説明

ステアリング装置

【課題】乗員に与える安心感を低減させることなく、乗員の頭部のみならず、他の部位まで十分に保護することで、運転操作時における安全性を維持しつつ、車両への衝突により生じる衝撃から乗員の保護する際の安全性を高めることが可能なステアリング装置を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るステアリング装置100は、車両を操舵するステアリングホイール140の内方に配設され、車両への衝突時に乗員側に向けてエアバッグ袋体151を膨張展開させて乗員を保護するエアバッグモジュール150を有して構成され、車両の進行方向が直進する場合におけるステアリングホイール140の位置をこのステアリングホイール140の中立位置とした場合、車両への衝突を事前に検知する検知手段と、この検知手段により車両への衝突を検知した際、ステアリングホイール140の位置を中立位置となるよう調整する調整手段130と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関し、特に、ステアリングホイールのセンタパッドにエアバッグモジュールのエアバッグ袋体を収容して構成されたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリング装置は、ステアリングホイールのセンタパッドにエアバッグ袋体を折り畳んで収容し、車両への衝突により生じる衝撃に対し、センタパッドから乗員側に向かってエアバッグ袋体を展開させることで、衝撃から乗員を保護するものが知られている。
【0003】
ここで、ステアリングホイールのセンタパッドは、通常、乗員の運転操作に応じて、ステアリングホイールとともに回転している。このため、センタパッドに収容されたエアバッグ袋体は、ステアリングホイールのどの回転蛇角でも同じ形状で膨張展開可能となるよう円形状をなして形成されている。そして、円形状をなして形成されたエアバッグ袋体は、主に乗員の頭部を保護している。
【0004】
近年、センタパッドに収容されたエアバッグ袋体には、乗員の頭部を保護するのみならず、他の部位まで十分に保護したいという要求が高まっている。特に、乗員の胸部には、シートベルトが掛け渡されているため、車両への衝撃時に乗員の胸部を圧迫してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、乗員の頭部を保護するのみならず、他の部位まで十分に保護可能なものとして、例えば、特許文献1には、非回転構造のセンタパッドにエアバッグ袋体を搭載し、このエアバッグ袋体の形状を頭部保護部、胸部保護部及び腹部保護部からなるように形成した自動車用エアバッグ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−069384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1では、上述したように、非回転構造のセンタパッドにエアバッグ袋体を搭載しているため、乗員の運転操作によりステアリングホイールのリムを回転させても、センタパッドを回転させないように構成されている。すなわち、上記特許文献1では、乗員の運転操作によりステアリングホイールのリムのみが回転するように構成されている。
【0008】
このように、上記特許文献1では、乗員の運転操作によりステアリングホイールのリムのみが回転するように構成された場合、ステアリングホイールが回転したか否かを把握し難くなるため、乗員に与える安心感を低減させてしまう点で改善の余地がある。
【0009】
したがって、上記特許文献1では、乗員の頭部のみならず、胸部及び腰部を保護可能となるようエアバッグ袋体の形状を予め設定することが可能になるものの、乗員に与える安心感を低減させてしまうため、運転操作時における安全性を低減させてしまうという技術的課題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の実状に鑑みて、乗員に与える安心感を低減させることなく、乗員の頭部のみならず、他の部位まで十分に保護することで、運転操作時における安全性を維持しつつ、車両への衝突により生じる衝撃から乗員の保護する際の安全性を高めることが可能なステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明に係るステアリング装置は、車両を操舵するステアリングホイールの内方に配設され、上記車両への衝突時に乗員側に向けてエアバッグ袋体を膨張展開させて乗員を保護するエアバッグモジュールを有して構成され、上記車両の進行方向が直進する場合における上記ステアリングホイールの位置をこのステアリングホイールの中立位置とした場合、上記車両への衝突を事前に検知する検知手段と、この検知手段により上記車両への衝突を検知した際、上記ステアリングホイールの位置を上記中立位置となるよう調整する調整手段と、を備えて構成されている。
【0012】
好適には、上記解決手段に加えて、上記調整手段は、ステアリングシャフト及びステアリングコラムを係脱可能となるよう支持する係脱支持部材を備え、この系脱支持部材の脱状態時に上記ステアリングシャフトを上記ステアリングホイールが上記中立位置に位置するよう調整するように構成されている。
【0013】
好適には、上記解決手段に加えて、上記調整手段は、上記ステアリングシャフトの回転力を受けて往復回転可能な往復回転部材と、上記往復回転部材及び上記ステアリングシャフトの互いの回転力を利用して互いに回転可能となるよう掛け渡す掛け渡し部材と、を備え、上記往復回転部材は、上記系脱支持部材の脱状態時に往復回転幅を徐々に終極可能となるよう構成されている。
【0014】
好適には、上記解決手段に加えて、上記エアバッグモジュール及び上記ステアリングホイールは、互いに螺合する螺合溝を備え、上記エアバッグモジュールのインフレータの作動時における推力を利用して上記螺合溝上で上記エアバッグモジュールを一定の位置に移送させるように構成されている。
【0015】
好適には、上記解決手段に加えて、上記インフレータは、上記エアバッグ袋体にガスを供給する複数の供給孔を有し、複数の上記供給孔は同方向に向かって開口して形成されて構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のステアリング装置によれば、乗員に与える安心感を低減させることなく、乗員の頭部のみならず、他の部位まで十分に保護することで、運転操作時における安全性を維持しつつ、車両への衝突により生じる衝撃から乗員の保護する際の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態であるステアリング装置を模式的に示し、このステアリング装置を車両幅方向から目視した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるステアリング装置を模式的に示し、このステアリング装置を車両幅方向から断面視した状態を示す断面図である。
【図3】図2におけるA部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図3における線I−I´を模式的に示し、第1の状態を示す断面図である。
【図5】図3における線I−I´を模式的に示し、第2の状態を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態であるステアリングホイールを模式的に示し、このステアリングホイールを乗員側から目視した状態を示す正面図である。
【図7】本発明の一実施の形態であるエアバッグモジュールを断面視した状態を模式的に示し、このエアバッグモジュールの第1の状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態であるエアバッグモジュールを断面視した状態を模式的に示し、このエアバッグモジュールの第2の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態のステアリング装置100について、図1乃至図8を用いて説明する。まず、本発明の実施の形態であるステアリング装置100の主たる構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態であるステアリング装置100を模式的に示し、このステアリング装置100を車両幅方向から目視した状態を示す斜視図であり、図2は、ステアリング装置100を車両幅方向から断面視した状態を示す断面図である。
【0020】
図1及び図2に例示されるように、本実施の形態のステアリング装置100は、ステアリングホイール140の回転を図示しないステアリングギアボックスに伝達するステアリングシャフト110と、このステアリングシャフト110を収容する筒状のステアリングコラム120と、を少なくとも備えて構成されている。
【0021】
そして、ステアリング装置100は、ステアリングホイール140の内方にエアバッグモジュール150を収容して構成されている。このエアバッグモジュール150は、車両への衝突時に乗員側に向けてエアバッグ袋体151を膨張展開させることで、車両への衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する役目を果てしている。
【0022】
次に、本実施の形態のステアリング装置100の主たる構成であるステアリングシャフト110について説明する。このステアリングシャフト110は、上述したように、ステアリングホイール140の回転を図示しないステアリングギアボックスに伝達する役目を果たしている。
【0023】
ステアリングシャフト110は、このステアリングシャフト110の軸方向で3分割して構成されている。すなわち、ステアリングシャフト110は、ステアリングホイール140側の第1シャフト111と、図示しないギアボックス側の第2シャフト112と、これら第1シャフト111及び第2シャフト112を繋ぐ第3シャフト113と、を有して構成されている。
【0024】
そして、ステアリングシャフト110は、これら第1シャフト111、第2シャフト112及び第3シャフト113の夫々の接続部分で軸方向に摺動可能となるように構成されている。このため、ステアリングシャフト110は、例えば、テレスコピック時に伸縮するように構成されている。
【0025】
これにより、ステアリングシャフト110は、車両前面への衝突時に図示しないステアリングギアボックス及びユニバーサルジョイント等によって車両前後方向における後方側に押されて伸縮することで、車両前面への衝突時に生じる衝撃を吸収することが可能になる。
【0026】
次に、本実施の形態のステアリング装置100の主たる構成であるステアリングコラム120について説明する。このステアリングコラム120は、上述したように、ステアリングシャフト110を収容する役目を果たしている。
【0027】
すなわち、ステアリングコラム120は、上述したように、ステアリングシャフト110を収容可能となる中空部を有するとともに、ステアリングシャフト110を被覆するために円筒形状をなして形成されている。
【0028】
本実施の形態において、ステアリングコラム120は、アッパジャケット121及びロアジャケット122を有する2ジャケットにより構成されている。なお、本実施の形態のステアリングコラム120は、アッパジャケット121及びロアジャケット122により構成されているが、この構成に限定されず、例えば、アッパジャケット121を2分割して3ジャケットにより構成しても良い。
【0029】
このアッパジャケット121は、主に、ステアリングシャフト110におけるステアリングホイール140側の部分である第1シャフト111を被覆するものである。そして、アッパジャケット121のステアリングホイール140側の端部には、ステアリングシャフト110を支持する第1の支持部材123が設けられている。
【0030】
この第1の支持部材123は、例えば、ステアリングシャフト110を回転可能に支持するベアリング、ステアリングシャフト110とアッパジャケット121とを連結して支持するピン等により構成されている。
【0031】
一方、ロアジャケット122は、主に、ステアリングシャフト110の図示しないステアリングギアボックス側の部分である第2シャフト112を被覆するものである。そして、ロアジャケット122の図示しないステアリングギアボックス側の端部には、ステアリングシャフト110を支持する第2の支持部材124が設けられている。
【0032】
本実施の形態において、この第2の支持部材124は、ステアリングシャフト110とロアジャケット122とを連結するピンにより構成されている。そして、ロアジャケット122には、第2の支持部材124に圧力を印加可能な圧力印加手段125が配設されている。
【0033】
この圧力印加手段125は、上述したように、第2の支持部材124に向かって圧力を印加する役目を果たし、例えば、第2の支持部材124に向かって空気圧を噴射するものである。
【0034】
このように、本実施の形態のステアリング装置100は、第2の支持部材124に圧力印加手段125によって圧力を印加することで、第2の支持部材124を係脱可能にしている。
【0035】
これにより、ステアリング装置100は、第2の支持部材124の脱状態時には、ステアリングシャフト110とステアリングコラム120とを互いに影響させない、すなわち、互いに空転可能となるように構成されている。
【0036】
したがって、本実施の形態のステアリング装置100は、第2の支持部材124の脱状態時には、例えば、ステアリングシャフト110が回転しても、このステアリングシャフト110に連動してステアリングコラム120が回転しないように構成されている。
【0037】
一方、ステアリング装置100は、第2の支持部材124の脱状態時に、例えば、ステアリングコラム120が回転しても、このステアリングコラム120に連動してステアリングシャフト110が回転しないように構成されている。
【0038】
なお、本実施の形態において、ステアリング装置100は、第1の支持部材123をベアリングで構成し、第2の支持部材124をピンで構成したが、これに限定されず、例えば、第1の支持部材123及び第2の支持部材124の夫々をピンで構成しても良い。この場合、ステアリング装置100は、アッパジャケット121側及びロアジャケット122側の夫々に圧力印加手段125を備えて構成されている。
【0039】
また、ステアリング装置100は、第1の支持部材123をピンで構成し、第2の支持部材124をベアリングで構成しても良い。この場合、ステアリング装置100は、アッパジャケット121側に圧力印加手段125を備えて構成されている。
【0040】
また、ステアリング装置100は、第1の支持部材123及び第2の支持部材124を用いずに、ステアリングコラム120にステアリングシャフト110を嵌合させても良い。この場合も、ステアリング装置100は、アッパジャケット121側及びロアジャケット側122側の夫々に圧力印加手段125を備えて構成されている。
【0041】
このように、圧力印加手段125によって、互いに空転可能となるよう構成されたステアリングシャフト110及びステアリングコラム120のうち、ステアリングシャフト110には、ステアリングホイール140の位置を中立位置となるよう調整する調整手段130が設けられている。なお、中位位置とは、車両の進行方向が直進する場合におけるステアリングホイール140の位置をいう。
【0042】
調整手段130は、上述したように、ステアリングシャフト110及びステアリングコラム120を系脱可能となるよう支持する第2の支持部材124の系脱時にステアリングシャフト110を中立位置に位置するよう調整するものである。
【0043】
具体的には、調整手段130は、ステアリングシャフト110の回転力を受けて往復回転可能なスプリングバネ(往復回転部材)131と、このスプリングバネ131及びステアリングシャフト110の互いの回転力を利用して互いに回転可能となるよう掛け渡すベルト(掛け渡し部材)132と、を備えて構成されている。
【0044】
そして、スプリングバネ131は、第2の支持部材124の脱状態時に往復回転幅を徐々に終極可能となるよう構成されている。つまり、スプリングバネ131は、ステアリングホイール140の中立位置では、回転方向に負荷がかからない位置となるよう配設されている。
【0045】
そして、スプリングバネ131は、ステアリングシャフト110の回転力を受けて回転する際、一方向に回転した後に、反力を利用して他方向に回転する。また、他方向に回転した後に、反力を利用して一方向に回転する。
【0046】
さらには、スプリングバネ131は、一方向から他方向、他方向から一方向への往復回転を繰り返すことで、往復回転方向幅が徐々に終極するように構成されている。このように、スプリングバネ131の回転を終極させることで、スプリングシャフト120は、スプリングバネ131によって、徐々に中立位置に位置するように構成されている。
【0047】
本実施の形態において、ステアリング装置100の圧力印加手段125の発動契機は、制御手段(例えば、ECU等)により制御されている。この制御手段は、車両への衝突を事前に検知する図示しない検知手段により検知された情報に基づいて制御するものである。
【0048】
この制御手段及び検知手段の一例として、例えば、車両前方の障害物を検知する検知手段の情報に基づいて、障害物との距離を認識し、この距離に応じて車両への衝突を事前に把握して制御するものが挙げられる。
【0049】
次に、本実施の形態のステアリング装置100の主たる構成であるステアリングホイール140について図6を用いて説明する。図6は、本発明の一実施の形態であるステアリングホイール140を模式的に示し、このステアリングホイール140を乗員側から目視した状態を示す正面図である。なお、図6に示す状態をステアリングホイール140の中立位置とする。
【0050】
図6に例示されるように、本実施の形態のステアリングホイール140は、上述したように、主に、乗員の操舵操作を担う操作部材としての役目を果たしている。このステアリングホイール140は、このステアリングホイール140の外郭を構成するリング状のリム141と、このリム141及びステアリングシャフト110を連結するスポーク142と、を有して構成されている。
【0051】
また、ステアリングホイール140は、このステアリングホイール140のほぼ中央に配置され、スポーク142を覆うセンタパッド143を備えて構成されている。本実施の形態において、センタパッド143は、このセンタパッド143を乗員側から目視すると、矩形状をなして形成されている。
【0052】
そして、センタパッド143は、乗員の運転操作によりリム141の回転とともに回転するように構成されている。このように構成されることで、センタパッド143は、乗員の運転操作時に乗員がリム141を回転させたことを視覚的に把握させることが可能になる。また、センタパッド143には、例えば、メーカのロゴ等が施されており、意匠性を有している。
【0053】
このように、乗員の運転操作によりリム141ととともに回転するように構成されたセンタパッド143の裏面側には、エアバッグモジュール150が設けられている。ここで、本実施の形態のステアリングホイール140は、上述したように、車両への衝突時に中立位置に位置するように構成されている。このため、ステアリングホイール140のセンタパッド143に収容されたエアバッグモジュール150のエアバッグ袋体151の形状を予め設定することが可能になる。
【0054】
次に、本実施の形態のステアリング装置100のステアリングホイール140の内部に設けられたエアバッグモジュール150について図7及び図8を用いて説明する。図7は、本発明の一実施の形態であるエアバッグモジュール150を断面視した状態を模式的に示し、このエアバッグモジュール150の第1の状態を示す断面図であり、図8は、本発明の一実施の形態であるエアバッグモジュール150を断面視した状態を模式的に示し、このエアバッグモジュール150の第2の状態を示す断面図である。
【0055】
図7及び図8に例示されるように、本実施の形態において、エアバッグモジュール150は、上述したように、ステアリングホイール140の内部に配設されている。そして、エアバッグモジュール150は、ステアリングホイール140から乗員側に向かってエアバッグ袋体151を膨張展開させることで、車両への衝突時に生じる衝撃から乗員を保護している。
【0056】
このエアバッグモジュール150は、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開するエアバッグ袋体151と、このエアバッグ袋体151にガスを供給するインフレータ152と、エアバッグ袋体151及びインフレータ152を収容するリテーナ153と、を少なくとも備えて構成されている。
【0057】
エアバッグモジュール150を構成するエアバッグ袋体151は、上述したように、車両への衝突時にインフレータ152によりガスが供給されることで、乗員側に向かって膨張展開するものであり、センタパッド143及びリテーナ153により形成された空間に折り畳んで設けられている。
【0058】
また、エアバッグモジュール150を構成するインフレータ152は、上述したように、エアバッグ袋体151にガスを供給するものである。このインフレータ152は、円筒形状の外形をなして形成されている。
【0059】
また、エアバッグモジュール150を構成するリテーナ153は、上述したように、エアバッグ袋体151及びインフレータ152を収容するための空間部をセンタパッド143とともに形成するものである。
【0060】
このリテーナ153は、エアバッグ袋体151及びインフレータ152を収容するための空間を形成する面部と、この面部の外周縁に配置され、ハブにリテーナ153を連結するための脚部と、を有して構成されている。
【0061】
また、リテーナ153は、後述するローラピン155を摺動可能に支持する平面視円形溝を有して構成されている。そして、リテーナ153の裏面側には、インフレータ152を収容するための収容ケース154が設けられている。この収容ケース154は、ローラピン155によってリテーナ153に連結されている。
【0062】
すなわち、エアバッグ袋体151及びインフレータ152は、収容ケース154を介してリテーナ153に回転可能となるよう支持されている。本実施の形態において、インフレータ152と収容ケース154との夫々には、互いに螺合するインフレータ螺合溝152a及び収容ケース螺合溝154aが形成されている。
【0063】
ここで、インフレータ152は、エアバッグ袋体151にガスを供給するための孔(供給孔)152bを同方向に向かって開口するように構成されている。すなわち、本実施の形態のエアバッグモジュール150は、インフレータ152からエアバッグ袋体151に供給されるガスを同方向に向かって噴出させるように構成されている。
【0064】
これにより、本実施の形態のエアバッグ袋体151及びインフレータ152は、インフレータ152からエアバッグ袋体151にガスが供給される際、インフレータ152のガスの推力を利用して回転するように構成されている。そして、インフレータ152の外底面と収容ケース154の内底面とが当接すると、回転が止まるように構成されている。
【0065】
すなわち、本実施の形態のエアバッグモジュール150は、インフレータ152の外底面と収容ケース154の内底面とが当接して回転が止まった後に、エアバッグ袋体151が膨張展開するように構成されている。
【0066】
このため、エアバッグ袋体151は、回転が止まった位置で膨張展開するため、常に同じ位置で膨張展開可能となるよう構成されている。このように、本実施の形態のエアバッグモジュール150は、車両への衝突時にエアバッグ袋体151を常に同じ位置から膨張展開させることが可能になるため、エアバッグ袋体151の形状を予め設定することが可能になる。
【0067】
このように、本実施の形態のエアバッグモジュール150は、上述したように、エアバッグ袋体151の形状を予め設定することが可能になるため、例えば、乗員の頭部を保護する頭部保護用チャンバと胸部を保護する胸部保護用チャンバとを形成することが可能になり、乗員の頭部、胸部への夫々の傷害値を低減させることが可能になる。
【0068】
これにより、本実施の形態のエアバッグ袋体151によれば、上述したように、エアバッグ袋体151の膨張展開時に、常に同じ位置で膨張展開可能となるよう構成されているため、安定した適宜の位置に膨張展開させることが可能になる。
【0069】
したがって、本実施の形態のステアリング装置100は、乗員の頭部のみならず、他の部位まで十分に保護することが可能になり、車両への衝突により生じる衝撃から乗員を保護する際の安全性を高めることができる。
【0070】
以上のように、本実施の形態のステアリング装置100によれば、乗員に与える安心感を低減させることなく、乗員の頭部のみならず、他の部位まで十分に保護することで、運転操作時における安全性を維持しつつ、車両への衝突により生じる衝撃から乗員を保護する際の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0071】
100 ステアリング装置
110 ステアリングシャフト
111 第1シャフト
112 第2シャフト
113 第3シャフト
120 ステアリングコラム
121 アッパジャケット
122 ロアジャケット
130 調整部材
140 ステアリングホイール
141 リム
142 スポーク
143 センタパッド
150 エアバッグモジュール
151 エアバッグ袋体
152 インフレータ
152a インフレータ螺合溝
152b インフレータ孔
153 リテーナ
154 収容ケース
154a 収容ケース螺合溝
155 ローラピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を操舵するステアリングホイールの内方に配設され、前記車両への衝突時に乗員側に向けてエアバッグ袋体を膨張展開させて乗員を保護するエアバッグモジュールを有して構成されたステアリング装置であって、
前記車両の進行方向が直進する場合における前記ステアリングホイールの位置を当該ステアリングホイールの中立位置とした場合、
前記車両への衝突を事前に検知する検知手段と、
当該検知手段により前記車両への衝突を検知した際、前記ステアリングホイールの位置を前記中立位置となるよう調整する調整手段と、を備えたこと、
を特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記調整手段は、
ステアリングシャフト及びステアリングコラムを係脱可能となるよう支持する係脱支持部材を備え、
当該系脱支持部材の脱状態時に前記ステアリングシャフトを前記ステアリングホイールが前記中立位置に位置するよう調整すること、
を特徴とする請求項1記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記ステアリングシャフトの回転力を受けて往復回転可能な往復回転部材と、
前記往復回転部材及び前記ステアリングシャフトの互いの回転力を利用して互いに回転可能となるよう掛け渡す掛け渡し部材と、を備え、
前記往復回転部材は、前記系脱支持部材の脱状態時に往復回転幅を徐々に終極可能となるよう構成されたこと、
を特徴とする請求項2記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記エアバッグモジュール及び前記ステアリングホイールは、互いに螺合する螺合溝を備え、
前記エアバッグモジュールのインフレータの作動時における推力を利用して前記螺合溝上で前記エアバッグモジュールを一定の位置に移送させること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記インフレータは、前記エアバッグ袋体にガスを供給する複数の供給孔を有し、
複数の前記供給孔は同方向に向かって開口して形成されること、
を特徴とする請求項4記載のステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−35450(P2013−35450A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174057(P2011−174057)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】