説明

ゴルフボールの熱可塑性構成部分の製造方法

本発明は、熱可塑性材料を用いてゴルフボールを製造するための射出成形方法を記載する。射出成形用金型に、加熱源および1つ以上の弁ゲートが設けられる。前記加熱源が、溶融熱可塑性材料を金型キャビティに供給する導管内の溶融熱可塑性材料の温度を維持し、弁ゲートが、前記金型キャビティへの溶融熱可塑性材料の流れを遮断する。有利には、この方法は、「トリム」または屑材料を低減または除去し、従って、熱可塑性材料を再循環させる必要性も最小にする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2004年8月25日に出願された米国特許仮出願第60/604,332号明細書(その内容をその全体において本願明細書に援用する)の利益を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ゴルフボールを製造するための方法に関する。特に、本発明は、熱可塑性の中心部またはコア、または1つ以上の熱可塑性の層を有するゴルフボールを成形するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明が関係する最新の技術をより完全に説明するためにいくつかの特許および出版物がこの記載において引用される。これらの特許および出版物の各々の全開示内容を本明細書に参照によって援用する。
【0004】
現在、いくつかのタイプの高級ゴルフボール、特にスリーピースボール、ツーピースボールおよび多層ボールが存在する。「スリーピース」ボールは典型的に、熱可塑性または熱硬化性材料のどちらかで被覆された、エラストマー糸状材料をその周りに捲回した球形成形中心部を有する。「ツーピース」ボールは典型的に、熱可塑性材料で被覆された球形成形コアを有する。「多層」ボールは典型的に、コアおよびコアとカバーとの間の1つ以上の中間層(またはマントル)を有する。
【0005】
スリーピース中心およびツーピースおよび多層コアを成形するために用いられる材料は、慣習的に、ポリブタジエンゴムなどの熱硬化性ゴム、架橋EVA、架橋SBS、および架橋ウレタンである。熱硬化性材料が、これらなどの用途に一般的に使用され、そこではレジリエンス、耐久性、および低い硬度が望ましい性質である。
【0006】
ゴルフボールおよびゴルフボールの一部を製造するために用いられる射出成形方法は典型的に、屑材または「トリム」の相当な部分をもたらす。例えば、金型の「ランナー」内、溶融ポリマーを金型キャビティに運ぶ導管内で固化する材料は、ボールまたは部分的に完成したボールからトリミングされなければならない。明らかに、トリミングされた材料を未使用材料と配合することによってそれを再循環させて新しいゴルフボールまたはゴルフボール部品を製造することが経済的および環境的に望ましい。しかしながら、再循環された材料が完成ゴルフボールの重要な性質の低下をもたらす場合があるので、熱硬化性ゴムを再利用材料として用いることには不利な点がある。
【0007】
通常のゴルフボールメーカーは一般にコア内で熱可塑性材料を使用しないが、ゴルフボール内の熱硬化性材料を、より容易に加工されてその屑材を一般に再循環することができる熱可塑性材料と取り替えることにおいて一応の成功があった。例えば、限られたフライト範囲のボールが熱硬化性ゴムからおよび米国特許第5,155,157号明細書に示されるように特定の熱可塑性材料から製造され、そこでは、ボールは、コポリエーテルエステルまたはコポリエーテルアミドと、エポキシ含有化合物と、エチレンコポリマーイオノマーとのブレンドを含む。
【0008】
英国特許出願第2,164,342A号明細書は、射出成形によってワンピースゴルフボールを製造するためにポリエーテルブロックコポリアミド、ポリエーテルブロックコポリエステルなどの特定の熱可塑性材料とブレンドされたイオン性コポリマーを含む成形可能な組成物について記載する。
【0009】
米国特許出願第09/422,122号明細書(1999年10月21日出願)、およびそれに対する優先権を請求する特許出願は、ゴルフボールコア、カバー、および/またはマントルとして使用するために射出または圧縮成形によって成形することができる熱可塑性エチレン酸コポリマーイオノマー組成物について記載する。
【0010】
射出成形を用いて熱可塑性コアおよび層を形成することができることを先行文献は指摘するが、先行技術の文献のいずれも、熱可塑性材料を用いる射出成形方法を十分に記載しない。さらに、特定の熱可塑性材料は、吸湿性の性質など、取扱の難しさを示す。吸湿性熱可塑性材料、例えば特定のイオノマーのトリムまたは過剰な粉砕物(「リグラインド」)をプロセスに再循環させることは、樹脂の感湿性のために望ましくない。望ましくないレベルの湿分を吸収するトリムは、それから成形されたゴルフボール部品の性質に悪影響を与えることがある。熱可塑性のトリム材料を再循環させることは問題が多いことがあるので、典型的にそれは避けられる。カバーに使用される材料は、一般にそれほど吸湿性でなく、従ってリグラインドを含むことはそれほど問題にならない。しかしながら、従来の方法を用いてゴルフボールを成形することによって、相当な量のポリマートリムを生じることがあり、トリムがプロセスに再導入されない場合、原材料の相当な損失を示すことがある。これは、ゴルフボールに使用するための材料として、特に熱可塑性コア材料としてイオノマーを使用するのを妨げる主因であった。例えば、屑材材料の量は、通常のゴルフボールランナーコア金型を使用する場合、コアの15重量%超、およびコアの50重量%までの量であることがある。
【0011】
従って、ゴルフボール製造方法において製造されたポリマートリムの量を低減または除去する、ゴルフボールコアおよび層を熱可塑性材料から成形するための改良された方法を有することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、本発明は、熱可塑性ゴルフボールコアを形成するための射出成形方法であり、成形コアからトリミングされる過剰ポリマー(ポリマートリム)は、製造されたコアの重量の15重量%未満である。
【0013】
別の態様において、本発明は、層をゴルフボールの一部の上にオーバーモールディングするための射出成形装置を提供し、本発明の装置を用いてゴルフボールまたはゴルフボール部品を成形する方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、熱可塑性ゴルフボールを形成するための射出成形方法であり、前記方法は、熱可塑性材料をその融点より高い温度に加熱する工程と、ゴルフボール金型に供給されて金型に堆積されるまで熱可塑性材料の前記温度を維持する工程とを含む。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、エチレン酸コポリマーイオノマーを含む熱可塑性ゴルフボールを形成するための射出成形方法であり、前記方法は、エチレン酸コポリマーイオノマー組成物を少なくとも約405°F〜約550°Fの温度でゴルフボール金型内に射出成形する工程を含み、前記イオノマーを前記金型に送る導管は、前記イオノマーを少なくとも約405°F〜約550°Fの温度に維持するための外部熱源を含む。
【0016】
さらに別の態様において、本発明の方法から得られるゴルフボールが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書においての定義は、別途、特定の場合に限定されない限り、本明細書の全体にわたって用いられる用語に適用される。
【0018】
用語が本明細書に用いられる時の「ポリマートリム」は、以下の過剰な熱可塑性樹脂、すなわち、(1)ダイを通して射出し、導管を通してゴルフボール金型に送るために十分に溶融または軟化された、過剰な熱可塑性樹脂、(2)金型内に入っていないが、それにもかかわらず、成形された材料と同じ熱履歴を有する、過剰な熱可塑性樹脂、(3)有用な成形されたボールまたはボールの一部を得るために成形コアまたは層から何らかの手段によって切削または除去されなければならない、過剰な熱可塑性樹脂について説明する。
【0019】
本明細書中で用いられるとき、単独でまたは誘導体の形の用語「(メタ)アクリル」は、「アクリル、メタクリル、またはアクリルとメタクリルとの混合物」を意味する。例えば、本明細書中で用いられるとき、「アルキル(メタ)アクリレート」は、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、もしくはアルキルアクリレートとアルキルメタクリレートとの混合物を指す。
【0020】
用語「有限量」および「有限値」は、ゼロに等しくない量を指す。
【0021】
用語「約」は量、サイズ、調合物、パラメータおよび他の量および特徴が厳密でなく、厳密である必要がなく、およそであってもよく、および/または望ましい場合、より大きいか、またはより小さくてもよいことを意味し、許容差、換算係数、四捨五入、測定誤差等、当業者に公知の他の要因を意味する。一般に、量、サイズ、調合物、パラメータまたは他の量もしくは特徴は、このようなものであると特に記載されるかどうかにかかわらず、「約」または「およそ」である。
【0022】
1つの実施態様において、本発明は、熱可塑性ポリマーを金型内に射出することによってゴルフボールコアまたは層を成形するための方法である。熱可塑性ゴルフボールおよびゴルフボールの一部を成形するためのこの改良された方法は、大規模な製造のために適している。本発明の方法は、成形コアまたは層の周りのポリマートリムの生産を成形プロセスにおいて低減、最小化、または本質的に除く。例えば、本発明の実施において、ポリマートリムは、熱可塑性コアの重量の約15重量%未満に低減される。好ましくは、ポリマートリムの重量は、熱可塑性コアの約10重量%未満、より好ましくは熱可塑性コアの約5重量%未満である。特に好ましい実施態様において、本発明の方法を用いて生じたポリマートリムは、製造された熱可塑性ポリマーコアの1重量%未満である。ゴルフボールコア/マントルの過剰なポリマートリムの完全な除去が最も好ましい。
【0023】
射出成形用金型は、マニホールドまたはボディを備える。また、金型は、コア、ボール、またはボールの一部の望ましいサイズによって造形される1つ以上のキャビティを備える。溶融材料は、キャビティ内への開口または入口を有するランナーまたは流路経由でマニホールドを通して金型キャビティに運ばれる。金型キャビティが熱可塑性材料の融点または加工温度よりかなり低い温度に保持されるように、キャビティは、例えば、水ジャケットなどの冷却手段によって冷却されてもよい。ゴルフボールは球形であるので、射出成形用金型は典型的に、各々が半球状金型キャビティを備える、2つの対称半割れを有する。金型の半割れは、分割線に沿って分離する。分割線の位置は、ボールまたは部品の「赤道(equator)」と称されることがある。次に、「北および南極」は、分割線または赤道を横断する面から最も遠いボールまたは部品上にそれらの点を定める。
【0024】
本発明の方法において有用な射出成形用金型は、金型キャビティへのポリマーの流れを遮断するための1つ以上の弁ゲートを備える。弁ゲートは典型的に、金型キャビティ内へのポリマーの流れを阻止するピンを備える。弁ゲートを金型キャビティのできる限り近くに置くことで、成形後に部品に付着されたままであるランナーの長さが短くなることによって、ポリマートリムが最小になる。また、代わりの熱ゲートの除去は、成形品内の容認できないボイドを形成する危険を低減する。
【0025】
本発明の方法において、溶融熱可塑性ポリマーは、半径流路であるランナーまたは流路を通して金型キャビティに供給される。半径流路が層流を促進し、従って、ポリマーの流路中のデッドスポットまたは高剪断の鋭いコーナーなどの乱流を避ける。乱流は、溶融ポリマーがより長い時間滞留する「高温スポット」を生じることがあるので、望ましくない。ポリマーの熱履歴の均一性は、特に熱可塑性材料が吸湿性であるとき、完成ゴルフボールの一定した最適な性質を維持するために重要である。好ましくは、流路は、熱可塑性材料にかかる剪断が1000sec-1以下であるようにサイズを定められ、造形される。当業者は、溶融材料の粘度および流量または圧力もまた、剪断速度に影響を与えることを認識している。
【0026】
好ましくは、本発明の方法において、マニホールドおよびポリマー流路の温度は、熱可塑性ポリマーのために用いられるプロセス温度の20°F以内に制御される。また、好ましくは、マニホールドおよびポリマー流路はヒーターを用いて加熱される。より好ましくは、ヒーターは、ポリマー流路と交差しないように配置される。このようにして、高温スポットはさらに避けられる。弁ゲートおよび熱マニホールドおよび/または熱ランナーの使用によって、溶融熱可塑性材料は、金型を充填するために用いられるまで溶融状態のままであり得るが、他方、金型キャビティ内の材料が冷却して固体成形ボールまたはボールの一部を形成する。
【0027】
本発明の方法を用いて球形ゴルフボールコアを形成するとき、金型の一方の半割れにだけ弁ゲートおよび熱マニホールドおよび/または熱ランナーを提供すれば十分である。これは、ランナーの入口が典型的に、金型キャビティの赤道に沿って配置されるからである。一般に、ヒーターを備える金型の半割れが固定され、金型の他方の半割れが完成部品を出すために取り外し可能である。
【0028】
特定の改造は、熱可塑性材料で球をオーバーモールドして中間層またはマントルを形成するかまたはカバーを形成する方法の使用を容易にする。例えば、オーバーモールドされる球は通常、北極および南極の方向から金型内へ延在するピンによってキャビティ内の所定の位置に保持される。コアまたは中心の中心点が、オーバーモールドされたコアまたは中心の中心点にできる限り近いように、金型内へのポリマーの流れが球をピンから移動させないのがよい。これを達成するために、ランナーの入口もまた典型的に、金型キャビティの北極および南極にかまたはその近傍に配置される。従って、金型の両方の半割れは、弁ゲートおよび熱マニホールドおよび/または熱ランナーを必要とする。さらに、本発明のオーバーモールド方法は、熱通路をその2つの半割れの間に有する金型を提供することによって容易にされる。熱通路の目的は、金型の一方の半割れの流路から金型の他方の半割れの流路に通過する時に溶融熱可塑性材料の温度を好ましくはその加工温度の20°F以内に維持することである。熱通路は好ましくは便宜上、可撓性であり、その結果、金型の半割れを分離してオーバーモールドされたボールまたは部品を取り出すとき、それは金型から取り外されるかまたは分解される必要がない。可撓性の熱通路は市販されている。
【0029】
ゴルフボールに有用である熱可塑性材料は好ましくは、約80kD〜約500kDの範囲の重量平均分子量を有する。適した熱可塑性材料には、ポリウレタン;ポリ尿素;ポリ−エーテル−エステル;ポリ−アミド−エーテル;ポリエーテル−尿素;ペンシルベニア州、フィラデルフィアのアトフィナ・ケミカルズ社(Atofina Chemicals, Inc.,Philadelphia,PA)から入手可能なポリエーテル−ブロック−アミドベースのPEBAXTMブロックコポリマー;スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマー等;EPDM;ポリアミド(オリゴマーおよびポリマー);ポリエステル;HDPE、LDPE、LLDPE、PP、E/Pコポリマー等のポリオレフィン.;酢酸ビニル、アルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリル酸、エポキシ官能化モノマー、CO、マレイン酸、マレインエステル、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル等の様々なコモノマーとのエチレンコポリマー;共重合またはグラフトのどちらかによって無水マレイン酸、エポキシ官能価等を有する官能化ポリマー;メタロセン触媒PE、PPおよびエチレンコポリマー;熱硬化性エラストマーの微粉砕粉末;ポリスチレンおよびコポリマー等、本技術分野に公知であるポリマーのこれらのクラスなどがあるがこれらに限定されない。
【0030】
好ましい熱可塑性樹脂には、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、エラストマーポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、エチレンコポリマー、無水物改質エチレンまたはプロピレンホモポリマーおよびコポリマー、mPEなどがある。
【0031】
特定の熱可塑性樹脂をエラストマーとしてさらに特徴づけることができる。本明細書中で用いられるとき用語「エラストマー」は、1つ以上のエラストマー特徴を有するポリマーを指す。本明細書中で用いられるとき用語「エラストマー特徴」は、変形力を除去した時に、その元の寸法の1つ以上を全部あるいは部分的に回復し、完全な回復が反力によって妨げられる場合に力を及ぼし続けてその元の寸法の1つ以上を回復する、材料の性質を指す。
【0032】
エラストマーとしても特徴づけることができる適した熱可塑性樹脂の例には、例えば、ポリ−エーテル−エステル、ポリ−アミド−エーテル、ポリエーテル−尿素、PEBAXTMブロックコポリマー、エラストマーポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマーなどがある。
【0033】
好ましい熱可塑性エラストマーには、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、エラストマーポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンなどがある。コポリエーテルエステルは、とりわけ、米国特許第3,651,014号明細書、米国特許第3,766,146号明細書および米国特許第3,763,109号明細書に詳細に考察されている。好ましいコポリエーテルエステルポリマーは、ポリエーテルセグメントがテトラヒドロフランの重合によって得られ、ポリエステルセグメントがテトラメチレングリコールとフタル酸との重合によって得られるコポリエーテルエステルポリマーである。より多くのポリエーテル単位がコポリエーテルエステルに導入されるほど、ポリマーはより軟質になる。
【0034】
また、コポリエーテルアミドは、例えば米国特許第4,331,786号明細書に記載されているように本技術分野に公知である。それらは、硬質ポリアミドセグメントおよび軟質ポリエーテルセグメントの直鎖の規則鎖からなる。
【0035】
エラストマーポリオレフィンは、エチレンおよび高級第一オレフィン、例えばプロピレン、ヘキセン、オクテンおよび任意選択的に1,4−ヘキサジエンおよびまたはエチリデンノルボルネンまたはノルボルナジエンからなるポリマーである。エラストマーポリオレフィンは、無水マレイン酸で官能化されうる。
【0036】
熱可塑性ポリウレタンは、硬質ブロックおよび軟質エラストマーブロックからなる直鎖またはわずかに鎖分岐状のポリマーである。それらは、軟質ヒドロキシ末端エラストマーポリエーテルまたはポリエステルをメチレンジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)などのジイソシアネートと反応させることによって製造される。これらのポリマーは、グリコール、ジアミン、二酸、またはアミノアルコールで鎖延長されうる。イソシアネートとアルコールとの反応生成物はウレタンと呼ばれ、これらのブロックは、比較的硬質であり、高融点である。これらの硬質高融点ブロックは、ポリウレタンの熱可塑性の性質に関与している。
【0037】
ブロックスチレンジエンコポリマーは、ポリスチレン単位およびポリジエン単位からなる。ポリジエン単位は、ポリブタジエン、ポリイソプレン単位またはこれらの2つのコポリマーから誘導される。コポリマーの場合、ポリオレフィンを水素化して飽和ゴム状主鎖セグメントを生じさせることができる。これらの材料は通常、SBS、SISまたはSEBS熱可塑性エラストマーと称され、それらはまた、無水マレイン酸で官能化されうる。
【0038】
イオノマーは、本発明の方法に使用するための好ましい熱可塑性材料である。特に好ましいのは、アルファオレフィン、特にエチレン、C3-8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、特に(メタ)アクリル酸、コポリマーのイオノマーである。酸コポリマーは好ましくは、酸グラフトコポリマーではなく「直接」酸コポリマーであり、そこで酸モノマーは、すでに形成されたポリマーと反応させられるかまたは「上にグラフトされる」。それらは、任意選択的に、第3の軟化モノマーを含有してもよい。「軟化」とは、結晶性が破損される(ポリマーがより結晶性を低くされる)ことを意味する。適した「軟化」コモノマーは、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有する、アルキル(メタ)アクリレートから選択されたモノマーである。
【0039】
酸コポリマーは、アルファオレフィンがエチレンであるとき、E/X/Yコポリマーとして説明することができ、そこでEがエチレンであり、Xがα,β−エチレン性不飽和カルボン酸であり、Yが軟化コモノマーである。Xは好ましくは、ポリマーの約3〜約30(好ましくは約4〜約25、より好ましくは約5〜約20)重量%において存在し、Yは好ましくは、ポリマーの30(あるいは約3〜約25または約10〜約23)重量%までの有限量において存在する。
【0040】
高レベルの酸(X)とのエチレン−酸コポリマーは、モノマー−ポリマー相分離のために連続重合装置内で調製することが難しい。しかしながら、この困難は、米国特許第5,028,674号明細書に記載された「共溶媒技術」を使用することによって、または低級酸とのコポリマーを調製することができる圧力よりもやや高い圧力を使用することによって避けることができる。
【0041】
好ましい酸コポリマーには、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーがある。また、それらには、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソ−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/エチル(メタ)アクリレートターポリマーなどがある。
【0042】
E/X/Yコポリマーは、有用な物理的性質をもたない処理しにくい(溶融加工性でない)ポリマーをもたらさないいずれかのレベルに中和されてもよい。好ましくは、E/X/Yコポリマーの酸部分の約15〜約80%、より好ましくは約50〜約75%が、好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンを含む中和剤によって中和される。高い酸レベル(例えば15重量%超)を有する酸コポリマーのために、中和のレベルは好ましくは、溶融加工性を保持するために、やや低い側である。
【0043】
イオノマーを製造する時に有用な好ましいカチオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、または亜鉛、あるいはこれらのカチオンの2つ以上の組合せなどがあるがそれらに限定されない。
【0044】
イオノマーは、任意選択的に、1つ以上の有機酸を配合されてもよい。適した有機酸は、脂肪族一官能性有機酸、特に、36個未満の炭素原子を有する脂肪族、一官能性有機酸である。特に有用な有機酸には、好ましさの増す順に、C4〜C34、C6〜C26、C6〜C18、およびC6〜C12有機酸などがある。酸は、飽和、単独不飽和、または多不飽和であってもよい。同様に適しているのは、有機酸の塩、および有機酸と有機酸塩との組合せである。塩は、多種多様なカチオンのどれか、好ましくはバリウム、リチウム、ナトリウム、亜鉛、ビスマス、カリウム、ストロンチウム、マグネシウムまたはカルシウムもしくはこれらのカチオンの2つ以上の組合せを含有してもよい。本発明に有用な有機酸の特定の例には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸およびリノール酸などがある。
【0045】
有機酸(および/または塩)が、酸コポリマーまたはイオノマーと溶融ブレンドされている時に低揮発性を有することが有用である場合があるが、ブレンドを高レベルに、特に100%付近または100%において中和するとき、揮発性は限定的ではないことがわかっている。100%の中和において(コポリマーおよび有機酸中のすべての酸が中和された)、揮発性はもはや全く問題ではない。従って、より低い炭素含有量を有する有機酸を使用することができる。しかしながら、有機酸(および/または塩)が不揮発性および非移行性であることが好ましい。不揮発性とは、それらが薬剤と酸コポリマーとを溶融ブレンディングする温度において揮発しないことを意味する。非移行性とは、薬剤が通常の貯蔵条件(周囲温度下でポリマーの表面にブルームしないことを意味する。好ましくは、有機酸(および/または塩)は、イオン配列を有効に可塑化し、および/またはエチレン結晶性をエチレン、C3-8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸コポリマーまたはそれらのイオノマーから除去する薬剤である。
【0046】
1つ以上の有機酸が熱可塑性材料中に存在しているとき、それらは、酸の形、塩の形で、または酸と塩との混合物としてポリマーに添加されてもよい。押出機加工の高い温度および剪断速度によって、あるいはより穏やかな条件においてより長い時間にわたって、有機酸の中和のレベルとイオノマーの中和のレベルとの間に、ある程度、平衡があることは当業者には明らかであろう。従って、ブレンドのために望ましい全中和のレベルに応じて、酸コポリマーを過剰に中和し、有機酸をその酸の形で添加することによって逆滴定することが可能である。逆に、完全に中和された有機酸を、中和のレベルがイオノマーと有機酸とのブレンドのために望ましいレベルよりも低い酸コポリマーに添加することが可能である。また、酸コポリマーの中和と有機酸の中和とを各々、熱可塑性材料の所望の最終レベルに等しいように、ブレンドする前に調節することができる。他の変更が可能であるが、特定の状況下でどの方法が望ましい場合があるか決定することができることを当業者は理解するであろう。また、当業者は、カチオンの所望のバランスを同様な主要物および方法を用いて達成できることを認識する。
【0047】
また、本発明に使用するための好ましいイオノマー組成物には、米国特許出願第10/108,793号明細書およびそれに対する優先権を請求する出願に記載されているような、軟質および弾性エチレンコポリマーがある。簡単に言えば、軟質弾性熱可塑性材料は、直径1.50〜1.54インチである球に形成されたとき、少なくとも0.785の反発係数(COR)を有する。CORは、初期速度が測定されるポイントから3フィートに配置された鋼プレートに対して125フィート/秒の初期速度において球を発射し、プレートからの弾性反撥の速度を初期速度によって割ることによって測定される。さらに、軟質弾性熱可塑性材料は、100以下のアッティ(Atti)圧縮を有する。特に好ましいのは、0.790、0.795、0.800、0.805、0.810、0.815、0.820、0.825、0.830、0.835以上のCORおよび95、90、85、80、75以下のアッティ圧縮を有する材料である。本発明の実施において用いられるレジリエンスおよび圧縮の特定の組合せは、主に、所望のゴルフボールのタイプ(すなわち、ワンピース、ツーピース、スリーピース、または多層)、および得られたゴルフボールのために望ましい性能のタイプに依存している。
【0048】
また、本発明は、エチレン酸コポリマーイオノマーを含む熱可塑性ゴルフボールを形成するための射出成形方法を提供し、前記方法は、エチレン酸コポリマーイオノマー組成物を少なくとも約405°F〜約550°Fの温度でゴルフボール金型内に射出する工程を含み、そこでイオノマーを金型キャビティに送る導管が、少なくとも約405°F〜約550°Fの温度にイオノマーを維持するために加熱される。
【0049】
また、熱可塑性材料は、ゴルフボールに有用である1つ以上の添加剤を含有してもよい。例えば、前述の成分のブレンドにさらに濃度を与えるために1つ以上の充填剤が含有されてもよく、選択は、望ましいゴルフボールのタイプ(すなわち、ワンピース、ツーピース、スリーピースまたは中間層)に依存している。一般に、充填剤は、約4グラム/立方センチメートル(g/cc)以上、好ましくは5g/cc以上の濃度を有する無機材料であり、組成物の全重量に基づいて0〜約60重量%の間の量において存在する。有用な充填剤の例には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ケイ酸鉛、炭化タングステン、酸化スズなどがある。充填材料が非反応性またはほとんど非反応性であるのが好ましい。また、熱可塑性材料の物理的性質にほとんどまたは全く悪影響を及ぼさないのが好ましく、例えば、充填剤が圧縮を強めたり増したりせず、反発係数を著しく低減したりしないことが好ましい。
【0050】
本発明の実施に有用な他の任意の添加剤には、充填材料(例えば、ZnO)とエチレンコポリマー中の酸部分との間の反応を防ぐのを助ける、酸コポリマーワックス(例えば、2,040Dの数平均分子量を有するエチレン/16〜18%アクリル酸コポリマーであると考えられるAllied wax AC143)がある。他の任意の添加剤には、増白剤として使用されるTiO2、光学光沢剤、界面活性剤、加工助剤等がある。
【0051】
本発明の方法によって製造されたゴルフボールもまた、提供される。ボール、またはそのコア、またはそのカバー、もしくはその中間層またはマントルの1つ以上が、もし存在して、本発明の方法によって製造される場合、ワンピースゴルフボールおよびツーピース、スリーピース、および多層ゴルフボールが含まれる。
【0052】
本発明の好ましい実施態様のいくつかが説明され、上に具体的に例示されたが、本発明をこのような実施態様に限定することを意図しない。以下の特許請求の範囲に示されるような本発明の範囲および精神から逸脱せずに様々な変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの半割れを含む射出成形用金型であって、各半割れが、マニホールドと、射出成形用金型の他方の半割れと結合された時にゴルフボールまたはゴルフボールの一部を製造するように造形された、極を有する半球状金型キャビティと、ゴルフボールの球状部分を保持するためのピンと、溶融熱可塑性材料を前記金型キャビティに搬送するための導管と、溶融熱可塑性材料を前記金型キャビティに入れるための、前記極にまたはその近傍に配置された入口と、前記金型キャビティへの前記溶融熱可塑性材料の流れを遮断するための弁ゲートと、前記熱可塑性材料を、それが前記導管内にある間、加工温度に維持するための熱源とを含み、前記2つの半割れが、可撓性の熱通路によって接続される、射出成形用金型。
【請求項2】
前記導管が半径流路である、請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記加熱源が、前記導管と交差しないように配置された1つ以上のヒーターである、請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記金型キャビティが冷却される、請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記金型キャビティが水ジャケットによって冷却される、請求項4に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
層をゴルフボールの一部の上に射出成形するための方法であって、請求項1に記載の射出成形用金型とゴルフボールの一部とを提供する工程と、前記ピンを用いてゴルフボールの前記一部を前記金型キャビティ内の所望の位置に固定する工程と、前記溶融熱可塑性材料を導管を通して前記金型キャビティに搬送する工程と、前記熱源を使用して、前記熱可塑性材料を、それが前記導管内にある間、前記加工温度に維持する工程と、前記溶融熱可塑性材料を前記金型キャビティ内に入れる工程と、前記弁ゲートを閉じて、前記金型キャビティへの前記溶融熱可塑性材料の流れを遮断する工程と、を含む方法。
【請求項7】
前記層が、スリーピースまたは多層ゴルフボールの中間層またはマントルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記層がゴルフボールのカバーである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記熱可塑性材料がイオノマーと、任意選択的に、有機酸または有機酸の塩とを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性材料が、0.790以上の反発係数および95以下のアッティ圧縮を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熱可塑性材料が、充填剤、酸コポリマーワックス、増白剤、光学光沢剤、界面活性剤、または加工助剤の内の1つ以上をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法によって得られるゴルフボール。
【請求項13】
熱可塑性ゴルフボールコアを形成する工程と、過剰ポリマーを前記コアからトリミングする工程とを含み、過剰ポリマーの重量が、前記コアの重量の15%未満である、射出成形方法。
【請求項14】
前記過剰ポリマーの重量が、前記コアの重量の5%未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記過剰ポリマーの重量が、前記コアの重量の1%未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項13の方法によって得られるゴルフボール。
【請求項17】
熱可塑性材料をその融点より高い温度に加熱する工程と、ゴルフボール金型に供給されるまで前記熱可塑性材料の前記温度を維持する工程とを含む、熱可塑性ゴルフボールを形成するための射出成形方法。
【請求項18】
請求項17の方法によって得られるゴルフボール。
【請求項19】
エチレン酸コポリマーイオノマーを含む熱可塑性ゴルフボールを形成するための射出成形方法であって、エチレン酸コポリマーイオノマー組成物を少なくとも約405°F〜約550°Fの温度でゴルフボール金型内に射出成形する工程を含み、前記イオノマーを前記金型に送る導管が、前記イオノマーを少なくとも約405°F〜約550°Fの温度に維持するための外部熱源を含む、方法。
【請求項20】
請求項19の方法によって得られるゴルフボール。
【請求項21】
マニホールドとポリマー流路とを含む射出成形装置を用いて熱可塑性ゴルフボールコアまたは層を製造し、成形されたボールまたはボールの一部からのポリマートリムを最小にするための方法であって、熱可塑性ポリマーを、それが前記成形装置内の前記ポリマー流路を通って流れることができる加工温度に加熱する工程と、前記マニホールドおよび前記ポリマー流路を加熱する前記成形装置のためのヒーターを提供する工程であって、前記ヒーターが、前記ポリマー流路と交差しないように配置される、工程と、前記ポリマー流路の交点が、明確なコーナーを有する鋭い回転角をもたらさないように半径流路を提供する工程と、金型へのポリマーの流れを制御するための弁ゲートを提供する工程と、前記マニホールドおよび流路の温度を前記ポリマー加工温度よりも20°F低い温度から前記ポリマー加工温度よりも約20°F高い温度の範囲内に制御する工程と、前記熱可塑性ポリマーにかかる剪断が1000sec-1以下であるようにサイズを定められる流路を有する装置を提供する工程と、を含む方法。
【請求項22】
請求項21の方法によって得られるゴルフボール。

【公表番号】特表2008−510592(P2008−510592A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530218(P2007−530218)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/030630
【国際公開番号】WO2006/024036
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】