説明

サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブ、並びにスライダ実装方法

【課題】多数のスライダパッドを有するスライダとの接合信頼性を向上させることができるサスペンション用基板を提供する。
【解決手段】本発明によるサスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられたバネ性材料層11と、絶縁層10の他方の面に設けられ、互いに隣接する第1配線13と第2配線14とを有する複数の配線12とを備えている。第1配線13に、対応するスライダパッド44に接続される第1配線パッド15が接続され、第2配線14に、対応するスライダパッド44に接続される第2配線パッド15が接続されている。第1配線パッド15は、スライダパッド44に向かって徐々に細くなり、第2配線パッド15は、スライダパッド44に向かって徐々に太くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブ、並びにスライダ実装方法に係り、とりわけ、多数のスライダパッドを有するスライダとの接合信頼性を向上させることができるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブ、並びにスライダ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハードディスクドライブ(HDD)は、データが記憶されるディスクに対してデータの書き込みおよび読み取りを行うスライダが実装されるサスペンション用基板を備えている。このうちサスペンション用基板は、バネ性金属層と、バネ性金属層に絶縁層を介して積層された複数(例えば、4本〜6本)の配線とを有している。スライダは、略直方体状のスライダ本体と、このスライダ本体の一側面に設けられたヘッドと、このヘッドと同一側面に設けられ、ヘッドに接続された複数のスライダパッドとを有している。また、サスペンション用基板の各配線には、スライダパッドに対応して、上面に金めっきが施された配線パッドが設けられており、スライダパッドと配線パッドとが、半田接合されている。このようにして、スライダパッドと対応する配線が電気的に接続され、各配線に電気信号を流すことにより、ディスクに対してデータの書き込みまたは読み込みを行うようになっている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−120288号公報
【特許文献2】特開2007−58999号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0274005号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、HDDの高密度化に伴い、ヘッドの高機能化が進み、スライダパッドが、8、10、12個等と増加することが予測されている。ここで、従来のスライダパッドのサイズを維持してスライダパッドの個数を増やす場合、スライダのサイズは大きくなる。しかしながら、この場合、サイズが大きくなったスライダを、ディスクに対して、わずかな間隙を維持しながら保持することは困難である。
【0005】
このため、スライダのサイズを変えることなく、スライダのスライダパッド数を増加するためには、スライダパッドの幅を小さくするという方法が考えられる。しかしながら、この場合、各配線に設けられる配線パッドの幅が小さくなる。このことにより、各配線パッドと半田との接合面積が小さくなり、半田接合する際、溶融した半田が配線パッドからはみ出して、配線パッド間で短絡が発生するという問題がある。
【0006】
このような問題に対処するために、半田接合に用いる半田の量を低減させることが考えられる。ここで、一般に、各配線パッドに接合された半田に、金めっきから金が拡散されて、半田とパッドの接合界面に、脆いAu−Sn金属間結合が形成される。ところが、上述したように、スライダパッドと配線パッドとを接合する半田の量を減少させる場合、半田に対して拡散される金の相対濃度が高くなる。このため、Au−Sn金属間結合が形成され易くなり、半田接合の信頼性が低下するという問題がある。
【0007】
一方、配線パッド上の金めっきの厚みを低減するという方法も考えられる。しかしながら、配線パッド上の金めっきは、製造工程簡素化の観点から、外部接続基板と接続されるテール側の端子の金めっきと同時に施される。また、このテール側の端子では、Au−Au間の拡散接合を行う場合もあり、その場合には、外部接続基板との接続の信頼性を確保するために、テール側の端子の金めっきは、所定の厚さとなるように施さなければならない。このため、配線パッド上の金めっきの厚さを低減することは困難である。
【0008】
また、特許文献3においては、スライダパッドの個数を増大させることを目的として、裏面にスライダパッドが設けられたスライダが示されている。各スライダパッドには、スライダの側面から延びる配線が接続されて、スライダのヘッドに接続されるようになっている。しかしながら、この場合、スライダの構造が複雑になり、スライダの側面から裏面に延びる配線を加工する工程が追加され、スライダの製造工程が煩雑になるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、多数のスライダパッドを有するスライダとの接合信頼性を向上させることができるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびスライダ実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、側面に設けられた複数のスライダパッドを含むスライダが実装されるサスペンション用基板において、絶縁層と、絶縁層の一方の面に設けられたバネ性材料層と、絶縁層の他方の面に設けられ、互いに隣接する第1配線と第2配線とを有する複数の配線と、を備え、第1配線に、対応するスライダパッドに接続される第1配線パッドが接続され、第2配線に、対応するスライダパッドに接続される第2配線パッドが接続され、第1配線パッドは、スライダに向かって徐々に細くなっており、第2配線パッドは、スライダに向かって徐々に太くなっていることを特徴とするサスペンション用基板である。
【0011】
本発明は、第1配線は、第1配線本体部分と、この第1配線本体部分と第1配線パッドとの間に介在された第1スライダ側部分とを有し、第1配線パッドは、第1配線の第1スライダ側部分よりも幅が広い第1配線側端部を有していることを特徴とするサスペンション用基板である。
【0012】
本発明は、第1配線の第1スライダ側部分は、第1配線本体部分よりも狭い幅を有しており、第2配線は、第2配線本体部分と、この第2配線本体部分と第2配線パッドとの間に介在された第2スライダ側部分とを有し、第2配線の第2スライダ側部分は、第2配線本体部分よりも狭い幅を有していることを特徴とするサスペンション用基板である。
【0013】
本発明は、複数の配線は、複数の第1配線と複数の第2配線とからなり、第1配線と第2配線は、交互に配置されていることを特徴とするサスペンション用基板である。
【0014】
本発明は、第1配線パッドは、第2配線パッドよりも、対応するスライダパッドから離れる方向に延びていることを特徴とするサスペンション用基板である。
【0015】
本発明は、上述したサスペンション用基板を有することを特徴とするサスペンションである。
【0016】
本発明は、上述したサスペンションと、このサスペンションに実装され、側面に設けられたスライダパッドを含むスライダとを有し、第1配線パッドおよび第2配線パッドと、対応するスライダパッドとの間に、半田接合部が形成され、第1配線パッドと対応するスライダパッドとの間に形成された半田接合部は、第2配線パッドと対応するスライダパッドとの間に形成された半田接合部よりも、スライダパッドから離れる方向に延びていることを特徴とするヘッド付サスペンションである。
【0017】
本発明は、上述したヘッド付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブである。
【0018】
本発明は、サスペンション用基板に、スライダ本体と、スライダ本体の側面に設けられた複数のスライダパッドとを含むスライダを実装するスライダ実装方法において、絶縁層と、絶縁層の一方の面に設けられたバネ性材料層と、絶縁層の他方の面に設けられ、互いに隣接する第1配線と第2配線とを有する複数の配線と、を備えたサスペンション用基板であって、第1配線に、対応するスライダパッドに接続される第1配線パッドが接続され、第2配線に、対応するスライダパッドに接続される第2配線パッドが接続され、第1配線パッドは、スライダパッドに向かって徐々に細くなっており、第2配線パッドは、スライダパッドに向かって徐々に太くなっているサスペンション用基板を準備する工程と、サスペンション用基板に、スライダ本体を接合する工程と、第1配線パッドおよび第2配線パッドを、対応するスライダパッドに半田接合する工程と、を備えたことを特徴とするスライダ実装方法である。
【0019】
本発明は、半田接合する工程は、第1配線パッドおよび第2配線パッドに、半田部材を載置する工程と、載置された半田部材にレーザ光を照射して半田部材を溶融させる工程とを有することを特徴とするスライダ実装方法である。
【0020】
本発明は、半田部材を載置する工程において、第1配線パッドに載置される半田部材の位置は、第2配線パッドに載置される半田部材の位置よりも、スライダパッドから離れていることを特徴とするスライダ実装方法である。
【0021】
本発明は、半田接合する工程において、第1配線パッドおよび第2配線パッドに、溶融された半田部材を吐出することを特徴とするスライダ実装方法である。
【0022】
本発明は、第1配線パッドに吐出される半田部材の位置は、第2配線パッドに吐出される半田部材の位置よりも、スライダパッドから離れていることを特徴とするスライダ実装方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多数のスライダパッドを有するスライダとの接合信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板の一例を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板のヘッド部の一例を示す詳細図。
【図3】図3は、本発明の実施の形態において、スライダが実装されたサスペンション用基板の一例を示す断面図。
【図4】図4は、本発明の実施の形態におけるサスペンションの一例を示す平面図。
【図5】図5は、本発明の実施の形態におけるヘッド付サスペンションの一例を示す平面図。
【図6】図6は、本発明の実施の形態におけるハードディスクドライブの一例を示す平面図。
【図7】図7は、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板の一例を示す断面図。
【図8】図8(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の実施の形態におけるスライダ実装方法を示す図。
【図9】図9は、本発明の変形例におけるスライダ実装方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1乃至図8を用いて、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブ、並びにスライダ実装方法について説明する。
【0026】
図1に示すように、サスペンション用基板1は、後述するスライダ42(図3および図5参照)が実装されるヘッド部2から図示しない外部接続基板が接続されるテール部3に延びるように形成されている。ここで、スライダ42は、図3に示すように、略直方体状のスライダ本体43と、このスライダ本体43の側面に設けられたヘッド(図示せず)と、このヘッドと同一側面に設けられ、ヘッドに接続された複数のスライダパッド44とを有している。このうち、ヘッドおよびスライダパッド44は、保護膜45に埋設されている。
【0027】
図1および図3に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられ、導電性を有するバネ性材料層(金属支持基板)11と、絶縁層10の他方の面に設けられ、互いに隣接する第1配線13と第2配線14とを有する複数(例えば、8本以上)の配線12とを備えている。本実施の形態においては、絶縁層10上に、10本の配線12が設けられ、これらの配線12は、図2に示すように、5本の第1配線13と、5本の第2配線14とからなり、第1配線13と第2配線14とが交互に配置されている。
【0028】
図2に示すように、各第1配線13は、テール部3側に設けられた図示しない第1配線本体部分と、この第1配線本体部分のスライダ42側(後述する第1配線パッド15側)に設けられ、第1配線本体部分よりも狭い幅を有する第1スライダ側部分13aとを有している。同様に、各第2配線14は、テール部3側に設けられた図示しない第2配線本体部分と、この第2配線本体部分のスライダ42側(後述する第2配線パッド16側)に設けられ、第2配線本体部分よりも狭い幅を有する第2スライダ側部分14aとを有している。なお、第1スライダ側部分13aおよび第2スライダ側部分14aは、配線スペースや配線設計仕様等に応じて、任意の長さとすることができる。
【0029】
サスペンション用基板1のヘッド部2において、各第1配線13のスライダ側部分13aに、対応するスライダパッド44に接続される第1配線パッド15が接続されている。各第1配線パッド15は、第1配線13の第1スライダ側部分13aよりも幅が広い第1配線側端部15aを有し、スライダパッド44(図3参照)に向かって徐々に細くなっている。ここで、第1配線パッド15は、第1配線側端部15aからスライダパッド44側に延びている部分であって、対応するスライダパッド44との間に形成される後述の第1半田接合部46と接合される部分をいう。
【0030】
各第2配線14の第2スライダ側部分14aに、対応するスライダパッド44に接続される第2配線パッド16が接続されている。各第2配線パッド16は、第2スライダ側部分14aと略同一の幅からなる第2配線側端部16aを有し、スライダパッド44(図3参照)に向かって徐々に太くなっている。ここで、第2配線パッド16は、第2配線側端部16aからスライダパッド44側に延びている部分であって、対応するスライダパッド44との間に形成される後述の第2半田接合部47と接合される部分をいう。
【0031】
各第1配線パッド15は、第2配線パッド16よりも、対応するスライダパッド44から離れる方向に延びている。すなわち、図2に示す本実施の形態においては、各第1配線パッド15は、スライダパッド44の半田接合面に略垂直な方向に、第2配線パッド16よりも長く、第1配線13側に延びている。
【0032】
各第1配線パッド15および各第2配線パッド16上に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきが順次施されためっき層17が形成されている。各めっき層17は、図3に示すように、配線パッド15、16上から、対応する配線12(13、14)の露出している部分にまで延びている。このようにして、後述する保護層20により覆われることなく露出している配線12の部分と、各配線パッド15、16とが、腐食されることを防止している。
【0033】
絶縁層10には、図3に示すように、各配線12を覆う保護層20が設けられ、各配線12が腐食することを防止している。なお、図1および図2においては、図面を明瞭にするために、保護層20は省略されている。
【0034】
次に、各構成部材について詳細に述べる。
【0035】
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜30μm、とりわけ10μm〜20μmであることが好ましい。このことにより、バネ性材料層11と各配線12との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
【0036】
各配線12は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線12および配線パッド15、16の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線12および配線パッド15、16の厚さは、略同一の厚さとして、例えば1μm〜18μm、とりわけ5μm〜12μmであることが好ましい。このことにより、各配線12および配線パッド15、16の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。
【0037】
バネ性材料層11の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、好ましくはステンレスを用いることが好適である。バネ性材料層11の厚さは、10μm〜30μm、とりわけ15μm〜25μmであることが好ましい。このことにより、バネ性材料層11の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
【0038】
保護層20の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層20の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層20の厚さは、3μm〜30μmであることが好ましい。
【0039】
次に、図4により、本実施の形態におけるサスペンション31について説明する。図4に示すサスペンション31は、上述したサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1の後述するスライダ42(図5参照)が実装される面とは反対側の面に設けられ、スライダ42をディスク53(図6参照)に対して保持するためのロードビーム32とを有している。
【0040】
次に、図5により、本実施の形態におけるヘッド付サスペンション41について説明する。図5に示すヘッド付サスペンション41は、上述したサスペンション31と、サスペンション用基板1のヘッド部2に実装されるスライダ42とを有している。このうちスライダ42は、上述したように、アルチック(AlTiC)からなり、略直方体状に形成されたスライダ本体43と、このスライダ本体43の側面に設けられたヘッド(図示せず)と、このヘッドと同一側面に設けられ、ヘッドに接続された複数のスライダパッド44とを有している(図3参照)。このうち、ヘッドおよびスライダパッド44は、アルミナ(Al)からなる保護膜45に埋設されている。
【0041】
また、図3に示すように、第1配線パッド15と対応するスライダ42のスライダパッド44との間に、第1半田接合部46が形成されている。同様にして、第2配線パッド16と対応するスライダパッド44との間に、第2半田接合部47が形成されている。このようにして、各配線パッド15、16が、対応するスライダパッド44に半田接合されている。なお、第1半田接合部46は、第2半田接合部47よりも、対応するスライダパッド44から離れる方向に延びている。すなわち、図2に示すように、各第1半田接合部46は、スライダパッド44の半田接合面に略垂直な方向に、第2半田接合部47よりも長く、第1配線13側に延びている。
【0042】
次に、図6により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ51について説明する。図6に示すハードディスクドライブ51は、ケース52と、このケース52に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク53と、このディスク53を回転させるスピンドルモータ54と、ディスク53に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク53に対してデータの書き込みおよび読み込みを行うスライダ42を含むヘッド付サスペンション41とを有している。このうちヘッド付サスペンション41は、ケース52に対して移動自在に取り付けられ、ケース52にはヘッド付サスペンション41のスライダ42をディスク53上に沿って移動させるボイスコイルモータ55が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション41は、ボイスコイルモータ55にアーム56を介して取り付けられている。
【0043】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。初めに、図7を用いて、サスペンション用基板1の製造方法について説明する。
【0044】
まず、絶縁層10と、絶縁層10の一方の面に設けられた導電性を有するバネ性材料層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた配線材料層(図示せず)とを有する積層体(図示せず)を準備する。この積層体においては、バネ性材料層11および配線材料層は、めっきにより形成されていても良く、あるいは絶縁層10とバネ性材料層11および配線材料層とが互いに接着されてラミネートされていても良い。
【0045】
次に、サブトラクティブ法を用いて、配線材料層がエッチングされて、複数の配線12および配線パッド15、16が形成される。この場合、フォトファブリケーションの手法により、配線材料層上にパターン状のレジスト(図示せず)が形成され、レジストの開口部から、塩化第二鉄水溶液などの腐食液により配線材料層がエッチングされる。このようにして、第1配線13と第2配線14とを有する複数の配線12と、第1配線パッド15、および第2配線パッド16が形成される(図2参照)。その後、レジストは除去される。なお、配線12および配線パッド15、16は、アディティブ法により形成しても良い。
【0046】
次に、保護層20がパターン状に形成される。その後、絶縁層10、バネ性材料層11が、所望の形状にパターニングされ、各第1配線パッド15および各第2配線パッド16上、並びに各配線12の露出している部分に、ニッケルめっきおよび金めっきが順次施されてめっき層17が形成される。このようにして、サスペンション用基板1が得られる。
【0047】
次に、図4、図5、および図8を用いて、上述のようにして得られたサスペンション用基板1にスライダを実装する、本実施の形態におけるスライダ実装方法について説明する。
【0048】
まず、サスペンション用基板1の下面に、ロードビーム32が取り付けられ、図4に示すサスペンション31が得られる。
【0049】
次に、サスペンション用基板1のヘッド部2に、接着剤を用いてスライダ42のスライダ本体43が接合される(図8(a)参照)。
【0050】
次に、半田ボールボンディング法(SBB:Solder Ball Bonding)を用いて、各第1配線パッド15および各第2配線パッド16が、スライダパッド44に半田接合される。この場合、まず、各第1配線パッド15および各第2配線パッド16に形成されためっき層17上に、半田ボール(半田部材)60が載置される(図8(b)参照)。ここで、第1配線パッド15に載置される半田ボール60の位置は、第2配線パッド16に載置される半田ボール60の位置よりも、スライダパッド44から離れるように、半田ボール60が載置される。このことにより、第1配線パッド15のうちスライダパッド44側の細くなっている部分から、溶融した半田がはみ出すことを防止することができる。その後、載置された各半田ボール60にレーザ光61が照射されて、半田ボール60を溶融させる(図8(c)参照)。このことにより、各半田ボール60は、濡れ広がり、配線パッド15、16およびスライダパッド44に付着し、第1半田接合部46および第2半田接合部47が形成される(図8(d)参照)。このようにして、各第1配線パッド15および各第2配線パッド16が、対応するスライダパッド44に電気的に接続され、スライダ42が実装されたヘッド付サスペンション41が得られる(図5参照)。
【0051】
スライダ42が実装されたヘッド付サスペンション41がハードディスクドライブ51のケース52に取り付けられて、図6に示すハードディスクドライブ51が得られる。
【0052】
図6に示すハードディスクドライブ51においてデータの読み込みおよび書き込みを行う際、ボイスコイルモータ55によりヘッド付サスペンション41のスライダ42がディスク53上に沿って移動し、スピンドルモータ54により回転しているディスク53に所望のフライングハイトを保って近接する。このことにより、スライダ42とディスク53との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1のヘッド部2とテール部3との間を延びる各配線12により電気信号が伝送される。
【0053】
このように本実施の形態によれば、第1配線13と第2配線14が交互に配置され、各第1配線13に、スライダパッド44に向かって徐々に太くなる第1配線パッド15が接続されると共に、各第2配線14に、スライダパッド44に向かって徐々に細くなる第2配線パッド16が接続されている。このことにより、配線12の本数が多い場合(例えば、8本以上の場合)においても、第1配線13、第2配線14を、絶縁層10の同一面上に構成することができ、例えば、配線12同士が積層されるような多層構造となることを回避して、各配線12を配置することができる。また、スライダパッド44は、スライダ42のスライダ本体43の一側面に設けられている。このため、スライダ42の構造を複雑化させることなく、比較的多数のスライダパッド44に各配線12を接続することができ、製造コストを大幅に増加させることなく、サスペンション用基板1を容易に製造することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、各第1配線パッド15および各第2配線パッド16の表面積が小さくなることを抑制して、第1半田接合部46と第1配線パッド15との接合面積、および第2半田接合部47と第2配線パッド16との接合面積を確保することができる。このため、各スライダパッド44と各配線パッド15、16との間を接合するために用いる半田ボール60の量を確保して、半田接合部46、47に拡散される金の相対濃度が高くなることを抑え、各半田接合部46、47において、脆いAu−Sn金属間結合が形成されることを抑制することができる。この結果、多数(例えば、8個以上)のスライダパッド44を有するスライダ42との接合信頼性を向上させることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態によれば、第1配線パッド15の第1配線側端部15aは、第1配線13のスライダ側部分13aよりも幅が広くなっている。このことにより、対応するスライダパッド44と半田接合する際に、溶融した半田が、第1配線13のスライダ側部分13aに流出することを防止することができる。また、第2配線パッド16は、第2配線14の第2配線スライダ側部分14aに向かって、徐々に細くなっている。このことにより、対応するスライダパッド44と半田接合する際に、溶融した半田が、第2配線14のスライダ側部分14aに流出することを防止することができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板およびサスペンション用基板の製造方法は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、本実施の形態においては、半田ボールボンディング法を用いて、各第1配線パッド15および各第2配線パッド16に形成されためっき層17上に、半田ボール60を載置して、各半田ボール60にレーザ光61を照射して半田ボール60を溶融させる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図9に示すように、ソルダージェット法を用いて、半田吐出ヘッド62内において、レーザ光を照射する等により溶融された溶融半田部材63を、各第1配線パッド15および各第2配線パッド16のめっき層17上に吐出して、第1半田接合部46および第2半田接合部47を形成するようにしても良い。この場合、第1配線パッド15に吐出される溶融半田部材63の位置は、第2配線パッド16に吐出される溶融半田部材63の位置よりも、スライダパッド44から離れていることが好ましい。このことにより、第1配線パッド15のうちスライダパッド44側の細くなっている部分から、溶融半田部材63がはみ出すことを防止することができる。
【0058】
また、本実施の形態においては、第1配線パッド15の第1配線側端部15aが、第1配線13のスライダ側部分13aよりも幅が広くなっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1配線側端部15aは、スライダ側部分13aと略同一の幅であっても良い。この場合においても、第1半田接合部46と第1配線パッド15との接合面積、および第2半田接合部47と第2配線パッド16との接合面積を確保することができる。
【0059】
また、本実施の形態においては、第1配線13の第1スライダ側部分13aは、第1配線本体部分よりも狭い幅を有していると共に、第2配線14の第2スライダ側部分14aは、第2配線本体部分よりも狭い幅を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各スライダ側部分13a、14aは、配線スペースや配線設計仕様等に応じて、各配線本体部分と略同一の幅を有していても良い。
【0060】
また、本実施の形態においては、複数の配線12が、交互に配置された第1配線13と第2配線14とにより構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、複数の配線12のうちの一部の配線12が、第1配線13と第2配線14とにより構成されても良い。例えば、8本の配線12のうちの2本の配線12が、互いに隣接する1本の第1配線13と1本の第2配線14とにより構成されても良い。
【0061】
また、本実施の形態においては、各第1配線パッド15(各第1半田接合部46)が、スライダパッド44の半田接合面に垂直な方向に、第2配線パッド16(第2半田接合部47)よりも長く、第1配線13側に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各第1配線パッド15(各第1半田接合部46)が、第2配線パッド16(第2半田接合部47)よりも、スライダパッド44から離れる任意の方向に延びていれば良い。この場合においても、半田接合する際、第1配線パッド15のうちスライダパッド44側の細くなっている部分から、溶融した半田がはみ出すことを防止して、溶融した半田を、半田パッド16に接合させることができる。
【0062】
さらに、本実施の形態においては、各第1配線パッド15が、スライダパッド44の半田接合面に垂直な方向に、第2配線パッド16よりも長く、第1配線13側に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各第1配線パッド15は、任意の長さとすることができる。この場合においても、第1配線パッド15に載置される半田ボール60の位置を、第2配線パッド16に載置される半田ボール60の位置よりも、スライダパッド44から離すことにより、第1半田接合部46を、第2半田接合部47よりも長く、第1配線13側に延びるように形成することができる。なお、この場合には、第1半田接合部46の一部は、第1配線13に延びて接合される。
【符号の説明】
【0063】
1 サスペンション用基板
2 ヘッド部
3 テール部
10 絶縁層
11 バネ性材料層
12 配線
13 第1配線
13a 第1スライダ側部分
14 第2配線
14a 第2スライダ側部分
15 第1配線パッド
15a 第1配線側端部
16 第2配線パッド
16a 第2配線側端部
17 めっき層
20 保護層
31 サスペンション
32 ロードビーム
41 ヘッド付サスペンション
42 スライダ
43 スライダ本体
44 スライダパッド
45 保護膜
46 第1半田接合部
47 第2半田接合部
51 ハードディスクドライブ
52 ケース
53 ディスク
54 スピンドルモータ
55 ボイスコイルモータ
56 アーム
60 半田ボール
61 レーザ光
62 半田吐出ヘッド
63 溶融半田部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に設けられた複数のスライダパッドを含むスライダが実装されるサスペンション用基板において、
絶縁層と、
絶縁層の一方の面に設けられたバネ性材料層と、
絶縁層の他方の面に設けられ、互いに隣接する第1配線と第2配線とを有する複数の配線と、を備え、
第1配線に、対応するスライダパッドに接続される第1配線パッドが接続され、
第2配線に、対応するスライダパッドに接続される第2配線パッドが接続され、
第1配線パッドは、スライダに向かって徐々に細くなっており、
第2配線パッドは、スライダに向かって徐々に太くなっていることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
第1配線は、第1配線本体部分と、この第1配線本体部分と第1配線パッドとの間に介在された第1スライダ側部分とを有し、
第1配線パッドは、第1配線の第1スライダ側部分よりも幅が広い第1配線側端部を有していることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
第1配線の第1スライダ側部分は、第1配線本体部分よりも狭い幅を有しており、
第2配線は、第2配線本体部分と、この第2配線本体部分と第2配線パッドとの間に介在された第2スライダ側部分とを有し、
第2配線の第2スライダ側部分は、第2配線本体部分よりも狭い幅を有していることを特徴とする請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
複数の配線は、複数の第1配線と複数の第2配線とからなり、
第1配線と第2配線は、交互に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
第1配線パッドは、第2配線パッドよりも、対応するスライダパッドから離れる方向に延びていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のサスペンション用基板を有することを特徴とするサスペンション。
【請求項7】
請求項6に記載のサスペンションと、このサスペンションに実装され、側面に設けられた複数のスライダパッドを含むスライダとを有し、
第1配線パッドおよび第2配線パッドと、対応するスライダパッドとの間に、半田接合部が形成され、
第1配線パッドと対応するスライダパッドとの間に形成された半田接合部は、第2配線パッドと対応するスライダパッドとの間に形成された半田接合部よりも、スライダパッドから離れる方向に延びていることを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項8】
請求項7に記載のヘッド付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項9】
サスペンション用基板に、スライダ本体と、スライダ本体の側面に設けられた複数のスライダパッドとを含むスライダを実装するスライダ実装方法において、
絶縁層と、絶縁層の一方の面に設けられたバネ性材料層と、絶縁層の他方の面に設けられ、互いに隣接する第1配線と第2配線とを有する複数の配線と、を備えたサスペンション用基板であって、第1配線に、対応するスライダパッドに接続される第1配線パッドが接続され、第2配線に、対応するスライダパッドに接続される第2配線パッドが接続され、第1配線パッドは、スライダパッドに向かって徐々に細くなっており、第2配線パッドは、スライダパッドに向かって徐々に太くなっているサスペンション用基板を準備する工程と、
サスペンション用基板に、スライダ本体を接合する工程と、
第1配線パッドおよび第2配線パッドを、対応するスライダパッドに半田接合する工程と、を備えたことを特徴とするスライダ実装方法。
【請求項10】
半田接合する工程は、第1配線パッドおよび第2配線パッドに、半田部材を載置する工程と、載置された半田部材にレーザ光を照射して半田部材を溶融させる工程とを有することを特徴とする請求項9に記載のスライダ実装方法。
【請求項11】
半田部材を載置する工程において、第1配線パッドに載置される半田部材の位置は、第2配線パッドに載置される半田部材の位置よりも、スライダパッドから離れていることを特徴とする請求項10に記載のスライダ実装方法。
【請求項12】
半田接合する工程において、第1配線パッドおよび第2配線パッドに、溶融された半田部材を吐出することを特徴とする請求項9に記載のスライダ実装方法。
【請求項13】
第1配線パッドに吐出される半田部材の位置は、第2配線パッドに吐出される半田部材の位置よりも、スライダパッドから離れていることを特徴とする請求項12に記載のスライダ実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−233215(P2011−233215A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105430(P2010−105430)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】