カーボンファイバーの製造方法及びそれを使用した電子放出素子の製造方法、電子デバイスの製造方法、画像表示装置の製造方法および、該画像表示装置を用いた情報表示再生装置
【課題】 良好な特性を備えるカーボンファイバーを均一性高く基体上に形成する。
【解決手段】 カーボンファイバーの製造方法であって、第1の触媒材料と、第2の触媒材料を含む触媒粒子との積層体を、基体上に配置し、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、第1の触媒材料と第2の触媒材料とからなる触媒粒子を基体上に形成し、その後第1の触媒材料と第2の触媒材料とからなる触媒粒子と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、基体上にカーボンファイバーを成長させる。
【解決手段】 カーボンファイバーの製造方法であって、第1の触媒材料と、第2の触媒材料を含む触媒粒子との積層体を、基体上に配置し、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、第1の触媒材料と第2の触媒材料とからなる触媒粒子を基体上に形成し、その後第1の触媒材料と第2の触媒材料とからなる触媒粒子と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、基体上にカーボンファイバーを成長させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンファイバーの製造方法及びそれを使用した電子放出素子の製造方法、電子デバイスの製造方法、画像表示装置の製造方法および画像表示装置を用いた情報表示再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にカーボンファイバーを作製する方法としては、様々な手法が発表されている。その一例としては、例えば、まず、基板上に触媒膜を形成し、次いで当該触媒膜を還元凝集させることにより触媒粒子を基板上に形成し、さらに、触媒粒子を用いて炭化水素等の炭素化合物を熱分解することにより、触媒粒子が配置されていた場所にカーボンファイバーを製造する方法がある。
【0003】
また、触媒として複数の金属からなる触媒を用いてカーボンファイバーを成長させる方法が特許文献1〜5に開示されている。そして、近年では、触媒から成長させたカーボンファイバーを電子放出素子に用いる技術が注目されている(特許文献3〜5)。
【特許文献1】特開平3−260119号公報
【特許文献2】特開2002−115057号公報
【特許文献3】米国特許第5973444号明細書
【特許文献4】特開2002−150925号公報
【特許文献5】特開2004−115959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した触媒膜から触媒粒子を形成する方法においては、基板上における触媒粒子の密度、触媒粒子間の間隔、触媒粒子の直径、触媒粒子の組成(合金比率)などを任意に制御することは必ずしも簡単ではなかった。
【0005】
特に、良好な特性を備えるカーボンファイバーを形成することのできる、多数の金属を含む触媒粒子(典型的には合金触媒粒子)を、所望の組成、形状、配列で、基板上に再現性良く配置することが難しかった。そのため、均一性が高く、良好な特性を備える多数のカーボンファインバーを、簡易な方法で、基板上に再現性良く、形成することが困難であった。
【0006】
そこで、触媒粒子の密度を制御することでカーボンファイバーの配置を制御すること、触媒粒子の粒径を制御することでカーボンファイバーの直径を制御すること、触媒粒子の組成比率(合金比率)を制御することで結晶性等のカーボンファイバーの特性を制御すること、を同時に解決する手法の開発が望まれていた。
【0007】
そして、特には、電子放出素子の電子放出材として良好な特性を持つカーボンファイバーを制御性良く製造するために、基板上に合金触媒粒子を、複雑なプロセスを必要とせずに配置する方法が望まれていた。
【0008】
本発明は、多数の触媒材料からなる触媒粒子を基板上に所望の形状、組成、配列で形成することで、良好な特性を備えるカーボンファイバーを製造する製造方法、及び該カーボンファイバーを用いた電子放出素子並びに電子デバイスの製造方法、並びに、該電子放出素子を備える画像表示装置の製造方法を提供するである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カーボンファイバーの製造方法であって、第1の触媒材料と、前記第1の触媒材料とは異なる第2の触媒材料を含む触媒粒子との積層体を、基体上に配置する第1工程と、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とからなる触媒粒子を前記基体上に形成する第2工程と、前記触媒粒子と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、前記基体上にカーボンファイバーを成長させる第3工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記本発明は、また、「前記第1工程は、前記第1の触媒材料を膜状に前記基体上に配置する工程と、前記膜状に配置された前記第1の触媒材料の上に、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を配置する工程と、を含むこと」、「前記第1工程は、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を覆うように前記第1の触媒材料を配置する工程と、を含むこと」、「前記第2の触媒材料が非磁性材料であり、前記第1の触媒材料が磁性材料であること」、「前記第1工程は、各々が前記第2の触媒材料を含む複数の触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、前記複数の触媒粒子同士が前記第1の触媒材料によって繋がらないように、前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程と、を含むこと」、「前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程は、前記第1の触媒材料を含む溶液を、前記複数の触媒粒子に接触させることで、各々の前記複数の触媒粒子上に、前記第1の触媒材料を析出させる工程を含む、こと」、「前記第2の触媒材料がPdであり、前記第1の触媒材料がFe、Ni、Coのいずれかを含むこと」、「前記第2工程は、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料との合金からなる合金触媒粒子を形成する工程であること」、をも特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記カーボンファイバーの製造方法を、カーボンファイバーを備える電子デバイスの製造方法、カーボンファイバーを備える電子放出素子の製造方法およびカーボンファイバーを備える電子放出素子を用いた画像表示装置の製造方法に適用することをも、その特徴とするものである。
【0012】
そして、本発明は、また、放送信号に含まれる映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを出力する受信器と、上記製造方法により製造された画像表示装置とを少なくとも備える情報表示再生装置をも、その特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粒径、合金比率、粒子間隔が制御された、多数の触媒粒子を基体上に再現性良く配置することができ、その結果、これらの触媒粒子からカーボンファイバーを成長させることにより、基体上に電子放出特性に優れたカーボンファイバーを多数配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明のカーボンファイバーの製造方法、電子放出素子の製造方法について説明する。
【0015】
尚、本発明における「カーボンファイバー」とは、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、アモルファスカーボンファイバー、ダイアモンドファイバーなどを含む。また「カーボンファイバー」は炭素を含むファイバーであり、炭素を主成分とするファイバーであることが好ましい。また、カーボンファイバーの直径は、カーボンファイバーを電子放出素子などの電流をカーボンファイバーに流す電子デバイスに用いる場合には、1nm以上1μm以下であることが好ましく、1nm以上500nm以下であることがより好ましく、5nm以上100nm以下であることが安定な電流供給を実現する上で更に好ましい。また、カーボンファイバーの長さは直径の5倍以上であることが好ましい。
【0016】
以下に、図10を参照しながら、本発明のカーボンファイバーの製造方法について、まず、簡単に説明する。本発明において、カーボンファイバーは、以下の工程1〜工程3によって基本的に形成することができる。(工程1)第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体が配置された基体1を用意する(図10(a))。(工程2)次に、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む触媒粒子5を基体1上に形成する(図10(b))。(工程3)そして、基体1上に配置された触媒粒子5と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、前記基体1上にカーボンファイバー6を成長させる(図10(c))。
【0017】
以下、上記各工程について詳細に図11を用いて説明する。
【0018】
(工程1)
図10(a)で示した基体1は、さらに、図11(a)に示す様に、その表面に電極(導電膜)2を備えることもできる。特に、工程3で形成するカーボンファイバーを電子デバイスに応用する場合には、基体1は少なくとも表面に電極(導電膜)2を備えることが好ましい。基体1自体が金属などの導電性の材料であれば電極(導電膜)2を必ずしも設ける必要はない。基体1の材料としては様々な材料を用いることができるが、好ましくはガラスを用いる。基体1の材料としてガラスを用い、カーボンファイバーを電子デバイスに応用する場合には、基体1の表面に電極(導電膜)2を備えることが好ましい。
【0019】
また、基体1(または電極2)を構成する材料と、第1の触媒材料及び/又は第2の触媒材料とが化学的に反応し易い場合には、第1の触媒材料及び/又は第2の触媒材料との反応性が基体1(または電極2)よりも低い材料からなる層を基体1(または電極2)の表面に設けることが好ましい。尚、基板1(または電極2)上に形成したカーボンファイバーを、そのまま電子放出素子などの電子デバイスに用いる場合には、上記層としては導電性材料層であることが好ましい。このような特性を持つ層(導電性材料層)として望ましい材料として、遷移金属の窒化物がある。遷移金属の窒化物としては、例えば、TiN、ZrN、TaN、HfN、VN、CrNが挙げられる。また、薄ければTiOxなどの酸化物も使用可能である。また、このような中間層は、電極と触媒層との間に配置することで、電極の材料の選択範囲を広げることができる。
【0020】
第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体は、例えば、以下の手順で形成することができる。即ち、まず、第2の触媒材料を含む粒子3を基体1(又は電極2)上に配置する(図11(b))。その後、第2の触媒材料を含む粒子3を第1の触媒材料4で被覆する(図11(c))。尚、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4との積層体を、多数配置する場合には、積層体同士が間隔を置いて基体1(または電極2)上に配置される。
【0021】
第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体は、また、第1の触媒材料を含む膜を基体1(電極2)上に配置し、その上に第2の触媒材料を含む粒子3を配置することで形成することもできる。
【0022】
第2の触媒材料を含む粒子は、上述したカーボンファイバーの直径を考慮して、その粒径(直径)が1nm以上100nm未満の範囲に設定することが好ましい。また、第2の触媒材料を含む粒子の粒径分布は、小さいものが好ましい。
【0023】
第2の触媒材料を含む粒子の配置方法としては、予め用意した第2の触媒材料を含む粒子を基体1(又は電極2)上に配置することが好ましい。そして、第2の触媒材料を含む粒子の具体的な配置方法としては、第2の触媒材料を含む粒子の分散液を塗布する手法を採用する方法や、第2の触媒材料を含む粒子をガスデポジション法により配置する手法などを採用することができる。
【0024】
第2の触媒材料を含む粒子の分散液を塗布する手法を採用する場合には、例えば、第2の触媒材料を含む粒子の分散液を基体1(又は電極2)上に塗布した後に、加熱などにより溶媒などの不要な物質を除去し、更にその後、第2の触媒材料を含む粒子を還元処理することで得ることができる。このようにすれば、分散液中における第2の触媒材料を含む粒子の濃度を調整すること、及び/あるいは、基体1(又は電極2)上に塗布する条件を調整すること、により、基体1(又は電極2)上における、第2の触媒材料を含む粒子同士の間隔を調整することができるので好ましい。
【0025】
あるいは、また、第2の触媒材料からなる膜を基体1(又は電極2)上に成膜し、この膜を加熱することにより凝集させて第2の触媒材料からなる粒子を多数、基体1(又は電極2)上に形成することもできる。第2の触媒材料からなる膜は、スパッタ法や、第2の触媒材料の溶液(例えば第2の触媒材料の錯体溶液)を基体1(又は電極2)上に塗布し焼成する方法など、周知の成膜方法を採用することができる。尚、上記第2の触媒材料の溶液は、主溶媒が水であることが生産性の観点から望ましい。
【0026】
尚、第1の触媒材料の上に第2の触媒材料からなる粒子を配置する場合には、第1の触媒材料を基体1(又は電極2)上に形成した後に、上述した方法で、第1の触媒材料の上に第2の触媒材料からなる粒子を配置すればよい。
【0027】
第2の触媒材料を含む粒子3の分散液には、粒子同士の凝集を防ぐための保護剤が含まれていてもよい。保護剤としては高分子や界面活性剤や金属配位子を用いることができる。基体1(又は電極2)上に上記分散液を塗布した後に、加熱処理することにより保護剤は除去することができる。尚、溶媒や保護剤などの除去のための加熱処理などによって、第2の触媒材料を含む粒子3が酸化した場合には、上記還元処理を施すことによって、第2の触媒材料を含む粒子3の触媒能力を発現させることができる。尚、第2の触媒材料を含む粒子3が酸化し難い材料であるのならば、上記還元処理は必ずしも必要としない。
【0028】
また上記加熱処理により下地(基体1(又は電極2)あるいは第1の触媒材料)と第2の触媒材料を含む粒子3との密着性を向上することができる。
【0029】
尚、第2の触媒材料を含む粒子3の濃度を調製した分散液を用いることにより、基体1(電極2)上における第2の触媒材料を含む粒子3の配置(第2の触媒材料を含む粒子3同士の間隔)を調整することができる。
【0030】
第2の触媒材料を含む粒子3の分散液の塗布方法にもよるが、分散液中における第2の触媒材料を含む粒子3の濃度は1wt%以下であることが好ましい。また、分散液中における第2の触媒材料を含む粒子3の濃度は0.005wt%以上であることが好ましい。濃度が1wt%よりも多くなると基体1(又は電極2)上で膜状になってしまい、濃度が0.005wt%よりも小さくなると粒子同士の間隔が広がってしまい、その結果、工程3で形成されるカーボンファイバー6の密度が少なくなりすぎてしまうので実用的でない。
【0031】
得られるカーボンファイバー6の質の観点及び得られるカーボンファイバーの電子放出特性の観点からは、工程2で得られる触媒粒子5は、Fe、Co、Ni、Pd、Y、Rh、Pt、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luの中から選択された2つ以上の触媒材料を含むことが好ましい。特には、良好な特性を備えるカーボンファイバーの観点から、第1および第2の触媒材料としては、Fe、Co、Niのいずれか一つと、Pdとを用いることが好ましい。そして中でも、PdとCoとの組合せが、良好な電子放出特性を長期に渡って維持できるカーボンファイバーを製造できるので、好ましい。
【0032】
この様に、本発明における第1および第2の触媒材料は、金属の触媒材料であることが好ましい。そしてまた、工程2で得られる触媒粒子5は、上記触媒材料から選択された2つ以上の触媒材料の合金であることが好ましい。そのため、第1の触媒材料と第2の触媒材料の各々は、上記した材料の中から選択される。また、第1の触媒材料は、第2の触媒材料とは異なる材料である。
【0033】
尚、上記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料のうち、一方が磁性材料であり他方が非磁性材料である場合においては、上記第2の触媒材料として非磁性材料を用い、上記第1の触媒材料として磁性材料を用いることが好ましい。
【0034】
このことは、第2の触媒材料を含む粒子3の分散液を、基体1(又は電極2)上あるいは第1の触媒材料上に、塗布する場合に特に好適である。
【0035】
即ち、磁性材料はその磁性により配置を制御することが難しく、例えば、磁性材料の粒子の分散液中あるいは磁性材料の粒子の塗布後において、磁性材料の粒子同士が凝集してしまい、基体上に、所望の間隔や密度で配置することが難しくなるためである。
【0036】
そのため、第1の触媒材料と第2の触媒材料のうち、一方が磁性材料であり他方が非磁性材料である場合においては、第1の触媒材料が磁性材料であり、第2の触媒材料が非磁性材料であることが好ましい。上記磁性の触媒材料としては、Fe、Co、Niを用いることができる。また、非磁性材料としては、特にカーボンファイバーの特性などからパラジウムであることが好ましい。
【0037】
そして、得られるカーボンファイバーの質の観点及び得られるカーボンファイバーの電子放出特性の観点から、特には、第1の触媒材料がCoであり、第2の触媒材料がPdであることが好ましい。
【0038】
また、第1の触媒材料は、第2の触媒材料を含む粒子を覆う膜であることが好ましい。膜状であれば、第1の触媒材料を含む膜と第2の触媒材料を含む粒子とが重なった領域だけに、選択的に、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを含む粒子を形成することができる。尚、第1の触媒材料を含む膜は、島状の膜であっても良い。
【0039】
また、上記第1の触媒材料4を基体1(又は電極2)上あるいは第2の触媒材料を含む粒子3上に形成する方法としては、例えば第1の触媒材料の溶液を用いて、回転塗布法、ディッピング法、スプレー塗布法、インクジェット塗布法などを用いることができる。
【0040】
第1の触媒材料を溶媒に溶かした形で使用する場合は、例えば、第1の触媒材料としてFeを用いる場合には、Feを含む化合物として、アセチルアセトン鉄類、酢酸鉄、オクチル酸鉄、ステアリン酸鉄、シュウ酸鉄等のカルボン酸鉄類を用いることができる。また、第1の触媒材料としてCoを用いる場合には、Coを含む化合物として、アセチルアセトンコバルト類、酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、シュウ酸コバルト等のカルボン酸コバルト類を用いることができる。また第1の触媒材料としてNiを用いる場合には、Niを含む化合物として、アセチルアセトンニッケル類、酢酸ニッケル、ギ酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル等のカルボン酸ニッケル類を用いることができる。
【0041】
またこれらの化合物は、さらに配位子が配位した錯体でも良い。配位子としては、酸素(O)原子で配位する化合物、窒素(N)原子で配位する化合物等があるが、例えばアミン類、アルコールアミン類、エチレンジアミン類などの窒素(N)原子で配位する化合物が好ましい。
【0042】
溶液状態で塗布する場合は、金属有機化合物の分散塗布性をよくするためには、高分子化合物、アルコール類を含む溶液としたほうが好ましい。
【0043】
また、図11(b)および図11(c)に示す様に、第1の触媒材料4を第2の触媒材料を含む粒子3上に配置する場合には、第1の触媒材料3を第2の触媒材料を含む触媒粒子3上に析出させることによって、積層体を形成することが出来る。即ち、第2の触媒材料を含む粒子3をメッキ核とし、この上に、第1の触媒材料をメッキ法により析出させる方法である。
【0044】
第1および第2の触媒材料は、それぞれ単独で、カーボンファイバーの成長の核として機能する。そのため、後述する工程3のカーボンファイバーを成長させる温度によっては、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4とが重なり方に注意する必要がある。つまり、第1および第2の触媒材料のうちのいずれか一方の触媒材料だけが配置されている領域が、基体1(又は電極2)上に存在する状態となると、工程3における温度によっては、この領域からもカーボンファイバーが成長することになる。そのため、このような状態は好ましくない。
【0045】
そこで、第2の触媒材料を含む粒子3をメッキ核として、その上に第1の触媒材料4を析出させる方法を採用することが好ましい。この手法によれば、第2の触媒材料を含む粒子3を所望の間隔(密度)で基体1(又は電極2)上に配置でき、さらに、その所望の間隔(密度)で配置された第2の触媒材料を含む粒子3のみに、選択的に、第1の触媒材料4を含む被膜を形成することができる。第1の触媒材料4の被膜の厚みは、第1の触媒材料4を析出させる時間などで制御することができるので、第1の触媒材料4の被膜によって第2の触媒材料を含む粒子3同士が繋がることを抑制できる。このため、工程2で形成する、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを含む粒子6が、基体1(又は電極2)上に所望の間隔(密度)で配置することができる。
【0046】
具体的には、第2の触媒材料を含む粒子3を基体1(又は電極2)上に配置した後に、この基体1を無電解めっき浴中に浸漬して第2の触媒材料を含む粒子3表面に、第1の触媒材料4を無電解めっき法を用いて析出させる。
【0047】
無電解めっき浴は、一般に金属塩、還元剤、pH調製剤、緩衝剤、錯化剤、安定剤等を含む水溶液である。還元剤としては次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等が用いられる。まためっき浴の寿命を長くしたり、還元剤の効率をよくするためにpH調製剤、緩衝剤、錯化剤、安定剤等が用いられる。
【0048】
pH調製剤は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物、無機酸、有機酸等である。
【0049】
緩衝剤はpH変動を抑制するために使用されるものでクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム、ホウ酸、炭酸等の無機塩、有機酸、無機酸など金属塩等がある。錯化剤にはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア、エチレンジアミン、グリシン、ピリジン等がある。
【0050】
錯化剤は遊離の金属イオン濃度を低下させることによって水酸化物の沈殿を防止して浴の安定性を向上させる。
【0051】
めっき浴は溶液内に粉末状の金属が析出したり、還元反応が被めっき物の表面以外で起こるとめっき液の分解を引起す。そこで分解抑制のため安定剤として硫黄化合物や鉛イオンを微量添加して優先的に吸着させてめっき液の分解を抑制することもある。
【0052】
例えば、第1の触媒材料4としてCoを用いる場合、無電解めっき浴として、無電解コバルトめっき浴を用いる。無電解コバルトめっき浴に用いる金属塩としては塩化コバルトを用い、還元剤としてヒドラジン塩酸塩、錯化剤としては酒石酸ナトリウムを用い、pHは10以上とすることが好ましい。
【0053】
この無電解コバルトめっき浴中に、第2の触媒材料を含む粒子3(例えば、Pd粒子)を配置した基体1を浸漬することにより、Co層4と、Co層4で被覆されたPd粒子3とで構成された積層体を基体1上に形成することができる。
【0054】
また、第2の触媒材料を含む粒子3の表面に析出させる第1の触媒材料4の積層量(膜厚)は、無電解めっき浴の温度、浸漬時間等を調節することにより制御することができる。
【0055】
以上のようにして、第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体を基体1(又は電極2)上に配置することができる(図10(a))。
【0056】
尚、ここでは、触媒材料が2種類の場合のみについて説明したが、上記積層体に、他の種類の触媒材料が含まれていても良い。即ち、例えば、上記第2の触媒材料を含む粒子3の中に、第3の触媒材料が含まれていても良いし、また、上記第2の触媒材料を含む粒子3の上に、第1の触媒材料を積層した後にさらに第3の触媒材料を積層しても良い。あるいはまた、上記第2の触媒材料を含む粒子3の上に、第1の触媒材料と第3の触媒材料との混合物を積層しても良い。この様に本発明においては、第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体を基体1(電極2)上に配置する。
【0057】
また、前述したように、本発明においては、第2の触媒材料を含む粒子3の間に位置する基体1(又は電極2)上に第1の触媒材料が配置されることは、後述する工程3のカーボンファイバーを成長させる温度によっては、好ましくはない。
【0058】
しかしながら、第1の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度が、第2の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度よりも、実効的に30℃以上高くなるように、第1および第2の触媒材料を選択すれば、本工程1において、第1の触媒材料が、第2の触媒材料を含む粒子間の基体1(又は電極2)上に残っていても問題がない。そのため、この様に第1の触媒材料と第2の触媒材料とを選択すれば、上記したメッキ法に限られず、その結果、製造方法の選択の幅を広げることができる。
【0059】
また、より正確には、カーボンファイバーの成長を考慮する際には、工程2で形成される、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む粒子5を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度と、第1の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度とを比較する必要がある。
【0060】
そのため、好ましくは、第1の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度が、工程2で形成される第1の触媒材料4と第2の触媒材料とを含む粒子(典型的には、第1の触媒材料と第2の触媒材料の合金粒子)5を用いた場合においてカーボンファバーが成長を開始する温度よりも、実効的に高くなる様に選択すれば、本工程において、第1の触媒材料が、第2の触媒材料を含む粒子3間の基体1(又は電極2)上に残っていても問題がない。温度差としては、30℃以上であり、好ましくは100℃以上が良い。
【0061】
尚、ここで言う、「カーボンファバーの成長の開始に必要な温度」は、例えば、カーボンファイバーの原料ガス、原料ガスの分圧、触媒粒子の直径などを一定にした系において、各触媒粒子を用いたときに、30分で1μm以上カーボンファイバーが成長することのできる温度のうちの最低温度とすることができる。
【0062】
(工程2)
図10(b)を用いて説明した触媒粒子5は、典型的には、第1の触媒材料4と第2の触媒材料を含む粒子3との積層体が配置された基体1を加熱することで得ることができる。また、触媒粒子5の中に含まれる第1の触媒材料と前記第2の触媒材料は、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料の合金であることが好ましい。
【0063】
第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させる方法としては、第1の触媒材料と第2の触媒材料含む粒子との積層体を基体上に配置した後、積層体を加熱する方法を採用することができる。加熱は、非酸化雰囲気中で行うことが好ましい。
【0064】
非酸化雰囲気で加熱することで第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させる方法としては、例えば、真空中で500℃〜700℃に加熱することにより行うことができる。この様にすれば、第1及び/または第2の触媒材料が金属化合物の状態で基体1上に配置されていたとしても、金属化合物が熱分解され、第1および第2の触媒材料(金属)からなる合金触媒粒子5を形成することができる。
【0065】
また、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させる方法としては、酸化雰囲気中で加熱した後に、還元雰囲気中で加熱する方法を採用することもできる。この方法は、例えば、第1の触媒材料と第2の触媒材料含む粒子との積層体を空気中で200℃〜500℃、好ましくは350℃前後で加熱して酸化物にさせた後に、水素雰囲気中で500℃〜700℃で加熱することで、酸化物を還元することにより、第1および第2の触媒材料(金属)からなる合金触媒粒子5を形成することができる。
【0066】
以上のようにして、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させて、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを含む触媒粒子5を基体1(電極2)上に配置することができる。
【0067】
尚、電子放出特性の観点から、触媒粒子5はFe、Co、Niのいずれか一つと、Pdとを含むことが好ましく、さらには、PdとCoの合金を含むことが好ましい。そして、触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが20atm%(原子百分率)以上触媒粒子5内に含まれることが好ましい。また、触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが80atm%(原子百分率)以下触媒粒子5内に含まれることが好ましい。
【0068】
触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが含まれる割合が、20atm%よりも小さい場合には、触媒粒子5がPd100%で構成されるものと比較して、十分な電子放出量(例えば1μA)を得るために必要な電圧値が大して下がらない。また、80atm%を超えると、カーボンファイバー6を成長させるのに必要な温度が急に上昇し、触媒粒子5が例えばCo100%で構成された場合と実質的に同等となってしまう。このような観点から、触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが触媒粒子5内に含まれる割合は、20atm%(原子百分率)以上80atm%(原子百分率)以下であることが好ましい。
【0069】
(工程3)
つぎに触媒粒子5を用いてカーボンファイバー6を基体1上に成長させる工程について述べる。
【0070】
カーボンファイバー6は、具体的にはCVD法を用いて、カーボンファイバーの原料ガスを分解することで形成することができる。CVD法としては、プラズマCVD法や熱CVD法を用いることができる。特には、簡易に製造を行える熱CVD法を用いることが好ましい。また、得られるカーボンファイバーの均一性や電子放出能力の高さから、減圧熱CVD法を採用することが好ましい。
【0071】
カーボンファイバーの原料ガスとしては、炭素を含むガスを用いることができる。
【0072】
本発明に用いられる炭素を含むガスとしては例えばアセチレン、エチレン、メタン、プロパン、プロピレンなどの炭化水素ガスが好ましく用いられる。エタノールやアセトンなどの有機溶剤の蒸気を用いることもできる。また、上記炭化水素ガスと水素ガスとの混合ガスがより好ましく用いられる。炭化水素ガスと水素ガスとの混合ガスを用いた場合には、工程2で形成した第1及び/または第2の触媒材料が金属化合物の状態で基体1上に配置されていたとしても、当該金属化合物が混合ガス中に含まれる水素ガスで還元処理されるので、前述したような特別な還元処理工程を設けずに、カーボンファイバー6を成長させることができるので好ましい。
【0073】
また、上記カーボンファイバー6は、カーボンファイバーの両端のうち、基体1に固定されていない側の先端部(先端部近傍)に触媒粒子5を内包している場合や、カーボンファイバーの両端の中間あたりの位置で触媒粒子5を内包している場合もある。あるいは、触媒粒子5が基体1(または電極)上に残っており、その触媒粒子5上にカーボンファイバーの一方の端部が接続している場合もある。好ましくは、触媒粒子5はその表面が露出しておらず、カーボンファイバーに内包されていることが好ましい。
【0074】
本工程により形成されるカーボンファイバーの模式図を、図5および図6に示す。図5(a)および図6(a)は、光学顕微鏡レベル(〜1000倍)で観察される形態である。図5(b)及び図6(b)は、走査電子顕微鏡(SEM)レベル(〜3万倍)で観察される形態であり、図5(a)および図6(a)の一部(51、61)の拡大図である。図5(c)、および図6(c−1)、図6(c−2)は透過電子顕微鏡(TEM)レベル(〜100万倍)で観察されるカーボン(グラフェン)の形態である。図5(c)は図5(b)における一部(52)の拡大図であり、図6(c−1)は図6(b)の一部(62)の拡大図であり、図6(c−2)は図6(b)の他の一部(63)の拡大図を模式的に示している。
【0075】
ここで、グラファイトは、炭素原子がsp2混成により共有結合でできた正六角形を、敷き詰める様に配置された炭素平面が、理想的には約3.354Åの距離を保って積層してできたものである。この一枚一枚の炭素平面を「グラフェン」或いは「グラフェンシート」と呼ぶ。
【0076】
図5(c)に示す様に、グラフェン53が円筒形状の形態をとるものは「カーボンナノチューブ」と呼ばれる。そして、円筒形のグラフェン53が多重構造になっているカーボンナノチューブは、「マルチウォールカーボンナノチューブ」と呼ばれる。一方、1つの円筒形のグラフェン53で構成されるカーボンナノチューブは、「シングルウォールカーボンナノチューブ」と呼ばれる。特に、これらカーボンナノチューブにおいては、チューブ先端のグラフェンを閉じずに開放させた構造の時に、電子放出に必要な電界の閾値が最も下がる。また、マルチウォールカーボンナノチューブの中空構造の中に、竹の節のような構造を持つ物があるが、これらの多くはファイバーの軸に対する最外周のグラフェンの角度がほぼ0°であり、このような構造もカーボンナノチューブに含まれる。これらのカーボンナノチューブはファイバーの軸方向と円筒形に形成された最外周に形成されるグラフェンの面が略平行(ファイバーの軸(ファイバーの長手方向)とグラフェンとがなす角度がおおよそ0°)であり、チューブ内が必ず中空であるのが特徴である。
【0077】
次に、図6(c)に模式的に示すカーボンファイバーは、複数のグラフェン64がファイバーの軸方向に積層されて構成されている。この形態のカーボンファイバーは「グラファイトナノファイバー」と呼ばれる場合もあり、前述のカーボンナノチューブとは区別されるものである。つまり、前述のカーボンナノチューブにおいては、c軸(複数のグラフェンが積み重なる方向、あるいはグラフェンの面に対して垂直な方向)が、ファイバーの軸方向(ファイバーの長手方向)に対して実質的に垂直であるのに対し、グラファイトナノファイバーは、c軸(グラフェンの重なる方向、あるいはグラフェンの面に対して垂直方向)が、ファイバーの軸方向(ファイバーの長手方向)と非垂直である(典型的には平行である)。
【0078】
ファイバーの軸とグラフェンの面とが形成する角度がほぼ90°である場合には「プレートレット型」と呼ぶ。換言すれば、グラフェンがトランプのように多数枚積み重なった構造をしている。
【0079】
一方、図6(c−1)、図6(c−2)に示すように、ファイバーの軸方向に対する、グラフェン64の面の角度が90°より小さく0°より大きい角度である形態を「ヘリンボーン型」と呼ぶ。「ヘリンボーン型」の形態には穴のあいたカップ状のグラフェンを積み重ねたような形態もある。また、図6(c−2)のように、本を開いて積み重ねたような形態(V字状のグラフェンを積み重ねたような形態)も「ヘリンボーン型」に含まれる。
【0080】
ヘリンボーン型におけるファイバー軸の中心付近は、中空である場合や、アモルファスカーボン(TEMレベルの電子線回折像で明確な結晶格子に伴うスポットや格子の明暗像が見えず、ブロードなリングパターン程度しか見えないもの)が詰まっている場合等がある。
【0081】
図5および図6には、カーボンファイバーの直線性が悪い状態で成長した場合の概略図を示した。本発明の製造方法により形成されるファイバーが、全てがこのように直線性が悪いわけではなく、直線性の高いカーボンファイバーを得ることもできる。
【0082】
以上述べたカーボンナノチューブ及びグラファイトナノファイバーは、電子放出特性の観点で、電子放出素子に好ましく適用される。特にグラファイトナノファイバーは、カーボンナノチューブよりも放出電流を得ることができるので好ましい。しかしながら、本発明は、カーボンナノチューブ及びグラファイトナノファイバーに限らず、熱CVD法で形成されるカーボンファイバー全般に渡って適用することができる。
【0083】
カーボンナノチューブとグラファイトナノファイバーは、触媒の種類、及びカーボンファイバーの原料ガスの熱分解温度によって作り分けることが可能である。同一の触媒で、両方の構造を持つ物を温度によって選択的に制御することも可能である。また、どちらかの構造のみのカーボンファイバーを形成することもできる。
【0084】
どちらのカーボンファイバーも電子放出の閾値が1V〜10V/μm程度であり、電子放出材料として好ましい特性を持つ。カーボンファイバーを用いて電子放出素子を形成する場合には、1つの電子放出素子は、複数のカーボンファイバーを含む。そして、電子放出材料としては、カーボンファイバーとしてグラファイトナノファイバーを用いることがより好ましい。何故なら、複数のグラファイトナノファイバーを電子放出材(複数のグラファイトナノファイバーからなる膜を電子放出膜)として用いた電子放出素子では、カーボンナノチューブを用いた場合よりも、電子放出電流密度を大きく確保できる為である。
【0085】
グラファイトナノファイバーは、カーボンナノチューブ等と異なり、図9などに示した様に、表面(ファイバーの側面)に微細な凹凸形状を有するために電界集中が起きやすく、電子を放出しやすいと考えられる。そして、また、ファイバーの中心軸からファイバーの外周(表面)に向かってグラフェンが伸びている形態であるため、電子放出をし易いのではないかと考えている。
【0086】
一方のカーボンナノチューブは、ファイバーの側面は、基本的に、c面に相当するため、化学的に不活性であり、グラファイトナノファイバーのような凹凸もないため、ファイバーの側面からは電子の放出は生じないと考えられる。そのため、カーボンファイバーとしてグラファイトナノファイバーを用いることが電子放出素子として好ましいと考えられる。
【0087】
以上の工程によって、カーボンファイバーを形成することができる。
【0088】
次に、本発明で製造したカーボンファイバーを用いた電子放出素子について以下に説明する。
【0089】
本発明において、電子放出素子を製造する場合には、上記工程3で形成した複数のカーボンファイバーをカソード電極に電気的に接続して電子放出素子を構成する。この時、カソード電極として、前述した基体1上に形成した電極(導電層)2を用いれば、カソード電極上に直接カーボンファイバーを形成することができるので、製造工程が簡略になるので好ましい。
【0090】
しかしながら、別途、本発明のカーボンファイバーの製造方法を用いて製造したカーボンファイバーを多数集め、その集めたカーボンファイバーの中から選択した複数のカーボンファイバーをカソード電極上に配置することで電子放出素子を製造することもできる。
【0091】
このような場合には、例えば、集めたカーボンファイバーを印刷用のペーストに混ぜることで複数のカーボンファイバーを含むペーストを用意し、次いで、このペーストを印刷法などによりカソード電極上に塗布後、焼成することで、複数のカーボンファイバーをカソード電極上に固定することができる。また、上記ペーストには、必要に応じてガラスフリットなどの接着剤や導電性材料を混ぜることもできる。
【0092】
そして、カソード電極上に配置されたカーボンファイバ−から電子を引き出すための電極(引き出し電極:ゲート電極やアノード電極)を、カーボンファイバ−に対向するように配置することで電子放出装置(所謂ダイオード構造の電子放出装置)とすることができる。
【0093】
さらにカーボンファイバーから放出された電子の照射により発光する蛍光体などの発光体を引き出し電極(ゲート電極やアノード電極)上に配置すればランプなどの発光装置を形成することができる。
【0094】
また、トライオード構造の装置を構成する場合(ダイオード構造の電子放出素子を構成する場合)には、上記複数のカーボンファイバーが配置されたカソード電極と離れて配置されたゲート電極を配置することでダイオード構造の電子放出素子を構成し、そして、この電子放出素子に対向するようにアノード電極を配置することにより、トライオード構造の電子放出装置を構成することができる。
【0095】
また、さらには、複数のカーボンファイバーを用いた電子放出素子を複数配列した基体に対向するように、蛍光体などの発光体とアノード電極とを有する透明な基板を配置することで、ディスプレイなどの画像表示装置をも構成することができる。
【0096】
本発明のカーボンファイバーを用いた電子放出装置、発光装置、あるいは画像表示装置においては、内部を従来の電子放出素子のように超高真空に保持しなくても安定な電子放出をすることができ、また低電界で電子放出するため、信頼性の高い装置を非常に簡易に製造することができる。
【0097】
次に、本発明により得られるカーボンファイバーを電子放出材料に用いた電子放出素子について、図2を用いて詳述する。尚、ここでは、ダイオード構造の横型の電子放出素子の例を説明する。
【0098】
図2(a)はダイオード構造の横型の電子放出素子の平面模式図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’断面模式図である。
【0099】
図2において、1は絶縁性の基板、3は制御電極(ゲート電極として用いる場合もある)、2はカソード電極、14はレジストパターン、15は導電性材料層、5は合金触媒粒子、6はカーボンファイバーである。尚、導電性材料層15は必ずしも必要とはしない。
【0100】
図2(a)および図2(b)に示した電子放出素子の製造方法の一例を図1(a)〜図1(f)を用いて以下に説明する。尚、カーボンファイバー自体の製造方法は上述した通りであり、ここでは、その一例を示している。
【0101】
(工程A)
基板1を十分洗浄を行った後、引き出し電極3及びカソード電極(陰極)2を形成するため、まず基板1全体に、スパッタ法等により、不図示の厚さ500nmの電極層を形成する。
【0102】
次に、フォトリソグラフィー工程で、不図示のポジ型フォトレジストを用いてレジストパターンを形成し、パターニングした前記フォトレジストをマスクとして、電極層をArガスを用いてドライエッチングを行い、電極ギャップ間(間隙の幅)が5μmからなる引き出し電極3、及び陰極2をパターニングする(図1(a))。
【0103】
尚、基板1としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムガラスよりもアルカリ成分を少なくした低アルカリガラス、無アルカリガラスなどを用いることができる。
【0104】
また、以下、フォトリソグラフィー工程、成膜、リフトオフ、エッチング等による薄膜やレジストのパターニングを単にパターンニングと称する。
【0105】
(工程B)
フォトリソグラフィー工程で、後のリフトオフに用いるレジストパターン14を、ネガ型フォトレジストを用いて形成する(図1(b))。
【0106】
次に、導電性材料層15を形成する。そして、その上に、前述した第2の触媒材料(例えばPd)を含む粒子3の分散液を、導電性材料層15上に、例えば回転塗布する。その後、加熱し、ついで、還元処理することにより、Pdなど触媒粒子16を形成する〔図1(c)〕。
【0107】
尚、ここでは、電極2と後述する触媒粒子5との反応を抑制するために、導電性材料層15を配置している。このような導電性材料層15として望ましい材料として、遷移金属の窒化物がある。遷移金属の窒化物としては、例えば、TiN、ZrN、TaN、HfN、VN、CrNが挙げられる。また、薄ければTiOxなどの酸化物も使用可能である。また、このような導電性材料層15を、電極2と触媒粒子5との間に配置することで、電極2の材料の選択範囲を広げることができる。
【0108】
(工程C)
次に、基板1を、前述したように、第1の触媒材料(例えばCo)の無電解めっき浴中に浸漬し、第2の触媒材料を含む粒子3の各々の上に、第1の触媒材料4を析出させる(図1(d))。
【0109】
別の方法としてはFe、Co、Niなどの第1の金属有機化合物の溶液を回転塗布し、次いで350℃焼成し、ついで還元することにより、第2の触媒材料を含む粒子3上に第1の触媒材料を配置することで、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4との積層体を形成する方法もある(図1(d’))。
【0110】
またスパッタ法等によりFe、Co、Niなどの第1の触媒材料4をPdなどの第2の触媒材料を含む粒子3上に配置しても良い。
【0111】
尚、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4の配置の順番は逆にしても良い。すなわちFe、Co、Niなどの第1の触媒材料4を電極2上にまず配置し、ついでPdなどの第2の触媒材料を含む粒子3を配置して、積層体を形成しても良い。
【0112】
(工程D)
レジストパターン14の剥離液を用いて、レジストパターン14と共にレジストパターン14上の導電性材料層15及び第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4の積層体をリフトオフする。この工程により、所望の領域に導電性材料層15及び第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4を残す(図1(e))。
【0113】
(工程E)
続いて、炭化水素ガスと水素とを含むガス気流中で基板1を加熱することで、熱CVD処理をする。尚、ここで説明する例においては、この加熱時に、第1の触媒材料と第2の触媒材料の還元処理、および、第1の触媒材料と第2の触媒材料の反応(合金化)が行われ、更に、電極2上での多数のカーボンファイバー6の成長が行われる(図1(f))。
【0114】
尚、カーボンファイバーを成長させる前に、第1の触媒材料と第2の触媒材料の反応(合金化)及び/または第1の触媒材料と第2の触媒材料の還元処理を別途行うこともできる。
【0115】
以上の工程により、横型の電子放出素子を形成することができる。
【0116】
以上の例では、横型の電子放出素子について説明したが、本発明は、図7に示すような所謂、縦型の電子放出素子に用いることもできる。図7において、1は基板、2はカソード電極、3は制御電極(ゲート電極として用いる場合もある)、6はカーボンファイバー、10は絶縁層、11はアノード電極である。図7に示す構造においても、カーボンファイバーの製造方法は、基本的に前述の通りである。
【0117】
尚、縦型の電子放出素子に比べ、横型の電子放出素子の方が、製造が簡易であると共に、駆動時の容量成分が少ないため、高速駆動ができるので好ましい形態である。一方で、縦型の電子放出素子においては、放出された電子ビームの広がりが横型の電子放出素子よりも小さくすることができるので好ましい。
【0118】
尚、「横型の電子放出素子」とは、基板1の表面と実質的に平行な方向に電界を形成し、この電界によってカーボンファイバー6から電子を引き出す形態の電子放出素子を指す。一方「縦型の電子放出素子」とは、基板1表面に対し実質的に垂直な方向に電界を形成し、この電界によってカーボンファイバー6から電子を引き出す形態の電子放出素子を指す。
【0119】
また、図2及び図7に示した電子放出素子では、カソード電極2と制御電極3を含むものであるが、カーボンファイバー6は低い電界強度で電子放出することが可能なので、図2の制御電極を省いた構造(図7においては制御電極3、絶縁層10を省いた構造)の電子放出素子にも本発明は適用可能である。
【0120】
即ち、基板1上に配置されたカソード電極2と、その上に配置されたカーボンファイバー6とで電子放出素子を構成したもの(図7の様に、アノード電極11を含めるとダイオード(2端子)構造の電子放出装置)にも本発明は適用できる。
【0121】
また、図2、図7に示す様なトライオード構造の電子放出装置においては、制御電極3が所謂ゲート電極(カーボンファイバー6から電子を引き出すための電極)として機能する場合もあるが、カーボンファイバー6は低い電界強度で電子放出することが可能なので、カーボンファイバー6からの電子の引き出しはアノード電極11が行い、制御電極3は、カーボンファイバー6からの電子放出量の変調や電子放出の停止あるいは放出される電子ビームの収束などの整形を行うために用いられる場合もある。
【0122】
次に、図2に示したカーボンファイバーを用いた電子放出素子を例に、図3、図4を用いて、電子放出特性について説明する。
【0123】
電子放出特性を測定するには、まず、電子放出素子を図3に示すような真空装置38内に設置し、真空排気装置39によって内部を10−4Pa程度に到達するまで十分に排気する。そして、図3に示したように高電圧電源を用いて、基板1から数ミリの高さHの位置に陽極(アノード電極)11を設け、電子放出素子の電位よりも数kV高くなるように電圧Vaを陽極11に印加する。
【0124】
尚、ここで説明する例においては、アノード電極11には導電性フィルムを被覆した蛍光体31を設置している。
【0125】
電子放出素子には、駆動電圧Vfとして波高値数十Vのパルス電圧を印加し、この印加電圧に応じて電極2,3間に流れる素子電流Ifと、アノード電極11に流れ込む電子放出電流Ieを計測する。
【0126】
図3には、上記のように各電極に電圧を印加した時に、電子放出素子近傍に形成される等電位線32を点線で示している。最も電界の集中する点33は、カーボンファイバー6の最も陽極11よりで、且つ、ギャップ(間隙)の内側の場所と想定される。
【0127】
この電界集中点近傍に位置するカーボンファイバー6の先端近傍から電子が放出されると考えられる。
【0128】
また、電子放出素子のIe特性は図4に示すような特性である。即ち、電子放出に必要な明確な印加電圧閾値を本発明の電子放出素子は備える。尚、図4において、横軸は、陰極2と引き出し電極3との間に印加する駆動電圧(素子電圧)Vfであり、縦軸は駆動電圧の印加に応じてアノード電極11に流れる放出電流Ieである。このような特性は、図7に示した縦型の電子放出素子においても同様である。
【0129】
次に、上記横型の電子放出素子を複数備えた電子源の一例について、図8を用いて説明する。
【0130】
図8において、1は電子源が配置された基板、112はX方向配線、113はY方向配線である。114は本発明の電子放出素子である。
【0131】
図8においてm本のX方向配線112は、Dx1、Dx2…Dxmから構成されている。配線の材料、膜厚、幅は、適宜設計される。Y方向配線113は、Dy1、Dy2…Dynのn本の配線よりなり、X方向配線112と同様に形成される。これらm本のX方向配線112とn本のY方向配線113との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m、nは共に正の整数)。
【0132】
X方向配線112とY方向配線113の端部は、駆動回路と接続するための端子として機能することができる。
【0133】
本発明の製造方法により得られる電子放出素子114を構成するカソード電極(不図示)はX方向配線112とY方向配線113のいずれか一方の配線のうちの1本に電気的に接続され、制御電極は残る他方の配線のうちの1本に電気的に接続される。
【0134】
X方向配線112には、例えば走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線113には、走査信号に同期する変調信号に応じて放出される電子の量を変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧Vfは、印加される走査信号と変調信号との差電圧として供給されるものである。このようにすることによって、個別の電子放出素子114を選択し、独立に駆動可能とすることができるようになっている。
【0135】
次に、このようなマトリクス配置の電子源を用いて構成した画像表示装置の一例について図9を用いて説明する。
【0136】
図9において、1は電子源が配置された基板(リアプレート)、130はガラス基体129の内面に蛍光膜128と導電性膜(メタルバック)127などが形成されたフェースプレートである。124は、支持枠であり該支持枠124は、リアプレート1、フェースプレート130と接続されている。131は外囲器であり、上記フェースプレート130、支持枠124、リアプレート123を相互に封着することで構成されている。
【0137】
6は本発明の製造方法によって得られるカーボンファイバーに相当する。112、113は、前述したX方向配線及びY方向配線である。
【0138】
リアプレート1、支持枠124及びフェースプレート130は、各接合部にフリットガラスやインジウムなどの接着剤を塗布し、大気中や窒素中あるいは真空中で、加熱することによる封着される。尚、上記導電性膜127は、図3や図7で説明したアノード電極11に対応する部材である。
【0139】
外囲器131は、大気中や窒素中で封着して形成した場合には、その後、不図示の排気管を通じ、内部の圧力が所望の真空度(例えば1.3×10−5Pa程度)に達するまで排気した後、排気管を封止することで内部が真空に維持された外囲器131を得ることができる。また、封着を、真空中で行えば、上記した排気管を用いずに、封着と同時に封止が行えるので、簡易に内部が真空に維持された外囲器131を得ることができる。
【0140】
また、外囲器131の封止の前後で、外囲器131の内部に配置した不図示のゲッターを活性化させる場合もある。上記したように、真空中で封着する場合には、封着の前後で、外囲器131の内部に配置した不図示のゲッターを活性化させる。このようにすることで、封止後の外囲器131内部の真空度を維持することができる。
【0141】
外囲器131は、上述の如く、フェースプレート130、支持枠124、リアプレート1で構成される。一方、フェースプレート130、リアプレート123間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器131を構成することもできる。
【0142】
フェースプレート130には、更に蛍光膜128の導電性を高めるため、蛍光膜128とガラス基体129との間にITOなどからなる透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0143】
上記外囲器131内の各電子放出素子には、各電子放出素子に接続するX方向配線およびY方向配線に接続する端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを通じ、電圧を印加することにより、所望の電子放出素子から電子放出させることができる。この時、高圧端子を通じ、メタルバック127に5kV以上30kV以下、好ましくは10kV以上20kV以下の電圧を印加する。この様にする事で、選択した電子放出素子から放出された電子は、メタルバック127を透過し、蛍光膜128に衝突する。そして蛍光体を励起・発光させることで画像を表示する。尚、フェースプレートとリアプレートとの間隔は、1mm以上10mm以下、好ましくは、1mm以上5mm以下に保たれる。
【0144】
なお、以上述べた構成においては、各部材の材料等、詳細な部分は上記した内容に限られるものではなく、目的に応じて適宜変更される。
【0145】
また、図9を用いて説明した本発明の外囲器(画像表示装置)131を用いて情報表示再生装置を構成することができる。
【0146】
具体的には、テレビジョン放送などの放送信号を受信する受信装置と、受信した信号を選曲するチューナーと、選曲した信号に含まれる映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを、外囲器(画像表示装置)131に出力して表示および/あるいは再生させる。この構成によりテレビジョンなどの情報表示再生装置を構成することができる。勿論、放送信号がエンコードされている場合には、本発明の情報表示再生装置はデコーダーも含むことができる。また、音声信号については、別途設けたスピーカーなどの音声再生手段に出力して、外囲器(画像表示装置)131に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
【0147】
また、映像情報または文字情報を外囲器(画像表示装置)131に出力して表示および/あるいは再生させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。
【0148】
まず、受信した映像情報や文字情報から、外囲器(画像表示装置)131の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、外囲器(画像表示装置)131の駆動回路に入力する。そして、駆動回路に入力された画像信号に基づいて、駆動回路から外囲器(画像表示装置)131内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して、画像を表示する。
【0149】
ここで述べた画像表示装置の構成は、本発明を適用可能な画像表示装置の一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。また、本発明の画像表示装置は、テレビ会議システムやコンピュータ等の表示装置等としても用いることができる。
【0150】
また、本発明は、上記した技術思想に基づいて種々の変形が可能である。
【実施例】
【0151】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0152】
(実施例1)
本実施例では、図1の工程に沿って、電子放出素子を製造した。
【0153】
(工程1)
まず、基板1として石英基板を用い、十分洗浄を行った。その後、ゲート電極3及び陰極2を形成するため、基板1全体に、スパッタ法により、不図示の厚さ5nmのTi層を蒸着した後に厚さ100nmのPt層を蒸着した。
【0154】
次に、フォトリソグラフィー工程で、不図示のポジ型フォトレジストを用いてレジストパターンを形成した。
【0155】
次に、パターニングした前記フォトレジストをマスクとして、Pt層およびTi層をArガスを用いてドライエッチングを行い、電極ギャップ間(間隙の幅)が5μmからなる引き出し電極3、及び陰極3をパターニングした(図1(a))。
【0156】
(工程2)
フォトリソグラフィー工程によって、ネガ型フォトレジストを用いて、後の工程におけるリフトオフ用のレジストパターン14を形成した(図1(b))。
【0157】
(工程3)
次いで、導電性材料層として、TiN層15を形成した。そして、更に、第2の触媒材料を含む粒子であるところのパラジウム粒子のエタノール分散液(Pd含有率:0.2mmol/l、粒径:約10nm、分散剤:PVP、分散媒(溶媒):エタノール)をTiN層15の上に回転塗布した後に、大気中で、350℃にて10分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により、Pd粒子3をTiN層15の上に多数配置した(図1(c))。尚、Pd粒子同士の間隔は100〜1000nmであり、粒径は10nmであった。
【0158】
(工程4)
工程1〜工程3を経た基板1を無電解コバルト浴18に浸漬した(図1(d))。下記に無電解コバルト浴の組成を記す。
・塩化コバルト(6水和物) 11.9g/l
・ヒドラジン塩酸塩 68.51g/l
・酒石酸ナトリウム(2水和物) 92.03g/l
・温度 80℃
・pH 12
【0159】
以上の処理により、Pd粒子3を包み込むように、Pd粒子3上にのみCo被膜4を積層した。その後、大気中で350℃にて10分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は30nm程度であり、工程3で得たPd粒子3の配置位置から実質的に移動していなかった。
【0160】
また、TiN層上に、上記工程3におけるPd粒子3の間隔をより狭くして配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、PdとCoの合金のピークが観察された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるCoの比率はほぼ50%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとCoの合金粒子であると推測される。
【0161】
(工程5)
工程2で形成したレジストパターン14の剥離液を用いて、レジストパターン14ごとレジストパターン14上の導電性材料層15及び触媒粒子5をリフトオフし、所望の領域に導電性材料層15及び触媒粒子5を残した(図1(e))。
【0162】
(工程6)
続いて、アセチレン気流中で基板1の加熱処理を行い、陰極2に電気的に接続された多数のカーボンファイバー6を形成した(図1(f))。
【0163】
以上の様にして作製した横型の電子放出素子を、図3に示す真空装置38に設置し、真空排気装置39によって内部を2×10−5Paに到達するまで十分に排気した。その後、電子放出素子からH=2mm離れた陽極11に、陰極2の電位との電位差(電圧)としてVa=10kV印加した。そして、更に陰極2とゲート電極3との間に駆動電圧Vf=20Vからなるパルス電圧を印加して電子を放出させ、陰極2とゲート電極3との間に流れる素子電流Ifと、アノード電極に流れる電子放出電流Ieを計測した。
【0164】
計測されたIfおよびIeの特性は、図4に示すような特性であった。即ち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約1.1μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0165】
本実施例において作成した電子放出素子においては、カーボンファイバー同士が適度に離れて陰極2上に配置されていた。そのため、電界が各カーボンファイバーに効果的に作用し、良好な電子放出特性が得られたと考える。
【0166】
また、本実施例で形成されたカーボンファイバーは、前述したプレートレット型のグラファイトナノファイバーであった。
【0167】
(実施例2)
本実施例は、実施例1の工程4を以下の様に行った以外は実施例1と同様にして電子放出素子の作製を行った。そのため、以下には、工程4のみを記す。
【0168】
(工程4)
ついで、第1の触媒材料であるCoを、スパッタ蒸着で、厚さ1.5nmになるようにPd粒子3上に被膜した(図1(d´))。その後、大気中で350℃にて10分焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は100〜1000nmであり、工程3で得たPd粒子3の配置位置から実質的に移動していなかった。
【0169】
また、TiN層上に、上記工程3におけるPd粒子3の間隔をより狭くして配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、PdとCoの合金ピークが観察された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるCoの比率はほぼ40%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとCoの合金粒子であると推測される。
【0170】
本実施例で得られた電子放出素子の電子放出特性を実施例1と同様に測定したところ、If、Ie特性は図4に示すような特性であった。すなわち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約0.9μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0171】
(実施例3)
本実施例は、実施例1の工程4を以下の様に行った以外は実施例1と同様にして電子放出素子の作製を行った。そのため、以下には、工程4のみを記す。
【0172】
(工程4)
ついで、酢酸ニッケル(4水和物)を0.85g、イソプロピルアルコールを25g、エチレングリコールを1g、ポリビニルアルコールを0.05gとり、水を加えて全量を100gとして、ニッケル溶液を調製した。このNi溶液を工程3までを終えた基板1上に回転塗布した(図1(d´))。そして、大気中で350℃にて30分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は100〜1000nmであり、工程3で得たPd粒子3の配置位置から実質的に移動していなかった。
【0173】
また、TiN層上に、上記工程3におけるPd粒子3の間隔をより狭くして配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、PdとNiの合金ピークが観察された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるNiの比率はほぼ50%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとNiの合金粒子であると推測される。
【0174】
本実施例で得られた電子放出素子の電子放出特性を実施例1と同様に測定したところ、If、Ie特性は図4に示すような特性であった。即ち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約0.8μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0175】
(実施例4)
本実施例は、実施例1の工程3、工程4を以下の様に行った以外は実施例1と同様にして電子放出素子の作製を行った。そのため、以下には、工程3および工程4のみを記す。
【0176】
(工程3)
次いで、導電性材料層として、TiN層15を形成した。その後、アセチルアセトン鉄を1.3gとり、トルエンを加えて全量を100gとして鉄溶液を用意した。そして、この鉄溶液を、TiN層15の上に回転塗布し、真空下600℃で加熱処理をした。この工程により、第1の触媒材料であるFeの薄膜を、TiN層15上に形成した。
【0177】
(工程4)
つぎに、第2の触媒材料を含む粒子であるところのパラジウム粒子3のエタノール分散液(Pd含有率:0.2mmol/l、粒径:約10nm、分散剤:PVP、分散媒(溶媒):エタノール)をTiN層15の上に回転塗布した。その後、大気中で、350℃にて10分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。
【0178】
この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は100〜1000nmであった。
【0179】
また、Feの薄膜上に、上記工程4において分散配置したPd粒子3の間隔よりも狭くしてPd粒子を配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、パラジウムおよび鉄の回折ピークは認められず、パラジウムと鉄の合金化が確認された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるFeの比率は40%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとFeの合金粒子であると推測される。
【0180】
本実施例で得られた電子放出素子のIf、Ie特性は図4に示すような特性であった。すなわち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約0.8μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0181】
尚、実施例1、2の電子放出素子と比べて、実施例3、4の電子放出素子の電子放出特性の時間的な変動が大きかった。
【0182】
(実施例5)
本実施例では、実施例1の製造方法を用いて複数の電子放出素子を図8で示すマトリクス状に配置して電子源を形成し、更に、この電子源を用いて、図9に示す画像表示装置131を形成したところ、輝度の高い表示画像を得ることができた。
【0183】
以上説明した本発明においては、各製造工程、構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に特定的な記載がない限りは、その範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本発明は、上記思想に基づいて、様々な変更を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の電子放出素子の製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】本発明による横型の電子放出素子の一例を示す模式図である。
【図3】図2の電子放出素子を動作させた時の状態を示す模式図である。
【図4】本発明による電子放出素子の電子放出特性を示す模式図である。
【図5】本発明のカーボンファイバーの構造の一例を示す模式図である。
【図6】本発明のカーボンファイバーの構造の他の一例を示す模式図である。
【図7】本発明による縦型の電子放出素子の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の電子源の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の画像表示装置の一例を示す模式図である。
【図10】本発明のカーボンファイバーの製造方法の概要を示す模式図である。
【図11】本発明のカーボンファイバーの製造方法の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0185】
1 基板
2 陰極(カソード電極)
3 引き出し電極(ゲート電極)
15 導電性材料層
5 合金触媒粒子
6 カーボンファイバー
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンファイバーの製造方法及びそれを使用した電子放出素子の製造方法、電子デバイスの製造方法、画像表示装置の製造方法および画像表示装置を用いた情報表示再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にカーボンファイバーを作製する方法としては、様々な手法が発表されている。その一例としては、例えば、まず、基板上に触媒膜を形成し、次いで当該触媒膜を還元凝集させることにより触媒粒子を基板上に形成し、さらに、触媒粒子を用いて炭化水素等の炭素化合物を熱分解することにより、触媒粒子が配置されていた場所にカーボンファイバーを製造する方法がある。
【0003】
また、触媒として複数の金属からなる触媒を用いてカーボンファイバーを成長させる方法が特許文献1〜5に開示されている。そして、近年では、触媒から成長させたカーボンファイバーを電子放出素子に用いる技術が注目されている(特許文献3〜5)。
【特許文献1】特開平3−260119号公報
【特許文献2】特開2002−115057号公報
【特許文献3】米国特許第5973444号明細書
【特許文献4】特開2002−150925号公報
【特許文献5】特開2004−115959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した触媒膜から触媒粒子を形成する方法においては、基板上における触媒粒子の密度、触媒粒子間の間隔、触媒粒子の直径、触媒粒子の組成(合金比率)などを任意に制御することは必ずしも簡単ではなかった。
【0005】
特に、良好な特性を備えるカーボンファイバーを形成することのできる、多数の金属を含む触媒粒子(典型的には合金触媒粒子)を、所望の組成、形状、配列で、基板上に再現性良く配置することが難しかった。そのため、均一性が高く、良好な特性を備える多数のカーボンファインバーを、簡易な方法で、基板上に再現性良く、形成することが困難であった。
【0006】
そこで、触媒粒子の密度を制御することでカーボンファイバーの配置を制御すること、触媒粒子の粒径を制御することでカーボンファイバーの直径を制御すること、触媒粒子の組成比率(合金比率)を制御することで結晶性等のカーボンファイバーの特性を制御すること、を同時に解決する手法の開発が望まれていた。
【0007】
そして、特には、電子放出素子の電子放出材として良好な特性を持つカーボンファイバーを制御性良く製造するために、基板上に合金触媒粒子を、複雑なプロセスを必要とせずに配置する方法が望まれていた。
【0008】
本発明は、多数の触媒材料からなる触媒粒子を基板上に所望の形状、組成、配列で形成することで、良好な特性を備えるカーボンファイバーを製造する製造方法、及び該カーボンファイバーを用いた電子放出素子並びに電子デバイスの製造方法、並びに、該電子放出素子を備える画像表示装置の製造方法を提供するである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カーボンファイバーの製造方法であって、第1の触媒材料と、前記第1の触媒材料とは異なる第2の触媒材料を含む触媒粒子との積層体を、基体上に配置する第1工程と、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とからなる触媒粒子を前記基体上に形成する第2工程と、前記触媒粒子と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、前記基体上にカーボンファイバーを成長させる第3工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記本発明は、また、「前記第1工程は、前記第1の触媒材料を膜状に前記基体上に配置する工程と、前記膜状に配置された前記第1の触媒材料の上に、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を配置する工程と、を含むこと」、「前記第1工程は、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を覆うように前記第1の触媒材料を配置する工程と、を含むこと」、「前記第2の触媒材料が非磁性材料であり、前記第1の触媒材料が磁性材料であること」、「前記第1工程は、各々が前記第2の触媒材料を含む複数の触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、前記複数の触媒粒子同士が前記第1の触媒材料によって繋がらないように、前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程と、を含むこと」、「前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程は、前記第1の触媒材料を含む溶液を、前記複数の触媒粒子に接触させることで、各々の前記複数の触媒粒子上に、前記第1の触媒材料を析出させる工程を含む、こと」、「前記第2の触媒材料がPdであり、前記第1の触媒材料がFe、Ni、Coのいずれかを含むこと」、「前記第2工程は、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料との合金からなる合金触媒粒子を形成する工程であること」、をも特徴とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記カーボンファイバーの製造方法を、カーボンファイバーを備える電子デバイスの製造方法、カーボンファイバーを備える電子放出素子の製造方法およびカーボンファイバーを備える電子放出素子を用いた画像表示装置の製造方法に適用することをも、その特徴とするものである。
【0012】
そして、本発明は、また、放送信号に含まれる映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを出力する受信器と、上記製造方法により製造された画像表示装置とを少なくとも備える情報表示再生装置をも、その特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粒径、合金比率、粒子間隔が制御された、多数の触媒粒子を基体上に再現性良く配置することができ、その結果、これらの触媒粒子からカーボンファイバーを成長させることにより、基体上に電子放出特性に優れたカーボンファイバーを多数配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明のカーボンファイバーの製造方法、電子放出素子の製造方法について説明する。
【0015】
尚、本発明における「カーボンファイバー」とは、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、アモルファスカーボンファイバー、ダイアモンドファイバーなどを含む。また「カーボンファイバー」は炭素を含むファイバーであり、炭素を主成分とするファイバーであることが好ましい。また、カーボンファイバーの直径は、カーボンファイバーを電子放出素子などの電流をカーボンファイバーに流す電子デバイスに用いる場合には、1nm以上1μm以下であることが好ましく、1nm以上500nm以下であることがより好ましく、5nm以上100nm以下であることが安定な電流供給を実現する上で更に好ましい。また、カーボンファイバーの長さは直径の5倍以上であることが好ましい。
【0016】
以下に、図10を参照しながら、本発明のカーボンファイバーの製造方法について、まず、簡単に説明する。本発明において、カーボンファイバーは、以下の工程1〜工程3によって基本的に形成することができる。(工程1)第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体が配置された基体1を用意する(図10(a))。(工程2)次に、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む触媒粒子5を基体1上に形成する(図10(b))。(工程3)そして、基体1上に配置された触媒粒子5と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、前記基体1上にカーボンファイバー6を成長させる(図10(c))。
【0017】
以下、上記各工程について詳細に図11を用いて説明する。
【0018】
(工程1)
図10(a)で示した基体1は、さらに、図11(a)に示す様に、その表面に電極(導電膜)2を備えることもできる。特に、工程3で形成するカーボンファイバーを電子デバイスに応用する場合には、基体1は少なくとも表面に電極(導電膜)2を備えることが好ましい。基体1自体が金属などの導電性の材料であれば電極(導電膜)2を必ずしも設ける必要はない。基体1の材料としては様々な材料を用いることができるが、好ましくはガラスを用いる。基体1の材料としてガラスを用い、カーボンファイバーを電子デバイスに応用する場合には、基体1の表面に電極(導電膜)2を備えることが好ましい。
【0019】
また、基体1(または電極2)を構成する材料と、第1の触媒材料及び/又は第2の触媒材料とが化学的に反応し易い場合には、第1の触媒材料及び/又は第2の触媒材料との反応性が基体1(または電極2)よりも低い材料からなる層を基体1(または電極2)の表面に設けることが好ましい。尚、基板1(または電極2)上に形成したカーボンファイバーを、そのまま電子放出素子などの電子デバイスに用いる場合には、上記層としては導電性材料層であることが好ましい。このような特性を持つ層(導電性材料層)として望ましい材料として、遷移金属の窒化物がある。遷移金属の窒化物としては、例えば、TiN、ZrN、TaN、HfN、VN、CrNが挙げられる。また、薄ければTiOxなどの酸化物も使用可能である。また、このような中間層は、電極と触媒層との間に配置することで、電極の材料の選択範囲を広げることができる。
【0020】
第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体は、例えば、以下の手順で形成することができる。即ち、まず、第2の触媒材料を含む粒子3を基体1(又は電極2)上に配置する(図11(b))。その後、第2の触媒材料を含む粒子3を第1の触媒材料4で被覆する(図11(c))。尚、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4との積層体を、多数配置する場合には、積層体同士が間隔を置いて基体1(または電極2)上に配置される。
【0021】
第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体は、また、第1の触媒材料を含む膜を基体1(電極2)上に配置し、その上に第2の触媒材料を含む粒子3を配置することで形成することもできる。
【0022】
第2の触媒材料を含む粒子は、上述したカーボンファイバーの直径を考慮して、その粒径(直径)が1nm以上100nm未満の範囲に設定することが好ましい。また、第2の触媒材料を含む粒子の粒径分布は、小さいものが好ましい。
【0023】
第2の触媒材料を含む粒子の配置方法としては、予め用意した第2の触媒材料を含む粒子を基体1(又は電極2)上に配置することが好ましい。そして、第2の触媒材料を含む粒子の具体的な配置方法としては、第2の触媒材料を含む粒子の分散液を塗布する手法を採用する方法や、第2の触媒材料を含む粒子をガスデポジション法により配置する手法などを採用することができる。
【0024】
第2の触媒材料を含む粒子の分散液を塗布する手法を採用する場合には、例えば、第2の触媒材料を含む粒子の分散液を基体1(又は電極2)上に塗布した後に、加熱などにより溶媒などの不要な物質を除去し、更にその後、第2の触媒材料を含む粒子を還元処理することで得ることができる。このようにすれば、分散液中における第2の触媒材料を含む粒子の濃度を調整すること、及び/あるいは、基体1(又は電極2)上に塗布する条件を調整すること、により、基体1(又は電極2)上における、第2の触媒材料を含む粒子同士の間隔を調整することができるので好ましい。
【0025】
あるいは、また、第2の触媒材料からなる膜を基体1(又は電極2)上に成膜し、この膜を加熱することにより凝集させて第2の触媒材料からなる粒子を多数、基体1(又は電極2)上に形成することもできる。第2の触媒材料からなる膜は、スパッタ法や、第2の触媒材料の溶液(例えば第2の触媒材料の錯体溶液)を基体1(又は電極2)上に塗布し焼成する方法など、周知の成膜方法を採用することができる。尚、上記第2の触媒材料の溶液は、主溶媒が水であることが生産性の観点から望ましい。
【0026】
尚、第1の触媒材料の上に第2の触媒材料からなる粒子を配置する場合には、第1の触媒材料を基体1(又は電極2)上に形成した後に、上述した方法で、第1の触媒材料の上に第2の触媒材料からなる粒子を配置すればよい。
【0027】
第2の触媒材料を含む粒子3の分散液には、粒子同士の凝集を防ぐための保護剤が含まれていてもよい。保護剤としては高分子や界面活性剤や金属配位子を用いることができる。基体1(又は電極2)上に上記分散液を塗布した後に、加熱処理することにより保護剤は除去することができる。尚、溶媒や保護剤などの除去のための加熱処理などによって、第2の触媒材料を含む粒子3が酸化した場合には、上記還元処理を施すことによって、第2の触媒材料を含む粒子3の触媒能力を発現させることができる。尚、第2の触媒材料を含む粒子3が酸化し難い材料であるのならば、上記還元処理は必ずしも必要としない。
【0028】
また上記加熱処理により下地(基体1(又は電極2)あるいは第1の触媒材料)と第2の触媒材料を含む粒子3との密着性を向上することができる。
【0029】
尚、第2の触媒材料を含む粒子3の濃度を調製した分散液を用いることにより、基体1(電極2)上における第2の触媒材料を含む粒子3の配置(第2の触媒材料を含む粒子3同士の間隔)を調整することができる。
【0030】
第2の触媒材料を含む粒子3の分散液の塗布方法にもよるが、分散液中における第2の触媒材料を含む粒子3の濃度は1wt%以下であることが好ましい。また、分散液中における第2の触媒材料を含む粒子3の濃度は0.005wt%以上であることが好ましい。濃度が1wt%よりも多くなると基体1(又は電極2)上で膜状になってしまい、濃度が0.005wt%よりも小さくなると粒子同士の間隔が広がってしまい、その結果、工程3で形成されるカーボンファイバー6の密度が少なくなりすぎてしまうので実用的でない。
【0031】
得られるカーボンファイバー6の質の観点及び得られるカーボンファイバーの電子放出特性の観点からは、工程2で得られる触媒粒子5は、Fe、Co、Ni、Pd、Y、Rh、Pt、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luの中から選択された2つ以上の触媒材料を含むことが好ましい。特には、良好な特性を備えるカーボンファイバーの観点から、第1および第2の触媒材料としては、Fe、Co、Niのいずれか一つと、Pdとを用いることが好ましい。そして中でも、PdとCoとの組合せが、良好な電子放出特性を長期に渡って維持できるカーボンファイバーを製造できるので、好ましい。
【0032】
この様に、本発明における第1および第2の触媒材料は、金属の触媒材料であることが好ましい。そしてまた、工程2で得られる触媒粒子5は、上記触媒材料から選択された2つ以上の触媒材料の合金であることが好ましい。そのため、第1の触媒材料と第2の触媒材料の各々は、上記した材料の中から選択される。また、第1の触媒材料は、第2の触媒材料とは異なる材料である。
【0033】
尚、上記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料のうち、一方が磁性材料であり他方が非磁性材料である場合においては、上記第2の触媒材料として非磁性材料を用い、上記第1の触媒材料として磁性材料を用いることが好ましい。
【0034】
このことは、第2の触媒材料を含む粒子3の分散液を、基体1(又は電極2)上あるいは第1の触媒材料上に、塗布する場合に特に好適である。
【0035】
即ち、磁性材料はその磁性により配置を制御することが難しく、例えば、磁性材料の粒子の分散液中あるいは磁性材料の粒子の塗布後において、磁性材料の粒子同士が凝集してしまい、基体上に、所望の間隔や密度で配置することが難しくなるためである。
【0036】
そのため、第1の触媒材料と第2の触媒材料のうち、一方が磁性材料であり他方が非磁性材料である場合においては、第1の触媒材料が磁性材料であり、第2の触媒材料が非磁性材料であることが好ましい。上記磁性の触媒材料としては、Fe、Co、Niを用いることができる。また、非磁性材料としては、特にカーボンファイバーの特性などからパラジウムであることが好ましい。
【0037】
そして、得られるカーボンファイバーの質の観点及び得られるカーボンファイバーの電子放出特性の観点から、特には、第1の触媒材料がCoであり、第2の触媒材料がPdであることが好ましい。
【0038】
また、第1の触媒材料は、第2の触媒材料を含む粒子を覆う膜であることが好ましい。膜状であれば、第1の触媒材料を含む膜と第2の触媒材料を含む粒子とが重なった領域だけに、選択的に、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを含む粒子を形成することができる。尚、第1の触媒材料を含む膜は、島状の膜であっても良い。
【0039】
また、上記第1の触媒材料4を基体1(又は電極2)上あるいは第2の触媒材料を含む粒子3上に形成する方法としては、例えば第1の触媒材料の溶液を用いて、回転塗布法、ディッピング法、スプレー塗布法、インクジェット塗布法などを用いることができる。
【0040】
第1の触媒材料を溶媒に溶かした形で使用する場合は、例えば、第1の触媒材料としてFeを用いる場合には、Feを含む化合物として、アセチルアセトン鉄類、酢酸鉄、オクチル酸鉄、ステアリン酸鉄、シュウ酸鉄等のカルボン酸鉄類を用いることができる。また、第1の触媒材料としてCoを用いる場合には、Coを含む化合物として、アセチルアセトンコバルト類、酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、シュウ酸コバルト等のカルボン酸コバルト類を用いることができる。また第1の触媒材料としてNiを用いる場合には、Niを含む化合物として、アセチルアセトンニッケル類、酢酸ニッケル、ギ酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル等のカルボン酸ニッケル類を用いることができる。
【0041】
またこれらの化合物は、さらに配位子が配位した錯体でも良い。配位子としては、酸素(O)原子で配位する化合物、窒素(N)原子で配位する化合物等があるが、例えばアミン類、アルコールアミン類、エチレンジアミン類などの窒素(N)原子で配位する化合物が好ましい。
【0042】
溶液状態で塗布する場合は、金属有機化合物の分散塗布性をよくするためには、高分子化合物、アルコール類を含む溶液としたほうが好ましい。
【0043】
また、図11(b)および図11(c)に示す様に、第1の触媒材料4を第2の触媒材料を含む粒子3上に配置する場合には、第1の触媒材料3を第2の触媒材料を含む触媒粒子3上に析出させることによって、積層体を形成することが出来る。即ち、第2の触媒材料を含む粒子3をメッキ核とし、この上に、第1の触媒材料をメッキ法により析出させる方法である。
【0044】
第1および第2の触媒材料は、それぞれ単独で、カーボンファイバーの成長の核として機能する。そのため、後述する工程3のカーボンファイバーを成長させる温度によっては、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4とが重なり方に注意する必要がある。つまり、第1および第2の触媒材料のうちのいずれか一方の触媒材料だけが配置されている領域が、基体1(又は電極2)上に存在する状態となると、工程3における温度によっては、この領域からもカーボンファイバーが成長することになる。そのため、このような状態は好ましくない。
【0045】
そこで、第2の触媒材料を含む粒子3をメッキ核として、その上に第1の触媒材料4を析出させる方法を採用することが好ましい。この手法によれば、第2の触媒材料を含む粒子3を所望の間隔(密度)で基体1(又は電極2)上に配置でき、さらに、その所望の間隔(密度)で配置された第2の触媒材料を含む粒子3のみに、選択的に、第1の触媒材料4を含む被膜を形成することができる。第1の触媒材料4の被膜の厚みは、第1の触媒材料4を析出させる時間などで制御することができるので、第1の触媒材料4の被膜によって第2の触媒材料を含む粒子3同士が繋がることを抑制できる。このため、工程2で形成する、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを含む粒子6が、基体1(又は電極2)上に所望の間隔(密度)で配置することができる。
【0046】
具体的には、第2の触媒材料を含む粒子3を基体1(又は電極2)上に配置した後に、この基体1を無電解めっき浴中に浸漬して第2の触媒材料を含む粒子3表面に、第1の触媒材料4を無電解めっき法を用いて析出させる。
【0047】
無電解めっき浴は、一般に金属塩、還元剤、pH調製剤、緩衝剤、錯化剤、安定剤等を含む水溶液である。還元剤としては次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等が用いられる。まためっき浴の寿命を長くしたり、還元剤の効率をよくするためにpH調製剤、緩衝剤、錯化剤、安定剤等が用いられる。
【0048】
pH調製剤は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物、無機酸、有機酸等である。
【0049】
緩衝剤はpH変動を抑制するために使用されるものでクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム、ホウ酸、炭酸等の無機塩、有機酸、無機酸など金属塩等がある。錯化剤にはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア、エチレンジアミン、グリシン、ピリジン等がある。
【0050】
錯化剤は遊離の金属イオン濃度を低下させることによって水酸化物の沈殿を防止して浴の安定性を向上させる。
【0051】
めっき浴は溶液内に粉末状の金属が析出したり、還元反応が被めっき物の表面以外で起こるとめっき液の分解を引起す。そこで分解抑制のため安定剤として硫黄化合物や鉛イオンを微量添加して優先的に吸着させてめっき液の分解を抑制することもある。
【0052】
例えば、第1の触媒材料4としてCoを用いる場合、無電解めっき浴として、無電解コバルトめっき浴を用いる。無電解コバルトめっき浴に用いる金属塩としては塩化コバルトを用い、還元剤としてヒドラジン塩酸塩、錯化剤としては酒石酸ナトリウムを用い、pHは10以上とすることが好ましい。
【0053】
この無電解コバルトめっき浴中に、第2の触媒材料を含む粒子3(例えば、Pd粒子)を配置した基体1を浸漬することにより、Co層4と、Co層4で被覆されたPd粒子3とで構成された積層体を基体1上に形成することができる。
【0054】
また、第2の触媒材料を含む粒子3の表面に析出させる第1の触媒材料4の積層量(膜厚)は、無電解めっき浴の温度、浸漬時間等を調節することにより制御することができる。
【0055】
以上のようにして、第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体を基体1(又は電極2)上に配置することができる(図10(a))。
【0056】
尚、ここでは、触媒材料が2種類の場合のみについて説明したが、上記積層体に、他の種類の触媒材料が含まれていても良い。即ち、例えば、上記第2の触媒材料を含む粒子3の中に、第3の触媒材料が含まれていても良いし、また、上記第2の触媒材料を含む粒子3の上に、第1の触媒材料を積層した後にさらに第3の触媒材料を積層しても良い。あるいはまた、上記第2の触媒材料を含む粒子3の上に、第1の触媒材料と第3の触媒材料との混合物を積層しても良い。この様に本発明においては、第1の触媒材料4と、第2の触媒材料を含む粒子3との積層体を基体1(電極2)上に配置する。
【0057】
また、前述したように、本発明においては、第2の触媒材料を含む粒子3の間に位置する基体1(又は電極2)上に第1の触媒材料が配置されることは、後述する工程3のカーボンファイバーを成長させる温度によっては、好ましくはない。
【0058】
しかしながら、第1の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度が、第2の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度よりも、実効的に30℃以上高くなるように、第1および第2の触媒材料を選択すれば、本工程1において、第1の触媒材料が、第2の触媒材料を含む粒子間の基体1(又は電極2)上に残っていても問題がない。そのため、この様に第1の触媒材料と第2の触媒材料とを選択すれば、上記したメッキ法に限られず、その結果、製造方法の選択の幅を広げることができる。
【0059】
また、より正確には、カーボンファイバーの成長を考慮する際には、工程2で形成される、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む粒子5を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度と、第1の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度とを比較する必要がある。
【0060】
そのため、好ましくは、第1の触媒材料単体を用いた場合におけるカーボンファバーの成長の開始に必要な温度が、工程2で形成される第1の触媒材料4と第2の触媒材料とを含む粒子(典型的には、第1の触媒材料と第2の触媒材料の合金粒子)5を用いた場合においてカーボンファバーが成長を開始する温度よりも、実効的に高くなる様に選択すれば、本工程において、第1の触媒材料が、第2の触媒材料を含む粒子3間の基体1(又は電極2)上に残っていても問題がない。温度差としては、30℃以上であり、好ましくは100℃以上が良い。
【0061】
尚、ここで言う、「カーボンファバーの成長の開始に必要な温度」は、例えば、カーボンファイバーの原料ガス、原料ガスの分圧、触媒粒子の直径などを一定にした系において、各触媒粒子を用いたときに、30分で1μm以上カーボンファイバーが成長することのできる温度のうちの最低温度とすることができる。
【0062】
(工程2)
図10(b)を用いて説明した触媒粒子5は、典型的には、第1の触媒材料4と第2の触媒材料を含む粒子3との積層体が配置された基体1を加熱することで得ることができる。また、触媒粒子5の中に含まれる第1の触媒材料と前記第2の触媒材料は、第1の触媒材料と前記第2の触媒材料の合金であることが好ましい。
【0063】
第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させる方法としては、第1の触媒材料と第2の触媒材料含む粒子との積層体を基体上に配置した後、積層体を加熱する方法を採用することができる。加熱は、非酸化雰囲気中で行うことが好ましい。
【0064】
非酸化雰囲気で加熱することで第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させる方法としては、例えば、真空中で500℃〜700℃に加熱することにより行うことができる。この様にすれば、第1及び/または第2の触媒材料が金属化合物の状態で基体1上に配置されていたとしても、金属化合物が熱分解され、第1および第2の触媒材料(金属)からなる合金触媒粒子5を形成することができる。
【0065】
また、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させる方法としては、酸化雰囲気中で加熱した後に、還元雰囲気中で加熱する方法を採用することもできる。この方法は、例えば、第1の触媒材料と第2の触媒材料含む粒子との積層体を空気中で200℃〜500℃、好ましくは350℃前後で加熱して酸化物にさせた後に、水素雰囲気中で500℃〜700℃で加熱することで、酸化物を還元することにより、第1および第2の触媒材料(金属)からなる合金触媒粒子5を形成することができる。
【0066】
以上のようにして、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを反応させて、第1の触媒材料と第2の触媒材料とを含む触媒粒子5を基体1(電極2)上に配置することができる。
【0067】
尚、電子放出特性の観点から、触媒粒子5はFe、Co、Niのいずれか一つと、Pdとを含むことが好ましく、さらには、PdとCoの合金を含むことが好ましい。そして、触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが20atm%(原子百分率)以上触媒粒子5内に含まれることが好ましい。また、触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが80atm%(原子百分率)以下触媒粒子5内に含まれることが好ましい。
【0068】
触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが含まれる割合が、20atm%よりも小さい場合には、触媒粒子5がPd100%で構成されるものと比較して、十分な電子放出量(例えば1μA)を得るために必要な電圧値が大して下がらない。また、80atm%を超えると、カーボンファイバー6を成長させるのに必要な温度が急に上昇し、触媒粒子5が例えばCo100%で構成された場合と実質的に同等となってしまう。このような観点から、触媒粒子5内に含まれるPdに対して、Fe、Co、Niのいずれか一つが触媒粒子5内に含まれる割合は、20atm%(原子百分率)以上80atm%(原子百分率)以下であることが好ましい。
【0069】
(工程3)
つぎに触媒粒子5を用いてカーボンファイバー6を基体1上に成長させる工程について述べる。
【0070】
カーボンファイバー6は、具体的にはCVD法を用いて、カーボンファイバーの原料ガスを分解することで形成することができる。CVD法としては、プラズマCVD法や熱CVD法を用いることができる。特には、簡易に製造を行える熱CVD法を用いることが好ましい。また、得られるカーボンファイバーの均一性や電子放出能力の高さから、減圧熱CVD法を採用することが好ましい。
【0071】
カーボンファイバーの原料ガスとしては、炭素を含むガスを用いることができる。
【0072】
本発明に用いられる炭素を含むガスとしては例えばアセチレン、エチレン、メタン、プロパン、プロピレンなどの炭化水素ガスが好ましく用いられる。エタノールやアセトンなどの有機溶剤の蒸気を用いることもできる。また、上記炭化水素ガスと水素ガスとの混合ガスがより好ましく用いられる。炭化水素ガスと水素ガスとの混合ガスを用いた場合には、工程2で形成した第1及び/または第2の触媒材料が金属化合物の状態で基体1上に配置されていたとしても、当該金属化合物が混合ガス中に含まれる水素ガスで還元処理されるので、前述したような特別な還元処理工程を設けずに、カーボンファイバー6を成長させることができるので好ましい。
【0073】
また、上記カーボンファイバー6は、カーボンファイバーの両端のうち、基体1に固定されていない側の先端部(先端部近傍)に触媒粒子5を内包している場合や、カーボンファイバーの両端の中間あたりの位置で触媒粒子5を内包している場合もある。あるいは、触媒粒子5が基体1(または電極)上に残っており、その触媒粒子5上にカーボンファイバーの一方の端部が接続している場合もある。好ましくは、触媒粒子5はその表面が露出しておらず、カーボンファイバーに内包されていることが好ましい。
【0074】
本工程により形成されるカーボンファイバーの模式図を、図5および図6に示す。図5(a)および図6(a)は、光学顕微鏡レベル(〜1000倍)で観察される形態である。図5(b)及び図6(b)は、走査電子顕微鏡(SEM)レベル(〜3万倍)で観察される形態であり、図5(a)および図6(a)の一部(51、61)の拡大図である。図5(c)、および図6(c−1)、図6(c−2)は透過電子顕微鏡(TEM)レベル(〜100万倍)で観察されるカーボン(グラフェン)の形態である。図5(c)は図5(b)における一部(52)の拡大図であり、図6(c−1)は図6(b)の一部(62)の拡大図であり、図6(c−2)は図6(b)の他の一部(63)の拡大図を模式的に示している。
【0075】
ここで、グラファイトは、炭素原子がsp2混成により共有結合でできた正六角形を、敷き詰める様に配置された炭素平面が、理想的には約3.354Åの距離を保って積層してできたものである。この一枚一枚の炭素平面を「グラフェン」或いは「グラフェンシート」と呼ぶ。
【0076】
図5(c)に示す様に、グラフェン53が円筒形状の形態をとるものは「カーボンナノチューブ」と呼ばれる。そして、円筒形のグラフェン53が多重構造になっているカーボンナノチューブは、「マルチウォールカーボンナノチューブ」と呼ばれる。一方、1つの円筒形のグラフェン53で構成されるカーボンナノチューブは、「シングルウォールカーボンナノチューブ」と呼ばれる。特に、これらカーボンナノチューブにおいては、チューブ先端のグラフェンを閉じずに開放させた構造の時に、電子放出に必要な電界の閾値が最も下がる。また、マルチウォールカーボンナノチューブの中空構造の中に、竹の節のような構造を持つ物があるが、これらの多くはファイバーの軸に対する最外周のグラフェンの角度がほぼ0°であり、このような構造もカーボンナノチューブに含まれる。これらのカーボンナノチューブはファイバーの軸方向と円筒形に形成された最外周に形成されるグラフェンの面が略平行(ファイバーの軸(ファイバーの長手方向)とグラフェンとがなす角度がおおよそ0°)であり、チューブ内が必ず中空であるのが特徴である。
【0077】
次に、図6(c)に模式的に示すカーボンファイバーは、複数のグラフェン64がファイバーの軸方向に積層されて構成されている。この形態のカーボンファイバーは「グラファイトナノファイバー」と呼ばれる場合もあり、前述のカーボンナノチューブとは区別されるものである。つまり、前述のカーボンナノチューブにおいては、c軸(複数のグラフェンが積み重なる方向、あるいはグラフェンの面に対して垂直な方向)が、ファイバーの軸方向(ファイバーの長手方向)に対して実質的に垂直であるのに対し、グラファイトナノファイバーは、c軸(グラフェンの重なる方向、あるいはグラフェンの面に対して垂直方向)が、ファイバーの軸方向(ファイバーの長手方向)と非垂直である(典型的には平行である)。
【0078】
ファイバーの軸とグラフェンの面とが形成する角度がほぼ90°である場合には「プレートレット型」と呼ぶ。換言すれば、グラフェンがトランプのように多数枚積み重なった構造をしている。
【0079】
一方、図6(c−1)、図6(c−2)に示すように、ファイバーの軸方向に対する、グラフェン64の面の角度が90°より小さく0°より大きい角度である形態を「ヘリンボーン型」と呼ぶ。「ヘリンボーン型」の形態には穴のあいたカップ状のグラフェンを積み重ねたような形態もある。また、図6(c−2)のように、本を開いて積み重ねたような形態(V字状のグラフェンを積み重ねたような形態)も「ヘリンボーン型」に含まれる。
【0080】
ヘリンボーン型におけるファイバー軸の中心付近は、中空である場合や、アモルファスカーボン(TEMレベルの電子線回折像で明確な結晶格子に伴うスポットや格子の明暗像が見えず、ブロードなリングパターン程度しか見えないもの)が詰まっている場合等がある。
【0081】
図5および図6には、カーボンファイバーの直線性が悪い状態で成長した場合の概略図を示した。本発明の製造方法により形成されるファイバーが、全てがこのように直線性が悪いわけではなく、直線性の高いカーボンファイバーを得ることもできる。
【0082】
以上述べたカーボンナノチューブ及びグラファイトナノファイバーは、電子放出特性の観点で、電子放出素子に好ましく適用される。特にグラファイトナノファイバーは、カーボンナノチューブよりも放出電流を得ることができるので好ましい。しかしながら、本発明は、カーボンナノチューブ及びグラファイトナノファイバーに限らず、熱CVD法で形成されるカーボンファイバー全般に渡って適用することができる。
【0083】
カーボンナノチューブとグラファイトナノファイバーは、触媒の種類、及びカーボンファイバーの原料ガスの熱分解温度によって作り分けることが可能である。同一の触媒で、両方の構造を持つ物を温度によって選択的に制御することも可能である。また、どちらかの構造のみのカーボンファイバーを形成することもできる。
【0084】
どちらのカーボンファイバーも電子放出の閾値が1V〜10V/μm程度であり、電子放出材料として好ましい特性を持つ。カーボンファイバーを用いて電子放出素子を形成する場合には、1つの電子放出素子は、複数のカーボンファイバーを含む。そして、電子放出材料としては、カーボンファイバーとしてグラファイトナノファイバーを用いることがより好ましい。何故なら、複数のグラファイトナノファイバーを電子放出材(複数のグラファイトナノファイバーからなる膜を電子放出膜)として用いた電子放出素子では、カーボンナノチューブを用いた場合よりも、電子放出電流密度を大きく確保できる為である。
【0085】
グラファイトナノファイバーは、カーボンナノチューブ等と異なり、図9などに示した様に、表面(ファイバーの側面)に微細な凹凸形状を有するために電界集中が起きやすく、電子を放出しやすいと考えられる。そして、また、ファイバーの中心軸からファイバーの外周(表面)に向かってグラフェンが伸びている形態であるため、電子放出をし易いのではないかと考えている。
【0086】
一方のカーボンナノチューブは、ファイバーの側面は、基本的に、c面に相当するため、化学的に不活性であり、グラファイトナノファイバーのような凹凸もないため、ファイバーの側面からは電子の放出は生じないと考えられる。そのため、カーボンファイバーとしてグラファイトナノファイバーを用いることが電子放出素子として好ましいと考えられる。
【0087】
以上の工程によって、カーボンファイバーを形成することができる。
【0088】
次に、本発明で製造したカーボンファイバーを用いた電子放出素子について以下に説明する。
【0089】
本発明において、電子放出素子を製造する場合には、上記工程3で形成した複数のカーボンファイバーをカソード電極に電気的に接続して電子放出素子を構成する。この時、カソード電極として、前述した基体1上に形成した電極(導電層)2を用いれば、カソード電極上に直接カーボンファイバーを形成することができるので、製造工程が簡略になるので好ましい。
【0090】
しかしながら、別途、本発明のカーボンファイバーの製造方法を用いて製造したカーボンファイバーを多数集め、その集めたカーボンファイバーの中から選択した複数のカーボンファイバーをカソード電極上に配置することで電子放出素子を製造することもできる。
【0091】
このような場合には、例えば、集めたカーボンファイバーを印刷用のペーストに混ぜることで複数のカーボンファイバーを含むペーストを用意し、次いで、このペーストを印刷法などによりカソード電極上に塗布後、焼成することで、複数のカーボンファイバーをカソード電極上に固定することができる。また、上記ペーストには、必要に応じてガラスフリットなどの接着剤や導電性材料を混ぜることもできる。
【0092】
そして、カソード電極上に配置されたカーボンファイバ−から電子を引き出すための電極(引き出し電極:ゲート電極やアノード電極)を、カーボンファイバ−に対向するように配置することで電子放出装置(所謂ダイオード構造の電子放出装置)とすることができる。
【0093】
さらにカーボンファイバーから放出された電子の照射により発光する蛍光体などの発光体を引き出し電極(ゲート電極やアノード電極)上に配置すればランプなどの発光装置を形成することができる。
【0094】
また、トライオード構造の装置を構成する場合(ダイオード構造の電子放出素子を構成する場合)には、上記複数のカーボンファイバーが配置されたカソード電極と離れて配置されたゲート電極を配置することでダイオード構造の電子放出素子を構成し、そして、この電子放出素子に対向するようにアノード電極を配置することにより、トライオード構造の電子放出装置を構成することができる。
【0095】
また、さらには、複数のカーボンファイバーを用いた電子放出素子を複数配列した基体に対向するように、蛍光体などの発光体とアノード電極とを有する透明な基板を配置することで、ディスプレイなどの画像表示装置をも構成することができる。
【0096】
本発明のカーボンファイバーを用いた電子放出装置、発光装置、あるいは画像表示装置においては、内部を従来の電子放出素子のように超高真空に保持しなくても安定な電子放出をすることができ、また低電界で電子放出するため、信頼性の高い装置を非常に簡易に製造することができる。
【0097】
次に、本発明により得られるカーボンファイバーを電子放出材料に用いた電子放出素子について、図2を用いて詳述する。尚、ここでは、ダイオード構造の横型の電子放出素子の例を説明する。
【0098】
図2(a)はダイオード構造の横型の電子放出素子の平面模式図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’断面模式図である。
【0099】
図2において、1は絶縁性の基板、3は制御電極(ゲート電極として用いる場合もある)、2はカソード電極、14はレジストパターン、15は導電性材料層、5は合金触媒粒子、6はカーボンファイバーである。尚、導電性材料層15は必ずしも必要とはしない。
【0100】
図2(a)および図2(b)に示した電子放出素子の製造方法の一例を図1(a)〜図1(f)を用いて以下に説明する。尚、カーボンファイバー自体の製造方法は上述した通りであり、ここでは、その一例を示している。
【0101】
(工程A)
基板1を十分洗浄を行った後、引き出し電極3及びカソード電極(陰極)2を形成するため、まず基板1全体に、スパッタ法等により、不図示の厚さ500nmの電極層を形成する。
【0102】
次に、フォトリソグラフィー工程で、不図示のポジ型フォトレジストを用いてレジストパターンを形成し、パターニングした前記フォトレジストをマスクとして、電極層をArガスを用いてドライエッチングを行い、電極ギャップ間(間隙の幅)が5μmからなる引き出し電極3、及び陰極2をパターニングする(図1(a))。
【0103】
尚、基板1としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムガラスよりもアルカリ成分を少なくした低アルカリガラス、無アルカリガラスなどを用いることができる。
【0104】
また、以下、フォトリソグラフィー工程、成膜、リフトオフ、エッチング等による薄膜やレジストのパターニングを単にパターンニングと称する。
【0105】
(工程B)
フォトリソグラフィー工程で、後のリフトオフに用いるレジストパターン14を、ネガ型フォトレジストを用いて形成する(図1(b))。
【0106】
次に、導電性材料層15を形成する。そして、その上に、前述した第2の触媒材料(例えばPd)を含む粒子3の分散液を、導電性材料層15上に、例えば回転塗布する。その後、加熱し、ついで、還元処理することにより、Pdなど触媒粒子16を形成する〔図1(c)〕。
【0107】
尚、ここでは、電極2と後述する触媒粒子5との反応を抑制するために、導電性材料層15を配置している。このような導電性材料層15として望ましい材料として、遷移金属の窒化物がある。遷移金属の窒化物としては、例えば、TiN、ZrN、TaN、HfN、VN、CrNが挙げられる。また、薄ければTiOxなどの酸化物も使用可能である。また、このような導電性材料層15を、電極2と触媒粒子5との間に配置することで、電極2の材料の選択範囲を広げることができる。
【0108】
(工程C)
次に、基板1を、前述したように、第1の触媒材料(例えばCo)の無電解めっき浴中に浸漬し、第2の触媒材料を含む粒子3の各々の上に、第1の触媒材料4を析出させる(図1(d))。
【0109】
別の方法としてはFe、Co、Niなどの第1の金属有機化合物の溶液を回転塗布し、次いで350℃焼成し、ついで還元することにより、第2の触媒材料を含む粒子3上に第1の触媒材料を配置することで、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4との積層体を形成する方法もある(図1(d’))。
【0110】
またスパッタ法等によりFe、Co、Niなどの第1の触媒材料4をPdなどの第2の触媒材料を含む粒子3上に配置しても良い。
【0111】
尚、第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4の配置の順番は逆にしても良い。すなわちFe、Co、Niなどの第1の触媒材料4を電極2上にまず配置し、ついでPdなどの第2の触媒材料を含む粒子3を配置して、積層体を形成しても良い。
【0112】
(工程D)
レジストパターン14の剥離液を用いて、レジストパターン14と共にレジストパターン14上の導電性材料層15及び第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4の積層体をリフトオフする。この工程により、所望の領域に導電性材料層15及び第2の触媒材料を含む粒子3と第1の触媒材料4を残す(図1(e))。
【0113】
(工程E)
続いて、炭化水素ガスと水素とを含むガス気流中で基板1を加熱することで、熱CVD処理をする。尚、ここで説明する例においては、この加熱時に、第1の触媒材料と第2の触媒材料の還元処理、および、第1の触媒材料と第2の触媒材料の反応(合金化)が行われ、更に、電極2上での多数のカーボンファイバー6の成長が行われる(図1(f))。
【0114】
尚、カーボンファイバーを成長させる前に、第1の触媒材料と第2の触媒材料の反応(合金化)及び/または第1の触媒材料と第2の触媒材料の還元処理を別途行うこともできる。
【0115】
以上の工程により、横型の電子放出素子を形成することができる。
【0116】
以上の例では、横型の電子放出素子について説明したが、本発明は、図7に示すような所謂、縦型の電子放出素子に用いることもできる。図7において、1は基板、2はカソード電極、3は制御電極(ゲート電極として用いる場合もある)、6はカーボンファイバー、10は絶縁層、11はアノード電極である。図7に示す構造においても、カーボンファイバーの製造方法は、基本的に前述の通りである。
【0117】
尚、縦型の電子放出素子に比べ、横型の電子放出素子の方が、製造が簡易であると共に、駆動時の容量成分が少ないため、高速駆動ができるので好ましい形態である。一方で、縦型の電子放出素子においては、放出された電子ビームの広がりが横型の電子放出素子よりも小さくすることができるので好ましい。
【0118】
尚、「横型の電子放出素子」とは、基板1の表面と実質的に平行な方向に電界を形成し、この電界によってカーボンファイバー6から電子を引き出す形態の電子放出素子を指す。一方「縦型の電子放出素子」とは、基板1表面に対し実質的に垂直な方向に電界を形成し、この電界によってカーボンファイバー6から電子を引き出す形態の電子放出素子を指す。
【0119】
また、図2及び図7に示した電子放出素子では、カソード電極2と制御電極3を含むものであるが、カーボンファイバー6は低い電界強度で電子放出することが可能なので、図2の制御電極を省いた構造(図7においては制御電極3、絶縁層10を省いた構造)の電子放出素子にも本発明は適用可能である。
【0120】
即ち、基板1上に配置されたカソード電極2と、その上に配置されたカーボンファイバー6とで電子放出素子を構成したもの(図7の様に、アノード電極11を含めるとダイオード(2端子)構造の電子放出装置)にも本発明は適用できる。
【0121】
また、図2、図7に示す様なトライオード構造の電子放出装置においては、制御電極3が所謂ゲート電極(カーボンファイバー6から電子を引き出すための電極)として機能する場合もあるが、カーボンファイバー6は低い電界強度で電子放出することが可能なので、カーボンファイバー6からの電子の引き出しはアノード電極11が行い、制御電極3は、カーボンファイバー6からの電子放出量の変調や電子放出の停止あるいは放出される電子ビームの収束などの整形を行うために用いられる場合もある。
【0122】
次に、図2に示したカーボンファイバーを用いた電子放出素子を例に、図3、図4を用いて、電子放出特性について説明する。
【0123】
電子放出特性を測定するには、まず、電子放出素子を図3に示すような真空装置38内に設置し、真空排気装置39によって内部を10−4Pa程度に到達するまで十分に排気する。そして、図3に示したように高電圧電源を用いて、基板1から数ミリの高さHの位置に陽極(アノード電極)11を設け、電子放出素子の電位よりも数kV高くなるように電圧Vaを陽極11に印加する。
【0124】
尚、ここで説明する例においては、アノード電極11には導電性フィルムを被覆した蛍光体31を設置している。
【0125】
電子放出素子には、駆動電圧Vfとして波高値数十Vのパルス電圧を印加し、この印加電圧に応じて電極2,3間に流れる素子電流Ifと、アノード電極11に流れ込む電子放出電流Ieを計測する。
【0126】
図3には、上記のように各電極に電圧を印加した時に、電子放出素子近傍に形成される等電位線32を点線で示している。最も電界の集中する点33は、カーボンファイバー6の最も陽極11よりで、且つ、ギャップ(間隙)の内側の場所と想定される。
【0127】
この電界集中点近傍に位置するカーボンファイバー6の先端近傍から電子が放出されると考えられる。
【0128】
また、電子放出素子のIe特性は図4に示すような特性である。即ち、電子放出に必要な明確な印加電圧閾値を本発明の電子放出素子は備える。尚、図4において、横軸は、陰極2と引き出し電極3との間に印加する駆動電圧(素子電圧)Vfであり、縦軸は駆動電圧の印加に応じてアノード電極11に流れる放出電流Ieである。このような特性は、図7に示した縦型の電子放出素子においても同様である。
【0129】
次に、上記横型の電子放出素子を複数備えた電子源の一例について、図8を用いて説明する。
【0130】
図8において、1は電子源が配置された基板、112はX方向配線、113はY方向配線である。114は本発明の電子放出素子である。
【0131】
図8においてm本のX方向配線112は、Dx1、Dx2…Dxmから構成されている。配線の材料、膜厚、幅は、適宜設計される。Y方向配線113は、Dy1、Dy2…Dynのn本の配線よりなり、X方向配線112と同様に形成される。これらm本のX方向配線112とn本のY方向配線113との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している(m、nは共に正の整数)。
【0132】
X方向配線112とY方向配線113の端部は、駆動回路と接続するための端子として機能することができる。
【0133】
本発明の製造方法により得られる電子放出素子114を構成するカソード電極(不図示)はX方向配線112とY方向配線113のいずれか一方の配線のうちの1本に電気的に接続され、制御電極は残る他方の配線のうちの1本に電気的に接続される。
【0134】
X方向配線112には、例えば走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線113には、走査信号に同期する変調信号に応じて放出される電子の量を変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧Vfは、印加される走査信号と変調信号との差電圧として供給されるものである。このようにすることによって、個別の電子放出素子114を選択し、独立に駆動可能とすることができるようになっている。
【0135】
次に、このようなマトリクス配置の電子源を用いて構成した画像表示装置の一例について図9を用いて説明する。
【0136】
図9において、1は電子源が配置された基板(リアプレート)、130はガラス基体129の内面に蛍光膜128と導電性膜(メタルバック)127などが形成されたフェースプレートである。124は、支持枠であり該支持枠124は、リアプレート1、フェースプレート130と接続されている。131は外囲器であり、上記フェースプレート130、支持枠124、リアプレート123を相互に封着することで構成されている。
【0137】
6は本発明の製造方法によって得られるカーボンファイバーに相当する。112、113は、前述したX方向配線及びY方向配線である。
【0138】
リアプレート1、支持枠124及びフェースプレート130は、各接合部にフリットガラスやインジウムなどの接着剤を塗布し、大気中や窒素中あるいは真空中で、加熱することによる封着される。尚、上記導電性膜127は、図3や図7で説明したアノード電極11に対応する部材である。
【0139】
外囲器131は、大気中や窒素中で封着して形成した場合には、その後、不図示の排気管を通じ、内部の圧力が所望の真空度(例えば1.3×10−5Pa程度)に達するまで排気した後、排気管を封止することで内部が真空に維持された外囲器131を得ることができる。また、封着を、真空中で行えば、上記した排気管を用いずに、封着と同時に封止が行えるので、簡易に内部が真空に維持された外囲器131を得ることができる。
【0140】
また、外囲器131の封止の前後で、外囲器131の内部に配置した不図示のゲッターを活性化させる場合もある。上記したように、真空中で封着する場合には、封着の前後で、外囲器131の内部に配置した不図示のゲッターを活性化させる。このようにすることで、封止後の外囲器131内部の真空度を維持することができる。
【0141】
外囲器131は、上述の如く、フェースプレート130、支持枠124、リアプレート1で構成される。一方、フェースプレート130、リアプレート123間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器131を構成することもできる。
【0142】
フェースプレート130には、更に蛍光膜128の導電性を高めるため、蛍光膜128とガラス基体129との間にITOなどからなる透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0143】
上記外囲器131内の各電子放出素子には、各電子放出素子に接続するX方向配線およびY方向配線に接続する端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを通じ、電圧を印加することにより、所望の電子放出素子から電子放出させることができる。この時、高圧端子を通じ、メタルバック127に5kV以上30kV以下、好ましくは10kV以上20kV以下の電圧を印加する。この様にする事で、選択した電子放出素子から放出された電子は、メタルバック127を透過し、蛍光膜128に衝突する。そして蛍光体を励起・発光させることで画像を表示する。尚、フェースプレートとリアプレートとの間隔は、1mm以上10mm以下、好ましくは、1mm以上5mm以下に保たれる。
【0144】
なお、以上述べた構成においては、各部材の材料等、詳細な部分は上記した内容に限られるものではなく、目的に応じて適宜変更される。
【0145】
また、図9を用いて説明した本発明の外囲器(画像表示装置)131を用いて情報表示再生装置を構成することができる。
【0146】
具体的には、テレビジョン放送などの放送信号を受信する受信装置と、受信した信号を選曲するチューナーと、選曲した信号に含まれる映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを、外囲器(画像表示装置)131に出力して表示および/あるいは再生させる。この構成によりテレビジョンなどの情報表示再生装置を構成することができる。勿論、放送信号がエンコードされている場合には、本発明の情報表示再生装置はデコーダーも含むことができる。また、音声信号については、別途設けたスピーカーなどの音声再生手段に出力して、外囲器(画像表示装置)131に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
【0147】
また、映像情報または文字情報を外囲器(画像表示装置)131に出力して表示および/あるいは再生させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。
【0148】
まず、受信した映像情報や文字情報から、外囲器(画像表示装置)131の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、外囲器(画像表示装置)131の駆動回路に入力する。そして、駆動回路に入力された画像信号に基づいて、駆動回路から外囲器(画像表示装置)131内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して、画像を表示する。
【0149】
ここで述べた画像表示装置の構成は、本発明を適用可能な画像表示装置の一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。また、本発明の画像表示装置は、テレビ会議システムやコンピュータ等の表示装置等としても用いることができる。
【0150】
また、本発明は、上記した技術思想に基づいて種々の変形が可能である。
【実施例】
【0151】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0152】
(実施例1)
本実施例では、図1の工程に沿って、電子放出素子を製造した。
【0153】
(工程1)
まず、基板1として石英基板を用い、十分洗浄を行った。その後、ゲート電極3及び陰極2を形成するため、基板1全体に、スパッタ法により、不図示の厚さ5nmのTi層を蒸着した後に厚さ100nmのPt層を蒸着した。
【0154】
次に、フォトリソグラフィー工程で、不図示のポジ型フォトレジストを用いてレジストパターンを形成した。
【0155】
次に、パターニングした前記フォトレジストをマスクとして、Pt層およびTi層をArガスを用いてドライエッチングを行い、電極ギャップ間(間隙の幅)が5μmからなる引き出し電極3、及び陰極3をパターニングした(図1(a))。
【0156】
(工程2)
フォトリソグラフィー工程によって、ネガ型フォトレジストを用いて、後の工程におけるリフトオフ用のレジストパターン14を形成した(図1(b))。
【0157】
(工程3)
次いで、導電性材料層として、TiN層15を形成した。そして、更に、第2の触媒材料を含む粒子であるところのパラジウム粒子のエタノール分散液(Pd含有率:0.2mmol/l、粒径:約10nm、分散剤:PVP、分散媒(溶媒):エタノール)をTiN層15の上に回転塗布した後に、大気中で、350℃にて10分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により、Pd粒子3をTiN層15の上に多数配置した(図1(c))。尚、Pd粒子同士の間隔は100〜1000nmであり、粒径は10nmであった。
【0158】
(工程4)
工程1〜工程3を経た基板1を無電解コバルト浴18に浸漬した(図1(d))。下記に無電解コバルト浴の組成を記す。
・塩化コバルト(6水和物) 11.9g/l
・ヒドラジン塩酸塩 68.51g/l
・酒石酸ナトリウム(2水和物) 92.03g/l
・温度 80℃
・pH 12
【0159】
以上の処理により、Pd粒子3を包み込むように、Pd粒子3上にのみCo被膜4を積層した。その後、大気中で350℃にて10分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は30nm程度であり、工程3で得たPd粒子3の配置位置から実質的に移動していなかった。
【0160】
また、TiN層上に、上記工程3におけるPd粒子3の間隔をより狭くして配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、PdとCoの合金のピークが観察された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるCoの比率はほぼ50%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとCoの合金粒子であると推測される。
【0161】
(工程5)
工程2で形成したレジストパターン14の剥離液を用いて、レジストパターン14ごとレジストパターン14上の導電性材料層15及び触媒粒子5をリフトオフし、所望の領域に導電性材料層15及び触媒粒子5を残した(図1(e))。
【0162】
(工程6)
続いて、アセチレン気流中で基板1の加熱処理を行い、陰極2に電気的に接続された多数のカーボンファイバー6を形成した(図1(f))。
【0163】
以上の様にして作製した横型の電子放出素子を、図3に示す真空装置38に設置し、真空排気装置39によって内部を2×10−5Paに到達するまで十分に排気した。その後、電子放出素子からH=2mm離れた陽極11に、陰極2の電位との電位差(電圧)としてVa=10kV印加した。そして、更に陰極2とゲート電極3との間に駆動電圧Vf=20Vからなるパルス電圧を印加して電子を放出させ、陰極2とゲート電極3との間に流れる素子電流Ifと、アノード電極に流れる電子放出電流Ieを計測した。
【0164】
計測されたIfおよびIeの特性は、図4に示すような特性であった。即ち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約1.1μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0165】
本実施例において作成した電子放出素子においては、カーボンファイバー同士が適度に離れて陰極2上に配置されていた。そのため、電界が各カーボンファイバーに効果的に作用し、良好な電子放出特性が得られたと考える。
【0166】
また、本実施例で形成されたカーボンファイバーは、前述したプレートレット型のグラファイトナノファイバーであった。
【0167】
(実施例2)
本実施例は、実施例1の工程4を以下の様に行った以外は実施例1と同様にして電子放出素子の作製を行った。そのため、以下には、工程4のみを記す。
【0168】
(工程4)
ついで、第1の触媒材料であるCoを、スパッタ蒸着で、厚さ1.5nmになるようにPd粒子3上に被膜した(図1(d´))。その後、大気中で350℃にて10分焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は100〜1000nmであり、工程3で得たPd粒子3の配置位置から実質的に移動していなかった。
【0169】
また、TiN層上に、上記工程3におけるPd粒子3の間隔をより狭くして配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、PdとCoの合金ピークが観察された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるCoの比率はほぼ40%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとCoの合金粒子であると推測される。
【0170】
本実施例で得られた電子放出素子の電子放出特性を実施例1と同様に測定したところ、If、Ie特性は図4に示すような特性であった。すなわち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約0.9μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0171】
(実施例3)
本実施例は、実施例1の工程4を以下の様に行った以外は実施例1と同様にして電子放出素子の作製を行った。そのため、以下には、工程4のみを記す。
【0172】
(工程4)
ついで、酢酸ニッケル(4水和物)を0.85g、イソプロピルアルコールを25g、エチレングリコールを1g、ポリビニルアルコールを0.05gとり、水を加えて全量を100gとして、ニッケル溶液を調製した。このNi溶液を工程3までを終えた基板1上に回転塗布した(図1(d´))。そして、大気中で350℃にて30分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は100〜1000nmであり、工程3で得たPd粒子3の配置位置から実質的に移動していなかった。
【0173】
また、TiN層上に、上記工程3におけるPd粒子3の間隔をより狭くして配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、PdとNiの合金ピークが観察された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるNiの比率はほぼ50%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとNiの合金粒子であると推測される。
【0174】
本実施例で得られた電子放出素子の電子放出特性を実施例1と同様に測定したところ、If、Ie特性は図4に示すような特性であった。即ち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約0.8μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0175】
(実施例4)
本実施例は、実施例1の工程3、工程4を以下の様に行った以外は実施例1と同様にして電子放出素子の作製を行った。そのため、以下には、工程3および工程4のみを記す。
【0176】
(工程3)
次いで、導電性材料層として、TiN層15を形成した。その後、アセチルアセトン鉄を1.3gとり、トルエンを加えて全量を100gとして鉄溶液を用意した。そして、この鉄溶液を、TiN層15の上に回転塗布し、真空下600℃で加熱処理をした。この工程により、第1の触媒材料であるFeの薄膜を、TiN層15上に形成した。
【0177】
(工程4)
つぎに、第2の触媒材料を含む粒子であるところのパラジウム粒子3のエタノール分散液(Pd含有率:0.2mmol/l、粒径:約10nm、分散剤:PVP、分散媒(溶媒):エタノール)をTiN層15の上に回転塗布した。その後、大気中で、350℃にて10分間焼成した後、水素気流中で600℃で還元処理した。
【0178】
この工程により得た触媒粒子5同士の間隔は100〜1000nmであった。
【0179】
また、Feの薄膜上に、上記工程4において分散配置したPd粒子3の間隔よりも狭くしてPd粒子を配置して(高密度に配置して)上記工程4と同じ工程を施して得た触媒粒子をX線回折により分析したところ、パラジウムおよび鉄の回折ピークは認められず、パラジウムと鉄の合金化が確認された。また、合金触媒粒子に含まれるPdに対し、合金触媒粒子に含まれるFeの比率は40%であった。そのため、本実施例の工程4で作成した粒子5もPdとFeの合金粒子であると推測される。
【0180】
本実施例で得られた電子放出素子のIf、Ie特性は図4に示すような特性であった。すなわち印加電圧の約半分からIeが急激に増加し、Vfが20Vでは約0.8μAの電子放出電流Ieが測定された。一方IfはIeの特性に類似していたが、その値はIeと比較して一桁以上小さな値であった。
【0181】
尚、実施例1、2の電子放出素子と比べて、実施例3、4の電子放出素子の電子放出特性の時間的な変動が大きかった。
【0182】
(実施例5)
本実施例では、実施例1の製造方法を用いて複数の電子放出素子を図8で示すマトリクス状に配置して電子源を形成し、更に、この電子源を用いて、図9に示す画像表示装置131を形成したところ、輝度の高い表示画像を得ることができた。
【0183】
以上説明した本発明においては、各製造工程、構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に特定的な記載がない限りは、その範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本発明は、上記思想に基づいて、様々な変更を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の電子放出素子の製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】本発明による横型の電子放出素子の一例を示す模式図である。
【図3】図2の電子放出素子を動作させた時の状態を示す模式図である。
【図4】本発明による電子放出素子の電子放出特性を示す模式図である。
【図5】本発明のカーボンファイバーの構造の一例を示す模式図である。
【図6】本発明のカーボンファイバーの構造の他の一例を示す模式図である。
【図7】本発明による縦型の電子放出素子の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の電子源の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の画像表示装置の一例を示す模式図である。
【図10】本発明のカーボンファイバーの製造方法の概要を示す模式図である。
【図11】本発明のカーボンファイバーの製造方法の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0185】
1 基板
2 陰極(カソード電極)
3 引き出し電極(ゲート電極)
15 導電性材料層
5 合金触媒粒子
6 カーボンファイバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンファイバーの製造方法であって、
第1の触媒材料と、前記第1の触媒材料とは異なる第2の触媒材料を含む触媒粒子との積層体を、基体上に配置する第1工程と、
前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む触媒粒子を前記基体上に形成する第2工程と、
前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む触媒粒子と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、前記基体上にカーボンファイバーを成長させる第3工程と、
を有することを特徴とするカーボンファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記第1の触媒材料を膜状に前記基体上に配置する工程と、前記膜状に配置された前記第1の触媒材料の上に、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を配置する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項3】
前記第1工程は、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を覆うように前記第1の触媒材料を配置する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項4】
前記第2の触媒材料が非磁性材料であり、前記第1の触媒材料が磁性材料であることを特徴とする請求項3に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項5】
前記第1工程は、各々が前記第2の触媒材料を含む複数の触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、
前記複数の触媒粒子同士が前記第1の触媒材料によって繋がらないように、前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程と、を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項6】
前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程は、
前記第1の触媒材料を含む溶液を、前記複数の触媒粒子に接触させることで、各々の前記複数の触媒粒子上に、前記第1の触媒材料を析出させる工程を含む、ことを特徴とする請求項5に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項7】
前記第2の触媒材料がPdであり、前記第1の触媒材料がFe、Ni、Coのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項8】
前記第2工程は、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料との合金からなる合金触媒粒子を形成する工程であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項9】
カーボンファイバーを備える電子デバイスの製造方法であって、前記カーボンファイバーが請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
カーボンファイバーを備える電子放出素子の製造方法であって、前記カーボンファイバーが請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項11】
複数の電子放出素子と、前記複数の電子放出素子から放出された電子が照射されることにより発光する発光体と、を具備する画像表示装置の製造方法であって、前記複数の電子放出素子が、請求項10に記載の製造方法により製造されることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項12】
受信した放送信号に含まれる映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを出力する受信器と、該受信器に接続された画像表示装置とを少なくとも備える情報表示再生装置であって、前記画像表示装置が請求項11に記載の製造方法により製造された画像表示装置であることを特徴とする情報表示再生装置。
【請求項1】
カーボンファイバーの製造方法であって、
第1の触媒材料と、前記第1の触媒材料とは異なる第2の触媒材料を含む触媒粒子との積層体を、基体上に配置する第1工程と、
前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを反応させることで、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む触媒粒子を前記基体上に形成する第2工程と、
前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料とを含む触媒粒子と、カーボンファイバーの原料とを反応させて、前記基体上にカーボンファイバーを成長させる第3工程と、
を有することを特徴とするカーボンファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記第1の触媒材料を膜状に前記基体上に配置する工程と、前記膜状に配置された前記第1の触媒材料の上に、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を配置する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項3】
前記第1工程は、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、前記第2の触媒材料を含む触媒粒子を覆うように前記第1の触媒材料を配置する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項4】
前記第2の触媒材料が非磁性材料であり、前記第1の触媒材料が磁性材料であることを特徴とする請求項3に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項5】
前記第1工程は、各々が前記第2の触媒材料を含む複数の触媒粒子を前記基体上に配置する工程と、
前記複数の触媒粒子同士が前記第1の触媒材料によって繋がらないように、前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程と、を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項6】
前記第1の触媒材料で前記複数の触媒粒子の各々を覆う工程は、
前記第1の触媒材料を含む溶液を、前記複数の触媒粒子に接触させることで、各々の前記複数の触媒粒子上に、前記第1の触媒材料を析出させる工程を含む、ことを特徴とする請求項5に記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項7】
前記第2の触媒材料がPdであり、前記第1の触媒材料がFe、Ni、Coのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項8】
前記第2工程は、前記第1の触媒材料と前記第2の触媒材料との合金からなる合金触媒粒子を形成する工程であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のカーボンファイバーの製造方法。
【請求項9】
カーボンファイバーを備える電子デバイスの製造方法であって、前記カーボンファイバーが請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
カーボンファイバーを備える電子放出素子の製造方法であって、前記カーボンファイバーが請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項11】
複数の電子放出素子と、前記複数の電子放出素子から放出された電子が照射されることにより発光する発光体と、を具備する画像表示装置の製造方法であって、前記複数の電子放出素子が、請求項10に記載の製造方法により製造されることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項12】
受信した放送信号に含まれる映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを出力する受信器と、該受信器に接続された画像表示装置とを少なくとも備える情報表示再生装置であって、前記画像表示装置が請求項11に記載の製造方法により製造された画像表示装置であることを特徴とする情報表示再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−12494(P2006−12494A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185026(P2004−185026)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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