクル表面に形成される。これらにより、レチクル表面上に形成されたクロムパターンなどが変化したり、スミアによりレチクル光の進路や光度が変化したりして、半導体ウエハに形成されるパターンに欠陥を生じ、半導体デバイスの歩留りや信頼性を劣化させる。しかし、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10をレチクル収納容器1の内部に設置すれば、レチクル収納容器内部および外気からの汚染等をケミカルアブソーバーに吸着し除去できる。
【0009】
図1において、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10は蓋体の2箇所の角部に配置されているが、これらの箇所だけでなく、呼吸弁9側にも配置できる。この場合は、カートリッジ型ケミカルアブソーバーの形状を呼吸弁9について回避するような形状にすればよい。さらに、レチクル収納容器1の内部における他の隙間にも設置できることは言うまでもない。たとえば、本体底面3または蓋体上面2の隙間に配置することもできる。
【0010】
図2は、本発明に用いられるケミカルアブソーバー11の構造を示す図である。図2(a)に示すように、有機物質(ガスを含む、以下同じ)用化学吸着層15と酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16の三つの化学吸着層を、酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16とで有機物質用化学吸着層15を挟み込んだ状態に積層形成して配置した状態を略示している。このように、有機物質用化学吸着層、酸性物質用化学吸着層、及びアルカリ性物質用化学吸着層の三種類の化学吸着層を全て配置すれば汚染物質(ガスを含む、以下同じ)の大半を吸着除去することができる。また、三種類の化学吸着層14、15、および16を積層することにより面積効率が向上し、さらに有機物質用化学吸着層15を酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16との間に挟み込む配置にすることにより、酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16とが相互に化学反応を起こすことも防止することができる。もちろん、そして、酸性物質用化学吸着層14とアルカリ性物質用化学吸着層16とが相互に化学反応を起こさないようなものであれば、3種類の吸着層を自由な順番に配置可能である。また、たとえば、酸性の汚染物質を最初に吸着したい場合には、酸性物質用化学吸着層14を外側に配置することも自由にできる。さらに、ウエハ収納容器の使用環境等に合わせて吸着・除去したい物質に応じて吸着層の種類を変更することも可能であり、効率的かつ効果的に汚染物質を吸着除去することができる。また、図2に示されたような3枚に限られず、汚染物質の種類や汚染物質の存在量などの使用環境に合わせて、1枚または2枚或いは4枚以上にすることもできる。図2(a)に示されるように、積層された三種類の化学吸着層14、15、および16を、気体は通過するが固形粒子は通過しない多孔質の膜状フィルター(メンブレンフィルター)12と13で一まとめに囲繞してその内側に封止するのが好ましい。そのようにすることで、ケミカルアブソーバーを形成するガス吸着物質がケミカルアブソーバー外に拡散することを防止することができると同時に、ガス吸着物質の吸着機能が空気中のガス以外の粒状物等によって劣化することを防止することができる。そのような膜状フィルターとしては、PTFEやPFA等のような四フッ化エチレン樹脂系の多孔質フィルムを用いることができ、厚みを例えば0.02〜0.05mm程度と極めて薄く形成することもできる。図2(b)に示されるように膜状フィルター12と13の外縁部を全周にわたって融着するとよい。重ね合わされた二枚の膜状フィルター12と13を外縁部と各化学吸着層14、15、および15の間の部分とにおいて互いに融着部17において融着することにより、化学吸着層が膜状フィルターの内側に封止された状態になる。
【0011】
図2はケミカルアブソーバーの折り曲げないタイプのものであるが、図3は、ケミカルアブソーバーを折り曲げるタイプのものである。このタイプのケミカルアブソーバー21は、化学吸着部および膜状フィルター部22が2つに分離されていて、外縁部の融着部23は図2(b)における融着部17と同様であるが、その外に2つに分離されている分離部24も融着される。この分離部24でケミカルアブソーバー21を折り曲げることができる。もしこの分離部24がなくフィルター部22で折り曲げた場合には、フィルター部に損傷が入る可能性がある。但し、損傷の入る可能性がないか損傷が入っても問題ないケミカルアブソーバーである場合には、敢えて分離部24を形成する必要がない。このようなケミカルアブソーバー21を用いることにより、図1に示すようなレチクル収納容器1の角部に本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバー10を設置可能となる。尚、ケミカルアブソーバーを幾つかの部分に区切る必要がある場合にも、上記の分離部を形成することもできる。
【0012】
図4は、ケミカルアブソーバーを取り付けるためのケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下カートリッジという)の1実施形態を示す図である。カートリッジは、少なくともカートリッジ本体33およびストッパー34からなる。カートリッジ本体33を図4の(S)、(T)、(U)および(V)に示す。(S)は、カートリッジ本体33を表側から見た図、(T)は上から見た図、(U)は横から見た図、(V)は裏側から見た図である。この実施形態において、カートリッジ本体33は窓35を有していて、ケミカルアブソーバー31をカートリッジに取り付けて、レチクル収納容器にカートリッジ型ケミカルアブソーバーを固定したときに、ケミカルアブソーバー31の化学吸着層が存在する化学吸着層部30にレチクル収納容器内のガス(気体)が接触し通過しやすいような構造になっている。カートリッジ本体33の表側には、カートリッジ固定機構36を有している。カートリッジ固定機構は、レチクル収納容器に設けられたカートリッジ固定部(たとえば、ピン部)と結合して、カートリッジをレチクル収納容器に固定するものである。この実施形態においては、カートリッジ固定機構36は、B−Bにおける拡大断面図(X)に示すように、レチクル収納容器に設けられたカートリッジ固定部(たとえば、ピン部)を受ける溝部37を有するものである。レチクル収納容器のピンは溝部37の下方から挿入され、カートリッジをレチクル収納容器に固定する。この固定機構によりカートリッジはレチクル収納容器に固定され、レチクル収納容器の運搬時などにおける振動によってもカートリッジがズレたりして動くことはない。本実施形態においては、2箇所にカートリッジ固定機構36を設けているが、確実に固定できれば1箇所でも良いし、或いは、さらに固定を確実にするために3箇所以上に設けても良い。
【0013】
ケミカルアブソーバー31は、カートリッジ本体33およびストッパー34に挟まれて固定される。その際、カートリッジはケミカルアブソーバー31の抜け防止機構39を有することも可能である。カートリッジ本体33の表側に設置した抜け防止機構39のA−Aの拡大断面を(W)に示す。(W)に示されるように、カートリッジ本体33の抜け防止機構39は、少なくとも1つ以上の突起38を有する抜け防止突起部である。また、ストッパー34の抜け防止機構39は、前記突起を受け前記突起に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部である。ケミカルアブソーバー31は、この抜け防止機構39で抑えられて確実に固定され、レチクル収納容器に設置されて激しい振動が加わってもケミカルアブソーバー31がカートリッジ型ケミカルアブソーバーから抜けることはない。尚、ケミカルアブソーバー31の融着部35がこの抜け防止機構31に接触することが好適である。何故なら、抜け防止機構39は凹凸部でケミカルアブソーバー31を挟んでいるので、化学吸着部30をこの凹凸部により受けた場合には化学吸着部30に損傷を与えるおそれがあるからである。尚、抜け防止の突起がストッパーの厚さより高い場合には、その受け側を溝または穴にしても良い。
【0014】
また、抜け防止突起部がストッパー側に、それを受ける凹部または平面を有する抜け防止溝部がカートリッジ本体に設けられる抜け防止機構でも良いことは自明である。この実施形態においては、ケミカルアブソーバー31の抜け防止機構は、凹凸部によりケミカルアブソーバー31を挟んでケミカルアブソーバー31の抜け防止を行うものであるが、他の機構を有した抜け防止機構でも良い。たとえば、熱溶着や超音波融着で固定しても良いし、或いは汚染物質が発生しないような接着剤により固定しても良い。さらに、この抜け防止機構はカートリッジ本体およびストッパーの結合部分と兼用しても良い。
【0015】
カートリッジ本体33はストッパー34を固定するピン40を有していて、このピンがストッパー34の溝41と結合することにより、カートリッジ本体33にストッパー34が確実に固定される。この状態を拡大したものが、C−Cの拡大断面図(Y)および組み立てた状態のC−C近傍の拡大断面図(Z)である。カートリッジ本体のツメ(ピン)40がストッパーの溝41と嵌合してカートリッジ本体33およびストッパー34が結合する。尚、ツメ(ピン)がストッパー側に、それを受ける溝がカートリッジ本体に取り付けられていても良いことは自明である。さらに、この固定はピンおよび溝によるものに限られず、他の固定方法でも良い。たとえば、カートリッジ本体33およびストッパー34をクランプで固定しても良いし、熱溶着や超音波融着で固定しても良いし、或いは汚染ガスが発生しないような接着剤により固定しても良い。
【0016】
尚、カートリッジ本体およびストッパーの材質は、汚染ガス発生の比較的少ないか或いは全くないものが好ましい。たとえばポリプロピレン、ポリカーボネートやポリテトラフルオロエチレン樹脂などの熱硬化性樹脂、さらにはセラミックであり、或いは、ステンレス、クロム鋼、モリブデン鋼などの金属や合金でも良いし、さらにはこれらの組合せでも良い。
【0017】
図9は、ケミカルアブソーバーを取り付けるためのケミカルアブソーバー用カートリッジ(以下カートリッジという)の別の実施形態を示す図である。この実施形態に示すカートリッジは、カートリッジの中心付近にヒンジ部を有するもので、ヒンジ部でカートリッジを折り曲げることが可能である。カートリッジは、少なくともカートリッジ本体133およびストッパー134からなる。カートリッジ本体133を図9の(S)、(T)、(U)および(V)に示す。(S)は、カートリッジ本体133を表側から見た図、(T)は上から見た図、(U)は横から見た図、(V)は裏側から見た図である。この実施形態において、カートリッジ本体133は上部135が開いていて、ケミカルアブソーバー131をカートリッジに取り付けて、レチクル収納容器にカートリッジ型ケミカルアブソーバーを固定したときに、ケミカルアブソーバー131の化学吸着層が存在する化学吸着層部130にレチクル収納容器内のガス(気体)が接触し通過しやすいような構造になっている。カートリッジ本体133の表側には、カートリッジ固定機構136を有している。カートリッジ固定機構は、レチクル収納容器に設けられたカートリッジ固定部(たとえば、ピン部)と結合して、カートリッジをレチクル収納容器に固定するものである。この固定機構によりカートリッジはレチクル収納容器に固定され、レチクル収納容器の運搬時などにおける振動によってもカートリッジがズレたりして動くことはない。本実施形態においては、3箇所にカートリッジ固定機構136を設けている。図4に示す場合より1つ多いが、カートリッジを折り曲げる部分、すなわちヒンジ部142付近もしっかりとレチクル収納容器に固定するためである。但し、確実に固定できれば1箇所でも良いし、或いは、さらに固定を確実にするために4箇所以上に設けても良い。
【0018】
ケミカルアブソーバー131は、カートリッジ本体133およびストッパー134に挟まれて固定される。その際、カートリッジはケミカルアブソーバー131の抜け防止機構139を有することも可能であり、図4において説明した内容と同様である。
【0019】
カートリッジ本体133はストッパー134を固定するピン140を有していて、このピン140がストッパー134の溝141と結合することにより、カートリッジ本体133にストッパー134が確実に固定される。
【0020】
図9に示す実施形態においては、カートリッジはヒンジ部142を有していて、このヒンジ部142でカートリッジを折り曲げることができる。ケミカルアブソーバーもこれに対応して、図3において説明したものと同様の分離部132を有している。ケミカルアブソーバーをカートリッジ本体およびストッパーで挟持し固定したときに、この分離部132がヒンジ部142に配置するようにする。これによりケミカルアブソーバーのフィルター部130に損傷を与えることはない。
【0021】
図5は、図9に示したようなカートリッジ型ケミカルアブソーバーの個々の部品を組合わせた状態を示した図である。図5(a)はストッパー53側から見た図であり、図5(b)は図5(a)の裏側、すなわちカートリッジ本体側から見た図である。
【0022】
カートリッジ本体52はストッパー53と結合するツメ56を有していて、ストッパー53(53Aおよび53B)は前記ツメ56と結合する溝57を有している。図5(a)は、これらのツメ56および溝57が結合してストッパー53がカートリッジ本体52に組み合わされた状態を示している。ケミカルアブソーバー54は、カートリッジ本体52とストッパー53によって挟持され固定される。図には示されていないが、前述したように、ケミカルアブソーバーは、カートリッジ本体52とストッパー53に装備された抜け防止機構によってしっかりと押さえられていて、ケミカルアブソーバー54がカートリッジ型ケミカルアブソーバー51から移動したり抜けることはない。カートリッジ本体52は、レチクル収納容器のカートリッジ固定部(ピン)と結合し、カートリッジをレチクル収納容器に固定するためのカートリッジ固定機構(溝)58を有する。
【0023】
ストッパー53は2つの部分AおよびBに分かれていて(53Aおよび53Bで示す)、この2つのストッパーでケミカルアブソーバー54を押さえる。このように2つに分かれている場合は、それぞれについて確実にケミカルアブソーバー54を挟持できる。また、このストッパー53の上部部分はケミカルアブソーバー54の挟持(押さえ)部分がない。このようなストッパーの場合は、上部の挟持(押さえ)部分がない場所にもケミカルアブソーバーの化学吸着部61を配置することができるので、ケミカルアブソーバーの化学吸着部分の面積(体積)を大きくでき、汚染物質の吸着量を増やすことが可能である。また、ストッパーAおよびBを同じ形状およびサイズにすることもできるので、同一部品を裏返してAおよびBを取り替えて使用することも可能である。さらに、本実施形態においては、カートリッジ本体52の上部の挟持(押さえ)部分もないので、汚染物質がケミカルアブソーバーの一方側から入って、ケミカルアブソーバーで汚染物質を吸着除去し、汚染物質のなくなった状態(ガスを含む)で他方の側から出て行くことが可能であり、かつその逆もまた可能であるから、汚染物質の吸着除去効率がより一層向上する。図5から良く理解できるように、化学吸着部61にカートリッジ本体52およびストッパー53はケミカルアブソオーバー54の融着部62のみを押さえ、化学吸着部61を押さえないような構造となっている。これにより前述したように、化学吸着部61に力が加わったり化学吸着部61を損傷することもない。
【0024】
本実施形態においては、カートリッジの中心付近にヒンジ部60を有しているので、このヒンジ部60においてカートリッジ型ケミカルアブソーバー51を折り曲げることができる。従って、ヒンジ部をレチクル収納容器の蓋体角部などの曲がった所に合わせて折り曲げた状態で、カートリッジ型ケミカルアブソーバーを配置できる。尚、この実施形態ではケミカルアブソーバーを下側で保持しているが、ケミカルアブソーバー全面あるいは上側で保持しても良い。ストッパーおよびカートリッジ本体の固定は、突起(ツメ)および溝(または穴)により行っているが、熱溶着や超音波融着により固定しても良い。
【0025】
図6は、図9および図5に示すようなヒンジ部を有するカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の角部に設置した状態を示した図である。図6(a)はカートリッジ本体72が見えるように描いた図であり、図6(b)はストッパー73が良く分かるように描いた図である。図1に示した図について、レチクル収納容器の蓋体の内側から見た図と考えることもできる。カートリッジ本体72、ケミカルアブソーバー74およびストッパー73を結合したカートリッジ型ケミカルアブソーバーを、カートリッジのヒンジ部80で約90度折り曲げて、レチクル収納容器の蓋体にカートリッジ固定機構部78において固定する。カートリッジのヒンジ部80は蓋体角部75の付近に設置される。このようにヒンジ部を有するカートリッジ型ケミカルアブソーバーによって、蓋体のスペースを有効に用いてレチクル収納容器の化学物質を効果的に吸着除去することが可能となる。
【0026】
図7は、図4に示したようなカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態の他の実施形態を示す図である。カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、蓋体の側面にほぼ平行に、蓋体の1つの側面全体に配置されている。従って、かなり広い面積(または体積)のケミカルアブソーバーを設置できるので、レチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となる。図7においては、レチクル収納容器蓋体の1つの側面81にのみカートリッジ型ケミカルアブソーバー82を配置して示しているが、他の側面にも配置しても良く、さらにレチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となる。さらに、この図からも分かるように、蓋体上面83にも全面または部分的にカートリッジ型ケミカルアブソーバーを設置可能である。この場合は、かなりの広い面積のケミカルアブソーバーを配置できるので、さらに、レチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となることは言うまでもない。
【0027】
図8は、図7と同様のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態を示す図であり、レチクルとの位置関係を示す図である。図8(a)は蓋体側面から蓋体内部を透視して見た図である。図8(b)は、ケミカルアブソーバーの配置が良く分かるように、ケミカルアブソーバーの配置部分を拡大したものである。カートリッジ型ケミカルアブソーバー91は、蓋体側面92に沿ってほぼ平行に配置されている。レチクル95との位置関係については、この図から分かるように、カートリッジ型ケミカルアブソーバー91とレチクル95とのなす角度が約80度以上、好適には90度である。このようにすることにより、レチクル収納容器内部に存在する汚染物質を効果的・効率的にケミカルアブソーバーによって吸着除去できるので、レチクル表面付近におけるガスの清浄度を高めることができる。
【0028】
図8には示していないが、カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器本体底面94にも設置可能である。すなわち、レチクル95に対して約10度以下、好適には0度の角度を有してカートリッジ型ケミカルアブソーバーを配置する。この場合も、かなり広い面積のケミカルアブソーバーを配置できるので、さらにレチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となることは言うまでもない。特にレチクル95下面(レチクル収納容器本体底面94側)に最も近い所にケミカルアブソーバーが存在するので、レチクル95下面付近の汚染物質を効果的・効率的にケミカルアブソーバーによって吸着除去できる。この結果、レチクル95下面付近におけるガスの清浄度を高めることができる。
【0029】
さらに、図8には示していないが、カートリッジ型ケミカルアブソーバーは、レチクル収納容器蓋体上面93にも設置可能である。すなわち、レチクル95に対して約10度以下、好適には0度の角度を有してカートリッジ型ケミカルアブソーバーを配置する。この場合も、かなりの広い面積のケミカルアブソーバーを配置できるので、さらに、レチクル収納容器の内部の汚染物質を大量に十分に吸着することができ、レチクル収納容器の内部を充分清浄に保持することが可能となることは言うまでもない。特にレチクル95上面(レチクル収納容器蓋体上面93側)に最も近い所にケミカルアブソーバーが存在するので、レチクル95上面付近の汚染物質を効果的・効率的にケミカルアブソーバーによって吸着除去できる。この結果、レチクル95上面付近におけるガスの清浄度を高めることができる。
【0030】
図10は、カートリッジ本体とストッパーが一体化している場合の実施例を示す図である。カートリッジ本体とストッパーが一体化している場合におけるカートリッジをカートリッジ部と呼ぶ。すなわち、カートリッジ部は、カートリッジ本体、ストッパーおよびカートリッジ本体とストッパーを連結する連結部からなる。図10(a)はカートリッジ部200を組立て前の状態の平面図を示し、図10(b)はその組立て前の状態におけるカートリッジ部200の上面図であり、図10(c)は図10(a)の裏側から見た図であり、図10(d)はその組立て前の状態におけるカートリッジ部200の側面図である。
【0031】
図10(a)に示すように、カートリッジ本体201とストッパー202は、連結部204により連結していて、一体化している。よって、カートリッジ本体とストッパーと連結部は一つの部品として成形できる。従って、(図4および図9に示すような)カートリッジ本体とストッパーが別個になっている場合に比べて、成形金型個数を削減することができ、かつ一体物となっていることにより、部品点数を削減できるだけでなく、カートリッジ本体とストッパーの材質を同一にすることも容易であり品質も均一化し安定する。このようにすることにより、カートリッジ本体201、ストッパー202および連結部204は1つの金型で同時に成形することができる。また、1回の成形によりカートリッジ作製を行うことができるので、工数の大幅削減とそれによるコストダウンをはかることができる。図10における実施例では、カートリッジ本体201の中央付近にヒンジ部210を有していて折り曲げることができるようになっている。すなわち、折り曲げないで使用することもできるし(ストレートタイプと呼ぶ)、ヒンジ部210で折り曲げて使用することもできる(折り曲げタイプと呼ぶ)ようになっている。このように、ストレートタイプと折り曲げタイプの兼用が可能で、この点からも金型個数や工数を削減することができるし、全体の部品点数も少なくすることもできるので、カートリッジ部の大幅なコストダウンが可能である。
【0032】
図10(a)から分かるように、カートリッジ本体201は、図4に示すものと同様な窓205とそのまわりを囲む(カートリッジ本体)フレーム203からなる長方形形状になっている。また、カートリッジ本体201は、嵌合機構(溝部)206およびケミカルアブソーバー押さえ207を有している。
【0033】
図10(a)に示すように、ストッパー202は2つの部分202Aおよび202Bに分かれている。このストッパー202の分離部分202Aおよび202Bは、カートリッジ本体201のヒンジ部210を挟んだ左右の部分に対応している。ストッパー202Aおよび202Bは、それぞれカートリッジ本体201に連結部204を介してつながっていて、カートリッジ本体と一体になっている。また、ストッパー202(すなわち、202Aおよび202B)も窓209とそのまわりを囲む(ストッパー)フレーム208からなる長方形形状になっている。さらに、ストッパー202は、嵌合機構(凸部)211およびケミカルアブソーバー押さえ212を有している。
【0034】
カートリッジ部200の上面図である図10(b)から分かるように、図4および図9と同様のカートリッジ固定機構(溝部)213を有している。ヒンジ部210を挟んで、カートリッジ本体は左右に分離されていて、ストッパー202もストッパーA(202A)とストッパーB(202B)に分かれている。
【0035】
図10(c)は、図10(a)に示すカートリッジ部200の裏側を示す図であるが、こちらの側にケミカルアブソーバーが搭載される。ケミカルアブソーバーは、ストレートタイプになる場合には図4に示すような分離部のないものでも図9に示すような分離部のあるものでも良いが、折り曲げタイプになる場合には図9に示すような分離部のあるものが望ましい。何故なら、図4に示すような分離部のないものは折り曲げたときにケミカルアブソーバーも折れ曲がるので、ケミカルアブソーバーにダメージが入る可能性があるからである。
【0036】
ケミカルアブソーバーがカートリッジ本体201にセットされ、連結部204が折り曲げられ、ケミカルアブソーバーはカートリッジ本体201とストッパー202に挟まれて固定される。しかし、単純に押さえただけではケミカルアブソーバーが抜けたりずれたりするので、図10(c)に示すように、カートリッジ本体201には抜け防止機構215がついていて、ストッパー202についている抜け防止機構214と協同してケミカルアブソーバーを固定する。この抜け防止機構は、図10(c)においては、ストッパー202側の抜け防止機構214の1つの突起がカートリッジ本体201側における2つの突起の間に嵌合するようになっていて、ケミカルアブソーバーの周縁部をカートリッジ本体201とストッパー202の両方から押さえつけたり、および/またはこれらの突起がケミカルアブソーバーの周縁部に食い込んだりして、ずれを防止または抜けを防止できるようになっている。もちろん片方の突起だけで充分ケミカルアブソーバーの抜け防止またはズレ防止が可能であれば、片方だけの突起だけでも良い。或いは、もっと確実にケミカルアブソーバーの抜け防止またはズレ防止を行う必要があれば、突起を増やしたり抜け防止機構を増やしたりしても良い。上記の抜け防止機構の場合は、ケミカルアブソーバーを取り外したり交換したりすることも容易である。或いは、抜け防止機構は他の方式でも良い。ケミカルアブソーバーの周縁部をカートリッジ本体201のフレーム203やストッパー202のフレーム208に接着や熱圧着し付着することにより、ケミカルアブソーバーがカートリッジ部から抜けたり、或いはケミカルアブソーバーがカートリッジ部内でずれたりすることが防止できる場合には、図10(c)に示す抜け防止機構214や215は必ずしも必要がない。また、1種類の抜け防止機構だけでなく、種々の抜け防止機構を組み合わせて良い。
【0037】
連結部204が折り曲げられ、ストッパー202の嵌合機構(凸部)211がカートリッジ本体201の嵌合機構(凹部または穴)206と嵌合されて、カートリッジ本体201とストッパー202が固定される。尚、ストッパー側に嵌合機構(凹部または穴)があり、カートリッジ本体側に嵌合機構(凹部または穴)があっても良いし、これらを混在させて組み合わせても良い。さらに、この固定方法は一種のスナップ方式であるが、上記の嵌合機構(凸部および凹部等)以外のスナップ方式や、或いは別の固定方式でも良い。たとえば、接着剤を用いたり、熱圧着等で固定したりしても良い。上記のスナップ方式の場合には、固定したカートリッジ本体201とストッパー202を再度分離することもできるので、繰り返して使用することができる。たとえば、ケミカルアブソーバーだけを交換することもできるし、固定されたカートリッジ本体201とストッパー202の固定状態をはずして内側を洗浄することもできる。また、カートリッジ本体とストッパーの固定は種々の固定方法を組み合わせても良い。
【0038】
この固定された状態を示した図が図11と図12である。図11はストレートタイプであり、図12は折り曲げタイプである。容器に取り付けた場合において、図11(a)は容器壁側から見た図であり、図11(b)は容器内側から見た図である。連結部204で折り曲げられて、カートリッジ本体201およびストッパー202は嵌合機構206、211によってしっかりと固定されている。また、ケミカルアブソーバー220もカートリッジ本体201とストッパー202に挟まれて固定されている。この状態で、カートリッジはたとえば図7に示されるように容器にセットされる。図11においては容器内側の方にカートリッジ固定機構(溝部)213があるが、容器壁側にスペースがある場合には、容器壁側の方にカートリッジ固定機構(溝部)213があっても良い。容器側にカートリッジ固定機構(凸部)があり、カートリッジ固定機構(溝部または凹部または穴等)213と嵌合してカートリッジ部200が容器に固定される。尚、カートリッジ固定機構(凸部)がカートリッジ部側に、カートリッジ固定機構(凹部)が容器側にあっても良い。容器の洗浄性という観点からは、容器側のカートリッジ固定機構は凸部形状であることが望ましい。
【0039】
容器内の気体が窓209を通してケミカルアブソーバー220を通過して、容器内の気体中の不純物がケミカルアブソーバー220に吸収および/または吸着されて、容器内の雰囲気が清浄化される。尚、ケミカルアブソーバー220はケミカルアブソーバー押さえ207、212によって、窓209からケミカルアブソーバー220がはみ出さないように押さえられている。ケミカルアブソーバー220が窓からはみ出すおそれがなければ、ケミカルアブソーバー押さえはなくても良い。ストレートタイプの場合は、ヒンジ部210においては、当然折り曲げられていない。また、図7においては、カートリッジ部の面を蓋体や容器本体の側面に平行に配置するように描いているが、蓋体上面や容器本体底面に平行に配置しても良い。図10〜12においてカートリッジ固定機構はカートリッジ部の面から突き出しているが、カートリッジ固定機構はカートリッジ部の面と平行な位置にあっても良い。この場合にはカートリッジ部のカートリッジ固定機構の溝部はカートリッジ部の面に対して垂直方向に向いていて、容器側のカートリッジ固定機構(凸部)もカートリッジ設置面に存在し、容器側のカートリッジ固定機構(凸部)はカートリッジ部の面に対して垂直方向に向いている。
【0040】
図12(a)は容器内側から見た図であり、図12(b)は容器壁側から見た図である。カートリッジ部200はカートリッジ本体201のヒンジ部210において折り曲げられている。ストッパー202はカートリッジ201のヒンジ部210を挟んで2つに分離されているので、ストッパー202に関係なくカートリッジ本体201のヒンジ部210の曲げに対応してカートリッジ部が折り曲げられる。容器にセットされる状態に合わせて、カートリッジ本体201のヒンジ部210において任意に折り曲げ角度を調整できる。図12においては、カートリッジ固定機構(溝部)213が容器壁側に存在しているが、容器壁側にスペースがない場合には、容器内側にカートリッジ固定機構(溝部)を持ってきても良い。図12で示す折り曲げタイプのカートリッジは図6に示す場合と同様に、蓋体や容器本体のコーナー部に設置される。
【0041】
カートリッジ固定機構213の他に、カートリッジ本体やストッパーに図11(a)および図12(a)に示すような凹状部219、221を設けて、カートリッジ部200がカートリッジ固定機構213で容器に固定されたときに、容器側に備えた突状部(図示せず)と係合または嵌合させてカートリッジ部200を容器に確実に固定させても良い。これら凹状部219、221(およびこれらと係合する容器側の突状部)を設けて容器と固定させることにより、上下方向へのカートリッジ部の抜けやズレを確実に防止することができる。特に、搬送時などの振動が加わった場合には有効な手段となる。容器側の突状部はカートリッジ部の設置面に備えるだけでなく、カートリッジ部設置面と垂直な面に備えても良い。尚、カートリッジ部側に突状部を設け、容器側に備えた凹状部と係合させても良い。さらに、このような凹状部または突状部は、図10〜12に示すカートリッジ固定機構213と同様にカートリッジ本体やストッパーの面からはみ出させても良い。或いは、カートリッジ固定機構213を補助する他の係合手段または嵌合手段を用いても良い。
【0042】
以上説明したように、図10に示すようなカートリッジは図11および図12に示すようにストレートタイプにも折り曲げタイプにも使用できるので、極めて応用力が高いことが分かる。このようなカートリッジを使用することにより、カートリッジ型ケミカルアブソーバーの大幅なコスト低減が可能となる。
【0043】
図10におけるストッパー202Bは長方形形状であるカートリッジ本体201の長辺側に連結部204を介してつながっているが、カートリッジ本体201の短辺側(図10(a)に示すC、D)に連結部を介してつなげても良い。この場合、カートリッジ部一体だけの金型は横長になるが、縦にカートリッジ部を複数配列することにより正方形に近いバランスの良い成形金型にすることができるという利点もある。
【0044】
本明細書にて説明したカートリッジ本体、ストッパーおよび連結部等のカートリッジを構成する材料は、主として高分子材料である。高分子材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、PEE(ポリエステルエラストマー)、PBTE(ポリブチレンテレフタレートエラストマー),PBNE(ポリブチレンナフタレートエラストマー)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PUE(ポリウレタンエラストマー)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などが挙げられる。これらの高分子材料は1種類だけでなく、複数組み合わせて用いても良い。
【0045】
本明細書においては、主にレチクル収納ケースについて説明したが、半導体または液晶等のマスクを使用する分野において使用されるマスク収納容器、半導体等の分野に用いられるウエハ収納容器や半導体収納容器、あるいは表示体等や太陽電池に用いられる基板等の収納容器にも適用可能である。これらの場合において収納ケース(容器)内に配置されるレチクルに相当するものは、マスク収納容器ではマスクであり、ウエハ収納容器や半導体収納容器ではウエハや半導体基板であり、レチクルも含めたこれらを総称すると基板と称することができる。従って、レチクル収納容器も含めたこれらの収納容器を総称すると基板収納容器と称することができる。さらに、本明細書の各実施形態にて説明した内容について、ある実施形態において説明したことであって、他の実施形態において説明していない内容についても、当該実施形態と矛盾しない範囲内で適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、半導体プロセス等におけるレチクルまたはフォトマスク処理工程において、利用することができる。特に、レチクル、フォトマスクまたは半導体を用いる半導体産業において、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器に配置した状態を示す図である。
【図2】図2は、本発明に用いられるケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図3】図3は、本発明に用いられる折り曲げるタイプのケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図4】図4は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図5】図5は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの実施形態を示す図である。
【図6】図6は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの他の実施形態を示す図である。
【図7】図7は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態を示す図である。
【図8】図8は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーをレチクル収納容器の蓋体の側面に取り付けた状態を示す図である。
【図9】図9は、本発明のカートリッジ型ケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図10】図10は、カートリッジ本体とストッパーが一体となったカートリッジ型ケミカルアブソーバーの構造を示す図である。
【図11a】図11a(図11(a))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーのストレートタイプを示す図で、容器壁側から見た図である。
【図11b】図11b(図11(b))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーのストレートタイプを示す図で、容器内側から見た図である。
【図12a】図12a(図12(a))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーの折り曲げタイプを示す図で、容器内側から見た図である。
【図12b】図12b(図12(b))は、一体型カートリッジ型ケミカルアブソーバーの折り曲げタイプを示す図で、容器壁側から見た図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・レチクル収納容器(ケース)、2・・・蓋体上面、
3・・・レチクル収納容器本体底面、4・・・レチクル、5・・・上側リテーナ、
6・・・下側リテーナ、7・・・固定スライダー、8・・・シール材、
9・・・呼吸弁、10・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
11・・・ケミカルアブソーバー、12、13・・・膜状フィルター、
14・・・酸性物質用吸着層、
15・・・有機物質用吸着層、16・・・アルカリ性物質用吸着層、17・・・融着部、
21・・・ケミカルアブソーバー、22・・・化学吸着部および膜状フィルター部、
23・・・熱融着部、24・・・分離部、30・・・化学吸着部、
31・・・ケミカルアブソーバー、32・・・融着部、33・・・カートリッジ本体、
34・・・ストッパー、35・・・窓、36・・・カートリッジ固定機構(溝部)、
37・・・溝部、38・・・突起、39・・・抜け防止機構、
40・・・ピン、41・・・溝、51・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
52・・・カートリッジ本体、53・・・ストッパー、53A・・・ストッパーA、
53B・・・ストッパーB、54・・・ケミカルアブソーバー、55・・・分離部
56・・・ツメ、57・・・溝、58・・・カートリッジ固定機構(溝)、
61・・・化学吸着部、62・・・融着部、71・・・蓋体側面、
72・・・カートリッジ本体、73・・・ストッパー、74・・・ケミカルアブソーバー、
75・・・蓋体角部、76・・・ツメ(溝)、77・・・蓋体上面、
78・・・カートリッジ固定機構、80・・・ヒンジ部、
81・・・蓋体側面、82・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
83・・・蓋体上面、91・・・カートリッジ型ケミカルアブソーバー、
92・・・蓋体側面、93・・・蓋体上面、94・・・本体底面、95・・・レチクル、
96・・・呼吸弁、97・・・キャップ、98・・・下面支持突起、99・・・リップ条、
100・・・凸条、101・・・シール、102・・・シール受部、
103・・・上面支持リテーナ、104・・・バネ体、130・・・化学吸着層部、
131・・・ケミカルアブソーバー、132・・・分離部、
133・・・カートリッジ本体、134・・・ストッパー、135・・・上部(開口部)、
136・・・カートリッジ固定機構(溝部)、139・・・抜け防止機構、
140・・・ピン、141・・・溝、142・・・ヒンジ部、
200・・・カートリッジ部、201・・・カートリッジ本体、202・・・ストッパー、
203・・・フレーム、204・・・連結部、205・・・窓、
206・・・嵌合機構(溝部)、207・・・ケミカルアブソーバー押さえ、
208・・・フレーム、209・・・窓、210・・・ヒンジ部、
211・・・嵌合機構(凸部)、212・・・ケミカルアブソーバー押さえ、
213・・・カートリッジ固定機構(溝部)、214、215・・・抜け防止機構、
219、221・・・凹状部、220・・・ケミカルアブソーバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質等を吸着し除去するケミカルアブソーバーおよび前記ケミカルアブソーバーを基板収納容器の内部に固定し取り付けるカートリッジから少なくとも構成される基板収納容器の内部に装着されるカートリッジ型ケミカルアブソーバーであって、前記カートリッジは、少なくともカートリッジ本体およびストッパーからなるとともに、前記カートリッジ本体およびストッパーにより前記ケミカルアブソーバーを挟持し固定することを特徴とするカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項2】
上記基板収納容器は、上記カートリッジを固定するためのカートリッジ固定部を有し、前記カートリッジは、前記基板収納容器の前記カートリッジ固定部と結合し、前記カートリッジを前記基板収納容器に固定するためのカートリッジ固定機構を有するとともに、ケミカルアブソーバー抜け防止機構を有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項3】
上記カートリッジ本体およびストッパーは連結部を介して一体となっていて、前記連結部を折り曲げることにより前記カートリッジ本体およびストッパーを合わせて固定可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項4】
上記基板収納容器のカートリッジ固定部はピン形状であり、上記カートリッジのカートリッジ固定機構は前記ピン形状と嵌合する溝または穴形状であることを特徴とする、請求項2または3に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項5】
上記ケミカルアブソーバー抜け防止機構は、上記カートリッジ本体およびストッパーに設けられていて、前記両者が相互に協同していることを特徴とする、請求項2〜4に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項6】
上記カートリッジ本体およびストッパーは、上記ケミカルアブソーバーを両者の間に挟持した状態において、堅嵌め、熱溶着または超音波融着により固定および結合されていて、前記ケミカルアブソーバーが上記カートリッジより抜け出すことを防止する抜け防止機構を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項7】
上記抜け防止機構は、少なくとも1つ以上の突起を有する抜け防止突起部、および前記突起を受ける前記突起に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項8】
上記カートリッジは、ヒンジ部を有していて、ヒンジ部において前記カートリッジを曲げることにより上記基板収納容器の角部に設置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項9】
上記カートリッジは、上記ヒンジ部で折り曲げて上記基板収納容器コーナー部に設置できるだけでなく、折り曲げずに前記基板収納容器内面に設置できるようになっていることを特徴とする、請求項1〜8に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項1】
汚染物質等を吸着し除去するケミカルアブソーバーおよび前記ケミカルアブソーバーを基板収納容器の内部に固定し取り付けるカートリッジから少なくとも構成される基板収納容器の内部に装着されるカートリッジ型ケミカルアブソーバーであって、前記カートリッジは、少なくともカートリッジ本体およびストッパーからなるとともに、前記カートリッジ本体およびストッパーにより前記ケミカルアブソーバーを挟持し固定することを特徴とするカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項2】
上記基板収納容器は、上記カートリッジを固定するためのカートリッジ固定部を有し、前記カートリッジは、前記基板収納容器の前記カートリッジ固定部と結合し、前記カートリッジを前記基板収納容器に固定するためのカートリッジ固定機構を有するとともに、ケミカルアブソーバー抜け防止機構を有することを特徴とする、請求項1に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項3】
上記カートリッジ本体およびストッパーは連結部を介して一体となっていて、前記連結部を折り曲げることにより前記カートリッジ本体およびストッパーを合わせて固定可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項4】
上記基板収納容器のカートリッジ固定部はピン形状であり、上記カートリッジのカートリッジ固定機構は前記ピン形状と嵌合する溝または穴形状であることを特徴とする、請求項2または3に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項5】
上記ケミカルアブソーバー抜け防止機構は、上記カートリッジ本体およびストッパーに設けられていて、前記両者が相互に協同していることを特徴とする、請求項2〜4に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項6】
上記カートリッジ本体およびストッパーは、上記ケミカルアブソーバーを両者の間に挟持した状態において、堅嵌め、熱溶着または超音波融着により固定および結合されていて、前記ケミカルアブソーバーが上記カートリッジより抜け出すことを防止する抜け防止機構を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項7】
上記抜け防止機構は、少なくとも1つ以上の突起を有する抜け防止突起部、および前記突起を受ける前記突起に対応する少なくとも1つ以上の凹部または平面を有する抜け防止溝部からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項8】
上記カートリッジは、ヒンジ部を有していて、ヒンジ部において前記カートリッジを曲げることにより上記基板収納容器の角部に設置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【請求項9】
上記カートリッジは、上記ヒンジ部で折り曲げて上記基板収納容器コーナー部に設置できるだけでなく、折り曲げずに前記基板収納容器内面に設置できるようになっていることを特徴とする、請求項1〜8に記載のカートリッジ型ケミカルアブソーバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【公開番号】特開2008−284546(P2008−284546A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105854(P2008−105854)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【出願人】(596042578)日本ピュアテック株式会社 (15)
【出願人】(506224218)アドハンド株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【出願人】(596042578)日本ピュアテック株式会社 (15)
【出願人】(506224218)アドハンド株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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