説明

ステップ電圧応答を有する電圧切り換え可能な誘電体材料の組成及び該誘電体材料の製造方法

電圧切り換え可能な誘電材料の組成は、誘電母体材料内に均一に分散する2種類以上の異なる半導体材料を有する。前記半導体材料は、生成された電圧切り換え可能な誘電材料に様々な過電圧のレベルに対するステップ応答を供するため、それぞれ異なるバンドギャップエネルギーを有するように選ばれる。前記半導体材料は、無機の粒子、有機の粒子、又は前記誘電母体材料内で可溶であるか、又は該誘電母体材料と混和可能な有機材料を有して良い。組成はまた任意で電気伝導性材料をも有して良い。組成中での前記伝導性材料又は前記半導体材料のうちの少なくとも1つはアスペクト比が少なくとも3以上であることを特徴とする粒子を有して良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロニクスデバイスの分野に関し、特に過電圧の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイ又はチップを含む半導体デバイスは、過電圧事象によって容易に影響を受ける、すなわち破壊される。過電圧事象の例には、静電放電(ESD)、ライン過渡、及び雷撃が含まれる。静電放電は一般的に、正電荷を有する人が半導体デバイスに触るときに起こる。ライン過渡は、AC電力ライン上での電力サージを含み、かつスイッチを閉じる、又はモーターを起動させるような事象によっても生じうる。
【0003】
非線形抵抗材料としても知られている電圧切り換え可能な誘電材料とは、通常は誘電材料として振る舞うが、切り換え電圧として知られている十分な電圧が印加されると、急激に伝導性となる材料のことである。電圧切り換え可能な誘電材料は、非伝導状態と伝導状態との間での切り換えを行う能力を有するため、過電圧を保護する用途に非常に適している。しかし大抵の用途に求められる要件は、電圧切り換え可能な誘電材料が、該誘電材料が用いられるデバイスの通常の動作電圧未満では目立った漏電をしないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6797145号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電圧切り換え可能な誘電材料を製造する一般的な方法は、ほとんど浸透閾値付近である高レベルの金属粒子でポリマーを充填することである。残念なことに、このようにして製造された電圧切り換え可能な誘電材料は、通常の動作電圧で漏電を起こし始めてしまう恐れがある。またそのような電圧切り換え可能な誘電材料の製造にも問題あると考えられる。金属粒子はポリマー全体にわたって均一に分布していなければならず、そして濃度の変化が小さいと、特性は大きく消失するか、又は受容できないほどの電気的特性のばらつきを生じさせる恐れがある。混合時間が長くなれば均一性は改善されるが、長い混合時間は、コストを含む多くの理由により望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、様々なレベルの過電圧に対するステップ応答を供する電圧切り換え可能な誘電材料の組成を供する。本発明の典型的な電圧切り換え可能な誘電材料は、誘電母体材料、及び該母体材料内に設けられた3種類の半導体材料を有する。前記3種類の半導体材料は、それぞれのバンドギャップエネルギーが異なることを特徴とする。前記半導体材料のいずれもたとえば無機の粒子、有機の粒子、又は溶媒に可溶な有機材料を有して良い。実施例によっては、前記半導体材料の1つは約2eVから3eVの範囲のバンドギャップエネルギーを有する。これらの実施例によっては、第2半導体材料が2eV未満のバンドギャップエネルギーを有し、かつ第3半導体材料が3eVよりも大きなバンドギャップエネルギーを有
する。実施例によっては、当該電圧切り換え可能な誘電材料は、前記母体材料内に設けられた電気伝導性材料をさらに有する。
【0007】
本発明に係る他の典型的な電圧切り換え可能な誘電材料は、誘電母体材料、及びそれぞれのバンドギャップエネルギーが異なることを特徴とする2種類の半導体材料を有する。前記半導体材料の1つはアスペクト比が少なくとも3:1であることを特徴とする粒子を有する。
【0008】
本発明に係るさらに他の典型的な電圧切り換え可能な誘電材料は、誘電母体材料、及びそれぞれのバンドギャップエネルギーが異なることを特徴とする2種類の半導体材料を有する。これらの実施例では、当該電圧切り換え可能な誘電材料は、前記母体材料内に設けられたアスペクト比が少なくとも3:1であることを特徴とする電気伝導性材料の粒子をさらに有する。これらの実施例によっては、前記半導体材料の1つはアスペクト比が少なくとも3:1であることを特徴とする粒子をさらに有する。当該電圧切り換え可能な誘電材料は、場合によっては約35%未満の体積パーセントの伝導性粒子を有して良い。
【0009】
本発明はまた、電圧切り換え可能な誘電材料を供するだけでなく、当該電圧切り換え可能な誘電材料の製造方法をも供する。典型的方法は、第1、第2、及び第3半導体材料を樹脂に加える工程、該第1、第2、及び第3半導体材料が前記樹脂内で均一に分布するまで、前記樹脂を混合する工程、並びに前記樹脂を硬化させる工程、を有する。ここで前記第1、第2、及び第3半導体材料の各々はそれぞれバンドギャップエネルギーが異なっていることを特徴とする。前記第1、第2、及び第3半導体材料のうちの少なくとも1つは有機溶媒に可溶な材料を有して良い。実施例によっては、混合工程は、回転固定子によって行われるか、かつ/又は超音波処理を含む。当該方法は、混合工程中、前記樹脂に溶媒を加える工程をさらに有して良い。場合によっては前記樹脂を硬化させる工程は、前記樹脂を複数の硬化期間に曝す工程を有する。各連続する硬化期間は、その前の硬化期間よりも高温である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の典型的実施例による電圧切り換え可能な誘電材料の断面図である。
【図2】電圧切り換え可能な誘電材料の典型的実施例に印加された電圧の関数として電流をプロットした図である。
【図3】本発明の典型的実施例による電圧切り換え可能な誘電材料の製造方法のフローチャートを示す図である。
【図4】本発明の典型的実施例による2つの電極間のギャップに堆積される典型的な電圧切り換え可能な誘電材料の断面図である。
【図5】本発明の典型的実施例による電圧切り換え可能な誘電材料層上に設けられた2つの電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は電圧切り換え可能な誘電材料の組成を供する。前記組成は、誘電母体材料内に分散する2種類以上の異なる半導体材料によって特徴付けられる。前記半導体材料は、生成された電圧切り換え可能な誘電材料に様々な過電圧のレベルに対するステップ応答を供するため、それぞれ異なるバンドギャップエネルギーを有するように選ばれる。前記半導体材料は粒子の形態をとって良いが、それに限定されるわけではない。あるいはその代わりに、半導体材料は、前記誘電母体材料内で可溶であるか、又は該誘電母体材料と混和可能である。組成はまた任意で電気伝導性及び/又は絶縁性材料を有して良い。実施例によっては、前記伝導性材料又は前記半導体材料のうちの少なくとも1つはアスペクト比が少なくとも3以上であることを特徴とする粒子を有する。そのような高アスペクト比の粒子によって、従来技術に係る組成よりも伝導性粒子の体積パーセントを全体的に減少させることが可能となる。これらの組成から得ることのできる利点には、概してエレクトロニクス用途向けの特性-キャパシタンス、誘電率、クラック抵抗、及び熱膨張係数-が改善するだけではなく、通常の動作電圧での漏れ電流が小さくなることも含まれる。
【0012】
図1は、本発明の典型的実施例による電圧切り換え可能な誘電材料の組成を概略的に図示している。図1では、母体材料110は、伝導性材料からなる粒子120、それぞれ異なるバンドギャップエネルギーを有する3種類の半導体材料からなる粒子130、140、150、及び絶縁材料からなる粒子160で満たされている。図1は、5種類の異なる粒子120、130、140、150、160を含む組成を図示しているが、本発明の組成は、伝導性粒子120及び/又は絶縁粒子160を省いても良いことに留意して欲しい。他の実施例は、3種類の粒子130、140、150の全てを含むのではなく、それぞれ異なるバンドギャップエネルギーを有する2種類の半導体材料130、140のみを有する。粒子120、130、140、150、160の形状、サイズ、及び数は単なる例示であって、特定の組成を表すことを意図していないことが分かるだろう。
【0013】
さらに図1は半導体材料からなる粒子130、140、150を図示しているが、粒子130、140、150のうちの1つ以上が、母体材料110内で少なくとも部分的に可溶であるか、又は母体材料110と混和可能な有機半導体材料に置き換えられても良いことに留意して欲しい。実施例によっては、係る半導体材料は母体材料110内では独立した粒子として存在することができないが、例示目的のためだけに粒子として図示されている。
【0014】
図1に図示された実施例では、粒子120、130、140、150、160は、その一部が母体材料110によって完全に隔離され、かつ他の一部は互いに接するように、母体材料全体にわたって均一に分配されている。よって電圧切り換え可能な誘電材料100を通る最も抵抗の小さい典型的な伝導路は、各粒子120、130、140、150の一部を通り抜ける。
【0015】
母体材料110に適した誘電材料の一部は有機ポリマーである。そのような有機ポリマーの例には、シリコーンポリマー、フェノール樹脂、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリラート(メタクリラート)、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレン酸化物、ポリスルホン、セラマー(ゾルゲル/ポリマー複合体)(商標)、及びポリフェニレンスルホンが含まれる。十分に機能する1つの特別なエポキシはEPON樹脂828(商標)である。これは、適当な硬化剤によって硬化可能な未希釈の透明な二官能性ビスフェノールA/エピクロロヒドリン誘導液体エポキシ樹脂である。シロキサンやポリホスファジンのような一部の誘電性無機ポリマーもまた母体材料110に適している。
【0016】
実施例によっては、伝導性材料からなる粒子120は金属を有する。適した金属には、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、金、チタン、ステンレス鋼、クロム、及びこれらの合金が含まれる。伝導性粒子120に適した他の材料には、TiC、TiN、及びTiB2が含まれる。伝導性材料からなる粒子120に適した粒径は2ミクロン(μ)のオーダーである。図1に図示された導電性材料からなる粒子120はわずかに細長く(つまりアスペクト比が1よりも大きな状態で)描かれているが、伝導性材料からなる粒子120はわずかに細長い形状に限定されるわけではないことに留意して欲しい。様々な実施例では、伝導性材料からなる粒子120は、球形状から非常に細長い形状までの範囲に属する形状を有し、又は複数の形状が分布した形状を有しても良い。
【0017】
半導体材料からなる粒子130、140、150は、約1eV〜6eVの範囲内に属するバンドギャップエネルギーを有する材料からなる粒子であるが、この範囲は厳密な限定と解してはならない。バンドギャップエネルギーとは、電子が励起して、価電子帯を飛び出して伝導帯へ入り込むのに必要なエネルギーである。適切な半導体材料の例には、Si、NiO、SiC、ZnO、BN、C(ダイアモンド、ナノチューブ、又はフラーレンのいずれか)、ZnS、Bi2O3、Fe2O3、CeO2、TiO2、AlN、及びInSe2化合物が含まれる。特にTiO2はたとえばWO3がドープされていても良いし、又はドープされていなくても良い。この場合ドープとは表面コーティングを意味する。繰り返しになるが、図1に図示された半導体材料からなる粒子130、140、150はわずかに細長く(つまりアスペクト比が1よりも大きな状態で)描かれているが、半導体材料からなる粒子130、140、150はわずかに細長い形状に限定されるわけではないことに留意して欲しい。様々な実施例では、半導体材料からなる粒子130、140、150は、球形状から非常に細長い形状までの範囲に属する形状を有し、又は複数の形状が分布した形状を有しても良い。
【0018】
実施例によっては、伝導性材料からなる粒子120は高アスペクト比の粒子を有する。高アスペクト比の粒子とはたとえば、単層及び多層の伝導性カーボンナノチューブ、フラーレン、金属ナノロッド、又は金属ナノワイヤである。ナノロッド及び/又はナノワイヤを形成する材料の例には、窒化ボロン、スズとアンチモン酸化物、二酸化チタン、銀、銅、スズ、及び金が含まれる。
【0019】
他の実施例では、半導体材料からなる1種類以上の粒子130、140、150は高アスペクト比の粒子を有する。例には、半導体カーボンナノチューブ、半導体ナノロッド、及び半導体ナノワイヤが含まれる。さらに他の実施例では、伝導性粒子120と半導体材料からなる粒子130、140、150のうちの少なくとも一のいずれも高アスペクト比の粒子を有する。粒子120、130、140、150のいずれも少なくとも3:1のアスペクト比を有して良い。実施例によっては、1種類以上の粒子120、130、140、150は、少なくとも10:1、100:1、又は1000:1のアスペクト比を有する。
【0020】
500nmを超えない最小の寸法によって特徴付けられるナノスケールの粒子もまた粒子120、130、140、150に用いられて良い。様々な実施例では、粒子120、130、140、150の少なくとも一部は100nm又は50nm未満の最小寸法を有する。場合によっては、粒子120、130、140、150の少なくとも一部は約20nmの直径によって特徴付けられる。
【0021】
さらに他の実施例では、半導体材料からなる粒子130、140、150のいずれも有機材料を有して良い。母体材料110内に有機材料を組み込む結果、無機材料しか含まない電圧切り換え可能な誘電材料よりも優れた特性を有する電圧切り換え可能な誘電材料を得ることができる。そのような特性には、熱膨張係数、伝熱係数、誘電率、破壊靱性、圧縮強度、及び金属に対する接合能が含まれる。
【0022】
有機半導体の例には、半導体カーボンナノチューブ及びフラーレン(たとえばC60及びC70)のような形態の炭素が含まれる。実施例によっては、フラーレン及びナノチューブは、官能化されるように修飾されることで共有結合基又は部分を含んで良い。有機半導体の他の例には、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホナート)、ペンタセン、(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム(III)、及びN,N’-ジ-[ナフタレニル-N,N’ジフェニル]-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン[NPD]が含まれる。それに加えて、有機半導体は、チオフェン、アナリン、フェニレン、ビニレン、フルオレン、ナフタレン、ピロール、アセチレン、カルバゾール、ピロリドン、シアノ材料、アントラセン、ペンタセン、ルブレン、ペリレン、及びオキサジゾールのモノマー、オリゴマー、及びポリマーから得ることができる。これらの有機材料の一部は、たとえばポリチオフェンのような感光性有機材料であると考えられる。
【0023】
大まかに言えば、本発明は、上述した伝導性材料、半導体材料、及び絶縁材料を含む広範囲の組成を供する。たとえば母体材料110の体積割合は、約5%から約99%まで変化して良く、かつ体積にして0から約70%の割合の伝導性材料、及び体積にして約0.01%から約95%の割合の半導体材料を有して良い。これらの広い範囲内で、伝導性材料及び半導体材料のいずれか又は全ては、アスペクト比が少なくとも3の粒子を有して良い。またこれらの広い範囲内で、半導体材料のいずれか又は全ては有機材料を有して良い。
【0024】
実施例によっては、母体材料110は体積にして約20%から約80%を有し、伝導性材料は体積にして約10%から約50%を有し、かつ半導体材料は体積にして約0%から約70%を有する。これらの実施例は、約0.01%から約40%の範囲の体積割合であるアスペクト比が少なくとも3の伝導性粒子及び/又は半導体粒子を有して良い。これらの実施例はさらに、約0.01%から約40%の範囲の体積割合である半導体有機材料を有して良い。
【0025】
上述したように、半導体材料からなる粒子130、140、150は、電圧切り換え可能な誘電材料100に過電圧に対するステップ応答を供するため、それぞれのバンドギャップエネルギーが異なることを特徴とする。図2では、電圧切り換え可能な誘電材料100に印加される電圧が、該電圧切り換え可能な誘電材料100を流れる電流に対してプロットされている。図2では、電流の代わりに電圧切り換え可能な誘電材料100のコンダクタンスがプロットされていること、及びコンダクタンスをプロットしても電流をプロットした図と同一が得られることに留意して欲しい。
【0026】
図示された例では、第1閾値よりも高いピーク電圧を有する過電圧事象は、最低のバンドギャップを有する半導体材料からなる粒子130に電流を流すのには十分だが、ピーク電圧が第2閾値(V2)をも超えるまでは、高いバンドギャップを有する半導体材料からなる粒子140に電流を流すのには不十分である。その考え方は、各々のバンドギャップエネルギーが異なることを特徴とする、3種類以上の半導体材料からなる粒子130、140、150を有する組成にもすぐに拡張できる。様々な半導体材料のバンドギャップエネルギーの差異は、一の閾値と次の閾値との電圧の差異を決定する。3種類の半導体材料を含む実施例の一部では、最低のバンドギャップエネルギーを有する材料は2eV未満のバンドギャップエネルギーを有し、最高のバンドギャップエネルギーを有する材料は3eVよりも大きなバンドギャップエネルギーを有し、かつ残りの材料は約2eVから3eVの範囲に属するバンドギャップエネルギーを有する。
【0027】
本発明はまた電圧切り換え可能な誘電材料の製造方法をも供する。図3は電圧切り換え可能な誘電材料の典型的な製造方法を表すフローチャートである。工程310では、様々な材料が、たとえばEPON樹脂828(商標)のようなシラン結合剤を有する樹脂に加えられる。その様々な材料は、上述の伝導性材料、半導体材料、及び絶縁材料を有して良い。半導体材料は、無機の粒子、有機の粒子、又は溶媒に溶ける有機材料のいずれかを有して良い。たとえばポリ-3-ヘキシルチオフェンはトルエン中で可溶である。伝導性材料及び半導体材料は任意で高アスペクト比の粒子を有して良い。
【0028】
工程310では、様々な材料が、順次、全て一緒に、又は様々な組合せにより加えられて良い。実施例によっては、高アスペクト比の粒子が最初に加えられ、それに続いて残りの材料が加えられる。工程310はまた溶媒を樹脂-たとえばNMP(N-メチル-2ピロリダン)-に加える工程をも有して良い。工程310はまた、硬化剤及び/又は触媒を樹脂に加える工程をも有して良い。適切な硬化剤は、NMP中に溶解するダイハードT03(登録商標)の15%質量%溶液である。
【0029】
工程310において樹脂に加えられる伝導性粒子及び/又は半導体粒子の量は、少なくとも部分的にその材料のアスペクト比に依存する。アスペクト比が高くなればなるほど必要量は少なくなる。たとえばアスペクト比が1000を超えるカーボンナノチューブは、最終的な組成が質量%にして約0.01%から約10%となる量が加えられればよい。場合によっては、樹脂に加えられるカーボンナノチューブの量は、最終的な組成が質量%にして約1%となる量が加えられる。アスペクト比の低い粒子は、最終的な組成が質量%にして約10%よりも大きくなる量が加えられればよい。たとえばアスペクト比が約10の粒子は、最終的な組成が質量%にして約25%以上となるのに十分な量が加えられて良い。
【0030】
続いて工程320では、樹脂内部でアスペクト比が少なくとも3の粒子が均一に分散する均一な混合物を生成するため、分から時(たとえば8時間)のオーダーでその樹脂が混合される。混合工程はたとえば超音波処理及び回転固定子による混合工程を含んで良い。前記混合工程中に追加の溶媒が加えられても良い。
【0031】
混合工程に続いて、工程330では、その混合物は所望の位置に堆積され、その樹脂は硬化される。ワイヤ巻き付けロッドコーティングプロセスに適したワイヤは#50のワイヤである。典型的な硬化プロセスは、混合物を複数の硬化期間に曝す。各連続する硬化期間は、その前の硬化期間よりも高温である。一の係る適切な硬化プロセスは、連続して、75℃で10分間の硬化期間、125℃で10分間の硬化期間、175℃で45分間の硬化期間、及び187℃で30分間の硬化期間を用いる。
【0032】
工程330では、所望の位置はたとえば、プリント回路基板、半導体パッケージ、半導体デバイス、高周波認識(RFID)タグ、発光ダイオード(LED)、ディスプレイ背面、穏やかにサージを抑制するデバイス、又はこれらのいずれかの製造中に生成される中間生成部品の上又は内部であって良い。
【0033】
図4は典型的な用途を図示している。この典型的な用途では、電圧切り換え可能な誘電材料400は、グランドとつながる電極420とグランドに対してバイアスが印加されている電極430との間のギャップ410内に設けられている。係る配置は、回路又はデバイスを過電圧事象から保護するのに用いられて良い。電圧切り換え可能な誘電材料400は、上の図2及び3で述べたように、均一な混合物をギャップ410内部に堆積及び硬化することによって、ギャップ410内に生成して良い。
【0034】
他の配置が図5に図示されている。この配置では、電極500,510が、基板上に存在する電圧切り換え可能な誘電材料層520上に設けられている。ここで電圧切り換え可能な誘電材料層520は、図3で述べたように、基板530上に均一な混合物を堆積して硬化することによって生成されて良い。続いて電極500,510は従来の手段によって層520上に作製されて良い。たとえば、シード層が層520上に堆積され、そのシード層全体にわたってマスクがパターニングされ、かつ電極500,510が電気メッキによって生成されて良い。あるいはその代わりに、シード層は従来の方法から省略されて良い。マスクがパターニングされた後、電圧切り換え可能な誘電材料層520は、適切な電圧の印加によって伝導性となって良い。一旦伝導性となると、電極500,510は層520上で直接メッキされて良い。電圧切り換え可能な誘電材料上に直接電気メッキする方法は特許文献1でより詳細に説明されている。
【0035】
上の記載では、本発明は特定の実施例を参照しながら説明されている。しかし当業者は、本発明が特定の実施例に限定されないことを理解するだろう。上述の発明の様々な事項及び態様は独立してあるいは組み合わせて使用されて良い。さらに本発明は、明細書の広義の技術的思想及び技術的範囲から逸脱することなく、明細書の記載事項を超えた環境及び用途に用いられて良い。従って明細書及び図面は限定ではなく例示と解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電母体材料;
該誘電母体材料内に設けられていて第1バンドギャップエネルギーを有することを特徴とする第1半導体材料;
前記誘電母体材料内に設けられていて前記第1バンドギャップエネルギーとは異なる第2バンドギャップエネルギーを有することを特徴とする第2半導体材料;及び
前記誘電母体材料内に設けられていて前記第1及び第2バンドギャップエネルギーとは異なる第3バンドギャップエネルギーを有することを特徴とする第3半導体材料;
を有する電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項2】
前記誘電母体材料内に設けられた前記第1半導体材料は粒子を有する、請求項1に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項3】
前記誘電母体材料内に設けられた電気伝導性材料をさらに有する、請求項1に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項4】
前記誘電母体材料は、シリコーンポリマー、フェノール樹脂、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリラート(メタクリラート)、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレン酸化物、ポリスルホン、セラマー、及びポリフェニレンスルホン、シロキサン、及びポリホスファジンからなる群から選ばれる、請求項1に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項5】
前記第2バンドギャップエネルギーが2eVから3eVの範囲である、請求項1に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項6】
前記第1バンドギャップエネルギーが2eV未満であり、かつ
前記第3バンドギャップエネルギーが3eVよりも大きい、
請求項5に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項7】
誘電母体材料;
該誘電母体材料内に設けられていて第1バンドギャップエネルギーを有することを特徴とする第1半導体材料からなる粒子であって、アスペクト比が少なくとも3:1であることをさらに特徴とする粒子;及び
前記誘電母体材料内に設けられていて前記第1バンドギャップエネルギーとは異なる第2バンドギャップエネルギーを有することを特徴とする第2半導体材料;
を有する電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項8】
前記誘電母体材料内に設けられた電気伝導性材料をさらに有する、請求項7に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項9】
前記第1半導体材料からなる粒子は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、フラーレン、半導体ナノロッド、及び半導体ナノワイヤからなる群から選ばれた材料からなる粒子を有する、請求項7に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項10】
前記第2半導体材料は、Si、SiC、BN、AlN、、NiO、ZnS、Bi2O3、Fe2O3、WO3、TiO2からなる群から選ばれた材料からなる粒子を有する、請求項7に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項11】
前記第1半導体材料からなる粒子のアスペクト比は少なくとも1000:1である、請求項7に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項12】
誘電母体材料;
該誘電母体材料内に設けられていてアスペクト比が少なくとも3:1であることをさらに特徴とする伝導性材料からなる粒子;及び
前記誘電母体材料内に設けられていて第1バンドギャップエネルギーを有することを特徴とする第1半導体材料;
前記誘電母体材料内に設けられていて前記第1バンドギャップエネルギーとは異なる第2バンドギャップエネルギーを有することを特徴とする第2半導体材料;
を有する電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項13】
前記伝導性材料からなる粒子は、電気伝導性ナノロッド、ナノワイヤ、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、及びフラーレンからなる群から選ばれた電気伝導性材料からなる粒子を有する、請求項12に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項14】
前記第1半導体材料は、Si、SiC、BN、AlN、、NiO、ZnS、Bi2O3、Fe2O3、WO3、TiO2からなる群から選ばれた材料からなる粒子を有する、請求項12に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項15】
前記第1半導体材料は少なくとも3:1のアスペクト比であることを特徴とする粒子をも有する、請求項12に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項16】
伝導性粒子の体積割合が35%未満である、請求項12に記載の電圧切り換え可能な誘電材料。
【請求項17】
それぞれバンドギャップエネルギーが異なることを特徴とする第1、第2、及び第3半導体材料を樹脂に加える工程;
該第1、第2、及び第3半導体材料が前記樹脂内で均一に分布するまで、前記樹脂を混合する工程;並びに
前記樹脂を硬化させる工程;
を有する電圧切り換え可能な誘電材料の製造方法。
【請求項18】
前記混合する工程が超音波処理を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記混合する工程が回転固定子によって実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記樹脂を硬化させる工程は前記樹脂を複数の硬化期間に曝す工程を有し、かつ
各連続する硬化期間は、前の硬化期間よりも高温である、
請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記混合する工程中に前記樹脂に溶媒を加える工程をさらに有する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒がN-メチル-2ピロリダンを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記樹脂の混合前に前記樹脂へ伝導性材料を加える工程をさらに有する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記第1、第2、又は第3半導体材料のうちの少なくとも1つが溶媒に可溶である有機材料を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
それぞれバンドギャップエネルギーが異なることを特徴とする第1、第2、及び第3半導体材料を樹脂に加える工程;
該第1、第2、及び第3半導体材料が前記樹脂内で均一に分布するまで、前記樹脂を混合する工程;並びに
前記樹脂を硬化させる工程;
によるプロセスによって製造される電圧切り換え可能な誘電材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−521058(P2010−521058A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529274(P2009−529274)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/020682
【国際公開番号】WO2008/036423
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509081551)ショッキング テクノロジーズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】