説明

サンドイッチ構造体

【課題】表皮材の曲げ弾性率が高く高剛性のサンドイッチ構造体を提供する。
【解決手段】芯材8aと、該芯材8aの両面に設けられた表皮材8bとを有するサンドイッチ構造体8であって、該芯材8a及び表皮材8bは、短繊維がマトリックス樹脂中にランダムに分散した繊維強化樹脂よりなる。芯材8a中の強化繊維含有率が20〜80wt%であり、表皮材中の強化繊維含有率が30〜80wt%であり、表皮材の曲げ弾性率が10GPa以上が必須であり、芯材の見かけ密度が0.2〜1.2g/cm以上である。好ましくは、表皮材の空隙率が10vol%未満であり、芯材の空隙率が10〜80vol%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材と、該芯材の両面に設けられた表皮材とを有するサンドイッチ構造体に係り、特に芯材及び表皮材が繊維強化樹脂よりなるサンドイッチ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維で強化され、内部に空隙が形成された樹脂成形体として、空隙を殆ど有しない緻密な表皮層と空隙を有する芯層からなるサンドイッチ構造体が知られている(例えば特許文献1:特開平4−232047、特許文献2:特開2002−18916等)。芯層の空隙は、強化繊維のスプリングバックにより形成されたものである。
【0003】
特許文献1は、表皮材の繊維の配合量(体積%)を芯材に比べて少ない量とすることにより表皮材の膨張を無くし、また、溶融粘度を増大させることにより芯材の繊維強化成形体表面の繊維の浮き上がりを押さえ、表面外観を向上させるものである。特許文献1には、表皮材の弾性率については何ら記載されておらず、実施例に記載されたサンドイッチ成形体の強度や弾性率も低いものである。
【0004】
また、特許文献1には、表皮材の強化繊維としてガラス繊維又はロックウールを使用することが記載されているが、ガラス繊維やロックウールは、通常の配合量では表皮材の曲げ弾性率を十分に高くすることはできない。
【0005】
特許文献2は、空隙をほとんど含まないスキン層と、高い空隙率を有し、強化繊維同士が絡み合って梁構造を有するコア層とからなる成形体に関するものである。特許文献2には、可動式の金型を用い、1種類の強化繊維含有樹脂組成物を射出成形することによりまずスキン層を形成し、その後金型を広げてコア部分をスプリングバックによって膨張させる方法が記載されているが、スキン層の強度や弾性率を具体的にどの程度に調整するか等についての記載が無い。また、さらに該スキン層の表面に表皮材を設けることも可能としているが、該表皮材の強度や弾性率についての記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−232047号公報
【特許文献2】特開2002−18916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、表皮材の曲げ弾性率が高く高剛性且つ軽量のサンドイッチ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のサンドイッチ構造体は、芯材と、該芯材の両面に設けられた表皮材とを有するサンドイッチ構造体であって、該芯材及び表皮材は、短繊維がマトリックス樹脂中にランダムに分散した繊維強化樹脂よりなるサンドイッチ構造体において、芯材中の強化繊維含有率が20〜80wt%であり、表皮材中の強化繊維含有率が30〜80wt%であり、表皮材の曲げ弾性率が10GPa以上であり、芯材の見かけ密度が0.2〜1.2g/cmであることを特徴とするものである。
【0009】
前記芯材の強化繊維の繊維軸方向における引張弾性率は400GPa未満であり、前記表皮材の強化繊維の繊維軸方向における引張弾性率は400GPa以上であることが好ましい。
【0010】
前記芯材の強化繊維は繊維長1〜50mmの炭素繊維であることが好ましい。
【0011】
前記表皮材の強化繊維は液晶ピッチ系炭素繊維であることが好ましい。
【0012】
前記芯材及び表皮材のマトリックス樹脂は同一の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0013】
前記表皮材の空隙率は10vol%未満であり、芯材の空隙率は10〜80vol%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のサンドイッチ構造体は、強化繊維とマトリクス樹脂を用いた芯材と表皮材のそれぞれの特性を組み合わせた構成とすることにより、すなわち表皮材の曲げ弾性率が高く、また芯材の見かけ密度を低くすることにより、従来に比べてサンドイッチ構造体の厚みの許容範囲が広がり、軽量で高剛性であるサンドイッチ構造体である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】サンドイッチ構造体の製造方法の一例を示す断面図である。
【図2】サンドイッチ構造体の別の製造方法の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のサンドイッチ構造体は、それぞれ繊維強化樹脂よりなる芯材及び表皮材を有する。まず芯材を構成するマトリックス樹脂及び強化繊維について説明し、その次に表皮材及びサンドイッチ構造体の製造方法等について説明する。
【0017】
[芯材のマトリックス樹脂]
芯材のマトリックス樹脂としては熱可塑性樹脂が好適である。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびこれらを主成分とした共重合体からなるポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂、AS樹脂等の共重合体樹脂、またはこれらの変性樹脂、あるいはEPM、EPDMなどの熱可塑性エラストマーなどを、単独または2種以上組み合わせて使用することが挙げられる。また、必要に応じて、樹脂組成物に公知の添加剤を使用しても良い。
【0018】
中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂が、コスト面や取り扱い性、性能等の点から好ましい。
【0019】
[芯材の強化繊維]
芯材の強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維、ボロン繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維等の有機繊維の短繊維が好ましい。なお、樹脂繊維の場合は、マトリックス樹脂の融点や軟化点よりも強化繊維の融点や軟化点の高いことが重要である。
【0020】
芯材の強化繊維は、繊維軸方向における引張弾性率が400GPa未満であることが、マトリックス樹脂中に所定の配合量でランダム分散した成形体の見かけ密度を所定の範囲とすることが容易であるため好ましく、また、10GPa以上であることが圧縮等による変形の抑制に必要となる剛性確保のために好ましい。芯材の強化繊維の引張弾性率は50〜300GPaであるのがさらに好ましい。
【0021】
この強化繊維の直径は1〜50μmが好ましく、3μm〜30μmが強度や取り扱い性、入手のしやすさ等からより好ましい。この短繊維の繊維長は、繊維の材質や要求性能に加え繊維同士の絡み合い、取り扱い易さなどを考慮した場合、1mm〜50mm特に5〜30mmが好ましい。
【0022】
芯材中の強化繊維の含有率は20〜80wt%、好ましくは40〜70wt%である。強化繊維の含有率が20wt%よりも少ないと、強度が不足や樹脂流動に伴う成形性の不足が発生することに加え、スプリングバックも弱い。強化繊維の含有率が80wt%よりも多いと、樹脂不足により強化繊維同士の接着性が不十分となりやすくなり成形性や強度、弾性率が低下する。
【0023】
[表皮材のマトリックス樹脂]
表皮材のマトリックス樹脂としては、熱硬化樹脂であっても良いが、熱可塑性樹脂である方が好ましい。熱可塑性樹脂としては、上記芯材のマトリックス樹脂の説明に記載されたものが使用される。
【0024】
芯材と表皮材とで同一のマトリックス樹脂を使用した場合や、相容性の高いもの、または互いの樹脂への相容性を持つ成分(相溶化剤)を含有するものを使用すれば、芯材と表皮材との間に接着層を設けなくても芯材と表皮材とが十分に結合するようになる。なお、芯材の成形と、芯材と表皮材との積層一体化を加熱により同時に行なうこともあるが、この場合は、芯材のマトリックス樹脂の融点または軟化点が表皮材のマトリックス樹脂の融点または軟化点とが同一又は略同一であることが好ましい。芯材と表皮材とで同一の樹脂を使用すれば、原料準備や成形温度等の製造条件の選択が容易となる。
【0025】
[表皮材の強化繊維]
表皮材の強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維、ボロン繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維等の有機繊維が挙げられるが、マトリックス樹脂に所定の配合量で、ランダム分散された成形体の弾性率が10GPa以上である必要があることから、繊維軸方向における引張弾性率が400GPa以上であることが好ましい。さらに本発明においては表皮材と芯材との成形一体化の際に芯材のスプリングバック成形時において表皮材が大きくスプリングバックする事無く成形されることが特徴であり、加圧成形時に厚み方向の強化繊維が折損することによりスプリングバック機能が低減し、低空隙率となることが高剛性のサンドイッチ構造体の成形に必要となる。これらのことから、表皮材の強化繊維としては、繊維軸方向における引張弾性率が400GPa以上のピッチ系またはPAN系炭素繊維が好適であり、特に液晶(メソフェーズ)ピッチ系炭素繊維が好適である。
【0026】
表皮材の強化繊維の繊維長は1〜50mm特に5〜30mmが好ましい。表皮材中の強化繊維の含有率は、十分な強度及び剛性を確保すると共に、成形性及び良好な外観を確保するために30〜80wt%、好ましくは40〜70wt%とする。
【0027】
表皮材の空隙率はサンドイッチ構造体において十分な力学特性の発現のため10%未満であることが好ましい。また、表皮材の空隙率が5%未満であれば表皮材の剛性や強度にさらに優れ、サンドイッチ構造体としての力学特性がさらに良好となるため好ましい。
【0028】
[芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体の製造法並びに芯材の見かけ密度]
本発明のサンドイッチ構造体は、芯材及び表皮材を別々に製造し、接着剤を用いて、接着することにより製造することができる。また、別個に製造した表皮材と芯材を加熱融着させることによっても製造することが可能である。通常、接着剤を用いた場合は工程の追加や接着剤を別途準備する必要があるため、本発明においては加熱融着で製造することが好ましい。
【0029】
まず、芯材を製造する方法としては、芯材用の強化繊維とマトリックス樹脂とを含有するマット状成形体を該マトリックス樹脂の軟化点または融点以上に加熱及び加圧した後、加圧を解除し、強化繊維の残留応力解放時に元に戻ろうとするスプリングバックにより膨張させて、多孔質成形体とするスプリングバック法が好適である。この芯材中には強化繊維がランダムに分散している。この芯材の見かけ密度は0.2〜1.2g/cm好ましくは0.4〜1.0g/cmである。なお、芯材の見かけ密度が0.2g/cmよりも小さいとサンドイッチ構造体の強度が不足し、1.2g/cmよりも大きいとサンドイッチ構造体の見かけ密度が過度に大きくなり、比剛性が小さくなる。また、上記の見かけ密度を考慮した場合、芯材における空隙率は10〜80vol%程度である。
【0030】
芯材用マット状成形体として、強化繊維とマトリックス樹脂繊維からなる混抄マット状成形体を使用した場合、マトリックス樹脂繊維が既に強化繊維と混合された状態であり、溶融の際に容易に強化繊維に接着するため、含浸工程が簡素化できるという利点があり、好ましい。また、加熱融着における接着の面においても表皮材と芯材との強化繊維の絡み合いが生じやすく、サンドイッチ構造体としての表皮材と芯材との接着性に優れるため好ましい。
【0031】
本発明では、芯材用の強化繊維と芯材用のマトリックス樹脂とを含有するマット状成形体またはマット状成形体を加熱加圧成形したものを、表皮材用の強化繊維と表皮材用のマトリックス樹脂とを含有するマット状成形体またはマット状成形体を加熱加圧成形したものを用いて挟んだサンドイッチ状積層体とし、この積層体を加熱し、上記と同様のスプリングバック法で多孔質化された芯材を製造すると同時に芯材と表皮材とを積層一体化させてサンドイッチ構造体を製造することができる。この方法によれば、接着剤を用いることなく芯材と表皮材とを強固に一体化させることができる。
【0032】
また、本発明では、予めスプリングバック法で製造した多孔質芯材を別途予め製造した表皮材で挟み、加熱加圧一体化してサンドイッチ構造体を製造してもよい。
これらのいずれの場合にも、表皮材の製造方法としては、表皮材用の強化繊維とマトリックス樹脂とを抄造してマット状成形体とし、このマット状成形体を加熱及び加圧することにより強化繊維をランダムに分散させた繊維強化成形体とする方法が挙げられる。
【0033】
芯材及び表皮材を形成するための強化繊維とマトリックス樹脂のマット状成形体の好ましい製造方法として挙げられる抄造方法としては、該マトリックス樹脂の繊維と強化繊維とを混抄して不織布状のマット状成形体を得る方法が好適である。この混抄方法としては、湿式法、乾式法が挙げられる。芯材用のマット状成形体の製造方法としては、十分に大きな目付けを得ることができると共に、厚み方向の繊維を多く含有し、高いスプリングバック機能を与えることから、カード法やエアレイド式等の乾式法が好ましい。表皮材用のマット状成形体の製造方法としては、繊維折損が少なく容易に成形可能な湿式法またはエアレイド式等の乾式法が好ましい。いずれの方法によって得られた不織布状のマット状成形体からも、強化繊維がマトリックス樹脂中にランダムに分散した繊維強化樹脂が製造される。
【0034】
芯材用マット状成形体の目付けは、1000〜4000g/mが好ましく、表皮材用マット状成形体の目付けは100〜2000g/mが好ましい。
【0035】
[成形方法の具体例]
本発明のサンドイッチ構造体の成形方法の一例を第1図に示す。強化繊維と樹脂繊維を用いて抄造法により製造された芯材用マット状成形体1の両面に、第1図(a)の通り、強化繊維と樹脂繊維を用いて抄造法により製造された表皮材用マット状成形体を加熱加圧成形して得られた繊維強化成形体2を積層し、さらにこの繊維強化成形体2/マット状成形体1(図では3枚重ね)/繊維強化成形体2よりなる積層体の両面に各々板状体3を重ね合わせて加熱プレス盤4間に挿入し、芯材用マット状成形体1の樹脂繊維(マトリックス樹脂)が溶融するまで加熱する。
なお、ここで板状体3は、成形面の平滑性確保や成形圧力の均等性を補助するために使用され、例えば、ステンレスや鋼板等の金属板や、成形における加圧や加熱条件下での変形が少ないものであれば、樹脂製でも良い。成形体との離型性を考慮してフッ素樹脂やシリコン樹脂等で表面コーティングしたり、離型剤処理を行なったものでも良い。
【0036】
このマトリックス樹脂が溶融するまで加熱した後、表皮材用マット状成形体の強化繊維の間にこの溶融マトリックス樹脂を含浸させるため、上側の加熱プレス盤4を押し下げるか、下側の加熱プレス盤4を押し上げ、芯材用強化繊維の破損が生じない圧力で加圧を行う。これにより、第1図(b)の通り、マット状成形体1は溶融状態の芯材部分5となる。また、この芯材部分5と繊維強化成形体2とが融着する。
【0037】
次に、芯材用マトリックス樹脂が溶融している状態で、加熱プレス盤4,4による加圧を解除する。これにより、溶融状態の芯材部分5は、その強化繊維のスプリングバックにより膨張して膨張芯材6となる。一般に、抄造法で製造されたマット状成形体1は、強化繊維がモノフィラメント(単繊維)に近い状態でランダムに分散しているため、スプリングバックが強いので、溶融状態の芯材部分は大きく膨張し、空隙を有した膨張芯材6となる(第1図(c))。
【0038】
次に、膨張芯材6と繊維強化成形体2および板状体3を重ね合わせた状態で、第1図(d)の通り、冷却プレス盤7間に挿入し、膨張芯材6に空隙が残留する条件で加圧及び冷却して所定厚さに賦形した後、板状体3を取り外す(第1図(e))。これにより、芯材8a及び表皮材8bよりなるサンドイッチ構造体8が得られる。芯材8aは膨張芯材6に由来するものであり、所定の空隙を有する。表皮材8bは繊維強化成形体2に由来するものであり、芯材8aに固着している。
【0039】
この第1図のように繊維強化成形体2のマトリックス樹脂と芯材とを融着させる場合には、繊維強化成形体2のマトリックス樹脂と芯材用マット状成形体のマトリックス樹脂とを同一組成の樹脂とするのが好ましい。
【0040】
なお、繊維強化成形体2は、単一層でも良いが、所定の厚みを得るため、複数を重ね合わせたものであっても良い。表皮材8bの厚みは、サンドイッチ構造体の用途により異なるが、0.03〜1mmの範囲が一般的である。
【0041】
芯材用マット状成形体中のマトリックス樹脂は、加圧時に強化繊維の間に含浸するが、それと同時に繊維強化成形体2との界面に浸み出し、該繊維強化成形体2中のマトリックス樹脂の溶融と相まって、両者が強固に融着する。また、芯材用マット状成形体中の強化繊維の一部も、繊維強化成形体2中に入り込み、繊維強化成形体2中の強化繊維も芯材用マット状成形体より形成される溶融状態の芯材部分5中に入り込むことにより、アンカー効果が生まれ、芯材8aと表皮材8bとが強固に接着される。
【0042】
さらに、溶融状態の芯材部分5の表面が表皮材用の繊維強化成形体2に拘束された状態で膨張し、該繊維強化成形体2は殆ど膨張しないため、サンドイッチ構造体8の表面に凹凸が発生せず、成形品の外観が良好となる。
【0043】
一方、本発明のサンドイッチ構造体は、第2図に示す加熱、加圧、圧力解放、冷却工程を連続的に実施するダブルベルトコンベア式連続プレス装置18によっても製造することができる。このダブルベルトコンベア式連続プレス18においては、一対の無端ベルト19が回転ドラム20,21間に張設されている。ローラーチェーン23,24,25が挟圧部における無端ベルト19,19の背面側に接するように設置されている。各ローラーチェーン23〜25は油圧ラム22によって無端ベルト19を押圧可能とされている。油圧ラム22を制御することにより無端ベルト19,19の間隔と両者間の挟圧力の制御が行われる。また、ローラーチェーン23,24の内部には加熱盤26が設置され、ローラーチェーン25の内部には冷却盤27が設置されている。
【0044】
無端ベルト19,19の間隔は、ローラーチェーン24に達するまで徐々に狭められており、その後、回転ドラム21に達するまで徐々に大きくなっている。強化繊維と樹脂繊維を用いて抄造法により製造された芯材用マット状成形体1の両面に表皮材用マット状成形体28を回転ドラム20,20に沿わせて積層する。この積層体は、ローラーチェーン23により、マット状成形体1のマトリックス樹脂が溶融するまで加熱される。その後、ローラーチェーン24で加圧されることにより、この溶融状態のマトリックス樹脂がマット状成形体1の強化繊維間に含浸される。この後無端ベルト19,19の間隔は、ローラーチェーン24から回転ドラム21に達するまで徐々に大きくなっている。そのため、マット状成形体1に由来する溶融状態の芯材部分は、ローラーチェーン24を通過した直後から膨張する。積層体は、その後、ローラーチェーン25により冷却され、回転ドラム21を通過した後、無端ベルト19,19から離れ、サンドイッチ構造体8が連続的に成形される。符号9は空隙を有した芯材を示している。
【0045】
ダブルベルトコンベア式連続プレスを使用した場合は、一対の無端ベルト19,19が板状体の役割を果たす。無端ベルト19としては、通常スチールベルト等の金属ベルトが使用されるが、加熱温度に耐えうるものであれば樹脂製でもよい。サンドイッチ構造体との離型性を考慮してフッ素樹脂やシリコン樹脂等を用いたコーティングや離型剤処理を行ってもよい。
【0046】
この第2図の方法においても、ローラーチェーン24の加圧時にマット状成形体1中のマトリックス樹脂が溶融し、表皮材用マット状成形体28の溶融したマトリックス樹脂と相まって、芯材9と表皮材(繊維強化成形体2)とが強固に融着したサンドイッチ構造体8が得られる。また、ローラーチェーン24,25間において、溶融状態の芯材部分が無端ベルト19,19に拘束された状態で均一に膨張するため、良好な機械的性質と外観を有するサンドイッチ構造体8が得られる。(第2図では、表皮材用マット状成形体28は、加熱加圧する前の状態であり、マトリックス樹脂となる樹脂繊維が未溶融の状態である。)
【0047】
本発明によれば、機械的性質の向上と軽量化メリットを生かした比剛性20GPa/(g/cm)以上、例えば20〜100GPa/(g/cm)程度のサンドイッチ構造体が得られる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例及び比較例について説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されない。以下の実施例及び比較例における物性の測定方法及び厚み精度の評価方法は次の通りである。
【0049】
(1)曲げ特性
表皮材及びサンドイッチ構造体の曲げ強度及び曲げ弾性率は万能材料試験機(UH−10 島津製作所製)を用いて測定した。表皮材は厚み2mmのサンプルを作製して測定した。作製したサンプルをJIS―K7074に基づき所定の大きさに切り出した後に、ロードセル100kN及び500kNによりクロスヘッド速度5mm/分で4点曲げ試験により測定した。
【0050】
(2)見かけ密度、比剛性
サンドイッチ構造体の見かけ密度は、作製したサンドイッチ構造体を10cm×10cmのサイズに切削した後に重量測定の値と、厚み及び縦横の長さをデジタルノギスにより0.1mmの精度まで測定し、算出した。また、比剛性はサンドイッチ構造体の曲げ試験における曲げ弾性率(GPa)の値を先の方法で算出した見かけ密度で除算することにより求めた。
【0051】
(3)空隙率
繊維強化成形体の空隙率は下記の計算式により算出した。
【0052】
理論密度=強化繊維重量/100×強化繊維の密度
+(1−強化繊維重量/100)×マトリックス樹脂の密度
空隙率(%)=(1−見かけ密度/理論密度)×100
【0053】
(4)厚み精度の評価方法
サンドイッチ構造体を目標厚み4.0mmとして製造し、成形体の実際の厚みと目標厚み4.0mmとの差が±0.3mm以内であったものを○、±0.3mmより大きかったものを×として評価した。
【0054】
[実施例1]
芯材には強化繊維としてPAN系炭素繊維(商品名「パイロフィルTR50S」、三菱レイヨン製、引張弾性率230GPa、6mmカットファイバー、密度1.9g/cm)を用い、マトリックス樹脂として共重合ポリエステル繊維(商品名「N701Y」、クラレ製、5mmカットファイバー、融点130℃、密度1.38g/cm)を用いた。強化繊維60重量%とマトリックス樹脂繊維40重量%とを配合した後にエアレイド式の不織布作製装置(王子キノクロス製)を用いて目付け600g/mの混抄マット状成形体(以下マットAと略記)とした。
【0055】
また、表皮材には強化繊維としてピッチ系炭素繊維(商品名「ダイアリード6371T」、三菱樹脂製、引張弾性率640GPa、6mmカットファイバー、密度2.1g/cm)を用い、マトリックス樹脂として共重合ポリエステル繊維(商品名「N701Y」、クラレ製、5mmカットファイバー、融点130℃、密度1.38g/cm)を用いた。この強化繊維60重量%とマトリックス樹脂繊維40重量%とを配合した後にエアレイド式の不織布作製装置(王子キノクロス製)を用いて目付け1000g/mの混抄マット状成形体(以下マットBと略記)とした。
【0056】
マットAを4枚重ねた後に温度200℃、クリアランス3.4mmにおいて加圧保持時間5分で溶融プレス成形した後に冷却プレスへ移動しクリアランス3.0mmとして加圧条件下で冷却することにより厚み3.0mmの芯材(炭素繊維長3〜50mm:50重量%以上)を作製した。また、マットBを温度280℃、クリアランス0.5mmにおいて加圧保持時間5分で溶融プレス成形した後に加圧条件下で冷却することにより厚み0.5mmの表皮材(炭素繊維長3〜50mm:50重量%以上)を作製した。これらの材料の評価結果を表1に示した。更に芯材の両面に表皮材を重ね合わせ、上下1対の加熱プレス盤を用い、温度200℃、クリアランス3.0mmにおいて加圧保持時間5分で溶融プレス成形した後にクリアランス4.0mmへ広げて冷却することにより4.0mm厚みのサンドイッチ構造体を作製した。この構造体の評価結果を表1に示した。
【0057】
[実施例2]
実施例1において、芯材に用いたマトリックス樹脂の樹脂繊維をポリプロピレン樹脂(商品名「ノバテックPP FL6H」、日本ポリプロ製、融点150〜165℃、密度0.9g/cm)の溶融紡糸繊維としたこと以外は同様の条件にて芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製した。これらの評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
実施例1において、芯材に用いるマットAの積層枚数を3枚としたこと以外は同様の条件で芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製し、これらの評価結果を表1に示した。
【0059】
[実施例4]
実施例1において、表皮材に用いたマトリックス樹脂の樹脂繊維をポリプロピレン樹脂(商品名「ノバテックPP FL6H」、日本ポリプロ製、融点150〜165℃、密度0.9g/cm)とし、マットBの目付けを800g/mとしたこと以外は同様の条件で芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製した。これらの評価結果を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
実施例1において、芯材に用いた強化繊維の配合量を90重量%としたこと以外は同様の条件で芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製した。これらの評価結果を表1に示した。なお、この比較例1では、芯材およびサンドイッチ構造体はプレス装置からの取り出しの際に樹脂不足によりスプリングバックを抑制しきれずに膨張し、サンドイッチ構造体の厚みが目標の4.0mmを大きく超える結果となった。
【0061】
[比較例2]
実施例1において、芯材に用いた強化繊維の配合量を10重量%としたこと以外は同様の条件で芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製した。これらの評価結果を表1に示す。なお、この比較例2では、サンドイッチ構造体のプレス成形の際に樹脂過多にともなう流動を生じ、また、強化繊維不足によりスプリングバックが不十分な状態となり、厚みが4.0mmを下回る結果となった。
【0062】
[比較例3]
実施例1において、芯材に用いるマットAの目付けを400g/mとし、プレス成形時の積層枚数を1枚としたこと以外は同様の条件で芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製した。これらの評価結果を表1に示した。
【0063】
[比較例4]
実施例1において、表皮材に用いた強化繊維の配合量を20重量%としたこと以外は同様の条件で芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製した。これらの評価結果を表1に示した。
【0064】
[比較例5]
実施例1において表皮材に用いた強化繊維をPAN系炭素繊維(商品名「パイロフィルTR50S」、三菱レイヨン製、引張弾性率230GPa、6mmカットファイバー、密度1.9g/cm)としたこと以外は同様の条件で芯材、表皮材及びサンドイッチ構造体を作製した。これらの評価結果を表1に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1の通り、実施例1〜4はいずれも曲げ弾性率及び比剛性が高く、また厚み精度も良好である。これに対し、比較例1〜5は曲げ弾性率及び比剛性が低い。また、比較例1,2ではサンドイッチ構造体の厚み精度も低い。比較例3は芯材の見かけ密度が0.1g/cmと低く、比剛性も著しく低い。
【符号の説明】
【0067】
1 芯材用マット状成形体
2 表皮材用繊維強化成形体
3 板状体
4 加熱プレス盤
5 溶融状態の芯材部分
6 膨張芯材
7 冷却プレス盤
8 サンドイッチ構造体
8a,9 芯材
8b 表皮材
19 無端ベルト
23,24,25 ローラーチェーン
26 加熱盤
27 冷却盤
28 表皮材用マット状成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材の両面に設けられた表皮材とを有するサンドイッチ構造体であって、
該芯材及び表皮材は、短繊維がマトリックス樹脂中にランダムに分散した繊維強化樹脂よりなるサンドイッチ構造体において、
芯材中の強化繊維含有率が20〜80wt%であり、表皮材中の強化繊維含有率が30〜80wt%であり、
表皮材の曲げ弾性率が10GPa以上であり、
芯材の見かけ密度が0.2〜1.2g/cm以上である
ことを特徴とするサンドイッチ構造体。
【請求項2】
請求項1において、前記芯材の強化繊維の繊維軸方向における引張弾性率が400GPa未満であり、前記表皮材の強化繊維の繊維軸方向における引張弾性率が400GPa以上であることを特徴とするサンドイッチ構造体。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記芯材の強化繊維が繊維長1〜50mmの炭素繊維であることを特徴とするサンドイッチ構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記表皮材の強化繊維が液晶ピッチ系炭素繊維であることを特徴とするサンドイッチ構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記芯材及び表皮材のマトリックス樹脂が同一の熱可塑性樹脂であることを特徴とするサンドイッチ構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記表皮材の空隙率が10vol%未満であり、芯材の空隙率が10〜80vol%であることを特徴とするサンドイッチ構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−890(P2012−890A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138446(P2010−138446)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】