説明

クランプ構造及び車両用ボディー構造

【課題】長尺部材を挟持したクランプを被取付部材に容易に取付けることができるクランプ構造を得る。
【解決手段】第1のクランプ片12の軸部22に第2のクランプ片14の長孔36Aが挿入され、第2のクランプ片14が回動可能に遊嵌保持されている。第1のクランプ片12の基部16に、チューブ60、62、64が挿入される保持部18A、18B、18Cが配設されており、第2のクランプ片14の係合突起42を第1のクランプ片12の爪部30に係合したときにチューブ60、62、64が仮固定される。基部16の内側面16Dには係合爪26を備えた突起部24が立設されており、第2のクランプ片14には、突起部24が貫通する長孔38が設けられている。係合爪26を車両用ボディー66の取付孔68に係合することでクランプ10が車両用ボディー66に固定され、チューブ60、62、64がクランプ10に締付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ構造、及びこのクランプ構造を用いた車両用ボディー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、チューブを車両用ボディーの所定位置に取付ける場合、チューブに樹脂製のクランプを先に組み付け、クランプの爪部を車両用ボディーの孔内に挿入してクランプを固定する構造が開示されている。
【特許文献1】特開2004−218762号公報(例えば、図6を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術による場合、チューブにクランプを組み付けると同時にスラスト力が発生し、クランプを軸方向に移動させることが困難となる。このため、クランプと車両用ボディーの孔の位置が正確に合わないとクランプの爪部を車両用ボディーの孔へ挿入することができず、作業性が低下する。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、長尺部材を挟持したクランプを被取付部材に容易に取付けることができるクランプ構造及び車両用ボディー構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係るクランプ構造は、長尺部材を挟持し、且つ少なくとも一端が遊嵌合している一対のクランプ片と、一方のクランプ片の他方のクランプ片と対向する内側面から、他方のクランプ片を貫通するように突設され、被取付部材に形成された取付孔に係合することによって前記一対のクランプ片を前記被取付部材に固定すると共に、前記一対のクランプ片で前記長尺部材を締付ける係合爪と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載のクランプ構造において、前記一対のクランプ片の少なくとも一方に、挟持した前記長尺部材を締付け方向へ押圧する押圧部を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載のクランプ構造において、前記一対のクランプ片の少なくとも一方に、一端部に前記一方のクランプ片又は前記他方のクランプ片に回動可能に遊嵌合される遊嵌合部と、前記一方のクランプ片又は前記他方のクランプ片に形成された被係合部に係合され、前記長尺部材を仮固定する仮固定用係合部と、を備え、前記係合爪を前記取付孔に係合したときに前記長尺部材が前記一対のクランプ片で締付けられて本固定されることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明に係る車両用ボディー構造は、前記長尺部材が車両に配索されたチューブで、前記被取付部材が車両用ボディーであり、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のクランプ構造の前記一対のクランプ片に前記チューブを挟持させて前記一対のクランプ片を前記車両用ボディーに固定したことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、長尺部材を挟持し、且つ少なくとも一端が遊嵌合している一対のクランプ片を備えており、一方のクランプ片の内側面から他方のクランプ片を貫通するように係合爪が突設されている。この係合爪を被取付部材に形成された取付孔に係合することによって、一対のクランプ片が被取付部材に固定されると共に、一対のクランプ片に長尺部材が締付けられる。
【0010】
このクランプ構造では、係合爪を取付孔に係合するまでは、一対のクランプ片の少なくとも一端が遊嵌合しているので、長尺部材と一対のクランプ片との間に若干の隙間があり、長尺部材の軸方向移動が可能である。このため、長尺部材を挟持している一対のクランプ片の軸方向の位置を調整することができ、係合爪を被取付部材の取付孔に容易に係合させることができる。また、係合爪を被取付部材の取付孔に係合させると、一対のクランプ片で長尺部材を締付けることができ、取付け時の作業性が向上する。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、一対のクランプ片の少なくとも一方に、挟持した長尺部材を締付け方向へ押圧する押圧部を備えているので、長尺部材を締付けたときに長尺部材の径及び形状のばらつきを吸収することができる。このため、一対のクランプ片による長尺部材の締付けがより安定化する。
【0012】
請求項3記載の本発明によれば、一対のクランプ片の少なくとも一方は、一端部に設けられた遊嵌合部によって一方のクランプ片又は他方のクランプ片に回動可能に遊嵌合されており、仮固定用係合部を一方のクランプ片又は他方のクランプ片に形成された被係合部に係合することで、長尺部材が一対のクランプ片に仮固定される。長尺部材が仮固定されたとき、一対のクランプ片の一端部が遊嵌合されているので、長尺部材を仮固定している一対のクランプ片の軸方向の位置を調整することができ、係合爪を被取付部材の取付孔に容易に係合させることができる。また、係合爪を被取付部材の取付孔に係合したときに、長尺部材が一対のクランプ片で締付けられ、本固定される。従って、長尺部材を一対のクランプ片に仮固定した後、一対のクランプ片を被取付部材に固定したときに長尺部材が一対のクランプ片に本固定されるので、取付け時の作業性がより一層向上する。
【0013】
請求項4記載の本発明によれば、係合爪を車両用ボディーの取付孔に係合するまでは、チューブを挟持している一対のクランプ片の軸方向の位置を調整することができ、係合爪を車両用ボディーの取付孔に容易に係合することができる。また、係合爪を車両用ボディーの取付孔に係合させると、一対のクランプ片でチューブを締付けることができ、取付け時の作業性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るクランプ構造は、長尺部材を挟持したクランプを被取付部材に容易に取付けることができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項2記載の本発明に係るクランプ構造は、長尺部材の径及び形状のばらつきを吸収することができ、一対のクランプ片による長尺部材の締付けがより安定化するという優れた効果を有する。
【0016】
請求項3記載の本発明に係るクランプ構造は、一対のクランプ片に長尺部材を仮固定した後、一対のクランプ片を被取付部材に取付けるときに長尺部材を本固定することができ、取付け時の作業性が向上するという優れた効果を有する。
【0017】
請求項4記載の本発明に係る車両用ボディー構造は、チューブを挟持したクランプを車両用ボディーに容易に取付けることができ、車両の組立ラインの生産効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1〜図7を用いて、本発明に係るクランプ構造の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1及び図4には、クランプ10の第2のクランプ片を開放した状態の全体構成が示されている。また、図2、図3及び図5には、クランプ10の第2のクランプ片を閉止し、チューブを仮固定した状態の全体構成が示されている。また、図6には、クランプ10を車両用ボディーに取付け、チューブを本固定した状態の全体構成が示されている。これらの図に示されるように、クランプ10は、長尺部材としてのチューブ60、62、64をそれぞれ挿入可能な第1のクランプ片12と、第1のクランプ片12に回動可能に支持された第2のクランプ片14と、を備えており、第1のクランプ片12と第2のクランプ片14とで一対のクランプ片が構成されている。
【0020】
第1のクランプ片12は、樹脂成形体からなる長形状の基部16を備えている。基部16には、径の異なるチューブ60、62、64をそれぞれ挿入するための断面が略コ字状の保持部18A、18B、18Cが配設されている。保持部18A、18B、18Cは、基部16の一端部16A側から順にほぼ平行に配置されており、チューブ60、62、64が基部16の長手方向と直交する方向に挿入されるように構成されている(図4及び図5参照)。
【0021】
基部16の一端部16Aには、端面の中央部から上部に2つの支持部20が長手方向に延出されており、支持部20の上部には、長手方向と直交する方向に軸部22が形成されている。この軸部22は、保持部18A、18B、18Cとほぼ平行に形成されている。軸部22の両端部には、第2のクランプ片14に配設された2つの遊嵌合部36の長孔36Aが挿通されており、長孔36Aが軸部22に遊嵌保持された状態で、第2のクランプ片14が第1のクランプ片12に回動可能に構成されている。
【0022】
基部16の他端部16B側には、長手方向に対して側方に湾曲するように延びた湾曲部16Cが形成されており、この湾曲部16Cに先述の保持部18Cが配設されている。基部16の背面側(第2のクランプ片14と反対側)の保持部18Aと保持部18Cの間には、長手方向に沿ってリブ19が形成されている。
【0023】
基部16の保持部18Bと保持部18Cの間であって、他端部16Bに近い位置には、第2のクランプ片14と対向する内側面16Dに円柱状の突起部24が立設されている。基部16の長手方向における突起部24の両側には、車両用ボディー66に形成された取付孔68(図6参照)に係合される係合爪26が配設されている。基部16の内側面16Dに対する係合爪26の係合ポイントは、第1のクランプ片12の板厚と車両用ボディー66の板厚との合計した寸法とほぼ一致するように設定されている。すなわち、第1のクランプ片12の長孔38と車両用ボディー66の取付孔68が突起部24を通ったときに係合爪26が取付孔68に係合されるように設定されている。係合爪26は、取付孔68に挿入しやすく、外れにくいように、上部にテーパ面が形成され、下部が突起部24から略直角に突出した形状となっている。係合爪26は、突起部24の両側に突出した位置から突起部24内に後退可能に設けられており、係合爪26は突起部24の両側に突出した位置に付勢されている。
【0024】
基部16の他端部16Bには、端面の下部から上方に延びた延設部28が配設されている。延設部28の先端部は、基部16の他端部16Bに対して近接・離間する方向に弾性変形が可能であり、延設部28の先端部の内側には、被係合部としての爪部30が形成されている。爪部30は、長手方向と直交する方向に2つに分割されている。爪部30には、第2のクランプ片14に形成された仮固定用係合部としての係合突起42が係合されるように構成されている。また、基部16の他端部16Bと延設部28との間には、溝部31が形成されており、第2のクランプ片14の係合突起42が爪部30に係合された位置から溝部31の奥側へ移動可能に構成されている。このとき、第2のクランプ片14の係合突起42は、爪部30に係合された位置から車両用ボディー66の板厚分だけ溝部31の奥側へ移動するように設定されている。これにより、第2のクランプ片14が第1のクランプ片12と接近・離間する方向にスライド可能に構成されている(図5参照)
【0025】
第2のクランプ片14は、樹脂成形体からなる長板状の基部34を備えている。基部34の一端部34Aには、先述の長孔36Aを備えた2つの遊嵌合部36が、基部34の板面に対して直交する方向に立設されている。また、長孔36Aは、長径部が基部34の板面に対して直交する方向に配置されている。これにより、第2のクランプ片14の係合突起42を第1のクランプ片12の爪部30に係合したとき、遊嵌合部36の長孔36Aが軸部22に遊嵌保持されることで、第2のクランプ片14が第1のクランプ片12と接近・離間する方向にスライド可能に構成されている(図5参照)。
【0026】
基部34の他端部34B側には、第1のクランプ片12の湾曲部16Cと対向する位置に、長手方向に対して側方に湾曲するように延びた湾曲部34Cが形成されている。基部34の第1のクランプ片12の突起部24と対向する位置には、突起部24及び係合爪26が貫通可能な長孔38が形成されている。長孔38の長径部は、基部34の長手方向とほぼ平行に配置されており、第2のクランプ片14の係合突起42を第1のクランプ片12の爪部30に係合したときに、係合爪26が長孔38を貫通し、係合爪26が長孔38の縁部に係合しないように構成されている(図2及び図3参照)。
【0027】
基部34の他端部34Bには、基部34の板面からほぼ直角方向に第1のクランプ片12側に突出する突出部40が立設されており、突出部40の先端部に、長手方向外側に突出する先述の係合突起42が形成されている。これにより、第2のクランプ片14の係合突起42を第1のクランプ片12の爪部30に係合したときに、保持部18A、18B、18Cに挿入されたチューブ60、62、64が第1のクランプ片12と第2のクランプ片14とに挟持され、仮固定されるようになっている(図5参照)。また、第2のクランプ片14の係合突起42を第1のクランプ片12の爪部30に係合したとき、第1のクランプ片12の内側面16Dから立設された突起部24の係合爪26が、第2のクランプ片14の長孔38を貫通して突出している。この突起部24の係合爪26を、車両用ボディー66の取付孔68に係合することで、クランプ10が車両用ボディー66に取付けられるようになっている(図6参照)。
【0028】
基部34の第1のクランプ片12の保持部18A、18B、18Cと対向する位置には、中央部から両側に第1のクランプ片12と対向する方向に斜めに延びた押圧部44、45、46が配設されている。押圧部44、45、46は、それぞれ、中央部から長手方向と直交する方向に両側に延びた1対の板状片44A、45A、46Aと、板状片44A、45A、46Aの先端に形成された円柱部44B、45B、46Bと、で構成されている。基部34の板状片44A、45A、46Aと対向する位置には、開口48、49、50がそれぞれ形成されている。板状片44A、45A、46Aの先端側は、常態位置(図1参照)から開口48、49、50側(第1のクランプ片12から後退する側)に弾性変形が可能となっている。
【0029】
上記の第1のクランプ片12及び第2のクランプ片14は、それぞれ一型で成形することができる。
【0030】
本実施形態では、チューブ60、62、64として、車両の燃料タンクに接続される燃料注入管、ブリーザチューブなどのチューブが用いられている。
【0031】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0032】
図4に示されるように、第2のクランプ片14を第1のクランプ片12の軸部22を中心に回動して開放状態とし、第1のクランプ片12の保持部18A、18B、18Cにチューブ60、62、64をそれぞれ挿入する。その後、図5に示されるように、第2のクランプ片14を第1のクランプ片12の軸部22を中心に矢印A方向に回動して第2のクランプ片14を閉止し、第2のクランプ片14の係合突起42を第1のクランプ片12の爪部30に係合させる。これにより、チューブ60、62、64が第1のクランプ片12と第2のクランプ片14とで挟持され、仮固定される。
【0033】
この状態では、第2のクランプ片14の遊嵌合部36の長孔36Aが第1のクランプ片12の軸部22に遊嵌保持されると共に、第2のクランプ片14の係合突起42と第1のクランプ片12の溝部31の奥側との間に隙間が形成されており、第2のクランプ片14が第1のクランプ片12と接近・離間する方向にスライド可能となっている。すなわち、チューブ60、62、64と第1のクランプ片12及び第2のクランプ片14との間に若干の隙間があり、チューブ60、62、64又はクランプ10を軸方向に移動することができる。
【0034】
また、チューブ60、62、64を仮固定した状態(第2のクランプ片14の係合突起42を第1のクランプ片12の爪部30に係合した状態)では、第1のクランプ片12の内側面16Dに立設された突起部24の係合爪26が、第2のクランプ片14の長孔38を貫通して突出している。
【0035】
図6に示されるように、チューブ60、62、64を仮固定したクランプ10の軸方向の位置を調整し、突起部24の係合爪26を車両用ボディー66の取付孔68に挿入する。これによって、車両用ボディー66が第2のクランプ片14に当接し、車両用ボディー66に押されて第2のクランプ片14がスライドして第1のクランプ片12に当接し、係合爪26が取付孔68に係合されることで、クランプ10が車両用ボディー66に取付けられる。
【0036】
そのとき、図6及び図7に示されるように、第2のクランプ片14の遊嵌合部36の長孔36Aが第1のクランプ片12の軸部22を移動すると共に、第2のクランプ片14の係合突起42が車両用ボディー66の板厚分だけ溝部31の奥側へ移動するため、第2のクランプ片14がほぼ平行に第1のクランプ片12側へスライドする。この状態では、係合突起42と爪部30とが非係合状態となる。さらに、チューブ60、62、64に当接する押圧部44、45、46が第2のクランプ片14側に後退するように弾性変形し、チューブ60、62、64が押圧部44、45、46で押圧される(図7では押圧部46のみを図示している)。言い換えると、押圧部44、45、46は、仮固定時の第2のクランプ片14と第1のクランプ片12との遊びの部分を吸収することができる。これにより、チューブ60、62、64が締付けられ、チューブ60、62、64がクランプ10に本固定される。すなわち、突起部24の係合爪26を車両用ボディー66の取付孔68に係合させた時点ではじめてチューブ60、62、64にスラスト力が発生する。
【0037】
このようなクランプ10では、チューブ60、62、64をクランプ10に仮固定した後、係合爪26を車両用ボディー66の取付孔68に係合させるまでは、チューブ60、62、64を仮固定しているクランプ10の軸方向の位置を調整することができ、係合爪26を取付孔68に容易に係合させることができる。さらに、クランプ10を車両用ボディー66に取付けたときにチューブ60、62、64にスラスト力が発生し、チューブ60、62、64がクランプ10に本固定される。このため、一方向作業が可能であり、取付け時の作業性が良い。
【0038】
また、係合爪26を車両用ボディー66の取付孔68に係合させたときに、チューブ60、62、64を第2のクランプ片14の押圧部44、45、46で押圧して締付けるので、チューブ60、62、64の径及び形状のばらつきを吸収することができる。このため、クランプ10によるチューブ60、62、64の締付けがより安定化すると共に、チューブ60、62、64を強固に固定することができる。
【0039】
さらに、係合爪26を車両用ボディー66の取付孔68に係合させたときに、第2のクランプ片14がほぼ平行に第1のクランプ片12側へスライドするので、チューブ60、62、64を押したときの締付力が均等にかかる。このため、締付力のバラツキを低減することができる。
【0040】
一方、図8には、対比例1として、チューブ60を固定する保持部102を備えたクランプ100が開示されている。クランプ100の保持部102には、チューブ60の周面とほぼ同じ曲率の湾曲面からなる凹部102Aが形成されており、凹部102Aはチューブ60の周面の約3/4と当接するように設定されている。保持部102の上部には、チューブ60を凹部102Aに挿入するための開口104が形成されており、保持部102の両端部に開口104を広げるための把持部102Bが設けられている。また、保持部102の下部には、車両用ボディー66の表面に当接する当接部106が形成されており、また、保持部102から下方に延びた延設部108に、車両用ボディー66の取付孔68に係合される2つの係合爪110が図中の前後方向に配設されている(図8では前側のみ表示している)。
【0041】
このクランプ100では、把持部102Bを把持して開口104を拡げ、チューブ60を開口104から保持部102の凹部102Aに挿入する。チューブ60を凹部102Aに挿入した時点で、チューブ60にスラスト力が発生し、チューブ60を軸方向に移動させることが困難となる。従って、クランプ100の係合爪110と車両用ボディー66の取付孔68の位置が合わないと、クランプ100を車両用ボディー66に取付けることができず、取付作業が煩雑である。また、保持部102の凹部102Aではチューブ60の径や形状のバラツキを吸収することができない。
【0042】
また、図9には、対比例2として、第1のクランプ片122にチューブ60を保持する保持部124を設けたクランプ120が開示されている。なお、前述した対比例1と同一構成部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
保持部124には、チューブ60の周面とほぼ同じ曲率の湾曲面からなる凹部124Aが形成されており、保持部124の上部には開口104が形成されている。凹部124Aは、チューブ60の周面の約2/3と当接するように設定されている。第1のクランプ片122の一端には、凹部124Aの軸線方向とほぼ平行に軸部126が形成されている。また、軸部126には、開口104を覆う蓋部130の一端に形成された嵌合部132の孔132Aが回動可能に支持されている。蓋部130の先端部には、第1のクランプ片122の他端に形成された係合突起128に係合される爪部134が設けられている。
【0044】
このクランプ120では、蓋部130を開放した状態で、チューブ60を開口104から保持部124の端部を弾性変形させて凹部124Aに挿入し、チューブ60を凹部124Aに保持させる。その後、蓋部130を閉止位置に回動し、蓋部130の爪部134を第1のクランプ片122の係合突起128に係合させる。このクランプ120では、蓋部130は開口104を覆うのみであり、チューブ60を凹部124Aに挿入した時点で、チューブ60にスラスト力が発生し、チューブ60を軸方向に移動させることが困難となる。従って、クランプ120の係合爪110と車両用ボディー66の取付孔68の位置が合わないと、クランプ120を車両用ボディー66に取付けることができず、取付作業が煩雑である。また、保持部124の凹部124Aではチューブ60の径や形状のバラツキを吸収することができない。
【0045】
これに対して、本実施形態では、係合爪26を車両用ボディー66の取付孔68に係合するまでは、チューブ60、62、64を仮固定しているクランプ10の軸方向の位置を調整することができ、係合爪26を取付孔68に容易に係合させることができるので、取付時の作業性が良い。
【0046】
〔実施形態の補足説明〕
上述した実施形態では、第1のクランプ片12に3本のチューブ60、62、64を挿入する保持部18A、18B、18Cを設けたが、チューブを挿入する保持部の個数は、これに限定されず、他の個数に設定することができる。
【0047】
上述した実施形態では、押圧部44、45、46を第2のクランプ片14に設けたが、これに限定されず、押圧部を第1のクランプ片12に設けても良い。また、第1のクランプ片12と第2のクランプ片14の両方に押圧部を設けても良い。
【0048】
上述した実施形態では、第1のクランプ片12に軸部22を設け、第2のクランプ片14に遊嵌合部36を設けたが、これに限定されず、第2のクランプ片14に軸部を設け、第1のクランプ片12に遊嵌合部を設けても良い。また、係合突起42と爪部30を第1のクランプ片12と第2のクランプ片14に逆に設けても良い。
【0049】
上述した実施形態では、突起部24の係合爪26とは別個に延設部28に仮固定用の爪部30を設けたが、これに限定されず、突起部24に係合爪26と仮固定用係合部の両方を設けても良い。
【0050】
上述した実施形態では、チューブ60、62、64として、車両用の燃料タンクに接続される燃料注入管やブリーザチューブが用いられているが、これに限定されず、他のチューブを用いることができる。また、チューブに限定されず、ワイヤーハーネスなどの他の長尺部材を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態に係るクランプ構造の第2のクランプ片を開放した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すクランプ構造の第2のクランプ片を閉止した状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示すクランプ構造の平面図である。
【図4】図1に示すクランプ構造の第2のクランプ片を開放した状態を示す側面図である。
【図5】図1に示すクランプ構造の第2のクランプ片を閉止してチューブを仮固定した状態を示す側面図である。
【図6】図5に示すクランプ構造の係合爪を車両用ボディーの孔に係合してチューブを本固定した状態を示す側面図である。
【図7】図6に示すクランプ構造のチューブと押圧部付近を拡大した断面図である。
【図8】対比例1のクランプ構造の全体構成を示す側面図である。
【図9】対比例2のクランプ構造の全体構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 クランプ(一対のクランプ片)
12 第1のクランプ片(一方のクランプ片)
14 第2のクランプ片(他方のクランプ片)
16D 内側面
26 係合爪
30 爪部(被係合部)
34A 一端部
36 遊嵌合部
42 係合突起(仮固定用係合部)
44 押圧部
45 押圧部
46 押圧部
60 チューブ
62 チューブ
64 チューブ
66 車両用ボディー
68 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を挟持し、且つ少なくとも一端が遊嵌合している一対のクランプ片と、
一方のクランプ片の他方のクランプ片と対向する内側面から、他方のクランプ片を貫通するように突設され、被取付部材に形成された取付孔に係合することによって前記一対のクランプ片を前記被取付部材に固定すると共に、前記一対のクランプ片で前記長尺部材を締付ける係合爪と、
を有することを特徴とするクランプ構造。
【請求項2】
前記一対のクランプ片の少なくとも一方に、挟持した前記長尺部材を締付け方向へ押圧する押圧部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ構造。
【請求項3】
前記一対のクランプ片の少なくとも一方に、一端部に前記一方のクランプ片又は前記他方のクランプ片に回動可能に遊嵌合される遊嵌合部と、前記一方のクランプ片又は前記他方のクランプ片に形成された被係合部に係合され、前記長尺部材を仮固定する仮固定用係合部と、を備え、
前記係合爪を前記取付孔に係合したときに前記長尺部材が前記一対のクランプ片で締付けられて本固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクランプ構造。
【請求項4】
前記長尺部材が車両に配索されたチューブで、前記被取付部材が車両用ボディーであり、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のクランプ構造の前記一対のクランプ片に前記チューブを挟持させて前記一対のクランプ片を前記車両用ボディーに固定したことを特徴とする車両用ボディー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−224003(P2008−224003A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67338(P2007−67338)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】