説明

スタビライザバー支持構造

【課題】スタビライザバーの支持剛性を入力の増大に応じて高くすることが可能なスタビライザバー支持構造を提供する。
【解決手段】左右のサスペンション装置のストローク差に応じた捻り入力を受けるスタビライザバー110の中間部111を支持するスタビライザバーの支持構造を、弾性を有する材料によって筒状に形成されスタビライザバーの中間部が挿入される開口211を有するブッシュ210と、ブッシュを保持した状態で車体の一部に設けられた被固定部40に装着されるクランプ220とを備え、ブッシュは、端面部216からスタビライザバーの軸方向に突き出した突出部217を有し、クランプは、スタビライザバーからの径方向入力が所定値未満の領域においては突出部と間隔を隔てて対向し、径方向入力が所定値以上の領域においては突出部と当接する当接面部225aを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のスタビライザ装置におけるスタビライザバー支持構造に関し、特にスタビライザバーの支持剛性を入力の増大に応じて高くしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ロール剛性を向上させて操縦安定性を改善するため、左右サスペンションのストローク差に応じた反力を発生するスタビライザ装置が設けられる。このようなスタビライザ装置は、車幅方向に伸びてトーションバーとして機能する中間部を有するスタビライザバーの両端を、ボールジョイント及びリンクを介して、サスペンションアームやストラット等のいわゆるバネ下部品に連結して構成されている。
【0003】
スタビライザバーの中間部分は、その捻れを許容するとともに、サスペンション装置から車体への振動の伝達を緩和するため、例えばゴム系材料等の弾性体ブッシュを介して車体のクロスメンバ等の比較的剛性の高い構造部材に取り付けられている。
このような弾性体ブッシュは、例えば、板金製のクランプ(ブラケット)部材によって保持される。
一般に、クランプは、ブッシュを保持するU字状断面の保持部の両端に、車体側への締結に用いられる固定部を設けることによって、いわゆるハット形状とされる場合が多い。
【0004】
上述したようなスタビライザバーの支持構造において、例えば限界付近での旋回時のようにスタビライザバーからブッシュに作用する上下方向荷重が大きくなった場合、スタビライザバーの上下方向変位に伴いブッシュがスタビライザバーの軸方向に逃げるように変形し、スタビライザバーの支持剛性が低下してしまう場合があった。
この場合、サスペンションの左右相対上下ストロークに対するスタビライザ反力がリニアな特性とならず、操縦安定性が低下することが懸念される。
【0005】
スタビライザバーの支持構造に関する従来技術として、例えば特許文献1には、ブッシュの外周面を凸曲面とし、これを保持するブラケットに凹曲面を形成して、ブッシュの圧縮による軸方向への張り出しを規制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−2116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術においては、限界領域におけるスタビライザバーの支持剛性の低下を多少は抑制することが可能であるが、入力の増加に応じてスタビライザバーの支持剛性を向上するものではない。
一方、車両の乗り心地と操縦安定性との両立を考慮した場合、比較的小入力の常用領域ではスタビライザバーの支持剛性を低くして乗り心地を向上させ、比較的大入力の限界領域等ではスタビライザバーの支持剛性を高くして操縦安定性を向上させることが望ましい。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、スタビライザバーの支持剛性を入力の増大に応じて高くすることが可能なスタビライザバー支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車幅方向にほぼ沿って伸びた中間部を有するとともに左右のサスペンション装置のストローク差に応じた捻り入力を受けるスタビライザバーの前記中間部を支持するスタビライザバーの支持構造であって、弾性を有する材料によって筒状に形成され前記スタビライザバーの前記中間部が挿入される開口を有するブッシュと、前記ブッシュを保持した状態で車体の一部に設けられた被固定部に装着されるクランプとを備え、前記ブッシュは、端面から前記スタビライザバーの軸方向に突き出しかつ前記スタビライザバーが挿入される突出部を有し、前記クランプは、前記スタビライザバーの径方向変位が所定値未満の領域においては前記突出部と間隔を隔てて対向し、前記径方向変位が所定値以上の領域においては前記突出部と当接する当接面部を有することを特徴とするスタビライザバー支持構造である。
これによれば、比較的入力が小さい常用領域においては、ブッシュの突出部とクランプの当接面部とが離間しているため、突出部はスタビライザバーの支持剛性に寄与せず、支持剛性は低くなる。
これに対し、比較的入力が大きい限界領域においては、ブッシュの突出部とクランプの当接面部とが当接し、突出部がスタビライザバーの支持剛性に寄与するため、支持剛性を高めることができる。
本発明によれば、常用領域においてはスタビライザバーの支持剛性を低くして乗り心地を向上し、限界領域においてはスタビライザバーの支持剛性を高くして操縦安定性を向上することができる。
【0009】
請求項2の発明は、前記クランプは、前記ブッシュを挟んで対向して配置される第1部材及び第2部材を有し、前記第1部材及び前記第2部材は、前記ブッシュの車幅方向における両端面と当接するフランジ面部をそれぞれ有し、前記当接面部は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に形成されることを特徴とする請求項1に記載のスタビライザバー支持構造である。
これによれば、フランジ面部によってブッシュの両端面を拘束することによって、スタビライザバーの径方向の圧縮荷重によりブッシュが軸方向に逃げてスタビライザバーの支持剛性が低下することを防止することができ、上述した効果をより高めることができる。
【0010】
請求項3の発明は、前記当接面部は、前記第1部材及び前記第2部材の前記フランジ面部の少なくとも一方における端部に形成されることを特徴とする請求項2に記載のスタビライザバー支持構造である。
これによれば、フランジ面部に複数の機能を持たせることによって、簡単な構成によって高い効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、スタビライザバーの支持剛性を入力の増大に応じて高くすることが可能なスタビライザバー支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術に係る自動車用スタビライザ装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明を適用したスタビライザバー支持構造の実施例の外観斜視図である。
【図3】実施例のスタビライザバー支持構造の分解斜視図である。
【図4】実施例のスタビライザバー支持構造の側面図及び断面図である。
【図5】実施例のスタビライザバー支持構造におけるサスペンション左右相対ストロークとスタビライザ反力との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、スタビライザバーの支持剛性を入力の増大に応じて高くすることが可能なスタビライザバー支持構造を提供する課題を、スタビライザブッシュの端面に突出部を設けるとともに、大入力時にのみ突出部と当接する当接面部をクランプに設けることによって解決した。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を適用したスタビライザバー支持構造の実施例について説明する。
先ず、実施例の説明に先立ち、従来技術に係る自動車用のスタビライザ装置の一例の構成について説明する。
図1は、従来技術に係るスタビライザ装置の分解斜視図である。
このスタビライザ装置が設けられる車両は例えば乗用車等の自動車であって、フロントサスペンション装置は、マクファーソンストラット式のものである。
【0015】
フロントサスペンション装置は、ハウジング10、ストラットアッシー20、ロワアーム30を備え、ロワアーム30はクロスメンバ40を介して図示しない車体に装着されている。
また、フロントサスペンション装置は、スタビライザ装置100を備えている。
【0016】
ハウジング10は、図示しない前輪を回転可能に支持するハブベアリングを収容するものであり、例えばスチール製の鋳造品に所定の機械加工を行って形成されている。
【0017】
ストラットアッシー20は、ストラット21、スプリング22、アッパマウント23をアセンブリ化したものである。
ストラット21は、油圧式緩衝器であるショックアブソーバ(ダンパ)を備え、シェルケースの上方にピストンロッドが突き出した状態で配置される。シェルケースの下端部には、ハウジング10の上端部が固定されるハウジングブラケット21aが設けられている。また、シェルケース上部には、その外周面からつば状に張り出して形成され、スプリング22の下端部を保持するスプリングシート21bが設けられている。
さらに、ストラット21のスプリングシート21bの下側には、外周面から車体後方側へ突き出して形成され、後述するスタビライザリンク120が装着されるスタビライザブラケット21cが設けられている。
【0018】
スプリング22は、例えばバネ鋼製のコイルスプリングであって、ストラット21の上部はこのスプリング22の内径側に挿入される。スプリング22は、下端部をストラット21のスプリングシート21bに保持されるとともに、上端部をアッパマウント23のスプリングシートに保持されている。
アッパマウント23は、車体に固定されてストラット21のピストンロッド上端部及びスプリング22の上端部を保持するものであり、前輪の操舵時にストラット21及びスプリング22をハウジング10とともにキングピン軸回りに回転可能とする転がり軸受を備えている。
【0019】
ロワアーム30は、例えばスチールプレスによって形成されたL字型ロワアームであって、ハウジング10の下端部とボールジョイント31を介して接続されるとともに、車体側においてはクロスメンバ40とフロントブッシュ32、リアブッシュ33を介して接続されている。ロワアーム30は、フロントブッシュ32及びリアブッシュ33の中心部を結んだ直線とほぼ一致する中心軸回りにクロスメンバ40に対して揺動可能に支持されている。
【0020】
クロスメンバ40は、ロワアーム30及びスタビライザ装置100が取付られる基部となる構造部材であって、例えば図示しないエンジンルームの両側部に沿って車両の前後方向に延在する図示しないメインフレームの下側に固定される。
【0021】
スタビライザ装置100は、左右のサスペンションを連結するスタビライザバーのバネ反力を利用して車両のロール剛性を向上するアンチロール装置である。
スタビライザ装置100は、スタビライザバー110、スタビライザリンク120、スタビライザブッシュ130、クランプ140を備えている。
【0022】
スタビライザバー110は、例えばバネ鋼の線材を曲げ加工して一体的に形成され、中間部111及びアーム部112を備えている。
中間部111は、車幅方向にほぼ沿って延在する部分である。
アーム部112は、中間部111の両端部から斜め前方側へ突き出して形成された部分であって、サスペンション装置の各部材との干渉を防止するため、湾曲して形成されている。
【0023】
スタビライザリンク120は、スタビライザバー110のアーム部112の先端部とストラット21のスタビライザブラケット21cとを連結するロッド状の部材であって、ほぼ上下方向に延在して配置されている。スタビライザリンク120は両端部に一対のボールジョイントが設けられ、スタビライザバー110及びストラット21に対して揺動可能となっている。スタビライザ装置100の作動時においては、これら一対のボールジョイントの揺動中心点を結んだ方向がサスペンションからスタビライザバー110への入力方向となる。
【0024】
スタビライザブッシュ130は、スタビライザバー110の中間部111を支持するものであって、クランプ140によってクロスメンバ40の上面部に固定される。スタビライザブッシュ130は、例えば減衰(ロス)特性の周波数依存性が強いSBR系等の高ロスゴム材料によって形成されている。
【0025】
クランプ140は、スタビライザブッシュ130をクロスメンバ40の上面部に固定するものであって、例えば板金によって形成され、車幅方向から見た形状が下側が開口したU字状となっており、その曲率等はスタビライザブッシュ130の前面部、上面部、後面部の形状に適合するようになっている。また、開口端部(下端部)から車両の前後方向に突き出して、クランプ140をクロスメンバ40に締結するボルトが挿入されるボルト孔を有するフランジ部が形成されている。
【0026】
上述した構成のスタビライザ装置においては、左右のサスペンションストロークの差が大きくスタビライザバーに大入力が加わったときに、スタビライザブッシュ130におけるスタビライザバー110の外周面とクランプ140の内面との間で圧迫された部分がスタビライザバー110の軸方向(車幅方向)に逃げることによって、スタビライザバー110の支持剛性が低下してしまう問題がある。
【0027】
実施例のスタビライザバー支持構造は、上述した問題を解決し、さらに限界領域等の大入力時にスタビライザバーの支持剛性を高くすることを可能としたものである。
実施例のスタビライザバー支持構造は、上述したスタビライザブッシュ130及びクランプ140に代えて、以下説明するスタビライザブッシュ210、上側クランプ220、下側クランプ230を備えている。
なお、実施例のスタビライザバー支持構造は、これが取り付けられる図示しないクロスメンバの形状に由来して、後側の締結部が前側の締結部に対して段違い状に高くなっているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
図2は、実施例のスタビライザブッシュ210、上側クランプ220、下側クランプ230を組み立てた状態における外観斜視図である。
図3は、実施例のスタビライザブッシュ210、上側クランプ220、下側クランプ230の分解斜視図である。
図4は、実施例のスタビライザブッシュ210、上側クランプ220、下側クランプ230を組み立てた状態を示す図であって、図4(a)は車幅方向から見た側面視図であり、図4(b)は図4(a)のb−b部矢視断面図である。また、図4(c)は、図4(b)と同じ断面において、スタビライザバーからスタビライザブッシュに上向きの大荷重が入力された状態を示す図である。
【0029】
図3に示すように、スタビライザブッシュ210は、中央部にスタビライザバー110が挿入される開口211を有する。
開口211の上面部212は、開口211とほぼ同心の円筒外面状の曲面に形成されている。
また、スタビライザブッシュ210の前面部213、後面部214、下面部215は、実質的に平坦に形成されている。
前面部213は、下面部215の前端部からほぼ垂直に立ち上げられている。前面部213の上端部は、上面部212の前端部に接続されている。
後面部214は、下面部215の後端部から立ち上げられ、上端部が下端部よりも後退するように傾斜して配置されている。後面部214の上端部は、上面部212の後端部に接続されている。
また、スタビライザブッシュ210の軸方向における端面部216は、開口211の中心軸と直交する平面状に形成されている。
【0030】
また、スタビライザブッシュ210は、端面部216からスタビライザバー110の軸方向に突き出した突出部217を備えている。
突出部217は、端面部216の上下方向における中間部であって、開口211を含む領域を、段状に張り出させて形成されている。
【0031】
突出部217は、スタビライザブッシュ210の前面部213に対して前方側に張り出した前側張出部217a、及び、後面部214に対して後方側に張り出した後側張出部217bを備えている。
前側張出部217aは、上側クランプ220における後述する前面部222の端部をほぼ全域にわたってカバーするよう配置されている。
後側張出部217bは、図4(a)に示すようにスタビライザバー110の軸方向から見た平面形が先細りの突起状に形成され、その突端部は下側クランプ230の後述する後固定部234の前端部の側部近傍に配置されている。
【0032】
上側クランプ220は、スタビライザブッシュ210の上面部212及び前面部213をそれぞれ保持する上面部221及び前面部222を備えている。
上面部221は、スタビライザブッシュ210の上面部212に沿った曲面状に形成されている。
前面部222は、上面部221の端部から下方に伸び、スタビライザブッシュ210の前面部213に沿った平面状に形成されている。
なお、スタビライザ装置100をクロスメンバ40に組み付けた状態でスタビライザブッシュ210を圧縮して予圧(プリロード)を発生させるために、上側クランプ220の上面部221と前面部222はスタビライザブッシュ210の上面部212と前面部213より小径となる形状に形成される場合もある。
【0033】
また、上側クランプ220は、前固定部223、後固定部224を備えている。
前固定部223は、前面部222の下端部から前方へ延びた平板状の部分である。
後固定部224は、上面部221の後端部から後方へ延びた平板状の部分である。
前固定部223及び後固定部224は、クロスメンバ40の上面への固定時に用いられる部分であって、締結用のボルトが挿入されるボルト孔223a、224aが形成されている。
以上説明した上面部221、前面部222、前固定部223、後固定部224は、例えば、鋼板をプレス加工することによって、一体に形成されている。
【0034】
さらに、上側クランプ220は、フランジ面部225を備えている。
フランジ面部225は、上面部221の車幅方向(スタビライザバーの軸方向)における両端部から、内径側(下側・スタビライザバー側)に突き出して形成されている。
フランジ面部225は、スタビライザブッシュ210の端面部216と当接している。
フランジ面部225の下端部は、スタビライザバー110の中間部111における外周面と間隔を隔てて対向して配置されている。
フランジ面部225は、例えば、上側クランプ220の他部を構成する鋼板よりも厚さの大きい鋼板を溶接して構成されている。
【0035】
フランジ面部225の下面部は、スタビライザブッシュ210の突出部217の上面部と対向して配置された当接面部225aとなっている。
当接面部225aは、スタビライザバー110からスタビライザブッシュ210の入力が比較的小さい常用領域においては、突出部217の上面部と間隔を隔てて対向して配置されているが、スタビライザバー110からスタビライザブッシュ210への上向きの入力が大きくなると、突出部217と当接する。
【0036】
下側クランプ230は、スタビライザブッシュ210の後面部214及び下面部215をそれぞれ保持する後面部231及び下面部232を備えている。
後面部231及び下面部232は、スタビライザブッシュ210の後面部214及び下面部215に沿った平面状に形成されている。
なお、スタビライザ装置100をクロスメンバ40に組み付けた状態でスタビライザブッシュ210を圧縮して予圧(プリロード)を発生させるために、下側クランプ230の下面部232と後面部231はスタビライザブッシュ210の下面部215と後面部214より小径となる形状に形成される場合もある。
【0037】
また、下側クランプ230は、前固定部233、後固定部234を備えている。
前固定部233は、下面部232の下端部から前方へ延びた平板状の部分である。
後固定部234は、後面部231の後端部から後方へ延びた平板状の部分である。
前固定部233及び後固定部234は、クロスメンバ40の上面への固定時に用いられる部分であって、締結用のボルトが挿入されるボルト孔233a、234aが形成されている。
前固定部233及び後固定部234は、上側クランプ220の前固定部223及び後固定部224と、クロスメンバ40の上面との間に挟まれた状態で、共通のボルト−ナットによって共締めされる。
【0038】
さらに、下側クランプ230は、フランジ面部235を備えている。
フランジ面部235は、下面部232の車幅方向(スタビライザバーの軸方向)における両端部から、内径側(上側・スタビライザバー側)に突き出して形成されている。
フランジ面部235は、スタビライザブッシュ210の端面部216と当接している。
フランジ面部235の上端部は、スタビライザバー110の中間部111における外周面と間隔を隔てて対向して配置されている。
以上説明した後面部231、下面部232、前固定部233、後固定部234、フランジ面部235は、例えば、鋼板をプレス加工することによって、一体に形成されている。
【0039】
実施例のスタビライザバー支持構造は、スタビライザブッシュ210の開口211にスタビライザバー110の中間部111を通し、スタビライザブッシュ210を上下から上側クランプ220、下側クランプ230によって挟んだ状態で、上側クランプ220、下側クランプ230をクロスメンバ40の上面に締結することによって構成される。
【0040】
以下、上述した実施例の効果について説明する。
図5は、実施例のスタビライザバー支持構造におけるサスペンション左右相対ストロークとスタビライザ反力との相関を示すグラフである。
図5において、横軸はサスペンションの左右相対ストロークを示し、縦軸はスタビライザ反力を示している。
実施例においては、スタビライザバー110の中間部111からスタビライザブッシュ210に作用する上下方向力が所定値未満となる常用領域においては、スタビライザブッシュ210の突出部217と上側クランプ220の当接面部225aとが離間しているため、突出部217がスタビライザバー110の支持剛性に寄与しない。このため、スタビライザバー110の支持剛性は比較的低くなっている。
【0041】
これに対し、スタビライザバー110の中間部111からスタビライザブッシュ210に作用する上下方向力が所定値以上となる限界領域においては、スタビライザブッシュ210の突出部217と上側クランプ220の当接面部225aとが密着し、これらがスタビライザバー110の支持剛性に寄与することから、スタビライザバー110の支持剛性は比較的高くなる。
このため、本実施例においては、常用領域においてはスタビライザバー110の支持剛性を低くして乗り心地を向上し、限界領域においてはスタビライザバー110の支持剛性を高くして操縦安定性を向上することができる。
なお、実施例においては、上側クランプ220側にのみ当接面部225aを設けているが、スタビライザ装置においては、左右サスペンションのストローク差が生じた場合には、左右いずれかのスタビライザバー支持部には必ず上向き荷重が作用するため、このような構成であっても上述した効果を得ることは可能である。
【0042】
また、スタビライザブッシュ210の両側の端面部216を、上側クランプ220のフランジ面部225及び下側クランプ230のフランジ面部235で拘束したことによって、スタビライザブッシュ210に上下方向の圧縮荷重が作用した場合に、スタビライザブッシュ210が軸方向に逃げてスタビライザバー110の支持剛性が低下することを防止できる。
【0043】
さらに、被取付部であるクロスメンバ40に特定の形状を設けることなく、スタビライザブッシュ210、上側クランプ220、下側クランプ230のみによって上述した効果が得られることから、既存の車種に適用することが容易であり、また、実施例のスタビライザバー支持構造を有する車両と、既存のスタビライザバー支持構造を有する車両との作り分けも容易である。
【0044】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)本発明が適用されるスタビライザ装置、及び、そのスタビライザ装置が設けられるサスペンション装置の構成は、上述した実施例のものに限定されない。
例えば、実施例のサスペンションはフロントサスペンションであったが、リアサスペンションにも本発明は適用可能であり、サスペンション形式もストラット式に限らず、マルチリンク式、ダブルウィッシュボーン式など他の形式であってもよい。
さらに、スタビライザリンクをサスペンションアームやハウジングに連結する構成としてもよい。
(2)実施例においては、ほぼ水平面となるクロスメンバの上面にクランプを取り付けているが、これに限らず、クロスメンバやフレーム等の下面や、上下方向に延びた面部、斜面等にクランプを取り付ける構成としてもよい。
(3)クランプの第1部材、第2部材及びスタビライザブッシュの形状、構造、製法、材質等は、実施例のものに限定されず、適宜変更することが可能である。
(4)実施例において、フランジ面部はブッシュの周上における一部の領域にのみ配置されているが、フランジ面部をブッシュの全周にわたって設けてもよい。
(5)実施例においては、スタビライザバーの上方側のみに当接面部を設けているが、本発明はこれに限らず、下方側に当接面部を設けたり、上下ともに当接面部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 ハウジング 20 ストラットアッシー
21 ストラット 22 スプリング
23 アッパマウント 30 ロワアーム
31 ボールジョイント 32 フロントブッシュ
33 リアブッシュ 40 クロスメンバ
100 スタビライザ装置 110 スタビライザバー
111 中間部 112 アーム部
120 スタビライザリンク 130 スタビライザブッシュ
140 クランプ
210 スタビライザブッシュ 211 開口
212 上面部 213 前面部
214 後面部 215 下面部
216 端面部 217 突出部
217a 前側張出部 217b 後側張出部
220 上側クランプ 221 上面部
222 前面部 223 前固定部
223a ボルト孔 224 後固定部
224a ボルト孔 225 フランジ面部
225a 当接面部
230 下側クランプ 231 後面部
232 下面部 233 前固定部
233a ボルト孔 234 後固定部
234a ボルト孔 235 フランジ面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向にほぼ沿って伸びた中間部を有するとともに左右のサスペンション装置のストローク差に応じた捻り入力を受けるスタビライザバーの前記中間部を支持するスタビライザバーの支持構造であって、
弾性を有する材料によって筒状に形成され前記スタビライザバーの前記中間部が挿入される開口を有するブッシュと、
前記ブッシュを保持した状態で車体の一部に設けられた被固定部に装着されるクランプとを備え、
前記ブッシュは、端面から前記スタビライザバーの軸方向に突き出しかつ前記スタビライザバーが挿入される突出部を有し、
前記クランプは、前記スタビライザバーの径方向変位が所定値未満の領域においては前記突出部と間隔を隔てて対向し、前記径方向変位が所定値以上の領域においては前記突出部と当接する当接面部を有すること
を特徴とするスタビライザバー支持構造。
【請求項2】
前記クランプは、前記ブッシュを挟んで対向して配置される第1部材及び第2部材を有し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記ブッシュの車幅方向における両端面と当接するフランジ面部をそれぞれ有し、
前記当接面部は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に形成されること
を特徴とする請求項1に記載のスタビライザバー支持構造。
【請求項3】
前記当接面部は、前記第1部材及び前記第2部材の前記フランジ面部の少なくとも一方における端部に形成されること
を特徴とする請求項2に記載のスタビライザバー支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162170(P2012−162170A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23850(P2011−23850)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】