説明

ゲル状物の表面凹凸検査方法

【課題】ゲル状物の表面に形成されたなだらかな凹凸であっても検出することができるゲル状物の表面凹凸検査方法を提供する。
【解決手段】検査位置41に液晶パネル71を設け、バックライト72からの光を液晶表示部73でマスクして縞模様の照明をシャーレ2の底面11側から照射したり、面発光した状態の照明をマスクすることなくシャーレ2の底面11側から照射できるように構成する。制御装置74は、液晶パネル71を全面発光した状態でシャーレ2の平面画像を取得して画像解析することで、シャーレ2の分離壁13の延在方向を検出した後、検出した分離壁13の延在方向に合わせた縞模様を液晶パネル71に表示して、寒天3表面4での凹凸を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体に収容されたゲル状物の表面凹凸検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査等を行う際には、例えば寒天が使用されており、この寒天は、シャーレに収容され出荷されている。
【0003】
前記寒天は、ゲル状に形成されており、この寒天をシャーレに収容して固化する際には、その表面に生じた気泡によって凹凸が形成されることがある。このため、寒天が収容されたシャーレを出荷する際には、前記寒天の表面状態の検査が行われている。
【0004】
この検査を行う際には、図5に示すように、シャーレに寒天が収容されたワーク801を、その上部からリング照明802によって光を当てるとともに、当該リング照明802の上部に配設されたカメラ803で直接反射光を検出することで、前記ワーク801の平面画像を取得する。
【0005】
そして、この平面画像を画像処理装置811で解析することによって、前記ワーク801の寒天の表面に生じた凹凸の有無を検査していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の凹凸検査方法にあっては、小さな気泡などによって形成された極端な表面の凹凸は検出できるが、変化のなだらかな凹凸は検査できないことがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ゲル状物の表面に形成されたなだらかな凹凸であっても検出することができるゲル状物の表面凹凸検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のゲル状物の表面凹凸検査方法にあっては、透明性を有する容器体に収容されたゲル状物の表面の凹凸を検査するゲル状物の表面凹凸検査方法において、面発光体からの光を縞模様の遮光マスクを介して前記容器体の底面側から照射して検査を行う。
【0009】
すなわち、面発光体からの光は、縞模様の遮光マスクを介して前記容器体の底面側から照射される。そして、前記ゲル状物は、透明性を有した容器体に収容されており、縞模様に形成された光は、当該ゲル状物の表面に透過する。
【0010】
このとき、当該ゲル状物の表面に凹凸が存在する場合、縞模様に照射された光は、その凹凸に応じて屈折が生ずる。
【0011】
また、請求項2のゲル状物の表面凹凸検査方法においては、前記面発光体及び前記遮光マスクを液晶パネルで構成し、該液晶パネルで縞模様を表示する。
【0012】
すなわち、前記面発光体及び前記遮光マスクを液晶パネルで構成し、該液晶パネルで縞模様を表示することで、バックライトからの光を液晶により縞模様にマスクし、前記容器体の底面側へ縞模様の光を照射することができる。
【0013】
さらに、請求項3のゲル状物の表面凹凸検査方法では、前記容器体は当該容器体を横断する分離壁を有し、前記液晶パネルを全面発光した状態で前記容器体の平面画像を取得して前記分離壁の延在方向を検出した後、検出した分離壁の延在方向に合わせた縞模様を前記液晶パネルに表示して検査を行う。
【0014】
すなわち、前記容器体としては、当該容器体を横断する分離壁を備えたものがあり、該分離壁で区画された各部屋のゲル状物を同時に利用できるように構成されている。
【0015】
このような容器体を検査位置にセットして検査する際には、前記分離壁の延在方向と前記縞模様の方向とを一致させる必要がある。
【0016】
そこで、本発明では、前記液晶パネルを全面発光した状態において、前記容器体の平面画像を取得することで、前記分離壁の延在方向を検出する。そして、検出した分離壁の延在方向に合わせた縞模様を、前記液晶パネルに表示することで、前記容器体をセットする際に、その向きや方向を定めること無く、セットされた容器体の分離壁の延在方向と前記格子模様の方向とを一致させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の請求項1のゲル状物の表面凹凸検査方法にあっては、ゲル状物を収容した容器体の底面側から縞模様の光を当てることにより、この縞模様の光がゲル状物の表面に形成された凹凸に応じて屈折することを利用して、当該ゲル状物の表面に現れた縞模様の変化から凹凸の有無を検出することができる。
【0018】
したがって、ゲル状物の表面に光を当てて検査を行う従来では、検出することができなかった変化のなだらかな凹凸であっても、前記表面に表出する縞模様の変化から当該凹凸を容易に検出することができる。
【0019】
また、請求項2のゲル状物の表面凹凸検査方法においては、前記面発光体及び前記遮光マスクを液晶パネルで構成し、該液晶パネルで縞模様を表示することで、バックライトからの光を液晶により縞模様にマスクして、前記容器体の底面側へ縞模様の光を照射することができる。
【0020】
そして、液晶パネルでの表示は変更可能なため、縞模様の幅寸法や離間寸法を検査対象に応じて変更することもでき、利便性が向上する。
【0021】
さらに、請求項3のゲル状物の表面凹凸検査方法では、分離壁が設けられた容器体を検査位置にセットして検査する際には、前記液晶パネルを全面発光した状態において、前記容器体の平面画像を取得することで、前記分離壁の延在方向を検出した後、検出した分離壁の延在方向に合わせた縞模様を前記液晶パネルに表示する。
【0022】
これにより、前記容器体を前記検査位置にセットする際には、その向きや方向を合わせて配置すること無く、セットされた容器体の前記分離壁の延在方向と前記格子模様の方向とを一致させることができる。
【0023】
これにより、前記分離壁を備えた容器体のセット作業が容易となり、容器体セット時の自動化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態にかかるゲル状物の表面凹凸検査方法を実施する表面凹凸検査装置1を示す図であり、該表面凹凸検査装置1は、容器体としてのシャーレ2に収容された検査用のゲル状物である透明性を有した寒天3,3における表面4,4の凹凸状態を検査する装置である。
【0026】
すなわち、前記シャーレ2は、円形の底面11と該底面11の周縁に起立した周壁12とによって上方に開口した無色透明の容器状に形成されており、前記底面11の中央部には、当該シャーレ2を横断する分離壁13が立設されている。これにより、当該シャーレ2は、前記分離壁13を境とした一方側に、第一収容部14が形成されるとともに、他方側に第二収容部15が形成されており、各収容部14,15のそれぞれに前記寒天3,3が収容されている。
【0027】
各収容部14,15に寒天3,3が収容されたシャーレ2は、図2に示すように、上流側から搬送路21に沿って搬送されるように構成されており、該搬送路21の端部には、円板状のインデックステーブル22が設けられている。該インデックステーブル22の外周部には、円弧状に切欠された収容部23,・・・が四ヶ所に形成されており、各収容部23,・・・の底部には、無色透明の底板24,・・・が設けられている。前記搬送路21より搬送されたシャーレ2は、その収容部23内に挿入されるように構成されており、当該収容部23に収容された状態で前記底板24に支持されるように構成されている。
【0028】
この収容部23には、収容した前記シャーレ2を保持するチャック31,31が設けられており、前記シャーレ2は、前記チャック31,31に側面から挟持された状態で前記収容部23内に保持されるよう構成さている。
【0029】
この保持状態で、前記インデックステーブル22が回動されることによって、前記収容部23に保持された前記シャーレ2が検査位置41へ移動されるように構成されており、この検査位置41において、前記シャーレ2に収容された前記寒天3,3の表面4,4に凹凸が形成されているか否かが検査されるように構成されている。
【0030】
この検査結果において、寒天3表面4に凹凸が無く異常無しと判断された際には、前記インデックステーブル22が例えば時計回りに90度回転されることによって、当該シャーレ2が供給路51まで移動されるように構成されており、当該シャーレ2は、この供給路51に送出され下流側の後工程へ搬送されるように構成されている。
【0031】
一方、前記寒天3,3の表面に凹凸が発見されNG品と判断された場合には、前記インデックステーブル22が例えば時計回りに180度回転されることによって、当該シャーレ2が排出路61まで移動されるように構成されており、該シャーレ2は、この排出路61を介して排出されるように構成されている。
【0032】
前記検査位置41には、図1に示したように、前記表面凹凸検査装置1が設けられている。
【0033】
すなわち、前記インデックステーブル22のいずれかの収容部23が配置される前記検査位置41には、当該収容部23の真下に液晶パネル71が設けられている。該液晶パネル71は、照明を構成するバックライト72を備えており、該バックライト72は、矩形板状の面発光体により構成されている。
【0034】
また、前記液晶パネル71は、前記バックライト72の上面に板状の液晶表示部73が設けられており、該液晶表示部73は、偏光フィルタに積層された液晶層が制御装置74からの信号に基づいて偏光状態を変化させることにより、縞模様の遮光マスクを形成した状態や、マスクを形成しない状態等を自由に形成できるように構成されている。これにより、前記バックライト72からの光が縞模様の遮光マスクを通過することによって、縞模様に形成された照明を前記収容部23の底板24を介して前記シャーレ2の底面11側から照射したり、面発光した状態の照明をマスクすることなく、前記シャーレ2の底面11側から照射できるように構成されている。
【0035】
この検査位置41に配置された前記シャーレ2の真上には、カメラ81が配設されており、該カメラ81によって前記シャーレ2の真上からの平面画像を取得できるように構成されている。
【0036】
このカメラ81は、パソコン等で構成された前記制御装置74に接続されており、該制御装置74は、前記カメラ81から取得した平面画像を画像処理することによって、前記シャーレ2に収容された前記寒天3,3の表面4,4における凹凸を検査するように構成されている。
【0037】
この制御装置74には、前記インデックステーブル22や前記液晶パネル71が接続されており、ハードディスク等の記憶手段に記憶されたプログラムに従って動作することにより、前記液晶パネル71を全面発光した状態で前記検査位置41に配置された前記シャーレ2の平面画像を取得して画像解析することで当該シャーレ2の前記分離壁13の延在方向を検出した後、検出した分離壁13の延在方向に合わせた縞模様を前記液晶パネル71に表示して検査を行うように構成されている。
【0038】
以上の構成にかかる本実施の形態の動作を、図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0039】
すなわち、前記記憶手段に記憶されたプログラムに従って動作する前記制御装置74では、検査対象となるシャーレ2が前記検査位置41にセットされると、メインルーチンから検査処理が呼び出される。すると、当該制御装置74は、前記液晶パネル71に制御信号を出力して全面を白色に表示することによって全面発光状態を形成し、面発光したバックライト72からの光を前記収容部23の底板24を介して、当該収容部23に保持された前記シャーレ2の底面11側から照射する(S1)。
【0040】
この状態において、前記カメラ81で前記シャーレ2の上部からの平面画像を取得して当該制御装置74で画像解析することによって、当該シャーレ2に形成された分離壁13の延在方向を検出し、当該分離壁13の基準からの角度を検出する(S2)。
【0041】
そして、当該制御装置74は、この検出角度に基づいて前記液晶パネル71に制御信号を出力することで、前記検出角度と合致する縞模様のパターンを表示して、前記シャーレ2から検出した前記分離壁13の延在方向に合わせた縞模様を前記液晶パネル71に表示する(S3)。
【0042】
すると、面発光体を形成する前記バックライト72からの光は、前記液晶表示部73で構成された縞模様の遮光マスクを介して、前記シャーレ2の前記底面11側から照射される。
【0043】
この状態において、前記カメラ81で前記シャーレ2の上部からの平面画像を取得し(S4)、この平面画像を当該制御装置74で取得して画像解析する(S5)。
【0044】
すると、前記各収容部14,15に収容された前記寒天3,3は、透明性を有したシャーレ2に収容されており、縞模様に形成された光は、透明性を有した寒天3,3の表面4,4側に透過する。
【0045】
このとき、前記各寒天3,3の表面4,4に凹凸が存在する場合、縞模様に照射された光は、その凹凸に応じて屈折が生ずる。このため、図4に示すように、取得した平面画像101には、前記寒天3,3の表面が平坦な部分では、前記液晶パネル71に表示された縞模様102が表示され、固化時の気泡などによって形成された凹凸部分103,・・・では、表面4,4に表出した縞模様102が部分的に変形するとともに、発光部分と影部分とが顕著に表れることによって、なだらかな変化であっても当該凹凸部分103,・・・を容易に検出することができる。
【0046】
そして、この平面画像101の解析結果に基づいて前記寒天3,3表面4,4での凹凸部分103,・・・の有無を判断し(S6)、凹凸部分103,・・・が有ると判断した場合には、その旨をモニターやランプ等で表示するとともに、前記インデックステーブル22を時計回りに180度回動して当該シャーレ2を前記排出路61より排出する等のNG処理を行った後(S7)、前記メインルーチンへ戻る。
【0047】
一方、前記凹凸部分103,・・・が検出されなかった場合には、その旨をモニターやランプ等で表示するとともに、前記インデックステーブル22を時計回りに90度回動して当該シャーレ2を前記供給路51に送出して下流側の工程へ搬送する等のOK処理を行った後(S8)、前記メインルーチンへ戻る。
【0048】
このように、前記寒天3,3を収容したシャーレ2の底面11側から縞模様102の光を当てることにより、この縞模様102の光が前記寒天3,3の表面4,4に形成された凹凸部分103,・・・に応じて屈折することを利用して、当該寒天3,3の表面4,4に現れた縞模様102の変化から凹凸部分103,・・・の有無を検出することができる。
【0049】
したがって、ゲル状物である寒天3,3の表面4,4に光を当てて検査を行う従来では、検出することができなかった変化のなだらかな凹凸であっても、前記表面4,4に表出する縞模様102の変化から、この凹凸部分103を容易に検出することができる。
【0050】
また、面発光体がバックライト72で構成されるとともに遮光マスクが液晶表示部73で構成された液晶パネル71を用いることによって、前記バックライト72からの光を前記液晶表示部73により縞模様102にマスクすることができ、前記シャーレ2の底面11側へ縞模様102の光を照射することができる。
【0051】
そして、前記液晶パネル71での表示は自由に変更できるため、前記縞模様102の幅寸法や離間寸法を検査対象に応じて変更することもでき、利便性が向上する。
【0052】
そして、本実施の形態では、内部が分離壁13で分割されたシャーレ2が使用されており、前記分離壁13で区画された各収容部14,15内の寒天3,3を、検査用として同時に利用することができる。
【0053】
このようなシャーレ2を検査位置41にセットして検査する際には、前記分離壁13近傍での凹凸の有無をより正確に検査する為に、前記分離壁13の延在方向111と前記縞模様102の方向とを一致させる必要がある。
【0054】
そこで、本実施の形態では、前記液晶パネル71を全面発光した状態において、前記シャーレ2の平面画像101を取得することで、前記分離壁13の延在方向111を検出した後、検出した分離壁13の延在方向111に合わせた縞模様102を前記液晶パネル71に表示することができる。
【0055】
これにより、前記シャーレ2を前記検査位置41にセットする際には、その向きや方向を合わせて配置すること無く、セットされたシャーレ2の前記分離壁13の延在方向と前記縞模様102の方向とを一致させることができる。
【0056】
これにより、前記分離壁13を備えたシャーレ2のセット作業が容易となり、本実施の形態のようにシャーレ2セット時の自動化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態を示す模式図である。
【図2】同実施の形態のインデックステーブルを示す説明図である。
【図3】同実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】同実施の形態で取得された平面画像を示す説明図である。
【図5】従来例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1 表面凹凸検査装置
2 シャーレ
3 寒天
4 表面
11 底面
13 分離壁
41 検査位置
71 液晶パネル
72 バックライト
73 液晶表示部
74 制御装置
102 縞模様
111 延在方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する容器体に収容されたゲル状物の表面の凹凸を検査するゲル状物の表面凹凸検査方法において、
面発光体からの光を縞模様の遮光マスクを介して前記容器体の底面側から照射して検査を行うことを特徴としたゲル状物の表面凹凸検査方法。
【請求項2】
前記面発光体及び前記遮光マスクを液晶パネルで構成し、該液晶パネルで縞模様を表示することを特徴とした請求項1記載のゲル状物の表面凹凸検査方法。
【請求項3】
前記容器体は当該容器体を横断する分離壁を有し、
前記液晶パネルを全面発光した状態で前記容器体の平面画像を取得して前記分離壁の延在方向を検出した後、検出した分離壁の延在方向に合わせた縞模様を前記液晶パネルに表示して検査を行うことを特徴とした請求項2記載のゲル状物の表面凹凸検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25602(P2010−25602A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184410(P2008−184410)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【Fターム(参考)】