説明

キルン炉、廃棄物ガス化システム

【課題】流量調整を可能とし、所定の温度に調整可能なキルン炉、廃棄物ガス化システムを提供する。
【解決手段】本実施の形態に係る第一のキルン炉10Aは、被処理物である廃棄物101が供給されるキルンシェル102と、該キルンシェル102の周囲に所定空間を持って覆うように設けられる外筒103と、該外筒103の周壁に設けられ、前記キルンシェル102の内部に供給される前記被処理物を間接加熱する燃焼排ガス104を前記空間に送給する燃焼ガス供給路105と、間接加熱した後の燃焼排ガス104を前記外筒103の外に排出する燃焼ガス排出路106とを有するキルン炉であって、前記燃焼排ガス104の前記燃焼ガス供給路105の開口部105aに前記燃焼排ガス104の流量を調整する流量調整ゲート11Aを配設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を加熱してガス化ガスを生成し、生成されたガス化ガスをもとにエネルギを生成するキルン炉、廃棄物ガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ、下水汚泥、産業用廃棄物、バイオマスなどの有機系廃棄物からエネルギ回収を図るために、廃棄物を加熱し熱分解してガス化ガスを生成し、生成されたガス化ガスを基にエネルギを生成するキルン炉、廃棄物ガス化システムが、環境保全及び省資源の観点から注目されている。
【0003】
図12は、従来のキルン炉の構成を示す斜視図である。図13は、従来のキルン炉の軸と直交する方向の断面図である。図12、図13に示すように、従来のキルン炉100は、乾燥させた汚泥等の廃棄物101が供給される内筒であるキルンシェル102と、該キルンシェル102の周囲に所定空間Sを持って覆うように設けられる外筒103と、該外筒103の周壁に設けられ、前記キルンシェル102の内部に供給される前記廃棄物101を間接加熱する燃焼排ガス104を前記空間Sに送給する燃焼ガス供給路105と、間接加熱した後の燃焼排ガス104を前記外筒103の外に排出する燃焼ガス排出路106とを有する。
【0004】
前記キルンシェル102は回転式となっており、前記キルンシェル102内に前記廃棄物101を投入すると共に、前記外筒103と前記キルンシェル102との間の空間S内に例えば図示しない燃焼炉から排出される高温の前記燃焼排ガス104を燃焼ガス供給路105を介して隔壁107で仕切られた各部屋に導入し、空気を遮断した状態で前記キルンシェル102内の前記廃棄物101を高温の前記燃焼排ガス104によって間接的に加熱して熱分解し、前記燃焼排ガス104は燃焼ガス排出路106から排出される。前記キルンシェル102内部の前記廃棄物101はガス化され熱分解ガス108として排出されると共に、熱分解残渣として炭化物・不燃物109を生成するようにしている(特許文献1、2、3)。
図中、符号110は、前記外筒103の周壁に設けられ、前記燃焼ガス供給路105と前記燃焼ガス排出路106とを仕切る仕切壁であり、符号111は、燃焼ガス排出路106に設けられた前記燃焼排ガス104の流量を調整する流量調整ゲートである。
【0005】
【特許文献1】特開2000−283429号公報
【特許文献2】特開2000−283431号公報
【特許文献3】特開2002−333119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来のキルン炉100では、前記キルンシェル102の各部屋の流量配分を調整し、前記キルンシェル102各部の温度を調整するようにしているが、この流量調整は、燃焼ガス供給路105側のガス温度が高温のため燃焼ガス排出路106の開口部106aに設けられている流量調整ゲート111により行なわれている。
【0007】
しかしながら、従来のキルン炉100は、図14に示すように前記燃焼排ガス104の出口側である燃焼ガス排出路106で流量調整を行なうと、前記燃焼排ガス104が入りやすい場所に入り、流入の集中113した部屋で逆流114を生じ、別の部屋に再度流入するため、流量調整し所定の温度に調整するのが困難である、という問題がある。
【0008】
または、図15に示すように前記燃焼排ガス104が別の部屋との隔壁107の隙間を流れ、前記燃焼排ガス104の他部屋への流出入115を生じるなどの虞があるため、流量調整し所定の温度に調整するのが困難である、という問題がある。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、流量調整を可能とし、所定の温度に調整可能なキルン炉、廃棄物ガス化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被処理物が供給される回転円筒体と、該回転円筒体の周囲に所定空間を持って覆うように設けられる外筒と、該外筒の周壁に設けられ、前記回転円筒体の内部に供給される前記被処理物を間接加熱する燃焼ガスを前記空間に送給する燃焼ガス供給路と、間接加熱した後の燃焼ガスを前記外筒の外に排出する燃焼ガス排出路とを有するキルン炉であって、前記燃焼ガスの前記燃焼ガス供給路の開口部に前記燃焼ガスの流量を調整する流量調整ゲートを配設してなることを特徴とするキルン炉にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記燃焼ガス排出路の開口部に前記流量調整ゲートを配設してなることを特徴とするキルン炉にある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記流量調整ゲートが、セラミックス板で構成されてなることを特徴とするキルン炉にある。
【0013】
第4の発明は、第1又は2の発明において、前記流量調整ゲートが、前記流量調整ゲート内部、表面の何れか一方又は両方に前記流量調整ゲートを冷却する冷却管を配設してなることを特徴とするキルン炉にある。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記流量調整ゲート表面に断熱材を配設してなることを特徴とするキルン炉にある。
【0015】
第6の発明は、第1乃至5の発明の何れか一つにおいて、前記回転円筒体表面の温度を測定する温度計を少なくとも一つ以上配設されてなることを特徴とするキルン炉にある。
【0016】
第7の発明は、被処理物を搬送する供給手段と、請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉と、前記請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉において生成される熱分解ガスを燃焼し、高温の燃焼排ガスとする燃焼炉と、前記請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉において熱交換された燃焼排ガスと前記燃焼炉から排出される前記燃焼排ガスの一部とを合流させ、蒸気発生用の熱源として使用する共に、発生した蒸気を用いて発電機を駆動し、該発電機で凝縮した水を復水機で再び回収し、循環させるボイラと、該ボイラで熱交換され、排出される排ガスを除塵する除塵装置と、該除塵装置により除塵された排ガスを排出する煙突とからなることを特徴とする廃棄物ガス化システムにある。
【0017】
第8の発明は、第7の発明において、前記請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉の前段に前記廃棄物を乾燥させる乾燥装置を有することを特徴とする廃棄物ガス化システムにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃焼排ガスの燃焼ガス供給路の開口部に燃焼排ガスの流量を調整する流量調整ゲートを配設しているため、前記燃焼排ガスの流量の調整を容易にすることができ、前記燃焼排ガスの逆流を抑制することができると共に、前記燃焼排ガスの流量調整を容易にすることができ、前記回転円筒体各部を所定の温度に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
[第一の実施の形態]
本発明による第一の実施の形態に係るキルン炉について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る第一のキルン炉の軸と直交する方向の断面図である。本実施の形態に係る第一のキルン炉は、前記図12〜図15に示した従来のキルン炉100の構成と略同様であるため、前記図12〜図15に示した従来のキルン炉100と同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図1に示すように、本実施の形態に係る第一のキルン炉10Aは、被処理物である廃棄物101が供給されるキルンシェル102と、該キルンシェル102の周囲に所定空間を持って覆うように設けられる外筒103と、該外筒103の周壁に設けられ、前記キルンシェル102の内部に供給される前記被処理物を間接加熱する燃焼排ガス104を前記空間に送給する燃焼ガス供給路105と、間接加熱した後の燃焼排ガス104を前記外筒103の外に排出する燃焼ガス排出路106とを有するキルン炉であって、前記燃焼排ガス104の前記燃焼ガス供給路105の開口部105aに前記燃焼排ガス104の流量を調整する流量調整ゲート11Aを配設してなるものである。
【0021】
本実施の形態に係る第一のキルン炉10Aのように、前記燃焼排ガス104の前記燃焼ガス供給路105の開口部105aに前記燃焼排ガス104の流量を調整する前記流量調整ゲート11Aを設けることにより、前記燃焼排ガス104の流量の調整を容易にすることができる。
【0022】
この結果、前記燃焼排ガス104の逆流が生じることがないため、前記燃焼排ガス104の流量調整を容易にすることができる。
【0023】
また、本実施の形態に係る第一のキルン炉10Aにおいては、前記流量調整ゲート11Aとして、例えばセラミックス板を用いることができる。前記流量調整ゲート11Aとして、セラミックス板を用いることにより、前記燃焼排ガス104が例えば1000℃以上の高温であっても耐えることができる。
【0024】
また、本実施の形態に係る第一のキルン炉10Aにおいては、図2に示すように前記流量調整ゲート11Aの他端部に油圧シリンダ12を配設するか、図3に示すように前記流量調整ゲート11Aの他端部にネジ13を配設するようにしている。前記流量調整ゲート11Aの上下動を行うのに、例えば図2に示すように前記流量調整ゲート11Aの他端部に油圧シリンダ12を配設するか、図3に示すように前記流量調整ゲート11Aの他端部にネジ13を配設することで、前記流量調整ゲート11Aの上下動を行うことができる。
【0025】
また、前記流量調整ゲート11Aの上下動を行う駆動装置であれば、これに限定されるものではなく、他の装置を用いるようにしてもよい。
【0026】
また、本実施の形態に係る第二のキルン炉10Aにおいては、前記キルンシェル102表面の温度を測定するため、温度計を設けるようにしても良い。
図4は、前記キルンシェル102表面に温度計を設けた図である。図4に示すように前記キルンシェル102表面に温度計T1〜T6を例えば六個配設することで、前記キルンシェル102表面の所定の場所での温度を測定することができる。
【0027】
そして、前記キルンシェル102各開口部105a毎に設けた温度計T1〜T6により、温度計測を実施し、計測結果を制御装置(CPU)14に伝達し、この計測結果に基づいて各々の前記流量調整ゲート11Aの開度調整を行なう。
【0028】
図5は、流量調整ゲートの開度調整を行うプロセス工程を示すフローチャートである。図5に示すように、それぞれの開口部105aでの温度Tを測定し、所定の基準温度(Tsv)と比較し、判定する。そして、それぞれの開口部105aでの温度Tが、所定の温度(Tsv)以上と判定された場合、その開口部105aに設けた前記流量調整ゲート11Aを閉じ、ゲート開度を絞ることで燃焼排ガス104流量を減少させる。
【0029】
それぞれの温度計の温度が所定の基準温度(Tsv)以下と判定された場合、その開口部105aに設けた前記流量調整ゲート11Aを開いて、前記燃焼排ガス104の流量を増加させる。
【0030】
また、この前記流量調整ゲート11Aの開度調整は自動で行っているが、適宜手動で調整を行うようにしてもよい。
【0031】
また、本実施の形態に係る第二のキルン炉10Aにおいては、前記キルンシェル102の各部屋の開口部105aごとに温度計T1〜T6を設けているが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0032】
また、本実施の形態に係る第二のキルン炉10Aにおいては、間接加熱した後の前記燃焼排ガス104は、前記燃焼ガス排出路106を介して、図12〜図14に示すような従来のキルン炉100の隔壁107間で仕切られた部屋に出て燃焼ガス排出路106の開口部106aを抜けた後、熱分解ガス108として排出される。
【0033】
よって、本実施の形態に係る第一のキルン炉10Aによれば、前記燃焼ガス供給路105の開口部105aに前記燃焼排ガス104の流量を調整する流量調整ゲート11Aを設けることで、前記燃焼排ガス104の流量の調整を容易にすることができ、前記燃焼排ガス104の逆流が生じることがないため、前記燃焼排ガス104の流量調整を容易にすることができる。
【0034】
[第二の実施の形態]
本発明による第二の実施の形態に係るキルン炉について、図6を参照して説明する。
図6は、本実施の形態に係る第二のキルン炉の軸と直交する方向の断面図である。本実施の形態に係る第二のキルン炉10Bは、前記図1に示した第一のキルン炉10Aの構成と略同様であるため、前記図1に示した第一のキルン炉10Aと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図6に示すように、本実施の形態に係る第二のキルン炉10Bは、前記図1に示した第一のキルン炉10Aの構成に加えて、前記燃焼ガス排出路106の開口部106aにも前記燃焼排ガス104の流量を調整する流量調整ゲート11Aを配設してなるものである。
即ち、本実施の形態に係る第二のキルン炉10Bは、前記燃焼排ガス104の前記燃焼ガス供給路105、前記燃焼ガス排出路106の両方の開口部105a、106aに前記流量調整ゲート11Aを配設してなるものである。
【0035】
本実施の形態に係る第二のキルン炉10Bのように、前記燃焼ガス排出路106の開口部106aにも前記流量調整ゲート11Aを配設することで、前記燃焼ガス供給路105、前記燃焼ガス排出路106の両方の開口部105a、106aの開度を調整することができるため、前記燃焼ガス供給路105を流れる前記燃焼排ガス104の流量と前記燃焼ガス排出路106を流れる前記燃焼排ガス104の流量とをほぼ同等とすることができる。
【0036】
即ち、前記燃焼ガス供給路105の開口部105aに設けた前記流量調整ゲート11Aと前記燃焼ガス排出路106の開口部106aに設けた前記流量調整ゲート11Aとを閉じれば、前記燃焼排ガス104の流入量を減らす共に、前記燃焼排ガス104の排出量も減らすことができる。
【0037】
また、前記燃焼ガス排出路106の開口部106aに設けた前記流量調整ゲート11Aと前記燃焼ガス排出路106の開口部106aに設けた前記流量調整ゲート11Aとを開ければ、前記燃焼排ガス104の流入量を増加させる共に、前記燃焼排ガス104の排出量も増加させることができる。
【0038】
よって、本実施の形態に係る第二のキルン炉10Bによれば、前記燃焼ガス供給路105及び前記燃焼ガス排出路106の両方の開口部105a、106aに前記流量調整ゲート11Aを配設することで、前記キルンシェル102と前記外筒103との間の空間に送給される燃焼排ガス104の流量を調整することができるため、前記キルンシェル102の温度を調整することができる。
【0039】
[第三の実施の形態]
本発明による第三の実施の形態に係るキルン炉について、図7を参照して説明する。
図7は、本実施の形態に係る第三のキルン炉の流量調整ゲートの構成を示す断面図である。本実施の形態に係る第三のキルン炉10Cは、前記図1に示した第一のキルン炉10Aの構成と略同様であるため、前記図1に示した第一のキルン炉10Aと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
また、図中、第三のキルン炉10C全体の構成は、前記図1に示した第一のキルン炉10Aと同様であるため、本実施の形態においては、前記流量調整ゲート11Bの構成のみ示す。
図7に示すように、本実施の形態に係る第三のキルン炉10Cの前記流量調整ゲート11Bは、前記図1に示した第一のキルン炉10Aの前記流量調整ゲート11Aに代えて、前記流量調整ゲート内部に前記流量調整ゲートを冷却するための冷却水15を供給する冷却管16Aを配設してなるものである。
【0040】
本実施の形態に係る第三のキルン炉10Cの前記流量調整ゲート11Bでは、冷却水供給部17より供給された前記冷却水15が冷却管16Aを通って冷却水排出部18より排出され、常時冷却水15が冷却管16A内を循環するようにしている。
【0041】
本実施の形態に係る第三のキルン炉10Cの前記流量調整ゲート11Bのように、前記流量調整ゲート11B内部に前記流量調整ゲート11Bを冷却するための冷却水15を供給する冷却管16Aを配設することにより、冷却水15により前記流量調整ゲート11B自体を冷却することができるため、前記図1に示した第一のキルン炉10A又は前記図2に示した第二のキルン炉10Bの前記流量調整ゲート11Aに用いられる特殊合金などを用いることなく、図13に示すような従来のキルン炉の前記流量調整ゲート11Aに用いられる通常のSS材、SUS材などを用いることができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る第三のキルン炉10Cの前記流量調整ゲート11Bは、前記流量調整ゲート11Bを水冷構造とすることで、前記燃焼ガス供給路105の開口部105a側の燃焼排ガス104温度を低下する虞もあるため、前記流量調整ゲート11B表面に断熱材19を配設することが好ましい。
【0043】
前記断熱材19としては、例えばセラミックボードなどを用いることができる。
【0044】
図8は、流量調整ゲートの他の構成を示す断面図である。図8に示すように流量調整ゲート11Cは、前記流量調整ゲート11Bの水冷構造として前記冷却管16Bが前記流量調整ゲート内部を蛇行させるようにしたものである。前記冷却管16Bのように前記流量調整ゲート11C内部を蛇行させることにより、前記流量調整ゲート11Cによる前記燃焼排ガス104の冷却効果を上げることができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る第三のキルン炉10Cにおいては、前記流量調整ゲート11B、11Cの水冷構造として、前記流量調整ゲート11B、11Cの内部に前記冷却管16A、16Bを配設しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記流量調整ゲート11B、11Cの表面に前記冷却管16を配設するようにしてもよい。
【0046】
前記流量調整ゲート11B、11Cの表面に前記冷却管16A、16Bを配設することにより、直接前記燃焼排ガス104を冷却することができるため、前記流量調整ゲート11Bによる前記燃焼排ガス104の冷却効果を上げることができ、前記燃焼排ガス104のガス温度を容易に調整することができる。
【0047】
[第四の実施の形態]
本発明による第四の実施の形態に係るキルン炉について、図9を参照して説明する。
図9は、本実施の形態に係る第四のキルン炉の軸と直交する方向の断面図である。本実施の形態に係る第四のキルン炉10Dは、前記図1に示した第一のキルン炉10Aの構成と略同様であるため、前記図1に示した第一のキルン炉10Aと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図9に示すように、本実施の形態に係る第四のキルン炉10Dは、前記図1に示した第一のキルン炉10Aの構成に加え、前記燃焼ガス供給路105の開口部105aが、前記燃焼排ガス104のガス流れを前記キルンシェル102の接線方向となるように設けられてなるものである。
【0048】
本実施の形態に係る第四のキルン炉10Dのように、前記燃焼ガス供給路105の開口部105aを前記燃焼排ガス104のガス流れが前記キルンシェル102の接線方向となるように設けることにより、前記燃焼排ガス104の入口側である前記燃焼ガス供給路105の開口部105aから排出される前記燃焼排ガス104のガス流れが前記キルンシェル102の接線方向に供給されるため、前記キルンシェル102と衝突するのを低減することができる。
【0049】
これにより、前記燃焼排ガス104中に含有する飛灰等の灰が前記キルンシェル102表面に付着するのを低減し、前記キルンシェル102表面に一旦付着した灰層も前記燃焼排ガス104のガス流れにより、剥離・除去することができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る第四のキルン炉10Dにおいては、前記燃焼排ガス104のガス温度は例えば1000℃以上の高温であると共に、前記燃焼排ガス104の輻射伝熱の方が前記燃焼排ガス104の対流伝熱に比べて伝熱効率が大きい。このため、本実施の形態に係る第四のキルン炉10Dは、前記図12〜図15に示した従来のキルン炉100のように前記燃焼排ガス104が前記キルンシェル102に直接衝突することが軽減され衝突部分での熱伝達率は低くなっても、キルン炉の伝熱性能に対する影響は少ない。
【0051】
よって、本実施の形態に係る第四のキルン炉10Dによれば、前記キルンシェル102への前記燃焼排ガス104の衝突が軽減されるため、前記キルンシェル102表面への灰の付着及び灰の堆積を軽減することができると共に、前記キルンシェル102表面温度を正確に測定することができるため、前記燃焼排ガス104の流量を調整することで前記キルンシェル102表面温度をより正確に調整することができる。
【0052】
[第五の実施の形態]
本発明による第五の実施の形態に係る第一の廃棄物ガス化システムについて、図10を参照して説明する。
図10は、本実施の形態に係る第一の廃棄物ガス化システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る第一の廃棄物ガス化システム1000Aの外熱式キルン炉1004は、図1〜図9に示した第一のキルン炉10A〜第四のキルン炉10Dの何れかを用いるため、重複した説明は省略する。
図10に示すように、本実施の形態に係る第一の廃棄物ガス化システム1000Aは、貯留された廃棄物101を破砕する破砕機1001と破砕された廃棄物101を搬送するスクリューフィーダ1002とからなる供給手段1003と、廃棄物101を炭化処理して熱分解ガス108と炭化物・不燃物109とを生成するキルン炉1004と、前記キルン炉1004において生成される熱分解ガス108を燃焼し、高温の燃焼排ガス104とする燃焼炉1005と、前記キルン炉1004において熱交換された燃焼排ガス104と前記燃焼炉1005から排出される燃焼排ガス104の一部104aとを合流させた加熱用ガス1006を蒸気発生用の熱源として使用する共に、発生した蒸気を用いて発電機1007を駆動し、該発電機1007で凝縮した水を復水器1008で再び回収し、循環させるボイラ1009と、該ボイラ1009で熱交換され、排出される排ガス1010を除塵する除塵装置であるバグフィルタ1011と、該バグフィルタ1011により除塵された排ガス1012を排出する煙突1013とからなるものである。
なおボイラにて蒸気として回収された熱は、発電以外にも蒸気として利用してもよい。また燃焼排ガスの熱回収はボイラではなく、エアヒータなどの熱交換器で行い、ホットエアとして回収しても良い。
【0053】
図10に示すように、トラック1018等の運搬手段により持ち込まれて貯留された前記廃棄物101は、前記破砕機1001及び前記スクリューフィーダ1002で構成された供給手段1003により、破砕された後、加熱流通ゾーンである前記キルン炉1004中に連続的に供給される。前記スクリューフィーダ1002の駆動源であるモータは制御装置から信号を受けてその回転数が制御可能なようになっている。
【0054】
そして前記キルン炉1004の前記外筒103内には高温の前記燃焼排ガス104を流通して、キルンシェル102内部を間接的に加熱する。キルン炉1004中の廃棄物101は分解し、熱分解ガス108と炭化物・不燃物109を生成するようにしている。
【0055】
前記炭化物・不燃物109を分離抜き出し手段1014の下部に導き、前記熱分解ガス108を上部から取り出す。前記分離抜き出し手段1014の下部からは、抜き出しスクリュー1015によって、前記炭化物・不燃物109を抜き出す。前記抜き出しスクリュー1015の駆動源であるモータは図示しない制御装置から信号を受けてその回転数が制御可能なようになっている。分離抜出し手段1014の下部には炭化物の冷却手段として例えば図示しない水冷コンベヤあるいは水槽などにより冷却する。これにより高温の前記炭化物・不燃物109が酸素に触れることなく冷却するようにしている。
【0056】
前記熱分解ガス108は飛散粒子を含んでいるので、サイクロン1016で除塵した後に、燃焼炉1005で燃焼させる。該焼却炉1005での燃焼用若しくは酸素富化の空気1017は別の経路から前記燃焼炉1005まで導くようにしている。
【0057】
前記燃焼炉1005で得られた燃焼排ガス104の一部104aは、前記キルン炉1004の前記外筒103に導き、分解に必要な熱供給に用い、前記外筒103出口から排出する未だ温度の高い熱供給後の燃焼排ガス104は前記燃焼炉1005から排出する前記燃焼排ガス104の一部と合流させて前記ボイラ1009の前記加熱用ガス1006とするようにしている。
【0058】
前記ボイラ1009の前記加熱用ガス1006はボイラ1009に導かれ、ここで蒸気を発生する熱源として使用され、発生した蒸気は蒸気タービン式の前記発電機1007を駆動し、前記復水器1008により凝縮した水を再び前記ボイラ1009に戻し、循環せしめるようにしている。
【0059】
前記ボイラ1009の前記加熱用ガス1006は前記ボイラ1009で熱交換し前記ボイラ1009からの排ガス1010となり、前記バグフィルタ1011で除塵後、前記煙突1013から排出されるようにしている。
【0060】
このように、本実施の形態に係る第一の廃棄物ガス化システム1000Aによれば、前記キルン炉1004に図1〜図9に示した第一のキルン炉10A〜第四のキルン炉10Dを採用することにより、前記燃焼排ガス104の流量の調整を容易にすることができ、前記廃棄物101を前記燃焼排ガス104を用いて安定して炭化処理し、前記熱分解ガス108を生成することができる。これにより、前記熱分解ガス108は前記ボイラ1009等熱交換器で熱回収し発電用あるいは加熱熱源として利用されると共に、炭化物は固体燃料等に利用されることでエネルギーリサイクルされ、また吸着剤等に炭化物を利用することや分離された不燃物は有価物やセメント原料に利用されることでマテリアルリサイクルすることができる。また、排出される前記炭化物・不燃物109等は無酸素状態で加熱され、また前記熱分解ガス108は高温で燃焼されることから固形物、排ガス共に、ダイオキシン等を極低レベルにまで削減できる。
【0061】
[第六の実施の形態]
本発明による第六の実施の形態に係る廃棄物ガス化システムについて、図11を参照して説明する。
図11は、本実施の形態に係る第二の廃棄物ガス化システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る第二の廃棄物ガス化システムのキルン炉は、図10に示した第一の廃棄物ガス化システムの構成と略同様であるため、前記図10に示した第一の廃棄物ガス化システムと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図11に示すように、本実施の形態に係る第二の廃棄物ガス化システム1000Bは、前記図10に示した第一の廃棄物ガス化システム1000Aの構成に加え、前記キルン炉1004の前段に汚泥1020を乾燥させる乾燥装置1021を有するものである。
【0062】
前記汚泥1020が例えば70〜85wt%程度の水分を含有する場合、定量フィーダ等の定量供給機1022を用いて前記汚泥を乾燥装置1021に供給され、水分が例えば0〜50wt%の乾燥汚泥1023となってキルン炉1004に供給する。その後は、前記図10に示した第一の廃棄物ガス化システム1000Aについて説明した実施の形態と同様にして処理されるようにしている。
【0063】
また、本実施の形態に係る第二の廃棄物ガス化システム1000Bにおいては、前記乾燥装置1021の内部温度は前記キルン炉1004の内部温度よりも低く、かつ水分が揮発する温度であることが好ましい。前記キルン炉1004の前段に前記乾燥装置1021を設けることにより、潜熱の大きい水を比較的低温で揮発させることで、前記図10に示した第一の廃棄物ガス化システム1000Aを用いた場合よりも低コストで前記炭化物・不燃物109を得ることができる。
【0064】
さらに、前記乾燥装置1021から排出される乾燥機循環ガス1024は飛散粒子を含んでいるので、サイクロン1016で除塵した後、熱交換器1025で前記乾燥機循環ガス1024を予熱し、前記燃焼炉1005で燃焼させるようにしている。また、前記サイクロン1016に熱供給後の燃焼排ガス104は燃焼炉1005から排出する燃焼排ガス104の一部と合流させて前記ボイラ1009の前記加熱用ガス1006としている。また、前記燃焼炉1005での燃焼の安定化等のために、助燃料として若干量の化石燃料等の補助燃料1026を前記燃焼炉1005に供給できるようにしている。
【0065】
このように、本実施の形態に係る第二の廃棄物ガス化システム1000Bによれば、前記キルン炉1004に図1〜図8に示した第一のキルン炉10A〜第四のキルン炉10Dを採用することにより、前記燃焼排ガス104の流量の調整を容易にすることができ、前記廃棄物101を前記燃焼排ガス104を用いて安定して炭化処理し、熱分解ガス108を生成することができる。これにより、熱分解ガス108はボイラ1009で熱回収し発電用に利用されると共に、炭化物は固体燃料、吸着剤等に利用されることでエネルギーリサイクルされ、不燃物は分離されて有価物やセメント原料に利用されることでマテリアルリサイクルすることができる。また、排出される前記炭化物・不燃物109等は無酸素状態で加熱され、また前記熱分解ガス108は高温で燃焼されるため固形物、排ガス共に、ダイオキシン等を極低レベルにまで削減できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係るキルン炉、廃棄物ガス化システムは、燃焼ガスの燃焼ガス供給路の開口部に燃焼ガスの流量を調整する流量調整ゲートを配設することで、前記燃焼ガスの流量の調整が容易で前記燃焼ガスの逆流を抑制することができ、前記キルンシェル各部を所定の温度に調整することができるので、キルンシェルへの伝熱効率を向上させるのに用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による第一の実施の形態に係る第一のキルン炉の軸と直交する方向の断面図である。
【図2】油圧シリンダにより流量調整ゲートの上下動を行う様子を示す図である。
【図3】ネジにより流量調整ゲートの上下動を行う様子を示す図である。
【図4】温度計により流量調整ゲートの開度調整を行う様子を示す図である。
【図5】流量調整ゲートの開度調整を行うプロセス工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明による第二の実施の形態に係る第二のキルン炉の軸と直交する方向の断面図である。
【図7】本発明による第三の実施の形態に係る第三のキルン炉の流量調整ゲートの構成を示す断面図である。
【図8】本発明による第三の実施の形態に係る第三のキルン炉の流量調整ゲートの他の構成を示す断面図である。
【図9】本発明による第四の実施の形態に係る第四のキルン炉の長手方向における燃焼ガス供給路の開口部の断面拡大図である。
【図10】本発明による第五の実施の形態に係る第一の廃棄物ガス化システムの構成を示す図である。
【図11】本発明による第六の実施の形態に係る第二の廃棄物ガス化システムの構成を示す図である。
【図12】従来のキルン炉の構成を示す斜視図である。
【図13】従来のキルン炉の軸と直交する方向の断面図である。
【図14】図13のA−A断面図である。
【図15】図13のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10A 第一のキルン炉
10B 第二のキルン炉
10C 第三のキルン炉
10D 第四のキルン炉
10E 第五のキルン炉
10F 第六のキルン炉
10G 第七のキルン炉
11A、11B 流量調整ゲート
12 油圧シリンダ
13 ネジ
14 制御装置(CPU)
15 冷却水
16A、16B 冷却管
17 冷却水供給部
18 冷却水排出部
19 断熱材
1〜T6 温度計
101 廃棄物
102 キルンシェル
103 外筒
104 燃焼排ガス
105 燃焼ガス供給路
105a 開口部
106 燃焼ガス排出路
106a 開口部
107 隔壁
108 熱分解ガス
109 炭化物・不燃物
110 仕切壁
111 流量調整ゲート
113 流入の集中
114 逆流
115 他部屋への流出入
1000A 第一の廃棄物ガス化システム
1000B 第二の廃棄物ガス化システム
1001 破砕機
1002 スクリューフィーダ
1003 供給手段
1004 キルン炉
1005 燃焼炉
1006 加熱用ガス
1007 発電機
1008 復水器
1009 ボイラ
1010 排ガス
1011 バグフィルタ
1012 除塵された排ガス
1013 煙突
1014 分離抜き出し手段
1015 抜き出しスクリュー
1016 サイクロン
1017 空気
1018 トラック
1020 汚泥
1021 乾燥装置
1022 定量供給機
1023 乾燥汚泥
1024 乾燥機循環ガス
1025 熱交換器
1026 補助燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が供給される回転円筒体と、
該回転円筒体の周囲に所定空間を持って覆うように設けられる外筒と、
該外筒の周壁に設けられ、前記回転円筒体の内部に供給される前記被処理物を間接加熱する燃焼ガスを前記空間に送給する燃焼ガス供給路と、
間接加熱した後の燃焼ガスを前記外筒の外に排出する燃焼ガス排出路とを有するキルン炉であって、
前記燃焼ガスの前記燃焼ガス供給路の開口部に前記燃焼ガスの流量を調整する流量調整ゲートを配設してなることを特徴とするキルン炉。
【請求項2】
請求項1において、
前記燃焼ガス排出路の開口部に前記流量調整ゲートを配設してなることを特徴とするキルン炉。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記流量調整ゲートが、セラミックス板で構成されてなることを特徴とするキルン炉。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記流量調整ゲートが、前記流量調整ゲート内部、表面の何れか一方又は両方に前記流量調整ゲートを冷却する冷却管を配設してなることを特徴とするキルン炉。
【請求項5】
請求項4において、
前記流量調整ゲート表面に断熱材を配設してなることを特徴とするキルン炉。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つにおいて、
前記回転円筒体表面の温度を測定する温度計を少なくとも一つ以上配設されてなることを特徴とするキルン炉。
【請求項7】
被処理物を搬送する供給手段と、
請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉と、
前記請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉において生成される熱分解ガスを燃焼し、高温の燃焼排ガスとする燃焼炉と、
前記請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉において熱交換された燃焼排ガスと前記燃焼炉から排出される前記燃焼排ガスの一部とを合流させ、蒸気発生用の熱源として使用する共に、発生した蒸気を用いて発電機を駆動し、該発電機で凝縮した水を復水機で再び回収し、循環させるボイラと、
該ボイラで熱交換され、排出される排ガスを除塵する除塵装置と、
該除塵装置により除塵された排ガスを排出する煙突とからなることを特徴とする廃棄物ガス化システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記請求項1乃至6の何れか一つのキルン炉の前段に前記廃棄物を乾燥させる乾燥装置を有することを特徴とする廃棄物ガス化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−215660(P2008−215660A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50687(P2007−50687)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】