説明

クロック信号分配装置

【課題】高品質のクロック信号を分配することができるクロック信号分配装置を提供することを課題とする。
【解決手段】第1のインダクタ及び第1の容量に応じた周波数で共振して信号を発振する複数のLC共振発振器(302,303)と、第2のインダクタ及び第2の容量に応じた周波数で共振し、入力クロック信号に同期した信号を発振する注入同期型LC共振発振器(301)と、前記複数のLC共振発振器及び前記注入同期型LC共振発振器の発振ノードを接続する伝送線路(311,312)とを有することを特徴とするクロック信号分配装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、クロック信号分配装置の構成例を示す図である。クロック信号を同一位相にて分配するツリー構造が知られている(例えば、特開2008−136030号公報参照)。位相ロックループ(PLL)回路101は、回路ブロック102と、電圧制御発振器(VCO)103と、周波数分周器(FDIV)104とを有し、リファレンスクロック信号RCKを入力し、所望のクロック信号を出力する。回路ブロック102は、位相周波数検出器(PFD)、チャージポンプ(CP)及びローパスフィルタ(LP)を含む。PLL回路101が出力するクロック信号は、ツリー構造のバッファ105を介して回路106に分配される。しかし、高周波クロック信号の分配では、バッファ105の駆動能力の限界からクロック信号間の位相ばらつきや消費電力の増加といった問題が生じる。
【0003】
図2は、クロック信号分配装置の他の構成例を示す図である。分散VCOを用いたクロック信号分配装置が知られている(例えば、特開2007−82158号公報参照)。回路ブロック201は、位相周波数検出器(PFD)、チャージポンプ(CP)及びローパスフィルタ(LP)を有し、周波数分周器202の出力信号及びリファレンスクロック信号RCKを入力し、バイアス信号を3個のLC共振発振器203に出力する。周波数分周器202は、1個のLC共振発振器203の発振信号を分周し、回路ブロック201に出力する。回路ブロック201と、LC共振発振器203と、周波数分周器202とを含むフィードバック回路は、PLL回路を構成する。抵抗素子204は、各LC共振発振器203の発振ノード間に接続される。各LC共振発振器203の発振信号は、それぞれバッファ205を介して回路206に供給される。
【0004】
また、複数のインバータが多段にリング状に接続された少なくとも二つのリング発振回路と、導電性配線からなる半導体集積回路装置が知られている(例えば、特開平11−74762号公報参照)。
【0005】
また、外部クロックが入力され、この外部クロックと同期する第1のクロックを出力して各負荷回路に分配するクロック分配出力回路を有するクロック分配回路が知られている(例えば、特開平9−34584号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−136030号公報
【特許文献2】特開2007−82158号公報
【特許文献3】特開平11−74762号公報
【特許文献4】特開平9−34584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2のクロック信号分配装置では、LC共振発振器203の発振ノードがPLL回路のループ内に含まれている。そのため、回路206からLC共振発振器203へのキックバックがPLL回路の特性に直接影響を与えてしまう。また、回路ブロック201からバイアス信号を各LC共振発振器203に分配する必要があるため、ノイズの混入がおこり、クロック信号特性の劣化につながる。さらに、このクロック信号分配装置は、LC共振発振器203の分配回路とともにPLL回路を設計する必要があるため、設計が困難であることの問題があり、回路配置上の制限も大きい。
【0008】
本発明の目的は、高品質のクロック信号を分配することができるクロック信号分配装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
クロック信号分配装置は、第1のインダクタ及び第1の容量に応じた周波数で共振して信号を発振する複数のLC共振発振器と、第2のインダクタ及び第2の容量に応じた周波数で共振し、入力クロック信号に同期した信号を発振する注入同期型LC共振発振器と、前記複数のLC共振発振器及び前記注入同期型LC共振発振器の発振ノードを接続する伝送線路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
PLL回路を用いずにクロック信号を分配することができるので、クロック信号の分配先からクロック信号の信号源へのキックバックを防ぐことができ、高品質のクロック信号を分配することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】クロック信号分配装置の構成例を示す図である。
【図2】クロック信号分配装置の他の構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるクロック信号分配装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態によるクロック信号分配装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】図4のLC共振電圧制御発振器の構成例を示す回路図である。
【図6】図5の可変容量の構成例を示す回路図である。
【図7】図4の注入同期型LC共振電圧制御発振器の構成例を示す回路図である。
【図8】本発明の第3の実施形態によるクロック信号分配装置内の注入同期型LC共振電圧制御発振器の構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4の実施形態によるクロック信号分配装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態によるクロック信号分配装置の構成例を示すブロック図である。複数のLC共振発振器302及び303は、例えばLC共振電圧制御発振器であり、それぞれ、第1のインダクタ及び第1の容量に応じた周波数で共振して信号を発振する。注入同期型LC共振発振器301は、例えば注入同期型LC共振電圧制御発振器であり、第2のインダクタ及び第2の容量に応じた周波数で共振し、入力クロック信号CKに同期した信号を発振する。伝送線路311及び312は、複数のLC共振発振器302,303及び注入同期型LC共振発振器301の発振ノードを同一間隔で接続する。伝送線路311は、注入同期型LC共振発振器301の発振ノード及びLC共振発振器302の発振ノード間を接続する。伝送線路312は、注入同期型LC共振発振器301の発振ノード及びLC共振発振器303の発振ノード間を接続する。伝送線路311及び312は、同一の線路長である。バッファ321は、注入同期型LC共振発振器301の発振ノードの信号を増幅して回路331に出力する。バッファ322は、LC共振発振器302の発振ノードの信号を増幅して回路332に出力する。バッファ323は、LC共振発振器303の発振ノードの信号を増幅して回路333に出力する。クロック信号分配装置は、入力クロック信号CKを例えば3個の回路331〜333に分配することができる。クロック信号分配装置の詳細な動作は、後に第2の実施形態で説明する。
【0013】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態によるクロック信号分配装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態に対して、LC共振電圧制御発振器304、伝送線路310,314、バッファ324及び回路334を追加したものである。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0014】
複数のLC共振電圧制御発振器302〜304は、それぞれ、第1のインダクタ及び第1の容量に応じた周波数で共振して信号を発振し、デジタル制御信号CTLにより第1の容量の容量値が制御される。注入同期型LC共振電圧制御発振器301は、第2のインダクタ及び第2の容量に応じた周波数で共振し、入力クロック信号CKに同期した信号を発振し、デジタル制御信号CTLにより第2の容量の容量値が制御される。伝送線路311〜313は、複数のLC共振電圧制御発振器302〜304及び注入同期型LC共振電圧制御発振器301の発振ノードを同一間隔で接続する。伝送線路311は、注入同期型LC共振電圧制御発振器301の発振ノード及びLC共振電圧制御発振器302の発振ノード間を接続する。伝送線路312は、LC共振電圧制御発振器302及び303の発振ノード間を接続する。伝送線路313は、LC共振電圧制御発振器303及び304の発振ノード間を接続する。伝送線路310は、伝送線路311とは逆方向に、注入同期型LC共振電圧制御発振器301の発振ノードに接続される。伝送線路314は、伝送線路313とは逆方向に、LC共振電圧制御発振器304の発振ノードに接続される。伝送線路311〜313は、同一の線路長である。伝送線路310及び314は、伝送線路311〜313の半分の線路長である。これにより、LC共振電圧制御発振器301〜304に接続される伝送線路310〜314のユニット構成を同じにすることができる。バッファ321は、注入同期型LC共振電圧制御発振器301の発振ノードの信号を増幅して回路331に出力する。バッファ322は、LC共振電圧制御発振器302の発振ノードの信号を増幅して回路332に出力する。バッファ323は、LC共振電圧制御発振器303の発振ノードの信号を増幅して回路333に出力する。バッファ324は、LC共振電圧制御発振器304の発振ノードの信号を増幅して回路334に出力する。クロック信号分配装置は、入力クロック信号CKを例えば4個の回路331〜334に分配することができる。
【0015】
図5は、図4のLC共振電圧制御発振器302〜304の構成例を示す回路図である。正出力端子OUT及び負出力端子/OUTは、発振ノードである。第1のpチャネル電界効果トランジスタ501は、ゲートが正出力端子(第1のノード)OUTに接続され、ソースが電源電位ノードに接続され、ドレインが負出力端子(第2のノード)/OUTに接続される。第2のpチャネル電界効果トランジスタ502は、ゲートが負出力端子/OUTに接続され、ソースが電源電位ノードに接続され、ドレインが正出力端子OUTに接続される。第1のnチャネル電界効果トランジスタ503は、ゲートが正出力端子OUTに接続され、ドレインが負出力端子/OUTに接続され、ソースがノードN1に接続される。第2のnチャネル電界効果トランジスタ504は、ゲートが負出力端子/OUTに接続され、ドレインが正出力端子OUTに接続され、ソースがノードN1に接続される。nチャネル電界効果トランジスタ505は、ゲートが固定のバイアス信号BSのノードに接続され、ドレインがノードN1に接続され、ソースが基準電位ノード(グランド電位ノード)に接続され、電流源として機能する。インダクタ508は、正出力端子OUT及び負出力端子/OUT間に接続される。可変容量506及び507は、デジタル制御信号CTLにより容量値が制御される可変容量であり、正出力端子OUT及び負出力端子/OUT間に接続される。
【0016】
LC共振電圧制御発振器302〜304は、1/{2π√(L×C)}の共振周波数で信号を発振する。ここで、Lはインダクタ508のインダクタンス値であり、Cは可変容量506及び507の容量値である。デジタル制御信号CTLにより、可変容量506及び507の容量値を制御し、上記の共振周波数を入力クロック信号CKの周波数付近に設定する。これにより、正出力端子OUTからは、入力クロック信号CK付近の周波数のクロック信号が出力される。また、負出力端子/OUTからは、正出力端子OUTのクロック信号の反転クロック信号が出力される。正出力端子OUT及び/又は負出力端子/OUTは、図4のように、伝送線路311〜314及びバッファ322〜324に接続される。
【0017】
図6は、図5の可変容量507の構成例を示す回路図である。可変容量506も可変容量507と同様の構成を有するので、可変容量507の構成を例に説明する。デジタル制御信号CTLは、4ビットのデジタル制御信号CTL0〜CTL3を有する。デジタル制御信号CTL0〜CTL3は、0V又は電源電圧のデジタル信号である。可変容量507は、可変容量601〜604を有する。4個の可変容量601〜604の大きさは、1:2:4:8である。デジタル制御信号CTL0〜CTL3は、0Vのときには可変容量601〜604の容量値が大きくなり、電源電圧のときには可変容量601〜604が小さくなる。4ビットのデジタル制御信号CTL0〜CTL3により、可変容量507の容量値を階段状に変化させることができる。4ビットのデジタル制御信号CTL0〜CTL3を用いることにより、アナログ制御信号を用いる場合に比べ、ノイズによる容量値の誤差を低減することができる。
【0018】
図7は、図4の注入同期型LC共振電圧制御発振器301の構成例を示す回路図である。図7の注入同期型LC共振電圧制御発振器301は、図5のLC共振電圧制御発振器302〜304に対して、トランジスタ701及び702を追加したものである。以下、図7が図5と異なる点を説明する。第3のnチャネル電界効果トランジスタ701は、ゲートが入力クロック信号CKのノードに接続され、ドレインが第1のnチャネル電界効果トランジスタ503のソースに接続され、ソースがノードN1に接続される。第4のnチャネル電界効果トランジスタ702は、ゲートが入力クロック信号CKの反転信号/CKのノードに接続され、ドレインが第2のnチャネル電界効果トランジスタ504のソースに接続され、ソースがノードN1に接続される。第5のnチャネル電界効果トランジスタ505は、ゲートが固定のバイアス信号BSのノードに接続され、ソースが基準電位ノードに接続され、ドレインがノードN1に接続される。
【0019】
注入同期型LC共振電圧制御発振器301の共振周波数は、1/{2π√(L×C)}である。ここで、Lはインダクタ508のインダクタンス値であり、Cは可変容量506及び507の容量値である。デジタル制御信号CTLにより、可変容量506及び507の容量値を制御し、共振周波数を入力クロック信号CKの周波数付近に設定する。nチャネル電界効果トランジスタ701及び702は、入力クロック信号CKの周波数でオン/オフする。これにより、正出力端子OUTからは、入力クロック信号CKに同期し、入力クロック信号CKと同一周波数のクロック信号が出力される。また、負出力端子/OUTからは、正出力端子OUTのクロック信号の反転クロック信号が出力される。正出力端子OUT及び/又は負出力端子/OUTは、図4のように、伝送線路310,311及びバッファ321に接続される。注入同期型LC共振電圧制御発振器301は、デジタル制御信号CTLにより所望の周波数付近に共振周波数が設定され、入力クロック信号CKに同期した所望の周波数のクロック信号を出力する。
【0020】
図4において、伝送線路311〜313は、注入同期型LC共振電圧制御発振器301及び複数のLC共振電圧制御発振器302〜304の発振ノードを同一間隔で接続する。間隔が短い場合には、伝送線路310〜314は短絡するための低抵抗の配線でよい。これに対し、間隔が長い場合には、伝送線路310〜314はインダクタ成分が無視できなくなり、LC共振電圧制御発振器301〜304内のインダクタ508のインダクタンス値に影響を与え、発振周波数が変化してしまう。したがって、間隔が長い場合、伝送線路310〜314は、例えば抵抗素子であり、その抵抗素子の抵抗値がインダクタンス値に対して支配的になるように抵抗値を決める必要がある。
【0021】
注入同期型LC共振電圧制御発振器301及び複数のLC共振電圧制御発振器302〜304の発振信号の周波数又は位相が相互にずれている場合には、伝送線路311〜313に電流が流れ、やがて注入同期型LC共振電圧制御発振器301及び複数のLC共振電圧制御発振器302〜304のすべての発振信号の周波数及び位相が同一になる。すなわち、注入同期型LC共振電圧制御発振器301及び複数のLC共振電圧制御発振器302〜304の発振信号は、入力クロック信号CKに同期し、入力クロック信号CKと同一周波数の信号になる。また、そのためには、伝送線路311〜313の長さを同一にする必要がある。
【0022】
本実施形態のクロック信号分配装置は、集積回路チップ内、チップ間(装置内/間)で周波数の高いクロック信号を生成及び分配することができ、高速I/O回路に適用可能である。例えば、数GHz以上の高速クロック信号を同一位相にて多チャネルに分配することができる。
【0023】
本実施形態のクロック信号分配装置は、4チャネルの回路331〜334へクロック信号を分配する例を示す。このクロック信号分配装置は、注入同期型LC共振電圧制御発振器301及びLC共振電圧制御発振器302〜304を有し、注入同期型LC共振電圧制御発振器301を入力クロック信号CKに同期させることにより、所望の周波数のクロック信号を分配する。また、クロック信号分配装置の動作周波数範囲を増大させつつ、ノイズの混入を防ぐために、各LC共振電圧制御発振器301〜304の共振周波数をデジタル制御信号CTLにて所望の周波数付近に設定して使用する。
【0024】
本実施形態では、分散電圧制御発振器301〜304のうちの一部の電圧制御発振器を注入同期型電圧制御発振器301とし、外部からクロック信号CKを入力し、同期させることにより、所望の周波数のクロック信号を同一位相にて分配することができる。
【0025】
本実施形態のクロック信号分配装置は、PLL回路を用いずにクロック信号を分配することができるので、クロック信号の分配先からクロック信号の信号源へのキックバックを防ぐことができる。また、PLL回路からのバイアス信号を複数のLC共振発振器に分配する必要がなくなるため、バイアス信号からのノイズの混入を防ぐことができる。また、PLL回路を考慮せずに、クロック信号分配装置を設計することができるため、設計性が向上し、回路配置上の自由度が増大する。
【0026】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態によるクロック信号分配装置内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301の構成例を示すブロック図である。本実施形態は、第2の実施形態に対して、注入同期型LC共振電圧制御発振器301の構成が異なる。以下、本実施形態が第2の実施形態と異なる点を説明する。図8の注入同期型LC共振電圧制御発振器301は、図5のLC共振電圧制御発振器302〜304に対して、容量801を追加したものである。容量801は、入力クロック信号CKのノード及びnチャネル電界効果トランジスタ505のゲート間に接続される。本実施形態の注入同期型LC共振電圧制御発振器301は、入力クロック信号CKの周波数の1/2の周波数のクロック信号を出力端子OUT及び/OUTから出力することができる。
【0027】
注入同期型LC共振電圧制御発振器301の共振周波数は、1/{2π√(L×C)}である。ここで、Lはインダクタ508のインダクタンス値であり、Cは可変容量506及び507の容量値である。デジタル制御信号CTLにより、可変容量506及び507の容量値を制御し、共振周波数を入力クロック信号CKの周波数の1/2の周波数付近に設定する。同様に、図5のLC共振電圧制御発振器302〜304の共振周波数も入力クロック信号CKの周波数の1/2の周波数付近に設定する。
【0028】
容量801は、入力クロック信号CKの直流成分をカットし、交流成分のみをnチャネル電界効果トランジスタ505のゲートに伝達する。nチャネル電界効果トランジスタ505は、入力クロック信号CKの周波数でオン/オフする。これにより、正出力端子OUTからは、入力クロック信号CKに同期し、入力クロック信号CKを2分周した信号と同一周波数のクロック信号が出力される。すなわち、正出力端子OUTからは、入力クロック信号CKに対して1/2の周波数のクロック信号が出力される。また、負出力端子/OUTからは、正出力端子OUTのクロック信号の反転クロック信号が出力される。正出力端子OUT及び/又は負出力端子/OUTは、図4のように、伝送線路310,311及びバッファ321に接続される。
【0029】
本実施形態のクロック信号分配装置は、図8の注入同期型LC共振電圧制御発振器301及び図5のLC共振電圧制御発振器302〜304を有し、入力クロック信号CKを2分周したクロック信号を分配する。図8の注入同期型LC共振電圧制御発振器301は、インダクタ508及び可変容量506,507の共振周波数に対して2倍の周波数のクロック信号CKをnチャネル電界効果トランジスタ505のゲートに入力し、同期させることによって分周されたクロック信号を出力することができる。これにより、注入同期型LC共振電圧制御発振器301は、分周器として機能し、入力クロック信号CKを分周した周波数で発振する。
【0030】
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態によるクロック信号分配装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態のクロック信号分配装置は、4個のブロック901〜904を有し、4×4チャネルの回路へクロック信号を分配することができる。各ブロック901〜904は、図4のクロック信号分配装置と同じ構成を有する。各ブロック901〜904内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301には、バッファ905を介して同一の入力クロック信号CKが入力される。バッファ905の出力端子は、ノードN2に接続される。ノードN2は、ノードN3を介してブロック901及び902内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301に接続される。また、ノードN2は、ノードN4を介してブロック903及び904内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301に接続される。ノードN2及びN3間の伝送線路の長さとノードN2及びN4間の伝送線路の長さとは同じである。また、ブロック901及び902内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301とノードN3との間の伝送線路の長さと、ブロック903及び904内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301とノードN4との間の伝送線路の長さとは同じである。これにより、ブロック901〜904内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301に入力されるクロック信号は、すべて同一周波数及び同一位相のクロック信号になる。すなわち、ブロック901〜904が出力する16チャネルの分配クロック信号は、すべて入力クロック信号CKに同期し、入力クロック信号CKと同一周波数の信号になる。本実施形態のクロック信号分配装置は、4個のブロック901〜904内の注入同期型LC共振電圧制御発振器301を入力クロック信号CKに同期させることにより、全チャネルに同一位相で所望の同一周波数のクロック信号を分配することができる。
【0031】
伝送線路311〜314は、一次元の配線に限定されず、2次元のメッシュ状の配線でもよい。その場合、注入同期型LC共振電圧制御発振器301及びLC共振電圧制御発振器302〜304を2次元に配列し、2次元のクロック信号分配を行うことができる。
【0032】
以上のように、第1〜第4の実施形態のクロック信号分配装置は、PLL回路を用いずにクロック信号を分配することができるので、クロック信号の分配先からクロック信号の信号源へのキックバックを防ぐことができ、高品質のクロック信号を分配することができる。
【0033】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
301 注入同期型LC共振発振器
302,303 LC共振発振器
311,312 伝送線路
321〜323 バッファ
331〜333 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のインダクタ及び第1の容量に応じた周波数で共振して信号を発振する複数のLC共振発振器と、
第2のインダクタ及び第2の容量に応じた周波数で共振し、入力クロック信号に同期した信号を発振する注入同期型LC共振発振器と、
前記複数のLC共振発振器及び前記注入同期型LC共振発振器の発振ノードを接続する伝送線路と
を有することを特徴とするクロック信号分配装置。
【請求項2】
前記複数のLC共振発振器内の第1の容量及び前記注入同期型LC共振発振器内の第2の容量は、デジタル信号により容量値が制御される可変容量であり、
前記複数のLC共振発振器及び前記注入同期型LC共振発振器は、前記可変容量に応じて共振周波数が決定されることを特徴とする請求項1記載のクロック信号分配装置。
【請求項3】
前記伝送線路は、一次元の配線又は2次元のメッシュ状の配線であることを特徴とする請求項1又は2記載のクロック信号分配装置。
【請求項4】
前記伝送線路は、抵抗素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロック信号分配装置。
【請求項5】
前記注入同期型LC共振発振器は、前記入力クロック信号を分周した周波数で発振することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロック信号分配装置。
【請求項6】
前記伝送線路は、前記複数のLC共振発振器及び前記注入同期型LC共振発振器の発振ノードを同一間隔で接続することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のクロック信号分配装置。
【請求項7】
前記複数のLC共振発振器及び前記注入同期型LC共振発振器は、同一周波数及び同一位相の信号を発振することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のクロック信号分配装置。
【請求項8】
前記複数のLC共振発振器、前記注入同期型LC共振発振器及び前記伝送線路を有する複数のブロックを有し、
前記複数のブロック内の各前記注入同期型LC共振器に同一の入力クロック信号が入力されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のクロック信号分配装置。
【請求項9】
前記注入同期型LC共振器は、
ゲートが第1のノードに接続され、ソースが電源電位ノードに接続され、ドレインが第2のノードに接続される第1のpチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第2のノードに接続され、ソースが電源電位ノードに接続され、ドレインが前記第1のノードに接続される第2のpチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第1のノードに接続され、ドレインが前記第2のノードに接続される第1のnチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第2のノードに接続され、ドレインが前記第1のノードに接続される第2のnチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記入力クロック信号のノードに接続され、ドレインが前記第1のnチャネル電界効果トランジスタのソースに接続される第3のnチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記入力クロック信号の反転信号のノードに接続され、ドレインが前記第2のnチャネル電界効果トランジスタのソースに接続される第4のnチャネル電界効果トランジスタと、
ソースが基準電位ノードに接続され、ドレインが前記第3及び第4のnチャネル電界効果トランジスタのソースに接続される第5のnチャネル電界効果トランジスタとを有し、
前記第2のインダクタは、前記第1のノード及び前記第2のノード間に接続され、
前記第2の容量は、前記第1のノード及び前記第2のノード間に接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロック信号分配装置。
【請求項10】
前記注入同期型LC共振器は、
ゲートが第1のノードに接続され、ソースが電源電位ノードに接続され、ドレインが第2のノードに接続される第1のpチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第2のノードに接続され、ソースが電源電位ノードに接続され、ドレインが前記第1のノードに接続される第2のpチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第1のノードに接続され、ドレインが前記第2のノードに接続される第1のnチャネル電界効果トランジスタと、
ゲートが前記第2のノードに接続され、ドレインが前記第1のノードに接続される第2のnチャネル電界効果トランジスタと、
ソースが基準電位ノードに接続され、ドレインが前記第1及び第2のnチャネル電界効果トランジスタのソースに接続される第3のnチャネル電界効果トランジスタと、
前記入力クロック信号のノード及び前記第3のnチャネル電界効果トランジスタのゲート間に接続される第3の容量とを有し、
前記第2のインダクタは、前記第1のノード及び前記第2のノード間に接続され、
前記第2の容量は、前記第1のノード及び前記第2のノード間に接続されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のクロック信号分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19186(P2011−19186A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163989(P2009−163989)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】