説明

ショックアブソーバ装置

【課題】 車両の使用度合に比べてブラシの消耗度合が先行しないようにして、ブラシ交換をできるだけしなくて済むようにする。
【解決手段】 電磁式ショックアブソーバの電動モータのブラシ寿命を表す回転数Nlimitに対する現時点までのトータル回転数Ntotalの比であるブラシ消耗度合(Ntotal/Nlimit)と、車両の耐久走行距離Ytargetに対する走行距離Ytotalの比である車両使用度合(Ytotal/Ytarget)とを計算する。車両使用度合に比べてブラシ消耗度合が大きい場合には、目標減衰力F*に補正係数K(>1)を乗じて減衰力を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪のショックアブソーバ装置に係り、特に、車体に対する車輪の相対的な上下運動によりブラシ付モータのロータが回されて電磁力を発生し、この電磁力により車体に対する車輪の相対的な上下運動を減衰させる電磁式ショックアブソーバを備えたショックアブソーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体に対する車輪の相対的な上下運動によりロータが回される電動モータを備え、ロータが回されることにより発生した電磁力にて車体に対する車輪の相対的な上下運動を減衰させる電磁式ショックアブソーバを備えたショックアブソーバ装置が知られている。こうした電動モータとして、ブラシ付モータを使用したショックアブソーバ装置も特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29360
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、電磁式ショックアブソーバは、車体に対する車輪の相対的な上下運動が発生するたびに電動モータのロータが回されるため、ブラシ付モータを使用した構成においては、ブラシの消耗が問題となる。ブラシの消耗は、走行路の状況や運転状況等によって変化する。従って、車両の走行距離に対してブラシの消耗の進み具合が早かったり遅かったりまちまちとなる。このため、車両の走行距離が耐久走行距離に達する前にブラシが寿命に到達する可能性もあり、こうした場合には、ブラシ交換の必要が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、車両の使用度合(走行距離)に比べてブラシの消耗度合が先行しないようにして、ブラシ交換をできるだけしなくて済むようにすることを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車体に対する車輪の相対的な上下運動によりロータが回されるブラシ付モータを備え、前記ロータが回されることにより前記ブラシ付モータで発生した電磁力にて前記車体に対する車輪の相対的な上下運動を抑制する減衰力を発生させる電磁式ショックアブソーバと、前記ブラシ付モータで発生する電磁力を調整して前記減衰力を制御する減衰力制御手段とを備えたショックアブソーバ装置において、
前記ブラシ付モータの回転数に基づいて前記ブラシ付モータのブラシの消耗状態を推定し、前記ブラシの寿命に対する前記推定した消耗状態の比をブラシ消耗度合として算出するブラシ消耗度合算出手段と、車両の走行距離情報を取得し、車両の耐久走行距離に対する前記取得した走行距離の比を車両使用度合として算出する車両使用度合算出手段と、前記算出したブラシ消耗度合と車両使用度合とのバランスを判定するバランス判定手段と、前記バランス判定手段により、前記車両使用度合に比べて前記ブラシ消耗度合が大きいと判定された場合には、前記減衰力制御手段により制御される減衰力を高くする側に補正する減衰力補正手段とを備えたことにある。
【0007】
本発明においては、車体に対する車輪の相対的な上下運動(車体と車輪との接近・離間運動)によりブラシ付モータのロータが回されて電磁力を発生し、この電磁力(発電ブレーキ力)により車体に対する車輪の相対的な上下運動が減衰される。減衰力制御手段は、例えば、ブラシ付モータに流れる発電電流の大きさを調整して減衰力を制御する。
【0008】
ブラシ付モータのブラシの消耗量(摩耗量)は、モータ回転数(ロータが回転したトータル回転数)に支配される。従って、モータ回転数からブラシの消耗状態を推定することができる。また、ブラシの消耗が進む速度は、電磁式ショックアブソーバで発生させる減衰力の大きさによっても変化する。つまり、減衰力を大きくするほど、車体に対する車輪の相対的な上下運動が抑制されるため、ブラシ付モータの回転が抑えられてブラシの消耗が進む速度は遅くなり、逆に、減衰力を小さくするほど、車体に対する車輪の相対的な上下運動が激しくなるため、ブラシ付モータの回転数が増加してブラシの消耗が進む速度が速くなる。
【0009】
車両の使用度合に比べてブラシの消耗度合が先行しないようにすれば、ブラシの交換(ブラシ付モータの交換を含む)をできるだけしなくて済むようなる。そこで、本発明においては、ブラシ消耗度合算出手段が、ブラシ付モータの回転数に基づいてブラシ付モータのブラシの消耗状態を推定し、ブラシの寿命に対する消耗状態の比をブラシ消耗度合として算出する。一方、車両使用度合算出手段が、車両の走行距離情報を取得し、車両の耐久走行距離に対する取得した走行距離の比を車両使用度合として算出する。そして、バランス判定手段が、ブラシ消耗度合と車両使用度合とのバランスを判定する。車両使用度合に比べてブラシ消耗度合が大きいと判定された場合には、減衰力補正手段が、減衰力制御手段により制御される減衰力を高くする側に補正する。つまり、車両使用度合に比べてブラシ消耗度合が大きいと判定された場合には、車両使用度合に比べてブラシ消耗度合が大きいと判定されない場合に比べて、減衰力を制御するための制御量を、減衰力が大きくなる側に補正する。これにより、ブラシ付モータの回転が抑えられてブラシの消耗の進む速度が遅くなる。
【0010】
この結果、本発明によれば、車両使用度合に比べてブラシ消耗度合が進んでしまうといったアンバランスが防止され、ブラシの交換(ブラシ付モータの交換を含む)をできるだけしなくて済むようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るショックアブソーバ装置を含むサスペンション装置のシステム構成図である。
【図2】サスペンション本体の概略構成を表す断面図である。
【図3】外部回路の回路構成図である。
【図4】減衰力制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図5】ブラシ消耗状態推定ルーチンを表すフローチャートである。
【図6】ブラシ消耗バランス判定ルーチンを表すフローチャートである。
【図7】ブラシ交換アナウンス制御ルーチンを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るショックアブソーバ装置を含むサスペンション装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係るサスペンション装置のシステム構成を概略的に示している。
【0013】
このサスペンション装置は、各車輪WFL、WFR、WRL、WRRと車体Bとの間にそれぞれ設けられる4組のサスペンション本体10FL、10FR、10RL、10RRと、各サスペンション本体10FL、10FR、10RL、10RRの作動を制御するサスペンション電子制御ユニット50とを備えている。以下、4組のサスペンション本体10FL、10FR、10RL、10RRおよび車輪WFL、WFR、WRL、WRRについては、特に前後左右を区別する場合を除いて、単にサスペンション本体10および車輪Wと総称する。また、サスペンション電子制御ユニット50をサスペンションECU50と呼ぶ。
【0014】
サスペンション本体10は、図2に示すように、車輪Wを支持するロアアームLAと車体Bとの間に設けられ、路面から受ける衝撃を吸収し乗り心地を高めるとともに車体Bの重量を弾性的に支持するサスペンションスプリングとしてのコイルスプリング20と、コイルスプリング20の上下振動に対して減衰力を発生させる電磁式ショックアブソーバ30とを並列的に備えて構成される。以下、場合によっては、コイルスプリング20の上部側、つまり車体B側を「ばね上」と呼び、コイルスプリング20の下部側、つまり車輪W側を「ばね下」と呼ぶ。
【0015】
電磁式ショックアブソーバ30は、同軸状に配置されるアウタシリンダ31およびインナシリンダ32と、インナシリンダ32の内側に設けられるボールねじ機構35と、ボールねじ機構35の動作によりロータ(図示略)が回されて誘導起電力を発生する電動モータ40とを備える。本実施形態においては、電動モータ40として、ブラシ付DCモータが用いられる。
【0016】
アウタシリンダ31とインナシリンダ32とは、同軸異径パイプで構成され、インナシリンダ32の外周に軸方向へ摺動可能にアウタシリンダ31が設けられる。図中、符号33,34は、アウタシリンダ31内にインナシリンダ32を摺動可能に支持する軸受である。
【0017】
ボールねじ機構35は、電動モータ40のロータと一体的に回転するボールねじ36と、ボールねじ36に形成された雄ねじ部分37に螺合する雌ねじ部分38を有するボールねじナット39とからなる。ボールねじナット39は、図示しない回り止めにより、その回転運動ができないように規制されている。従って、このボールねじ機構35においては、ボールねじナット39の上下軸方向の直線運動がボールねじ35の回転運動に変換され、逆に、ボールねじ36の回転運動がボールねじナット39の上下軸方向の直線運動に変換される。
【0018】
ボールねじナット39の下端は、アウタシリンダ31の底面に固着されており、ボールねじ36に対してアウタシリンダ31を軸方向に相対移動させようとする外力が加わると、ボールねじ36が回転して電動モータ40を回転させる。このとき電動モータ40は、そのロータに設けた電磁コイル(図示略)が、ステータに設けた永久磁石(図示略)から発生する磁束を横切ることによって、電磁コイルに誘導起電力を発生させて発電機として働く。
【0019】
インナシリンダ32の上端は、取付プレート41に固定される。この取付プレート41は、電動モータ40のモータケーシング42に固定されるとともに、その中央に形成した貫通孔43にボールねじ36が挿通される。ボールねじ36は、モータケーシング42内において電動モータ40のロータと連結されるとともに、インナシリンダ32内の軸受44によって回転可能に支持される。
【0020】
コイルスプリング20は、アウタシリンダ31の外周面に設けられた環状のリテーナ45と、電動モータ40の取付プレート46との間に圧縮状態で介装される。このように構成されたサスペンション本体10は、取付プレート46の上面で弾性材料からなるアッパーサポート26を介して車体Bに取り付けられる。
【0021】
車両が走行中に車輪Wが上下動する場合は、インナシリンダ32に対してアウタシリンダ31が軸方向に摺動してコイルスプリング20が伸縮することにより、路面から受ける衝撃を吸収し乗り心地を高めるとともに車両の重量を支持する。このとき、ボールねじナット39がボールねじ36に対して上下動してボールねじ36を回転させる。このため、電動モータ40は、ロータが回転して電磁コイルに誘導起電力が発生し、後述する外部回路100を介して発電電流が流れることによりロータの回転を止めようとする抵抗力が発生する。この抵抗力が電磁式ショックアブソーバ30の減衰力として働く。減衰力の調整は、各電磁式ショックアブソーバ30ごとに設けられた外部回路100により電動モータ40の電磁コイルに流れる電流の大きさを調整することで可能となる。
【0022】
次に、電磁式ショックアブソーバ30の作動を制御する構成について説明する。電磁式ショックアブソーバ30は、外部回路100を介してサスペンションECU50により制御される。サスペンションECU50は、マイクロコンピュータを主要部として備え、外部回路100のスイッチング制御により電磁式ショックアブソーバ30の電動モータ40に流れる電流量を調整して減衰力制御を実行する。この減衰力制御は、後述するが、各車輪W位置の電磁式ショックアブソーバ30ごとに、その電磁式ショックアブソーバ30に対応する外部回路100のスイッチング制御により独立して行われる。サスペンションECU50は、車輪Wと車体Bとの上下方向の離間距離(以下、ストロークSと呼ぶ)を各車輪Wの位置においてそれぞれ検出するストロークセンサ61を接続している。また、サスペンションECU50は、車両の走行距離メータ等の計器類を制御するメータECU70を接続し、メータECU70から、車両の走行距離(車両の使用距離)を表す情報を取得する。以下、メータECU70から取得した走行距離を、走行距離Ytotalと呼ぶ。
【0023】
次に、図3を用いて、外部回路100について説明する。図中において、Rmは電動モータ40の内部抵抗、Lはモータインダクタンスを表し、電動モータ40の表示記号の外に記載している。外部回路100は、車体Bと車輪Wとの相対運動により電動モータ40のロータがボールねじ機構35を介して回されたとき、電動モータ40で発生した誘導起電力により、電動モータ40の端子間(第1端子t1と第2端子t2との間)に発電電流が流れることを許容する回路であり、また、電動モータ40の誘導起電力(誘起電圧)が大きいときには、発電電流の一部を蓄電装置110に流して蓄電装置110充電する回路でもある。
【0024】
外部回路100は、電動モータ40の第1端子t1と第2端子t2とを、a点とb点とにおいて電気的に結ぶ配線abと、c点とd点とにおいて電気的に結ぶ配線cdとを備えている。尚、図中において、配線については、各点(a,b,c…)を結ぶ線であるため、その符号の表示を省略している。配線abには、a点からb点に向かう方向の電流の流れを許容しb点からa点に向かう方向の電流の流れを阻止する第1ダイオードD1と、b点からa点に向かう方向の電流の流れを許容しa点からb点に向かう方向の電流の流れを阻止する第2ダイオードD2とが設けられている。配線cdには、c点側から順に、第1スイッチング素子SW1,第1抵抗器R1,第2抵抗器R2,第2スイッチング素子SW2が設けられている。第1抵抗器R1,第2抵抗器R2は、減衰力を設定する固定抵抗器である。本実施形態においては、第1スイッチング素子SW1,第2スイッチング素子SW2としてMOS−FETを使用するが他のスイッチング素子を使用することもできる。第1スイッチング素子SW1,第2スイッチング素子SW2は、それぞれゲートがサスペンションECU50に接続され、サスペンションECU50からのPWM(Pulse Width Modulation)制御信号により設定されるデューティ比でオンオフ作動するように構成されている。尚、本明細書におけるデューティ比とは、オンデューティ比、つまり、パルス信号のオン時間とオフ時間とを足し合わせた時間に対するパルス信号のオン時間の比を表す。
【0025】
また、第1端子t1とa点とは、配線t1aにより電気的に連結され、第2端子t2とb点とは、配線t2bにより電気的に連結されている。配線t1aには、電流センサ111が設けられている。電流センサ111は、電動モータ40に流れる電流を検出して、通電方向を示す情報を含めた測定値ixを表す検出信号をサスペンションECU50に出力する。
【0026】
また、配線abにおける第1ダイオードD1と第2ダイオードD2との間のe点と、配線cdにおける第1抵抗器R1と第2抵抗器R2との間のf点とは、配線efにより電気的に連結されている。第1スイッチング素子SW1と第1抵抗器R1との接続点となるg点には、車載電源バッテリとして設けられた蓄電装置110への充電路となる第1充電路giが分岐して設けられる。また、第2スイッチング素子SW2と第2抵抗器R2との接続点となるh点には、蓄電装置110への充電路となる第2充電路hiが分岐して設けられる。第1充電路giと第2充電路hiとは、i点と蓄電装置110の正極jとを結ぶ主充電路ijにi点で接続されている。また、f点と蓄電装置110の負極kとはグランドラインkfにより接続されている。尚、蓄電装置110には、車両内に設けられた各種の電気負荷が接続されている。
【0027】
第1充電路giには、g点からi点に向かう方向の電流の流れを許容しi点からg点に向かう方向の電流の流れを阻止する第3ダイオードD3が設けられる。また、第2充電路hiには、h点からi点に向かう方向の電流の流れを許容しi点からh点に向かう方向の電流の流れを阻止する第4ダイオードD4が設けられる。つまり、外部回路100から蓄電装置110への充電を許容し、蓄電装置110から外部回路100への放電を阻止するように充電回路が構成されている。
【0028】
次に、外部回路100の動作について説明する。電動モータ40は、車輪Wと車体Bとの相対運動によりボールねじ機構35を介してロータが回されると、その回転方向に応じた向きに誘導起電力を発生する。例えば、車輪Wと車体Bとが接近して電磁式ショックアブソーバ30が圧縮される圧縮動作時においては、電動モータ40の第1端子t1が高電位となり第2端子t2が低電位となる。逆に、車輪Wと車体Bとが離れて電磁式ショックアブソーバ30が伸ばされる伸長動作時においては、電動モータ40の第2端子t2が高電位となり第1端子t1が低電位となる。
【0029】
従って、電磁式ショックアブソーバ30が圧縮される圧縮動作時においては、c点、f点、e点、b点を通って、第1端子t1から第2端子t2に発電電流が流れる第1接続回路cfebが形成される。また、電磁式ショックアブソーバ30が伸ばされる伸長動作時においては、d点、f点、e点、a点を通って、第2端子t2から第1端子t1に発電電流が流れる第2接続回路dfeaが形成される。つまり、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作と伸長動作とで発電電流の流れる回路が異なるように構成されている。この例では、第1抵抗器R1が、第1端子t1から第2端子t2に流れる発電電流に対する抵抗となり、第1スイッチング素子SW1が、第1端子t1から第2端子t2に流れる発電電流の大きさ(通電量)を調整する電流調整器として機能する。また、第2抵抗器R2が、第2端子t2から第1端子t2に流れる発電電流に対する抵抗となり、第2スイッチング素子SW2が、第2端子t2から第1端子t1に流れる発電電流の大きさ(通電量)を調整する電流調整器として機能する。
【0030】
電動モータ40の電磁コイルに発電電流が流れることにより、電動モータ40に電磁力(発電ブレーキ)が働き、これによりボールねじナット39とボールねじ36との相対回転を抑制する。つまり、車体Bと車輪Wとの相対運動を抑制する減衰力が発生する。また、発電電流の大きさを調整することにより減衰力を調整することができる。従って、第1抵抗器R1の抵抗値と第1スイッチング素子SW1のデューティ比にて圧縮動作に対する減衰力を設定でき、第2抵抗器R2の抵抗値と第2スイッチング素子SW2のデューティ比にて伸長動作に対する減衰力を設定できる。つまり、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作方向と伸長動作方向とに対して、独立して減衰力を設定することができる。本実施形態においては、第1抵抗器R1の抵抗値は、第2抵抗器R2の抵抗値よりも大きくされており、基本的には、圧縮動作に対する減衰力が、伸長動作に対する減衰力よりも小さくなるように設定されている。
【0031】
また、このような減衰力の調整は、各輪ごとに電磁式ショックアブソーバ30の外部回路100のスイッチング制御により独立して行うことができるものである。
【0032】
また、電動モータ40で発生する誘導起電力は、モータ回転速度が大きくなるほど大きくなる。そして、誘導起電力(誘起電圧)が蓄電装置110の出力電圧(蓄電電圧)を越えると、電動モータ40で発電された電力の一部が蓄電装置110に回生される。例えば、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作時であれば、発電電流がg点で2方向に分流し、一方は、そのまま第1接続回路cfebを流れ、他方は、第1充電路giに流れる。従って、第1充電路giに流れた発電電流により蓄電装置110が充電される。また、電磁式ショックアブソーバ30の伸長動作時であれば、発電電流がh点で2方向に分流し、一方は、そのまま第2接続回路dfeaを流れ、他方は、第2充電路hiに流れる。従って、第2充電路hiに流れた発電電流により蓄電装置110が充電される。
【0033】
次に、電磁式ショックアブソーバ30により発生させる減衰力の制御について説明する。図4は、サスペンションECU50が実行する減衰力制御ルーチンを表すフローチャートである。この減衰力制御ルーチンは、サスペンションECU50のROM内に制御プログラムとして記憶されており、各輪の電磁式ショックアブソーバ30ごとに独立して実行される。減衰力制御ルーチンは、イグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの間、所定の短い周期(演算周期と呼ぶ)で繰り返し実行される。
【0034】
本減衰力制御ルーチンが起動すると、サスペンションECU50は、ステップS11において、ストロークセンサ61により検出される車輪Wと車体Bとの上下方向の離間距離であるストロークSを読み込む。続いて、ステップS12において、ストロークSを時間で微分処理してストローク速度Vsを計算する。このとき、バンドパスフィルタ処理を行ってストローク速度信号からバネ上共振周波数域成分(例えば、0.1Hz〜3.0Hz)を抽出してストローク速度Vsを求めるとよい。
【0035】
続いて、ストローク速度Vsの方向(符号)から、電磁式ショックアブソーバ30が圧縮動作している状態か否かを判断する。電磁式ショックアブソーバ30が圧縮動作している場合(S13:Yes)には、目標減衰力F*をF*=C1・Vsとして計算し(S14)、電磁式ショックアブソーバ30が伸長動作している場合(S13:No)には、目標減衰力F*をF*=C2・Vsとして計算する(S15)。このC1,C2は、減衰係数であって、圧縮動作に対する減衰力を伸長動作に対する減衰力よりも小さくするために、減衰係数C1は、減衰係数C2よりも小さく設定されている。
【0036】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS16において、フラグFの設定状態を確認し、F=1であるか否かを判断する。このフラグFは、車両の使用度合と電動モータ40のブラシの消耗度合とのバランス判定結果を表すもので、後述するブラシ消耗バランス判定ルーチン(図6)により設定される。フラグFは、車両の使用度合に比べてブラシの消耗度合が進んでいる場合にはF=1に設定され、逆に、車両の使用度合に比べてブラシ消耗度合が進んでいない場合にはF=0に設定される。このステップS16においては、ブラシ消耗バランス判定ルーチンで設定されているフラグFを読み込んで判断する。
【0037】
サスペンションECU50は、フラグFが「1」である場合には、ステップS17において、補正係数Kを読み込み、ステップS18において、目標減衰力F*に補正係数Kを乗じた値(K・F*)を求め、求めた値を新たな目標減衰力F*とする。一方、フラグFが「0」である場合には、ステップS17,18の処理をスキップする。つまり、目標減衰力F*を補正しない。この補正係数Kは、「1」より大きな値であって、後述するブラシ消耗バランス判定ルーチンにおいて計算されるものである。従って、ステップS17においては、ブラシ消耗バランス判定ルーチンで計算された補正係数Kの読み込む処理が行われる。
【0038】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS19において、目標減衰力F*が得られるための発電電流値である目標電流i*を計算する。目標電流i*は、目標減衰力F*をトルク定数で除算することにより求められる。尚、目標電流i*は、電磁式ショックアブソーバ30の伸縮動作を妨げる方向に発電電流を流して減衰力を発生させるものであるため、その通電方向は、電磁式ショックアブソーバ30の動作方向に応じて異なる。つまり、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作時であれば、第1端子t1から第1接続回路cfebを通って第2端子t2に流れる向きとなり、電磁式ショックアブソーバ30の伸長動作時であれば、第2端子t2から第2接続回路dfeaを通って第1端子t1に流れる向きとなる。
【0039】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS20において、電流センサ111により検出される実電流ixを読み込む。次に、ステップS21において、第1スイッチング素子SW1あるいは第2スイッチング素子SW2にPWM制御信号を送ってデューティ比を調整することにより、実電流ixが目標電流i*と等しくなるように、目標電流i*と実電流ixの偏差Δi(=i*−ix)に基づくフィードバック制御(例えば、PID制御)を行う。この場合、サスペンションECU50は、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮動作時であれば第1スイッチング素子SW1のデューティ比を調整することにより、電磁式ショックアブソーバ30の伸長動作時であれば第2スイッチング素子SW2のデューティ比を調整することにより、電動モータ40に流れる発電電流が目標電流i*と等しくなるように制御する。尚、デューティ比を調整しない側のスイッチング素子(圧縮動作時であれば第2スイッチング素子SW2,伸長動作時であれば第1スイッチング素子SW1)については、デューティ比を例えば0%に固定しておけばよい。
【0040】
サスペンションECU50は、こうした減衰力制御ルーチンを所定の短い周期で繰り返す。従って、電磁式ショックアブソーバ30の圧縮方向と伸長方向とでそれぞれ適した特性の減衰力を発生させることができる。
【0041】
次に、電動モータ40のブラシの消耗状態を推定する処理について説明する。ブラシの消耗量は、モータ回転数(今までにロータが回転したトータル回転数)に支配される。そこで、本実施形態においては、モータ回転数からブラシの消耗状態を推定する。図5は、サスペンションECU50が実行するブラシ消耗状態推定ルーチンを表すフローチャートである。このブラシ消耗状態推定ルーチンは、サスペンションECU50のROM内に制御プログラムとして記憶されており、各輪の電磁式ショックアブソーバ30ごとに独立して実行される。
【0042】
イグニッションスイッチがオンされると、ブラシ消耗状態推定ルーチンが起動する。サスペンションECU50は、まず、ステップS31において、ストロークセンサ61により検出されるストロークSnを読み込む。尚、この処理は、所定の演算周期で繰り返されるため、ここでは、今回読み込まれたストロークと前回読み込まれたストロークとを区別するために今回読み込まれたストロークをストロークSnとして表している。
【0043】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS32において、前回の演算タイミングから今回の演算タイミングまでの期間(演算周期)において電動モータ40が回転した回転数ΔNを次式により計算する。
ΔN=(|Sn−Sn-1|)/L
ここで、Sn-1は、前回の演算タイミングにおいて読み込まれたストロークを表す。また、Lは、電磁ショックアブソーバ30のボールねじ36のリードである。尚、ブラシ消耗状態推定ルーチンの起動時においては、ストロークSn-1が求められないので、回転数ΔNは、固定値、例えば、「0」に設定される。
【0044】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS33において、イグニッションスイッチがオンしてからの電動モータ40の回転数Nを次式により計算する。
N=N+ΔN
尚、回転数Nの初期値は、「0」である。続いて、ステップS34において、ステップS31にて読み込んだストロークSnをストロークSn-1として記憶する。
【0045】
サスペンションECU50は、ステップS35において、イグニッションスイッチがオフされたか否かを判断し、イグニッションスイッチがオフされるまで、ステップS31〜ステップS35の処理を繰り返す。従って、演算周期ごとに求められる電動モータ40の回転数ΔNが累積されて、イグニッションスイッチがオンされてからの電動モータ40の回転数Nが計算される。この回転数Nは、イグニッションスイッチがオンされている期間における電動モータ40のブラシが摺動した距離に相当する。
【0046】
サスペンションEUC50は、ステップS35において、イグニッションスイッチがオフされたことを検出すると、ステップS36において、電動モータ40のトータル回転数Ntotalを次式により計算し、その値をサスペンションECU50内に設けられた不揮発性メモリ(図示略)に記憶する
Ntotal=Ntotal+N
この場合、前回までのトータル回転数Ntotalを不揮発性メモリから読み出し、そのトータル回転数Ntotalに今回のイグニッションスイッチのオン期間における回転数Nを加算し、その値を新たなトータル回転数Ntotalとする。そして、不揮発性メモリに記憶されている前回までのトータル回転数Ntotalを、今回計算した新たなトータル回転数Ntotalに書き換える。
【0047】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS37において、今回のイグニッションスイッチのオン期間における回転数Nが、最大使用回転数Nmaxよりも大きいか否かを判断する。この最大使用回転数Nmaxは、1回のイグニッションスイッチがオンされている期間における今までの車両の使用履歴内での最大値であり、不揮発性メモリに記憶されている。従って、このステップS37においては、不揮発性メモリから最大使用回転数Nmaxを読み出し、この最大使用回転数Nmaxと今回の回転数Nとを比較する。そして、今回の回転数Nが最大使用回転数Nmaxより大きい場合(S37:Yes)には、ステップS38において、今回の回転数Nを最大使用回転数Nmaxとして不揮発性メモリに記憶する。つまり、最大使用回転数Nmaxを今回の回転数Nに書き換える。そして、ブラシ消耗状態推定ルーチンを終了する。一方、今回の回転数Nが最大使用回転数Nmax以下である場合(S37:No)には、ステップS38の処理をスキップして、ブラシ消耗状態推定ルーチンを終了する。
【0048】
このようにして記憶されたトータル回転数Ntotalは、電動モータ40のブラシの消耗状態を表す指標となり、後述するブラシ消耗バランス判定ルーチン(図6)にて使用される。また、最大使用回転数Nmaxは、ブラシ交換アナウンス制御ルーチン(図7)にて使用される。
【0049】
次に、車両の使用度合とブラシの消耗度合とのバランスを判定する処理について説明する。図6は、サスペンションECU50が実行するブラシ消耗バランス判定ルーチンを表すフローチャートである。このブラシ消耗バランス判定ルーチンは、サスペンションECU50のROM内に制御プログラムとして記憶されており、各輪の電磁式ショックアブソーバ30ごとに独立して実行される。
【0050】
イグニッションスイッチがオンされると、ブラシ消耗バランス判定ルーチンが起動する。サスペンションECU50は、まず、ステップS41において、不揮発性メモリに記憶されているトータル回転数Ntotalを読み込む。このトータル回転数Ntotalは、上述したブラシ消耗状態推定ルーチンのステップS36において記憶された情報である。続いて、ステップS42において、メータECU70から走行距離Ytotalを読み込む。続いて、ステップS43において、下記のブラシ消耗バランス判定式が成立するか否かを判断する。
(Ntotal/Nlimit)>(Ytotal/Ytarget)
ここで、Nlimitは、電動モータ40のブラシの寿命に相当するモータ回転数Nを表し、Ytargetは、予め設定された車両の耐久走行距離である。
【0051】
このブラシ消耗バランス判定式において、左辺は、ブラシの寿命に対する現時点におけるブラシの消耗状態の比(=ブラシ消耗度合)を表す。一方、右辺は、車両の耐久走行距離に対する現時点までの走行距離の比(=車両使用度合)を表す。左辺の値が右辺の値より大きい場合は、車両使用度合よりもブラシ消耗度合が進んでいることを表す。こうした状況においては、車両の走行距離が耐久走行距離に到達する前にブラシが寿命に到達する。一方、左辺の値が右辺の値より小さい場合は、ブラシ消耗度合よりも車両使用度合が進んでいることを表す。従って、車両の走行距離が耐久走行距離に到達する前にブラシが寿命に達することはない。
【0052】
サスペンションECU50は、ステップS43において、ブラシ消耗バランス判定式が成立すると判断した場合には(S43:Yes)、車両使用度合よりもブラシ消耗度合が進んでいると判定して、ステップS44において、フラグFを「1」に設定する。そして、ステップS46において、補正係数Kを下記式により算出する。この補正係数Kは、上述した減衰力制御ルーチンのステップS18において、目標減衰力F*に乗算される係数である。
K=(Ntotal/Ytotal)/((Nlimit−Ntotal)/(Ytarget−Ytotal))
補正係数Kを表す式の分子は、走行距離Ytotalに対するブラシの消耗状態Ntotalの比を表し、分母は、耐久走行距離Ytargetまでの残り走行可能距離に対するブラシの寿命Nlimitまでの残り使用可能回転数を表す。従って、この補正係数Kは、車両使用度合よりもブラシ消耗度合が大きい(進んでいる)場合には、「1」より大きな正の値であって、車両使用度合よりもブラシ消耗度合が大きいほど(進むほど)大きくなる値に設定される。
【0053】
一方、ステップS43において、ブラシ消耗バランス判定式が成立しないと判断した場合には(S43:No)、ブラシ消耗度合は車両使用度合よりも進んでいないため、ステップS45において、フラグFを「0」に設定する。
【0054】
サスペンションECU50は、ステップS45あるいはステップS46の処理を行うと、ブラシ消耗バランス判定ルーチンを終了する。そして、サスペンションECU50は、このブラシ消耗バランス判定ルーチンで設定したフラグFにしたがって、減衰力制御ルーチン(図4)における目標減衰力F*を変更する。つまり、車両使用度合よりもブラシ消耗度合が進んでいる場合(F=1)には、目標減衰力F*に補正係数K(>1)を乗算する(S18)。電磁式ショックアブソーバ30における減衰力は、車体Bと車輪Wとの接近・離間運動を抑制する力であり、ボールねじ機構35が伸縮する動作を抑制する力である。従って、目標減衰力F*の大きさ(絶対値)が大きくなるほど、電動モータ40の回転が抑えられてブラシの消耗の進む速度が遅くなる。この結果、車両使用度合よりもブラシ消耗度合が進んでしまうといったアンバランスが防止され、ブラシの交換(電動モータ40の交換を含む)をできるだけしなくて済むようになる。また、ブラシの消耗バランスに応じた減衰力制御は、各車輪Wの電磁式ショックアブソーバ30ごとに行われるため、特定の電磁式ショックアブソーバ30の電動モータ40だけがブラシ消耗が進んでしまうといったことも防止できる。
【0055】
上述したブラシの消耗バランスに応じた減衰力制御を行っても、ブラシの消耗が進んでブラシ交換の必要性が生じる場合がある。そこで、サスペンションECU50は、ブラシ交換の必要性を運転者にアナウンスする機能を備えている。図7は、サスペンションECU50が実行するブラシ交換アナウンス制御ルーチンを表すフローチャートである。このブラシ交換アナウンス制御ルーチンは、サスペンションECU50のROM内に制御プログラムとして記憶されている。
【0056】
イグニッションスイッチがオンされると、ブラシ交換アナウンス制御ルーチンが起動する。サスペンションECU50は、ステップS51において、最大使用回転数Nmaxを読み込む。この最大使用回転数Nmaxは、イグニッションスイッチがオンされている期間における今までの車両の使用履歴内での回転数Nの最大値であり、各電磁式ショックアブソーバ30ごとにその情報が不揮発性メモリに記憶されている。従って、このステップS51では、4つの電磁式ショックアブソーバ30における最大使用回転数Nmaxが不揮発性メモリから読み込まれることになる。
【0057】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS52において、トータル回転数Ntotalを読み込む。このトータル回転数Ntotalも、各電磁式ショックアブソーバ30ごとにその情報が不揮発性メモリに記憶されている。従って、このステップS52では、4つの電磁式ショックアブソーバ30におけるトータル回転数Ntotalが不揮発性メモリから読み込まれることになる。
【0058】
続いて、サスペンションECU50は、ステップS53において、下記のブラシ交換判定式が成立するか否かについて、各電磁式ショックアブソーバ30ごとに判断する。
λ(Nlimit−Ntotal)≦Nmax
ここで、λは、安全率であり予め設定された値である。
【0059】
サスペンションECU50は、4つの電磁式ショックアブソーバ30すべてにおいてブラシ交換判定式が成立しない場合(S53:No)には、ブラシ交換の必要性が無いと判定して、ブラシ交換アナウンス制御ルーチンを終了する。一方、4つの電磁式ショックアブソーバ30のうち一つでもブラシ交換判定式が成立する場合(S53:Yes)には、ステップS54において、運転者に対してブラシ交換の必要性をアナウンスする。例えば、運転席正面パネルに設けられたディスプレイにブラシ交換メッセージを表示する。あるいは、音声ガイドシステムを利用してブラシ交換メッセージを発声する。あるいは、単に、ウォーニングラングを点灯するようにしてもよい。また、サスペンションECU50は、同時に、ブラシの消耗を表すエラーコード、および、ブラシ交換が必要となった電磁式ショックアブソーバ30を特定するデータ等を不揮発性メモリに記憶する。
【0060】
サスペンションECU50は、ブラシ交換の必要性をアナウンスすると、ブラシ交換アナウンス制御ルーチンを終了する。これにより、運転者は、イグニッションスイッチをオン操作した時点で、ブラシ交換の必要性を知ることができる。また、ブラシ交換アナウンスは、ブラシが寿命に達する前の段階(ブラシが寿命に達する前に所定の距離だけ車両走行できる段階)で行われるため、車両を走行させてディーラー等の修理現場に持っていくことができる。
【0061】
以上説明した本実施形態のサスペンション装置によれば、ブラシ付モータを使った低コストの電磁式ショックアブソーバ30を用いて、圧縮動作と伸長動作とで独立した特性にて減衰力制御を行うことができる。また、電動モータ40のブラシ消耗度合が車両使用度合よりも進んでいる場合には、ブラシ消耗度合が車両使用度合よりも進むほど大きくなる補正係数Kを算出し、この補正係数Kを目標減衰力F*を乗じることにより目標減衰力F*を補正するため、車両使用度合よりもブラシ消耗度合が進んでしまうといったアンバランスが防止される。このため、ブラシ交換をできるだけしなくて済むようになる。また、ブラシ消耗度合が車両使用度合よりも低くなれば、目標減衰力F*を本来の値に戻すため、過剰に目標減衰力F*が大きくなってしまうこともない。この結果、ブラシ消耗の抑制と、適正な減衰力制御とを両立させることができる。
【0062】
また、車両の耐久走行距離に対する現時点までの走行距離の比を車両使用度合とし、ブラシの寿命に対する現時点におけるブラシの消耗状態の比をブラシ消耗度合として、車両使用度合とブラシ消耗度合との大きさの比較からブラシ消耗状況のバランスを判定するため、そのバランス判定が容易で、かつ、適正なものとなる。
【0063】
尚、本実施形態においてブラシ消耗状態推定ルーチンにおけるステップS31〜S36の処理、および、ブラシ消耗バランス判定ルーチンにおけるステップS43の左辺の計算を行うサスペンションECU50の機能部が本発明のブラシ消耗度合算出手段に相当する。また、本実施形態においてブラシ消耗バランス判定ルーチンにおけるステップS41〜S42の処理、および、ステップS43の右辺の計算を行うサスペンションECU50の機能部が本発明の車両使用度合算出手段に相当する。また、本実施形態においてブラシ消耗バランス判定ルーチンにおけるステップS43〜S45の処理を行うサスペンションECU50の機能部が本発明のバランス判定手段に相当する。また、本実施形態において減衰力制御ルーチンを実行するサスペンションECU50の機能部が本発明の減衰力制御手段に相当する。また、本実施形態においてブラシ消耗バランス判定ルーチンにおけるステップS46の処理、および、減衰力制御ルーチンにおけるステップS16〜S18の処理を行うサスペンションECU50の機能部が本発明の減衰力補正手段に相当する。
【0064】
以上、本実施形態のショックアブソーバ装置を備えたサスペンション装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、本実施形態においては、電磁式ショックアブソーバ30は、電動モータ40の発電により減衰力を発生するものであるが、大きな減衰力を必要とする場合には、電源装置(例えば、蓄電装置110)から電動モータ40に電源供給して電動モータ40の駆動力により減衰力を発生させる構成を加えたものであってもよい。また、本実施形態においては、電動モータ40で発電した電力を車載電源バッテリに回生する構成であるが、各外部回路100内に蓄電装置を設け、発電電力で蓄電装置に充電するとともに、蓄電装置に蓄電された電力を利用して電動モータ40を駆動するようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、ストローク速度Vsに基づいて目標減衰力F*を設定しているが、例えば、各車輪W位置に車体Bの上下加速度を検出するばね上加速度センサを追加して設け、ばね上加速度センサにより検出したばね上加速度をサスペンションECU50に取り込んで、ストローク速度Vsとばね上加速度とを用いて目標減衰力F*を設定する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…サスペンション本体、20…コイルスプリング、30…電磁式ショックアブソーバ、40…電動モータ、50…サスペンションECU、61…ストロークセンサ、70…メータECU、100…外部回路、110…蓄電装置、111…電流センサ、SW1,SW2…スイッチング素子、R1,R2…抵抗器、D1,D2,D3,D4…ダイオード、t1,t2…端子、B…車体、W…車輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対する車輪の相対的な上下運動によりロータが回されるブラシ付モータを備え、前記ロータが回されることにより前記ブラシ付モータで発生した電磁力にて前記車体に対する車輪の相対的な上下運動を抑制する減衰力を発生させる電磁式ショックアブソーバと、
前記ブラシ付モータで発生する電磁力を調整して前記減衰力を制御する減衰力制御手段と
を備えたショックアブソーバ装置において、
前記ブラシ付モータの回転数に基づいて前記ブラシ付モータのブラシの消耗状態を推定し、前記ブラシの寿命に対する前記推定した消耗状態の比をブラシ消耗度合として算出するブラシ消耗度合算出手段と、
車両の走行距離情報を取得し、車両の耐久走行距離に対する前記取得した走行距離の比を車両使用度合として算出する車両使用度合算出手段と、
前記算出したブラシ消耗度合と車両使用度合とのバランスを判定するバランス判定手段と、
前記バランス判定手段により、前記車両使用度合に比べて前記ブラシ消耗度合が大きいと判定された場合には、前記減衰力制御手段により制御される減衰力を高くする側に補正する減衰力補正手段と
を備えたことを特徴とするショックアブソーバ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−20567(P2011−20567A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167437(P2009−167437)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】