説明

シリコン基板の加工方法

【課題】第1の貫通口と連通する複数の第2の貫通口が形状精度よく形成された構造体を歩留まりよく得ることが可能なシリコン基板の加工方法を提供する。
【解決手段】第1のシリコン基板102と、第2のシリコン基板101と、第1のシリコン基板102と、第2のシリコン基板101との間に設けられ、複数の凹部109が設けられた中間層103と、の組を用意し、第1のシリコン基板102の中間層103との接合面の裏の面側から、第1のマスクを使用して第1のシリコン基板102をエッチングして第1の貫通口107を形成し、中間層103の複数の凹部109に対応する部分を露出させ、凹部109の底部部分を除去して中間層に複数の開口を形成し、開口が形成された中間層をマスクとして第2のシリコン基板101に第2のエッチングを行うことにより第2の貫通口108を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコン基板の加工方法に関する。また、好ましくは、液体を吐出する液体吐出ヘッドに使用される液体吐出ヘッド用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンを加工することによって得られる微細な構造体はMEMS分野、電気機械の機能デバイスに幅広く使用されている。その一例として液体を吐出する液体吐出ヘッドが挙げられる。
【0003】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いる例としては、インクを被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方式に適用されるインクジェット記録ヘッドが適用される。
【0004】
インクジェット記録ヘッドは、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子が設けられた基板と、基板に設けられた液体の供給口から供給されたインクを吐出する吐出口を備えている。
【0005】
特許文献1には、このようなインクジェット記録ヘッドの製造方法として以下の方法が開示されている。
【0006】
まず、複数の開口部を有するマスクを第1のシリコン基板と第2のシリコン基板で挟み込み、第1のシリコン基板を第2のシリコン基板に向かってエッチングして第1のシリコン基板を貫通する第1の貫通口を形成することによりマスクの複数の開口部を露出させる。そしてエッチングを継続して、露出したマスクを利用して引き続き第2のシリコン基板をエッチングし、複数の開口に対応した第2の貫通口を形成することにより第1および第2のシリコン基板を貫通する供給口を形成するものである。
【0007】
しかしながら第1のシリコン基板をエッチングするときの基板の厚さ方向のエッチング速度は、シリコン基板の面内で部分ごとに異なる傾向がある。そのため、エッチング速度が速かった部分に形成された第2の貫通口は、他の第2の貫通口と比較して予め定めた形より、シリコン基板の面方向に広がって形成されてしまうことが考えられる。その結果、第2の貫通口の大きさがばらつき所望の供給特性が得られない懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】USP6679587
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した課題を鑑み、第1の貫通口と連通する複数の第2の貫通口が形状精度よく形成された構造体を歩留まりよく得ることが可能なシリコン基板の加工方法を提供することを目的の一つとする。
【0010】
また本発明は、第1の貫通口と連通する複数の第2の貫通口が形状精度よく形成され供給特性が安定した液体吐出ヘッドを歩留まり良く得ることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一例は、
(a)第1のシリコン基板と、第2のシリコン基板と、前記第1のシリコン基板と第2のシリコン基板との間に設けられ、複数の凹部が設けられた中間層と、の組を用意する工程と、
(b)前記第1のシリコン基板の前記中間層との接合面の裏の面側から、第1のマスクを使用して前記第1のシリコン基板をエッチングすることにより前記第1のシリコン基板を貫通する第1の貫通口を形成し、前記中間層の前記複数の凹部に対応する部分を露出させる工程と、
(c)前記複数の凹部の底部を構成する部分を除去して前記中間層に複数の開口を形成する工程と、
(d)前記複数の開口が形成された中間層をマスクとして前記第2のシリコン基板に第2のエッチングを行うことにより前記第2のシリコン基板を貫通する第2の貫通口を形成する工程と、
を有するシリコン基板の加工方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一例によれば、中間層により第1のエッチングを停止することにより、第2の貫通口を形成する際に第1のエッチングのばらつきの影響を受けにくく、第2の貫通口が形状精度よく形成された構造体を歩留まりよく得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図2】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図6】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図7】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図8】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の構造体の製造方法は、液体吐出ヘッド用基板の製造方法の他、加速度センサー等のマイクロマシーンの製造方法に応用可能である。
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1に、本発明により液体吐出ヘッド用の基板を製造する方法を示す。
【0017】
まず、図1(A)に示すように、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を有するエネルギー発生素子104を有する第2のシリコン基板101と、第1のシリコン基板102を用意する。これらシリコン基板の少なくとも片方に中間層103を形成し、供給口を形成する際にマスクとして用いるための複数の凹部109を中間層103に形成しておく。具体的には、第1のシリコン基板102に中間層103を形成し、中間層103に供給口を形成するための第1のパターン形状を形成する。その際、中間層103は、第1のシリコン基板102が露出するまで開口せず、任意の膜厚を残す。
【0018】
中間層103は、後工程の第1のドライエッチング時のストッパーとして機能すると同時に、後工程の第2のドライエッチング時の第1のマスクとしても機能する。つまり、本実施形態では、第1のエッチング(例えばドライエッチング又は結晶異方性エッチング)で共通液室を形成する際にストッパーとして機能し、第2のエッチング(例えばドライエッチング)で供給口を形成する際にマスクとして機能する。この第1のパターン形状を有する中間層をシリコン基板の間に設けておくことにより、精度良く段差を有する開口を形成することができる。また、ボッシュプロセスにおけるクラウン状残渣や肩落ちの発生を防ぐこともできる。
【0019】
中間層の材料としては、樹脂材料、シリコン酸化物、シリコン窒化物、炭化シリコン、シリコン以外の金属又はその金属酸化物若しくは窒化物等が挙げられる。つまり、樹脂層、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、炭化シリコン膜、シリコン以外の金属膜又はその金属酸化膜若しくは窒化膜等で構成することができる。樹脂層としては例えば感光性樹脂層が挙げられる。これらの中でも、中間層として、形成が容易であることから、感光性樹脂層やシリコン酸化膜を用いることが好ましい。
【0020】
第2のシリコン基板101の厚さは、例えば50〜800μmである。供給口(第2の貫通口)の形状の観点から、100〜200μmとすることが好ましい。
【0021】
第1のシリコン基板102の厚さは、例えば100〜800μmである。共通液室((第1の貫通口)の形状の観点から、300〜600μmとすることが好ましい。
【0022】
次に、図1(B)に示すように、中間層103を媒体として、第1のシリコン基板102と、第2のシリコン基板101とを接合する。
【0023】
接合の方法に関しては、樹脂材料等による接着、活性化させた表面同士を接触させて自発的に接合が進むフュージョン接合、共晶接合、拡散接合等がある。
【0024】
次に、図1(C)に示すように、第2のシリコン基板101の表面に、吐出口及び吐出口と連結する液体流路を構成する流路形成層105を形成する。
【0025】
次に、図1(D)に示すように、第1のシリコン基板102の表面に、共通液室を形成する際にマスクとして用いるための第2のパターン形状を有する第2のマスク106を形成する。
【0026】
第2のマスク106の材料としては、通常マスクとして用いられる材料であれば特に制限されずに用いることができ、例えば有機材料やシリコン化合物や金属膜等が挙げられる。有機材料としては例えばフォトレジストが挙げられる。シリコン化合物としては例えばシリコン酸化膜が挙げられる。金属膜としては例えば、クロムやアルミが挙げられる。また、それらの材料が多層に積層されたものを用いる場合もある。
【0027】
次に、図1(E)に示すように、第2のマスク106を用いて第1のエッチングを中間層が露出するまで行い、共通液室(第1の開口)107を形成する。第1のエッチングとしては、例えば、ドライエッチングや結晶異方性エッチングが挙げられる。なお、本実施形態では第1のエッチングとしてドライエッチングを用いた場合について説明する。
【0028】
ここで、中間層103は、マスクとして機能する程度にシリコンよりもエッチングレートが遅い材料から構成される。したがって、共通液室107のエッチングは、第1のパターン形状の開口部分を除いて、中間層103にてストップする。即ち、中間層103は、第1のドライエッチングのストッパーとして機能する。
【0029】
この際、中間層103は貫通パターン形状が形成されていないため、共通液室107側から見ると、第2のシリコン基板101は全く露出していない。したがって、第1のドライエッチングにより第2のシリコン基板101のエッチングが進んでしまうことはない。
【0030】
次いで、図1(F)に示すように、中間層103の凹部の底部を形成する部分を除去して開口109を形成する。
【0031】
次に、図1(G)に示すように、第1のマスクとしての中間層103を用いて、供給口108を第2のエッチングにて形成する。供給口は共通液室と連通して形成される。第2のエッチングとしてはドライエッチングを用いることが好ましい。なお、本実施形態では第2のエッチングとしてドライエッチングを用いた場合について説明する。
【0032】
第2のドライエッチングとしては、第1のドライエッチングと同じ種類の方法が挙げられる。また、エッチング条件を変えて実施することもでき、例えば所定のアスペクト比に好ましい条件にして第2のドライエッチングを実施することもできる。
【0033】
また、上述のように、シリコンのドライエッチングにおいて、中間層103は十分にエッチングレートが遅いため、中間層103は供給口108を形成するマスクとして機能する。
【0034】
次に、図1(H)に示すように、第2のマスク106を除去して液体吐出ヘッドを用基板に流路形成層105が設けられた液体吐出ヘッドが得られる。
【0035】
以上の方法により、液体吐出ヘッド用のシリコン基板を加工することができる。本発明は、一方の面側からのドライエッチング処理で済むため、流路形成層が形成された状態で共通液室及び供給口を形成することができる。そして、共通液室と供給口を形成するためのドライエッチングを、完全に分離することができるため、面内全域で、さらに精度の高い形状制御を実現することができる。なお、本発明の一実施形態は、液体吐出ヘッドの製造方法としても把握できる。
【0036】
以下に、接合方法や中間層について更に詳しく説明する。
【0037】
中間層として樹脂材料を選択した場合、例えば以下の方法によりシリコン基板を接着することができる。まず、シリコン基板に樹脂を塗布、パターニングして中間層を形成した後、該中間層を挟んでシリコン基板を積層させる。そして、ガラス転移温度以上に昇温した状態で圧力を印加し、接着することができる。一般的な樹脂材料は、ほぼ全てがその対象である。樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテルアミド系樹脂等が挙げられる。
【0038】
アクリル系樹脂としては、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂が挙げられる。シリコン系樹脂としては、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)樹脂が挙げら得る。エポキシ系樹脂としては、例えば、化薬マイクロケム製のSU−8(商品名)が具体的に挙げられる。ポリエーテルアミド系樹脂としては、例えば、日立化成製のHIMAL(商品名)、BCB(Benzocyclobutene)、HSQ(HydrogensSlises−Quioxane)等が具体的に挙げられる。これらの材料は、300℃前後の温度で接着が可能なため、液体吐出エネルギー発生素子のトランジスターや配線にダメージを与えることはない。
【0039】
第1のパターン形状を形成する方法については、感光性を有する樹脂材料の場合はリソグラフィー法を用いてパターニングすることができる。感光性を有しない樹脂材料の場合は、エッチングによって行うことができる。シリコンを含まない樹脂層であれば、例えばO、O/CF、O/Ar、N、H、N/H,NH等のガスを用いたプラズマ法にてエッチングできる。シリコンを含有する樹脂層に関しては、それらのガスにCF、CHF等のフルオロカーボン系のガスを添加することでエッチングできる。
【0040】
また、他の接合方法として、接合する表面をプラズマ処理することによってダングリングボンドを形成して接合する、フュージョン接合と呼ばれる方法がある。このフュージョン接合には、大きく分けて2つの方法がある。
【0041】
第一の方法は、中間層の表面をプラズマ処理した後、大気中に曝してOH基を形成し、シリコン基板表面と水素結合を介して接合するものである。OH基は、大気中の水分と反応することにより形成されるが、積極的に水分を付加しても良い。この方法を適用できる中間層の材料としては、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、炭化シリコン等が挙げられる。また、その他、表面に酸化膜を形成し易い金属材料や金属酸化物、一部の樹脂材料などが挙げられる。常温で仮接合を行った後、200〜300℃程度のアニール処理をすることにより、OH基同士の脱水反応によりHOが脱離して、O原子を仲介とした強固な接合を得ることができる。ただし、分子間力が及ぶ範囲にまで表面同士を接近させなければならないため、表面粗さにして1nm以下の値を有することが望ましい。
【0042】
第2の方法は、水素結合を介さず、真空中でそのままダングリングボンド同士を接合させるものである。この方法も、表面粗さにして1nm以下の値が必要と言われているが、研磨等によりそれを実現できれば、理論上あらゆる材料で接合が可能である。シリコン系の材料では、少なくとも、シリコン酸化膜同士、シリコン窒化膜同士、あるいは、それぞれの膜とシリコンとの接合が確認されている。シリコン酸化膜、シリコン窒化膜のパターニングは、CF、CHF、C、C、C、C、C等のフルオロカーボン系のガスを用いたプラズマによって実施することができる。また、シリコン酸化膜は、例えば、フッ酸をベースとしたウェットエッチングによってもパターニングできる。また、シリコン窒化膜は、例えば、熱リン酸を用いたウェットエッチングによってもパターニングできる。また、中間層の材料が金属材料や金属酸化物の場合も、接合前にパターニングを施せるものであれば、本発明に適用できる。
【0043】
また、他の接合方法として、共晶接合や拡散接合を用いることもできる。共晶接合であれば、例えば、金と金、金とシリコン、金と錫、金とゲルマニウム、銅と錫、パラジウムとインジウム等の組み合わせが知られている。拡散接合であれば、例えば、金と金、銅と銅、アルミニウムとアルミニウム等の組み合わせが知られている。
【0044】
次に、中間層とシリコン基板とドライエッチングの関係について説明する。
【0045】
例えば、ドライエッチングによるシリコンの深堀の代表的なものとして、ボッシュプロセスが知られている。これは、例えばCのようなCリッチのフルオロカーボン系ガスプラズマによるデポ膜の形成、SFプラズマのイオン成分による側面以外のデポ膜除去、ラジカルによるシリコンエッチングを繰り返し行うものである。このボッシュプロセスにおいては、通常のレジストマスクに対するシリコンのエッチングレート比50以上を容易に得ることができる。例えば中間層に樹脂材料を用いる場合は、材料の組成がレジストマスクに近いため、ほとんどの樹脂材料で同程度の結果が得られる。中間層としての樹脂材料の成膜厚は、例えば数百nm〜数十μm程度であるが、これはシリコンを例えば深さ50〜800μmエッチングするためのマスクやストッパーとしては十分な数値である。
【0046】
シリコン酸化膜では、シリコン酸化膜に対するシリコンのエッチングレート比が100以上得られることが知られている。シリコン酸化膜は、熱酸化法を用いた場合、例えば25μm以上の膜厚まで形成できることが知られており、膜質やプロセス難易度を考慮すると好ましくは2μm以下の膜厚が望ましい。また、プラズマCVD法を用いた場合、例えば50μm以上の膜厚まで形成できることが知られており、膜質やプロセス難易度を考慮すると好ましくは10μm以下の膜厚が望ましい。これらの膜厚はシリコン酸化膜をマスクとして用いてシリコンを例えば深さ50〜800μmエッチングするには十分な数値である。
【0047】
シリコン以外の金属や金属酸化物には、シリコンに対してさらに高い選択比が得られるものもある。Fラジカルとの反応性が低い材料が特に好適であり、例えばクロム、アルミ等では1000を超えるエッチングレート比を得られる場合もある。金属又は金属酸化物等の成膜厚は、一般的に数μm程度である。所望のエッチング深さを得るためには、その材料のシリコンとのエッチングレート比を考慮して、成膜厚を適宜選択することが望ましい。
【0048】
ここまで、シリコンのドライエッチングにボッシュプロセスを使用することを前提に説明したが、もちろんそれに限られたものではない。その他の一般的なエッチングプロセスでも、中間層の材料と膜厚を適切に選択することで本プロセスを実施できる。
【0049】
本発明の利点は、共通液室の底部形状を理想的に平坦にできるとともに、面内で深さを均一にできることにもある。すなわち、中間層をストッパーとして形状が規定されるため、装置の面内分布や経時変化に依存することなく均一な深さに加工することができる。また、供給口の間口にクラウン状残渣や肩落ちのない、良好な垂直形状を得ることができる。従来のデュアルマスクプロセスでは、供給口を形成する際のエッチングのマスクは先にエッチングされたシリコンの形状そのものであったのに対し、本プロセスではマスクとして機能する中間層を用いる。したがって、肩落ちのような間口が侵食される現象を、容易に抑えることができる。
【0050】
また、本発明においてボッシュプロセスを用いた場合、エッチングの終点検出が容易に可能となる。シリコンエッチングでは、一般的に反応生成物であるSiFの発光強度(440nm)の減少をモニターすることにより、エッチングの終了を検知することができる。しかし、従来製法では、供給口のエッチングが終了しても、それよりも面積の広い共通液室の底面のシリコンのエッチングが継続しているため、バックグラウンドの信号が大きすぎて、供給口エッチングの終了検知は困難な場合があった。一方、本発明においては、供給口エッチングの際には共通液室のエッチングは既に終了しているため、終点検知が容易となる。これにより、プロセスの再現性を高めることができる。
【0051】
さらに、本発明には、共通液室と供給口のエッチング条件を異なるものにすることができるという利点もある。共通液室と供給口では開口率やアスペクト比が異なるため、それぞれに最適なエッチング条件が異なる場合がある。従来のデュアルマスクプロセスでは、共通液室と供給口を同時進行でエッチングしていたため、これらのエッチングを分離することができなかった。本発明では、共通液室のシリコンエッチングは中間層にて第1のドライエッチングにより完了する。なお、共通液室の開口率は供給口よりも大きいため、共通液室のエッチングの完了を容易に検知することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、第1のシリコン基板と第2のシリコン基板の接合後に流路形成層を形成することが好ましい。流路形成層の材料は、有機樹脂材料であり、有機樹脂材料は一般的に温度耐性が低い。シリコン基板の接合には上述のように加熱(例えば200〜300℃)する方法があり、この場合、有機樹脂材料はその形状や組成を維持することができない場合がある。したがって、シリコン基板を先に接合しておいてから流路形成層を形成することにより、このような問題を回避できる。
【0053】
また、中間層103を第2のシリコン基板101側に形成して第2のシリコン基板101側に向かって凹んだ凹部(図2(A))を形成して、凹部の底部を除去して図2(B)に示すような形態とすることもできる。
【0054】
(実施形態2)
吐出エネルギー発生素子を有する第1のシリコン基板は、通常の半導体製造ラインにてトランジスター及び配線の形成が行われる。通常の半導体製造ラインで流動されるシリコン基板は、数百μmの板厚を有しており、例えば6インチ基板では625μm程度、8インチ基板では725μm程度である。これらを単純に接合すると、総板厚が1mmを超えてしまうことになる。従来の液体吐出ヘッドの製造ラインも、通常の厚さのシリコンウエハの流動を前提に組まれている。そのため、このような1mmを超える板厚の基板は、搬送に支障を来たす場合があり、製造ラインの改良が必要になる場合もある。
【0055】
また、共通液室、及び供給口の深さとして、このような通常用いられるサイズのシリコンウエハを貫通させるほどの寸法は必ずしも必要でない。逆に、アスペクト比が高くなり、加工の難易度が増す場合がある。
【0056】
以上より、各々のシリコン基板の厚さを必要な強度を満たす最小限に抑え、全体の板厚を通常のシリコンウエハと同程度にした方が望ましい。
【0057】
以下、上記を考慮した液体吐出ヘッドの製造方法について図3を用いて説明する。
【0058】
まず、図3(A)に示すように、吐出エネルギー発生素子104が形成された第2のシリコン基板形成用の基板101aを用意する。そしてこれを図3(B)に示されるように薄板化して第2のシリコン基板を得る。薄板化する方法としては、バックグラインド等の機械的研磨、CMP、ウェットエッチング又はドライエッチング、あるいはそれらの組み合わせ等が挙げられる。必要に応じて、目の細かい機械的研磨、化学的研磨、あるいはそれらの組み合わせ等によって、表面を鏡面状に仕上げることができる。第2のシリコン基板101の厚さは、100〜200μmとすることが望ましい。
【0059】
次に、図3(C)に示すように、第1のシリコン基板102に中間層103を形成し、該中間層103に供給口を形成するための第1のパターン形状としての凹部を形成する。第1のシリコン基板102にも、板厚の薄いものを用いることができる(例えば厚さ300〜600μm)。第1のシリコン基板も上述のような方法で薄板化することができる。
【0060】
次に、中間層103を介して、第2のシリコン基板101と第1のシリコン基板102を接合する。
【0061】
以降の工程は、実施形態1と同様のプロセスでシリコンを加工することができる。
【0062】
本実施形態により、接合後のシリコン基板の総板厚を調整することができ、例えば通常用いられるシリコンウエハと同等の板厚に調整することができる。このようにシリコン基板を薄板化することで、アスペクト比を最小限に抑えられることができる。
【0063】
なお、本実施形態において、接合後に液体吐出用ノズルを構成する流路形成層を形成することが好ましい。シリコン基板を薄板化した状態で流路形成層を形成し、薄板の状態で流動させることは、機械的強度や装置の適性の観点から困難が伴う場合がある。流路形成層の材料は、例えば厚膜の有機膜等であり応力が発生するが、薄板のウエハではその応力に耐えられずに反ってしまう場合があるからである。
【0064】
以下に、本実施形態を適用した具体的な実施例を示す。
【0065】
(実施例1)
まず、吐出エネルギー発生素子が片面に形成された第2のシリコン基板101形成用の基板101aを用意し(図3(A))、もう一方の面からバックグラインドにて厚み200μmに薄化した(図3(B)後、CMPにて研磨を行い、表面粗さ1nm以下の鏡面を得た。
【0066】
次に、厚み400μm、表面に2.0μmの熱酸化によりシリコン酸化膜が形成された第1のシリコン基板を用意した。そして、その接合面側の表面に感光性ポジ型レジスト(東京応化製、OFPR−PR8−PM(商品名))を塗布した。そして、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−4023(商品名)を用いて露光し、続いて現像することにより、塗布したポジ型レジストを凹状の第1のパターン形状に加工した。そして、CHFとCFとArの混合ガスによってシリコン酸化膜に深さ1.5μm相当のエッチングを行い、0.5μmを残して、第1のパターン形状を有するシリコン酸化膜からなる中間層103を第1のシリコン基板上に形成した。残ったポジ型レジストは除去した。第1のパターン形状を有する中間層103は、供給口を形成する際の第1のマスクとして機能する。
【0067】
次に、第2のシリコン基板101の接合面と第1のシリコン基板102に形成された中間層103の接合面をNプラズマによって活性化した。その後、EVG製のアライナーで位置合わせを行った。そして、第1のパターン形状を有するシリコン酸化膜からなる中間層103を介して、EVG製の接合装置(商品名:EVG520IS)にてフュージョン接合により第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを接合した(図1(B))。
【0068】
次に、第2のシリコン基板101の、接合面とは反対の表面に、液体吐出用ノズルを構成する流路形成層を形成した(図1(C))。
【0069】
次に、第1のシリコン基板102の、接合面とは反対の表面に、感光性ポジ型レジスト(クラリアント社製、AZP4620(商品名))を塗布した。塗布したポジ型レジストに対してウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−4023(商品名)を用いて露光し、続いて現像し、共通液室を形成するための第2のパターン形状を有する第2のマスクを形成した(図1(D))。
【0070】
次に、第2のマスクを用いて、SFとCを交互に用いるボッシュプロセスによる第1のドライエッチングを行い、第1のシリコン基板102に共通液室を形成した(図1(D))。
【0071】
次に、中間層103の一部を除去して凹部に対応する開口を形成し(図1(E))、中間層103をマスクとして用いて、上記と同じボッシュプロセスによる第2のドライエッチングを行い、第2のシリコン基板101に供給口を形成した(図1(G))。
【0072】
以上のプロセスにより、本実施例を適用した液体吐出ヘッドを作製できた。
【0073】
中間層の形成方法について、他にも以下のような場合がある。
【0074】
図4(A)に示すように、第1のシリコン基板502に中間層503bを、第2のシリコン基板501に同じ材料からなる中間層503b及び503aを形成し、いずれか片方(図では中間層503b)に第1のパターン形状としての凹形状を形成する。
【0075】
あるいは図4(B)に示すように、第1のシリコン基板502と第2のシリコン基板501のいずれか片方に、異なる材料からなる2層の中間層503a及び503bを形成し、最表面の中間層503bに第1のパターン形状を形成する。
【0076】
あるいは図4(C)に示すように、第1のシリコン基板502と第2のシリコン基板501のそれぞれに異なる材料からなる中間層を形成し、いずれか片方に第1のパターン形状を形成する。
【0077】
これらの中間層に用いる材料としては、上記したものから選択される。
【0078】
以下に、本実施形態を適用した具体的な実施例を示す。
【0079】
(実施例2)
(図4(A)参照)第1のシリコン基板502に成膜された厚み1.5μmの熱酸化膜を、第2のシリコン基板501に0.5μmのプラズマCVDによる酸化膜を用いた。つまり、本実施例の中間層は、双方の基板に形成された酸化膜が接合されたものからなる。共通液室のエッチング終了後、露出した熱酸化膜、及びプラズマCVD酸化膜をCとOの混合ガスにて0.5μm相当エッチングして、第1のパターン形状を現した。その後、第2のドライエッチングを行い、供給口を形成した。その他のプロセスは、実施例1と同様である。
【0080】
(実施例3)
(図4(B)参照)厚み0.7μmの熱酸化膜が成膜された第1のシリコン基板502に、ポリエーテルアミド樹脂(例:日立化成製HIMAL(商品名))を2.0μm形成した。つまり、本実施例の中間層は、熱酸化膜及びポリエーテルアミド樹脂の二層からなる。ポリエーテルアミド樹脂をOとCFの混合ガスを用いてエッチングし、第1のパターン形状を形成した。接合は、EVG520ISにて、温度280℃で熱圧着を行うことによって実施した。共通液室のエッチングは、中間層(熱酸化膜)にて止めた。その後、CとOの混合ガスにて中間層(熱酸化膜)をエッチングして、中間層(ポリエーテルアミド樹脂)を露出させ、供給口をドライエッチングにより形成した。その他のプロセスは、実施例1と同様である。
【0081】
(実施例4)
まず、図5(A)に示すように、第1のシリコン基板1102に厚さ0.7μmの熱酸化シリコンからなる中間層1103を形成し、東京応化工業社製OFPR−PR8−PMを塗布、露光、現像し、中間層1103に供給口を形成するための第1のパターン形状を形成した。露光には、ウシオ電機製プロキシミティマスクアライナUX−3000SCを用いた。次いで、形成されたパターンをマスクに中間層1103にドライエッチングを施し、所望のパターンを得た。中間層1103は、第1のシリコン基板1102が露出するまで開口せず、任意の膜厚を残した。ここでは、厚み約300nmを残した。
【0082】
次に、図5(B)に示すように、第2のシリコン基板1101の接合面と第2のシリコン基板1102に形成された中間層の接合面をNプラズマによって活性化した。その後、EVG製のアライナーで位置合わせを行った。そして、第1のパターン形状を有するシリコン酸化膜からなる中間層1103を介して、EVG製の接合装置(商品名:EVG520IS)にてフュージョン接合により第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを接合した。中間層1103を介して第1のシリコン基板1102と第2のシリコン基板1101を直接接合した。
【0083】
次に、図5(C)に示すように、第2のシリコン基板1101の、接合面とは反対の表面に、液体吐出用ノズル1105を形成した。
【0084】
次に、図5(D)に示すように、第1のシリコン基板1102の、接合面とは反対の表面に、ポリエーテルアミド樹脂(例:日立化成製HIMAL(商品名))を形成した。ポリエーテルアミド樹脂上に感光性ポジ型レジスト(東京応化製、OFPR−PR8−PM(商品名):図示せず)を塗布し、ウシオ電機製プロキシミティ式露光装置UX−3000(商品名)を用いて露光し、続いて現像した。これにより形成されたパターンをマスクに、あらかじめ形成済みのポリエーテルアミド樹脂を酸素プラズマを用いたケミカルドライエッチングでエッチングし、第2のマスク1106を得た。ポリエーテルアミド樹脂は、耐アルカリ性が高いため、シリコン異方性エッチングのマスク材として用いることができる。
【0085】
次に、図5(E)に示すように、第2のマスク1106をマスクとして用い、第1のシリコン基板を異方性エッチングした。エッチング液として、20%濃度の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用い、80℃の温度で12時間エッチングした。ウェハ面内すべてのパターンで中間層1103にまでエッチングが達した。そして第1のパターン形状が完全に開口するまで中間層1103をドライエッチングした。
【0086】
次に、図5(F)、(G)に示すように、中間層1103をマスクとして用いて、実施形態1と同じボッシュプロセスによる第2のドライエッチングを行い、第2のシリコン基板1101に供給口1108を形成した。
【0087】
以上のプロセスにより、本実施例を適用した液体吐出ヘッドを作製できた。
【0088】
(実施例5)
まず、図6(A)に示すように、第1のシリコン基板1202に厚さ0.7μmの熱酸化シリコンからなる中間層1203を形成し、東京応化工業社製OFPR−PR8−PMを塗布、露光、現像し、中間層1203に供給口を形成するための第1のパターン形状を形成した。露光には、ウシオ電機製プロキシミティマスクアライナUX−3000SCを用いた。次いで、形成されたパターンをマスクに中間層1203にドライエッチングを施し、所望のパターンを得た。中間層1203は、第2のシリコン基板1202が露出するまで開口せず、任意の膜厚を残した。ここでは、厚み約300nmを残した。
【0089】
次に、図6(B)に示すように、第2のシリコン基板1201の接合面と第1のシリコン基板1202に形成された中間層の接合面をNプラズマによって活性化した。その後、EVG製のアライナーで位置合わせを行った。そして、第1のパターン形状を有するシリコン酸化膜からなる中間層1203を介して、EVG製の接合装置(商品名:EVG520IS)にてフュージョン接合により第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを接合した。中間層1203を介して第1のシリコン基板1202と第2のシリコン基板1201を直接接合した。
【0090】
次に、図6(C)に示すように、第2のシリコン基板1201の、接合面とは反対の表面に、液体吐出用ノズル1205を形成した。
【0091】
次に、図6(D)に示すように、第1のシリコン基板1202の、接合面とは反対の表面に、ポリエーテルアミド樹脂(例:日立化成製HIMAL(商品名))を形成した。ポリエーテルアミド樹脂上に感光性ポジ型レジスト(東京応化製、OFPR−PR8−PM(商品名):図示せず)を塗布し、ウシオ電機製プロキシミティ式露光装置UX−3000(商品名)を用いて露光し、続いて現像した。これにより形成されたパターンをマスクに、あらかじめ形成済みのポリエーテルアミド樹脂を酸素プラズマを用いたケミカルドライエッチングでエッチングし、第2のマスク1206を得た。ポリエーテルアミド樹脂は、耐アルカリ性が高いため、シリコン異方性エッチングのマスク材として用いることができる。
【0092】
そして、同じく図6(D)示したように、第2のパターンの内側に、YAGレーザーを用いて、先導口加工を施した。ここでは、YAGレーザーの3倍波(THG:355nm)を用いて、レーザーパワーおよび周波数を適切に設定し、直径約40μmの先導口を形成した。
【0093】
そして、図6(E)に示すように、第2のマスク1206を用いて中間層1203が完全に露出するまでシリコン結晶異方性エッチングを行い、断面が“<>”形状の共通液室(第1の開口)1207を形成する。この際、中間層1203は貫通してパターン形状が形成されていないため、共通液室1207側から見ると、第2のシリコン基板1201は全く露出していない。したがって、結晶異方性エッチングにより第2のシリコン基板1201のエッチングが進んでしまうことはない。
【0094】
次に、図6(F)に示すように、第1のパターン形状が完全に開口するまで中間層1203をドライエッチングした。
【0095】
次に、図6(G)に示すように、第2のシリコン基板1201に対して第1のパターン形状の開口が露出するまで中間層1203をドライエッチングした。
【0096】
以上のプロセスにより、本実施例を適用した液体吐出ヘッドを作製できた。
【0097】
(実施例6)
図7に本実施の形態の液体吐出ヘッドの製造方法による製造工程の断面図を示す。7(A)に示すように、第2のシリコン基板上1011に吐出エネルギー素子1010とそれを駆動する半導体回路が(100)面上に形成されている。ここで第2のシリコン基板1011は、良好なMOS(Metal oxide semiconductor)トランジスターを形成する必要があるため(100)面を表面にもつシリコン基板を用いる。
【0098】
この第2のシリコン基板の裏面側を研削/研磨して薄化する(図7(B))。次に、別途、第1のシリコン基板1013を用意する。第1のシリコン基板1013は(110)面を表面にもつシリコン基板を用いる。つまり、第1のシリコン基板の面方位は{110}である。なぜなら(110)基板に対し強アルカリでシリコン異方性ウェットエッチングを行うと、エッチングレートが遅い(111)面が基板表面に対して垂直方向を向いているため、基板平面方向のエッチングが抑制される。その結果、共通液室の側壁がほぼ垂直となる異方性エッチングを行うことができる為である。
【0099】
第1のシリコン基板1013表面には、第1のパターンを有する中間層1012が形成されている。第1のパターンは開口部を有するが、開口部は中間層1012を貫通していない。このような中間層は、シリコン熱酸化膜をフォトリソグラフィーとエッチングで加工し、エッチングを酸化膜の途中で停止することにより形成できる。
【0100】
第2のシリコン基板1011と第1のシリコン基板1013同士を適切な位置にアライメントする(図7(C))。
【0101】
図7(D)に示すように、第2のシリコン基板1011と第1のシリコン基板1013とを接合する。接合後、図7(E)のように、第1のシリコン基板1013の裏面に、第二のパターンを有する第2のマスク層1014を形成する。
【0102】
中間層1012と第2のマスク層1014は、シリコン基板の異方性ウェットエッチングとドライエッチングに対して、十分なエッチング耐性を持つ材料が好適である。シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテルアミド系樹脂などが材料として挙げられる。
【0103】
図7(F)に示すように、第2のシリコン基板1011の表面に、流路型材1015と流路形成層1016を形成する。流路形成層1016は流路型材1015を覆い、表面に吐出口1018を有する。流路型材1015は犠牲層として後ほど除去される。さらにドライエッチングや異方性ウェットエッチングからのダメージから守るために、流路形成層1016を保護膜1017で被覆する。保護膜1017は、表面だけでなく、基板端面を被覆してもよい。
【0104】
保護膜形成後、基板裏面側から第2のマスク層1014を介して第1のシリコン基板1013を異方性ウェットエッチングにより加工する。エッチング液としてKOHやTMAH(Tetramethyl ammonium hydroxide)などのアルカリ溶液が好適である。第1のシリコン基板1013では基板垂直方向へ異方性エッチングが進行していき、やがて中間層1012が暴露される(図7(G))。
【0105】
図に示されるように、中間層1012で異方性ウェットエッチングが停止する。それにより、共通液室1019のエッチング深さが基板面内で均一に加工することが可能になり、さらにそのエッチング深さの制御性も良くなる。
【0106】
次いで、そして第1のパターン形状が完全に開口するまで中間層1012をドライエッチングした。エッチング方法として、ウェットエッチングまたはドライエッチングどちらでもよい。ドライエッチングの方が、深さ方向へ異方性エッチングを行い易いため好ましい。
【0107】
中間層1012の開口部が暴露したら、開口部を介して供給口1020をドライエッチングにより加工する。その後、流路型材1015と保護膜1017を除去して、基板を貫通したインク流路が完成する(図7(H))。
【0108】
本実施例は、共通液室を異方性ウェットエッチングによって垂直に加工できる利点がある。さらに使用するウェットエッチング装置は一般的に安価である。また異方性ウェットエッチングで加工することによって(111)面が側壁に露出するため、共通液室の側壁がインクなどのアルカリ溶液に浸食されにくくなる利点がある。
【0109】
(実施例7)
図8は基板裏面からみた平面図である。まず、実施例6と同様な工程を経て、第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを接合する(図8(D))。
【0110】
次に図8(A)に示されるように、第2のマスク層1021を第2のシリコン基板裏面側に形成する。第2のマスク層1021は平行四辺形の開口部1022を持ち、第1のシリコン基板内での(111)面と、開口部1022の平行四辺形の長手方向とを一致させている。
【0111】
図8(B)に示すように、第1のシリコン基板裏面を異方性ウェットエッチングにより加工する前に、開口部1022の四隅をエッチングする。本実施の形態ではエッチングとしてレーザー加工の例を示した。図8(B)に示されたレーザー加工穴1023の加工深さは、第1のシリコン基板の厚さ程度であることが望ましい。
【0112】
その後、図8(C)に示すように異方性ウェットエッチングを行うと、レーザー加工穴1023からも異方性ウェットエッチングが進行することによって、前記(111)傾斜面が共通液室底部に発生することなくエッチングが行われ、共通液室底部の中間層1024を全て露出させることができる。その後、実施例6と同様な工程を経て、中間層1024の開口部を介して、供給口をドライエッチングしてインク流路が完成する。
【0113】
異方性ウェットエッチング前に行うエッチング加工は、レーザーに限定されるものではない。例えば、第2のマスク層1021の上に第3のエッチングマスク層を形成し、ボッシュプロセスなどのドライエッチングで加工しても良い。また、サンドブラストも用いることができる。このような異方性ウェットエッチング前に行なうエッチング処理は、加工形状の精度は多少悪くても良いため、より加工速度が速いエッチング手法やエッチング条件が適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のシリコン基板と、第2のシリコン基板と、前記第1のシリコン基板と第2のシリコン基板との間に設けられ、複数の凹部が設けられた中間層と、の組を用意する工程と、
(b)前記第1のシリコン基板の前記中間層との接合面の裏の面側から、第1のマスクを使用して前記第1のシリコン基板を第1のエッチングを実施することにより前記第1のシリコン基板を貫通する第1の貫通口を形成し、前記中間層の前記複数の凹部に対応する部分を露出させる工程と、
(c)前記複数の凹部の底部を構成する部分を除去して前記中間層に複数の開口を形成する工程と、
(d)前記複数の開口が形成された中間層をマスクとして前記第2のシリコン基板に第2のエッチングを実施することにより前記第2のシリコン基板を貫通する第2の貫通口を形成する工程と、
を有するシリコン基板の加工方法。
【請求項2】
前記工程(a)で、前記第1のシリコン基板と前記第2のシリコン基板とを前記中間層を間に挟んで接合する請求項1に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項3】
前記中間層は、樹脂層、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、炭化シリコン膜、シリコン以外の金属膜又はその酸化膜若しくは窒化膜である請求項1又は2に記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項4】
前記第1のエッチングはドライエッチングである請求項1乃至3のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項5】
前記第1のエッチングは結晶異方性エッチングである請求項1乃至3のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項6】
前記第2のエッチングはドライエッチングである請求項1乃至5のいずれかに記載のシリコン基板の加工方法。
【請求項7】
前記第1のシリコン基板の面方位は{110}であり前記第2のシリコン基板の面方位は{100}である請求項5に記載のシリコン基板の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161915(P2011−161915A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2039(P2011−2039)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】